【実施例】
【0028】
以下、本発明について実施例、および比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
実施例及び比較例で得た膜材を、以下の評価を行った。
1、耐炎性能
実施例・比較例で作成した膜材について、建築基準法第2条第9号の二のロ(防火戸
その他の政令で定める防火設備)の認定に係る性能評価法に準じて、耐炎性能を評価し
た。ただし、試験に供した膜材の大きさは幅200cm×高さ100mとし、幅190
cm×高さ90cmの開口部を有する標準仕様の周壁(木造軸組工法に厚さ12.5m
mの石膏ボードの2枚重ね張り)の、開口部内側(加熱側)に、試料固定用の鉄枠
(枠部幅5cm)を介して隙間がない様固定し、ISO834に準拠した標準加熱曲線
に従って加熱を行い、20分(加熱温度781℃)及び30分(加熱温度842℃)の
時点で、下記の項目についてそれぞれ以下の様に評価・判定した。
(1)非加熱面への火炎の噴出
A1:非加熱側への火炎の噴出がない
A2:非加熱側への火炎の噴出があったが10秒以内であった
B:非加熱側へ10秒を超えて継続する火炎の噴出があった
*判定:A1およびA2を適合とし、Bを不適合とした
(2)非加熱面での発炎の有無
A1:非加熱側に発炎を生じない
A2:非加熱側に発炎を生じたが、10秒以内であった
B:非加熱側に10秒を超えて継続する発炎を生じた
*判定:A1およびA2を適合とし、Bを不適合とした
(3)火炎が通る亀裂等の損傷及び隙間の有無
A:火炎が通る亀裂等の損傷及び隙間を発生しない
B:火炎が通る亀裂等の損傷及び隙間を発生した
*判定:Aを適合とし、Bを不適合とした
2、燃焼試験(ASTM−E1354:コーンカロリーメーター試験法)
実施例及び比較例で得た膜材に対して、輻射電気ヒーターによる50kW/m
2の輻射
熱を20分間照射する発熱性試験を行い、20分間の総発熱量と発熱速度を測定すると
ともに、試験後の膜材外観を観察し、以下の様に判定した。(いずれもAを適合とし、
Bを不適合とした)
(1)総発熱量
A:8MJ/m
2以下
B:8MJ/m
2を越えた
(2)発熱速度
A:10秒以上継続して200kW/m
2を超えない
B:10秒以上継続して200kW/m
2を超えた
(3)外観観察
A:直径0.5mmを超えるピンホール陥没痕の発生がない
B:直径0.5mmを超えるピンホール陥没痕が発生した
3、屈曲耐久性
JISP8115 紙及び板紙のMIT型試験機による耐折り強さ試験方法に準じて、
試験片に9.8Nの荷重を掛けた状態で往復折り曲げを繰返し、膜材が破断した時の
折り曲げ回数(1往復で1回とする)を記録した。なお、膜材の縦(経)方向及び
横(緯)方向とも各5点の試験片について試験を行い、縦横それぞれの平均回数をとり、
その値について以下の様に評価した。
A1:縦横とも30000回以上であり、屈曲耐久性に優れた膜材である
A2:縦横何れか一方、或いは両方が30000回未満であるが、縦横とも20000
回以上であり、屈曲耐久性を有する膜材である。
B:縦横何れか一方、或いは両方が20000回未満であり、屈曲耐久性の劣る膜材で
ある
*判定:A1およびA2を適合とし、Bを不適合とした
4、可視光透過率
実施例及び比較例で得た膜材の可視光透過率を、分光側色計CM−3600d(コニカ
ミノルタ(株)製)を使用しJISZ 8722に従って測定した。
【0030】
[実施例1]
<基布>
1350dtexのガラス(Eガラス)マルチフィラメント(フィラメント単糸直径6
μm)糸条を、経糸及び緯糸に用いた平織布(織密度:経糸29本/インチ×緯糸32本/インチ)を、ガラスクロス製基布1(質量340g/m
2、空隙率0%)として用いた。
<撥油処理>
上記ガラスクロス製基布1を下記配合1のフッ素系化合物含有撥油処理組成物に浸漬し、引き上げると同時にマングルロールで圧搾し、基布に撥油処理剤組成物を完全に含浸させた。次いで、オーブン内で140℃×1分加熱して、フッ素系化合物で全体を撥油処理されたガラス繊維製基布を得た。(付着量:固形分で1.7g/m
2・・・ガラスクロス製基布の質量に対して0.5質量%)
(配合1)フッ素系化合物撥油処理組成物
フッ素系撥油処理剤 5質量部
(旭硝子(株)社製:商品名「アサヒガードE−300D」)
水 95質量部
<難燃性樹脂被覆層の形成>
撥油処理されたガラスクロス製基布を、下記配合2の軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物からなるペーストゾルに浸漬し、引き上げると同時にマングルロールで圧搾し、次いでオーブン内で190℃×1分加熱して、撥油処理したガラスクロス製基布上に、両面合わせて100g/m
2の難燃性樹脂被覆層を有する実施例1の膜材を得た。なお、配合2において、反応性ウレタン樹脂としてポリエステルポリオールとイソシアヌレート化HDIからなる2液硬化型ウレタン樹脂を用い、熱線反射性粒子として波長900nmに反射ピークを有する薄片状の干渉雲母粒子を用いた。得られた膜材において、難燃性樹脂被覆層に対して反応性ウレタン樹脂が4.7質量%、熱線反射性粒子が3.1質量%含まれており、ガラスクロス製基布の質量(撥油処理前)と難燃性樹脂被覆層との質量比は1:0.29であった。この膜材を各種試験に供した結果を表1に示す。
(配合2)軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂(数平均分子量1700) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 50質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 15質量部
三酸化アンチモン(難燃剤粒子) 10質量部
波長900nmに反射ピークを有する薄片状の干渉雲母粒子 6質量部
(メルク(株)製:商品名「ソーラーフレア870」)
ポリエステル系ポリオール(固形分100%) 6質量部
(日本ポリウレタン工業(株)製:商品名「ニッポラン1004」)
イソシアヌレート化HDI(固形分100%) 3質量部
(日本ポリウレタン工業(株)製:商品名「コロネートHX」)
安定剤:Ba−Zn系 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
希釈溶剤:トルエン 20質量部
【0031】
[実施例2]
配合2の代わりに下記配合3の軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物から難燃性樹脂被覆層を形成した以外は、実施例1と同様にして実施例2の膜材を得た。配合3において、熱線反射性粒子として、干渉雲母粒子に代えて、重量平均粒子径1.0μmの酸化チタン粒子(ルチル型)を用いた。得られた膜材の難燃性樹脂被覆層の質量は、両面合わせて105g/m
2(ガラスクロス製基布の質量(撥油処理前)と難燃性樹脂被覆層との質量比は1:0.31)であった。難燃性樹脂被覆層に対して反応性ウレタン樹脂が4.6質量%、熱線反射性粒子が5.1質量%含まれていた。この膜材を各種試験に供した結果を表1に示す。
(配合3) 軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂(数平均分子量1700) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 50質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 15質量部
三酸化アンチモン(難燃剤粒子) 10質量部
重量平均粒子径1.0μmの酸化チタン粒子(ルチル型) 10質量部
ポリエステル系ポリオール(固形分100%) 6質量部
(日本ポリウレタン工業(株)製:商品名「ニッポラン1004」)
イソシアヌレート化HDI(固形分100%) 3質量部
(日本ポリウレタン工業(株)製:商品名「コロネートHX」)
安定剤:Ba−Zn系 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
希釈溶剤:トルエン 20質量部
【0032】
[実施例3]
配合2の代わりに下記配合4の軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物から難燃性樹脂被覆層を形成した以外は、実施例1と同様にして実施例3の膜材を得た。配合4において、熱線反射性粒子として、配合2で用いた干渉雲母粒子と配合3で用いた酸化チタン粒子(ルチル型)を併用して用いた。得られた膜材の難燃性樹脂被覆層の質量は、両面合わせて105g/m
2(ガラスクロス製基布の質量(撥油処理前)と難燃性樹脂被覆層との質量比は1:0.31)であった。難燃性樹脂被覆層に対して反応性ウレタン樹脂が4.5質量%、熱線反射性粒子が4.0質量%含まれていた。この膜材を各種試験に供した結果を表1に示す。
(配合4) 軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂(数平均分子量1700) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 50質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 15質量部
三酸化アンチモン(難燃剤粒子) 10質量部
波長900nmに反射ピークを有する薄片状の干渉雲母粒子 3質量部
(メルク(株)製:商品名「ソーラーフレア870」)
重量平均粒子径1.0μmの酸化チタン粒子(ルチル型) 5質量部
ポリエステル系ポリオール(固形分100%) 6質量部
(日本ポリウレタン工業(株)製:商品名「ニッポラン1004」)
イソシアヌレート化HDI(固形分100%) 3質量部
(日本ポリウレタン工業(株)製:商品名「コロネートHX」)
安定剤:Ba−Zn系 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
希釈溶剤:トルエン 20質量部
【0033】
[実施例4]
配合2の代わりに下記配合5の軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物から難燃性樹脂被覆層を形成した以外は、実施例1と同様にして実施例4の膜材を得た。配合5において、2液硬化型ウレタン系樹脂の代わりに、イソシアネート末端を有するウレタンプレポリマーからなる1液硬化型ウレタン系樹脂を用いた。得られた膜材の難燃性樹脂被覆層の質量は両面合わせて100g/m
2(ガラスクロス製基布の質量(撥油処理前)と難燃性樹脂被覆層との質量比1:0.29)、難燃性樹脂被覆層に対して反応性ウレタン樹脂が5.2質量%、熱線反射性粒子が3.1質量%含まれていた。この膜材を各種試験に供した結果を表1に示す。
(配合5) 軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂(数平均分子量1700) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 50質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 15質量部
三酸化アンチモン(難燃剤粒子) 10質量部
波長900nmに反射ピークを有する薄片状の干渉雲母粒子 6質量部
(メルク(株)製:商品名「ソーラーフレア870」)
1液硬化型ウレタンプレポリマー(固形分100%) 10質量部
(日本ポリウレタン工業(株)製:商品名「コロネート2011」)
安定剤:Ba−Zn系 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
希釈溶剤:トルエン 20質量部
【0034】
[実施例5]
ガラスクロス製基布1の代わりに、375dtexのガラス(Eガラス)マルチフィラメント(フィラメント単糸直径9μm)糸条を経糸及び緯糸に用いた平織布(織密度:経糸32本/インチ×緯糸32本/インチ、質量100g/m
2、空隙率2.5%)からなるガラスクロス製基布2を用い、配合2の希釈溶剤を5質量部とした以外は、実施例1と同様にして、実施例5の膜材を得た。ガラスクロス製基布2に対する撥油処理剤の付着量は固形分で1.7g/m
2(ガラスクロス製基布の質量に対して0.5質量%)であり、得られた膜材の難燃性樹脂被覆層の質量は、両面合わせて110g/m
2(ガラスクロス製基布の質量(撥油処理前)と難燃性樹脂被覆層との質量比1:1.1)、難燃性樹脂被覆層に対して反応性ウレタン樹脂が4.7質量%、熱線反射性粒子が3.1質量%含まれていた。この膜材を各種試験に供した結果を表1に示す。
【0035】
[実施例6]
配合2の代わりに配合3を用い、配合3の希釈溶剤を5質量部とした以外は、実施例5と同様にして、実施例6の膜材を得た。ガラスクロス製基布2に対する撥油処理剤の付着量は固形分で1.7g/m
2(ガラスクロス製基布の質量に対して0.5質量%)であり、得られた膜材の難燃性樹脂被覆層の質量は、両面合わせて117g/m
2(ガラスクロス製基布の質量(撥油処理前)と難燃性樹脂被覆層との質量比1:1.2)、難燃性樹脂被覆層に対して反応性ウレタン樹脂が4.7質量%、熱線反射性粒子が3.1質量%含まれていた。この膜材を各種試験に供した結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
実施例1〜6の膜材は、本発明の要件を全て満たした膜材であり、耐炎性能、燃焼試験の全ての項目に適合し、防火設備に用いることのできる耐炎性に優れた膜材であった。また、実施例1〜6の膜材は、全て往復折り曲げ20000回以上の屈曲耐久性を有するため、巻き取りや巻き出しを繰返されるシャッターやスクリーンに適して用いることとができ、更に、可視光透過率が15以上であるため、この膜材を用いたシャッターやスクリーンが閉じた状態であっても、膜材の向こう側で発生した火災を認識することができる、防災上非常に有益なものであった。実施例1と実施例2および3の比較では、実施例1の耐屈曲性が実施例2および3比べて優れていたが、これは、実施例2および3で熱線反射性粒子として用いた酸化チタン粒子の硬度が高く(モース硬度7.0〜7.5)、繰返し屈曲の際にガラスマルチフィラメント糸条の表面が傷ついたためであると考えられる。しかし、ガラスクロス製基布の全体がフッ素系化合物で撥油処理されていることで、ガラスマルチフィラメント糸条内部には熱線反射性粒子が侵入することは無く、実用上充分な屈曲耐久性を有していた。実施例1と4とは、難燃性樹脂被覆層に含まれる反応性ウレタン樹脂が異なり、実施例1がポリオール成分とイソシアネート基含有化合物とを含む2液硬化型ウレタン系樹脂であり、実施例4がイソシアネート末端を有するウレタンプレポリマーからなる1液硬化型ウレタン系樹脂であったが、評価結果には差がなく、いずれも本発明に適して用いられる事が確認された。実施例5は、使用したガラスクロス製基布が実施例1よりも軽く、同じ配合の難燃性樹脂被覆層の質量は同程度であり、ガラスクロス製基布に対する難燃性樹脂被覆層の質量比が多かったため、加熱30分での耐炎性能の評価にわずかに差が出たものの、評価基準には適合していた。実施例6もまた、同じ配合の実施例2との比較で、ガラスクロス製基布に対する難燃性樹脂被覆層の質量比が多かったため、加熱30分での耐炎性能の評価にわずかに差が出たものの、評価基準には適合していた。
【0038】
[比較例1]
撥油処理を省略した以外は、実施例1と同様にして比較例1の膜材を得た。得られた膜材の難燃性樹脂被覆層の質量は、両面合わせて160g/m
2(ガラスクロス製基布の質量と難燃性樹脂被覆層との質量比1:0.47)、難燃性樹脂被覆層に対して反応性ウレタン樹脂が4.7質量%、熱線反射性粒子が3.1質量%含まれていた。この膜材を各種試験に供した結果を表2に示す。
【0039】
比較例1の膜材は、難燃性樹脂被覆層の付着が不均一で外観が悪く、屈曲耐久性が不適合であり、巻き取りや巻き出しを繰り返されるシャッターやスクリーンに適さない膜材であった。また、耐炎性能、燃焼性能において不適合評価があり、防火設備に用いることのできない膜材であった。外観については、ガラスクロス製基布に撥油処理を行わなかった為に、ガラスクロス製基布が加工液に触れた瞬間、希釈溶剤が先に浸透して基布周辺の液粘度が不均一になったことが原因であると考えられる。屈曲耐久性については、難燃性樹脂被覆層形成時に、熱線反射性粒子や難燃剤粒子がガラスマルチフィラメント糸条内部に入り込み、繰返し屈曲を行った際に部分的に大きな応力がかかったこと、および、不均一な難燃性樹脂被覆層において、部分的に厚さが異なり、厚さの異なる部分に大きな応力がかかったこと、などが原因であると考えられる。
【0040】
[比較例2]
撥油処理を省略した以外は、実施例2と同様にして比較例2の膜材を得た。得られた膜材の難燃性樹脂被覆層の質量は、両面合わせて165g/m
2(ガラスクロス製基布の質量と難燃性樹脂被覆層との質量比1:0.49)、難燃性樹脂被覆層に対して反応性ウレタン樹脂が4.5質量%、熱線反射性粒子が5.1質量%含まれていた。この膜材を各種試験に供した結果を表2に示す。
【0041】
比較例2の膜材も、比較例1と同様ガラスクロス製基布に撥油処理を行わなかった為に、難燃性樹脂被覆層の付着が不均一で外観が悪く、屈曲耐久性が不適合であり、巻き取りや巻き出しを繰り返されるシャッターやスクリーンに適さない膜材であった。また、耐炎性能、燃焼性能において不適合評価があり、防火設備に用いることのできない膜材であった。なお、比較例2は耐炎性能評価(30分)において亀裂が発生しており、比較例1よりも劣る結果であった。これは、熱線反射性粒子として用いられた酸化チタン粒子が、ガラスよりも高い硬度を有しており、それがガラスマルチフィラメント糸条内部に入り込んで繊維を傷つけたためであると考えられる。
【0042】
[比較例3]
配合1のフッ素系化合物撥油処理組成物の代わりに下記配合6のパラフィン系撥水処理組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして比較例3の膜材を得た。ガラスクロス製基布に対するパラフィン系撥水処理の付着量は固形分で1.6g/m
2(ガラスクロス製基布の質量に対して0.5質量%)、得られた膜材の難燃性樹脂被覆層の質量は、両面合わせて120g/m
2(ガラスクロス製基布の質量(撥水処理前)と難燃性樹脂被覆層との質量比1:0.35)、難燃性樹脂被覆層に対して反応性ウレタン樹脂が4.7質量%、熱線反射性粒子が3.1質量%含まれていた。この膜材を各種試験に供した結果を表2に示す。
(配合6)撥水処理組成物
パラフィン系撥水処理剤 8質量部
(大原パラジウム(株)社製:商品名「パラジウムNT」)
水 92質量部
【0043】
比較例3の膜材は、ガラスクロス製基布に対してパラフィン系の撥水処理を行ったことで、何も処理を行わなかった比較例1に比べて、外観については改善が見られたものの、屈曲耐久性については不適合であり、巻き取りや巻き出しを繰り返されるシャッターやスクリーンに適さない膜材であった。パラフィン系の撥水処理ではガラスクロス製基布へのペーストゾルの浸透抑制が不充分であり、難燃性樹脂被覆層形成時に、熱線反射性粒子や難燃剤粒子がガラスマルチフィラメント内部に入り込み、屈曲耐久性が損なわれたと考えられる。また、耐炎性能、燃焼性能において不適合評価はなかったものの、熱線反射性粒子がガラスマルチフィラメント内部に入り込んでしまったため基布に到達する熱線を反射する効果が減じ、実施例1に比べて耐炎性能について、やや劣っていた。
【0044】
[比較例4]
配合2の代わりに下記配合7の軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物から難燃性樹脂被覆層を形成した以外は、実施例1と同様にして比較例4の膜材を得た。得られた膜材の難燃性樹脂被覆層の質量は両面合わせて100g/m
2(ガラスクロス製基布の質量(撥油処理前)と難燃性樹脂被覆層との質量比1:0.29)、難燃性樹脂被覆層に対して熱線反射性粒子は3.3質量%含まれていたが、反応性ウレタン樹脂を含んでいなかった。この膜材を各種試験に供した結果を表2に示す。
(配合7) 軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂(数平均分子量1700) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 50質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 15質量部
三酸化アンチモン(難燃剤粒子) 10質量部
波長900nmに反射ピークを有する薄片状の干渉雲母粒子 6質量部
(メルク(株)製:商品名「ソーラーフレア870」)
安定剤:Ba−Zn系 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
希釈溶剤:トルエン 20質量部
【0045】
比較例4の膜材は、実施例1の難燃性樹脂被覆層から2液硬化型ウレタン系樹脂を省略した膜材であり、実施例1に比べて屈曲耐久性が大きく劣っており、シャッターやスクリーンなど巻き出しや巻き取りを繰り返す用途に適さない膜材であった。これは、ガラスクロス製基布と難燃性樹脂被覆層の接着性が低いため、屈曲試験中に難燃性樹脂被覆層が脱落し、ガラスマルチフィラメント糸条が直接繰返し折り曲げに曝されて傷つき、切れ易くなったためであると考えられる。
【0046】
[比較例5]
配合2の代わりに下記配合8の軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物から難燃性樹脂被覆層を形成した以外は、実施例1と同様にして比較例4の膜材を得た。得られた膜材の難燃性樹脂被覆層の質量は両面合わせて100g/m
2(ガラスクロス製基布の質量(撥油処理前)と難燃性樹脂被覆層との質量比1:0.29)、難燃性樹脂被覆層に対して反応性ウレタン樹脂が12.8質量%、熱線反射性粒子が2.9質量%含まれていた。この膜材を各種試験に供した結果を表2に示す。
(配合8) 軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂(数平均分子量1700) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 50質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 15質量部
三酸化アンチモン(難燃剤粒子) 10質量部
波長900nmに反射ピークを有する薄片状の干渉雲母粒子 6質量部
(メルク(株)製:商品名「ソーラーフレア870」)
ポリエステル系ポリオール(固形分100%) 15質量部
(日本ポリウレタン工業(株)製:商品名「ニッポラン1004」)
イソシアヌレート化HDI(固形分100%) 12質量部
(日本ポリウレタン工業(株)製:商品名「コロネートHX」)
安定剤:Ba−Zn系 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
希釈溶剤:トルエン 20質量部
【0047】
比較例4の膜材は、難燃性樹脂被覆層に含まれる反応性ウレタン樹脂の量が、難燃性樹脂被覆層に対して12.8質量%であり、10質量%を超えていた。そのため、難燃性樹脂被覆層が硬くなって屈曲耐久性が不適合となり、シャッターやスクリーンなど巻き出しや巻き取りを繰り返す用途に適さない膜材であった。
【0048】
[比較例6]
配合2の代わりに下記配合9の軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物から難燃性樹脂被覆層を形成した以外は、実施例1と同様にして比較例5の膜材を得た。得られた膜材の難燃性樹脂被覆層の質量は両面合わせて100g/m
2(ガラスクロス製基布の質量(撥油処理前)と難燃性樹脂被覆層との質量比1:0.29)、難燃性樹脂被覆層に対して反応性ウレタン樹脂が4.8質量%含まれていたが、熱線反射性粒子を含んでいなかった。この膜材を各種試験に供した結果を表2に示す。
(配合9) 軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂(数平均分子量1700) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 50質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 15質量部
三酸化アンチモン(難燃剤粒子) 10質量部
ポリエステル系ポリオール(固形分100%) 6質量部
(日本ポリウレタン工業(株)製:商品名「ニッポラン1004」)
イソシアヌレート化HDI(固形分100%) 3質量部
(日本ポリウレタン工業(株)製:商品名「コロネートHX」)
安定剤:Ba−Zn系 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
希釈溶剤:トルエン 20質量部
【0049】
比較例6の膜材は、難燃性樹脂被覆層に熱線反射性粒子を含まないため、耐炎性能の評価において不適合となり、また、燃焼試験において、発熱速度が10秒以上継続して200kW/m
2を超えて不適合となった。
【0050】
[比較例7]
配合2の代わりに下記配合10の軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物から難燃性樹脂被覆層を形成した以外は、実施例1と同様にして比較例6の膜材を得た。得られた膜材の難燃性樹脂被覆層の質量は両面合わせて120g/m
2(ガラスクロス製基布の質量(撥油処理前)と難燃性樹脂被覆層との質量比1:0.35)、難燃性樹脂被覆層に対して反応性ウレタン樹脂が3.1質量%含まれていた。この膜材を各種試験に供した結果を表2に示す。
(配合10) 軟質ポリ塩化ビニル樹脂組成物
乳化重合ポリ塩化ビニル樹脂(数平均分子量1700) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 50質量部
リン酸トリクレジル(可塑剤) 15質量部
三酸化アンチモン(難燃剤粒子) 10質量部
水酸化マグネシウム(難燃剤) 50質量部
熱膨張性黒鉛 50質量部
(東ソー(株)社製:商品名「フレームカットGREP−EG」)
ポリエステル系ポリオール(固形分100%) 6質量部
(日本ポリウレタン工業(株)製:商品名「ニッポラン1004」)
イソシアヌレート化HDI(固形分100%) 3質量部
(日本ポリウレタン工業(株)製:商品名「コロネートHX」)
安定剤:Ba−Zn系 2質量部
紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系 0.5質量部
希釈溶剤:トルエン 20質量部
【0051】
比較例7の膜材は、比較例6と同様難燃性樹脂被覆層に熱線反射性粒子を含まないが、 代わりに水酸化マグネシウムと熱膨張性黒鉛を含むため、耐炎性能及び燃焼試験の評価において適合となった。しかし、水酸化マグネシウムと熱膨張性黒鉛が多量に添加されていため屈曲耐久性に劣り、かつ可視光透過率が0%で、膜材を隔てると火災の発生を認識する事ができないため、防火シャッターや防火スクリーンには適さない膜材であった。
【0052】
【表2】