特許第6091326号(P6091326)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6091326
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】泡状清拭剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/86 20060101AFI20170227BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20170227BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20170227BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20170227BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20170227BHJP
   A61K 8/97 20170101ALI20170227BHJP
【FI】
   A61K8/86
   A61K8/02
   A61Q19/10
   A61K8/34
   A61K8/64
   A61K8/97
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-106673(P2013-106673)
(22)【出願日】2013年5月20日
(65)【公開番号】特開2014-227360(P2014-227360A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000107907
【氏名又は名称】セーレン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124349
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 圭啓
(72)【発明者】
【氏名】笈田 多加史
(72)【発明者】
【氏名】杉野 正明
(72)【発明者】
【氏名】寺岡 都美
【審査官】 松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−184896(JP,A)
【文献】 特開平6−100435(JP,A)
【文献】 特開2002−363062(JP,A)
【文献】 特開2007−14453(JP,A)
【文献】 特開2002−327168(JP,A)
【文献】 特開2001−329482(JP,A)
【文献】 特開2007−161727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 90/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記に示すa成分を0.1〜10質量%、b成分を0.1〜15質量%、c成分の乾燥残留物として0.001〜20質量%、d成分の乾燥残留物として0.0001〜1質量%含有することを特徴とする泡状清拭剤組成物。
a.ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルまたはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル
b.炭素数2〜6で二価または三価の水溶性多価アルコール
c.セリシン
d.フトモモ科ユーカリ属植物であるユーカリプタス・グロブラス(Eucalyptus globulus)より得られるユーカリ抽出液
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォーマー容器に収容され、このフォーマー容器から泡沫状に吐出させて使用する泡状清拭剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
人は日常生活を過ごす上で、ちりや埃などの外界からの汚れ、皮脂や汗等の分泌物に由来するさまざまな汚れを定期的に拭い去り清潔にすることが必要である。通常は、固形や液体の洗浄剤を用いて入浴時等に汚れを除去している。しかし、介護施設や病院において、高齢者や身体が不自由な人、あるいは体調不良や怪我などにより入浴できない人に対しては、ガーゼや濡れタオルを使用して汚れを拭き取ることによって身体を清浄にする必要がある。
このように身体を清浄で清潔な状態にするために使用される薬剤は「清拭剤」と呼ばれる。清拭剤は、一般的には、フォーマー容器から泡沫状に吐出させるタイプや、お湯等で薄めて用いるタイプ等が挙げられる。
【0003】
しかし、お湯等で薄めて使用するタイプは、使用前に一度希釈する作業が必要であり、特に介護施設や病院では介護者にとって負担となる場合がある。
例えば、希釈して使用するタイプの清拭剤として、特許文献1には特定のショ糖脂肪酸エステル系ノニオン界面活性剤、多価アルコールおよび植物エキスを用いた皮膚清拭剤組成物が開示され、特許文献2にはポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、多価アルコール、脂肪酸等の油性成分、ユーカリエキスを含有する清拭剤が開示されている。しかしこれらの清拭剤は、希釈して使用するので使用が簡便ではないばかりでなく、洗浄性も十分でないばかりか、使用後の肌がべたつくおそれがあり、清拭後のうるおい感や肌荒れを防ぐことができなかった。
【0004】
一方、泡沫状に吐出させるタイプの清拭剤は、直接ガーゼや身体に塗布して清拭できることから被介護者からみても好適に使用できる形態であり、老人介護や病院での清拭等において一般的に使用されている。特に近年は高齢化社会が進行していることにより、清拭剤の需要も急速に高まってきており、さらに機能的で優れた清拭剤の開発が望まれている。
特に高齢者は、若い人に比べ、皮脂が減少し、乾燥肌で皮膚のバリア性が低下した人が多いため、高齢者を対象とする清拭剤では、洗浄力だけでなく、うるおい感が得られた上で、べたつきがないものが求められている。また、これに加えて、病院などでは、高齢者が使用するオムツによるかぶれや床ずれなどによって肌荒れが生じるのを抑制することが求められている。さらに、泡沫状に吐出させるタイプの清拭剤では、最後まで安定して泡沫状に吐出できること、目詰まりが生じないことが望まれている。このように、さらに安全で高機能性の清拭剤の開発が望まれているのが現状である。
【0005】
泡沫状に吐出させるタイプの清拭剤として、例えば、特許文献3にはサポニンとポリグリセリンモノ脂肪酸エステルなどの界面活性剤を含有する起泡性清拭料が開示されている。しかし、この清拭料は洗浄力が十分でなく、使用時に目詰まりが生じ、最後まで安定して吐出できなくなるおそれがあるばかりか、清拭後の肌にうるおい感が得られず、肌荒れも防ぐことができなくなるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−363062号公報
【特許文献2】特開2007−14453号公報
【特許文献3】特開2005−23282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、泡沫状に吐出させて使用する泡状清拭剤組成物において、泡沫状に安定して吐出し、十分な洗浄性を有し、清拭後の肌がべたつき難く、うるおい感が得られ、肌荒れ防止効果および経時安定性に優れた泡状清拭剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定のポリオキシエチレン化合物、特定の水溶性多価アルコール、特定のタンパク質および特定の植物エキスを含有する組成物が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記に示すa成分を0.1〜10質量%、b成分を0.1〜15質量%、c成分の乾燥残留物として0.001〜20質量%、d成分の乾燥残留物として0.0001〜1質量%含有することを特徴とする泡状清拭剤組成物である。
a.ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルまたはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル
b.炭素数2〜6で二価または三価の水溶性多価アルコール
c.セリシン
d.フトモモ科ユーカリ属植物であるユーカリプタス・グロブラス(Eucalyptus globulus)より得られるユーカリ抽出液
【発明の効果】
【0010】
本発明の泡状清拭剤組成物は、泡沫状に安定して吐出し、十分な洗浄性を有し、清拭後の肌がべたつき難く、うるおい感が得られ、肌荒れ防止効果および経時安定性に優れるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の泡状清拭剤組成物は、上記のa、b、cおよびdの各成分を含有する。まずa成分から順次説明する。
なお、本明細書において記号「〜」を用いて規定された数値範囲は「〜」の両端(上限および下限)の数値を含むものとする。例えば「2〜5」は2以上5以下を表す。
【0012】
(a)ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルまたはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル
本発明に用いられるa成分は、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル(a1)またはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(a2)であり、これらのうち一方を単独で用いてもよく、あるいは両者を併用してもよいが、併用することによってさらに優れた効果が得られる。
【0013】
ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル(a1)は、ソルビトールにエチレンオキシドを付加した後、脂肪酸でエステル化したものである。ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル(a1)においてエステル化される複数の脂肪酸は、それぞれ同一であっても異なっていてもよいが、同一のものであることが好ましい。
エステル化される脂肪酸部分の炭素数は、好ましくは12〜18である。かかる脂肪酸としては、具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸が挙げられ、好ましくは炭素数18のイソステアリン酸、ステアリン酸またはオレイン酸であり、より好ましくはイソステアリン酸またはオレイン酸である。
【0014】
ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル(a1)におけるエチレンオキシドの付加モル数は、好ましくは20〜50であり、より好ましくは20〜40、特に好ましくは20〜30である。これらのポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルのHLBは、6〜15が好ましく、より好ましくは9〜13である。
ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル(a1)として、具体的には、テトライソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等が挙げられ、中でも洗浄性とべたつきの点から、テトライソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビットが好ましい。
【0015】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(a2)は、ソルビタン脂肪酸エステル(モノエステル、トリエステル)にエチレンオキシドを付加重合したものである。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(a2)においてエステル化される複数の脂肪酸は、それぞれ同一であっても異なっていてもよいが、同一のものであることが好ましい。
エステル化される脂肪酸部分の炭素数は、好ましくは12〜18である。かかる脂肪酸としては、具体的には、上記ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル(a1)で挙げられた脂肪酸と同様であるが、その中でも好ましくはラウリン酸、ステアリン酸またはオレイン酸である。
【0016】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(a2)におけるエチレンオキシドの付加モル数は、好ましくは4〜60であり、より好ましく10〜40、特に好ましくは10〜30である。これらポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(a2)HLBは、8以上が好ましく、より好ましくは14〜17である。
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(a2)として、具体的には、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンが挙げられ、中でも洗浄性や吐出性の点から、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタンまたはモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンが好適に使用される。
【0017】
ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル(a1)またはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(a2)の含有量は、泡状清拭剤組成物中、0.1〜10質量%であり、好ましくは0.3〜8質量%、より好ましくは0.5〜7質量%である。ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル(a1)またはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(a2)の含有率が0.1質量%未満では洗浄性が低下し、泡沫状に安定して吐出しないおそれがあるばかりでなく、経時安定性が低下するおそれがあり、10質量%を超えると使用後にべたつき易くなるおそれがある。
なお、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル(a1)およびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(a2)を併用する場合は、両成分の総量が上記範囲内となるように調整する。
【0018】
(b)炭素数2〜6で二価または三価の水溶性多価アルコール
本発明で用いられるb成分は、炭素数2〜6で二価または三価の水溶性多価アルコールであり、分子内に水酸基を2個または3個有する炭素数2〜6の水溶性のアルコールであり、一般的に化粧料などで保湿剤として用いられる成分である。具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。中でも、使用時に泡沫状に安定して吐出し易いこと、清拭後に肌がべたつき難いこと、清拭後にうるおい感が得られること等の点で、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリンが好ましく挙げられる。これら水溶性多価アルコールから1種を単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0019】
b成分である炭素数2〜6で二価または三価の水溶性多価アルコールの含有量は、泡状清拭剤組成物中、0.1〜15質量%であり、好ましくは0.5〜12質量%、より好ましくは1.0〜10質量%である。炭素数2〜6で二価または三価の水溶性多価アルコール(b)の含有量が0.1質量%未満では清拭後のうるおい感の低下が生じたり、経時安定性が低下するおそれがあり、15質量%を超えると容器からの吐出性が低下したり、清拭後にべたつきが生じるおそれがある。
【0020】
(c)セリシン
本発明で用いられるc成分は、セリシンであり、フィブロインと共に繭糸を構成するシルクタンパク質である。繭糸は結晶性の高いフィブロインと非結晶性のセリシンという2種のタンパク質から構成されており、精錬によってセリシンを取り除いたフィブロインを主体とする繊維が絹糸である。
セリシンは水溶性であり、繭糸や生糸を熱水で煮沸処理することにより水中に溶出させることができる。この溶出液を得る際に、必要に応じて酸、アルカリまたは酵素を併用してセリシンを部分加水分解してもよい。この溶出液を分離生成することにより、高純度の水溶性シルクタンパク質水溶液を得ることができる。ここで用いる分離生成法としては、例えば、塩析、有機溶媒沈殿、等電点沈殿、ゲルろ過クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィ、逆浸透、塩析など公知の方法が挙げられ、これらの方法を単独、あるいは組み合せて用いることができる。さらに、熱風乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥などにより乾燥し粉体としてもよい。
【0021】
セリシンのアミノ酸組成は、ヒトの皮膚角質層にあるNMF(天然保湿因子)に非常によく似た特徴がある。セリシンの平均分子量は1,000〜70,000であることが好ましく、より好ましくは1,000〜50,000であり、アミノ酸組成としてセリンを20〜40モル%含有するものが特に好ましい。
平均分子量が1,000未満であると、セリシン本来の機能が十分に発揮されないおそれがある。平均分子量が70,000を超えると、水に対する溶解度が低下し、皮膚浸透性などのセリシン本来の機能が低下するおそれがある。
なお、平均分子量の測定は、ゲル濾過クロマトグラフィにより、測定機器としてLC9A(株式会社島津製作所製)を用い、カラムとしてSuperdex 75HR 10/30(ファルマシア社製)を用いて行うことができる。溶離液には0.2M塩化ナトリウムを含む0.05Mトリス塩酸緩衝液(pH7.0)を用い、流速0.7mL/分、カラム温度25℃、ペプチド検出波長275nmの条件で測定することができる。分子量マーカーには、Gel Filtraion Calibration Kit LMW(GEヘルスケア社製)とAprotinin(シグマアルドリッチ社製)を併せて使用することができる。
さらに、アミノ酸組成の測定は、セリシンを塩酸で加水分解処理した後、高速液体クロマトグラフィにより行なうことができる。測定機器としてLC10A(株式会社島津製作所製)を用い、カラムとしてshim−pack Amino−Na(株式会社島津製作所製)を用い、OPA法により検出することができる。
【0022】
c成分であるセリシンの含有量は、泡状清拭剤組成物中、乾燥残留物として0.001〜20質量%であり、好ましくは0.005〜15質量%であり、より好ましくは0.005〜10質量%であり、さらに好ましくは0.01〜1質量%であり、特に好ましくは0.01〜0.8質量%である。セリシンの含有量が0.001質量%未満であると清拭後に肌のべたつきが生じるおそれがあると共に、十分なうるおい感が得られず、肌荒れが生じるおそれがある。また、セリシンの含有量が20質量%を越えると経時安定性が低下するおそれがあるだけでなくコスト的にも不利である。
本発明における乾燥残留物とは、通常、抽出液を105℃で乾燥するか、または減圧乾固して溶媒を除去したときの残留物である溶質をいう。なお、抽出溶媒が不揮発性である場合には、ガスクロマトグラフィ、高速クロマトグラフィなどにより溶媒量を定量した値から、溶質量を算出し、乾燥残留物量とみなすことができる。
【0023】
(d)ユーカリ抽出液
本発明で用いられるd成分は、ユーカリ抽出液であり、フトモモ科ユーカリ属植物であるユーカリプタス・グロブラス(Eucalyptus globulus)およびその近縁種から得られるものである。
ユーカリ抽出液の製造に用いる植物体の部位としては、葉が好ましく、特に萌芽から3年以内の枝につく幼葉が清拭後のべたつき、うるおい感、肌荒れ防止の面でより好ましい。幼葉は、対生で、卵形であり、白い粉を吹いたような表面をしている。一方、成葉は、互生で、披針形であり、全縁(葉の縁がなめらか)である。したがって、ユーカリプタス・グロブラスおよびその近縁種の幼葉と成葉は外見上、明確に区別が可能である。
【0024】
ユーカリプタス・グロブラスおよびその近縁種の葉を原料として溶媒抽出することによって、本発明で用いられるユーカリ抽出液が得られる。ユーカリ抽出液を得るために溶媒抽出する際は、生葉をそのままで溶媒抽出しても良いが、抽出効率を考えると、生細切、乾燥、粉砕等の処理を行った後に溶媒抽出を行うことが好ましい。
抽出に使用する溶媒としては、例えば、水、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール,グリセリン等の多価アルコール、エチルエーテル、プロピルエーテル等のエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、アセトン、エチルメチルケトン等のケトンなどの極性有機溶媒を用いることができる。また、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等を用いても良い。これら溶媒のうち1種を単独で使用しても良く、また2種以上の混合物を使用しても良い。
これら溶媒のなかでも、水、エタノール、プレピレングリコール、1,3−ブチレングリコールから選ばれる1種または2種以上の混合物を使用することが好ましく、より好ましくはエタノールと水の混合物である。
【0025】
上記溶媒による抽出液は、そのままでも本発明の泡状清拭剤組成物に含有させることができ、また様々な処理を行なったものを含有させることができる。例えば、抽出液を希釈した希釈液;抽出液を濃縮、乾固、凍結乾燥して得られた濃縮液、ペースト、粉末;得られた濃縮液、ペースト、粉末を水や有機極性溶媒で希釈あるいは溶解した希釈液、溶液;あるいは効果を損なわない範囲で脱色、脱臭、脱塩等の精製処理を行った精製物;カラムクロマトグラフィ等による分画処理を行った処理物を本発明の泡状清拭剤組成物に含有させることができる。また、抽出液またはその処理物をリポソーム等のベシクルやマイクロカプセル等に内包させて用いることもできる。
【0026】
ユーカリ抽出液の含有量は、泡状清拭剤組成物中、乾燥残留物として0.0001〜1質量%であり、好ましくは0.0005〜0.5質量%、より好ましくは0.001〜0.3質量%である。ユーカリ抽出液の含有量が乾燥残留物として0.0001質量%未満であると、べたつき感や肌荒れが生じ、うるおい感が低下するおそれがあり、また、1質量%を超えると、経時安定性に問題を生じるおそれがあるだけでなくコスト的にも不利である。
本発明における乾燥残留物とは、通常、抽出液を105℃で乾燥するか、または減圧乾固して溶媒を除去したときの残留物である溶質をいう。なお、抽出溶媒が不揮発性である場合には、ガスクロマトグラフィ、高速クロマトグラフィなどにより溶媒量を定量した値から、溶質量を算出し、乾燥残留物量とみなすことができる。
【0027】
本発明の泡状清拭剤組成物は、a成分〜d成分を公知の混合方法により調製することができ、通常、フォーマー容器に充填されて使用される。フォーマー容器としては、例えば、トリガー式、スクイズ式、エアゾール式、またはポンプ式などのフォーマー容器が好適に使用される。これらの中でも、使用性の点から、キャップの頭部を手指で押圧することにより泡状清拭剤組成物を泡沫状に吐出させるポンプ式フォーマー容器がより好適に使用される。
フォーマー容器は単数または複数の一定の孔径を有する多孔体を有する。多孔体としては、ネット、スポンジなどが挙げられるが、目詰まり解消の点からネットを用いることが好ましい。ネットのメッシュは、好ましくは100〜400メッシュである。このようなフォーマー容器を用いることによって、上記組成物と空気とを所定の割合で混合し、使用時においてクリーミィな泡を形成することができる。
【0028】
本発明の泡状清拭剤組成物には、本発明の性能を損なわない範囲で、化粧料に常用されている添加剤を配合することも可能である。
【実施例】
【0029】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
〔実施例1〜7および比較例1〜5〕
表1および表2に示す泡状清拭剤組成物を調製し、フォーマー容器〔M1ポンプフォーマー、容器(50ml)、大和製罐(株)製〕に充填して、下記の方法により評価を行なった。結果を表1および表2に示す。なお、表1および表2において、各成分の数値は組成物全量中の含有量(質量%)を示す。
【0030】
(1)吐出性
13名の女性(32才〜45才)および7名の男性(33才〜44才)をパネラーとし、フォーマー容器より取り出した泡状清拭剤組成物を身体に直接塗布して清拭する際の吐出性について下記のように判断した。
2点:容器からの吐出時に、泡沫状に安定して吐出したと感じた場合。
1点:容器からの吐出時に、泡沫状に吐出しにくいと感じた場合。
0点:容器からの吐出時に、泡沫状で吐出しないと感じた場合。
【0031】
さらに、全てのパネラーの平均点から以下の通りに判定した。
○・・平均点が1.4点以上、2.0点以下であり、かつ0点を付けたパネラーがいない。
△・・平均点が0.7点以上、1.4点未満である。
×・・平均点が0点以上、0.7点未満である。
【0032】
(2)洗浄性
泡状清拭剤組成物を原液のまま、(財)洗濯化学協会製「湿式人工汚染布」(JIS−C9606規格)を用いてTerg−O−tometerにより40℃で10分間洗浄してから同量の水で3回すすいだ。その後、脱水、風乾してから日本電色工業(株)製「測色色差計 ZE2000」により反射率の測定を行い、洗浄前と洗浄後の反射率の変化率から下記のように計算して洗浄力を評価した。洗浄力が60%以上のものを洗浄性の良好な泡状清拭剤組成物であると評価した。
【0033】
洗浄率(%)=(C−B)/(A−B)×100
A:白布の反射率
B:洗浄前の汚染布の反射率
C:洗浄後の汚染布の反射率
【0034】
洗浄率から以下の通りに判定した。
○・・洗浄力が60%以上のもの
×・・洗浄力が60%未満のもの
【0035】
(3)清拭後の肌のべたつき
13名の女性(32才〜45才)および7名の男性(33才〜44才)をパネラーとし、泡状清拭剤組成物を身体に直接塗布して清拭後、15分後の肌のべたつきについて下記のように判定した。
2点:清拭後の肌がべたつかないと感じた場合。
1点:清拭後の肌がややべたつくと感じた場合。
0点:清拭後の肌がべたついて気持ち悪いと感じた場合。
【0036】
さらに、全てのパネラーの平均点から以下の通りに判定した。
○・・平均点が1.4点以上、2.0点以下であり、かつ0点を付けたパネラーがいない。
△・・平均点が0.7点以上、1.4点未満である。
×・・平均点が0点以上、0.7点未満である。
【0037】
(4)使用後の肌のうるおい
13名の女性(32才〜45才)および7名の男性(33才〜44才)をパネラーとし、泡状清拭剤組成物を身体に直接塗布して身体を拭いてから15分後の肌のうるおいについて下記のように判定した。
2点:肌にうるおいがあり、健康な肌であると感じた場合。
1点:肌がややかさかさしてややうるおいがないと感じた場合。
0点:肌がかさかさしてうるおいが無いと感じた場合。
【0038】
さらに、全てのパネラーの平均点から以下の通りに判定した。
○・・平均点が1.4点以上、2.0点以下であり、かつ0点を付けたパネラーがいない。
△・・平均点が0.7点以上、1.4点未満である。
×・・平均点が0点以上、0.7点未満である。
【0039】
(5)肌荒れ防止効果
敏感肌の女性7名(32才〜40才)および敏感肌の男性3名(33才〜37才)をパネラーとし、泡状清拭剤組成物を1日2回ずつ2週間連続で使用したときの肌の状態について下記のように判定した。
なお、使用法は、泡状清拭剤組成物が充填されたフォーマー容器を3プッシュした後に、135mm×190mmの乾燥した不織布で軽く汚れを拭き取るように数回軽く擦ることとした。
2点:全く肌が荒れないと感じた場合。
1点:わずかに肌荒れが生じたと感じた場合。
0点:明らかに肌が荒れたと感じた場合。
【0040】
さらに、全てのパネラーの平均点から以下の通りに判定した。
○・・平均点が1.4点以上、2.0点以下であり、かつ0点を付けたパネラーがいない。
△・・平均点が0.7点以上、1.4点未満である。
×・・平均点が0点以上、0.7点未満である。
【0041】
(6)経時安定性
泡状清拭剤組成物を透明ガラス容器に密封して5℃、25℃、40℃で3ヶ月間保存し、その外観を観察して、下に示す3段階で評価した。
○:安定性良好(いずれの温度でも外観の変化がない。)
△:安定性やや不良(いずれかの温度において、若干のおり、沈殿を生じる、または若干の着色を生じる。)
×:安定性不良(いずれかの温度において、おり、沈殿を生じる、または分離する、もしくは着色が著しい。)
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
(注1)日油(株)製「ユニオックスST−30IS」、テトライソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット(30E.O)
(注2)日油(株)製「ウィルサーフTF−20」、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O)
(注3)日油(株)製「ウィルサーフTF−80」、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O)
(注4)セーレン(株)製「セリシンパウダーCP2」(乾燥残留物:100質量%、平均分子量35,500、セリン31モル%)
(注5)一丸ファルコス(株)製「シルクゲンGソルブルS」セリシン(乾燥残留物:5.5質量%)、セリシン5質量%、1,3−ブチレングリコール5質量%、水89.3%、メチルパラベン0.2質量%
(注6)日油(株)製「ユーカリ抽出液ET」(幼葉からの乾燥残留物:1.6質量%)
(注7)一丸ファルコス(株)製「ファルコレックス ユーカリB」(乾燥残留物:0.6質量%)、ユーカリエスキ0.6質量%、1,3−ブチレングリコール49.7質量%、水49.7質量%
(注8)香栄興業(株)製「FragranceF3−2373」香料
(注9)花王(株)製「エマール0」、ラウレス硫酸ナトリウム(97質量%以上)
(注10)一丸ファルコス(株)製「シルクゲンGパウダー」、フィブロイン末(乾燥残留物:100質量%)
【0045】
実施例1〜7の結果より、本発明の泡状清拭剤組成物は、いずれも泡沫状に安定して吐出し、十分な洗浄性を有し、清拭後の肌がべたつき難く、うるおい感が得られ、肌荒れ防止効果および経時安定性に優れていた。
【0046】
一方、比較例1〜6では十分な性能が得られていない。
すなわち、比較例1ではa成分に代えてa成分以外の界面活性剤が配合されていることから、洗浄率は実施例よりも高いものの、清拭後のうるおい感が得られず、肌荒れが生じていた。
比較例2ではa成分が配合されていないことから、吐出性と洗浄性が不良であり、経時安定性に問題が生じる結果であった。
また、比較例3ではb成分が配合されていないことから、うるおい感が得られず、経時安定性が劣る結果であった。
比較例4ではc成分が配合されていないことから、やや洗浄率が低下し、うるおい感が得られず、肌荒れが生じ易くなっていた。
比較例5ではd成分が配合されていないことから、肌あれが生じる結果となった。
比較例6ではc成分に代えてc成分以外のシルク成分が配合されていることから、経時安定性において問題が生じる結果となった。