(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、模様が規則的に付与され、シート幅方向の位置によってその模様を構成するシート表面の凹凸および色彩のパターンが大きく異なる場合、上記の平均化処理を行っても、その処理条件によっては、シート幅方向において上記の模様に基づく影響が大きく残り、補正に適したデータが得られない場合がある。このような場合、シート画像を精度良く補正することができない。
【0005】
そこで、本発明は、上記従来の問題を解決するため、模様が規則的に付与され、シート幅方向の位置によってその模様を構成するシート表面の凹凸および色彩のパターンが大きく異なる場合でも、画像データを確実に精度良く補正することが可能な画像処理装置およびそれを用いた検査システム、ならびにシート画像の補正方法およびそれを用いたシートの検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る画像処理装置は、長手方向に沿って移動する長尺シートの幅方向の画像を用いて当該シートを検査する際に当該画像を処理する装置であって、
撮像手段で撮像されたシート幅方向の画像の複数を用いて、各画像のシート幅方向に並ぶ画素値の列を平均化し、シート幅方向に並ぶ平均画素値の列で構成される平均画像を得るための平均画像生成処理部と、
平均画像のシート幅方向に並ぶ平均画素値の列に基づいて最小二乗法により近似曲線Aを求めた後、近似曲線Aおよび平均画素値の列に基づいてロバスト回帰法により近似曲線Bを求める近似計算処理部と、
近似曲線Bの画素値が所定の画素値となるように、補正係数を求める補正係数算出処理部と、
補正係数を保存する記憶部と、
記憶部に保存された補正係数を用いてシート幅方向の画像を補正し、補正された画像に基づいてシートの欠陥を検出する欠陥検出処理部と、
を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項2に係る検査システムは、長手方向に沿って移動する長尺シートの幅方向の画像を用いたシートの検査システムであって、
請求項1に記載の画像処理装置と、
長手方向に沿って移動する長尺シートにおける幅方向の画像を撮像するための撮像手段と、
撮像手段で撮像される領域に光を照射するための光源と、
画像処理装置で検出されたシートの欠陥箇所をマーキングする出力装置と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項3に係るシート画像の補正方法は、長手方向に沿って移動する長尺シートの幅方向の画像を用いて当該シートを検査する際に当該画像を補正する方法であって、
撮像手段により撮像されたシート幅方向の画像を複数用い、各画像のシート幅方向に並ぶ画素値の列を平均化して、シート幅方向に並ぶ平均画素値の列で構成される平均画像を得る工程と、
平均画像のシート幅方向に並ぶ平均画素値の列に基づいて最小二乗法により近似曲線Aを求めた後、近似曲線Aおよび平均画素値の列に基づいてロバスト回帰法により近似曲線Bを求める工程と、
近似曲線Bの画素値が所定の画素値となるように、補正係数を求める工程と、
補正係数を用いてシートの幅方向の画像を補正する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項4に係るシートの検査方法は、長手方向に沿って移動する長尺シートの幅方向の画像を用いたシートの検査方法であって、
請求項3の方法によりシート幅方向の画像を補正する工程と、
補正された画像に基づいてシートの欠陥を検出する工程と、
検出されたシートの欠陥箇所をマーキングする工程と、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、模様が規則的に付与され、シート幅方向の位置によってその模様を構成するシート表面の凹凸および色彩のパターンが大きく異なる場合でも、画像データを確実に精度良く補正することが可能な画像処理装置およびそれを用いた検査システム、ならびにシート画像の補正方法およびそれを用いたシートの検査方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、長手方向に沿って移動する長尺シートの幅方向の画像を用いた、本発明のシートの検査システムの実施の形態を、
図1および2を参照しながら説明する。
【0013】
本発明の検査システムは、
長手方向に沿って移動する長尺シート5における幅方向の画像を撮像するための撮像手段1と、
撮像手段1で撮像される領域に光を照射するための光源4と、
撮像手段1で撮影された画像を処理するための画像処理装置2と、
画像処理装置1で検出されたシート5の欠陥箇所をマーキングする出力装置3と、
を備える。
【0014】
画像処置装置2は、
撮像手段で撮像されたシート幅方向の画像の複数を用いて、各画像のシート幅方向に並ぶ画素値の列を平均化し、シート幅方向に並ぶ平均画素値の列で構成される平均画像を得るための平均画像生成処理部21と、
平均画像のシート幅方向に並ぶ平均画素値の列に基づいて最小二乗法により近似曲線Aを求めた後、近似曲線Aおよび平均画素値の列に基づいてロバスト回帰法により近似曲線Bを求める近似計算処理部22と、
近似曲線Bの画素値が所定の画素値となるように、補正係数を求める補正係数算出処理部23と、
補正係数を保存する記憶部24と、
記憶部に保存された補正係数を用いてシート幅方向の画像を補正し、補正された画像に基づいてシート5の欠陥を検出する欠陥検出処理部25と、
を備える。
【0015】
撮像手段1には、受光素子がライン状に配置され、受光した光を電気信号に変換し、データを画像処理装置2に出力可能なラインセンサカメラが用いられる。ラインセンサカメラとしては、例えば、CCDカメラ、CMOSカメラが用いられる。
【0016】
画像処理装置2には、画像データを出力するためのモニター2aが接続されている。
光源4には、2つのライン照明が用いられている。
【0017】
検査システムは、さらに、長尺シート5の搬送速度を測定するロータリーエンコーダ6と、長尺シート5を移動させるための搬送手段7とを備える。
撮像手段1による撮像は、ロータリーエンコーダ6のパルスと、撮像手段1のシート幅方向のスキャンレートを同期させて行う。
【0018】
本発明では、補正係数の算出過程において、シート幅方向に並ぶ画素値の列のデータを用いてロバスト回帰法による近似計算処理を行うため、画素データの異常値(大きな誤差を生じる値)の影響を受け難い。このため、模様が規則的に付与され、シート幅方向の位置によってその模様を構成するシート表面の凹凸および色彩のパターンが大きく異なる場合でも、画像データを確実に精度良く補正することができる。その結果、シートの検査に対する信頼性を高めることができる。
【0019】
また、本発明では、上記のように画素データの異常値の影響を受け難いため、
図1の撮像ライン8(撮像手段1がシート5の幅方向にスキャンする長さ)のように、撮像ラインを長尺シート5の幅よりも長く設定することができる。すなわち、シート5の幅方向の両端よりはみ出して撮像することができる。シートの移動に伴いシートが蛇行する場合でも、撮像手段1の撮像範囲からシート5の一部が、はみ出すことがなく、シート5の幅方向のすべてを確実に撮像することができ、シートの検査に対する信頼性を高めることができる。
【0020】
また、長手方向に沿って移動する長尺シートの幅方向の画像を用いた、本発明のシートの検査方法の実施の形態を、
図3および4を参照しながら説明する。
本発明の長尺シートの検査方法は、
長手方向に沿って移動する長尺シートの幅方向の画像を補正する工程と、
補正された画像に基づいてシートの欠陥を検出する工程(S7)と、
検出されたシートの欠陥箇所をマーキングする工程(S8)と、
を含む。
【0021】
長手方向に沿って移動する長尺シートの幅方向の画像を補正する工程は、
補正係数を求める工程(S2、S5)と、
補正係数を用いてシート幅方向の画像を補正する工程(S6)と、
を含む。
【0022】
補正係数を求める工程(S2、S5)は、
撮像手段により撮像されたシート幅方向の画像を複数用い、各画像のシート幅方向に並ぶ画素値の列を平均化して、シート幅方向に並ぶ平均画素値の列で構成される平均画像を得る工程(S21)と、
平均画像のシート幅方向に並ぶ平均画素値の列に基づいて最小二乗法により近似曲線Aを求めた後、近似曲線Aおよび平均画素値の列に基づいてロバスト回帰法により近似曲線Bを求める工程(S22)と、
近似曲線Bの画素値が所定の画素値となるように、補正係数を求める工程(S23)と、を含む。
【0023】
本発明の長尺シートの検査方法の具体的に説明する。
前処理として、撮像手段1を用いて、長手方向に沿って移動する長尺シート5を撮像し、平均化処理に必要な複数のシート幅方向の画像を取得する(S1)。
撮像手段1は、受光した光を電気信号に変換し、そのデータを画像処理装置2に出力する(L1)。撮像手段1による撮像は、ロータリーエンコーダ6のパルスと、撮像手段1のシート幅方向のスキャンレートを同期させて行う(L3)。
【0024】
(S1)で得られた画像を用いて、補正係数を求める(S2)。
具体的には、(S1)で得られた画像を用い、各画像のシート幅方向に並ぶ画素値の列を平均化して、シート幅方向に並ぶ平均画素値の列で構成される平均画像を得る(S21)。
例えば、長手方向の任意の位置Lpにおける幅方向Qの各位置(W
p−1、W
p−2、・・・、W
p−r)に対する画素値の列を(V
p−1、V
p−2、・・・、V
p−r)とすると、長手方向の複数の位置L
p(P=1、2、・・・、n)に対するシート幅方向の平均画素値の列は、(V
p−1の平均値、V
p−2の平均値、・・・、V
p−rの平均値)で表される。幅方向Qの位置rの画素値V
p−rの平均値は、(V
1−r+V
2−r+・・・+V
n−r)/nで表される。
【0025】
平均画像のシート幅方向に並ぶ平均画素値の列に基づいて最小二乗法により近似曲線Aを求めた後、近似曲線Aおよび平均画素値の列に基づいてロバスト回帰法により近似曲線Bを求める(S22)。
【0026】
ロバスト回帰法では、例えば、TukeyのBiweight推定法が用いられる。
例えば、得られた平均画像のシート幅方向の各位置に対する画素値の列を、最小二乗法によりm次の多項式:y=a
0+a
1x+a
2x
2+・・・+a
mx
mに関数近似して、m次の近似曲線Aを求める。
そして、画素値の列と、得られた近似曲線Aとの誤差dを用いて、誤差dが大きいほど、最小二乗に与える影響が小さくなるように下記に示す式(1)のように重みw(d)を与える。
w(d)={1−(d/D)
2}
2、かつ|d|≦D、または
W(d)=0、かつ|d|>D ・・・(1)
そして、誤差dの許容範囲Dを小さくしながら、誤差dが少なくなるまで繰り返し近似計算を行い、より画素値の列に近づいた近似データの列を得る。
上記のロバスト回帰法を用いることで、平均画像に存在する色の変動などの大きな誤差の影響を受け難い処理が可能となる。
【0027】
近似曲線Bの画素値が所定の画素値となるように、補正係数を求める(S23)。
所定の画素値としては、画素値が最も大きいシート幅方向の中央付近の値を用いるのが好ましい。例えば、
図5の場合、曲線13の中央付近の画素値を用いるのが好ましい。
求めた補正係数を記憶部24に保存する(S24)。
【0028】
ここで、
図5は、本発明の検査方法における画像処理の一例を示す。
図5中の破線は、撮像手段1にて得られたシート幅方向の画像値の列のデータ14を示す。異常値(大きな誤差を生じる値)に対する影響の度合いをみるために、中央付近に意図的に異常値が出る状態で撮像した。
図5中の破線の一部11aにおいて、それ以外の部分と画素値の大きなずれを生じている。
図5中の一点鎖線は、画素データを最小二乗法により近似した曲線12(近似曲線A)を示す。
図6中の実線は、破線の画素データをロバスト回帰法により近似した曲線13(近似曲線B)を示す。近似曲線13は、近似曲線12と比べて、中央付近の異常値を排除して近似されており、異常値の影響を受けていないことがわかる。
図1のように、撮像ライン8がシート1からはみ出して設定された場合でも、その部分の異常値を排除して画素データが近似される。この近似曲線に基づいて補正係数が求められるため、シートの検査を精度良く行うことができる。
【0029】
シート5の検査開始以降は、撮像手段1を用いて、長手方向に沿って移動する長尺シート5を撮像し、シート幅方向の画像を逐次取得する(S3)。平均画像を得るのに必要な数以上の画像が蓄積されると(S4)、検査用画像を補正用画像として用いて、上記の(S2)と同じ補正係数算出処理を行い、補正係数のデータを更新する(S5)。
更新された補正係数を記憶部24に保存する(S24)。
【0030】
検査用画像に対して、記憶部24に保存された補正係数を用いてシート幅方向の画像を補正する(S6)。
補正された画像に基づいてシートの欠陥を検出する(S7)。例えば、補正された画像に対して色情報の閾値を用いてシートの欠陥を検出する。
【0031】
検出されたシートの欠陥箇所をマーキングする(S8)。
例えば、画像処理装置1は、検出したシート5の欠陥箇所に関するデータを出力装置3へ出力し(L2)、出力装置3により欠陥箇所がマーキングされる。
【0032】
上記の一連の処理工程を検査の終了命令が出されるか製造が終了するまで、繰り返し実施する。
【0033】
シートの検査開始以降も、画像を取り込んで逐次補正係数を更新し、更新した補正係数を検査用画像の検査に反映させることができる。よって、経時的に照明環境が変化する場合であっても、インラインにおいてシートの欠陥を精度良く検出することができる。