特許第6091291号(P6091291)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社相馬光学の特許一覧

<>
  • 特許6091291-パルス光源用分光測定装置 図000002
  • 特許6091291-パルス光源用分光測定装置 図000003
  • 特許6091291-パルス光源用分光測定装置 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6091291
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】パルス光源用分光測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/36 20060101AFI20170227BHJP
   G01M 11/00 20060101ALI20170227BHJP
   G01J 1/00 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   G01J3/36
   G01M11/00 T
   G01J1/00 F
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-73748(P2013-73748)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-199185(P2014-199185A)
(43)【公開日】2014年10月23日
【審査請求日】2016年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】591060245
【氏名又は名称】株式会社相馬光学
(74)【代理人】
【識別番号】100097548
【弁理士】
【氏名又は名称】保立 浩一
(72)【発明者】
【氏名】指田 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】大倉 力
【審査官】 塚本 丈二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−169492(JP,A)
【文献】 特表2000−504841(JP,A)
【文献】 特開2010−171632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00−3/52
G01J 1/00
G01M 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス光源を使用して分光特性を測定するパルス光源用分光測定装置であって、
パルス光源からの光を分光する分光素子と、
分光素子で分光された各波長のパルス光が入射する測定用センサと、
測定用センサからの出力値を記憶する記憶手段と、
パルス光源の発光があったことを検知するための発光検知用センサと、
測定結果を取得する測定結果取得手段と、
記憶手段及び測定結果取得手段の動作についての設定を行う設定手段と
を備えており、
記憶手段は、1番目からn番目のn個の記憶領域からなる記憶部を備え、測定用センサの最短読み出し時間と同じか又はそれ以上の長さの繰り返し周期Tで測定用センサからの出力値を記憶する繰り返し記憶を行うものであり、
繰り返し記憶は、1番目の記憶領域に出力値を記憶した後、繰り返し周期T後に2番目の記憶領域に出力値を記憶し、これを繰り返し、最後となるn番目の記憶領域に出力値を記憶した後、次のT秒後には最初の1番目の記憶領域に出力値を記憶するものであって、さらに、同様に2番目の記憶領域からn番目の記憶領域への出力値の記録を行うことで、1番目からn番目までの記憶領域への出力値の記録を繰り返すものであり、
設定手段は、測定終了タイミング設定と、測定結果取得スパン設定とが可能なものであって、
測定終了タイミング設定は、発光検知用センサからの出力に従ってパルス発光があったと判断されてからの経過時間又はパルス発光があったと判断されてから出力値を記憶する記憶領域数で測定終了のタイミングを設定するものであり、
測定結果取得スパン設定は、パルス発光があったと判断された時刻を基準にした時間帯又は記憶領域数の形で測定結果取得のスパンを設定するものであり、
測定結果取得手段は、発光検知用センサからの出力に従ってパルス発光があったと判断された際、設定手段で設定された測定終了タイミング設定に従って繰り返し記憶を終了させるとともに、設定手段で設定された測定結果取得のスパンに従って各記憶領域から出力値を読み出して測定結果とするものであることを特徴とするパルス光源用分光測定装置。
【請求項2】
前記設定手段は、前記測定結果取得のスパンを、前記パルス発光があったと判断された時刻よりも前の時間又は前の時間において出力値が記憶された記憶領域を含んだ形で設定することが可能となっていることを特徴とする請求項1記載のパルス光源用分光測定装置。
【請求項3】
前記パルス光源からの光を受光する受光ユニットを備えており、
受光ユニットは、受光用光学素子を有しており、
前記発光検知用センサは、受光用光学素子を保持した枠体に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のパルス光源用分光測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の発明は、パルス光源を使用して分光特性を測定する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
分光測定は、対象物の波長毎の光特性を分析したり、光源の分光放射特性(分光放射照度、分光放射輝度、分光放射束など)を測定したりする際にしばしば行われる。分光測定は、波長毎の光強度を測定するものであるため、グレーティング(回折格子)のような分光素子を使用する。波長毎の光強度を検出するセンサ(以下、測定用センサという)には、フォトダイオードやCCD等の光センサが使用されるが、多数のセンサ素子を一列に並べ、各波長の光強度を一度に検出するアレイセンサを使用する場合も多くなってきている。
【0003】
このような分光測定の対象とするものの一つに、太陽電池評価用のソーラーシミュレータが挙げられる。太陽電池評価用のソーラーシミュレータは、太陽電池の研究開発や太陽電池の出荷検査等において使用されるもので、太陽光と近似したスペクトルの人工的な光を太陽電池に照射し、分光発電特性を測定する。連続光を照射する場合に比べ電力消費が少ないことから、光源としてはキセノンフラッシュランプのようなパルス発光の光源が使用される。太陽電池の評価を十分に行うには、光源の発光スペクトルが太陽光に十分に近似している必要があるため、分光測定装置を使用して予め光源の発光スペクトルをチェックすることが行われる。この他、例えば、カメラ用のフラッシュランプの開発や出荷検査等の際にも、光源の分光特性の測定が行われる。
【0004】
このようなパルス光源を使用した分光特性の測定においては、パルス発光のタイミングで精度良く測定用センサからの出力を取得する必要がある。このための技術としては、特許文献1に開示されているように、パルス発光を測定用センサとは別の光センサで検知し(以下、このセンサを発光検知用センサという)、発光検知用センサからの出力でタイミングを取るのが一般的である。具体的には、発光検知用センサからの出力に対してある閾値を設定し、閾値を超えた段階でパルス発光があったと判断し、測定用センサを動作させて測定を開始する。
【0005】
発光検知用センサを使用する場合の他、パルス光源の点灯回路から制御信号を出力してもらい、それに従って測定用センサの動作を開始させることも考えられる。しかしながら、通常、パルス光源やその点灯回路は光源装置として光源メーカーから提供され、分光器や測定用センサを含む分光測定装置は別のメーカーから提供されるため、パルス光源の点灯回路からの出力で測定用センサの動作を制御することは一般的に難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−189492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、特許文献1において、パルス発光のタイミングを発光検知用センサで検出し、その出力がある閾値を超えた段階でパルス発光があったと判断して測定用センサを動作させることが提案されている。
しかしながら、特許文献1の技術の場合、パルス発光があってからその強度がある閾値を超えるまでの時間、また閾値を超えたとされてから測定用センサが動作を開始するまでの時間については、測定値を得ることはできない。これらの時間帯は、パルス発光があってその強度が十分な値に達するまでの時間帯であるから、測定ができなくても問題はないという考えもあり得る。しかしながら、測定によっては、発光が始まったばかりの非常に弱い光の状態から分光特性のデータを得たい場合もある。特許文献1の技術では、このような要請に応えることができない。
【0008】
また、発光が始まって発光が終わるパルスの一つの周期において、発光がピークに達する時間帯の一点において分光測定を行うのではなく、一つのパルスの周期においてある時間帯を設定し、その時間帯で変化する光強度において分光測定をしたい場合もある。つまり、ある最適な一点の時刻における分光特性だけではなく、その前後の時刻における分光測定も含め、ある時間帯での分光特性を測定したい場合もある。特許文献1の技術では、閾値を越えたと判断されてからある遅延時間を設定して測定用センサを動作させているものの、一点の時刻における分光特性の測定に終始しており、上記要請に応えることができない。
【0009】
さらに、発光検知用センサの出力によってパルス発光があったと判断してから測定用センサを動作させる方法であると、発光検知用センサの感度、閾値の大きさ、測定用センサの応答時間などのため、測定までには一定のタイムラグがどうしても発生する。設定する遅延時間をゼロにしても、素子や回路の応答時間の関係からタイムラグはゼロにはできず、一定時間経過してから測定される形にならざるを得ない。この場合、カメラ用フラッシュランプで採用されることのある非常に短いパルス幅のパルス光源(例えばμ秒オーダーのパルス幅)の場合、発光検知用センサで発光を検知してから測定用センサを動作させる形であると、測定用センサが動作する前にパルスのピークが過ぎてしまうこともあり得る。つまり、特許文献1の方法は、パルス幅の短いパルス光源を対象とした分光測定には不向きの方法ということである。
【0010】
本願の発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、パルス光源を使用した分光測定において、1つのパルス発光について最適な時間帯において分光測定することを可能にするものであって、パルス幅の短い光源についても最適な時間帯で分光測定することが可能な分光測定技術を提供する意義を有する発明である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、パルス光源を使用して分光特性を測定するパルス光源用分光測定装置であって、
パルス光源からの光を分光する分光素子と、
分光素子で分光された各波長のパルス光が入射する測定用センサと、
測定用センサからの出力値を記憶する記憶手段と、
パルス光源の発光があったことを検知するための発光検知用センサと、
測定結果を取得する測定結果取得手段と、
記憶手段及び測定結果取得手段の動作についての設定を行う設定手段と
を備えており、
記憶手段は、1番目からn番目のn個の記憶領域からなる記憶部を備え、測定用センサの最短読み出し時間と同じか又はそれ以上の長さの繰り返し周期Tで測定用センサからの出力値を記憶する繰り返し記憶を行うものであり、
繰り返し記憶は、1番目の記憶領域に出力値を記憶した後、繰り返し周期T後に2番目の記憶領域に出力値を記憶し、これを繰り返し、最後となるn番目の記憶領域に出力値を記憶した後、次のT秒後には最初の1番目の記憶領域に出力値を記憶するものであって、さらに、同様に2番目の記憶領域からn番目の記憶領域への出力値の記録を行うことで、1番目からn番目までの記憶領域への出力値の記録を繰り返すものであり、
設定手段は、測定終了タイミング設定と、測定結果取得スパン設定とが可能なものであって、
測定終了タイミング設定は、発光検知用センサからの出力に従ってパルス発光があったと判断されてからの経過時間又はパルス発光があったと判断されてから出力値を記憶する記憶領域数で測定終了のタイミングを設定するものであり、
測定結果取得スパン設定は、パルス発光があったと判断された時刻を基準にした時間帯又は記憶領域数の形で測定結果取得のスパンを設定するものであり、
測定結果取得手段は、発光検知用センサからの出力に従ってパルス発光があったと判断された際、設定手段で設定された測定終了タイミング設定に従って繰り返し記憶を終了させるとともに、設定手段で設定された測定結果取得のスパンに従って各記憶領域から出力値を読み出して測定結果とするものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、前記請求項1の構成において、前記設定手段は、前記測定結果取得のスパンを、前記パルス発光があったと判断された時刻よりも前の時間又は前の時間において出力値が記憶された記憶領域を含んだ形で設定することが可能となっているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項3記載の発明は、前記請求項1又は2いずれかの構成において、前記パルス光源からの光を受光する受光ユニットを備えており、
受光ユニットは、受光用光学素子を有しており、
前記発光検知用センサは、受光用光学素子を保持した枠体に設けられているという構成を有する。
【発明の効果】
【0012】
以下に説明する通り、本願の請求項1記載の発明によれば、パルス発光があったと判断された時刻を基準にした時間帯又は記憶領域数の形で測定結果取得のスパンを設定するので、発光があったとされる時刻を含む最適な時間帯について測定結果を得ることができる。また、パルス幅の短い光源についても最適な時間帯で分光特性の測定結果を得ることができる。
また、請求項2記載の発明によれば、上記効果に加え、パルス発光があったとされた時刻よりも前の段階での出力値を測定結果に含めることができるので、パルス発光の強度が非常に弱い初期の段階での分光特性を測定することが可能となる。
また、請求項3記載の発明によれば、上記効果に加え、受光ユニットに発光検知用センサが設けられているので、装置のセッティングが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本願発明の実施形態に係るパルス光源用分光測定装置の概略図である。
図2】1に示す受光ユニット51の斜視概略図である。
図3図1に示す装置の記憶手段及び測定結果取得の構成について概念的に示した図であり、タイミングチャートと記憶部71の構造について概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本願発明を実施するための形態(実施形態)について説明する。
図1は、本願発明の実施形態に係るパルス光源用分光測定装置の概略図である。図1に示す装置は、パルス光源を使用して分光測定する装置であり、一例として分光放射照度を測定する装置となっている。図1に示す装置は、パルス光源1からの光を分光する分光素子2と、分光素子2で分光された各波長のパルス光が入射する測定用センサ3と、測定用センサ3からの出力値を記憶する記憶手段と、パルス光源1の発光があったことを検知するための発光検知用センサ4と、発光検知用センサ4からの出力に従い、記憶手段が記憶した出力値から測定結果を取得する測定結果取得手段と、記憶手段や測定結果手段の動作についての設定を行う設定手段とを備えている。
【0015】
パルス光源1は、この装置で分光放射特性が測定される対象物である。この実施形態では、前述したソーラーシミュレータ10の分光特性をチェックするための装置となっており、パルス光源1は、ソーラーシミュレータ10が内蔵したものとなっている。
ソーラーシミュレータ10は、キセノンフラッシュランプのような太陽光に近似した発光スペクトルのパルス光源1、集光ミラー101、エアマスフィルタのようなフィルタ102等を内蔵している。
【0016】
図1に示す分光測定装置は、分光素子2にパルス光源1からの光を最適に入射させるための入射光学系5を備えている。入射光学系5は、パルス光源1からの光を受ける位置に配置される受光ユニット51と、受光ユニット51で受光された光を分光素子2まで導く光ファイバ52等から構成されている。
図2は、図1に示す受光ユニット51の斜視概略図である。図1及び図2に示すように、受光ユニット51は、枠体511と、枠体511に保持された拡散板512等から構成されている。枠体511は、光ファイバ52の入射端を保持した入射端保持部513を有している。
【0017】
拡散板512は、パルス光源1からの光の照度分布の影響を受けずに精度良く測定を行うためのものである。拡散板512には、この実施形態では反射型のものが使用されているが、透過型のものが使用されることもある。拡散板512は、標準反射板即ち波長によらずに均一な反射率(又は透過率)を有するものであることが望ましい。例えば、ラブスフェア社製のスペクトラロン反射板等を使用することができる。
【0018】
光ファイバ52は、測定波長域の全域に亘って十分な透過性を有するコア材料で形成されたものが望ましい。また、透過率の波長依存性が少ないものを使用することが望ましい。このような光ファイバ52は、分光測定用として各社から市販されているので、適宜選択して使用できる。図2に示すように、光ファイバ52の入射端は、枠体511によって保持されており、拡散板512で反射、拡散したパルス光が入射する姿勢となっている。
また、この実施形態では、発光検知用センサ4は、受光ユニット51に設けられている。図2に示すように、枠体511の受光面には、小さな開口が設けられており、この開口を通して受光するように発光検知用センサ4が枠体511に内蔵されている。
【0019】
一方、図1に示すように、装置は、分光素子2や測定用センサ3を内部に収容した筐体6を有している。筐体6には、光ファイバ52の出射端を保持した出射端保持部61が設けられている。出射端保持部61は、光ファイバ52の出射端が分光素子2に対して最適な位置及び姿勢となるよう保持するものである。
【0020】
分光素子2には、回折格子(グレーティング)が使用される。例えば、溝数300本/mm、ブレイズ波長400nm程度の回折格子が使用される。波長域を分担させるため、複数の分光素子2を使用する場合もある。
分光素子2は、分光用光学系20の一部として設けられている。この実施形態では、ツェルニーターナー形の光学系が採用されており、入射スリット53からの光を平行光にして分光素子(回折格子)1に照射する第一凹面鏡201と、分光素子(回折格子)1で分光された各波長の光を測定用センサ3の各センサ素子に集光して入射させる第二凹面鏡202とを備えた構成となっている。この他、ファスティ・エバート形等の他のタイプの分光用光学系を採用することも可能である。
【0021】
測定用センサ3としては、本実施形態では、リニアアレイセンサが使用されている。リニアアレイセンサは、フォトダイオード又はCCD等の光電変換素子を一列に並べたセンサである。各センサ素子は、分光された各波長の光をそれぞれ光電変換して強度を出力するものであり、分光素子2の分解能や測定する波長域に応じて各素子の受光面の幅や素子の数が決められる。例えば、シリコンフォトダイオードを2048個程度並べたリニアアレイセンサが測定用センサ3として使用される。
【0022】
尚、測定用センサ3は、分光素子2との関係で最適な位置及び姿勢で配置される。即ち、分光素子2によって分光された各波長の光がそれぞれ到達する位置に各センサ素子が位置するよう配置される。
また、リニアアレイセンサである測定用センサ3は、各センサ素子の出力値(光電変換された値)をある長さの時間で蓄積して(積分して)読み出し可能とする。この時間は、測定用センサ3から信号を読み出すことが可能な最短の時間であり、以下、最短読み出し時間と呼ぶ。
【0023】
記憶手段、測定結果取得手段及び設定手段は、この実施形態では、プログラマブルロジックデバイス(PLD)7によって実現されている。PLD7は、記憶部や演算処理部、各種制御回路を含むものであり、以下の機能が発揮されるように各回路が定義、構成される。
より具体的に説明すると、筐体6内には、PLD7を搭載した制御ボードが設けられている。PLD7は、記憶部71と、測定用センサ3からの出力値の記憶部71への記憶動作を制御する記憶制御回路72と、記憶部71に記憶された出力値から測定結果を取得する測定結果取得回路73と、測定結果の取得のためにスパンを設定するスパン設定回路74と、発光検知用センサ4からの出力に従ってイベント信号を発生するイベント発生回路75等を備えている。尚、測定用センサ3や発光検知用センサ4は、各々ADコンバータ771,772を介してPLD7に接続されている。
【0024】
図1に示すように、記憶部71は、出力値を記憶する多数の記憶領域711を有している。
図3は、図1に示す装置の記憶手段及び測定結果取得手段の構成について概念的に示した図であり、タイミングチャートと記憶部71の構造について概略的に示した図である。この実施形態の装置は、測定用センサ3を常時動作させるようになっており、測定用センサ3からの出力を所定の周期で読み出しながら各記憶領域711に順次記憶する。以下、この周期を繰り返し周期Tと呼ぶ。繰り返し周期Tは、測定用センサ3の最短読み出し時間と同じかそれ以上の長さである。
【0025】
測定用センサ3は、最短読み出し時間の時間内で信号を蓄積して出力値として読み出し可能とする。記憶制御回路72は、繰り返し周期Tのたびごとに測定用センサ3から出力値を読み出す。読み出された出力値は、ADコンバータ771を介してPLD7に送られ、記憶制御回路72は、送られた出力値を、各記憶領域711に順次記憶するよう定義されている。即ち、記憶領域711を1番目の記憶領域からn番目の記憶領域とした場合、記憶制御回路72は、最初に1番目の記憶領域711に出力値を記憶し、繰り返し周期T秒の後に2番目の記憶領域711に出力値を記憶する。これを繰り返してn番目の記憶領域まで順次出力値を記憶した後、次のT秒後には1番目の記憶領域に出力値を上書き記憶する。そして、同様に2番目の記憶領域から順次出力値の上書き記録を行う。このような繰り返し記憶を行うよう記憶制御回路72が定義されている。
【0026】
説明の都合上、1番目からn番目までのT秒毎の出力値の記憶領域を図3に概念的に示す。記憶部71は、各記憶領域711が時計のように円周状に連なったものと観念されるものである。この実施形態では、記憶領域711は1024個であり、繰り返し周期Tは1ミリ秒程度である。したがって、1番目からn番目の記憶領域へのn個のデータを記録する時間は1秒程度となっている。
【0027】
図3に示すように、各記憶領域711に記憶される一つの出力値は、測定用センサ3の全センサ素子から出力値であり、全波長(λ〜λ)の測定値(スペクトル)である。 つまり、記憶部71には、1番目の記憶領域711から1024番目の記憶領域711までで合計1024個のスペクトルが記録されている。各スペクトルは、T秒毎の各時刻での出力値があり、1からn番目の一つの記憶領域に着目すれば、1サイクルの周期で繰り返し上書きされている。
【0028】
特定の時刻においてm番目(1<m<1024)の記憶領域711にスペクトルが記憶されたとすると、その時刻において各記憶領域711に記憶されている各スペクトルを経過順(古い順)に並べてみると、m+1番目〜1024番目の記憶領域711の順となり、それに続いて、1〜m番目の記憶領域711の順となる。このような周期T秒毎に出力値(スペクトル)を順次記憶領域711に記憶する動作を繰り返す。
【0029】
記憶制御回路72は、装置の稼働が開始された後、上記繰り返し記憶を連続して行うようになっている。そして、測定結果取得手段は、設定手段における測定終了タイミングの設定に従って、繰り返し記憶を停止させるようになっている。以下、この点について説明する。
まず、PLD7には、ADコンバータ712を介して発光検知用センサ4の出力が常時入力されている。PLD7は、イベント発生回路75を備えている。イベント発生回路75は、発光検知用センサ4の出力についてある閾値を設定し、この閾値を超えた場合にイベント信号を発生させる回路となっている。イベントとは、パルス発光があったと判断されたことを意味し、イベント信号が発生した時刻(イベント時刻)が、パルス発光があったとされた時刻である。
【0030】
また、PLD7は、設定手段を構成するものとして、終了タイミング設定回路76を備えている。終了タイミング設定回路76は、イベント時刻に従って繰り返し記憶の終了のタイミングを設定する回路である。終了のタイミングは、イベント時刻からの経過時間、又はイベント時刻の後に出力値を記憶する記憶領域数(繰り返し周期Tの個数)で設定される。終了タイミング設定回路76は、外部入力によって設定された終了タイミングの情報を保持する回路を含んでおり、この情報は、記憶制御回路72に常時入力される。
【0031】
一方、イベント発生回路75が発生させたイベント信号は、記憶制御回路72に入力されるようになっている。記憶制御回路72は、イベント信号の入力があった際、終了タイミング設定回路76から入力されている情報を参照し、設定されている経過時間が経過した際又は設定されている記憶領域数分の出力値の記憶が終了した際、繰り返し記憶の動作を終了するよう定義づけされている。即ち、設定経過時間の終了後又は設定数の記憶領域への出力の終了後は、記憶制御回路72は、測定用センサ3からの出力値の読み出しは行わず、従って次の記憶領域711についての出力値の更新記憶は行われない。
【0032】
PLD7は、このようにして繰り返し記憶の動作を終了した後、測定結果取得回路73を動作させて測定結果を取得するよう定義づけされている。図1に示すように、PLD7は、設定手段と構成するものとして、スパン設定回路74を備えている。スパン設定回路74は、測定結果(測定値となる出力値)を取得するスパンの設定回路である。スパンとは、ある長さの時間帯又はある個数の連続した記憶領域である。スパン設定回路は、時間帯の長さ又は記憶領域の個数として外部から入力されるスパン設定の情報を保持する回路を含む。
【0033】
このようなスパン設定は、イベント時刻を基準にして行われる。例えばスパン設定が時間帯の長さで設定される場合、イベント時刻を含んだ連続した時間帯として設定される。イベント時刻の前の時間帯として○○ミリ秒、イベント時刻の後の時間帯として○○ミリ秒というような設定である。記憶領域数で設定される場合、イベント時刻から時間的に遡って○○個の記憶領域、イベント時刻から出力値を記憶したものとして○○個の記憶領域というように設定される。尚、スパン設定の情報が時間帯の情報として入力された場合、スパン設定回路はそれを記憶領域数に自動的に換算し、記憶領域数のスパン設定情報として保持するようになっている。
【0034】
図1に示すように、スパン設定回路74で保持されているスパン設定情報は、測定結果取得回路73に入力される。一方、イベント発生回路75が発生させたイベント信号は、測定結果取得回路73にも入力される。測定結果取得回路73は、イベント信号が入力された際、記憶部71にアクセスして測定結果を取得する。この際、入力されているスパン設定の情報に従い測定値を取得する記憶領域を特定し、特定された記憶領域から出力値を読み出し、測定結果とする。
【0035】
即ち、例えばスパン設定情報がイベント時刻前に100個、イベント時刻後に500個の記憶領域とする設定であるとする。イベントが時刻Tiの時刻に発生したとし、その際に出力値を記憶した記憶領域がx番目だったとする。この場合、測定結果取得回路73は、x−50番目からx+100番目までの各記憶領域711から出力値を順次読み出し、これらを出力して測定結果(測定値)とする。このような記憶部71からの選択的なデータの読み出しを行うよう測定結果取得回路73が定義づけされている。
【0036】
このようにして測定結果取得回路73により出力される測定結果は、不図示の出力回路を介して外部に出力される。出力回路は、装置が表示部を備えている場合には表示部に出力して表示させる回路とされるし、接続されたパソコンのような外部の装置に出力する場合、USBのような適宜のインターフェースを介して出力する回路とされる。
【0037】
このような構成である実施形態の分光測定装置の動作、使用例について、以下に説明する。
前述したようにソーラーシミュレータ10の分光特性についてチェックする場合、図2に示す受光ユニット51を、ソーラーシミュレータ10による光の受光箇所に配置する。即ち、通常は評価対象の太陽電池パネルを配置する箇所に、太陽電池パネルに代えて受光ユニット51を配置する。
【0038】
上記のように受光ユニット51を配置し、装置の電源をオンにして測定を開始する。装置の電源がオンされると、測定用センサ3及び発光検知用センサ4は動作を開始し、各々ADコンバータ771,772を介して出力値をPLD7に送る。
PLD7内の記憶制御回路72は、繰り返し周期Tごとに測定用センサ3から読み出した出力値を各記憶領域711に順次記憶する。但し、パルス光はまだ照射されていないので、測定用センサ3の各センサ素子からの出力は実質的にゼロであり、実質的にゼロの出力値が各記憶領域711に記憶される。また、発光検知用センサ4の出力は、イベント発生回路75に入力されるが、実質的にゼロであるため、イベント信号は発生しない。
【0039】
この状態でソーラーシミュレータ10を動作させ、受光ユニット51にパルス光を照射する。パルス光は、拡散板512に反射、拡散しながら光ファイバ52に入射し、光ファイバ52で導かれて筐体6内に導入される。そして、パルス光は、分光素子2で分光されて各波長の光となり、測定用センサ3に入射して光電変換される。この結果、ゼロであった出力値は、ある有限な値に変わり、この値が各記憶領域711に記録される。
【0040】
一方、パルス発光があると、発光検知用センサ4の出力が現れ、出力がある閾値を越えると、イベント発生回路75がイベント信号を発生させる。この結果、測定結果取得回路73が動作し、スパン設定回路74で設定されているスパン設定情報に従って該当する各記憶領域711から各出力値を読み出す。そして、各出力値(測定値)からなる測定結果を不図示の出力回路が出力する。
【0041】
上記のような構成及び動作に係る実施形態のパルス分光測定装置によれば、パルス発光の有無に拘わらず測定用センサ3を常時動作させ、パルス発光の時刻を含むスパンで測定結果を取得するので、パルス発光の前後の任意の時間帯の情報として測定結果を得ることができる。このため、パルス発光の立ち上がりにおいてどのような分光特性であるかを調べたり、パルス発光がピークに達した後の状態においてどのような分光特性であるかを調べたりすることが自由に行える。また、カメラ用のフラッシュランプのようなパルス幅の短い光源であっても、発光のピークを逃してしまうことなく最適に分光特性を調べることができる。
【0042】
また、連続したスパンにおいて測定結果を得ることができるので、パルス発光の過程でどのように分光特性が推移するか等の測定結果を得ることができる。例えば、パルス発光の強度が変化する過程で分光特性が変化するのかを調べることが可能である。
また、この実施形態の装置では、時間帯の情報で入力したスパン設定情報についてスパン設定回路が記憶領域数に換算して保持するので、ユーザーにおいて記憶領域の個数を計算する必要がない。このため、利便性の高い装置となっている。
【0043】
また、この実施形態では、発光検知用センサ4が拡散板512ユニットに設けられているので、測定を開始する際のセッティングが容易である。発光検知用センサ4が受光ユニット51とは別に設けられている場合、受光ユニット51と発光検知用センサ4をそれぞれ受光位置に配置する必要があるが、実施形態の装置では、受光ユニット51を配置することで発光検知用センサ4も配置が完了するので、セッティングが容易である。
尚、受光ユニット51の構成は、分光測定のタイプによって適宜変更される。例えば、分光放射輝度の測定場合には、光源からの光が入射するスリットを備えたものが受光ユニットして使用されるし、分光放射束の測定の場合には積分球を備えたものが受光ユニットとして使用される。
【0044】
上記実施形態では、記憶手段や測定結果取得手段等はPLD7というハードウェアで実現されるものであったが、多くの部分はソフトウェア的に実現されることが可能である。例えば、記憶領域を提供するものとして汎用メモリを実装し、これに対し上記のように測定値の記憶を行うプログラムを実装する。そして、汎用のプロセッサによりプログラムを実行することで、各記憶領域711への測定値の記憶を行ったり、スパン設定情報に従って測定結果の取得と出力を行ったりする構成を採用することができる。
【0045】
また、スパン設定において、連続した記憶領域を設定することは必ずしも必須条件ではない。記憶領域を飛び飛びに指定し、分光特性を離散的な時間の推移において調べることもあり得る。
また、測定用センサ3としてリニアアレイセンサを使用することも本願発明において必須要件ではない。回折格子に波長掃引機構を設ければ、光電管やシングルチャンネルのフォトダイオード等を測定用センサとして用いることも可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 パルス光源
10 ソーラーシミュレータ
2 分光素子
20 分光用光学系
3 測定用センサ
4 検知用センサ
5 受光ユニット
51 枠体
52 拡散板
6 筐体
7 PLD
71 記憶部
711 記憶領域
72 記憶制御回路
73 測定結果取得回路
74 スパン設定回路
75 イベント発生回路
76 終了タイミング設定回路
771 ADコンバータ
772 ADコンバータ
図1
図2
図3