特許第6091293号(P6091293)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6091293
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】懸架装置
(51)【国際特許分類】
   B62K 25/08 20060101AFI20170227BHJP
   F16F 9/54 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   B62K25/08 Z
   F16F9/54
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-74695(P2013-74695)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-198521(P2014-198521A)
(43)【公開日】2014年10月23日
【審査請求日】2016年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118201
【弁理士】
【氏名又は名称】千田 武
(72)【発明者】
【氏名】松井 優尚
【審査官】 佐々木 芳枝
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭58−47586(JP,U)
【文献】 実開昭51−61642(JP,U)
【文献】 特表2008−521681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 25/08
F16F 9/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と車輪との間に設けられたスプリングの振動を、車体側部材および当該車体側部材に対して軸方向に移動可能に接続する車輪側部材を有して減衰させる緩衝器と、
前記緩衝器に並行して設けられるとともに、前記車輪を操舵可能にするロッド部材と、
前記車体に接続し、前記緩衝器の前記車体側部材および前記ロッド部材の車体側の端部を支持する車体側支持部材と、
前記ロッド部材の車輪側の端部を軸方向にスライド可能に保持するロッド保持部材と、
前記車輪の車軸を支持する車軸孔と前記緩衝器の前記車輪側部材が連結する緩衝器連結部とを距離を維持しながら保持する保持部材と、
前記保持部材を、前記ロッド保持部材における第1の位置または当該第1の位置とは異なる第2の位置に固定する固定構造と、
を備えていることを特徴とする懸架装置。
【請求項2】
前記保持部材は、少なくとも前記ロッド保持部材に連結するロッド連結部と前記車軸孔と前記緩衝器連結部とを有する板状の支持板を備えて構成されることを特徴とする請求項1に記載の懸架装置。
【請求項3】
前記保持部材は、少なくとも前記ロッド保持部材に連結するロッド連結部と前記車軸孔と前記緩衝器連結部とをそれぞれ棒状の支持部材で接続した支持構造体を備えて構成されることを特徴とする請求項1に記載の懸架装置。
【請求項4】
前記固定構造は、
前記ロッド連結部にて前記保持部材および前記ロッド部材を固定する固定手段と、
前記保持部材または前記ロッド保持部材に形成されるとともに、前記第1の位置に固定するために前記固定手段が取り付けられる第1被固定部と、当該第1被固定部とは異なる位置に設けられて前記第2の位置に固定するために前記固定手段が取り付けられる第2被固定部と、を有することを特徴とする請求項2または3に記載の懸架装置。
【請求項5】
前記固定構造は、
前記ロッド連結部にて前記ロッド保持部材と前記保持部材とを回転可能に接続する回転接続部と、
前記回転接続部に設けられるとともに、前記ロッド保持部材と前記保持部材とを回転可能に保持する回転状態と、当該ロッド保持部材と当該保持部材とを所定の角度にて固定する固定状態とを形成する回転固定部材を有することを特徴とする請求項2または3に記載の懸架装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、懸架装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、インナーチューブと、このインナーチューブが摺動自在に挿入されるアウターチューブとからなる緩衝器本体を備える懸架装置が開示される。この懸架装置は、インナーチューブに平行に固定される一本のガイドロッドと、アウターチューブに固定されガイドロッドが摺動自在に貫通しこのガイドロッドを軸支するガイド部材とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−23124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば二輪車の操作性や安定性に関する要素として、トレールなどの量が挙げられる。そして、トレールは、ステアリングステムと車軸との位置関係によって定まる。例えば二輪車においては、通常、ステアリングステムと車軸を接続するフロントフォークなどの懸架装置がトレールを定める1つの構成要素となる。
ここで、懸架装置においてトレールを容易に変更することができれば、同一車種における変更や、同一の懸架装置を異なる車種に適用して汎用性を高めることが可能となる。
本発明は、トレールを容易に変更可能にする懸架装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと、本発明は、車体と車輪との間に設けられたスプリングの振動を、車体側部材および車体側部材に対して軸方向に移動可能に接続する車輪側部材を有して減衰させる緩衝器と、緩衝器に並行して設けられるとともに、車輪を操舵可能にするロッド部材と、車体に接続し、緩衝器の車体側部材およびロッド部材の車体側の端部を支持する車体側支持部材と、ロッド部材の車輪側の端部を軸方向にスライド可能に保持するロッド保持部材と、車輪の車軸を支持する車軸孔と緩衝器の車輪側部材が連結する緩衝器連結部とを距離を維持しながら保持する保持部材と、保持部材を、ロッド保持部材における第1の位置または第1の位置とは異なる第2の位置に固定する固定構造と、を備えていることを特徴とする懸架装置である。
ここで、保持部材は、少なくともロッド保持部材に連結するロッド連結部と車軸孔と緩衝器連結部とを支持する板状の支持板を備えて構成されることを特徴とすることができる。
また、保持部材は、少なくともロッド保持部材に連結するロッド連結部と車軸孔と緩衝器連結部とをそれぞれ棒状の支持部材で接続した支持構造体を備えて構成されることを特徴とすることができる。
さらに、固定構造は、ロッド連結部にて保持部材およびロッド部材を固定する固定手段と、保持部材またはロッド保持部材に形成されるとともに、第1の位置に固定するために固定手段が取り付けられる第1被固定部と、第1被固定部とは異なる位置に設けられて第2の位置に固定するために固定手段が取り付けられる第2被固定部と、を有することを特徴とすることができる。
そして、固定構造は、ロッド連結部にてロッド保持部材と保持部材とを回転可能に接続する回転接続部と、回転接続部に設けられるとともに、ロッド保持部材と保持部材とを回転可能に保持する回転状態と、ロッド保持部材と保持部材とを所定の角度にて固定する固定状態とを形成する回転固定部材を有することを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、トレールを容易に変更可能にする懸架装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1の自動二輪車の概略構成を示す図である。
図2】実施形態1のフロントフォークの全体図である。
図3】懸架スプリングおよび緩衝器の断面図である。
図4】フォークパイプ部およびボトムケース部の断面図である。
図5】ボトムケース部のスライド部周辺の断面図である。
図6】実施形態1のトレール変更機構を説明するための図である。
図7】トレール変更機構によるトレール量の変更を説明するための図である。
図8】フロントフォークの動作を説明するための図である。
図9】実施形態2の左側フロントフォーク部を説明するための図である。
図10】トラスフレーム部を詳細に説明するための図である。
図11】第2トレール変更機構によるトレール量の変更を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<実施形態1>
図1は、実施形態1の自動二輪車1の概略構成を示す図である。
自動二輪車1は、図1に示すように、車体フレーム11と、この車体フレーム11の前端部に取り付けられているステアリングステム12と、ステアリングステム12に連結するハンドル13と、ステアリングステム12のハンドル13とは逆の端部側にてステアリングステム12に連結されたフロントフォーク14と、フロントフォーク14の下端に取り付けられた前輪15と、前輪15に設けられたブレーキディスク16と、ブレーキディスク16を押さえて前輪15の回転を停止するブレーキキャリパ17とを有している。
なお、以下の説明において、フロントフォーク14のハンドル13の端部を「一端部」、フロントフォーク14の前輪15側の端部を「他端部」、フロントフォーク14の軸方向を単に「軸方向」と称する。
【0009】
また、前輪15は、車軸15Sを介してフロントフォーク14に回転可能に支持される。さらにまた、ステアリングステム12は、車体側支持部材の一例としてのブラケット12Bを介してフロントフォーク14と連結している。そして、フロントフォーク14は、前輪15を支持するとともに、ハンドル13にて受けた操舵を前輪15に伝達し前輪15の向きを変更する。
【0010】
さらに、自動二輪車1は、下方に配置されたエンジン18と、変速機19と、車体フレーム11の下部にスイング自在に取り付けられたスイングアーム20と、このスイングアーム20の後端に取り付けられた後輪21と、スイングアーム20の後部(後輪21)と車体フレーム11の後部との間に取り付けられた2つのリヤサスペンション22と、を有している。なお、2つのリヤサスペンション22は、後輪21の左側と右側にそれぞれ1つずつ配置されている。
【0011】
ところで、自動二輪車1におけるトレールtは、図1に示すように、ステアリングステム12を通る直線Lsと、前輪15の車軸15Sから路面に対する垂線Lhとの、路面における交点の間の距離として定義されるものである。そして、本実施形態が適用される自動二輪車1のフロントフォーク14には、トレールtの量を変更可能に構成するトレール変更機構Tが設けられている。このトレール変更機構Tについては、後に詳しく説明する。
【0012】
図2は、実施形態1のフロントフォーク14の全体図である。
懸架装置の一例としてのフロントフォーク14は、左側フロントフォーク部14Lと右側フロントフォーク部14Rとを有する。なお、左側フロントフォーク部14Lと右側フロントフォーク部14Rとは、左側フロントフォーク部14Lにブレーキキャリパ17が設けられている点で異なるものの、他の基本構成は同じである。従って、以下では、左側フロントフォーク部14Lを代表例として詳細に説明する。
【0013】
左側フロントフォーク部14Lは、図2に示すように、懸架スプリング30と、緩衝器40と、ロッド部材の一例としてのフォークパイプ部50と、ロッド保持部材の一例としてのボトムケース部60と、固定構造の一例としてのトレール変更機構Tを構成する保持部材の一例としてのステイ部70と、を有する。
懸架スプリング30は、緩衝器40の外周を覆うようにして、緩衝器40の軸方向に取り付けられる。また、フォークパイプ部50およびボトムケース部60は、懸架スプリング30および緩衝器40に隣接して懸架スプリング30および緩衝器40に沿って配置されることで、懸架スプリング30および緩衝器40に並行するように配置される。
実施形態1のフロントフォーク14においては、フォークパイプ部50およびボトムケース部60と、懸架スプリング30および緩衝器40とを並行して配置することで、従来技術にない奇抜なフロントフォークの外観を構成している。
【0014】
そして、懸架スプリング30および緩衝器40は、衝撃および振動を吸収する機能を奏する。また、フォークパイプ部50は、一方でステアリングステム12を介してハンドル13に接続し、他方にてボトムケース部60を介して車軸15Sを支持することで、ハンドル13から前輪15への操舵力の伝達を行う(図1参照)。
【0015】
図3は、懸架スプリング30および緩衝器40の断面図である。
〔懸架スプリング30の構成・機能〕
懸架スプリング30は、コイルスプリングであって、実施形態1では緩衝器40の外周を囲うように緩衝器40の軸方向に沿って設けられる。懸架スプリング30は、一端側が後述の一端側接続部材44に接続し、他端側が後述の他端側接続部材45に接続する。そして、懸架スプリング30は、車体フレーム11と前輪15との間に設けられて衝撃を吸収する(図1参照)。
【0016】
〔緩衝器40の構成・機能〕
緩衝器40は、図3に示すように、シリンダ部41と、ピストン42と、ピストンロッド43と、一端側接続部材44と、他端側接続部材45と、を備える。
(シリンダ部41)
シリンダ部41は、有底円筒状の部材であって、シリンダ41Sと、シリンダ41Sの一端側に底部41Bと、シリンダの外周に設けられるスプリング保持部41Pとを有している。
シリンダ41Sは、内径がピストン42の後述するピストンボディ42Bの外径と略等しく形成される。シリンダ41Sの内周面には、低粘度のグリスが塗布され、後述するようにピストンボディ42Bの軸方向の移動の際にシリンダ41Sとの間にて摩擦熱の発生や摩耗を低減する。
また、スプリング保持部41Pは、緩衝器40の外側に配置される懸架スプリング30の一端側を保持する。スプリング保持部41Pは、懸架スプリング30の内径よりも大きな外径を有する端部にて懸架スプリング30の一端側を保持する。
底部41Bは、シリンダ41Sの一端側を塞ぐとともに、一端側接続部材44が取り付けられる。
【0017】
(ピストン42)
ピストン42は、円柱形状のピストンボディ42Bと、ピストンボディ42Bの中心部に形成されピストンロッド43が貫通するロッド孔42Rと、ロッド孔42Rの周囲に複数設けられる貫通口42Hとを有している。そして、ピストン42は、ロッド孔42Rにてピストンロッド43が貫通して取り付けられる。また、ピストン42は、シリンダ41Sの内周面において軸方向に摺動可能に設けられる。このシリンダ41S内におけるピストン42の摺動の際に、シリンダ41S内における空気の流れはピストン42の貫通口42Hを介して行われる。
【0018】
(ピストンロッド43)
ピストンロッド43は、中空または中実の棒状の部材である。そして、一端部にピストン42が取り付けられ、他端部にて他端側接続部材45の後述するロッド接続部451に接続する。さらに、ピストンロッド43は、少なくとも一部がシリンダ41Sの内側において進退移動する。
【0019】
(一端側接続部材44)
一端側接続部材44は、シリンダ接続部441と、ボルト孔442とを有する。そして、一端側接続部材44は、シリンダ接続部441が底部41Bに取り付けられる。また、一端側接続部材44は、ボルト孔442を介してブラケット12Bの保持孔12Bhにボルト等の固定手段により連結される。なお、ボルト孔442は保持孔12Bhに対して回転可能に連結する。従って、緩衝器40は、一端側接続部材44を介してブラケット12Bに対して回転可能に接続する(図2参照)。
【0020】
(他端側接続部材45)
他端側接続部材45は、ロッド接続部451と、ボルト孔452とを有する。ロッド接続部451は、懸架スプリング30の内径よりも大きい外径を有する円板状に形成される。そして、他端側接続部材45は、ロッド接続部451にてピストンロッド43の他端部に連結するとともに、懸架スプリング30を保持する。また、他端側接続部材45は、ボルト孔452を介して、ステイ部70の後述する緩衝器保持部72の後述するボルト孔72Dにボルト等の固定手段によって固定される。なお、ボルト孔452はボルト孔72Dに対して回転可能に連結する。従って、緩衝器40は、他端側接続部材45を介してステイ部70に対して回転可能に接続する(図2参照)。
【0021】
図4は、フォークパイプ部50およびボトムケース部60の断面図である。
〔フォークパイプ部50の構成・機能〕
フォークパイプ部50は、図4に示すように、フォークパイプ51と、ストッパシート52と、ストッパラバー53とを有している。
(フォークパイプ51)
フォークパイプ51は、軸方向に長く延びた円管形状の部材である。また、実施形態1では、フォークパイプ51の内径および外径が軸方向に一定であるいわゆる直管に形成される。フォークパイプ51の一端部は、上述したブラケット12Bに取り付けられ、ブラケット12Bとの関係では軸方向に移動しないように固定される。また、フォークパイプ51の他端部には、ストッパシート52を保持する周方向に形成された溝である環状溝部51Rが形成される。
【0022】
(ストッパシート52)
ストッパシート52は、円筒状の部材であって、フォークパイプ51の他端部に取り付けられる。また、ストッパシート52は、内周面にて内側に突出した環状突起52Pを有している。そして、ストッパシート52は、環状突起52Pがフォークパイプ51の環状溝部51Rに嵌め込まれる。ストッパシート52は、フロントフォーク14の伸張時に、ストッパラバー53を介して後述する他端側ロッドガイド部63に引っ掛かることで、フォークパイプ51がボトムケース部60から抜け出ないように作用する。
【0023】
(ストッパラバー53)
ストッパラバー53は、円筒状の部材であって、ゴムなどの衝撃を吸収することが可能な材料によって構成される。そして、ストッパラバー53は、フォークパイプ51においてストッパシート52よりも軸方向の内側に設けられる。また、ストッパラバー53は、ストッパラバー53と後述する他端側ロッドガイド部63との間に位置し、フロントフォーク14の伸張時に後述する他端側ロッドガイド部63およびストッパラバー53の損傷を抑制する。
【0024】
〔ボトムケース部60の構成・機能〕
ボトムケース部60は、フォークパイプ51を軸方向に移動可能に収容するボトムケース61と、一端側ロッドガイド部62と、他端側ロッドガイド部63と、スライド部64と、ダストシール部65とを有している。
(ボトムケース61)
ボトムケース61は、内側が筒状に形成されており、一端部から他端部にかけて、第1筒部611と、第1筒部611に連続する第2筒部612と、第2筒部612に連続する第3筒部613とを有する。また、ボトムケース61は、外側に、ステイ保持部615(図2参照)、およびキャリパ保持部616を有している。
【0025】
第1筒部611、第2筒部612および第3筒部613は、少なくともフォークパイプ51の外径よりも大きな内径を有する。そして、第1筒部611、第2筒部612および第3筒部613において、フォークパイプ51が軸方向に移動可能に構成する。
そして、第1筒部611は、一端側ロッドガイド部62を保持する箇所を形成する。すなわち、第1筒部611においては、一端側ロッドガイド部62を介してフォークパイプ51を保持する。
また、第2筒部612は、第1筒部611の内径よりも小さく形成された箇所である。そして、第2筒部612は、後述するようにスライド部64を保持する箇所を形成する。
【0026】
さらに、第3筒部613は、第2筒部612の内径よりも大きく形成された箇所であって、フォークパイプ51の他端部に設けられるストッパシート52およびストッパラバー53の外径よりも大きく形成される。そして、第3筒部613は、他端側ロッドガイド部63を保持するとともに、ボトムケース61内におけるストッパシート52およびストッパラバー53の移動を可能にする区間を形成する。具体的には、実施形態1では、ボトムケース61は、フォークパイプ51が相対的に移動する際に、フォークパイプ51の他端部が第3筒部613内に収容されたり、第3筒部613よりも突出したりする。
このように、ボトムケース61の他端部を開口した筒状形状にし、フォークパイプ51がボトムケース61を貫通するように構成している。
【0027】
ステイ保持部615は、ステイ部70を保持するためにボトムケース61に形成された箇所である。そして、ステイ保持部615は、ステイ部70とともにトレール量を変更可能にするトレール変更機構Tを構成する。
なお、ステイ保持部615については、後に詳しく説明する。
【0028】
キャリパ保持部616は、ボトムケース61の他端部に設けられ、ボトムケース61の径方向外側に突出した部分であって、ボルト等の固定手段が挿入されるボルト孔616Bを有する。実施形態1では、キャリパ保持部616は、ボトムケース61の他端部においてステイ保持部615の反対側に設けられる。そして、キャリパ保持部616は、固定手段を用いてボルト孔616Bにブレーキキャリパ17を固定する。
【0029】
(一端側ロッドガイド部62)
一端側ロッドガイド部62は、ロッドガイド621と、ガイドブッシュ622と、Oリング623と、ワッシャ624とを有している。
ロッドガイド621は、円柱状の概形を有する部材であって、内周部がフォークパイプ51の外径よりも大きく、外周部が第1筒部611の内径と略等しい外径を有している。そして、ロッドガイド621は、第1筒部611にてボトムケース61に圧入される。
ガイドブッシュ622は、ロッドガイド621の内側に設けられる。そして、ガイドブッシュ622は、内周部においてフォークパイプ51を軸方向に摺動可能に支持する。
【0030】
Oリング623は、ロッドガイド621の内側であって、ガイドブッシュ622よりも軸方向の外側に設けられる。Oリング623は、ゴムなどの弾性部材であって、耐油性を有する材料を用いている。そして、Oリング623は、ロッドガイド621とフォークパイプ51との間をシールして、後述するスライド部64の潤滑剤の流出を抑制する。
【0031】
ワッシャ624は、フォークパイプ51の外径よりも大きい内径の開口を有するとともに、第1筒部611の内径と略等しい外径を有する円板状の部材である。ワッシャ624は、第1筒部611と第2筒部612とによって形成される段差部と、一端側ロッドガイド部62の他端部とのに挟み込まれて、ガイドブッシュ622のロッドガイド621からの抜けを防止する。
【0032】
(他端側ロッドガイド部63)
他端側ロッドガイド部63は、ロッドガイド631、ガイドブッシュ632、Oリング633およびワッシャ634を有している。なお、他端側ロッドガイド部63の構成および機能は、基本的には上述した一端側ロッドガイド部62と同様である。従って、基本構成についてはその詳細な説明を省略する。
ロッドガイド631は、第3筒部613にてボトムケース61に圧入される。また、ガイドブッシュ632は、ロッドガイド631の内側に設けられる。そして、ガイドブッシュ632は、内周部においてフォークパイプ51を軸方向に摺動可能に支持する。
【0033】
Oリング633は、ロッドガイド631とフォークパイプ51との間をシールして、後述するスライド部64の潤滑剤の流出を抑制する。また、ワッシャ634は、ガイドブッシュ632のロッドガイド631からの抜けを防止する。
【0034】
以上のように、本実施形態では、一端側ロッドガイド部62および他端側ロッドガイド部63によって、ボトムケース部60におけるフォークパイプ51を軸方向における2点で移動可能に支持する。また、ボトムケース61の一端側と他端側とのそれぞれ設けられるガイドブッシュ(622,632)およびOリング(623,633)により、後述のスライド部64の潤滑剤の流出を防止する。
【0035】
図5は、ボトムケース部60のスライド部64周辺の断面図である。
スライド部64は、潤滑剤保持部材641を備えて構成される。
潤滑剤保持部材641は、低粘度のグリスなどの潤滑剤が含浸される部材である。潤滑剤保持部材641は、内部に細かな孔が無数に空いた多孔質の材料であって、耐油性を有する材料を用いる。さらに、潤滑剤保持部材641は、対向するフォークパイプ51の表面を損傷させないよう例えば軟らかい弾性部材などによって構成される。例えば、合成樹脂を発泡形成した合成スポンジなどを用いることができる。
【0036】
潤滑剤保持部材641は、円筒形状を有し、内径がフォークパイプ51と略等しく設定され、外径が第2筒部612と略等しく形成される。そして、潤滑剤保持部材641は、グリスなどの潤滑剤を常にフォークパイプ51の表面に供給するように作用する。
【0037】
さらに、潤滑剤保持部材641は、内周部において、周方向に形成される溝64Tを備えている。この溝64Tは、軸方向において複数設けられる。また、図5の例では、溝64Tは、断面がT字状に形成される。この溝64Tの断面の形状は、T字状の他、逆テーパ状などであっても良い。すなわち、溝64Tの断面は、径方向に外周部側となる奧側(溝の底側)の幅W2と比較して、フォークパイプ51との対向部側の幅W1が狭くなっていれば良い。
【0038】
そして、実施形態1では、潤滑剤保持部材641に溝64Tを形成することによって、例えばフォークパイプ51表面に外部から異物が侵入した場合であっても、溝64Tにて異物を回収して取り込むことによって、フォークパイプ51の表面から異物を退けるようにしている。
さらに、溝64Tは、フォークパイプ51側となる幅W1が、奧側の幅W2よりも狭くなっているため、一度取り込んだ異物が再度フォークパイプ51側に出ないようにしている。
【0039】
なお、実施形態1では、グリスなどの潤滑剤を潤滑剤保持部材641内部に含浸させる構成としているが、上述した溝64Tによって形成される空間にグリスが満たさせるように構成しても構わない。この場合、潤滑剤保持部材641によって、フォークパイプ51の表面に対して潤滑剤をより多く供給でき、フォークパイプ51の安定したスライドを実現できる。
また、溝64Tは、軸方向に異なる大きさ、(溝間の)間隔を部分的に異なるようにしても良く、一部の形状を異なるようにしても良い。
【0040】
(ダストシール部65)
ダストシール部65は、シール本体部651とスクレーパ652とを有している。
シール本体部651は、図5に示すように、軸方向の他端側が第1筒部611の外周部に引っ掛かるようにして取り付けられ、一端側がフォークパイプ51の外周面に対向するように設けられる。
【0041】
スクレーパ652は、シール本体部651の一端側に取り付けられた、円筒形状の部材である。スクレーパ652は、内周部にてフォークパイプ51側に向けて突出する複数の環状突起65Rを有している。そして、これら複数の環状突起65Rが内周部において複数連なることによって、複数の溝65Vが形成される。
環状突起65Rは、フォークパイプ51の軸方向と略直交する面に沿う垂直面R1と、垂直面R1よりもスライド部64側に位置し、軸方向と略直交する面に対して傾斜する傾斜面R2によって構成される。
そして、ダストシール部65は、ボトムケース61の一端部に位置して、ボトムケース61内部への異物の進入を抑制する。
【0042】
図6は、実施形態1のトレール変更機構Tを説明するための図である。
続いて、トレール変更機構Tについて詳細に説明する。本実施形態では、トレール変更機構Tは、ステイ部70と、ボトムケース61のステイ保持部615と、取付ボルトTBとによって実現される。
〔ステイ部70の構成・機能〕
ステイ部70は、図6(a)に示すように、支持板の一例としてのステイ部材71と、緩衝器連結部の一例としての緩衝器保持部72と、車軸保持部73と、とを有している。
ステイ部材71は、板状の部材であって、取付ボルトTBが取り付けられる複数(本実施形態では3つ)のボルト孔であるロッド連結部の一例としてのステイボルト孔群71Hを有している。ステイボルト孔群71Hは、本実施形態では直線上に並べて設けられる。
緩衝器保持部72は、ステイ部材71の端部に設けられ、ボルト等の固定手段が挿入されるボルト孔72Dを有する。そして、緩衝器保持部72は、ボルト孔72Dに固定手段を用いて他端側接続部材45のボルト孔452が連結することで、緩衝器40のピストンロッド43を支持する。
車軸保持部73は、ボトムケース61にて、緩衝器保持部72のボルト孔72Dとは異なる箇所に形成される。そして、車軸保持部73は、車軸15S(図1参照)を通す車軸孔73Sを有する。
そして、本実施形態のステイ部70は、ステイ部材71が緩衝器保持部72および車軸保持部73の距離を一定に維持しながら緩衝器保持部72および車軸保持部73を保持する。
【0043】
(ステイ保持部615)
続いて、ボトムケース61のステイ保持部615について説明する。
ステイ保持部615は、ステイ取付面615Pと、ステイ取付面615Pに形成されたケースボルト孔群615Hとを有している。
ステイ取付面615Pは、後述するとおり板状のステイ部材71を保持するために、面状に形成された部分である。そして、図6(b)に示すように、ステイ取付面615Pは、ステイ部材71が取り付けられた状態にて、ステイ部材71に面接触することでステイ部材71を安定的に保持する。
【0044】
ケースボルト孔群615Hは、ボルト孔である共通孔H0と、第1被固定部の一例としての第1位置用孔群H1と、第2被固定部の一例としての第2位置用孔群H2と、第3位置用孔群H3とを有している。
共通孔H0は、後述するとおり、異なる位置(角度)にてステイ部材71が取り付けられる際に、共通して用いられるボルト孔である。共通孔H0は、ステイ取付面615Pに形成される複数のボルト孔のうち、ステイ部材71が取り付けられる側に最も近い端部であって、ボトムケース61の軸方向の一端部に配置される。そして、本実施形態では後述するとおりステイ部材71が、この共通孔H0を中心にして、異なる角度をとるように構成される。
【0045】
第1位置用孔群H1は、本実施形態では、第1位置用孔群H1は、第1孔H11および第2孔H12によって構成される。そして、第1孔H11および第2孔H12は、共通孔H0に対して、直線上に配置されるとともに、本実施形態ではボトムケース61の軸方向に沿って並べて配置される。
【0046】
第2位置用孔群H2は、本実施形態では、第2位置用孔群H2は、第1孔H21および第2孔H22によって構成される。そして、第1孔H21および第2孔H22は、共通孔H0に対して、直線上に配置されるとともに、本実施形態ではボトムケース61の軸方向に直交する方向に対して略45度の方向に並べて配置される。
【0047】
第3位置用孔群H3は、本実施形態では、第3位置用孔群H3は、第1孔H31および第2孔H32によって構成される。そして、第1孔H31および第2孔H32は、共通孔H0に対して、直線上に配置されるとともに、本実施形態ではボトムケース61の軸方向に直交する方向に並べて配置される。
【0048】
そして、図6(b)に示すように、取付ボルトTBは、ステイ部70をステイ保持部615に固定する。なお、ボトムケース61に対するステイ部材71の固定は、ボルトに限定されるものではなく、ステイ部材71をボトムケース61に固定できれば他の手段を用いても構わない。
【0049】
〔トレール変更機構Tの作用〕
図7は、トレール変更機構Tによるトレール量の変更を説明するための図である。
本実施形態では、トレール変更機構Tによって、トレール量を定める位置A,位置B,位置Cのいずれかの位置をとれるようになっている。
なお、本発明の「第1の位置とは異なる第2の位置」の「第2の位置」は、文言通り、第1の位置とは異なる位置を意味し、本実施形態において、例えば位置Aが「第1の位置」に相当し、位置Bまたは位置Cが「第2の位置」に相当する。
【0050】
図7(a)に示すように、ステイ部70を位置Aに定める場合には、ステイ部材71のステイボルト孔群71Hを、第1位置用孔群H1に対向させて取付ボルトTBをこれらのボルト孔にそれぞれ通して固定する。
この状態にて、ステイ部70の車軸保持部73は、ボトムケース61の径方向において最も遠い位置に配置される。その結果、トレール量は、位置Aにおいて最も距離が短くなる。
【0051】
図7(b)に示すように、ステイ部70を位置Bに取り付ける場合には、ステイ部材71のステイボルト孔群71Hを、第2位置用孔群H2に対向させて取付ボルトTBをこれらのボルト孔にそれぞれ通して固定する。
この状態にて、ステイ部70の車軸保持部73は、ボトムケース61の径方向において、第1位置用孔群H1に取り付けた場合よりもボトムケース61に近い側に配置される。その結果、トレール量は、位置Aよりも距離が長くなる。
【0052】
図7(c)に示すように、ステイ部70を位置Cに取り付ける場合には、ステイ部材71のステイボルト孔群71Hを、第3位置用孔群H3に対向させて取付ボルトTBをこれらのボルト孔にそれぞれ通して固定する。
この状態にて、ステイ部70の車軸保持部73は、ボトムケース61の径方向において、最も近い位置に配置される。その結果、トレール量は、位置Cにおいて最も距離が長くなる。
【0053】
以上のように、実施形態1が適用されるフロントフォーク14では、ステイ部70(ステイボルト孔群71H)と、ボトムケース部60(ステイ保持部615)と、取付ボルトTBとによって構成されるトレール変更機構Tにより、トレール量を変更することが可能になっている。
【0054】
なお、実施形態1では、ボトムケース部60側に、複数の取付位置(位置A,位置B,位置C)に対応して設けたボトム孔群(ケースボルト孔群615H)を形成しているが、これに限定されるものではない。すなわち、複数の取付位置(位置A,位置B,位置C)に対応して設けられたボトム孔群を、ステイ部70側に形成しても構わない。
【0055】
〔フロントフォーク14の動作〕
図8は、フロントフォーク14の動作を説明するための図である。
なお、図8では左側フロントフォーク部14Lを例に説明するとともに、図8(a)には圧縮行程時の状態を示し、図8(b)には伸張行程時の状態を示す。
まず、圧縮行程時における動作について説明する。
図8(a)に示すように、フロントフォーク14が圧縮する方向の力を受けると、懸架スプリング30が圧縮される。さらに、緩衝器40においては、懸架スプリング30における振幅力を減衰させる。具体的には、ピストン42がシリンダ41S(図3参照)を摺動する際の摩擦により減衰力が発生する。さらに、ピストン42の貫通口42H(図3参照)を介した空気の流れの抵抗によっても減衰力が発生する。
【0056】
また、フロントフォーク14が圧縮する方向の力を受けると、フォークパイプ部50の一端部に対して、ボトムケース部60の一端部が相対的に近づくように移動する。このように、フォークパイプ51は、ボトムケース部60の移動を案内する。この場合、フォークパイプ51の他端部は、ボトムケース61の他端部において突出する。
【0057】
続いて、伸張行程時における動作について説明する。
図8(b)に示すように、フロントフォーク14が伸張する方向の力を受けると、懸架スプリング30が伸張する。さらに、緩衝器40においては、懸架スプリング30における振幅力を減衰させる。具体的には、ピストン42がシリンダ41S(図3参照)を摺動する際の摩擦により減衰力が発生する。さらに、ピストン42の貫通口42H(図3参照)を介した空気の流れの抵抗によっても減衰力が発生する。
【0058】
また、フロントフォーク14が伸張する方向の力を受けると、フォークパイプ部50の一端部に対して、ボトムケース部60の一端部が相対的に遠ざかるように移動する。このように、フォークパイプ51は、ボトムケース部60の移動を案内する。この場合、フォークパイプ51の他端部は、ボトムケース61の第3筒部613内に収容される。
【0059】
以上のように構成される、本実施形態のフロントフォーク14においては、懸架スプリング30および緩衝器40は、フォークパイプ部50およびボトムケース部60とは分離して構成される。さらに、ステイ部70において緩衝器保持部72と車軸保持部73とは別に構成される。従って、例えば、フロントフォーク14において、懸架スプリング30や緩衝器40の構成を変更したい場合に、容易に懸架スプリング30や緩衝器40の設置の変更を行うことができる。
【0060】
さらに、本実施形態では、ステイ部70において、緩衝器保持部72と車軸保持部73とが一体形成され、緩衝器40が緩衝器保持部72に直接的に連結される。従って、前輪15から受ける衝撃を懸架スプリング30および緩衝器40に直接的に伝えることができる。また、例えばリンク機構などを介さないことにより、装置の複雑化を抑制するとともに信頼性を向上させることができる。
【0061】
なお、上述した実施形態においては、緩衝器40は、空気が収容されるシリンダの内部にてピストンを摺動させる形式を採用しているが、これに限定されるものではない。例えば、シリンダ内部にオイルを収容し、ピストンがオイル液中を移動するいわゆるオイルダンパを用いるなど、各種緩衝器の構成を用いて構わない。
【0062】
続いて、実施形態2が適用される第2フロントフォーク214について説明する。
<実施形態2>
図9は、実施形態2の左側フロントフォーク部214Lを説明するための図である。
なお、実施形態1と同様の部材については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
第2フロントフォーク214は、左側フロントフォーク部と右側フロントフォーク部とを有する。従って、以下では、左側フロントフォーク部214Lを代表例として説明する。
左側フロントフォーク部214Lは、図9に示すように、懸架スプリング30と、緩衝器40と、フォークパイプ部50と、第2ボトムケース部260と、トラスフレーム部80と、を有する。
第2ボトムケース部260は、基本構成が実施形態1のボトムケース部60と同様であって、第2ボトムケース261の外側の構成が異なるものである。
第2ボトムケース261は、外側に、トラス保持部617を有している。トラス保持部617は、トラスフレーム部80が取り付けられる側に向けて突出する取付軸617Sを有する。
【0063】
そして、実施形態2が適用される第2フロントフォーク214においても、トレールの量を変更可能にする第2トレール変更機構T2が設けられている。
実施形態2においては、固定構造の一例としての第2トレール変更機構T2は、支持構造体の一例としてのトラスフレーム部80と、第2ボトムケース261の後述するトラス保持部617と、回転固定部材の一例としての回転止部TSと、によって実現される。
【0064】
図10は、トラスフレーム部80を詳細に説明するための図である。
〔トラスフレーム部80の構成・機能〕
トラスフレーム部80は、図10(a)に示すように、第1フレーム81と、第2フレーム82と、第3フレーム83と、緩衝器連結部の一例としての緩衝器保持部84と、車軸保持部85と、回転接続部86と、パッチ87と、を有する。
第1フレーム81は、緩衝器保持部84と車軸保持部85とを接続する棒状の部材である。そして、第1フレーム81は、緩衝器保持部84と車軸保持部85との距離を一定に維持する。
第2フレーム82は、車軸保持部85と回転接続部86とを接続する棒状の部材である。そして、第2フレーム82は、車軸保持部85と回転接続部86との距離を一定に維持する。
【0065】
第3フレーム83は、回転接続部86と緩衝器保持部84とを接続する棒状の部材である。そして、第3フレーム83は、回転接続部86と緩衝器保持部84との距離を一定に維持する。
そして、トラスフレーム部80においては、第1フレーム81、第2フレーム82および第3フレーム83が相互に連結することによって、緩衝器保持部84、車軸保持部85および回転接続部86の相対位置が固定される。
【0066】
緩衝器保持部84は、第1フレーム81および第3フレーム83が連結され、これらの部材との関係では相対的に移動しないように第1フレーム81および第3フレーム83を固定保持する。
また、緩衝器保持部84は、ボルト等の固定手段が挿入されるボルト孔84Dを有する。そして、緩衝器保持部84は、図9に示すように、ボルト孔84Dに固定手段を用いて他端側接続部材45のボルト孔452が連結することで、緩衝器40のピストンロッド43を支持する。
【0067】
車軸保持部85は、第1フレーム81および第2フレーム82が連結され、これらの部材との関係では相対的に移動しないように第1フレーム81および第2フレーム82を固定保持する。
また、車軸保持部85は、車軸15S(図1参照)を通す車軸孔85Sと、キャリパ保持部85Bとを有する。
車軸孔85Sは、トラスフレーム部80において、緩衝器保持部84のボルト孔84Dとは異なる箇所に形成される。キャリパ保持部85Bは、ボルト等の固定手段が挿入されるボルト孔616Bを有する。そして、キャリパ保持部85Bは、固定手段を用いてボルト孔616Bにブレーキキャリパ17(図1参照)を固定する。
【0068】
回転接続部86は、第2フレーム82および第3フレーム83が連結され、これらの部材との関係では相対的に移動しないように第2フレーム82および第3フレーム83を固定保持する。
また、回転接続部86は、軸孔86Hを有する。そして、軸孔86Hは、トラスフレーム部80の取付軸617Sが貫通して設けられ、取付軸617Sを支持する。さらに、本実施形態では、回転接続部86に回転止部TSが固定して取り付けられる。
【0069】
パッチ87は、図10(b)に示すように、第1フレーム81、第2フレーム82および第3フレーム83によって描かれる形状に対応して三角形状を有する板状の部材である。パッチ87の頂点部には、それぞれ取付孔87Hが設けられ、取付孔87Hを介して第1フレーム81、第2フレーム82および第3フレーム83を覆うようにして取り付けられる。そして、パッチ87は、そのままでは剥き出しとなる第1フレーム81、第2フレーム82および第3フレーム83を覆うことで、第2フロントフォーク214における美観を向上させる。
さらに、パッチ87は、第1フレーム81、第2フレーム82および第3フレーム83を外から飛来する小石などから保護するとともに、枠構造を補強するように機能する。
【0070】
(回転止部TSの構成・機能)
回転止部TSは、図10(a)に示すように、本実施形態ではトラスフレーム部80の回転接続部86に固定して設けられる。そして、回転止部TSは、ボトムケース61の取付軸617Sを通す開口Thを有する。また、開口Thは、内径が変更可能であるとともに、内径を所定の長さで固定できるように構成されている。そして、回転止部TSは、内径が取付軸617Sよりも大きい状態をとることで取付軸617Sを回転可能にし、内径を狭めて取付軸617Sと略等しくなる状態をとることで取付軸617Sに対して回転を止める。
【0071】
本実実施形態では、回転止部TSは、回転接続部86に固定される。ここで、回転接続部86は、第2フレーム82および第3フレーム83に接続している。また、取付軸617Sは、第2ボトムケース261に設けられる。従って、回転止部TSが取付軸617Sを固定することで、トラスフレーム部80全体が、第2ボトムケース261に対して固定された状態になる。
【0072】
〔第2トレール変更機構T2の作用〕
図11は、第2トレール変更機構T2によるトレール量の変更を説明するための図である。
実施形態2の第2フロントフォーク214では、第2トレール変更機構T2によって、トラスフレーム部80の角度を変更することで、トレール量を定める位置Dや位置Eの位置をとれるようになっている。
なお、本実施形態では、例えば位置Dが本発明の「第1の位置」に相当し、例えば位置Eが発明の「第2の位置」に相当する。
【0073】
具体的には、図11(a)に示すように、回転接続部86において、軸孔86Hに通される取付軸617Sを中心にしてトラスフレーム部80を矢印CW方向に回転させる。そして、回転止部TSによって取付軸617Sを固定する。これによって、トラスフレーム部80が第2ボトムケース261に対して位置D(回転角度:θ1)に固定される。この場合、車軸保持部85の位置が第2ボトムケース261から遠ざかり、トレール量の距離を短くすることができる。
【0074】
一方、図11(b)に示すように、回転接続部86において、軸孔86Hに通される取付軸617Sを中心にしてトラスフレーム部80を矢印CCW方向に回転させる。そして、回転止部TSを用いて取付軸617Sを固定する。これによって、トラスフレーム部80が第2ボトムケース261に対して位置Dとは異なる位置E(回転角度:θ2(θ2>θ1))に固定される。この場合、車軸保持部85の位置が第2ボトムケース261に近くなり、トレール量の距離を長くすることができる。
【0075】
以上のように、実施形態2が適用される第2フロントフォーク214では、トラスフレーム部80(回転接続部86)と、第2ボトムケース部260(トラス保持部617)と、回転止部TSとによって構成される第2トレール変更機構T2により、トレール量を変更することが可能になっている。特に、実施形態2の第2トレール変更機構T2では、第2ボトムケース部260に対するトラスフレーム部80の角度を一定の範囲内において任意に設定することが可能である。
【0076】
なお、実施形態2において、回転止部TSをトラスフレーム部80に設ける構成としたがこれに限定されるものではない。例えば、回転止部TSを第2ボトムケース部260に設ける構成としても良い。この場合、第2ボトムケース部260に軸孔を形成し、トラスフレーム部80にその第2ボトムケース部260の軸孔に支持される軸を設ける。そして、第2ボトムケース部260に固定して設けた回転止部TSによって、トラスフレーム部80に設けられる軸を回転しないように保持させることで、第2ボトムケース部260に対してトラスフレーム部80を所定の角度で固定することができる。
【0077】
さらに、実施形態1および実施形態2では、位置調整に関して、複数の孔を設けたり、回転部を設けたりしているが、これに限定されるものではない。例えば、一部に孔、一部に回転部を設け、位置を調整できるようにしても良く、また、回転して位置を調整するのみならず直線的に位置を調整できる構成を設けるようにしても良い。
また、実施形態1および実施形態2では、自動二輪車に本発明に係わる懸架装置(フロントフォーク14)を適用しているが、これに限定されるものではない。例えば、本発明に係わる懸架装置は、自動三輪車等の他の車体にも適用することができる。
【符号の説明】
【0078】
1…自動二輪車、14…フロントフォーク、14L…左側フロントフォーク部、14R…右側フロントフォーク部、30…懸架スプリング、40…緩衝器、50…フォークパイプ部、51…フォークパイプ、60…ボトムケース部、61…ボトムケース、70…ステイ部、80…トラスフレーム部、214…第2フロントフォーク、T…トレール変更機構、T2…第2トレール変更機構
図1
図2
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図5
図6
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図11