(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一方の端面である流入端面から他方の端面である流出端面まで延びて排ガスの流路となる複数のセルを区画形成する複数の細孔が形成された隔壁を有するハニカム構造部と、
前記ハニカム構造部の所定の前記セルである入口セルの前記流出端面側の開口部と残余の前記セルである出口セルの前記流入端面側の開口部とに配設された目封止部と、
前記隔壁の表面及び前記隔壁に形成された前記細孔の内面に担持され、前記ハニカム構造部全体における担持量の平均値が100g/L以上の排ガス浄化用の触媒と、を備え、
前記ハニカム構造部の前記流入端面側の部分である流入端面側部分、及び前記流出端面側の部分である流出端面側部分からなり、前記流出端面側部分が、前記流入端面側部分と前記流出端面側部分との合計の体積の20〜80%を占めており、
前記流入端面側部分における触媒の担持量が、前記流出端面側部分における触媒の担持量より多く、
前記流出端面側部分が、下記条件(A)を満たす触媒コートフィルタ。
条件(A):前記流出端面側部分における前記ハニカム構造部の前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記触媒が担持された前記隔壁を、前記隔壁の厚さ方向に直交する方向に5等分して5つの領域とする。下記式(1)及び下記式(2)により算出された算出値(α)が、50%以上である。
式(1);(前記触媒が担持された後の前記隔壁の平均細孔径(μm))2×(前記触媒が担持された後の前記隔壁の気孔率(%))=第1透過特性値
式(2);((最大第1透過特性値−最小第1透過特性値)/平均第1透過特性値)×100=算出値(α)
前記式(2)中、最小第1透過特性値は、前記5つの領域の各第1透過特性値の中で最小の前記第1透過特性値である。最大第1透過特性値は、前記5つの領域の各第1透過特性値の中で最大の前記第1透過特性値である。平均第1透過特性値は、前記5つの領域の前記第1透過特性値の平均値である。
前記ハニカム構造部は、前記隔壁の気孔率が55〜70%であり、前記隔壁の平均細孔径が15〜30μmであり、前記隔壁が、下記条件(B)を満たす請求項1または2に記載の触媒コートフィルタ。
条件(B):前記ハニカム構造部の前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記隔壁を、前記隔壁の厚さ方向に直交する方向に5等分して5つの領域とする。下記式(3)及び下記式(4)により算出された算出値(β)が、10〜90%である。
式(3);(前記隔壁の平均細孔径(μm))2×(前記隔壁の気孔率(%))=第2透過特性値
式(4);((最大第2透過特性値−最小第2透過特性値)/平均第2透過特性値)×100=算出値(β)
前記式(4)中、最小第2透過特性値は、前記5つの領域の各第2透過特性値の中で最小の前記第2透過特性値である。最大第2透過特性値は、前記5つの領域の各第2透過特性値の中で最大の前記第2透過特性値である。平均第2透過特性値は、前記5つの領域の前記第2透過特性値の平均値である。
一方の端面である流入端面から他方の端面である流出端面まで延びて排ガスの流路となる複数のセルを区画形成する複数の細孔が形成された隔壁を有するハニカム構造部と、
前記ハニカム構造部の所定の前記セルである入口セルの前記流出端面側の開口部と残余の前記セルである出口セルの前記流入端面側の開口部とに配設された目封止部と、を備え、
前記ハニカム構造部は、前記隔壁の気孔率が55〜70%であり、前記隔壁の平均細孔径が15〜30μmであり、前記隔壁が、下記条件(C)を満たす触媒コートフィルタ用担体。
条件(C):前記ハニカム構造部の前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記隔壁を、前記隔壁の厚さ方向に直交する方向に5等分して5つの領域とする。下記式(5)及び下記式(6)により算出された算出値(γ)が、10〜90%である。
式(5);(前記隔壁の平均細孔径(μm))2×(前記隔壁の気孔率(%))=第3透過特性値
式(6);((最大第3透過特性値−最小第3透過特性値)/平均第3透過特性値)×100=算出値(γ)
前記式(6)中、最小第3透過特性値は、前記5つの領域の各第3透過特性値の中で最小の前記第3透過特性値である。最大第3透過特性値は、前記5つの領域の各第3透過特性値の中で最大の前記第3透過特性値である。平均第3透過特性値は、前記5つの領域の前記第3透過特性値の平均値である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1〜4に記載の触媒コートフィルタは、ガスエミッションの除去とススなどの微粒子の除去を同時に行うことが可能であるが、排ガスの浄化には、多量の触媒が必要である。具体的には、ガソリンエンジンの排ガスの浄化には多量の三元触媒が必要であり、ディーゼルエンジンの排ガスの浄化には多量のSCR触媒が必要である。そのため、多量の触媒をフィルタに担持させることに起因して、圧力損失が過大となり、エンジンの燃費や出力を悪化させるという問題があった。
【0010】
このような問題の対策として、フィルタの隔壁の気孔率を大きくして、隔壁を透過する排ガスの通過経路を出来る限り確保しようという試みがなされている。しかし、このような試みにも限界がある。
【0011】
そこで、触媒の担持量を維持することにより排ガスの浄化性能を低下させることなく、圧力損失が低減された触媒コートフィルタの開発が切望されていた。
【0012】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものである。本発明の課題とするところは、触媒の担持量を維持することにより排ガスの浄化性能を低下させることなく、圧力損失が低減された触媒コートフィルタ及びこの触媒コートフィルタの担体として使用でき
、この触媒コートフィルタを簡易に効率良く作製することができる触媒コートフィルタ用担体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、以下に示す、触媒コートフィルタ及び触媒コートフィルタ用担体が提供される。
【0014】
[1] 一方の端面である流入端面から他方の端面である流出端面まで延びて排ガスの流路となる複数のセルを区画形成する複数の細孔が形成された隔壁を有するハニカム構造部と、前記ハニカム構造部の所定の前記セルである入口セルの前記流出端面側の開口部と残余の前記セルである出口セルの前記流入端面側の開口部とに配設された目封止部と、前記隔壁の表面及び前記隔壁に形成された前記細孔の内面に担持され、前記ハニカム構造部全体における担持量の平均値が100g/L以上の排ガス浄化用の触媒と、を備え、前記ハニカム構造部の前記流入端面側の部分である流入端面側部分、及び前記流出端面側の部分である流出端面側部分からなり、前記流出端面側部分が、前記流入端面側部分と前記流出端面側部分との合計の体積の20
〜80%を占めており、
前記流入端面側部分における触媒の担持量が、前記流出端面側部分における触媒の担持量より多く、前記流出端面側部分が、下記条件(A)を満たす触媒コートフィルタ。
条件(A):前記流出端面側部分における前記ハニカム構造部の前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記触媒が担持された前記隔壁を、前記隔壁の厚さ方向に直交する方向に5等分して5つの領域とする。下記式(1)及び下記式(2)により算出された算出値(α)が、50%以上である。
式(1);(前記触媒が担持された後の前記隔壁の平均細孔径(μm))2×(前記触媒が担持された後の前記隔壁の気孔率(%))=第1透過特性値
式(2);((最大第1透過特性値−最小第1透過特性値)/平均第1透過特性値)×100=算出値(α)
前記式(2)中、最小第1透過特性値は、前記5つの領域の各第1透過特性値の中で最小の前記第1透過特性値である。最大第1透過特性値は、前記5つの領域の各第1透過特性値の中で最大の前記第1透過特性値である。平均第1透過特性値は、前記5つの領域の前記第1透過特性値の平均値である。
【0015】
[2] 前記算出値(α)が、70%以上である前記[1]に記載の触媒コートフィルタ。
【0016】
[3] 前記ハニカム構造部は、前記隔壁の気孔率が55〜70%であり、前記隔壁の平均細孔径が15〜30μmであり、前記隔壁が、下記条件(B)を満たす前記[1]または[2]に記載の触媒コートフィルタ。
条件(B):前記ハニカム構造部の前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記隔壁を、前記隔壁の厚さ方向に直交する方向に5等分して5つの領域とする。下記式(3)及び下記式(4)により算出された算出値(β)が、10〜90%である。
式(3);(前記隔壁の平均細孔径(μm))
2×(前記隔壁の気孔率(%))=第2透過特性値
式(4);((最大第2透過特性値−最小第2透過特性値)/平均第2透過特性値)×100=算出値(β)
前記式(4)中、最小第2透過特性値は、前記5つの領域の各第2透過特性値の中で最小の前記第2透過特性値である。最大第2透過特性値は、前記5つの領域の各第2透過特性値の中で最大の前記第2透過特性値である。平均第2透過特性値は、前記5つの領域の前記第2透過特性値の平均値である。
【0017】
[4] 前記算出値(β)が、20〜90%である前記
[3]に記載の触媒コートフィルタ。
【0018】
[5] 一方の端面である流入端面から他方の端面である流出端面まで延びて排ガスの流路となる複数のセルを区画形成する複数の細孔が形成された隔壁を有するハニカム構造部と、前記ハニカム構造部の所定の前記セルである入口セルの前記流出端面側の開口部と残余の前記セルである出口セルの前記流入端面側の開口部とに配設された目封止部と、を備え、前記ハニカム構造部は、前記隔壁の気孔率が55〜70%であり、前記隔壁の平均細孔径が15〜30μmであり、前記隔壁が、下記条件(C)を満たす触媒コートフィルタ用担体。
条件(C):前記ハニカム構造部の前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記隔壁を、前記隔壁の厚さ方向に直交する方向に5等分して5つの領域とする。下記式(5)及び下記式(6)により算出された算出値(γ)が、10〜90%である。
式(5);(前記隔壁の平均細孔径(μm))
2×(前記隔壁の気孔率(%))=第3透過特性値
式(6);((最大第3透過特性値−最小第3透過特性値)/平均第3透過特性値)×100=算出値(γ)
前記式(6)中、最小第3透過特性値は、前記5つの領域の各第3透過特性値の中で最小の前記第3透過特性値である。最大第3透過特性値は、前記5つの領域の各第3透過特性値の中で最大の前記第3透過特性値である。平均第3透過特性値は、前記5つの領域の前記第3透過特性値の平均値である。
【0019】
[6] 前記算出値(γ)が、20〜90%となる前記[5]に記載の触媒コートフィルタ用担体。
【発明の効果】
【0020】
本発明の触媒コートフィルタは、ハニカム構造部全体における触媒の担持量の平均値が100g/L以上であるため、従来の触媒コートフィルタに用いられる触媒の担持量を維持している。そのため、本発明の触媒コートフィルタは、排ガスの浄化性能が低下することがない。また、本発明の触媒コートフィルタは、流入端面側部分及び流出端面側部分からなり、流出端面側部分が、流入端面側部分と流出端面側部分との合計の体積の20
〜80%を占めており、
流入端面側部分における触媒の担持量が、流出端面側部分における触媒の担持量より多く、且つ、条件(A)を満たすものである。そのため、本発明の触媒コートフィルタは、排ガスの浄化が可能であることに加え、流出端面側部分において排ガスの流路が確保されることになり、圧力損失が低減される。
【0021】
本発明の触媒コートフィルタ用担体は、上述した本発明の触媒コートフィルタ用の担体であり、本発明の触媒コートフィルタ用担体を用いることによって、本発明の触媒コートフィルタを簡易に効率良く作製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0024】
[1]触媒コートフィルタ:
本発明の触媒コートフィルタの一実施形態としては、
図1に示す触媒コートフィルタ100がある。触媒コートフィルタ100は、多孔質の隔壁15を有するハニカム構造部10と、このハニカム構造部10のセル2内に配設された目封止部12と、ハニカム構造部10に担持された排ガス浄化用の触媒を含む触媒層16と、を備えている。ハニカム構造部10は、一方の端面である流入端面11aから他方の端面である流出端面11bまで延びて排ガスの流路となる複数のセル2を区画形成する隔壁15を有している。目封止部12は、ハニカム構造部10の所定のセル2である入口セル2aの流出端面11b側の開口部と残余のセル2である出口セル2bの流入端面11aの開口部とに配設されている。触媒は、隔壁15の表面及び隔壁15に形成された細孔の内面に担持された排ガス浄化用のものである。ハニカム構造部10全体における触媒の担持量の平均値は100g/L以上である。更に、触媒コートフィルタ100は、ハニカム構造部10の流入端面11a側の部分である流入端面側部分21、及び流出端面11b側の部分である流出端面側部分22からなる。触媒コートフィルタ100は、流出端面側部分22が、流入端面側部分21と流出端面側部分22との合計の体積の20
〜80%を占めている。
また、流入端面側部分における触媒の担持量は、流出端面側部分における触媒の担持量より多い。そして、触媒コートフィルタ100は、流出端面側部分22が、下記条件(A)を満たしている。
条件(A):流出端面側部分22におけるハニカム構造部10のセル2の延びる方向に直交する断面(
図2参照)において、触媒が担持された隔壁15を、隔壁15の厚さ方向に直交する方向に5等分して5つの領域R1,R2,R3,R4,R5とする(
図3参照)。このとき、下記式(1)及び下記式(2)により算出された算出値(α)が、50%以上である。即ち、5つの領域R1,R2,R3,R4,R5を得た後、5つの領域R1,R2,R3,R4,R5のそれぞれにおいて下記式(1)で算出される値である第1透過特性値を算出する。その後、下記式(2)から算出値(α)を得たとき、上記算出値(α)が、50%以上となる。
式(1):(触媒が担持された後の隔壁15の平均細孔径(μm))2×(触媒が担持された後の隔壁15の気孔率(%))=第1透過特性値
式(2):((最大第1透過特性値−最小第1透過特性値)/平均第1透過特性値)×100=算出値(α)
式(2)中、最小第1透過特性値は、5つの領域R1,R2,R3,R4,R5の各第1透過特性値の中で最小の第1透過特性値である。最大第1透過特性値は、5つの領域R1,R2,R3,R4,R5の各第1透過特性値の中で最大の第1透過特性値である。平均第1透過特性値は、5つの領域R1,R2,R3,R4,R5の第1透過特性値の平均値である。
【0025】
このような触媒コートフィルタ100は、ハニカム構造部10全体における触媒の担持量の平均値が100g/L以上であるため、従来の触媒コートフィルタに用いられる触媒の担持量を維持している。そのため、触媒コートフィルタ100は、排ガスの浄化性能が低下することがない。また、触媒コートフィルタ100は、流入端面側部分21及び流出端面側部分22からなり、流出端面側部分22が、流入端面側部分21と流出端面側部分22との合計の体積の20
〜80%を占めており、
流入端面側部分における触媒の担持量が、流出端面側部分における触媒の担持量より多く、且つ、条件(A)を満たすものである。そのため、触媒コートフィルタ100は、排ガスの浄化が可能であることに加え、流出端面側部分22において排ガスの流路が確保されることになり、圧力損失が低減される。
【0026】
図1は、本発明の触媒コートフィルタの一の実施形態のセルの延びる方向に平行に切断した断面を模式的に示す断面図である。
図2は、
図1に示す触媒コートフィルタの流出端面側部分におけるセルの延びる方向に直交する方向に切断した断面を模式的に示す断面図である。
図3は、
図2に示す触媒コートフィルタの流出端面側部分における隔壁の一部である部分Pを拡大して示す模式図である。なお、
図2及び
図3においては、触媒層16を省略している。
【0027】
本明細書において「平均細孔径」及び「気孔率」は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた画像解析により得られる画像から算出した値である。具体的には、以下のようにして算出した値である。まず、触媒コートフィルタを、セルの延びる方向に直交する方向に切断して断面を得る。次に、上記断面における任意の隔壁を複数選択してこれらの隔壁について走査型電子顕微鏡を用いて撮影して隔壁の断面画像を得る。その後、それぞれの隔壁の断面画像において、隔壁の厚さ方向に直交する方向に5等分して5つの領域を得る(
図3参照)。その後、それぞれの隔壁の各領域(5つの領域)において細孔(気孔)と隔壁とに分けて二値化するなどの画像解析を行って「平均細孔径」及び「気孔率」を測定する。
【0028】
本発明の触媒コートフィルタは、上述の通り条件(A)を満たすものである。即ち、本発明の触媒コートフィルタは、1つの隔壁内において、「排ガスを透過させるための領域」と「排ガスと触媒とを接触させるための領域」とを区別して設けている。具体的には、
図4では、例えば、領域R2が「排ガスを透過させるための領域」に相当し、領域R1が「排ガスと触媒とを接触させるための領域」に相当する。これらの「排ガスを透過させるための領域」と「排ガスと触媒とを接触させるための領域」とは、互いに近い距離に存在することが必要である。「排ガスを透過させるための領域」と「排ガスと触媒とを接触させるための領域」との距離が遠すぎると、多くの排ガスが「排ガスを透過させるための領域」を透過してしまい、排ガスと触媒とが接触し難くなり、排ガスの浄化率が悪くなってしまうためである。そこで、本発明の触媒コートフィルタは、上述の通り、1つの隔壁内において、「排ガスを透過させるための領域」と「排ガスと触媒とを接触させるための領域」とを設けている。
【0029】
このように、本発明の触媒コートフィルタは、条件(A)を満たすことにより、1つの隔壁内に「排ガスを透過させるための領域」と「排ガスと触媒とを接触させるための領域」とが存在することになる。そのため、本発明の触媒コートフィルタは、排ガスの浄化性能を低下させずに圧力損失を低減させることができる。なお、本明細書において「隔壁」は、1つのセルを区画形成する壁のことである。
図4は、
図3に示す隔壁を5等分して得られる5つの領域R1,R2,R3,R4,R5をそれぞれ拡大して示す模式図である。
図4に示すように、隔壁15には、複数の細孔3が形成され、この細孔3の内面3aに触媒を含む触媒層16が形成されている。「触媒が担持された後の隔壁の平均細孔径」は、
図4に示すように隔壁15に形成された細孔3の内面3aに触媒が担持された状態(触媒層16が形成された状態)における細孔3の径の平均値を意味する。即ち、排ガスの流路となる空洞部分の径の平均値のことである。また、「触媒が担持された後の隔壁の気孔率」は、上記「触媒が担持された後の隔壁の平均細孔径」と同様に、隔壁に形成された細孔の内面に触媒が担持された状態における細孔(気孔)の割合(空洞部分の割合)を意味する。
【0030】
本発明の触媒コートフィルタは、上記のように条件(A)を満たすものであればよい。この条件(A)を満たすためには、後述する本発明の触媒コートフィルタ用担体を好適に用いることができるが、例えば、従来公知のハニカム構造体(触媒コートフィルタ用担体)を用いてもよい。従来公知のハニカム構造体を用いる場合、1つの隔壁内に「排ガスを透過させるための領域」と「排ガスと触媒とを接触させるための領域」とが存在するようにするには、1つの隔壁内において触媒の担持量に差を設ける方法がある。即ち、1つの隔壁において隔壁の全部に均一に触媒を担持させるのではなく、触媒の担持量に分布を持たせて、1つの隔壁内の所定の領域においては触媒の担持量を小さくする。このようにすることで、排ガスの浄化性能を低下させずに圧力損失を低減させることができる。
【0031】
条件(A)において上記算出値(α)は、上述したように、50%以上であり、70%以上であることが好ましく、75〜150%であることが更に好ましい。上記算出値(α)を上記範囲とすることにより、隔壁を通過する排ガスの流路が確保され、かつ、排ガスと触媒との接触機会が保たれるため、圧力損失を低減することができ、排ガス浄化率を高く維持することができる。上記算出値(α)が50%未満であると、隔壁中における排ガスの流路が、排ガスが通過する流路として十分な空間が確保されないことになるため、圧力損失が増加するおそれがある。
【0032】
本発明の触媒コートフィルタは、上述の通り、流出端面側部分22が、流入端面側部分21と流出端面側部分22との合計の体積の20%以上を占めており、30〜80%を占めることが好ましく、60〜80%を占めることが更に好ましい。流出端面側部分22が、流入端面側部分21と流出端面側部分22との合計の体積における流出端面側部分22の体積が20%以上を占めることにより、隔壁中の排ガスの通過流路の数が十分に確保されるため、排ガスの流路の総面積が確保される。そのため、触媒コートフィルタの圧力損失の増大を抑制することができる。一方、20%未満であると、「排ガスを透過させるための領域」を有する隔壁が存在する流出端面側部分22の割合が少なくなるので排ガスの流路の総面積が減少し、圧力損失が増加してしまう。
【0033】
[1−1]ハニカム構造部:
ハニカム構造部10は、一方の端面である流入端面11aから他方の端面である流出端面11bまで延びて排ガスの流路となる複数のセル2を区画形成する隔壁15を有しているものである限り特に制限はない。本発明の触媒コートフィルタは、ハニカム構造部として以下の触媒コートフィルタ用担体(触媒コートフィルタにおけるハニカム構造部の好ましい態様)を備えることが好ましい。即ち、本発明の触媒コートフィルタのハニカム構造部は、隔壁の気孔率が55〜70%であり、隔壁の平均細孔径が15〜30μmであり、隔壁が、下記条件(B)を満たす触媒コートフィルタ用担体であることが好ましい。ハニカム構造部は、隔壁の少なくとも一部が条件(B)を満たせばよい。具体的には、ハニカム構造部は、触媒コートフィルタの流出端面側部分に相当する部分における隔壁が条件(B)を満たせばよい。また、ハニカム構造部は、流入端面から流出端面までの全部における隔壁が条件(B)を満たしてもよい。
条件(B):ハニカム構造部のセルの延びる方向に直交する断面において、隔壁を、隔壁の厚さ方向に直交する方向に5等分して5つの領域とする。下記式(3)及び下記式(4)により算出された算出値(β)が、10〜90%である。即ち、5つの領域を得た後、5つの領域のそれぞれにおいて下記式(3)で算出される値である第2透過特性値を算出する。その後、下記式(4)から算出値(β)を得たとき、算出値(β)が、10〜90%となる。
式(3);(前記隔壁の平均細孔径(μm))
2×(前記隔壁の気孔率(%))=第2透過特性値
式(4);((最大第2透過特性値−最小第2透過特性値)/平均第2透過特性値)×100=算出値(β)
式(4)中、最小第2透過特性値は、5つの領域の各第2透過特性値の中で最小の第2透過特性値である。最大第2透過特性値は、5つの領域の各第2透過特性値の中で最大の第2透過特性値である。平均第2透過特性値は、5つの領域の第2透過特性値の平均値である。
【0034】
この触媒コートフィルタ用担体をハニカム構造部として用いることにより、本発明の触媒コートフィルタを簡易に効率良く作製することができる。
【0035】
条件(B)において上記算出値(β)は、上述したように、10〜90%であることが好ましく、20〜90%であることが更に好ましく、60〜90%であることが特に好ましい。上記算出値(β)を上記範囲とすることにより、触媒を担持させた後において、隔壁を通過する排ガスの流路が確保され、かつ、排ガスと触媒との接触機会が保たれるため、圧力損失を低減することができ、排ガス浄化率を高く維持することができる。上記算出値(β)が10%未満であると、隔壁中における排ガスの流路が閉塞されることになるため、圧力損失が増加するおそれがある。一方、上記算出値(β)が90%超であると、触媒を担持させた後において、触媒と排ガスとの接触機会が十分でなくなり、排ガス浄化率が低下するおそれがある。
【0036】
ハニカム構造部の隔壁の気孔率は、55〜70%であることが好ましく、58〜68%であることが更に好ましく、60〜66%であることが特に好ましい。上記気孔率が55%未満であると、圧力損失が増加するおそれがある。一方、70%超であると、隔壁の強度が低下してしまうおそれがある。
【0037】
ハニカム構造部の隔壁の平均細孔径は、15〜30μmであることが好ましく、15〜25μmであることが更に好ましく、15〜23μmであることが特に好ましい。上記平均細孔径が15μm未満であると、圧力損失が増加するおそれがある。一方、30μm超であると、排ガス中の粒子状物質を捕集する捕集効率が低下するおそれがある。
【0038】
ハニカム構造部の隔壁の厚さは、75〜400μmであることが好ましく、145〜350μmであることが更に好ましく、250〜350μmであることが特に好ましい。上記隔壁の厚さが75μm未満であると、隔壁の強度が不足するとともに、排ガス中の粒子状物質の捕集効率が低下するおそれがある。一方、400μm超であると、圧力損失が増加するおそれがある。
【0039】
ハニカム構造部のセル密度は、15〜65セル/cm
2であることが好ましく、20〜50セル/cm
2であることが更に好ましく、30〜50セル/cm
2であることが特に好ましい。上記セル密度が15セル/cm
2未満であると、フィルタとしてのろ過面積が過小となり、排ガス中の微粒子状物質を捕集する捕集効率が悪化したり、圧力損失が増加したりするおそれがある。一方、65セル/cm
2超であると、圧力損失が増加するおそれがある。
【0040】
ハニカム構造部10の形状は、円柱状、楕円柱状、四角柱状、六角柱状などをとすることができる。これらの中でも、円柱状、四角柱状が好ましい。
【0041】
ハニカム構造部10(触媒コートフィルタ100)のセルの延びる方向の長さは、50〜400mmとすることができる。また、触媒コートフィルタ100の端面が円形である場合、端面の直径は、70〜400mmとすることができる。
【0042】
[1−2]目封止部:
目封止部12は、上述したように、ハニカム構造部10の所定のセル2である入口セル2aの流出端面11b側の開口部と残余のセル2である出口セル2bの流入端面11aの開口部とに配設されている。目封止部は、流入端面側及び流出端面側のいずれかの端部でセルを目封止するように形成されている限り、その配置状態は特に限定されるものではない。例えば、目封止部12は、
図1に示すように、入口セル2aと出口セル2bとが交互に配置されるように配設されることが好ましい。
【0043】
目封止部の材質は、ハニカム構造部を構成する隔壁の材質と同じものとすることができる。そのため、目封止部には、ハニカム構造部の隔壁と同様に複数の細孔(気孔)が形成され、目封止部の気孔率及び平均細孔径は、隔壁の上記気孔率及び平均細孔径と同じ範囲とすることができる。
【0044】
[1−3]触媒:
触媒は、排ガス浄化用の触媒であり、例えば、三元触媒、SCR触媒、NO
X吸蔵還元触媒、酸化触媒、金属置換ゼオライトを主成分とするNO
X選択還元触媒などを挙げることができる。
【0045】
触媒は、隔壁の表面及び隔壁に形成された細孔の内面に担持される。「隔壁に形成された細孔の内面」とは、隔壁に形成された細孔(気孔)を構成する壁の表面のことである。
【0046】
ハニカム構造部全体における触媒の担持量の平均値は、100g/L以上であり、100〜250g/Lであることが好ましく、100〜200g/Lであることが更に好ましく、100〜180g/Lであることが特に好ましい。上記触媒の担持量が100g/L未満であると、触媒の担持量が少なくなり過ぎるため、触媒コートフィルタにおける排ガスの浄化性能が低下する。ここで、「ハニカム構造部全体における触媒の担持量の平均値」は、触媒の担持前後における乾燥重量の差から触媒の総担持量を算出した後、触媒の総担持量を担体(ハニカム構造部全体)の容積で除した値のことである。即ち、触媒コートフィルタの流入端面側部分のみにおける触媒の担持量の平均値や、触媒コートフィルタの流出端面側部分のみにおける触媒の担持量の平均値を意味するものではない。別言すれば、触媒コートフィルタの流出端面側部分における触媒の担持量が100g/L未満であっても、流入端面側部分における触媒の担持量が100g/L超であり、触媒コートフィルタ全体としての触媒の担持量が100g/L以上であればよいことになる。
【0047】
[2]本発明の触媒コートフィルタの製造方法:
本発明の触媒コートフィルタは、以下のように製造することができる。即ち、本発明の触媒コートフィルタの製造方法は、セラミック材料及び造孔剤を含有する坏土をハニカム形状に成形し、焼成して、ハニカム構造部を作製するハニカム構造部作製工程を有する。ハニカム構造部は、一方の端面である流入端面から他方の端面である流出端面まで延びて排ガスの流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するものである。本発明の触媒コートフィルタの製造方法は、作製したハニカム構造部に目封止用スラリーを充填し、乾燥させて、ハニカム構造部に目封止部が配設された目封止ハニカム構造部を作製する目封止ハニカム構造部作製工程を有する。目封止用スラリーは、ハニカム構造部の所定のセルである入口セルの流出端面側の開口部と残余のセルである出口セルの流入端面の開口部とに充填する。本発明の触媒コートフィルタの製造方法は、目封止ハニカム構造部の隔壁の表面及び隔壁に形成された細孔の内面に触媒用スラリーを塗工し、乾燥させて、触媒コートフィルタを作製する触媒コートフィルタ作製工程を有する。触媒用スラリーは、排ガス浄化用の触媒を含有するものである。触媒コートフィルタは、ハニカム構造部の隔壁の表面及び隔壁に形成された細孔の内面に触媒を担持している。
【0048】
この触媒コートフィルタの製造方法によれば、本発明の触媒コートフィルタを簡易に製造することができる。
【0049】
[2−1]ハニカム構造部作製工程:
セラミック材料としては、コージェライト、炭化珪素、アルミニウムチタネート、窒化珪素、ムライトなどを挙げることができる。
【0050】
造孔剤としては、カーボン(カーボン粉)、発泡樹脂、デンプンなどを用いることができる。これらの中でも、粒子分布が様々な原料(粒子分布が様々な「カーボンからなる造孔剤の原料」)を入手し易く、また、粒子径を調整し易いため、カーボンが好ましい。
【0051】
造孔剤は、平均粒子径が20〜40μmであり、粒子分布が15〜100μmであるものを用いることができ、平均粒子径が25〜30μmであり、粒子分布が20〜40μmであるものを用いることが好ましい。
【0052】
平均粒子径が20〜40μm、粒子分布が15〜100μmで、カーボンからなる造孔剤を用いると、上記「触媒コートフィルタにおけるハニカム構造部の好ましい態様」のハニカム構造体を簡易に作製することができる。即ち、上記所定の条件を満たす造孔剤を用いると、本発明の触媒コートフィルタ用担体のハニカム構造部を簡易に作製することができる。なお、算出値(α)は、触媒スラリーに含まれる触媒の粒子径、具体的には三元触媒の場合にはアルミナ粒子径、SCR触媒の場合にはゼオライト粒子径等、及び、触媒用スラリーの粘性を調整することにより所望の値に調節することができる。スラリー粘性は、pHを変えることにより調節することができる。
【0053】
坏土は、押出成形法、射出成形法、プレス成形法等でハニカム構造を有するように成形することができる。
【0054】
[2−2]目封止ハニカム構造部作製工程:
ハニカム構造部に目封止用スラリーを充填するには、以下のように行うことができる。まず、ハニカム構造部の所定のセルの一方の端面(流入端面)の一部にマスクを施し、この端面側の端部を、目封止用スラリーが貯留された貯留容器中に浸漬して、マスクをしていないセルに目封止用スラリーを充填する。同様にして、ハニカム構造部の残余のセルの他方の端面(流出端面)の一部にマスクを施し、この端面側の端部を、上記目封止用スラリーが貯留された貯留容器中に浸漬して、マスクをしていないセルに目封止用スラリーを充填する。
【0055】
目封止用スラリーは、隔壁(ハニカム構造部)を形成する坏土と同じ材料を用いてもよいし、異なる材料を用いてもよい。具体的には、上記セラミック材料、界面活性剤、及び水を混合し、必要に応じて焼結助剤、造孔剤等を添加してスラリー状にしたものを用いることができる。
【0056】
目封止用スラリーの乾燥は、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等で行うことができる。
【0057】
[2−3]触媒コートフィルタ作製工程:
本工程において、触媒用スラリーは、排ガス浄化用の触媒を含有するものである。触媒としては、例えば、三元触媒、SCR触媒、NO
X吸蔵還元触媒、酸化触媒、金属置換ゼオライトを主成分とするNO
X選択還元触媒などを挙げることができる。
【0058】
触媒用スラリーは、触媒以外に、貴金属、触媒助剤、貴金属保持材料などを含有していてもよい。貴金属としては、例えば、白金、ロジウム、パラジウムなどを挙げることができる。触媒助剤としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、セリアなどを挙げることができる。
【0059】
触媒用スラリーを塗工する方法は、触媒用スラリーを吸引する方法や浸漬法などの従来公知の方法を採用することができる。触媒用スラリーを吸引する方法は、触媒用スラリーを充填した容器内に触媒コートフィルタ用担体の一方の端部を浸漬した後、他方の端部側から触媒用スラリーを吸引して隔壁の表面などに触媒用スラリーを塗工する方法である。本発明の触媒コートフィルタの製造方法においては、例えば、触媒コートフィルタ用担体の一方の端部を触媒スラリーに浸漬して流入端部側部分に触媒スラリーを塗工した後、他方の端部を触媒スラリーに浸漬して流出端部側部分に触媒スラリーを塗工する。また、浸漬法は、触媒用スラリーを充填した容器内に触媒コートフィルタ用担体を浸漬することによって、触媒コートフィルタ用担体のハニカム構造部のセルを区画形成する隔壁の表面などに触媒用スラリーを塗工する方法である。
【0060】
本発明の触媒コートフィルタの製造方法においては、触媒コートフィルタの流入端部側部分となる部分に塗工する触媒用スラリーの粘度と流出端部側部分となる部分に塗工する触媒用スラリーの粘度とを異ならせることが好ましい。「流入端部側部分となる部分に塗工する触媒用スラリー」の粘度は、「流出端部側部分となる部分に塗工する触媒用スラリー」の粘度より大きいことが好ましい。具体的には、触媒コートフィルタの「流出端部側部分となる部分」に塗工する触媒用スラリーの粘度は、1〜10Pa・sとすることが好ましく、2〜8Pa・sとすることが更に好ましい。また、触媒コートフィルタの「流入端部側部分となる部分」に塗工する触媒用スラリーの粘度は、5〜20Pa・sとすることが好ましく、8〜15Pa・sとすることが更に好ましい。本発明の触媒コートフィルタの製造方法では、本発明の触媒コートフィルタ用担体を用い、触媒用スラリーの粘度を上記範囲とし、更に、上記「触媒用スラリーを吸引する方法」を採用すると、簡易に効率良く本発明の触媒コートフィルタを作製することができる。
【0061】
触媒用スラリーの乾燥条件は、300〜600℃、0.5〜3時間とすることができる。触媒用スラリーの乾燥条件は、即ち、触媒用スラリーを塗工した触媒コートフィルタ用担体の乾燥条件である。
【0062】
[3]触媒コートフィルタ用担体:
本発明の触媒コートフィルタ用担体は、複数の細孔が形成された隔壁を有するハニカム構造部と、このハニカム構造部の所定のセルである入口セルの流出端面側の開口部と残余のセルである出口セルの流入端面側の開口部とに配設された目封止部と、を備えている。上記ハニカム構造部は、一方の端面である流入端面から他方の端面である流出端面まで延びて排ガスの流路となる複数のセルを区画形成する隔壁を有している。
【0063】
本発明の触媒コートフィルタ用担体のハニカム構造部は、隔壁の気孔率が55〜70%であり、隔壁の平均細孔径が15〜30μmである。更に、ハニカム構造部の隔壁は、下記条件(C)を満たす。
条件(C):ハニカム構造部のセルの延びる方向に直交する断面において、隔壁を、隔壁の厚さ方向に直交する方向に5等分して5つの領域とする。下記式(5)及び下記式(6)により算出された算出値(γ)が、10〜90%である。即ち、5つの領域を得た後、5つの領域のそれぞれにおいて下記式(5)で算出される値である第3透過特性値を算出する。その後、下記式(6)から算出値(γ)を得たとき、この算出値(γ)が、10〜90%となる。
式(5);(前記隔壁の平均細孔径(μm))
2×(前記隔壁の気孔率(%))=第3透過特性値
式(6);((最大第3透過特性値−最小第3透過特性値)/平均第3透過特性値)×100=算出値(γ)
式(6)中、最小第3透過特性値は、5つの領域の各第3透過特性値の中で最小の第3透過特性値である。最大第3透過特性値は、5つの領域の各第3透過特性値の中で最大の第3透過特性値である。平均第3透過特性値は、5つの領域の第3透過特性値の平均値である。
【0064】
このような触媒コートフィルタ用担体は、上述した本発明の触媒コートフィルタ用の担体として好適に用いることができ、この触媒コートフィルタ用担体を用いることによって、本発明の触媒コートフィルタを簡易に効率良く作製することができる。
【0065】
本発明の触媒コートフィルタ用担体において、上記算出値(γ)は、上記のように、10〜90%であり、20〜90%であることが好ましく、60〜90%であることが更に好ましい。上記算出値(γ)を上記範囲とすることにより、触媒を担持させる際に、触媒の分布を適度に不均一化(
図4参照)することを容易に達成できるため、排ガスが隔壁を通過する際の抵抗を低減することができる。即ち、触媒を担持させた後においても、排ガスを良好に透過させるための流路である適度に大きな径の細孔を隔壁内に残すことができる。そのため、圧力損失の増大を抑制することができる。更に、触媒の担持量を減らすことなく十分量担持させることができるため、排ガスの浄化率が維持される。上記算出値(γ)が10%未満であると、排ガスを良好に透過させるための流路である大細孔(径が大きな細孔)の割合が小さくなるため、圧力損失が増大する。一方、上記算出値(γ)が90%超であると、排ガスと触媒との接触機会が十分に得られなくなるため、排ガス浄化率が低下する。
【0066】
本発明の触媒コートフィルタ用担体の一の実施形態としては、上述した「触媒コートフィルタにおけるハニカム構造部の好ましい態様」のハニカム構造部、及び目封止部を備えるものを挙げることができる。
【実施例】
【0067】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0068】
[平均細孔径(μm)]
触媒コートフィルタを、セルの延びる方向に直交する方向に切断して断面を得る。この断面における隔壁を、SEMを用いて画像解析を行う。具体的には、上記断面において任意の3つの隔壁を選択し、それぞれの隔壁について、各隔壁の厚さ方向に直交する方向に5等分して5つの領域を得る(
図3参照)。その後、それぞれの隔壁の各領域(5つの領域)において気孔と隔壁とを二値化して画像解析を行い、平均細孔径(μm)を測定する。
【0069】
[気孔率(%)]
上記[平均細孔径(μm)]の測定で得られた隔壁の各領域(5つの領域)において気孔と隔壁とを二値化して画像解析を行い、気孔率(%)を測定する。
【0070】
(実施例1)
まず、触媒コートフィルタに用いるハニカム構造体(即ち、触媒コートフィルタ用担体)を作製した。具体的には、コージェライト化原料に、水、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチレングリコール、及び、造孔剤としてカーボンを添加して、成形用の坏土を調製した。上記分散媒の添加量は、コージェライト化原料100質量部に対して、35質量部とした。上記有機バインダの添加量は、コージェライト化原料100質量部に対して、6質量部とした。分散剤の添加量は、コージェライト化原料100質量部に対して、0.5質量部とした。造孔剤の添加量は、コージェライト化原料100質量部に対して、10質量部とした。また、造孔剤の平均粒子径は、30μmであり、粒子分布は、25〜70μmであった。
【0071】
上記コージェライト化原料は、平均粒子径4μmのタルクを38.9質量部、平均粒子径2μmのカオリンを40.7質量部、平均粒子径0.3μmのアルミナを5.9質量部、及び平均粒子径0.5μmのベーマイトを11.5質量部からなるものであった。なお、上記平均粒子径は、各粒子の粒子径分布におけるメジアン径(d50)のことである。
【0072】
次に、得られた坏土を押出成形してハニカム構造を有する円柱状のハニカム成形体を作製した。その後、作製したハニカム成形体の両端面を切断して、所定の寸法に整えた。その後、マイクロ波乾燥機で乾燥してハニカム乾燥体を得た。
【0073】
次に、得られたハニカム乾燥体の所定のセルである入口セルの流出端面側の開口部と残余のセルである出口セルの流入端面の開口部とに目封止用スラリーを充填した。その後、目封止用スラリーを充填したハニカム乾燥体をマイクロ波乾燥機で乾燥させ、1445℃で5時間焼成した。このようにして、ハニカム構造部の所定の位置に目封止部が配設されたハニカム構造体(触媒コートフィルタ用担体)を作製した。このハニカム構造体は、一方の端面である流入端面から他方の端面である流出端面まで延びて排ガスの流路となる複数のセルを区画形成する複数の細孔が形成された隔壁を有するハニカム構造部を備えていた。また、このハニカム構造体は、ハニカム構造部の所定のセルである入口セルの流出端面側の開口部と残余のセルである出口セルの流入端面の開口部とに目封止部が配設されていた。
【0074】
ハニカム構造体は、両端面の直径が144mm、セルの延びる方向の長さが152mmであった。ハニカム構造体の隔壁の厚さは、300μmであった。ハニカム構造体の気孔率は65%であった。ハニカム構造体の平均細孔径は20μmであった。ハニカム構造体のセル密度は47個/cm
2であった。最大第2透過特性値(表1中、「最大第2」と記す)は、12500μm
2×%であり、最小第2透過特性値(表1中、「最少第2」と記す)は、9300μm
2×%であり、平均第2透過特性値(表1中、「平均第2」と記す)は、10400μm
2×%であった。更に、算出値(β)は、30.5%であった。測定結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
次に、得られたハニカム構造体にSCR触媒としてCu置換ゼオライト触媒を担持して、触媒コートフィルタを作製した。ハニカム構造体にSCR触媒を担持する方法としては、「触媒用スラリーを吸引する方法」を採用した。
【0077】
具体的には、まず、SCR触媒を含む触媒スラリーを調製した。触媒スラリーは、流入端部側部分に担持させるもの(即ち「流入端部側部分となる部分に塗工する触媒用スラリー」)の粘度が8Pa・s、流出端部側部分に担持させるもの(即ち、「流出端部側部分となる部分に塗工する触媒用スラリー」)の粘度が5Pa・sとなるように水を加えてそれぞれ調節した。次に、「流入端部側部分に担持させるための触媒スラリー」を充填した容器内に、得られたハニカム構造体の流入端部を浸漬し、流出端部側から上記触媒スラリーを吸引した。このとき、触媒スラリーは、触媒コートフィルタの流入端面側部分に相当する位置まで吸引した。次に、「流出端部側部分に担持させるための触媒スラリー」を充填した容器内に上記ハニカム構造体の流出端部を浸漬し、流入端部側から上記触媒スラリーを吸引した。このとき、触媒スラリーは、触媒コートフィルタの流出端面側部分に相当する位置(流出端面側部分が、流入端面側部分と流出端面側部分との合計の体積の20%を占める位置)まで吸引した。その後、500℃で2時間、熱風乾燥を行い、触媒コートフィルタを作製した。
【0078】
作製した触媒コートフィルタは、流出端面側部分が、「流入端面側部分と流出端面側部分との合計の体積」の20%を占めていた(表2中、「流出端面側部分」と記す)。また、ハニカム構造体全体に担持されたSCR触媒の担持量の平均値が120g/Lであった(表2中、「触媒担持量の平均値」と記す)。更に、触媒コートフィルタの流入端面側部分のSCR触媒の担持量は、128g/Lであった。触媒コートフィルタの流出端面側部分のSCR触媒の担持量は、86g/Lであった。また、流出端面側部分の気孔率は、60%であった。流出端面側部分の平均細孔径は、17μmであった。最大第1透過特性値(表2中、「最大第1」と記す)は、19440μm
2×%であり、最小第1透過特性値(表2中、「最小第1」と記す)は、6480μm
2×%であり、平均第1透過特性値(表2中、「平均第1」と記す)は、13600μm
2×%であった。更に、算出値(α)は、95.3%であった。測定結果を表2に示す。
【0079】
作製した本実施例の触媒コートフィルタについて以下の[圧力損失]及び[NO
X浄化率]の各評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0080】
[圧力損失]
室温条件下において10m
3/分の流速で空気を触媒コートフィルタに流通させた。この状態で、触媒コートフィルタにおける空気流入端部の圧力と空気流出端部の圧力とを測定し、これらの差を算出した。この圧力の差を圧力損失とした。圧力損失の評価基準は、圧力損失が9kPa未満である場合には「OK」(合格)とする。圧力損失が9kPa以上である場合には「NG」(不合格)とする。
【0081】
[NO
X浄化率]
作製した触媒コートフィルタを排気量2リッターのガソリンエンジン搭載車両の排気系に搭載した場合と搭載しない場合の両方の場合について、米国規制(FTP)の規制運転モード(LA−4)を行った。その後、この米国規制の規制運転モード(LA−4)を行って測定された、触媒コートフィルタを搭載しない場合におけるバッグエミッション測定値と、触媒コートフィルタを搭載した場合におけるバッグエミッション値との比からNO
X浄化率を算出した。
【0082】
NO
X浄化率の評価基準は、NO
X浄化率が95%以上である場合には「OK」(合格)とする。NO
X浄化率が95%未満である場合には「NG」(不合格)とする。
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
(実施例2)
実施例2では、造孔剤の粒子分布の上限値を80μmに代えたこと(即ち、造孔剤の粒子分布を25〜80μmとしたこと)以外は、表1,2に示す条件を満たすようにして実施例1と同様に触媒コートフィルタを作製した。作製した触媒コートフィルタについて実施例1と同様にして[圧力損失]及び[NO
X浄化率]の各評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0086】
(実施例3)
実施例3では、造孔剤の粒子分布の下限値を15μmに代えたこと(即ち、造孔剤の粒子分布を15〜70μmとしたこと)以外は、表1,2に示す条件を満たすようにして実施例1と同様に触媒コートフィルタを作製した。作製した触媒コートフィルタについて実施例1と同様にして[圧力損失]及び[NO
X浄化率]の各評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0087】
(実施例4)
実施例4では、造孔剤の平均粒子径を25μmに変更したこと、及び「流入端部側部分となる部分に塗工する触媒用スラリー」の粘度を9Pa・sに変更したこと以外は、表1,2に示す条件を満たすようにして実施例1と同様に触媒コートフィルタを作製した。作製した触媒コートフィルタについて実施例1と同様にして[圧力損失]及び[NO
X浄化率]の各評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0088】
(比較例1)
比較例1では、造孔剤の粒子分布の下限値を10μmに代えたこと(即ち、造孔剤の粒子分布を10〜70μmとしたこと)以外は、表1,2に示す条件を満たすようにして実施例1と同様に触媒コートフィルタを作製した。作製した触媒コートフィルタについて実施例1と同様にして[圧力損失]及び[NO
X浄化率]の各評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0089】
(比較例2)
比較例2では、「流入端面側部分と流出端面側部分との合計の体積」に対する流出端面側部分の割合を2%に代えたこと以外は、表1,2に示す条件を満たすようにして実施例1と同様に触媒コートフィルタを作製した。作製した触媒コートフィルタについて実施例1と同様にして[圧力損失]及び[NO
X浄化率]の各評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0090】
(比較例3)
比較例3では、「流入端面側部分と流出端面側部分との合計の体積」に対する流出端面側部分の割合を5%に代えたこと以外は、表1,2に示す条件を満たすようにして実施例1と同様に触媒コートフィルタを作製した。作製した触媒コートフィルタについて実施例1と同様にして[圧力損失]及び[NO
X浄化率]の各評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0091】
(比較例4)
比較例4では、「流入端面側部分と流出端面側部分との合計の体積」に対する流出端面側部分の割合(以下、「流出端面側部分の割合」と記す)を8%に代えたこと以外は、表1,2に示す条件を満たすようにして実施例1と同様に触媒コートフィルタを作製した。作製した触媒コートフィルタについて実施例1と同様にして[圧力損失]及び[NO
X浄化率]の各評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0092】
(比較例5)
比較例5では、造孔剤の平均粒子径を35μm、粒子分布を30〜80μm、流出端面側部分の割合を25%としたこと以外は、表1,2に示す条件を満たすようにして実施例2と同様に触媒コートフィルタを作製した。なお、触媒用スラリーの粘度は上述した好ましい範囲外であった。作製した触媒コートフィルタについて実施例1と同様にして[圧力損失]及び[NO
X浄化率]の各評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0093】
実施例1〜4の触媒コートフィルタは、触媒の担持量を維持することにより排ガスの浄化性能が低下していないことが確認できた。また、実施例1〜4の触媒コートフィルタは、比較例1〜5の触媒コートフィルタに比べて、圧力損失が低減されていることが確認できた。