(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1に開示された技術は、湿り蒸気の流量及び圧力を検出するセンサの時定数が長く、また、測定対象の湿り蒸気を二相状態から気相状態に状態変化させ、さらに測定対象を気相状態で安定化させる必要があるため、乾き度の測定に時間がかかるという問題があり、湿り蒸気が安定するまでの過渡状態にあるときの乾き度測定には適さなかった。このため本願発明者は、特許文献2に記載されたような、湿り蒸気に光を通過させて湿り蒸気の乾き度を測定する技術の改良を研究してきた。
【0007】
しかしながら、光により湿り蒸気の乾き度を測定する技術では、湿り蒸気が流通する配管への光の入射部分や射出部分において熱損失が生じるため、湿り蒸気の凝縮や液相の停滞が発生し、湿り蒸気の乾き度を正確に測定できなくなるという問題があった。
【0008】
そこで、本願発明は、光による湿り蒸気の乾き度測定の際に発生する熱損失を抑制し高い精度で乾き度を測定することを課題の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者は、光を利用した湿り蒸気の乾き度の測定技術を鋭意研究したところ、具体的には、本発明は以下の手段を備えることにより、上記問題を克服し上記課題を解決することに想到した。
【0010】
(1)本発明の乾き度測定装置は、測定対象の湿り蒸気が流れる配管に設けられた入射開口から光を入射させる光入射部と、前記配管に設けられた射出開口から前記湿り蒸気を透過または反射した光を受けて検出信号を出力する受光部と、前記検出信号を参照して前記湿り蒸気の乾き度を特定する乾き度特定部と、前記入射開口および前記射出開口の少なくとも一方の
開口面における熱損失を
当該開口面に前記湿り蒸気が凝縮することを防止するように補償する熱損失補償装置と、を備える。
【0011】
本発明は、所望により、以下の構成を備えていてもよい。
(2)上記(1)において、前記熱損失補償装置は、発熱部と電力供給部とを有し、前記電力供給部は、前記発熱部に前記熱損失を補償する熱を発生させうる電力を供給する。
【0012】
(3)上記(2)において、前記発熱部は、電熱線が敷設されたラバーヒーターである。
【0013】
(4)前記ラバーヒーターは、前記入射開口および前記射出開口の少なくとも一方の周囲に設けられる。
【0014】
(5)上記(3)または(4)において、前記ラバーヒーターは、前記光入射部および前記受光部の少なくとも一方の周囲に設けられる。
【0015】
(6)上記(2)において、前記発熱部は、透明導電膜であり、前
記開口面に設けられる。
【0016】
(7)上記(2)〜(6)のいずれかにおいて、前
記開口面に温度センサを備え、前記電力供給部は、前記温度センサの検出信号に基づいて前記開口面の温度が前記湿り蒸気
が凝縮しない温度となるように前記発熱部に電力を供給する。
【0017】
(8)本発明の湿り蒸気配管は、測定対象の湿り蒸気が流れる配管であって、光を入射させる入射窓と、前記湿り蒸気を透過または反射した光を射出させる射出窓と、前記検出信号を参照して前記湿り蒸気の乾き度を特定する乾き度特定部と、前記入射窓および前記射出窓の少なくとも一方
の開口面において生ずる熱損失を
当該開口面に前記湿り蒸気が凝縮することを防止するように補償する熱損失補償装置と、を備える。
【0018】
なお、前記目的に限らず、後述する実施形態に示す解決原理を有する解決手段を得ることも本発明の他の目的の一つとして位置付けることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、光による湿り蒸気の乾き度測定の際に生ずる熱損失が効果的に補償されるので、湿り上記の凝縮や液相の停滞を抑制し、高い精度で乾き度を測定することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。即ち、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形(各実施例を組み合わせる等)して実施することができる。また、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付して表している。図面は模式的なものであり、必ずしも実際の寸法や比率等とは一致しない。図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることがある。
【0022】
(定義)
本明細書で使用する主たる用語を以下のとおりに定義する。
「蒸気」:各実施形態では、水蒸気のことを意味するが、気相部分と液相部分との二相状態となる物質の蒸気であればよく、水蒸気に限定されない。
「乾き度」:蒸気中の気相部分と液相部分との重量割合のことをいう。乾き度[%]=100[%]−湿り度[%]の関係がある。
「湿り蒸気」:乾き度χが0−100[%]の蒸気をいう。
「光の強度」(光強度):光(電磁波)の強さを表す物理量をいい、その称呼や単位に限定はない。例えば、放射強度、光度、光量子束密度など、それぞれ単位が異なるが相互に換算可能な物理量である。
【0023】
(実施形態1)
本実施形態1は、湿り蒸気用配管に設けられたサイトグラスのような構造を有する、光の入射開口および/または射出開口を利用して湿り蒸気の乾き度を測定する乾き度測定装置に関する。
【0024】
(構成)
図1に、本発明の実施形態1に係る乾き度測定装置の構成を説明する模式断面図を示す。
図1に示すように、本実施形態1における湿り蒸気用配管30は、測定対象の湿り蒸気SAを流通させる流体流通路であり、配管30内に光を透過させるためのサイトグラスとしての構造を備える。具体的には、配管30の側壁に入射開口A1および射出開口A2が設けられている。入射開口A1と射出開口A2とは、配管30の軸芯に対して対向した位置に設けられている。入射開口A1には入射側筒31が接続されており、射出開口A2には射出側筒32が設けられている。入射側筒31および射出側筒32の端縁には、フランジ31fおよび32fがそれぞれ形成されており、強化ガラス33および34が螺子その他の固定手段でそれぞれ固定されている。図示しないが、入射開口A1および射出開口A2付近を除く湿り蒸気用配管30の外周面には、グラスウール等公知の断熱材が敷設されており、断熱材の敷設された湿り蒸気配管30の領域では、外部への熱損失が些少に抑制されるようになっている。これらのサイトグラス構造により、配管30の内部を気密に保持したまま、入射側筒31の端面を形成する強化ガラス33の外側から光を入射させ、配管30を流通する湿り蒸気SA内を透過させ、射出側筒32の端面を形成する強化ガラス34から外側に向けて射出させることが可能になっている。
【0025】
なお、配管30や入射側筒31、射出側筒32等は、耐久性のある金属、例えば炭素鋼、ステンレス鋼、その他特殊材質で構成される。このようなサイトグラスは、フローサイトとも呼ばれており、配管路の途中に設置し、配管内を通る流体の流通、停止及び流速・流量の概況を直接監視することが器具として市場に出回っている市販品を利用可能である。
【0026】
次に、実施形態1に係る乾き度測定装置1aの構成を説明する。
図1に示すように、乾き度測定装置1aは、光入射部11、受光部12、乾き度特定部13、および熱損失補償装置(20、21、22)を備えている。
【0027】
光入射部11は、入射開口A1、すなわち強化ガラス31の外側から入射側筒31内へ所定の波長の光を入射させる手段であり、自ら光を発生させる自発光手段であっても、離間地の発光手段から発せられた光を導入する導光手段であってもよい。自発光手段としては、例えば、発光ダイオード、スーパールミネッセントダイオード、半導体レーザ、レーザ発振器、蛍光放電管、低圧水銀灯、キセノンランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、紫外線光源、赤外線光源、及び電球等が使用可能であるが、安定した波長および強度を有する光を発生可能な手段であれば、上記に限定されない。導光手段としては、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA:Poly(methyl methacrylate))からなるプラスチック光ファイバ、及び石英ガラスからなるガラス光ファイバ等が使用可能であるが、上記に例示したような自発光手段が発した光を伝播させる機能があれば、これに限定されない。
【0028】
受光部12は、湿り蒸気SAを透過し、射出開口A2、すなわち射出側筒32から強化ガラス32を経て射出された光を受けて検出信号Sdを出力する光感知手段である。受光部12としては、例えば、フォトダイオード、フォトトランジスタ等の光電変換素子を使用可能であるが、湿り蒸気を透過した光の強度等に応じた受光信号Sdを出力可能であれば、これに限定されない。
【0029】
乾き度特定部13は、検出信号Sdを参照して湿り蒸気SAの乾き度χを任意の演算方法により特定する演算手段である。乾き度特定部13は、コンピュータ装置が乾き度特定用の所定のソフトウェアプログラムを実行することにより機能的に実現される。コンピュータ装置としては、例えば、入力装置、出力装置、プログラム記憶装置、一時記憶装置、および記憶装置を備える汎用コンピュータであり、その構成に限定はない。
【0030】
乾き度特定部13で実行する湿り蒸気の乾き度の演算方法は、公知の方法を種々に適用可能であり、その演算方法に限定はない。例えば、乾き度特定部13は、受光信号Sdを参照して湿り蒸気SAを透過した光の強度または光の強度に関連する物理量を演算し、次いで、記憶装置に予め格納された、光の強度または光の強度に関連する物理量と乾き度χとの関係テーブルを参照する。そして受光信号Sdの示す光の強度または光の強度に関連する物理量に対応した乾き度χを読み取り、乾き度χの測定値として出力する。関係テーブルの代わりに、光の強度または光の強度に関連する物理量と乾き度χとの関係を示す関係式に基づいて乾き度χを算出してもよい。また乾き度特定部13は、複数の波長の光についてそれぞれ得られた光の強度または光の強度に関連する物理量を相互に参照しながら、乾き度χを算出するようにしてもよい。
【0031】
熱損失補償装置は、入射開口A1および射出開口A2において発生する熱損失を補償する手段である。本実施形態1において、熱損失補償装置は、発熱部(21、22)と電力供給部20とを有し、発熱部は、具体的に、ラバーヒーター21および22である。
【0032】
ラバーヒーター21は、入射側筒31の外壁に設けられ、入射側筒31を加熱して入射開口A1側で生じる熱損失を補償する。ラバーヒーター22は、射出側筒32の外壁に設けられ、射出側筒32を加熱して射出開口A2側で生じる熱損失を補償する。以下、入射開口A1側のラバーヒーター21の構造を説明するが、射出開口A2側のラバーヒーター22についても同様である。
【0033】
図2に、ラバーヒーター21の平面図を示す。
図2に示すように、ラバーヒーター21は、帯状に長い矩形状を有しており、ラバーシート210の内部に発熱体213を敷設して構成されている。ラバーシート210の端部には、面ファスナー214および215が取り付けられている。
【0034】
ラバーシート210は、柔軟性があり一定の熱伝導性を有する絶縁体であり、例えば、シリコンゴムで構成される。ラバーシート210の材料としては、柔軟性、熱伝導性、絶縁性、および耐久性を満たすものであれば、シリコンゴムに限らず種々の材料を適用可能である。ラバーヒーター21は、面状に加工した2枚のラバーシート210に発熱体213を挟み込んで使用温度に応じて選択される接着剤または接着フィルムで接着して構成される。
【0035】
発熱体213は、両端に引き出し線211および212が取り付けられており、引き出し線211および212から電力を供給することにより発熱する、線状または面状の発熱手段である。発熱体213としては、電流を熱量に変換可能な電熱材料一般を適用可能であり、例えば、カーボンやニッケル合金抵抗線を適用することができる。
【0036】
面ファスナー214および215は、互いの面を接触させることで接着力が発生する機能を有し、それぞれの面ファスナーを取り付けた部位を着脱自在に係止させることが可能である。面ファスナー214および215は、例えば、一方がフック状に起毛された面であり、他方がループ状に密集して起毛された面となっている。面ファスナー214は、ラバーシート210の表面の端部において起毛面を表面側に向けて取り付けられる。面ファスナー215は、ラバーシート210の裏面の端部において起毛面を裏面側に向けて取り付けられる。なお、面ファスナー214および215はオプショナルな構成であり、面ファスナーに代えて、紐状部材や帯状部材でラバーシート210を外側から締めつけたりラバーシート210の端部を接着剤等で接着したりして、ラバーヒーター21を入射側筒33に取り付けてもよい。
【0037】
ラバーヒーター21は、帯状の長手方向に幅d1、帯状の幅方向に幅d2を有するように加工されている。長手方向の幅d1は、ラバーシート210を入射側筒31の外周に巻き回した際に、緩み無くラバーシートの内面が入射側筒31の外周面に接触した状態で、面ファスナー214および215を互いに接触させることができるような長さに調整する。短尺方向の幅d2は、入射側筒31の外周の高さ、すなわち配管30外壁からフランジ31f裏面までの幅に対応するように調整する。入射側筒31と射出側筒32の形状が異なる場合には、ラバーヒーター22について、射出側筒32の形状に適合するように、ラバーヒーター22の幅d1および幅d2を調整する。
【0038】
図1に戻り、電力供給部20は、発熱部に熱損失を補償する熱を発生させうる電力を供給可能に構成されている。具体的には、電力供給部20は、ラバーヒーター21からの引き出し線211および212が接続され、両引き出し線の間に所定の電圧を加えることにより、加熱電力D1をラバーヒーター21の発熱体213に供給可能になっている。また電力供給部20は、ラバーヒーター22からの引き出し線211および212が接続され、両引き出し線の間に所定の電圧を加えることにより、加熱電力D2をラバーヒーター22の発熱体213に供給可能になっている。電力供給部20が供給する電力は、入射開口A1および射出開口A2付近で生じる熱損失を補償しうる熱量を、発熱部(ラバーヒーター21および22)に発生させる程度の電力とする。このような電力は、例えば、入射開口A1付近(具体的には、強化ガラス33および入射側筒31の内壁面)や射出開口A2付近(具体的には、強化ガラス34および射出側筒32の内壁面)に、湿り蒸気SAが凝縮したり液相が停滞したりしないような電力を実験的に特定することで得られる。
【0039】
(作用)
次に本実施形態1の作用を説明する。
湿り蒸気SAが湿り蒸気測定用配管30に供給される際、電力供給部20が発熱部であるラバーヒーター21および22に加熱電力D1、D2を供給する。ラバーヒーター21および22では、発熱体213が当該加熱電力を受けて発熱し、その熱が入射側筒31および射出側筒32に伝達される。入射開口A1付近および射出開口A2付近、特に強化ガラス33および強化ガラス34の外側には断熱材を設けることができないため、若干の熱損失を生じるが、その熱損失を補償するに足りる熱量がラバーヒーター21および22から供給される。この結果、湿り蒸気SAに凝集が生じたり液相が停滞したりする事象が抑制される。
【0040】
測定時、湿り蒸気用配管30の内部を流れている湿り蒸気SAに向けて、光入射部11から強化ガラス33を介して入射側筒31内に光を照射させる。入射側筒31の内部から湿り蒸気用配管30の中心を流れる湿り蒸気SAを透過した光は、配管30の反対側にある射出側筒32内に入り、強化ガラス34を介して射出される。射出された光は受光部12にて受光され、湿り蒸気SAを透過した光の強度または光の強度に関連した物理量に対応した受光信号Sdを出力する。
【0041】
乾き度特定部13は、入力した受光信号Sdを参照して、所定の演算方法により乾き度χを特定する。特定された乾き度χは、乾き度特定部13に設けられた出力装置に出力される。この出力形態は、出力情報の表示であったり印刷であったりデータの送信であったりする。
【0042】
(効果)
以上説明した実施形態1によれば、湿り蒸気用配管30がサイトグラスとしての測定構造を備えている場合に、電力供給部20が入射開口A1付近および射出開口A2付近で失われる熱量を補う加熱電力D1、D2を供給し、入射側筒31および射出側筒32の外周に設けられたラバーヒーター21および22が熱損失を補償する。よって、サイトグラス付近で湿り蒸気SAが凝縮したり液相が停滞したりすることを抑制でき、乾き度測定の精度劣化を防ぐことができる。
【0043】
実施形態1によれば、ラバーヒーター21および22を発熱部として適用するので、入射側筒31や射出側筒32の形状に適合した形状に加工することが容易である。
【0044】
(実施形態2)
本発明の実施形態2は、光ファイバのような形態の光入射部に対して適用する発熱部に関する。
【0045】
(構成)
図3に、本実施形態2における乾き度測定装置1bの構成を示す。
図3に示すように、本実施形態2における湿り蒸気用配管30は、入射開口A1に、入射側筒の代わりに、光ファイバのヘッド部が挿入可能な構造を有しており、光入射部11bが光ファイバ構造である点で上記実施形態1と異なる。
【0046】
なお、射出開口A2については、上記実施形態1の射出開口A2側の受光構造とすることが可能である。射出開口A2に、光プローブのような受光手段を設ける場合には、入射開口A1側に類似した光ファイバに対応する構造としてもよい。
【0047】
本実施形態2における乾き度測定装置1bは、光入射部11bの構造と当該光入射部11bに適用する発熱部の構成とが上記実施形態1と異なり、その他の構成は上記実施形態と同様である。
図3では、光入射部11bを含む入射開口A1付近の模式断面を示し、射出開口A2側の構成は省略してある。
【0048】
図3に示すように、光入射部11bは、入射開口A1から湿り蒸気用配管30内へ所定の波長の光を入射させる手段であり、光ファイバヘッド110、集光レンズ111、光ファイバケーブル112、発光部113、および発光電力供給部114を備えている。ラバーヒーター21bを備えている。
【0049】
発光電力供給部114は、発光部113に所定の電力を供給して発光部113を湿り蒸気の乾き度を測定するに足りる程度の光量で発光させる駆動手段である。発光部113に供給する電力は、発光部113の仕様に応じた電力量とする。交流で電力供給する場合には、さらに発光部113の仕様に応じた周波数、電圧波形で電力を供給する。
【0050】
発光部113は、自ら光を発生させる自発光手段であり、例えば、発光ダイオード、スーパールミネッセントダイオード、半導体レーザ、レーザ発振器、蛍光放電管、低圧水銀灯、キセノンランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、紫外線光源、赤外線光源、及び電球等が使用可能であるが、安定した波長および強度を有する光を発生可能な手段であれば、上記に限定されない。
【0051】
光ファイバケーブル112は、発光部113から出力された光を伝達する導光手段である。光ファイバケーブル112としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA:Poly(methyl methacrylate))からなるプラスチック光ファイバ、及び石英ガラスからなるガラス光ファイバ等が使用可能であるが、発光部113が発した光を伝播させる機能があれば、これに限定されない。
【0052】
光ファイバヘッド110は、光ファイバケーブル112の先端部を所定長さ収容する収容体であり、その先端に集光レンズ111を備えている。光ファイバヘッド110は、外部の光を遮断し、内部の光ファイバケーブル112と集光レンズ111とを光学的に損失無く連結するとともに、光ファイバケーブル112および集光レンズ111を物理的・化学的に保護する。このため、光ファイバヘッド110は、金属または樹脂等の機械的強度があり化学的に安定な素材とすることが好ましい。
【0053】
図3に示すように、本実施形態2において、湿り蒸気用配管30の入射開口A1は、光ファイバヘッド110の先端口径に適合した径となっており、光ファイバヘッド110の先端が入射開口A1から配管30内へ挿入された状態で固定されている。光ファイバヘッド110は、湿り蒸気SAの流れに影響を与えない範囲で、入射開口A1から配管30の奥へ突出させてもよい。
【0054】
本実施形態2において、入射開口A1において発生する熱損失を補償する熱損失補填装置として、ラバーヒーター21bおよび電力供給部20(図示省略)を備える。電力供給部20については、上記実施形態1における電力供給部20と同様であるため、説明を省略する。
【0055】
ラバーヒーター21bは、光ファイバヘッド110の先端付近の外周を覆うように設けられている発熱部であり、全体寸法を除いて詳細な構造は、上記実施形態1において
図2を参照して説明したラバーヒーター21と同様である。すなわち、上記実施形態1で説明したように、ラバーヒーター21bは、帯状に長い矩形状を有するラバーシートの内部に発熱体213が設けられた構造を有しており、発熱体213に電力を供給する引き出し線211および212が設けられており、引き出し線211および212は、上記電力供給部に接続されている。ラバーヒーター21bの端部には、面ファスナー214および215が取り付けられており、光ファイバヘッド110の先端外周に巻き回して面ファスナー214および215を互いに接着することにより、ラバーヒーター21bを光ファイバヘッド110の外周に密着固定することが可能になっている。なお、
図3では、発熱体213、面ファスナー214および215の図示を省略してある。
【0056】
ラバーヒーター21bの長手方向の幅d1は、ラバーヒーター21bを光ファイバヘッド110の外周に巻き回した際に、緩み無くラバーシートの内面が光ファイバヘッド110の外周面に接触した状態で、面ファスナー214および215を互いに接触させることができるような長さに調整されている。ラバーヒーター21bの短尺方向の幅は、光ファイバヘッド110に十分な熱量を伝達可能な面積を供給可能に調整されている。
【0057】
(作用)
次に本実施形態2の作用を説明する。
湿り蒸気SAが湿り蒸気測定用配管30に供給される際、電力供給部20が発熱部であるラバーヒーター21bに加熱電力D1を供給する。ラバーヒーター21bでは発熱体213が当該加熱電力を受けて発熱し、その熱が光ファイバヘッド110に伝達される。このため、入射開口A1付近には断熱材を設けることができないため若干の熱損失を生じるが、その熱損失を補償するに足りる熱量がラバーヒーター21bから供給される。よって、光ファイバヘッド110の先端付近で湿り蒸気SAが凝縮したり液相が停滞したりすることを抑制でき、乾き度測定の精度劣化を防ぐことができる。
【0058】
(効果)
以上説明した実施形態2によれば、光入射部が光ファイバ構造である場合に、電力供給部20が入射開口A1付近で失われる熱量を補う加熱電力D1を供給し、光ファイバヘッド110外周に設けられたラバーヒーター21bが熱損失を補償するので、入射開口A1付近で湿り蒸気SAが凝縮したり液相が停滞したりすることを抑制でき、乾き度測定の精度劣化を防ぐことができる。
【0059】
(実施形態3)
本発明の実施形態3は、入射開口に透明導電膜を設けた発熱部の変形例に関する。
【0060】
(構成)
図4に、本発明の実施形態3に係る乾き度測定装置の構成を説明する模式断面図を示す。
図4に示すように、本実施形態3において適用する湿り蒸気用配管30は、上記実施形態1と同様のサイトグラス構造を有している。説明を簡単にするため、
図4には、入射開口A1側の構造のみを示し、射出開口A2側の構造を省略してある。射出開口A2側については、入射開口A1側と同様の構造を設けてもよい。
【0061】
図4に示すように、本実施形態3に係る乾き度測定装置1cは、入射開口A1において発生する熱損失を補償する熱損失補償装置として、透明フィルムヒーター21cおよび電力供給部20(図示省略)を備える。電力供給部20については、上記実施形態1における電力供給部20と同様であるため、説明を省略する。
【0062】
透明フィルムヒーター21cは、引き出し線211および212を介して所定の電圧が印加されると、一定の温度にまで上昇してその温度を維持する透明導電膜フィルムであり、所定のシート抵抗を有する発熱部である。シート抵抗の範囲は、印加電圧との関係で発熱に適する抵抗値であればよく、限定はないが、例えば、数千Ω/□〜数十Ω/□の範囲である。透明導電膜は、基材に透明導電性材料層を形成し、その上に保護層を形成した層構造を有している。基材は、光透過性があって強化ガラス33に接着可能な樹脂膜(例えばPET、PPS、PIフィルム等)である。透明導電性材料層は、光透過性があり一定のシート抵抗を有する導電性材料を適用可能である。例えば、カーボンナノチューブ(CNT)やITO、ナノサイズの金属(Ag等)からなる自己組織化膜、ITOに抵抗を調整する金属(例えばAg等)を散在させた膜等を適用可能である。また透明フィルムヒーター21cは、基材上に微細な幅の抵抗線を多数パターニングした膜であってもよい。透明フィルムヒーター21cは、接着剤または接着フィルムにより強化ガラス33に貼り合わせられている。透明フィルムヒーター21cは、強化ガラス33の大きさに適合させた大きさに整形されている。
【0063】
(作用)
次に本実施形態3の作用を説明する。
湿り蒸気SAが湿り蒸気測定用配管30に供給される際、電力供給部20が発熱部である透明フィルムヒーター21cに引き出し線211および212経由で加熱電力D1を供給する。透明フィルムヒーター21cは、当該加熱電力D1の供給を受けて発熱することにより配管30内部の湿り蒸気SAの温度と同じか若干高めの温度、例えば170℃に強化ガラス33の表面を加熱する。これにより、入射開口A1側で生じる熱損失を補償するに足りる熱量を発生させる。よって、強化ガラスの裏面付近で湿り蒸気SAが凝縮したり液相が停滞したりすることを抑制でき、乾き度測定の精度劣化を防ぐことができる。
【0064】
(効果)
以上説明した実施形態3によれば、電力供給部20が入射開口A1付近で失われる熱量を補う電力を供給し、強化ガラス33の表面に設けられた透明フィルムヒーター21cが熱損失を補償するので、強化ガラス33の裏面付近で湿り蒸気SAが凝縮したり液相が停滞したりすることを抑制でき、乾き度測定の精度劣化を防ぐことができる。
【0065】
特に本実施形態3によれば、透明フィルムヒーター21cが熱損失の生じやすい強化ガラスの表面を覆って発熱するので、開口面における熱損失を効率的に補償可能である。
【0066】
(実施形態4)
本発明の実施形態4は、入射開口の開口面に温度センサを設けた乾き度測定装置に関する。
【0067】
(構成)
図5に、本実施形態4における乾き度測定装置1dの構成を示す。
図5に示すように、本実施形態4に係る乾き度測定装置1dは、本実施形態4に係る乾き度測定装置1dは、入射開口A1側の強化ガラス33の表面に温度センサ23を備え、射出開口A2側の強化ガラス34の表面に温度センサ24をそれぞれ備えている点で、上記実施形態1と異なる。その他の構成については、上記実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0068】
温度センサ23は、強化ガラス33の表面温度を計測し、計測された温度を示す検出信号S1を電力供給部20に出力する検出手段である。温度センサ24は、強化ガラス34の表面温度を計測し、計測された温度を示す検出信号S2を電力供給部20に出力する検出手段である。温度センサ23および24としては、強化ガラス表面の温度を計測可能であれば、その形態に限定はない。ガラス表面の温度を計測し電気信号である検出信号を出力するため、温度センサ23および24としては、接触式であって電気式の温度検出手段、例えば測温抵抗体(RTD)、リニア抵抗器、サーミスタ、熱電対、IC温度センサ等を適用可能である。強化ガラスの表面に設けた際に光を遮断しないように、温度センサ23および24は、小型のものであることが好ましい。
【0069】
本実施形態4において、電力供給部20は、温度センサ23からの検出信号S1を入力し、強化ガラス33の表面温度が湿り蒸気SAの温度付近に維持されるように、ラバーヒーター21に供給する加熱電力D1を制御する。また電力供給部20は、温度センサ24からの検出信号S2を入力し、強化ガラス34の表面温度が湿り蒸気SAの温度付近に維持されるように、ラバーヒーター22に供給する加熱電力D2を制御するように構成されている。
【0070】
(作用)
次に本実施形態4の作用を説明する。
湿り蒸気SAが湿り蒸気測定用配管30に供給される際、電力供給部20は、温度センサ23からの検出信号S1に基づいて、ラバーヒーター21に供給する加熱電力D1を制御する。また電力供給部20は、温度センサ24からの検出信号S2に基づいて、ラバーヒーター22に供給する電力D2を加熱制御する。
【0071】
例えば、電力供給部20は、強化ガラスの表面温度が湿り蒸気SAの温度より低い場合、ラバーヒーター21(22)の引き出し線211および212間に予め定めた電圧を印加して電力を供給し、強化ガラスの表面温度が湿り蒸気SAの温度に達した時に、上記電力の供給を停止する。
【0072】
変形例として、電力供給部20は、ラバーヒーター21(22)に供給する加熱電力を段階的に、または、漸次的に変化させてもよい。例えば、電力供給部20は、強化ガラスの表面温度と湿り蒸気SAの温度との乖離の大きさに応じて、ラバーヒーター21(22)の引き出し線211および212間に印加する電圧を段階的に、または、漸次的に小さくしていき、供給する加熱電力を段階的に、または、漸次的に減少させるように制御してもよい。このように発熱部に供給する電力を段階的に、または、漸次的に減少させていくことで、強化ガラスを加熱し過ぎて、乾き度の測定値が不正確になることを防止可能である。
【0073】
(効果)
以上説明した実施形態4によれば、電力供給部20が温度センサ23(24)の検出信号S1(S2)に基づいてラバーヒーター21(22)に供給する電力を制御するので、入射開口A1付近で失われる熱量を補うために必要十分な電力を供給させることが可能である。
【0074】
特に本実施形態4によれば、加熱温度が湿り蒸気SAの温度より高くなることを抑制するので、過熱の影響で乾き度の測定値が不正確になることを防止可能である。
【0075】
(その他の変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、種々に変形して適用することが可能である。
【0076】
(1)例えば、上記実施形態1および実施形態4では、入射開口A1側の入射側筒31と射出開口A2側の射出側筒32の双方に発熱部としてラバーヒーター21(22)を設けたが、どちらかの開口における熱損失が少ない構造の場合には、熱損失の少ない開口側における発熱部を省略してもよい。
【0077】
(2)上記実施形態2および上記実施形態3では、入射開口A1側の発熱部の構造のみを記載したが、射出開口A2側からの熱損失が大きい場合には発熱部を設けることができ、熱損失が小さい場合には発熱部を省略してもよい。
【0078】
(3)上記実施形態では、乾き度測定装置の具体的な乾き度測定方法の一例を示したが、上記に限定されず、種々の乾き度測定方法を適用可能である。乾き度の測定時に、配管30内部の圧力または/および温度を測定し、湿り蒸気SAを透過した光の強度等のみならず、湿り蒸気の圧力や温度の関数として演算して特定することも可能である。
【0079】
(4)上記実施形態では、湿り蒸気SAを透過する光の強度または光の強度に関連する物理量に基づいて乾き度を演算していたが、湿り蒸気SAにより反射される光の強度または光の強度に関連する物理量に基づいて乾き度を演算するように構成してもよい。湿り蒸気を透過する光の強度等は湿り蒸気により反射される光の強度等と相関関係があるため、所定の換算演算により、本願発明を湿り蒸気により反射される光の強度等に基づく乾き度特性に適用することが可能である。湿り蒸気で反射される光に基づいて乾き度を演算する構成とする場合、光入射部と受光部とを同じ開口に設け、配管からの熱損失自体を少なくしたり、本願発明の発熱部を共有の開口付近に一ヵ所だけ設けてコストを低減したりすることが可能である。