【実施例】
【0017】
図1〜
図8に、椅子を例に実施例とその変形とを示すが、台、テーブル等でも同様である。
図1〜
図4は最初の実施例を示し、
図1は椅子のフレーム2を示す。フレーム2は金属、プラスチック等から成り、図示しない継目により組立自在で、編地4の4周に設けた筒10に挿入される。なおフレーム2は中実でも良く、また板状等の形状でも良い。
図2はフレーム2に挿入されて、椅子となる編地4を展開して示す。6は座面、8は前方の垂部、9は後方の垂部で、座面6と垂部8,9の境界にはフレーム2を配置していない。編地4は4個所の角に切り欠き14があり、垂部8,9の下端中央に例えば半円状の切り欠き12,12がある。そして切り欠き14からフレーム2を挿入し、
図3に示す椅子20とする。なおフレーム2の挿入方法は多数あり、切り欠き14を設けず、他の位置からフレーム2を挿入しても良い。切り欠き12,12は半円状の他、半楕円状、多角形状等、形状は任意である。
【0018】
編地4は、例えば熱融着性の弾性糸と通常の合成樹脂繊維とを引き揃えて編成され、編地の種類自体は任意である。なお編地4を、熱融着性の弾性糸のみで編成しても、あるいは通常の合成樹脂繊維のみで編成しても良い。フレーム2を挿入した編地を、熱風炉等で加熱し、熱融着性の弾性糸を溶融させる。この結果、編地4を構成する糸が互いに結合されて、編地4は形状が固定されて、体重等の荷重を加えても変形し難くなる。なお通常の合成樹脂繊維のみで編地4を編成する場合、熱処理は不要である。また熱融着性の弾性糸は、例えば高融点のポリエーテル系のポリエステル繊維を芯材として、周囲を低融点の熱可塑性樹脂繊維の鞘で覆ったものである。
【0019】
垂部8,9の下端中央に切り欠き12,12があるので、切り欠き12内のフレーム13は、編地を下へ引くことがない。このため、フレーム2から垂部8,9への張力は
図3の白抜き矢印のように加わり、切り欠き12,12の上部を下方へ引く力は弱くなる。従って
図4に示すように垂部8,9と座面6との境界部15,16の沈み込みが生じない。好ましくは境界部15,16は伸びにくい編地組織とする。例えば編地4の他の部分を伸びやすいリブ組織とする場合に、境界部15,16を伸びにくい天竺組織とする。また境界部15,16を天竺組織で編目数が他よりも少ないスムース編みで編成する、あるいは境界部15,16での編目当たりの糸長を他よりも短くするようにしても、伸びにくい編地となる。なお切り欠き12,12を設けない場合、フレーム13からの張力で垂部の中央が下方に引かれ、座面6との境界部で沈み込みが生じる。
【0020】
この明細書での前後左右を
図3の下部のように定める。座面6の左右がこの部分のフレーム17,18で引かれるため、座面6は平面状である。加熱時に編地4は軟化するが、切り欠き12,12があるので、フレーム13から下向きに引く力が加わらず、垂部8,9と座面6との境界部15,16は沈み込まない。また加熱時に、座面4はフレーム17,18で引かれて平面状を保つ。使用時に腰、太股、荷物等から重力が座面4に加わるが、熱溶着のため座面4は固く変形しにくくなっている。
【0021】
垂部8,9と座面6との境界部15,16が沈み込まないと、椅子20の外観が向上する。人が腰掛ける際に、垂部8,9との境界部15,16まで座面6が平坦なので、人体を支持できる面積が増し、座り心地が良くなる。椅子20を台として使用する場合、置かれた荷物が安定する。なお座り心地のみを問題とする場合、後方の垂部9には切り欠き12を設けなくても良い。また椅子の形状によっては、後方の垂部9を設けなくても良い。
【0022】
図5は背もたれ22のある椅子30を示し、21はフレームで、31は編地である。24は後傾部で、ほぼ水平に後側へ延び、26は背もたれ22と座面6との間の補強面で、伸びにくい編地で構成されている。例えば補強面26では、編目当たりの糸長を短くして伸び難くし、あるいはスムース編み等の伸びにくい編地を用いる。他の点では
図1〜
図4の実施例と同様である。なお後傾部24側の切り欠き12は設けなくても良い。
【0023】
図5の椅子30では、切り欠き12,12のため、座面6は垂部8との境界付近までフラットで、背もたれ22は上端付近まで平面状である。このため太股と腰と背中から首までを安定して支持できる。補強面26のため、座面6と背もたれ22との境界の中央部が盛り上がらず、座り心地がよい。そして編地31は沈み込みも盛り上がりも少ないので、外観の良い椅子30となる。
【0024】
図6は、切り欠き12、12に代えて、孔36,36を設けた編地34を示し、他の点では
図2の編地4と同様である。孔36,36を設けると、フレーム2を挿入した際に、垂部8,9の底辺中央のフレーム13,13から、張力が加わりにくくなり、
図1〜
図4の実施例と同様に、座面6の前後の沈み込みを防止できる。
【0025】
図7は切り欠き12,12の代わりに、伸びやすい伸縮部44,44を設けた椅子40を示し、42はその編地である。例えば伸縮部44で、糸の素材を他と変える、あるいは伸縮部44で編目当たりの糸長を増すことにより、伸びやすくする。また編地42の長手方向がウェール方向である場合に、伸縮部44をガーター組織で編成すると、伸縮部44を伸びやすくできる。この方向がコース方向である場合は、伸縮部44をリブ組織で編成すると、伸縮部44を伸びやすくできる。これらのため、垂部8,9の底辺中央でフレームから加わる張力を緩和し、座面6と垂部8,9の境界部15,16での沈み込みを小さくできる。しかし伸縮部44はフレーム2からの張力を制限するが遮断はしないので、座面6と垂部8,9の境界部15,16での沈み込みは小さくはなるが、
図2〜
図6の各例程には小さくならない。なお他の点では、
図1〜
図4の実施例と同様である。
【0026】
図8は切り欠き12,12に代えて、突出部52,52を設けた編地50を示す。引き返し編み等の成型編みにより、垂部8,9の底辺中央に相当する部分で、編地を
図8の上下方向に延長した突出部52,52を設ける。これにより、垂部8,9の底辺中央でフレームから加わる張力を緩和し、座面6と垂部8,9の境界部15,16での沈み込みを小さくする。しかし沈み込みを、
図2〜
図6の各例程には小さくできない。他の点では、
図1〜
図4の実施例と同様である。
【0027】
実施例と変形例では以下の効果が得られる。
1) 座面6と垂部8,9の境界部15,16が沈むことを、防止ないしは抑制する。
2) 座面6と垂部8,9の境界部15,16が沈み込まないと、座面6では人体や物品を支持できる面積が増し、座り心地が改善し、また置かれた物品が安定する。
3) 座面6がフラットになるので、椅子20等の外観が向上する。
【0028】
実施例では前後一対の垂部8,9を設けたが、前側の垂部8のみを設けても良い。この場合、座面6の後端側にはフレーム2を配置してもしなくても良い。実施例では編み製品の椅子と台を説明したが、机、キャビネット、家具、テーブル、ベッド等を実施例の編み製品で構成しても良い。また椅子には、乗り物用のシートとソファー、事務用のチェア等も含まれる。