特許第6091295号(P6091295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6091295-エポキシ樹脂組成物及びその硬化物 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6091295
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/62 20060101AFI20170227BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20170227BHJP
   C09J 161/04 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   C08G59/62
   C09J163/00
   C09J161/04
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-77790(P2013-77790)
(22)【出願日】2013年4月3日
(65)【公開番号】特開2014-201639(P2014-201639A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2015年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 篤彦
(72)【発明者】
【氏名】中西 政隆
(72)【発明者】
【氏名】江原 清二
(72)【発明者】
【氏名】小淵 香津美
【審査官】 藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−132774(JP,A)
【文献】 特開平10−036805(JP,A)
【文献】 特開2013−082785(JP,A)
【文献】 特表2007−510004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00−59/72
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
C08G 4/00−16/06
C09J 1/00−5/10、9/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルダノールとアルデヒド類としてフルフラール、バニリンのうち少なくとも1つを反応させることにより得られるフェノール樹脂(a)とエポキシ樹脂を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
カルダノールとアルデヒド類を反応させることにより得られるフェノール樹脂(a)にエピハロヒドリンを反応させることにより得られるエポキシ樹脂(b)と硬化剤および/または硬化促進剤を含有し、
前記エポキシ樹脂(b)の分子量分布(Mw/Mn)の値が1.8〜5である
エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1に記載のフェノール樹脂(a)と、請求項2に記載のエポキシ樹脂(b)を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項5】
請求項に記載の硬化物を用いた接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地球上の二酸化炭素を積極的に固定化して得られ、地球温暖化防止に期待がもたれる植物由来の骨格を主骨格とするフェノール樹脂、エポキシ樹脂を含む組成物とその成形体に関するものであり、本発明は特に電気電子部品用絶縁材料(高信頼性半導体封止材料など)および積層板(プリント配線板、ビルドアップ基板など)やCFRPを始めとする各種複合材料、接着剤、塗料等に有用である硬化性樹脂組成物を与えるエポキシ樹脂および該組成物の硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、植物を原料とする化学品や高分子材料が脚光を浴びている。
20世紀において石油資源は、プラスチックの原料やエネルギーとして採掘され限りなく使用されてきた。しかし、近年、石油を始めとする化学資源の枯渇化等が環境問題となっている。そこで、石油や石油由来のような化石資源ではなく、天然物由来の資源(いわゆる非石油資源)を利用した環境破壊の恐れの少ないプラスチック材料の開発が盛んに進められている。
例えば、植物は太陽の光をエネルギーとして、水分と大気中の炭酸ガスを吸収することによって成長する。植物(もしくはそこから抽出される成分)を原料とする材料の場合、太陽エネルギーを原料の製造エネルギーとして有効に利用していることから、化石エネルギーの使用量が少なくてすむことになる。これにより、化石資源の使用を節約できることになる。
【0003】
一方で電子機器の高機能化、小型化の進展に伴い、これに搭載される電子部品には、高密度実装が可能なBGA、CSP等のフリップチップタイプのものがパッケージの主流となってきている。BGAやCSPは、パッケージの接合面に複数の半田ボールが配列されており、これらの半田ボールを基板側の接合端子に搭載した後に溶融させることで電気的な導通を得るとともに物理的な接合を図っている。また、半田付けされた接合部にヒートサイクルや落下衝撃による応力が集中して作用すると、半田が破断して電気的な導通が遮断されてしまうことがあるので、接合後の基板との隙間に樹脂を充填し、半田接合を補強することで接合信頼性を向上させている。
【0004】
このような電気・電子部品分野においても植物由来の化合物を使用したエポキシ樹脂が検討されている。具体的には特許文献1においては麦わら由来リグニンのエポキシ化物およびその硬化物が報告されている。しかし、植物より抽出されたリグニンをそのまま使用していることから、非常に高い分子量の化合物であり、作業性に問題が生じことに加え、剛直な骨格ゆえに特に電気・電子部品用の接着剤などには、ヒートサイクルや落下衝撃などの応力に耐え切れず、クラックが発生するなどの問題があった。
【0005】
一方でカシューナッツ殻を原料としたカルダノールを主骨格とするエポキシ樹脂として特許文献2、3に記載の樹脂が知られているが、モノマーやダイマーなど低分子量成分に限られており、良好な成型物が得られないことから電気・電子部品への応用は限られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−066237号公報
【特許文献2】特表2009−540046号公報
【特許文献3】特表2010−535152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、植物由来の骨格を主骨格とするフェノール樹脂およびエポキシ樹脂の少なくとも一方を含有するエポキシ樹脂組成物の提供であって、室温で液状であることから作業性に優れ、かつ低弾性であるために、特に電気・電子部品用接着剤やCFRPを始めとする各種複合材料、接着剤、塗料等に有用である。また、天然物由来の化合物であるため化石エネルギーの使用量の低減に寄与するエポキシ樹脂組成物およびその硬化物を提供することを目的とする。
【0008】
本発明者らは前記課題を解決するため鋭意研究の結果、本発明を完成した。即ち、本発明は、
(1)カルダノールとアルデヒド類を反応させることにより得られるフェノール樹脂(a)とエポキシ樹脂を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
(2)(1)に記載のフェノール樹脂(a)にエピハロヒドリンを反応させることにより得られるエポキシ樹脂(b)と硬化剤および/または硬化促進剤を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
(3)(1)に記載のフェノール樹脂(a)と(2)に記載のエポキシ樹脂(b)を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
(4)(2)記載のエポキシ樹脂において、エポキシ樹脂の分子量分布(Mw/Mn)の値が1.5〜15である(2)または(3)のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物。
(5)(1)〜(4)に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
(6)(5)に記載の硬化物を用いた接着剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、室温で液状であり作業性に優れ、かつ低弾性であるために、電気・電子部品用接着剤やCFRPを始めとする各種複合材料、接着剤、塗料等に有用であり、天然物由来の化合物であるため化石エネルギーの使用量の低減に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1のエポキシ樹脂組成物のDSC測定データ(1−a)、実施例2のエポキシ樹脂組成物のDSC測定データ(1−b)、及び比較例1のエポキシ樹脂組成物のDSC測定データ(1−c)
図2】実施例1のエポキシ樹脂組成物のDMA測定データ(2−a)、実施例2のエポキシ樹脂組成物のDMA測定データ(2−b)、及び比較例1のエポキシ樹脂組成物のDMA測定データ(2−c)
図3】実施例1のエポキシ樹脂組成物のTMA測定データ(3−a)、実施例2のエポキシ樹脂組成物のTMA測定データ(3−b)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のエポキシ樹脂組成物はエポキシ樹脂と硬化剤を含有し、少なくともカルダノールとアルデヒド類を反応させることにより得られるフェノール樹脂(a)または該フェノール樹脂(a)にエピハロヒドリンを反応させることにより得られるエポキシ樹脂(b)の少なくとも一方を含有する。なお、本発明のエポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂または硬化剤として、他の成分を使用する場合、非石油原料由来のものが好ましい。
また、特に、本発明のエポキシ樹脂組成物は作業性が非常に改善されていることから、従来知られているリグニン由来の化合物と併用することで、エポキシ樹脂組成物の改質剤の役割に使用することも可能である。
【0012】
本発明に用いるフェノール樹脂(a)は、カルダノールとアルデヒド類を反応させることで得られる。本発明に用いるエポキシ樹脂(b)は骨格中に非極性な直鎖アルキルが存在するため、低吸水、低誘電などの高度な特性を与える。尚、使用するアルデヒド類にはホルムアルデヒド、フルフラール、バニリンのうち少なくとも1つを用いている。以下、カルダノール、フルフラール、バニリンについて説明する。
<カルダノール(cardanol)>
カルダノールはカシューナッツ殻液を分別蒸留にかけることにより得られる。カルダノールは不飽和基の数や位置が異なる4種の混合物であり、不純物としてカルドール、アナカルド酸、およびアルキルカルドールを含有している。
ここで、カルダノールは下記式(1)で表される。尚、置換基が4種類あるが、下記4種の置換基を有する化合物の混合物をカルダノールと称する。
【化1】
<フルフラール(furfural)>
トウモロコシの穂軸、燕麦などの籾殻、サトウキビの絞りかす、ふすまなどの農産物の
副産物やおがくずなどを原料にして製造される。
<バニリン(vanilline)>
バニリンはバニラビーンズより得られるものもあるが、一般には合成により製造されている。その製造法により、サフロールバニリン、オイゲノールバニリン、リグニンバニリン、グアヤコールバニリン等に分けられる。ただし、いずれも天然物由来の化合物からの誘導体である。
本発明において、ホルムアルデヒドは、パラホルムアルデヒド、ホルマリン等といったホルムアルデヒドの合成等価体も含む概念である。
ここで、本発明に用いるカルダノールは純度が80%以上のものが好ましく、純度が90%以上のものが特に好ましい。純度が低いと目的とするエポキシ樹脂が得られにくく、安定した樹脂物性が得られない恐れがある。具体的には重合反応による粘度上昇および作業性の低下・不純物カルドールの酸化による貯蔵中の色安定性低下等である。
【0013】
本発明においてカルダノールと併用できるフェノール類について説明する。フェノール類は、芳香環に少なくとも1個のフェノール性水酸基を有する化合物であれば使用できる。具体的には、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、エチルフェノール、n−プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、t−ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、フェニルフェノール、シクロヘキシルフェノール、キシレノール、メチルプロピルフェノール、メチルブチルフェノール、等のフェノール類が挙げられるがフェノール性水酸基を有する限りこれらに限定されるものではない。また、これらフェノール類は単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
カルダノールと共にフェノールを併用する場合、カルダノールの含有割合はカルダノール及び使用するフェノール類の総量に対して30重量%以上が好ましい。
【0014】
本発明に用いるフェノール樹脂(a)は、カルダノール並びに必要によりフェノール類の混合物にアルデヒド類を加え、必要により溶媒の存在下、触媒を加えて加熱することにより得られる。また、カルダノール並びに必要によりフェノール類および溶媒の混合物と触媒の混合物を加熱しているところにアルデヒド類を徐々に添加してもよい。アルデヒド類の使用量は、カルダノールおよびフェノール類の総量に対し、好ましくは0.3〜1.0倍モル、より好ましくは0.3〜0.7倍モルである。0.3倍モル以下では重合反応の進行が悪く、十分な耐熱性が得られない可能性があり、1.0倍モル以上ではゲル化してしまう恐れがある。反応時間は2〜150時間、反応温度は40〜150℃である。このようにして得られたフェノール樹脂は用途によって、精製せずに用いることもできるが、通常、反応終了後に反応混合物を中和してから、晶析あるいは加熱減圧下において未反応原料及び溶媒類を除去する事で精製して各種用途に使用する。なお、この中和工程は、燐酸二水素ナトリウムを添加してもよいし、水洗などでも可能であるが、両者を併用するとより簡便で効果的である。
【0015】
本発明に用いるフェノール樹脂(a)の合成において使用できる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、トルエン、キシレンなどが挙げられるがこれらに限定されるものではなく、単独でも2種以上併用してもよい。溶媒を使用する場合、その使用量はフェノール類およびアルデヒド類の総量100重量部に対し、通常5〜500重量部、好ましくは10〜300重量部の範囲である。
【0016】
触媒としては酸性、塩基性いずれの触媒でも使用できるが、フルフラールを用いた場合、塩基性の物が好ましい。酸性触媒を使用した場合、フルフラール同士の反応も起こり、構造の特定できない化合物が多くなる。用いうる酸性触媒の具体例としては塩酸、硫酸、リン酸等の鉱酸類;シュウ酸、トルエンスルホン酸、酢酸等の有機酸類;
タングステン酸等のヘテロポリ酸、活性白土、無機酸、塩化第二錫、塩化亜鉛、塩化第二鉄等、その他酸性を示す有機、無機酸塩類、等のノボラック樹脂製造用に通常使用される酸性触媒などが挙げられる。用いうる塩基性触媒の具体例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウム−tert−ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド、マグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシド等のアルカリ土類金属アルコキシド等が挙げられる。またアミン系の触媒を使用することもでき、トリエチルアミン、エタノールアミン、ピリジン、ピペリジン、モルホリン等が挙げられる。特にアミン系の触媒を使用する場合は溶媒として兼用することもできる。これら触媒は、前述に挙げた物に限定されるものではなく、単独でも2
種以上を併用してもよい。触媒の使用量は、カルダノール並びに必要により使用するフェノール類の総量に対し、通常0.005〜2.0倍モル、好ましくは0.01〜1.1倍モルの範囲である。なお、触媒を溶媒として使用する場合は、カルダノール並びに必要により使用するフェノール類の総量に対し、10〜200質量%程度添加することが好ましい。
【0017】
カルダノールとホルムアルデヒド、フルフラール、バニリンのうち少なくとも1つとの反応は、その条件により生成物が、分子量分布を有する樹脂状フェノール樹脂になる。 このようにして得られるフェノール樹脂は以下のような条件を満たすことが好ましい。
水酸基当量は300g/eq.〜550g/eq.が好ましく、より好ましくは300g/eq.〜400g/eq.である。
また、得られるエポキシ樹脂の分子量分布(Mw/Mn)の値は1.0〜10が好ましく、1.3〜5がより好ましい。当該好ましい値の範囲内であることで、モノマー量が適切に調整され、硬化剤及び/または硬化促進剤を含有したエポキシ樹脂組成物において、硬化物を容易に得ることが可能となる。
<測定方法>
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて、下記条件下測定されたポリスチレン換算、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を算出し、分子量分布(Mw/Mn)を得た。
GPCの各種条件
メーカー:島津製作所
カラム:ガードカラム SHODEX GPC KF−802.5(2本) KF−802 KF−803
流速:1.0ml/min.
カラム温度:40℃
使用溶剤:THF(テトラヒドロフラン)
検出器:RI(示差屈折検出器)
尚、ホルムアルデヒドを使用することで、エポキシ樹脂組成物とした際に、より容易に硬化物を得ることができる。
【0018】
以下に本発明に用いるエポキシ樹脂(b)の合成方法の一例を記載する。
本発明に用いるエポキシ樹脂(b)は、前述のフェノール樹脂(a)とエピハロヒドリンとを反応させることで得ることができる。
【0019】
本発明に用いるエポキシ樹脂(b)を得る反応において、エピハロヒドリンとしてはエピクロルヒドリン、a−メチルエピクロルヒドリン、g−メチルエピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン等が使用でき、本発明においては工業的に入手が容易なエピクロルヒドリンが好ましい。エピハロヒドリンの使用量はフェノール樹脂の水酸基1モルに対し通常3〜20モル、好ましくは4〜10モルである。
【0020】
上記反応において使用しうるアルカリ金属水酸化物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、固形物を利用してもよく、その水溶液を使用してもよい。水溶液を使用する場合は該アルカリ金属水酸化物の水溶液を連続的に反応系内に添加すると共に減圧下、または常圧下連続的に水およびエピハロヒドリンを留出させ、さらに分液して水を除去し、エピハロヒドリンを反応系内に連続的に戻す方法でもよい。アルカリ金属水酸化物の使用量は原料フェノール樹脂の水酸基1モルに対して通常0.90〜1.5モルであり、好ましくは0.95〜1.25モル、より好ましくは0.00〜1.15モルである。
【0021】
反応を促進するためにテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩を触媒として添加することは好ましい。4級アンモニウム塩の使用量としてはフェノール樹脂の水酸基1モルに対し通常0.1〜15gであり、好ましくは0.2〜10gである。
【0022】
この際、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブタノールなどのアルコール類、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の非プロトン性極性溶媒などを添加して反応を行うことが反応進行上好ましい。
【0023】
アルコール類を使用する場合、その使用量はエピハロヒドリンの使用量に対し通常2〜50質量%、好ましくは4〜30質量%である。また非プロトン性極性溶媒を用いる場合はエピハロヒドリンの使用量に対し通常5〜100質量%、好ましくは10〜80質量%である。
【0024】
反応温度は通常30〜90℃であり、好ましくは35〜80℃
である。反応時間は通常0.5〜10時間であり、好ましくは1〜8時間である。これらのエポキシ化反応の反応物を水洗後、または水洗無しに加熱減圧下でエピハロヒドリンや溶媒等を除去する。また更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂とするために、回収したエポキシ樹脂をトルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて反応を行い、閉環を確実なものにすることも出来る。この場合アルカリ金属水酸化物の使用量はエポキシ化に使用した原料フェノール樹脂の水酸基1モルに対して通常0.01〜0.3モル、好ましくは0.05〜0.2モルである。反応温度は通常50〜120℃
、反応時間は通常0.5〜2時間である。
【0025】
反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に加熱減圧下溶剤を留去することにより本発明に用いるエポキシ樹脂(b)が得られる。
【0026】
このようにして得られるエポキシ樹脂(b)はその骨格に非化石燃料由来の骨格を有するばかりでなく、従来のたとえばリグニン由来の化合物等に比べ、取り扱い、および硬化性等にも優れ、電気電子材料に有用なエポキシ樹脂となる。また、本発明のエポキシ樹脂(b)は、アクリル酸との反応により光硬化性を有するエポキシアクリレート、およびその誘導体とすることも可能である他、カーボネート化合物、オキサゾリドン樹脂等、多様な骨格への変換も可能であり、種々の用途に適用できる。
【0027】
このようにして得られるエポキシ樹脂は以下のような条件を満たすことが好ましい。
エポキシ当量は350g/eq.〜600g/eq.が好ましく、より好ましくは500g/eq.〜550g/eq.である。
また、得られるエポキシ樹脂の分子量分布(Mw/Mn)の値は1.5〜15が好ましく、1.8〜5がより好ましい。当該好ましい値の範囲内であることで、モノマー量が適切に調整され、硬化剤及び/または硬化促進剤を含有したエポキシ樹脂組成物において、硬化物を容易に得ることが可能となる。
<測定方法>
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて、下記条件下測定されたポリスチレン換算、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を算出し、分子量分布(Mw/Mn)を得た。
GPCの各種条件
メーカー:島津製作所
カラム:ガードカラム SHODEX GPC KF−802.5(2本) KF−802 KF−803
流速:1.0ml/min.
カラム温度:40℃
使用溶剤:THF(テトラヒドロフラン)
検出器:RI(示差屈折検出器)
【0028】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂(b)は単独でまたは他のエポキシ樹脂と併用して使用することが出来る。併用する場合、エポキシ樹脂(b)の全エポキシ樹脂中に占める割合は30質量%以上が好ましく、特に40質量%以上が好ましい。ただし、エポキシ樹脂(b)をエポキシ樹脂組成物の改質剤として使用する場合は、エポキシ樹脂組成物中で1〜30質量%を占める割合で添加する。
【0029】
エポキシ樹脂(b)と併用し得る他のエポキシ樹脂としては、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂などが挙げられる。具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールS、チオジフェノール、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)
とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロルメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、アルコール類から誘導されるグリシジルエーテル化物、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂等の固形または液状エポキシ樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0030】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、フェノール樹脂(a)は、単独でまたは他の硬化剤と併用して使用することが出来る。併用する場合、本発明のフェノール樹脂の全硬化剤中に占める割合は30質量%以上が好ましく、特に40質量%以上が好ましい。ただし、本発明のフェノール樹脂をエポキシ樹脂組成物の改質剤として使用する場合は、エポキシ樹脂組成物中で1〜30質量%の割合となるよう添加する。
【0031】
フェノール樹脂(a)と併用し得る他の硬化剤としては、例えばアミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノール系化合物、カルボン酸系化合物などが挙げられる。用いうる硬化剤の具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、本発明のフェノール樹脂、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’−ビス(クロロメチル)−1,1’−ビフェニル、4,4’−ビス(メトキシメチル)−1,1’−ビフェニル、1,4’−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4’−ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、イミダゾール、トリフルオロボラン−アミン錯体、グアニジン誘導体、テルペンとフェノール類の縮合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0032】
本発明のエポキシ樹脂組成物において硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.5〜1.5当量が好ましく、0.6〜1.2当量が特に好ましい。エポキシ基1当量に対して、0.5当量に満たない場合、あるいは1.5当量を超える場合、いずれも硬化が不完全になり良好な硬化物性が得られない恐れがある。
【0033】
また上記硬化剤を用いる際に硬化促進剤を併用しても差し支えない。用いうる硬化促進剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエチレンジアミン、トリエタノールアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等の有機ホスフィン類、オクチル酸スズなどの金属化合物、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩などが挙げられる。
硬化促進剤を使用する場合の使用量はエポキシ樹脂100重量部に対して0.01〜15重量部が必要に応じ用いられる。
【0034】
さらに本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて無機充填剤やシランカップリング材、離型剤、顔料等の種々の配合剤、各種熱硬化性樹脂を添加することができる。無機充填剤としては、結晶シリカ、溶融シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ジルコニア、フォステライト、ステアタイト、スピネル、チタニア、タルク等の粉体またはこれらを球形化したビーズ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。これら無機充填剤は、用途によりその使用量は異なるが、例えば半導体の封止剤用途に使用する場合はエポキシ樹脂組成物の硬化物の耐熱性、耐湿性、力学的性質、難燃性などの面からエポキシ樹脂組成物中で20質量%以上占める割合で使用するのが好ましく、より好ましくは30質量%以上であり、40〜95質量%を占める割合で使用するのがより好ましい。
【0035】
さらに本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて公知の添加剤を配合することが出来る。用いうる添加剤の具体例としては、ポリブタジエン及びこの変性物、アクリロニトリル共重合体の変性物、ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリイミド、フッ素樹脂、マレイミド系化合物、シアネート樹脂(もしくはそのプレポリマー)、シリコーンゲル、シリコーンオイル、並びにシリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、石英粉、アルミニウム粉末、グラファイト、タルク、クレー、酸化鉄、酸化チタン、窒化アルミニウム、アスベスト、マイカ、ガラス粉末、ガラス繊維、ガラス不織布または、カーボン繊維等の無機充填材、シランカップリング剤のような充填材の表面処理剤、離型剤、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の着色剤が挙げられる。
【0036】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記各成分を均一に混合することにより得られる。そして、本発明のエポキシ樹脂組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易にその硬化物とすることができる。例えば、エポキシ樹脂と硬化剤、並びに必要により硬化促進剤及び無機充填剤、配合剤、各種熱硬化性樹脂とを必要に応じて押出機、ニーダ、ロール等を用いて均一になるまで充分に混合することより本発明のエポキシ樹脂組成物を得て、そのエポキシ樹脂組成物を溶融注型法あるいはトランスファー成型法やインジェクション成型法、圧縮成型法などによって成型し、更に80〜200℃で2〜10時間に加熱することにより硬化物を得ることができる。
【0037】
また本発明のエポキシ樹脂組成物は場合により溶剤を含んでいてもよい。溶剤を含むエポキシ樹脂組成物(エポキシ樹脂ワニス)はガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させ加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成形することにより、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物とすることができる。このエポキシ樹脂ワニスの溶剤含量は、内割りで通常10〜70質量%、好ましくは15〜70質量%程度である。該溶剤としては例えばγ−ブチロラクトン類、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン等のアミド系溶剤、テトラメチレンスルフォン等のスルフォン類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤、好ましくは低級アルキレングリコールモノ又はジ低級アルキルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、好ましくは2つのアルキル基が同一でも異なってもよいジ低級アルキルケトン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤が挙げられる。これらは単独で合っても、また2
以上の混合溶媒であってもよい。
【0038】
また、剥離フィルム上に前記ワニスを塗布し加熱下で溶剤を除去、Bステージ化を行うことによりシート状の接着剤を得ることが出来る。このシート状接着剤は多層基板などにおける層間絶縁層として使用することが出来る。
【0039】
本発明で得られる硬化物は各種用途に使用できる。具体的にはエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が使用される一般の用途が挙げられ、例えば、接着剤、塗料、コーティング剤、成形材料(シート、フィルム、FRP等を含む)、絶縁材料(プリント基板、電線被覆等を含む)、封止剤の他、他樹脂等への添加剤等が挙げられる。
【0040】
接着剤としては、土木用、建築用、自動車用、一般事務用、医療用の接着剤の他、電子材料用の接着剤が挙げられる。これらのうち電子材料用の接着剤としては、ビルドアップ基板等の多層基板の層間接着剤、ダイボンディング剤、アンダーフィル等の半導体用接着剤、BGA補強用アンダーフィル、異方性導電性フィルム(ACF)、異方性導電性ペースト(ACP
)等の実装用接着剤等が挙げられる。
【0041】
封止剤としては、コンデンサ、トランジスタ、ダイオード、発光ダイオード、IC、LSIなど用のポッティング、ディッピング、トランスファーモールド封止、IC、LSI類のCOB、COF、TABなど用のといったポッティング封止、フリップチップなどの用のアンダーフィル、QFP、BGA、CSPなどのICパッケージ類実装時の封止(補強用アンダーフィルを含む)などを挙げることができる。
【実施例】
【0042】
次に本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、以下において部は特に断りのない限り重量部である。尚、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。水酸基当量、エポキシ当量、軟化点、ICI粘度、DMA、熱伝導率は以下の条件で測定した。
・水酸基当量
JIS K−7236に記載された方法で測定し、単位はg/eq.である。
・エポキシ当量
JIS K−7236に記載された方法で測定し、単位はg/eq.である。
・軟化点
JIS K−7234に準拠した方法で測定。
・ICI粘度
JIS K−7117−2に準拠した方法で測定
・DSC
示差走査熱量分析器:TA−instruments製DSC Q−2000
昇温速度:2℃/分
・DMA
動的粘弾性測定器:SIIナノテクノロジー製DMS6100
昇温速度:2℃/分
・TMA
TMA熱機械測定装置:真空理工(株)製TM−7000
昇温速度:2℃/min.
【0043】
合成例1
攪拌機、還流冷却管、攪拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらカルダノール150部、p−トルエンスルホン酸1部、トルエン225部を加え、80℃で加熱しながら、35%ホルマリン水溶液30部を30分かけて添加し、そのままの温度を保ち2時間反応を行った。続けて100℃で1時間、130℃で1時間反応を行った。反応終了後、10%トリポリリン酸ナトリウムを20部加え、攪拌した後、水層が中性になるまで水洗を行った。得られた有機層をロータリーエバポレーターで180℃で減圧下、トルエン等の溶剤を留去することで本発明のフェノール樹脂148部を得た。得られたフェノール樹脂は液状茶褐色であり、Mw/Mn=2.1、水酸基当量は326g/eq.、25℃における粘度は37.13Pa・sであった。
攪拌機、還流冷却管、攪拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら得られた液状フェノール樹脂84部、エピクロロヒドリン105部、メタノール7部、水2部を加え、75℃にまで昇温した。次いでフレーク状の水酸化ナトリウム11部を90分かけて分割添加した後、さらに75℃で75分間反応を行った。反応終了後水洗を行い、有機層からロータリーエバポレーターを用いて140℃で減圧下、過剰のエピクロロヒドリン等の溶剤を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン184部を加え溶解し、75℃にまで昇温した。攪拌下でメタノール2部、30%水酸化ナトリウム水溶液3部を加え、1時間反応を行った後、メタノール20部を加え、洗浄水が中性になるまで有機層を水洗し得られた有機層からロータリーエバポレーターを用いて180℃で減圧下にメチルイソブチルケトン等の溶剤を留去することで本発明のエポキシ樹脂を93部得た。得られたエポキシ樹脂は液状茶褐色であり、Mw/Mn=2.6、エポキシ当量は545g/eq.、25℃における粘度は8.98Pa・sであった。
【0044】
合成例2
攪拌機、還流冷却管、攪拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながらカルダノール90部、30%水酸化ナトリウム水溶液10部を加え、80℃で加熱しながら、フルフラール10部を30分かけて添加し、110℃にまで昇温し、4時間反応を行った。続けて140℃で4時間反応を行った。反応終了後、20%リン酸ニ水素ナトリウム11部、濃塩酸7部を加え、70℃で30分反応を行った。反応終了後、10%トリポリリン酸ナトリウム20部、メチルイソブチルケトン200部を加え、水層が中性になるまで水洗を行った。得られた有機層をロータリーエバポレーターで130℃で減圧下、メチルイソブチルケトン等の溶剤を留去することで本発明のフェノール樹脂95部を得た。得られたフェノール樹脂は液状茶褐色であり、Mw/Mn=1.4、水酸基当量は357g/eq.、25℃における粘度は484mPa・sであった。
攪拌機、還流冷却管、攪拌装置を備えたフラスコに、窒素パージを施しながら得られた液状フェノール樹脂43部、エピクロロヒドリン46部、メタノール3部、水1部を加え、75℃にまで昇温した。次いでフレーク状の水酸化ナトリウム5部を90分かけて分割添加した後、さらに75℃で75分間反応を行った。反応終了後水洗を行い、有機層からロータリーエバポレーターを用いて140℃で減圧下、過剰のエピクロロヒドリン等の溶剤を留去した。残留物にメチルイソブチルケトン92部を加え溶解し、75℃にまで昇温した。攪拌下でメタノール1部、30%水酸化ナトリウム水溶液1部を加え、1時間反応を行った後、メタノール20部を加え、洗浄水が中性になるまで有機層を水洗し得られた有機層からロータリーエバポレーターを用いて180℃で減圧下にメチルイソブチルケトン等の溶剤を留去することで本発明のエポキシ樹脂を47部得た。得られたエポキシ樹脂は液状茶褐色であり、Mw/Mn=1.7、エポキシ当量は545g/eq.、25℃における粘度は542mPa・sであった。
【0045】
実施例1〜4、比較例1〜3
エポキシ樹脂を表1の割合(部)で配合し、で樹脂成形体を調製し、160℃で2時間、更に180℃
で8時間加熱を行い、本発明のエポキシ樹脂組成物及び比較用樹脂組成物の硬化物を得た。これら硬化物の物性を表1に示した。
【表1】
エポキシ樹脂1:合成例1で得られたエポキシ樹脂
エポキシ樹脂2:合成例2で得られたエポキシ樹脂
エポキシ樹脂3:RE−410S(日本化薬株式会社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂)
硬化促進剤:2E4MZ(四国化成株式会社製、イミダゾール系硬化促進剤)
【0046】
実施例1〜4、比較例1〜3で得られた硬化物につき示差走査熱量分析(DSC)測定、動的粘弾性(DMA)測定及び熱機器分析(TMA)測定を行なった。結果をDSCは未硬化部位の有無の指標に、DMAは弾性率の指標に、TMAは線膨張変化の指標に図1〜3にそれぞれ示す。
【0047】
図1の結果より、(1−a)、(1−b)において、−100〜300℃の範囲でブランク以外のピークが観測されないことから、実施例1、2において硬化反応が完結していることが確認できる。また(1−c)においては160〜190℃にピークが観測されたが、後述の図2の結果より、本ピークはガラス転移温度によるものであると考えられ、比較例1においても硬化反応が完結していることが確認できた。
【0048】
図2の結果より、(2−a)、(2−b)において温度の上昇に伴い、緩やかな弾性率の低下が確認できる一方、(2−c)では高温域(150〜200℃)において、弾性率の大幅な低下が認められる。比較例1における30℃での弾性率は2.5[GPa]であるのに対し、実施例1、2における30℃での弾性率はそれぞれ0.82[GPa]、0.28[GPa]と低温時においても低弾性率であることが確認できた。尚、前述の比較例1のDSCの高温域におけるピークはガラス転移温度であると考えられ、比較例1においても硬化反応が完結していることが確認できた。
【0049】
図3の結果より、(3−a)、(3−b)において、20〜200℃域では180〜220[ppm]と一定に高線膨張率を示すことから、PoP(Package
on Package)などの基板の反りを低減する封止材としても有用であることが確認できる。
【0050】
以上の結果から、本発明のエポキシ樹脂組成物は低温領域において非常に低い弾性率を示す硬化物を与えることから、特にヒートサイクルや落下衝撃などの応力に対する耐性を必要とする電気・電子部品用の接着剤などに有用である。その他、応力緩和が必要とされる成形材料、注型材料、積層材料、塗料、接着剤などの用途にもきわめて有用である。
中でも、特にヒートサイクル性能が求められる素材や、接着剤用途に好適に使用することができる。
また、実施例1において、硬化促進剤を2E4MZに変えて、サンドエイドSI−150Lを0.4重量部としたものを実施例1と同様の条件で硬化して物性を前記条件で測定したところ、線膨張率は191.3ppm(20〜200℃)となり、吸水率は1.1%(100℃、24h浸水)であった
図1
図2
図3