特許第6091384号(P6091384)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6091384
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】調理器
(51)【国際特許分類】
   A47J 43/046 20060101AFI20170227BHJP
   A47J 27/04 20060101ALI20170227BHJP
   A47J 27/00 20060101ALI20170227BHJP
   A23L 7/10 20160101ALI20170227BHJP
【FI】
   A47J43/046
   A47J27/04 Z
   A47J27/00 109L
   A23L7/10 D
   A23L7/10 102
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-186370(P2013-186370)
(22)【出願日】2013年9月9日
(65)【公開番号】特開2015-51223(P2015-51223A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2015年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002473
【氏名又は名称】象印マホービン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】瀬口 春美
【審査官】 木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−275505(JP,A)
【文献】 特開平08−322721(JP,A)
【文献】 特開平11−197027(JP,A)
【文献】 特開2000−093318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 43/046
A47J 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
もち米及び水を含む製餅材料を収容する調理容器と、前記調理容器内の製餅材料を混練する混練手段と、内部に加熱室を形成し且つ当該加熱室に前記調理容器を収容するケーシングと、前記加熱室内を加熱する加熱手段と、前記加熱手段及び前記混練手段夫々の作動を制御して、前記調理容器内の製餅材料を加熱して糊化させる糊化工程と、前記糊化工程で糊化された製餅材料を混練する混練工程とを実行する制御手段とを備えた調理器であって、
前記調理容器内の製餅材料の糊化終了を判断する糊化終了判断手段が設けられ、
前記制御手段が、前記糊化終了判断手段により前記糊化終了が判断されたことに基づいて、前記糊化工程を終了して前記混練工程を開始するように構成され
前記制御手段が、前記混練工程において、前記混練手段を作動させる混練処理と前記加熱手段を作動させる加熱処理とを交互に実行する調理器。
【請求項2】
前記糊化工程及び前記混練工程を少なくとも備えた製餅調理における前記混練工程を開始するまでの前記加熱手段の加熱量の積算値、前記製餅調理における前記混練工程を開始するまでの前記加熱手段の作動時間の積算値、前記製餅調理における前記加熱手段の作動開始後の経過時間、及び、前記製餅調理の開始後の経過時間の少なくとも一つを加熱量対応指標値として求める指標値導出手段と、前記加熱室の温度を検出する温度検出手段とが設けられ、
前記糊化終了判断手段が、前記指標値導出手段と前記温度検出手段とを備えて、前記指標値導出手段により求められた加熱量対応指標値が設定指標値以上になった以降に、前記温度検出手段の検出温度に基づいて、前記糊化終了を判断するように構成されている請求項1に記載の調理器。
【請求項3】
前記制御手段が、前記糊化工程において、前記温度検出手段の検出温度が第1設定温度になるように、前記加熱手段の作動を制御するように構成され、
前記糊化終了判断手段が、前記指標値導出手段により求められた加熱量対応指標値が前記設定指標値以上になった以降に、前記温度検出手段の検出温度が前記第1設定温度と同じ温度又は当該第1設定温度よりも高い温度に設定された第2設定温度以上になると、前記糊化終了と判断するように構成されている請求項2に記載の調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、もち米及び水を含む製餅材料を収容する調理容器と、調理容器内の製餅材料を混練する混練手段と、内部に加熱室を形成し且つ当該加熱室に調理容器を収容するケーシングと、加熱室内を加熱する加熱手段とを備えた調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる調理器は、加熱手段及び混練手段夫々を作動させることにより、調理容器内の製餅材料を加熱、混練して、餅を作ることができるように構成されている。
【0003】
このような調理器において、従来は、加熱室の温度を検出する温度検出手段が設けられ、制御手段が、温度検出手段の検出温度に基づいて、加熱手段及び混練手段夫々の作動を制御して、調理容器内の製餅材料を加熱する炊飯工程と、炊飯工程で炊飯された製餅材料を混練する混練工程とを実行するように構成されていた。具体的には、入力手段により開始が指令されると炊飯工程が実行され、その炊飯工程においては、温度検出手段の検出温度が第1の所定温度になるまでは加熱手段を連続的に作動させ、温度検出手段の検出温度が第1の所定温度になった以降は、温度検出手段の検出温度が第1の所定温度よりも低い第2の所定温度になるように、加熱手段をオンオフする制御を実行し、当該制御を所定時間実行すると、炊飯工程を終了して、混練工程を開始するように構成されていた(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−275505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、単に、温度検出手段の検出温度が第2の所定温度になるように加熱手段をオンオフする制御の実行の経過時間が所定時間に達することで、炊飯工程を終了して混練工程を開始する場合には、炊飯工程において、調理容器内の製餅材料が適正に糊化されていないことがあった。
即ち、炊飯工程を終了した時点の温度検出手段の検出温度は成り行きであり、又、温度検出手段の検出温度と加熱室内に収容された調理容器内の製餅材料の温度とは差があるので、炊飯工程を終了した時点の調理容器内の製餅材料の実際の温度も成り行きである。
そして、例えば、炊飯工程を終了した時点での調理容器内の製餅材料の温度が、製餅材料を十分に糊化させることが可能な温度よりも低い場合は、糊化が不完全な状態(即ち、もち米の内部に芯が残った状態)で、炊飯工程が終了されてしまって、製餅材料の糊化が不完全な状態で混練工程が開始される場合がある。このように糊化が不完全な状態で製餅材料が混練されると、もち米の糊化されていない芯の部分にもち米の糊化された部分が付着してしまって、糊化されていない部分に水分が行きわたらず、例えば、細かい粒が多数含有された如き低品質の餅が作られることになる。
【0006】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高品質の餅を作ることが可能な調理器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る調理器は、もち米及び水を含む製餅材料を収容する調理容器と、前記調理容器内の製餅材料を混練する混練手段と、内部に加熱室を形成し且つ当該加熱室に前記調理容器を収容するケーシングと、前記加熱室内を加熱する加熱手段と、前記加熱手段及び前記混練手段夫々の作動を制御して、前記調理容器内の製餅材料を加熱して糊化させる糊化工程と、前記糊化工程で糊化された製餅材料を混練する混練工程とを実行する制御手段とを備えた調理器であって、その特徴構成は、
前記調理容器内の製餅材料の糊化終了を判断する糊化終了判断手段が設けられ、
前記制御手段が、前記糊化終了判断手段により前記糊化終了が判断されたことに基づいて、前記糊化工程を終了して前記混練工程を開始するように構成されている点にある。
【0008】
上記特徴構成によれば、糊化終了判断手段により、調理容器内の製餅材料の糊化終了が判断され、糊化終了判断手段により糊化終了が判断されたことに基づいて、制御手段により、糊化工程が終了されて混練工程が開始される。
尚、製餅材料の糊化終了とは、調理容器内に収容されているもち米の殆ど全粒が、内部に水分が行きわたって、芯が残らない程度にまで十分に糊化されたと想定される状態である。
つまり、調理容器内に収容されているもち米の殆ど全粒が十分に糊化されたと想定される状態になった後に、混練工程が開始されるので、作られた餅に細かい粒が残留するのを抑制することができる。
特に、糊化工程開始時の製餅材料の温度、もち米の含水率等、糊化工程開始時の製餅材料の状態が変動する場合があるが、糊化終了判断手段により糊化終了が判断されたことに基づいて、糊化工程が終了されて混練工程が開始されるので、糊化工程開始時の製餅材料の状態の変動に拘わらず、作られた餅に細かい粒が残留するのを抑制することができるのである。
従って、高品質の餅を作ることが可能な調理器を提供することができる。
【0009】
本発明に係る調理器の更なる特徴構成は、前記糊化工程及び前記混練工程を少なくとも備えた製餅調理における前記混練工程を開始するまでの前記加熱手段の加熱量の積算値、前記製餅調理における前記混練工程を開始するまでの前記加熱手段の作動時間の積算値、前記製餅調理における前記加熱手段の作動開始後の経過時間、及び、前記製餅調理の開始後の経過時間の少なくとも一つを加熱量対応指標値として求める指標値導出手段と、前記加熱室の温度を検出する温度検出手段とが設けられ、
前記糊化終了判断手段が、前記指標値導出手段と前記温度検出手段とを備えて、前記指標値導出手段により求められた加熱量対応指標値が設定指標値以上になった以降に、前記温度検出手段の検出温度に基づいて、前記糊化終了を判断するように構成されている点にある。
【0010】
上記特徴構成によれば、糊化工程においては、指標値導出手段より、製餅調理における混練工程を開始するまでの加熱手段の加熱量の積算値、製餅調理における混練工程を開始するまでの加熱手段の作動時間の積算値、製餅調理における加熱手段の作動開始後の経過時間、及び、製餅調理の開始後の経過時間の少なくとも一つが加熱量対応指標値として求められる。
そして、指標値導出手段により求められた加熱量対応指標値が設定指標値以上になった以降に、温度検出手段の検出温度に基づいて、糊化終了判断手段により、糊化終了が判断される。
【0011】
つまり、調理容器内の製餅材料の糊化の進行度合いは、主として加熱手段によって調理容器内の製餅材料に付与された加熱量に依存するので、調理容器内の製餅材料の糊化の進行度合いは、加熱手段によって調理容器内の製餅材料に付与された加熱量に対応する指標値、即ち、加熱量対応指標値により判断することが可能である。このような加熱量対応指標値としては、製餅調理における混練工程を開始するまでの加熱手段の加熱量の積算値は勿論、製餅調理における混練工程を開始するまでの加熱手段の作動時間の積算値、製餅調理における加熱手段の作動開始後の経過時間、及び、製餅調理の開始後の経過時間を用いることができる。
尚、糊化工程等、製餅調理における混練工程の前の工程での加熱手段の制御形態は予め設定されていることから、製餅調理における混練工程を開始するまでの加熱手段の作動時間の積算値、製餅調理における加熱手段の作動開始後の経過時間、製餅調理の開始後の経過時間に応じて、調理容器内の製餅材料に付与された加熱量を推定することができるので、これらを加熱量対応指標値として用いることができる。
又、各加熱量対応指標値に応じて、設定指標値を、例えば、調理容器内に収容されているもち米の殆ど全粒が十分に糊化された状態になっていると想定される状態に相当する値に設定する。
【0012】
ところで、調理容器内の製餅材料の温度を知るために、加熱室の温度を検出する温度検出手段を設けることにより、例えば、調理容器内の製餅材料の温度を直接検出する温度検出手段を設ける場合に比べて、構成の簡略化を図ることができる。一方、加熱室の温度と加熱室内に収容された調理容器内の製餅材料の実際の温度とは差がある。
【0013】
そこで、指標値導出手段により求められた加熱量対応指標値が設定指標値以上になった以降に、温度検出手段の検出温度に基づいて、例えば、調理容器内の製餅材料の温度が当該製餅材料を十分に糊化させることが可能な温度になっていると推定される状態になっていると判断すると、糊化終了と判断するように構成することにより、調理容器内のもち米の殆ど全粒が十分に糊化された状態になるまで加熱量が付与され、且つ、調理容器内の製餅材料の温度が当該製餅材料を十分に糊化させることが可能な温度になっていると想定される状態で、糊化終了を判断することができる。
従って、構成の簡略化を図りながら、糊化終了を一層的確に判断することができるので、低廉化を図りながら、一層高品質の餅を作ることができる。
【0014】
本発明に係る調理器の更なる特徴構成は、前記制御手段が、前記糊化工程において、前記温度検出手段の検出温度が第1設定温度になるように、前記加熱手段の作動を制御するように構成され、
前記糊化終了判断手段が、前記指標値導出手段により求められた加熱量対応指標値が前記設定指標値以上になった以降に、前記温度検出手段の検出温度が前記第1設定温度と同じ温度又は当該第1設定温度よりも高い温度に設定された第2設定温度以上になると、前記糊化終了と判断するように構成されている点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、糊化工程においては、制御手段により、温度検出手段の検出温度が第1設定温度になるように加熱手段の作動が制御され、指標値導出手段により求められた加熱量対応指標値が設定指標値以上になった以降に、温度検出手段の検出温度が第2設定温度以上になると、糊化終了判断手段により、糊化終了と判断される。尚、第1設定温度としては、例えば、調理容器内の製餅材料の温度が当該製餅材料を十分に糊化させることが可能な温度になっている状態での加熱室の温度に設定される。
【0016】
つまり、糊化工程においては、調理容器内の製餅材料の温度が、当該製餅材料を十分に糊化させることが可能な温度になるように調整される。そして、そのように調理容器内の製餅材料の温度が調整されるべく糊化工程が進行される状態で、指標値導出手段により求められた加熱量対応指標値が設定指標値以上になった以降に、温度検出手段の検出温度が第2設定温度以上になると糊化終了と判断されるので、糊化工程において、調理容器内のもち米を一層良好に糊化させることができる。
従って、作られた餅の品質を更に向上することができる。
【0017】
本発明に係る調理器の更なる特徴構成は、前記制御手段が、前記糊化終了判断手段により前記糊化終了が判断された時点で、前記混練工程を開始する点にある。
【0018】
上記特徴構成によれば、糊化終了判断手段により糊化終了が判断された時点で、混練工程が開始されるため、熱による硬化、焦げ等が生じにくく、一層美味しい餅を作ることができる。
【0019】
本発明に係る調理器の更なる特徴構成は、前記制御手段が、前記混練工程において、前記混練手段を作動させる混練処理と前記加熱手段を作動させる加熱処理とを交互に実行する点にある。
【0020】
上記特徴構成によれば、混練工程においては、混練処理と加熱処理とが交互に実行されるので、製餅材料の温度低下を抑制すると共に、製餅材料の温度分布を小さくしながら、製餅材料を混練して餅を作ることができる。
従って、細かい粒の残留を更に少なくすると共に、柔らかさを全体にわたって更に均等化することができるので、一層高品質の餅を作ることができる。
【0021】
本発明に係る調理器の更なる特徴構成は、前記制御手段が、前記混練工程を設定混練工程時間実行し、
当該混練工程において、当該混練工程を終了するまでの設定仕上げ時間の間、前記混練手段を連続して作動させる点にある。
【0022】
上記特徴構成によれば、設定混練工程時間の間実行する混練工程において、混練工程を終了するまでの設定仕上げ時間の間、混練手段が連続して作動させられるので、連続して製餅材料が混練されることになり、餅を作るのに要する時間が長くなるのを回避しながら、細かい粒の残留が一層少なく、しかも、柔らかさが一層均等な高品質の餅を作ることができる。
【0023】
本発明に係る調理器の更なる特徴構成は、前記制御手段が、前記糊化工程と前記混練工程とを少なくとも実行する製餅モード、並びに、前記加熱手段及び前記混練手段夫々の作動を制御して、前記調理容器内の製パン材料を混練する混練工程と、前記調理容器内の製パン材料を発酵させる発酵工程と、前記調理容器内の製パン材料を焼き上げる焼成工程とを少なくとも実行する製パンモードを実行可能に構成され、
前記制御手段に実行させる運転モードを前記製餅モード及び前記製パンモードから択一的に選択するモード選択手段が設けられている点にある。
【0024】
上記特徴構成によれば、モード選択手段により製餅モードを選択すると、制御手段により製餅モードを実行させて、餅を作ることができ、モード選択手段により製パンモードを選択すると、制御手段により製パンモードを実行させて、パンを焼くことができる。
従って、餅作りとパン焼きを行うことができて使い勝手に優れ、しかも、高品質の餅を作ることが可能な調理器を提供することができる。
【0025】
上記目的を達成するための本発明に係る調理器の運転方法は、もち米及び水を含む製餅材料を収容する調理容器と、前記調理容器内の製餅材料を混練する混練手段と、内部に加熱室を形成し且つ当該加熱室に前記調理容器を収容するケーシングと、前記加熱室内を加熱する加熱手段とを備え、前記加熱手段及び前記混練手段夫々の作動を制御して、前記調理容器内の製餅材料を加熱して糊化させる糊化工程と、前記糊化工程で糊化された製餅材料を混練する混練工程とを実行する調理器の運転方法であって、その特徴構成は、
前記調理容器内の製餅材料の糊化終了を判断する糊化終了判断手段を設け、
前記糊化終了判断手段により前記糊化終了が判断されたことに基づいて、前記糊化工程を終了して前記混練工程を開始する点にある。
【0026】
上記特徴構成によれば、糊化終了判断手段により、調理容器内の製餅材料の糊化終了が判断されことに基づいて、糊化工程を終了して、混練工程を開始する。
尚、製餅材料の糊化終了とは、調理容器内に収容されているもち米の殆ど全粒が、内部に芯が残らない程度にまで十分に糊化されたと想定される状態である。
つまり、調理容器内に収容されているもち米の殆ど全粒が十分に糊化されたと想定される状態になった後に、混練工程を開始するので、作られた餅に細かい粒が残留するのを防止することができる。
従って、高品質の餅を作ることが可能な調理器の運転方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】製パン機の外観を示す斜視図
図2】製パン機の縦断面図
図3】製パン機の制御動作のタイムチャートを示す図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面に基づいて、本発明を調理器の一例としての製パン機に適用した場合の実施形態を説明する。
図1及び図2に示すように、製パン機は、製餅材料(図示省略)又は製パン材料(図示省略)を収容する調理容器1と、内部に加熱室2を形成し且つ当該加熱室2に調理容器1を収容するケーシング3を内部に備えた本体4と、ケーシング3の開口部を開閉自在な蓋体5とを備えて構成されている。
図2に示すように、更に、製パン機には、調理容器1内の製餅材料又は製パン材料を混練する混練手段Mと、加熱室2内を加熱する電熱ヒータ6(加熱手段の一例)と、電熱ヒータ6及び混練手段M(具体的には、混練手段Mを構成する電動モータ7)夫々の作動を制御する制御部8(制御手段の一例)と、制御部8に各種制御情報を送信する操作部9(図1参照)等が設けられている。
ちなみに、製餅材料は、所定の量のもち米、及び、そのもち米の量に応じた量の水を含む。
【0029】
制御部8は、電熱ヒータ6及び電動モータ7夫々の作動を制御して、調理容器1内の製餅材料を加熱して糊化させる糊化工程と、糊化工程で糊化された製餅材料を混練する混練工程とを少なくとも実行する製餅モード、並びに、電熱ヒータ6及び電動モータ7夫々の作動を制御して、調理容器1内の製パン材料を混練する混練工程と、調理容器1内の製パン材料を発酵させる発酵工程と、調理容器1内の製パン材料を焼き上げる焼成工程とを少なくとも実行する製パンモードを実行可能に構成されている。
【0030】
図1に示すように、操作部9には、製パン機を運転可能な状態にする電源スイッチ9a、制御部8に実行させる運転モードを製餅モード及び製パンモードから択一的に選択するモード選択スイッチ9b(モード選択手段の一例)、及び、モード選択スイッチ9bにて選択された運転モードでの運転の開始を指令する運転開始スイッチ9c等が設けられている。
又、操作部9により指令された内容や、現在の製パン機の運転状態(例えば、選択された運転モード)等を表示する表示部10が設けられている。
【0031】
次に、製パン機の各部について説明を加える。
図1及び図2に示すように、本体4は、平面視において前後方向に若干長尺の概ね長方形状で、上部が開口した有底箱状に形成されている。ケーシング3は、詳細な図示を省略するが、平面視において前後方向に若干長尺の概ね長方形状の有底筒状に構成され、このケーシング3が、図2に示すように、本体4内の略中央位置に配置されている。そして、本体4内は、概ね、ケーシング3内に形成される加熱室2と、ケーシング3の前方側(図2の左側)に形成される前方側空間11と、ケーシング3の後方側(図2の右側)に形成される後方側空間12と、それら加熱室2、前方側空間11及び後方側空間12の下方に形成される伝動部収容空間13との四区画に仕切られている。
【0032】
図1及び図2に示すように、操作部9及び表示部10は、本体4の上部における開口部の前方側の部分に設けられ、蓋体5は、本体4の開口部の後縁部に設けられたヒンジ機構14に、左右方向(図2の紙面表裏方向)に沿った揺動軸14a周りに揺動自在な状態で支持されている。これにより、蓋体5が、本体4の開口部及びケーシング3の開口部を開閉自在に構成される。
更に、本体4の上部には、概略U字形状のハンドル15が左右方向に沿った揺動軸周りで揺動自在に支持されて設けられ、使用者は、このハンドル15を用いて製パン機を持ち上げることができる。
【0033】
図2に示すように、有底筒状のケーシング3は、平面視で、前後方向に若干長尺の概ね長方形状の板状で、略中央部分に円形開口部(図示せず)を有する底壁部3aと、概ね長方形状の角筒状に形成され、底壁部3aの外周縁部から一体的に上方に延出形成される側壁部3bとを備えて構成されている。なお、側壁部3bは、二重壁構造となっている。
【0034】
ケーシング3の底壁部3aの下部、即ち、伝動部収容空間13には、平面視で、前後方向に若干長尺の概ね長方形状で、ケーシング3の底壁部3aよりも前方側が長尺に形成され、且つ、正面視(前後方向視)で、概略逆U字形状に形成された土台部材16が設けられている。土台部材16は、ビス(図示せず)により本体4の底壁部4aに固定され、略中央部分に円形開口部(図示せず)を備えている。
【0035】
ケーシング3の底壁部3aの円形開口部及び土台部材16の円形開口部には、後述する電動モータ7からの回転駆動力を受けて従動回転する土台側従動軸17及び当該土台側従動軸17の軸受部18が配置されている。そして、軸受部18の上方側部位において径方向外方側に円形状に延出したフランジ部18aと、底壁部3aの円形開口部の周縁部と、土台部材16の円形開口部の周縁部とが、上下方向に重なるように、上方側から記載した順序でビス19により固定されている。
【0036】
軸受部18のフランジ部18aにおいてビス19により固定された部位よりも径方向内方側の位置には、円筒状の容器保持部18bが上方側に向けて突出形成されている。
軸受部18の中央部において相対回転自在に配置される土台側従動軸17の上端部には、土台側従動軸17を中心とする有底円筒状の連結具20が、円筒状の容器保持部18bの径方向内方側(内側)に位置する状態で、当該土台側従動軸17と一体的に回転するように取り付けられている。そして、図示を省略するが、連結具20には、土台側従動軸17周りで等間隔に配置され且つ上方側に突出する4つの係止部が設けられ、これら係止部間に、上方に向けて開く4つの凹部が形成されている。
【0037】
又、図2に示すように、伝動部収容空間13には、軸受部18の前方側に設けられる電動モータ7と、軸受部18から下方に突出する土台側従動軸17の下端部に固定されて当該土台側従動軸17と一体的に回転自在なプーリ21と、電動モータ7の駆動軸7a及びプーリ21に亘って巻回されたタイミングベルト22と、軸受部18の後方側に設けられる電源コード収容部23とが設けられている。従って、電動モータ7により、土台側従動軸17及び連結具20が回転駆動されるように構成されている。
【0038】
調理容器1は、詳細な図示を省略するが、平面視において四隅が丸みを帯び前後方向に若干長尺の概ね長方形状で、図2に示すように、上部が開口し底壁部1a及び側壁部1bを備えた有底筒状に形成されている。又、調理容器1の上部の開口の縁部には取手1cが設けられている。調理容器1の底壁部1aの中央部の下面には、調理容器1を載置支持する円筒状の容器台1Aが一体的に取り付けられている。容器台1Aの外径は、容器保持部18bの内径よりも若干小径に構成されている。
【0039】
調理容器1を容器保持部18bに着脱自在に保持する構成は、公知のバヨネット構造であるので、詳細な説明及び図示を省略して、簡単に説明する。
円筒状の容器保持部18bには、直径方向で対向する箇所の夫々に、当該容器保持部18bの上方側端部から下方側に向かって延びる上下方向溝及び当該上下方向溝の下端部から円周方向に向かって延びる円周方向溝を備えたL字形状溝18cが形成されている。
又、調理容器1の容器台1Aには、直径方向で対向する箇所の夫々に、容器台1Aの外面から径方向外方側に突出する固定用ピン1Eが突出形成されている。一対の固定用ピン1Eの先端部は、容器保持部18bの外径と同程度に突出しており、容器保持部18bのL字形状溝18cに挿入できるように構成されている。従って、調理容器1は、容器台1Aが容器保持部18bに内嵌され、且つ、容器台1Aの固定用ピン1Eが容器保持部18bのL字形状溝18cに挿入された状態で、ケーシング3内(加熱室2内)に装着される。つまり、当該一対のL字形状溝18c及び一対の固定用ピン1Eにより、バヨネット構造が構成される。
【0040】
又、調理容器1の底壁部1aの中央部には、容器側従動軸1Bが、上下方向の軸心回りで回転自在に支持された状態で設けられ、容器側従動軸1Bにおける調理容器1の底壁部1aから下方側に突出した突出部には、当該容器側従動軸1Bと一体的に回転する円盤状の従動側連結具1Cが固定されている。図示を省略するが、従動側連結具1Cは、直径方向で対向する箇所の夫々に、断面が概略逆U字形状の棒状体を備え、一対の棒状体が容器側従動軸1Bに直交する方向(径方向外方側)に延出するように構成されている。
【0041】
従って、上述のように、容器台1Aが容器保持部18bに内嵌され、且つ、容器台1Aの固定用ピン1Eが容器保持部18bのL字形状溝18cに挿入された状態で、調理容器1がケーシング3内(加熱室2内)に装着されると、従動側連結具1Cの棒状体が連結具20の互いに対向する一対の凹部に嵌まり込むことにより、従動側連結具1Cと連結具20とが伝動連結されるように構成されている。
【0042】
更に、図2に示すように、容器側従動軸1Bにおける調理容器1内の底壁部1aから上方側(調理容器1の内部)に突出した部分には、混練羽根1Dが一体的に且つ着脱自在に装着される。混練羽根1Dは、調理容器1内において、容器側従動軸1B周りで当該容器側従動軸1Bとともに一体的に回転するように構成されている。
そして、電動モータ7を作動させると、その回転駆動力がタイミングベルト22及びプーリ21により土台側従動軸17に伝動されて、その土台側従動軸17が回転駆動され、並びに、その土台側従動軸17の回転駆動力が連結具20及び従動側連結具1Cにより容器側従動軸1Bに伝動されて、容器側従動軸1Bが回転駆動され、その容器側従動軸1Bと一体で混練羽根1Dが回転するように構成されている。これにより、調理容器1内の製餅材料や製パン材料を混練することができるように構成されている。
【0043】
つまり、混練手段Mは、電動モータ7、タイミングベルト22、プーリ21、土台側従動軸17、連結具20、従動側連結具1C、容器側従動軸1B及び混練羽根1D等により構成される。
【0044】
ケーシング3の側壁部3bの後方側(図2の右側)における外壁面には、公知の温度センサS(温度検出手段の一例、例えば、サーミスタ)が配設されており、当該側壁部3bの温度を検知して、後述する制御部8に出力可能に構成されている。なお、この温度センサSにより検知された温度は、加熱室2内(調理容器1内)の温度と同視することができる。尚、温度センサSの配設箇所は、側壁部3bの後方側に限定されるものではなく、側壁部3bの左方側、右方側及び前方側のいずれかでも良い。
【0045】
図1及び図2に示すように、蓋体5は、縦断面視で概略逆U字形状に形成され、上述のように、本体4の開口の後縁部に設けられたヒンジ機構14により、ケーシング3の左右方向(図2の紙面表裏方向)に沿った揺動軸14a周りに揺動自在に設けられて、その揺動によりケーシング3の開口部を開閉自在に構成されている。また、蓋体5の上面の後端部には、加熱室2と外部とを連通する蒸気口24が設けられている。
【0046】
図2に示すように、前方側収容室11は、ケーシング3の側壁部3bの前方側に、遮熱板(図示せず)を介した状態で形成され、この前方側収容室11内には、制御部8が配設されている。図示しないが、制御部8は、公知の情報処理手段であるCPUや記憶部等を備えて構成され、また、電源から供給される電力を適切に各機器に供給可能に構成されている。
【0047】
図2に示すように、電熱ヒータ6は、長尺状で屈曲した環状のシーズヒータからなり、平面視で、前後方向に若干長尺の概略長方形状に形成され、ケーシング3の側壁部3bの内面に沿うように、ヒータ支持具(図示省略)により支持固定されている。
【0048】
次に、製パン機の運転方法について説明する。
尚、この実施形態では、製パン機の運転方法を制御部8により自動的に実行するように構成してあるので、以下では、運転方法を実行するための制御部8の制御動作について説明する。
餅を作るときは、使用者は、蓋体5を開放して調理容器1内に製餅材料を入れたのち、蓋体5を閉じ、操作部9のモード選択スイッチ9bにより製餅モードを選択して、運転開始スイッチ9cを押す。すると、制御部8により製餅モードが自動的に実行されて、餅が自動的に作られる。
又、パンを焼くときは、使用者は、蓋体5を開放して調理容器1内に製パン材料を入れたのち、蓋体5を閉じ、操作部9のモード選択スイッチ9bにより製パンモードを選択して、運転開始スイッチ9cを押す。すると、制御部8により製パンモードが自動的に実行されて、パンが自動的に焼き上げられる。
【0049】
尚、本発明は、製餅に関するものであるので、以下では、製餅モードについて詳細に説明し、製パンモードについては、簡単な説明に止める。
【0050】
本発明では、調理容器1内の製餅材料の糊化終了を判断する糊化終了判断手段Jが設けられ、制御部8が、糊化終了判断手段Jにより糊化終了が判断されたことに基づいて、糊化工程を終了して混練工程を開始するように構成されている。
この実施形態では、糊化工程及び混練工程を少なくとも備えた製餅調理における電熱ヒータ6(即ち、加熱手段)の作動開始後の経過時間を加熱量対応指標値として導出する指標値導出手段Aと、加熱室2の温度を検出する温度センサSとが設けられている。
そして、糊化終了判断手段Jが、指標値導出手段Aと温度センサSとを備えて、指標値導出手段Aにより求められた電熱ヒータ6の作動開始後の経過時間(加熱量対応指標値)が設定指標値である設定経過時間Hs以上になった以降に、温度センサSの検出温度Tに基づいて、糊化終了を判断するように構成されている。この実施形態では、図2に示すように、指標値導出手段Aが制御部8を用いて構成されている。
【0051】
更に、制御部8が、糊化工程において、温度センサSの検出温度が第1設定温度Tsになるように、電熱ヒータ6の作動を制御するように構成され、糊化終了判断手段Jが、指標値導出手段Aにより求められた電熱ヒータ6の作動開始後の経過時間(加熱量対応指標値)が設定経過時間Hs(設定指標値)以上になった以降に、温度センサSの検出温度Tが第1設定温度Tsと同じ温度に設定された第2設定温度Tv以上になると、糊化終了と判断するように構成されている。
【0052】
つまり、製餅モードを実行することが製餅調理を実行することになり、この実施形態では、製餅モード、即ち、製餅調理は、糊化工程と混練工程との2工程を備えている。
従って、電熱ヒータ6の作動開始に伴って製餅調理が開始されるので、指標値導出手段Aは、製餅調理の開始後の経過時間を加熱量対応指標値として導出するようにも構成されていることになる。
【0053】
次に、図3に示すタイムチャートに基づいて、製餅モードについて説明を加える。尚、図3(a)は、温度センサSの検出温度Tの時間経過に伴う推移を示し、図3(b)は、電熱ヒータ6の時間経過に伴う作動状態の推移を示し、図3(c)は、電動モータ7の時間経過に伴う作動状態の推移を示す。
【0054】
この実施形態では、製餅モードを実行する際に、調理容器1に収容するもち米の量、水の量が、それぞれ、設定もち米量、その設定もち米量に応じた設定水量に設定されている。
そして、設定もち米量と設定水量とからなる設定量の製餅材料に対応して、予め実験により、上述した第1設定温度Ts及び設定経過時間Hsが設定されている。
つまり、温度センサSは加熱室2の温度を検出するものであるので、温度センサSの検出温度Tと加熱室2内に収容された調理容器1内の製餅材料の実際の温度とは、多少の差がある。そこで、実験により、調理容器1内の製餅材料の温度が当該製餅材料を十分に糊化させることが可能な温度になっている状態での加熱室2の温度が求められて、その温度が第1設定温度Tsに設定される。この実施形態では、第1設定温度Tsは、例えば120℃に設定される。
【0055】
又、糊化工程において、加熱室2の温度が第1設定温度Tsになるように、電熱ヒータ6の作動を制御するための加熱室2の温度として、第1設定温度Tsを基準にして、糊化時高位温度Tt1が第1設定温度Tsよりも若干高い温度に、糊化時低位温度Tb1が第1設定温度Tsよりも若干低い温度にそれぞれ設定されている。
糊化工程では、加熱室2の温度が第1設定温度Tsになるように、温度センサSの検出温度Tが糊化時高位温度Tt1以上になると電熱ヒータ6の作動を停止し、且つ、温度センサSの検出温度Tが糊化時低位温度Tb1以下になると電熱ヒータ6を作動させる形態で、電熱ヒータ6をオンオフ制御することにより、調理容器1内の製餅材料の温度が十分に糊化可能な温度になるようにしている。
【0056】
そして、設定経過時間Hsとしては、糊化工程において上述の形態で電熱ヒータ6をオンオフ制御したときに、調理容器1内の設定量の製餅材料に対して、その全量を糊化させるに十分な熱量を与えることが可能な時間に設定される。この実施形態では、設定経過時間Hsは、例えば、30分に設定される。
【0057】
モード選択スイッチ9bにより製餅モードが選択された状態で、運転開始スイッチ9cが押されると、図3に示すように、制御部8は、電熱ヒータ6の作動を開始して糊化工程を開始し、以降、温度センサSの検出温度Tが糊化時高位温度Tt1以上になると、電熱ヒータ6の作動を停止し、且つ、温度センサSの検出温度Tが糊化時低位温度Tb1以下になると、電熱ヒータ6の作動させる形態で、電熱ヒータ6をオンオフ制御して、糊化工程を実行する。
【0058】
又、制御部8は、糊化工程において、電熱ヒータ6の作動を開始して糊化工程を開始するタイミングと、温度センサSの検出温度Tが最初に糊化時高位温度Tt1に達したタイミングで、電動モータ7を攪拌促進用設定時間の間作動させて、攪拌促進処理を実行する。ちなみに、攪拌促進用設定時間は、短時間、例えば10秒間に設定される。
【0059】
糊化工程を開始するタイミングでは、製餅材料の糊化が殆ど進行しておらず、又、温度センサSの検出温度Tが最初に糊化時高位温度Tt1に達したタイミングでも、製餅材料の糊化があまり進行していない状態であり、調理容器1内には、十分な量の水がもち米と共に存在している。
そこで、糊化工程において、糊化工程を開始するタイミングと、温度センサSの検出温度Tが最初に糊化時高位温度Tt1に達したタイミングでの2回、短時間の間、電動モータ7を作動させて混練羽根1Dを回転させる攪拌促進処理を実行することにより、調理容器1内のもち米と水とを、もち米の表面側の糊化された部分を損傷することなく均等に混合させることができ、しかも、調理容器1内の製餅材料の温度を均等化させることができるので、糊化工程において、調理容器1内の製餅材料の糊化を均等化することが可能となる。
【0060】
制御部8にて構成される指標値導出手段Aは、製餅モード(即ち、製餅調理)において、電熱ヒータ6の作動開始後の経過時間を計時し、図3に示すように、糊化終了判断手段Jは、指標値導出手段Aにより計時される電熱ヒータ6の作動開始後の経過時間が設定経過時間Hs以上になった以降に、温度センサSの検出温度Tが第2設定温度Tv以上になると、糊化終了と判断する。
この図3に示す例では、指標値導出手段Aにより計時される電熱ヒータ6の作動開始後の経過時間が設定経過時間Hsに達した時点では、温度センサSの検出温度Tが第2設定温度Tvよりも低いので、指標値導出手段Aにより計時される電熱ヒータ6の作動開始後の経過時間が設定経過時間Hsに達した後、温度センサSの検出温度Tが第2設定温度Tvに達した時点で、糊化終了判断手段Jにより糊化終了と判断される。
【0061】
尚、図示を省略するが、指標値導出手段Aにより計時される電熱ヒータ6の作動開始後の経過時間が設定経過時間Hsに達した時点で、温度センサSの検出温度Tが第2設定温度Tv以上の場合は、指標値導出手段Aにより計時される電熱ヒータ6の作動開始後の経過時間が設定経過時間Hsに達した時点で、糊化終了判断手段Jにより糊化終了と判断される。
【0062】
図3に示すように、この実施形態では、制御部8は、糊化終了判断手段Jにより糊化終了が判断された時点で、混練工程を開始する。
そして、制御部8は、混練工程において、電動モータ7(即ち、混練手段M)を作動させる混練処理を最初に実行した後、電熱ヒータ6を作動させる加熱処理と混練処理とを交互に実行する。
更に、制御部8が、混練工程を設定混練工程時間Ha実行し、当該混練工程において、当該混練工程を終了するまでの設定仕上げ時間Hbの間、電動モータ7(即ち、混練手段M)を連続して作動させる。ちなみに、設定混練工程時間Ha及び設定仕上げ時間Hbは、予め実験により、糊化工程において糊化された調理容器1内の製餅材料を混練羽根1Dにより混練することにより、適切に餅を作ることが可能な時間に設定される。例えば、設定混練工程時間Haが50分間に、設定仕上げ時間Hbが15分間に夫々設定される。
【0063】
混練工程について更に説明を加えると、混練工程において、加熱室2の温度が第1設定温度Tsになるように、電熱ヒータ6の作動を制御するための温度として、第1設定温度Tsを基準にして、混練時高位温度Tt2が第1設定温度Tsよりも若干高い温度に、混練時低位温度Tb2が第1設定温度Tsよりも若干低い温度にそれぞれ設定されている。
但し、第1設定温度Tsに対する糊化時低位温度Tb1、混練時低位温度Tb2、糊化時高位温度Tt1及び混練時高位温度Tt2の関係が、以下のように設定されている(図3参照)。
Tb1<Tb2<Ts<Tt2<Tt1
【0064】
そして、図3に示すように、制御部8は、糊化終了判断手段Jにより糊化終了が判断された時点で、電熱ヒータ6を停止させると共に、電動モータ7を作動させて(即ち、混練羽根1Dを回転させて)混練工程を開始し、以降、温度センサSの検出温度Tが混練時低位温度Tb2以下になることに基づいて、電動モータ7を停止させる(即ち、混練羽根1Dの回転を停止させる)と共に電熱ヒータ6を作動させる制御と、温度センサSの検出温度Tが混練時高位温度Tt2以上になることに基づいて、電動モータ7を作動させる(即ち、混練羽根1Dを回転させる)と共に電熱ヒータ6を停止させる制御を繰り返す。つまり、混練工程では、混練処理が最初に実行された後、加熱処理と混練処理とが交互に実行される。
【0065】
そして、制御部8は、混練工程の開始後の経過時間が(Ha−Hb)に達すると、設定仕上げ時間Hbの間、電熱ヒータ6を停止させた状態で、電動モータ7を連続して作動させ、混練工程の開始後の経過時間がHaに達すると、電動モータ7を停止して混練工程を終了して、製餅モードを終了する。
例えば、図3に示すように、混練工程の開始後の経過時間が(Ha−Hb)に達した時点で、電熱ヒータ6を作動させている場合は、混練工程の開始後の経過時間が(Ha−Hb)に達した時点で、電熱ヒータ6を停止させると共に電動モータ7を作動させて、設定仕上げ時間Hbの間、電動モータ7の作動を継続する。
一方、図示を省略するが、混練工程の開始後の経過時間が(Ha−Hb)に達した時点で、電動モータ7を作動させている場合は、そのまま電動モータ7の作動を設定仕上げ時間Hbの間継続する。
【0066】
上述の如く製餅モードが実行されることにより、糊化終了判断手段Jにより糊化終了が判断されたことに基づいて、制御部8により糊化工程が終了されて混練工程が開始されるので、調理容器1内に収容されているもち米の殆ど全粒が十分に糊化されたと想定される状態になった後に、混練工程が開始されることになる。
又、糊化終了判断手段Jにより糊化終了が判断された時点で、混練工程が開始されるので、熱による硬化、焦げ等が生じにくく、一層美味しい餅を作ることができる。
更に、混練工程においては、加熱処理と混練処理とが交互に実行されるので、製餅材料の温度低下を抑制すると共に、製餅材料の温度分布を小さくしながら、製餅材料を混練して餅を作ることができる。
従って、細かい粒の残留が極めて少なく、しかも、全体にわたって柔らかさが極めて均等な高品質の餅を作ることができる。
【0067】
次に、製パンモードについて、簡単に説明する。
制御部8は、混練工程では、電動モータ7を作動させて混練羽根1Dを回転させる。
又、制御部8は、発酵工程では、温度センサSの検出温度が製パン材料の発酵に適した目標温度となるように、電熱ヒータ6の作動を制御(例えば、オンオフ制御)し、焼成工程では、温度センサSの検出温度が製パン材料の焼き上げに適した目標温度となるように、電熱ヒータ6の作動を制御(例えば、オンオフ制御)する。
【0068】
〔別実施形態〕
(A)製餅調理(即ち、製餅モード)として、上記の実施形態では、糊化工程と混練工程の2工程を備えて構成したが、糊化工程及び混練工程以外の工程を備えて構成しても良い。
例えば、糊化工程の前に、調理容器1内の製餅材料を加熱することなく所定の時間保持して、常温でもち米に水を吸水させるひたし工程を実行するように構成しても良い。
【0069】
(B)糊化終了判断手段Jの具体的な構成は、上記の実施形態において説明した構成に限定されるものではない。
(B−1)例えば、上記の実施形態と同様に、糊化終了判断手段Jを指標値導出手段Aと温度センサSとを用いて構成する場合、指標値導出手段Aにより導出する加熱量対応指標値の具体的な例は、上記の実施形態において用いた例、即ち、製餅調理における電熱ヒータ6の作動開始後の経過時間に限定されるものではない。
例えば、製餅調理における混練工程を開始するまでの電熱ヒータ6の加熱量の積算値、製餅調理における混練工程を開始するまでの電熱ヒータ6の作動時間(オンオフ制御の場合、オン時間)の積算値、又は、製餅調理の開始後の経過時間のいずれか一つでも良い。尚、設定指標値は、加熱量対応指標値の種類に応じて設定される。
【0070】
ちなみに、糊化工程等、製餅調理における混練工程の前の工程での電熱ヒータ6の制御形態は、例えば、上記の実施形態の如きオンオフ制御に予め設定されていることから、製餅調理における混練工程を開始するまでの電熱ヒータ6の作動時間の積算値、製餅調理の開始後の経過時間に応じて、調理容器1内の製餅材料に付与された加熱量を推定することができるので、これらを加熱量対応指標値として用いることができる。
【0071】
又、製餅調理における電熱ヒータ6の作動開始後の経過時間、製餅調理における混練工程を開始するまでの電熱ヒータ6の加熱量の積算値、製餅調理における混練工程を開始するまでの電熱ヒータ6の作動時間の積算値、及び、製餅調理の開始後の経過時間のうちの少なくとも二つ以上を加熱量対応指標値として用いても良い。この場合、二つ以上の加熱量対応指標値の全てが、夫々に対応する設定指標値以上になることを条件として、糊化終了と判断するように構成することになる。
【0072】
(B−2)もち米粒は糊化が進行するほど膨張して体積が増加する。そこで、調理容器1内の製餅材料の表面の高さを検出する材料高さ検出手段を設ける。そして、糊化終了判断手段Jを、当該材料高さ検出手段を用いて構成して、当該材料高さ検出手段により検出される製餅材料の表面の高さが予め設定した設定高さ以上になると、糊化終了と判断するように構成しても良い。
【0073】
(C)糊化工程や混練工程において、温度センサSの検出温度Tが第1設定温度Tsになるように電熱ヒータ6の作動を制御する制御形式として、上記の実施形態ではオンオフ制御を用いたが、比例制御、PID制御等、他の制御を用いても良い。
尚、糊化工程や混練工程においてオンオフ制御を用いる場合、上記の実施形態では、第1設定温度Tsを基準にして設定した糊化時高位温度Tt1、混練時高位温度Tt2、糊化時低位温度Tb1、混練時低位温度Tb2に基づいて、電熱ヒータ6をオンオフ制御したが、温度センサSの検出温度Tが第1設定温度Tsより高くなると電熱ヒータ6の作動を停止し、温度センサSの検出温度Tが第1設定温度Tsより低くなると電熱ヒータ6を作動させる形態で、電熱ヒータ6をオンオフ制御しても良い。
混練工程において、上記の実施形態では、温度センサSの検出温度Tが第1設定温度Tsになるように電熱ヒータ6の作動を制御したが、温度センサSの検出温度Tが第1設定温度Tsと異なる温度、例えば、第2設定温度Tv(但し、第1設定温度Tsよりも若干高い温度に設定される)になるように電熱ヒータ6の作動を制御しても良い。この場合の電熱ヒータ6のオンオフ制御としては、温度センサSの検出温度Tが第2設定温度Tvより高くなると電熱ヒータ6の作動を停止し、温度センサSの検出温度Tが第2設定温度Tvより低くなると電熱ヒータ6を作動させる形態で、電熱ヒータ6をオンオフ制御しても良い。
【0074】
(D)上記の実施形態では、糊化終了判断手段Jにより糊化終了が判断された時点で、混練工程を開始するように構成したが、糊化終了判断手段Jにより糊化終了が判断された後、混練工程を開始するまでに、所定の時間、別の工程を実行しても良い。この別の工程では、糊化工程で行った制御を行っても良く、電熱ヒータ6及び電動モータ7を停止させる制御を行っても良く、これらとは別の制御を行っても良い。
【0075】
(E)混練工程において、混練処理と加熱処理とを交互に実行するように構成する場合に、上記の実施形態では、混練工程を終了するまでの設定仕上げ時間Hbの間、混練手段Mを連続して作動させるように構成したが、混練工程全体にわたって、加熱処理と混練処理とを交互に実行するように構成しても良い。
【0076】
(F)上記の実施形態では、混練工程において、加熱処理と混練処理とを交互に実行するように構成したが、加熱処理を省略して、混練工程全体にわたって、混練処理を連続して実行するように構成しても良い。あるいは、加熱処理と混練処理とを並行して実行するように構成しても良い。
【0077】
(G)糊化時高位温度Tt1よりも高い第3設定温度を設定して、糊化工程において、電熱ヒータ6の作動を開始して糊化工程を開始した後、温度センサSの検出温度Tが第3設定温度に達した後に、温度センサSの検出温度Tが第1設定温度Tsになるように、電熱ヒータ6の作動を制御するように構成しても良い。
【0078】
(H)調理容器1内の製餅材料の温度を調整するための電熱ヒータ6の作動の制御用として、上記の実施形態で設けた温度センサS、即ち、加熱室2の温度を検出する温度センサSに代えて、他の温度センサを設けても良い。例えば、調理容器1の温度を直接検出する温度センサ(例えば、加熱室2に収容された調理容器1に当接するサーミスタ)、あるいは、調理容器1内の製餅材料の温度を直接検出する温度センサ(例えば、赤外線温度センサ)を設けても良い。
【0079】
(I)上記の実施形態では、調理容器1に収容するもち米の量を1段階に固定的に設定したが、複数段階に設定可能に構成しても良い。
この場合、調理容器1に収容するもち米の量を複数段階の設定もち米量から択一的に選択するもち米量選択手段を設ける。又、複数段階の設定もち米量夫々に対応して、第1設定温度Ts及び設定経過時間Hsを設定する。
そして、製餅調理では、もち米量選択手段にて選択された設定もち米量に対応する第1設定温度Ts及び設定経過時間Hsを用いて、糊化工程を実行するように構成する。
【0080】
(J)上記の実施形態では、第2設定温度Tvを第1設定温度Tsと同じ温度に設定したが、第1設定温度Tsよりも若干高い温度に設定しても良い。
【0081】
(K)糊化工程において、電熱ヒータ6の作動開始後、温度センサSの検出温度が最初に糊化時高位温度Tt1まで上昇する初期昇温過程では、温度センサSの検出温度が上昇する昇温率が、調理容器1に収容された製餅材料の量に応じて異なる。
そこで、第1設定温度Ts及び設定経過時間Hsを、初期昇温過程での昇温率に応じて補正するように構成しても良い。例えば、初期昇温過程での昇温率が小さくなるほど、設定経過時間Hsを長くなるように補正する。
この場合は、調理容器1に収容された製餅材料の量の変動に拘わらず、糊化終了判断手段Jにより、糊化終了を適切に判断することが可能となる。
【0082】
(L)混練手段Mの具体的な構成は、上記の実施形態で説明した構成、即ち、回転駆動される混練羽根1Dを用いた構成に限定されるものではない。例えば、上下動される混練羽根を用いた構成でも良い。
【0083】
(M)上記の実施形態では、製餅モードにおける糊化工程から混練工程への切り換えの処理や、混練工程の終了のための処理を制御部8により行わせるように構成して、制御部8により製餅モード(即ち、製餅調理)が自動的に実行されるように構成したが、製餅調理を手動操作により実行するように構成しても良い。
この場合、例えば、糊化工程の開始および停止を指令する糊化スイッチ、混練工程の開始および停止を指令する混練スイッチ、及び、糊化終了判断手段Jにより糊化終了が判断されたことを報知する糊化終了報知手段(ブザーやランプ等)を設ける。
【0084】
次に、手動操作により使用者が製餅調理を行う際の手順を説明する。
使用者は、先ず、糊化スイッチにより糊化工程の開始を指令し、続いて、糊化終了報知手段により糊化終了が報知されると、糊化スイッチにより糊化工程の終了を指令する。又、混練スイッチにより混練工程の開始を指令する。続いて、使用者は、混練工程において餅が作られたと判断すると、混練スイッチにより混練工程の停止を指令する。
【0085】
(N)上記の実施形態では、製パン機能に加えて製餅機能を備えた製パン機に本発明を適用したが、本発明は、製餅専用の調理器にも適用することができる。
【0086】
尚、上記の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、又、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上説明したように、高品質の餅を作ることが可能な調理器及び調理器の運転方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 調理容器
2 加熱室
3 ケーシング
6 電熱ヒータ(加熱手段)
8 制御部(制御手段)
9b モード選択スイッチ(モード選択手段)
A 指標値導出手段
Ha 設定混練工程時間
Hb 設定仕上げ時間
Hs 設定経過時間(設定指標値)
J 糊化終了判断手段
M 混練手段
S 温度センサ(温度検出手段)
Ts 第1設定温度
Tv 第2設定温度
図1
図2
図3