特許第6091388号(P6091388)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6091388
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】水田用播種機
(51)【国際特許分類】
   A01C 7/08 20060101AFI20170227BHJP
   A01C 15/00 20060101ALI20170227BHJP
   A01C 5/06 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   A01C7/08 310F
   A01C15/00 A
   A01C5/06 M
   A01C5/06 F
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-198605(P2013-198605)
(22)【出願日】2013年9月25日
(65)【公開番号】特開2015-62378(P2015-62378A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2015年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180507
【弁理士】
【氏名又は名称】畑山 吉孝
(74)【代理人】
【識別番号】100137590
【弁理士】
【氏名又は名称】音野 太陽
(72)【発明者】
【氏名】松村 哲也
(72)【発明者】
【氏名】安田 真
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−046812(JP,U)
【文献】 特開昭62−011010(JP,A)
【文献】 特開2012−161280(JP,A)
【文献】 実公昭38−028428(JP,Y1)
【文献】 特開2013−128429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 7/00− 9/08
A01C 5/06
A01C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
後車輪を有した自走車体と、前記自走車体の後部に連結された播種装置とを備え、
整地底部、及び、前記整地底部のうちの後車輪通過後の両横側に位置する部位に振り分けて設けられ、かつ車体前方向きに開口した左右一対の畝立凹入部を有した畝立体を備え、
前記播種装置に、前記畝立体によって形成された左右一対の畝の上端部に各別に種籾を供給する左右一対の播種作業部を備えてある水田用播種機。
【請求項2】
前記播種作業部に、タンクから種籾を繰り出し、繰り出した種籾を排出口から落下させる繰出機構と、前記排出口からの種籾を前記排出口の直下又はほぼ直下に自由落下によって落下させて前記畝に供給する落下供給路と、を備えてある請求項1に記載の水田用播種機。
【請求項3】
前記畝立体を接地フロートによって構成してある請求項1又は2に記載の水田用播種機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後車輪を有した自走車体と、前記自走車体の後部に連結された播種装置とを備えた水田用播種機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示されるように、走行機体の後部に、整地フロート及び播種装置を有した作業部が連結され、整地フロートで整地された圃場面に播種するよう構成された水田作業機があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−128429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
種籾の直播による稲作を行なうには、代掻きを終えて水抜きした圃場に種籾を直播し、この後、圃場をかん水状態に維持して、発芽及び生長を行なわせる。また、雑草の発生を抑制する。近年、水田において、水が存在する部位を移動して種籾から出た芽や軟らかい苗を食べる貝類〔スクミリンゴガイ(通称、ジャンボタニシ)〕が発生している。
従来の直播技術の場合、播種箇所が圃場をかん水状態にした水に浸り、貝類によって芽などが食べられる被害が発生することがある。
【0005】
本発明の目的は、上記した被害を回避し易い水田用播種機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第1発明による水田用播種機は、
後車輪を有した自走車体と、前記自走車体の後部に連結された播種装置とを備え、
整地底部、及び、前記整地底部のうちの後車輪通過後の両横側に位置する部位に振り分けて設けられ、かつ車体前方向きに開口した左右一対の畝立凹入部を有した畝立体を備え、
前記播種装置に、前記畝立体によって形成された左右一対の畝の上端部に各別に種籾を供給する左右一対の播種作業部を備えてある。
【0007】
本第1発明の構成によると、畝立体が接地した泥土部に畝立凹入部を作用させる。これに加え、後車輪によってその横側に押し出された泥土を畝立凹入部に開口から取り込ませ、取り込ませた泥土に畝立凹入部を作用させられるので、仕上がり精度のよい畝が形成される。このように形成された畝の上端部に播種作業部によって種籾を直播できる。これにより、播種作業後の圃場をかん水状態にするのに、畝における播種箇所が水に浸らないようにしてかん水状態にすれば、貝類は水がない播種箇所へ移動しないので、播種した種籾に貝類が移動することを回避できる。播種箇所が水に浸らなくても、畝間の水が畝に浸透することによって種籾や発生した苗に給水できる。
【0008】
従って、本第1発明によると、種籾から出た芽や軟らかい苗が貝類によって食べられる被害による損失を無くすとか、抑制した状態で稲作できる。
【0009】
本第2発明では、前記播種作業部に、タンクから種籾を繰り出し、繰り出した種籾を排出口から落下させる繰出機構と、前記排出口からの種籾を前記排出口の直下又はほぼ直下に自由落下によって落下させて前記畝に供給する落下供給路と、を備えてある。
【0010】
繰出機構から排出された種籾が畝に至る途中において経路壁などに触れると、種籾が経路途中で飛散して畝外に落下し易くなる。本第2発明によると、繰出機構から排出された種籾を経路壁に触れさせずに畝に落下させられるから、畝外への落下する種籾が発生し難く、畝外で発芽して貝類に食べられる被害を回避し易い。
【0011】
本第3発明では、前記畝立体を接地フロートによって構成してある。
【0012】
本第3発明によると、畝立機能を接地フロートに備えさせた簡単な構造で播種箇所が水に浸ることを回避でき、貝類による被害の回避を安価にできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】水田用播種機の全体を示す側面図である。
図2】水田用播種機の全体を示す平面図である。
図3】播種装置を示す背面図である。
図4】播種装置の作業部を示す平面図である。
図5】播種作業部を示す側面図である。
図6】畝立体を示す底面図である。
図7図5のVII−VII断面矢視図である。
図8】播種作業後の圃場を示す説明図である。
図9】繰出機構を示す縦断側面図である。
図10】下降使用位置での溝切器を示す側面図である。
図11】上昇格納位置での溝切器を示す側面図である。
図12】第1の別実施構造を備えた水田用播種機における溝切器の操作装置を示す概略図である。
図13】第2の別実施構造を備えた水田用播種機における溝切器を示す平面図である。
図14】第3の別実施構造を備えた水田用播種機における溝切器を示す平面図である。
図15】比較構造を備えた畝立体を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例に係る水田用播種機の全体を示す側面図である。図2は、本発明の実施例に係る水田用播種機の全体を示す側面図である。図1,2に示すように、本発明の実施例に係る水田用播種機は、車体フレーム1の下部に左右一対の前車輪2,2及び左右一対の後車輪3,3が装備された自走車体を備えている。自走車体の後部に播種装置10を連結してある。
【0015】
自走車体は、車体前部に設けられたエンジン4を備え、エンジン4からの駆動力によって前車輪2及び後車輪3が駆動されて走行するように構成してある。自走車体は、車体後部に設けられた運転座席5aを有した運転部5を備え、運転部5に搭乗して運転するように乗用型に構成してある。運転部5には、運転座席5aの前方に設けられ、左右一対の前車輪2,2を操向操作するステアリングホィール5bを備えてある。自走車体の運転座席5aの両横側方と後方とにわたる部位に、作業用ステップ6及び手摺り7を有した作業用スペースを設けてある。作業用スペースは、播種装置10に対する種子供給などの作業を行なうのに使用するものである。
【0016】
播種装置10は、車体フレーム1の後部から後方向きに上下揺動するように延出されたリンク機構8に支持され、リンク機構8を昇降シリンダ9によって揺動操作することにより、畝立体11,12が圃場面に下降して接地した下降作業状態と、畝立体11,12が圃場面から高く上昇した上昇非作業状態とに昇降できるようになっている。
【0017】
水田用播種機は、播種装置10を下降作業状態にして自走車体を走行させることにより、鉄コーティングが施された種籾Bを圃場に直播する播種作業を6条播種が可能な状態で行うものである。
【0018】
播種装置10について説明する。
図3は、播種装置10を示す背面図である。図1,2,3に示すように、播種装置10は、エンジン4からの駆動力が回転軸13aを介して入力されるフィードケース13を有した播種装置フレーム14を備えている。播種装置フレーム14に車体横方向に並んだ左右一対のタンク15,15を支持してある。左側のタンク15の下部に車体横方向に並んだ3つの播種作業部20を装着し、右側のタンク15の下部に車体横方向に並んだ3つの播種作業部20を装着してある。播種装置フレーム14の下部に、車体横方向に並んだ3つの畝立体11,12を装着してある。
【0019】
6つの播種作業部20それぞれは、タンク15のロート部に上端側が連結された繰出ケース22(図9参照)を有した繰出機構21と、繰出ケース22の下部に上端側が連結された下細り形状の播種筒23とを備えている。
【0020】
図9は、繰出機構21を示す縦断側面図である。図9に示すように、6つの播種作業部20それぞれの繰出機構21は、繰出ケース22の内部に回転自在に支持された繰出回転体24を備えている。繰出回転体24は、回転支軸25にフィードケース13から動力伝達されることによって回転駆動される。繰出回転体24は、周面に回転方向Fに所定間隔おきに設けられた複数の繰出凹部24aを備え、繰出ケース22の内部にタンク15から供給された種籾Bを、繰出凹部24aによって設定量ずつ、かつ間欠的に繰出回転体24の上側から下側に繰り出し、繰出した種籾Bを、繰出ケース22の下端部で形成されている排出口26に落下させて、排出口26から繰出ケース22の外部に排出する。
【0021】
排出口26から排出された種籾Bは、播種筒23によって形成されている落下供給路27を自然落下によって下降して落下供給路27から圃場に落下する。つまり、排出口26からの種籾Bは、圃場のうちの排出口26の直下又はほぼ直下の箇所に落下する。
【0022】
図3,4,5,6に示すように、3つの畝立体11,12は、圃場の泥土面に接地して播種作業部20の対地高さを設定する接地フロートによって構成され、接地フロートの底部によって構成される整地底部11a,12aを備えている。
【0023】
3つの畝立体11,12のうちの左端の畝立体11は、6つの播種作業部20のうちの左端の播種作業部20と、左端の播種作業部20に隣り合う播種作業部20との2つの播種作業部20(以下、左側2つの播種作業部20と呼称する。)の播種筒23の前方で、かつ左の後車輪3の後方で接地するように配備してある。3つの畝立体11,12のうちの右端の畝立体11は、6つの播種作業部20のうちの右端の播種作業部20と、右端の播種作業部20に隣り合う播種作業部20との2つの播種作業部20(以下、右側2つの播種作業部20と呼称する。)の播種筒23の前方で、かつ右の後車輪3の後方で接地するように配備してある。
【0024】
図6は、左端及び右端の畝立体11を示す底面図である。図7は、図5のVII−VII断面矢視図である。図4〜7に示すように、左端及び右端の畝立体11の整地底部11aのうちの横幅方向中央部に排水溝30を形成し、整地底部11aのうちの両横端側の部位に畝立凹入部31を形成してある。左右一対の畝立凹入部31,31は、整地底部11aのうちの後車輪通過後T(図4参照)の両横側に位置する部位に振り分けて形成してある。左右一対の畝立凹入部31,31に、車体前方向きの開口31aを備えてある。
【0025】
左端及び右端の畝立体11は、前方に位置する泥水を畝立凹入部31に流入し難いように排水溝30に導入して畝立体11の後方に抜け出るよう案内しながら後車輪3の後方を移動していく。左端及び右端の畝立体11は、接地した泥土部に畝立凹入部31を作用させる。左端及び右端の畝立体11は、さらに、前方に位置する後車輪3によってその横側に押し出された泥土を畝立凹入部31に開口31aから取り込み、取り込んだ泥土に畝立凹入部31を作用させる。これにより、左端及び右端の畝立体11は、圃場面のうち、左側及び右側2つの播種作業部20による播種が行われる箇所に畝A(図8参照)を形成する。
【0026】
図15は、比較構造を備えた畝立体60を示す底面図である。比較構造を備えた畝立体60では、整地底部60aのうちの後車輪通過後Tに位置する部位に畝立凹入部61を形成している。畝立凹入部61は、後車輪3に対して横方向に偏芯している。この畝立体60では、圃場面のうち、後車輪3の通過による凹入が発生し易い部位に畝立を行なうので、高さが高い畝を形成し難い。これに対し、図4,6,7に示す左端及び右端の畝立体11は、圃場面のうち、後車輪通過後Tの横側に位置する部位であって、後車輪3の通過による凹入が発生し難い部位に畝立を行なうので、高さが高い畝を形成する。
【0027】
3つの畝立体11,12のうちの中央の畝立体12は、6つの播種作業部20のうちの左側2つの播種作業部20と、右側2つの播種作業部20との間の2つの播種作業部20(以下、中央2つの播種作業部20と呼称する。)の播種筒23の前方で接地するように配備してある。中央の畝立体12の整地底部12aに左右一対の畝立凹入部32,32を形成してある。中央の畝立体12は、接地した泥土部に畝立凹入部32を作用させることにより、圃場面のうち、中央2つの播種作業部20による播種が行われる箇所に畝A(図8参照)を形成する。
【0028】
図8は、播種作業後の圃場を示す説明図である。図4,8に示すように、播種装置10は、畝立体11,12によって圃場面に畝Aを形成し、形成した畝Aに播種作業部20によって種籾Bを直播する。詳述すると、左端の畝立体11によって形成した2つの畝Aに、左側2つの播種作業部20によって種籾Bを直播する。中央の畝立体12によって形成した2つの畝Aに、中央2つの播種作業部20によって種籾Bを直播する。右端の畝立体11によって形成した2つの畝Aに、右側2つの播種作業部20によって種籾Bを直播する。
【0029】
従って、図8に示すように、播種後の圃場をかん水状態にするのに、畝間に水Wが溜まり、畝Aにおける播種箇所が水に浸らないようにしてかん水状態にすることにより、播種箇所に貝類が移動してくることを回避し易い。
【0030】
図1に示すように、自走車体の横一側方に溝切器40を装備してある。溝切器40は、圃場のうちの畦に近接する外周部分に明渠を形成するものである。明渠は、水を貯留し、貝類の圃場内側への移動を回避するものである。
【0031】
図1,10に示すように、溝切器40は、車体フレーム1のうちの運転部ステップ5dの横外側に位置する部位から車体後方向きに上下揺動するように延出した溝切リンク機構41に支持してある。溝切リンク機構41を構成するアッパーリンク41aの溝切器40の近くに位置する部位から操作アーム42を車体上方向きに延出してある。操作アーム42の延出端部に握り部42aを設けてある。握り部42aは、運転部5から支持しやすいように運転座席5aの近くに配置してある。
【0032】
図10は、下降使用位置での溝切器を示す側面図である。図11は、上昇格納位置での溝切器を示す側面図である。図10,11に示すように、溝切器40は、溝切リンク機構41を操作アーム42によって揺動操作することにより、下降使用位置と上昇格納位置とにわたって昇降調節できる。溝切器40の昇降調節範囲の上限での取付高さとして、溝切器40の下端が後車輪3の車軸芯3aよりも高く位置する取付高さを設定してある。
【0033】
操作アーム42に軸芯方向に並んだ複数の位置決め凹部43を設けてある。複数の位置決め凹部43から選択した位置決め凹部43により、手摺り7の支柱7aにおける基部に操作アーム42を係止させることにより、溝切器40を昇降調節した取付高さに固定できるように構成してある。溝切リンク機構41を構成するロワーリンク41bと、操作アーム42の基部とに連結したスプリング44により、操作アーム42を枢支軸42bまわりに前方側に揺動付勢して、操作アーム42の支柱7aに対する係止を保持するように構成してある。
【0034】
図4に示すように、複数の播種条Lのうちの横外端の播種条LOから溝切器40の左右中心40cまでの距離D1を、播種条間の距離D2の1/2の長さに設定してある。
【0035】
図2に示すように、手摺7の横外端によって自走車体の横外端が設定されている。溝切器40の横外端が自走車体横方向で、手摺7の横外端と同じまたはほぼ同じ位置に位置している。
【0036】
図1に示すように、溝切器40は、リンク機構8に設けてあるローリング支持部8aよりも前方に位置するように、溝切リンク機構41を構成してある。リンク機構8のローリング支持部8aは、播種装置フレーム14の前端部をローリングするように支持し、自走車体に対して播種装置10をローリングさせるものである。溝切器40は、車体側面視で後車輪3と重なって位置するように、溝切リンク機構41を構成してある。
【0037】
図10に示すように、溝切器40を支持する支持体45と、アッパーリンク41aとを枢支ピン45aを介して連結してある。支持体45に設けた円弧形状の長孔46に摺動するように、かつ回動するように係入した位置決めピン46aをロワーリンク41bに支持し、溝切器40と支持体45とが一体に、アッパーリンク41aに対して枢支ピン45aの軸芯まわりに、長孔46によって設定される揺動範囲で上下揺動するように構成してある。支持体45とロワーリンク41bとにわたって連結してあるスプリング47により、支持体45を溝切器40の下降側に揺動付勢してある。
【0038】
従って、溝切器40が畦や石などに衝突した際、溝切器40が衝突によって受ける操作力によってスプリング47に抗して上昇操作され、溝切器40の損傷や破損を防止や抑制できる。また、溝切器40を土中から抜き上げ操作する際、溝切器40に掛かる接地反力のために位置決めピン46aが長孔46の途中にしていると、スプリング47による溝切器40の土中への押し付けよって溝切器40が土中から受ける接地反力を、溝切器40を抜き上げ操作するためのアシスト力にした状態で抜き上げ操作できる。
【0039】
〔別実施形態〕
(1)図12は、第1の別実施構造を備えた溝切器40の操作装置を示す概略図である。この操作装置は、溝切リンク機構41を昇降操作する油圧シリンダ50と、走行車体に対するリンク機構8の昇降を検出する昇降検出機構51と、昇降検出機構51及び油圧シリンダ50の制御弁に連係された制御装置52とを備えている。制御装置52は、昇降制御手段53を備えている。制御装置52に切換スイッチ54が連係されている。
【0040】
昇降制御手段53は、切換スイッチ54がオン位置に切換え操作されることにより、切換スイッチ54からの操作指令を基にオン状態に切り換え制御され、切換スイッチ54がオフ位置に切換え操作されることにより、切換スイッチ54からの操作指令を基にオフ状態に切り換え制御されるように構成してある。
【0041】
昇降制御手段53は、オン状態に切換え制御された場合、播種装置10の上昇に連係して溝切器40が上昇操作されるように、かつ播種装置10の下降に連係して溝切器40が下降されるように、昇降検出機構51による検出情報を基に油圧シリンダ50の制御弁を切換え制御するように構成してある。昇降制御手段53は、オフ状態に切換え制御された場合、昇降検出機構51による検出情報に基づく油圧シリンダ50の制御弁の切換え制御を停止するように構成してある。昇降制御手段53をオフ状態に切り換えることにより、溝切器40を播種装置10の下降にかかわらず上昇格納位置に保持できる。
【0042】
(2)図13は、第2の別実施構造を備えた水田用播種機における溝切器40を示す平面図である。第2の別実施構造を備えた水田用播種機では、複数の播種条Lのうちの横外端の播種条LOから溝切器40の左右中心40cまでの距離D1を、播種条間の距離D2の1/2よりも長い長さに設定してある。
【0043】
(3)図14は、第3の別実施構造を備えた水田用播種機における溝切器40を示す平面図である。第3の別実施構造を備えた水田用播種機では、作用状態での溝切器40の位置として、複数の接地フロートのうちの横外端の接地フロート55に対して横外側に離れた位置を設定してある。
【0044】
(4)上記した実施例では、後車輪通過後Tに位置する畝立体11と、後車輪通過後に位置しない畝立体12とを別々に設けた例を示したが、これらの畝立体11,12を一体形成した状態で設けて実施してもよい。
【0045】
(5)上記した実施例では、畝立体11,12を接地フロートによって構成した例を示したが、畝立体と接地フロートとを別体に作製して設けて実施してもよい。
【0046】
(6)上記した実施例では、鉄コーティングが施された種籾Bを直播するよう構成した例を示したが、カルパコーティングが施された種籾を直播するよう構成して実施してもよい。
【0047】
(7)上記した実施例では、溝切器40の横外端が車体横方向で手摺7の横外端と同じまたはほぼ同じ位置に位置するように構成した例を示したが、運転部5に対する乗降ステップ5c(図1,2参照)の横外端によって自走車体の横外端が設定される場合、溝切器40の横外端が車体横方向で乗降ステップ5cの横外端と同じまたはほぼ同じ位置に位置するように構成するとよい。
【0048】
(8)上記した実施例では、溝切器40をリンク機構8のローリング支持部8aよりも前方に位置するよう構成した例を示したが、図1に二点鎖線で示す2つの溝切器40のうちの後側の溝切器40の如く、ローリング支持部8aよりも後方に位置するよう構成して実施してもよい。
【0049】
(9)上記した実施例では、溝切器40を自走車体の横一側方のみに設けた例を示したが、自走車体の両横側方に設けて実施してもよい。
【0050】
(10)上記した実施例では、溝切器40を自走車体の横一側方のみに設けた例を示したが、溝切リンク機構41の支持部材を自走車体の両横側方に設け、溝切リンク機構41を左右の支持部材に付け替えて、溝切器40を自走車体の両横側に付け替えるように構成して実施してもよい。
【0051】
(11)上記した実施例では、溝切器40を上昇格納するよう構成した例を示したが、溝切リンク機構41を自走車体から取外して、溝切器40を溝切リンク機構41と共に車体内側に格納するように構成してもよい。また、溝切器40を支持体45から取り外して車体内側に格納するように構成して実施してもよい。
【0052】
(12)溝切器40の昇降調節範囲の下限での取付高さとして、図1に二点鎖線で示す2つの溝切器40のうちの前側の溝切器40の如く溝切器40の下端が後車輪3の下端近傍の高さであって、後車輪3の下端よりも低い高さに位置する取付け高さを設定し、溝切器40の昇降調節範囲の上限での取付高さとして、溝切器40の下端が後車輪3の車軸よりも高く位置する取付高さを設定すると、有利である。
【0053】
(13)播種装置10や自走車体に施肥装置を設けて実施してもよい。
【0054】
(14)圃場に排水溝を形成する溝切器や、圃場に肥料を供給する作溝施肥器を畝立体に、設けて実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、6条播種が可能な播種装置を備える他、5条播種以下や7条播種以上の播種作業が可能な播種装置を備える水田用播種機に利用可能である。
【符号の説明】
【0056】
3 後車輪
10 播種装置
11 畝立体
11a 整地底部
15 タンク
20 播種作業部
21 繰出機構
26 排出口
27 落下経路
31 畝立凹入部
31a 開口
A 畝
B 種籾
図1
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