特許第6091344号(P6091344)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6091344-篩および篩の製造方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6091344
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】篩および篩の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B07B 1/46 20060101AFI20170227BHJP
   B07B 1/49 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   B07B1/46 D
   B07B1/49
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-119140(P2013-119140)
(22)【出願日】2013年6月5日
(65)【公開番号】特開2014-233718(P2014-233718A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2016年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】396026710
【氏名又は名称】株式会社オプトニクス精密
(72)【発明者】
【氏名】絹田 精鎮
(72)【発明者】
【氏名】市野沢 義行
(72)【発明者】
【氏名】小林 将士
【審査官】 増田 健司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−511699(JP,A)
【文献】 特開平6−190342(JP,A)
【文献】 特開2001−252589(JP,A)
【文献】 特開昭55−155769(JP,A)
【文献】 特開昭52−101769(JP,A)
【文献】 特開2007−98391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B07B 1/46
B07B 1/49
B29B 13/10
E01C 19/05
A47J 43/22
C25D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠と、この枠内に張り付けられ粒子を分級する電鋳製メッシュとを有する篩であって、前記電鋳製メッシュは分割された複数のメッシュ単体から形成され、前記複数のメッシュ単体の周縁部が伸縮部材に緊張した状態で接着されていることを特徴とする篩。
【請求項2】
前記伸縮部材が樹脂製または金属製のメッシュまたは伸縮性を有する樹脂である請求項1に記載の篩。
【請求項3】
枠と、この枠内に張り付けられ粒子を分級する電鋳製メッシュとを有し、この電鋳製メッシュを分割された複数のメッシュ単体から形成する篩の製造方法であって、前記複数のメッシュ単体の周縁部をシート状の伸縮部材に緊張した状態で張り付けて接着する工程と、前記張付けた縁部との対向部以外の前記伸縮部材の中央部を切り取る工程と、前記伸縮部材を介して前記メッシュ単体を前記枠に接着する工程と、前記伸縮部材の前記枠からはみ出た部分を切り取る工程とを有していることを特徴とする篩の製造方法。
【請求項4】
枠と、この枠内に張り付けられ粒子を分級する電鋳製メッシュとを有し、この電鋳製メッシュを分割された複数のメッシュ単体から形成する篩の製造方法であって、前記枠にシート状の伸縮部材を緊張した状態で張り付けて接着する工程と、前記伸縮部材に前記メッシュ単体の周縁部を接着する工程と、前記接着した縁部との対向部以外の前記伸縮部材の中央部を切り取る工程とを有していることを特徴とする篩の製造方法。
【請求項5】
前記伸縮部材が樹脂製または金属製のメッシュまたは伸縮性を有する樹脂である請求項3または請求項4に記載の篩の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電鋳技術を用いて製作する金属製の篩に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1で提案しているように、電鋳技術を用いることにより、微細な孔を多数有する金属製の篩を製作することができ、微細な粒子を分級することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−66498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電鋳技術を用いて大面積に微細な孔を同じ孔径で均一に製作するのは困難であるという問題点があった。
このため、多量の微細な球形粒子を一度に分級することができず、何回かに分けて分級しなくてはならず、分級の作業効率が低いとの課題があった。
【0005】
本発明は、上記課題に着目し、分級精度と分級の作業効率が高い篩および篩の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は篩に関し、枠と、この枠内に張り付けられ粒子を分級する電鋳製メッシュとを有する篩であって、電鋳製メッシュは分割された複数のメッシュ単体から形成され、複数のメッシュ単体の縁部が伸縮部材に緊張した状態で接着されていることを特徴とする。
【0007】
前記篩においては、電鋳製メッシュ単体のサイズは微細な孔を同じ孔径で均一に製作することが可能な大きさにしてあるため分級精度が高い。
しかも、メッシュ単体の縁部の接着部分が非接着部分に比べて伸びにくくなりメッシュにテンションがかかるとメッシュにシワがよってしまうおそれがあるが、メッシュ単体の縁部が伸縮部材に接着されているためこの伸縮部材が緩衝材となってシワがよることはない。
【0008】
このような複数のメッシュ単体から形成された大型形状の篩であるため多量の微細な球形粒子を一度に分級することができ、分級の作業効率が高い。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様の篩において、伸縮部材が樹脂製または金属製のメッシュまたは伸縮性を有する樹脂であることを特徴とする。
【0010】
前記篩においては、伸縮部材がナイロンやテトロン(登録商標)等の樹脂製またはステンレスや銅等の金属製のメッシュまたは伸縮性を有するナイロンやテトロン(登録商標)等の樹脂であるため、電鋳製メッシュ単体にシワがよるのを確実に防ぐことができる。尚、伸縮部材のメッシュの孔径が電鋳製メッシュの孔径よりも大きい場合は、伸縮部材のメッシュから大きな粒子が落下するため、伸縮部材のメッシュにウレタンやエポキシ等の樹脂材による目止め剤を塗ってこのメッシュの孔を塞ぐようにする。なお、金属メッシュの場合は半田を利用しても良い。
【0011】
本発明の第3の態様は、枠と、この枠内に張り付けられ粒子を分級する電鋳製メッシュとを有し、この電鋳製メッシュを分割された複数のメッシュ単体から形成する篩の製造方法であって、複数のメッシュ単体の周縁部をシート状の伸縮部材に緊張した状態で張り付けて接着する工程と、張付けた縁部との対向部以外の伸縮部材の中央部を切り取る工程と、伸縮部材を介してメッシュ単体を枠に接着する工程と、伸縮部材の枠からはみ出た部分を切り取る工程とを有していることを特徴とする。
【0012】
前記篩の製造方法においては、複数の電鋳製メッシュ単体の縁部を緊張した状態でシート状の樹脂メッシュのような伸縮部材に接着剤で張り付ける。そして、この張付けた縁部を除いて伸縮部材の中央部を切り取った後、伸縮部材を介してメッシュ単体を枠に接着する。そして、枠から外方へはみ出た伸縮部材を切り取ることにより大型の篩が製造される。
尚、伸縮部材のメッシュの孔径が電鋳製メッシュの孔径よりも大きい場合は伸縮部材のメッシュに目止め剤を塗ってこのメッシュの孔を塞ぐようにする。
【0013】
本発明の第4の態様は、枠と、この枠内に張り付けられ粒子を分級する電鋳製メッシュとを有し、この電鋳製メッシュを分割された複数のメッシュ単体から形成する篩の製造方法であって、枠にシート状の伸縮部材を緊張した状態で張り付けて接着する工程と、伸縮部材にメッシュ単体の周縁部を接着する工程と、接着した縁部との対向部以外の伸縮部材の中央部を切り取る工程とを有していることを特徴とする。
【0014】
前記篩の製造方法は第3の態様に代わる製造方法であって、伸縮部材を枠に直接緊張状態で接着する。そして、この伸縮部材にメッシュ単体の周縁部を接着した後、この接着した縁部との対向部以外の伸縮部材の中央部を切り取ることにより大型の篩が製造される。
この場合も、伸縮部材のメッシュの孔径が電鋳製メッシュの孔径よりも大きい場合は伸縮部材のメッシュに目止め剤を塗ってこのメッシュの孔を塞ぐようにする。
【0015】
本発明の第の態様は、第3または第4の態様の篩において、伸縮部材が樹脂製または金属製のメッシュまたは伸縮性を有する樹脂であることを特徴とする。
【0016】
前記篩においては、伸縮部材がナイロンやテトロン(登録商標)等の樹脂製またはステンレスや銅等の金属製のメッシュまたは伸縮性を有するナイロンやテトロン(登録商標)等の樹脂であるため、製造中及び製造後も電鋳製メッシュ単体にシワがよるのを確実に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、複数の電鋳製メッシュ単体を張り合わせることにより大型形状の篩を製作したので、分級精度が高いとともに多量の微細な球形粒子を一度に分級することができるため分級の作業効率が高い、という優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る篩の表から見た斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る篩の裏から見た斜視図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る篩の製造時の斜視図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る篩の製造工程を示す図3のA−A断面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る篩の製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の篩の実施形態について、図面に基づいて詳述する。
図1図2において、1は電鋳製メッシュで、分割された例えば4枚の扇形状のメッシュ単体1a、1b、1c、1dと1枚の円形状のメッシュ単体1eの計5枚から形成されている。
これらのメッシュ単体1a、1b、1c、1d、1eは微細な例えば1μmの同じ孔径の孔を均一に電鋳技術で製作できる200mm以下のサイズで、ニッケル又はニッケル合金により電鋳で形成されている。
【0020】
2はステンレス製の枠で、この枠2内に1μm以下の粒子を分級する電鋳製の5枚のメッシュ単体1a、1b、1c、1d、1eを張り付け、これらメッシュ単体1a、1b、1c、1d、1eの隣接縁部3a、3b、3c、3dと外周縁部4a、4b、4c、4d、4eと内周縁部5a、5b、5c、5dが後述するように緊張した状態でエポキシ製の接着剤にて接着されることにより、円形状の大型の篩6が制作されている。
7は枠2と一体に形成された補強枠である。
【0021】
[第1実施形態]
次に、篩6を制作する第1実施形態の製造方法について、図3図4に基づいて詳述する。尚、図1図2と同一部品は同一符号を付記する。
8はナイロンやテトロン(登録商標)等の樹脂製またはステンレスや銅等の金属製のメッシュ、または伸縮性を有するナイロンやテトロン(登録商標)等の樹脂であるシート状の伸縮部材で、ステンレス製の製作用枠9に緊張した状態で張られている。
【0022】
この張られた状態の伸縮部材8に先ず5枚の電鋳製のメッシュ単体1a、1b、1c、1d、1eを図3図4(a)に示すようにパッチワーク状に張り付けた後、メッシュ単体1a、1b、1c、1d、1eの隣接縁部3a、3b、3c、3d、3eと外周縁部4a、4b、4c、4d、4eと内周縁部5a、5b、5c、5dを緊張した状態でエポキシ製の接着剤10にて接着する張付け工程を行う。
【0023】
この張付け工程の後、図4(b)に示すように、メッシュ単体1a、1b、1c、1d、1eの隣接縁部3a、3b、3c、3d、3eと外周縁部4a、4b、4c、4d、4eと内周縁部5a、5b、5c、5dの対向部以外の伸縮部材8の中央部11を切り取る切除工程を行う。
この工程により、電鋳製メッシュ1と伸縮部材8である樹脂製または金属製メッシュとからなる複合メッシュ構造が出来上がる。
【0024】
次に、図4(c)に示すように、この複合メッシュ構造の電鋳製メッシュ1と伸縮部材8を製作用枠9に張りけたままでステンレス製の枠2に張り付けて、エポキシ製の接着剤12で接着する接着工程を行う。そして、図4(d)に示すように、枠2からはみ出た伸縮部材8の部分12を製作用枠9とともに切り取る工程を行うことにより、大型の篩6が製作完了する。
【0025】
[第2実施形態]
次に、篩6を制作する第2実施形態の製造方法について、図5に基づいて詳述する。尚、図1図4と同一部品は同一符号を付記する。
図5(a)に示すように、伸縮部材8を枠2に直接緊張状態でエポキシ製の接着剤12にて接着する張付け工程を行う。
【0026】
この張付け工程の後、図5(b)に示すように、この伸縮部材8にメッシュ単体1a、1b、1c、1d、1eの隣接縁部3a、3b、3c、3d、3eと外周縁部4a、4b、4c、4d、4eと内周縁部5a、5b、5c、5dを緊張した状態でエポキシ製の接着剤10にて接着する接着工程を行う。
この工程により、電鋳製メッシュ1と伸縮部材8である樹脂製または金属製メッシュとからなる複合メッシュ構造が出来上がる。
【0027】
に、図5(c)に示すように、メッシュ単体1a、1b、1c、1d、1eの隣接縁部3a、3b、3c、3d、3eと外周縁部4a、4b、4c、4d、4eと内周縁部5a、5b、5c、5dの対向部以外の伸縮部材8の中央部11を切り取る切除工程を行
とにより大型の篩が製造される。
【0028】
尚、上述した第1及び第2実施形態の製造工程において、伸縮部材8のメッシュの孔径が電鋳製メッシュ1の孔径よりも大きい場合は、図1にも示すように、メッシュ単体1a、1b、1c、1d、1eの隣接縁部3a、3b、3c、3d、3eの隙間13ab、13bc、13cd、13daと、内周縁部5a、5b、5c、5dと外周縁部4eとの隙間14とに露出している伸縮部材8のメッシュにウレタンやエポキシ等の樹脂材による目止め剤を塗ってこのメッシュの孔を塞ぐようにする。
この目止め剤を塗らないと、電鋳製メッシュ1の孔径よりも孔径が大きい伸縮部材8のメッシュから例えば1μmよりも大きい不要な粒子が透過してしまうためである。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、上記実施形態のように、同じ孔径の微細の孔を均一に電鋳技術で製作できるサイズのメッシュ単体1a、1b、1c、1d、1eによって電鋳製メッシュ1を形成するとともに、これらメッシュ単体1a、1b、1c、1d、1eの縁部3a、3b、3c、3d、3e、4a、4b、4c、4d、4e、5a、5b、5c、5d、5eを伸縮部材8に接着することによりこの伸縮部材8が緩衝材となってシワがよることはない大型形状の篩を得ることができるので、多量の微細な球形粒子を高精度で且つ一度に分級することができ、その効果は極めて大きい。
【符号の説明】
【0030】
1 電鋳製メッシュ
1a、1b、1c、1d、1e メッシュ単体
2 枠
3a、3b、3c、3d、3e 縁部
4a、4b、4c、4d、4e 縁部
5a、5b、5c、5d、5e 縁部
6 篩
8 伸縮部材
10、12 接着剤
図1
図2
図3
図4
図5