(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも1種の標的核酸をサンプルから精製するための方法であって、少なくとも、a)該サンプルを、少なくとも1種のタンパク質分解化合物と共にインキュベートするステップと、
b)該標的核酸を固相に結合するステップと、
c)該標的核酸を該固相から溶出するステップと、
d)溶出された該標的核酸を、少なくとも1種のタンパク質分解化合物と共にインキュベートするステップと、
e)該標的核酸を再び固相に結合するステップと、
f)必要に応じて、結合した該標的核酸を該固相から溶出するステップと
を含み、ここで、
該少なくとも1種のタンパク質分解化合物が、タンパク質分解酵素を含み;
該サンプルが、体液、血液、血液産物、組織および骨髄から選択される生物学的サンプルであり;
核酸を結合することが可能な該固相が、シリカ、磁性シリカ粒子、珪藻土、ガラス、アルキルシリカ、ケイ酸アルミニウム、ボロシリケート、ニトロセルロース、ヒドロキシアパタイト(ヒドロキシルアパタイトとも呼ばれる)、金属酸化物、ポリマー支持体、膜、および磁性粒子を含みまたはそれらからなる固相からなる群から選択され;
ステップa)および/またはステップe)での結合が、:
a)結合が、タンパク質と該固相との結合を促進させる条件下で行われ、および
b)結合が、低分子核酸の結合を促進させる条件下で行われる
という特徴を有する条件下で行われる、方法。
洗浄に使用される溶液が、少なくとも1種のカオトロピック剤、少なくとも1種のアルコール、少なくとも1種の界面活性剤、および/または少なくとも1種の緩衝成分を含む、請求項6に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
驚くべきことに、第2のタンパク質分解ステップを、標的核酸が固相に結合しそして固相から溶出された後、該核酸が固相に再結合する前に行うことは、単離された核酸におけるタンパク質汚染を低減させるのに、非常に効率的であることが見出された。
【0021】
したがって、本発明の第1の態様によれば、少なくとも1種の標的核酸をサンプルから精製するための方法が提供され、前記方法は、少なくとも、
a)サンプルを、少なくとも1種のタンパク質分解化合物と共にインキュベートするステップと、
b)標的核酸を固相に結合するステップと、
c)標的核酸を固相から溶出するステップと、
d)溶出された標的核酸を、少なくとも1種のタンパク質分解化合物と共にインキュベートするステップと、
e)標的核酸を再び固相に結合するステップと、
f)必要に応じて、結合した標的核酸を固相から溶出するステップと
を含む。
【0022】
本発明による方法の個々のステップについて、以下に詳細に説明する。
【0023】
ステップa)では、標的核酸を含むサンプルを、少なくとも1種のタンパク質分解化合物と共にインキュベートする。それによって、サンプルに含まれるタンパク質は分解する。通常、ステップa)は、サンプルの溶解中に、または、溶解を必要とするサンプルが処理される場合には、サンプルの初期溶解が行われた後に、行われることになる。
【0024】
ステップb)では、標的核酸を固相に結合する。標的核酸をそこに結合するのに適切な固相および条件は、従来技術において公知であり、以下でもさらに詳細に記載する。好ましくは、標的核酸を高い収量で精製するために、標的核酸と固相との強力な結合を可能にする結合条件が使用される。上記にて論じられたように、そのような強力な結合条件を使用する場合、通常はやはりタンパク質が、妨害量で固相に結合する。標的核酸は通常、固相に結合したままで、残りのサンプルおよび溶解産物からそれぞれ分離される。これは例えば、吸引、遠心分離によって残りのサンプルを除去すること、または結合した標的核酸を含む固相を残りのサンプルから除去することなどによる、従来技術で公知の任意の手段により実現することができる。
【0025】
ステップc)では、標的核酸が、固相から溶出され、それによって溶出液中に得られる。上記にて論じたように、特に強力な結合条件が使用される場合、タンパク質汚染物も、通常、ステップb)で固相に結合し、それによってステップc)で溶出もされる。
【0026】
ステップd)は、本発明の方法の本質的なステップを定める。ステップd)によれば、溶出された標的核酸は、少なくとも1種のタンパク質分解化合物と共に再びインキュベートされる。それによって、標的核酸と共精製され共に溶出された残りのタンパク質汚染物は、効率的に分解され、それによって不活化される。
【0027】
本発明の方法のステップe)によれば、標的核酸はその後固相に再び結合する。標的核酸は通常、固相に結合したままで、ステップe)で残りのサンプルから分離される。やはりこれは、例えば吸引、遠心分離によって残りのサンプルを除去すること、または結合した標的核酸を含む固相を残りのサンプルから除去することなどによる、従来技術で公知の任意の手段によって実現することができる。ステップe)で使用される固相は、ステップb)で使用された固相と同一にすることができまたはその固相と同じタイプの固相であってもよいが、異なる固相を使用することも本発明の範囲内である。特に自動化された方法での取扱いを容易にするために、ステップe)で使用される固相は、ステップb)で使用された固相と同一であることが好ましい。この場合、ステップb)で使用された固相は、ステップc)およびd)中は存在したままである。次いで標的核酸を、ステップe)で再び前記固相に結合する。標的核酸を再び固相に結合するための適切な結合条件は、当技術分野で公知であり、やはり以下に詳細に記述する。ステップe)における標的核酸と固相とのこの再結合は、標的核酸が高い収量で得られることを確実にし、さらに、ステップd)で分解したタンパク質汚染物はもはや結合ステップe)で固相に効率的に結合できないので、単離された標的核酸は著しく少ないタンパク質汚染物を含むという効果を有する。それによって、タンパク質汚染物の量が低減される。このように、本発明による方法は、少なくとも標的核酸を高い収量でかつ高い純度で精製することを可能にする。
【0028】
任意選択のステップf)では、標的核酸は、望む場合は固相から溶出される。あるいは、少なくとも1種の標的核酸は、標的核酸をそれぞれ使用する意図される下流用途に応じて、固相に結合したままで処理されてもよい。溶出ステップを行うことが望まれる場合、溶出は、例えば水、溶出緩衝液などの古典的な溶出溶液で、特にTrisなどの生物学的緩衝液で行うことができ、好ましくは、意図される下流用途を妨げない溶出溶液が使用される。しかし、例えば加熱などのその他の溶出手段によって、ステップc)および/またはe)で固相から核酸を放出すること、したがって溶出することも、本発明の範囲内にある。
【0029】
本発明による方法には、いくつかの利点がある。上記で説明したように、使用される結合条件と、核酸単離手順によって得られる標的核酸の収量と、単離された標的核酸中のタンパク質汚染物の量との間には、強力な相関がある。標的核酸を固相に結合するのに、最適ではない結合条件が使用される場合、そのような最適ではない結合条件下ではタンパク質が固相に効率的に結合できずかつ単離される核酸はより高い純度で得られるので、タンパク質汚染はそれほど問題を引き起こさない。しかし、許容される純度で標的核酸を提供するそのような最適ではない結合条件の使用には、標的核酸の収量が低下し、さらに強力な結合条件下でのみ結合する標的核酸(例えば、低分子RNA種など)は全く単離されずまたは許容される収量で単離されないという欠点がある。しかし、標的核酸をより効率的に結合するために、より強力な結合条件を使用し、それによって単離された標的核酸の収量が増加しかつ/または低分子核酸を追加として単離する場合、タンパク質は、より強力な結合条件を使用したときに固相に強力に結合するので、単離された標的核酸中のタンパク質汚染物の量も増加する。したがって、従来技術で公知の方法を使用した場合、当業者は、特に多量のおよび/または様々な量のタンパク質を含む難しいサンプルを処理する場合、収量と純度との間で選択をしなければならなかった。望ましくないタンパク質汚染物の結合も促進させる結合条件を、標的核酸を固相に結合するのに使用する場合であっても(特に、高濃度のアルコールおよびカオトロピック剤が、標的核酸を結合するのに、例えば低分子RNAを含むRNAを結合し単離するために使用される場合)、本発明による方法は特に、血液、血液産物、血清、および/または血漿などの、多量のおよびさらには様々な量のタンパク質を含む難しいサンプルからの標的核酸の高い収量および高い純度での単離を可能にするので、前記方法は上記ジレンマを解決する。
【0030】
したがって本発明による方法は、難しいサンプルからでも標的核酸の高い収量および高い純度での単離を可能にするので、従来技術よりも優れたかなりの改善をもたらす。実施例で実証されるように、単離された標的核酸の純度は、本発明の方法により改善される。
【0031】
一実施形態によれば、タンパク質の効率的な分解は、ステップa)および/またはステップd)における少なくとも1種のタンパク質分解化合物とのインキュベーション中に促進される。好ましくは、ステップa)および/またはステップd)におけるインキュベーションは、加熱下で行われる。好ましくは、ステップa)のサンプル、それぞれステップd)の標的核酸含有溶出液は、インキュベーション中に少なくとも35℃の温度、少なくとも40℃、または少なくとも50℃に加熱され、好ましくは少なくとも55℃の温度に加熱される。タンパク質分解酵素が、より高い温度でそれらの最適なそれぞれ最も高い活性を示すタンパク質分解化合物として使用される場合、インキュベーション中にそれぞれ、より高い温度を使用することが特に好ましい。
【0032】
さらに、ステップa)および/またはステップd)中のインキュベーションは、ステップa)のサンプル、それぞれステップd)の標的核酸含有溶出液を揺動しながら行われることが好ましい。揺動の非限定的な例には、振盪、撹拌、混合、または振動が含まれる。ある態様では、揺動(agitation)には振盪が含まれる。振盪は、一、二、または三次元の振盪にすることができる。様々な振盪デバイスまたは揺動デバイスを使用することができる。非限定的な例には、Thermomixer(Eppendorf)、TurboMix(Scientific Industries)、Mo Bio Vortex Adapter(Mo Bio Laboratories)、Microtubeホルダーボルテックスアダプター(Troemner)、およびMicrotubeフォームラックボルテックスアタッチメント(Scientific Industries)が含まれる。揺動は、例えばミキサー内で、少なくとも50rpmで、少なくとも100rpmで、少なくとも200rpmで、または少なくとも500rpmで行うことができる。好ましくは、加熱および揺動は、サーモミキサーまたは同時加熱および揺動を可能にする同等の装置を使用することによって同時に行われる。これらの条件は、タンパク質分解酵素をタンパク質分解化合物として使用する場合に特に好ましい。
【0033】
少なくとも1種のタンパク質分解酵素をタンパク質分解化合物として使用する場合、前記酵素が効率的に作用しかつ触媒活性になることを確実にするインキュベーション条件が、使用される。条件は、使用されるタンパク質分解酵素に依存し、公知であり、それぞれ当業者により決定可能である。好ましくは、ステップa)および/またはd)でのインキュベーションは、タンパク質分解酵素の活性を促進させかつ/または維持する塩および/またはイオンの存在下で行われる。適切な塩には、NaCl、KCl、MgCl
2、もしくはCaCl
2、またはカオトロピック塩などのカオトロピック剤が含まれるが、これらに限定するものではない。
【0034】
ステップa)および/またはステップd)でのインキュベーションは、好ましくはカオトロピック剤の存在下で行われる。これは、RNAが標的核酸として単離される場合に特に好ましい。任意のカオトロピック剤は、例えば、限定するものではないが一次構造を無傷のままにしながらタンパク質または核酸の二次、三次、または四次構造を変化させることによって、タンパク質または核酸に障害を引き起こす目的で使用することができる。ステップa)および/またはステップd)で少なくとも1種のタンパク質分解化合物と共にインキュベーションする間に使用することができる好ましいカオトロピック剤には、塩酸グアニジニウム、チオシアン酸グアニジニウム、イソチオシアン酸グアニジニウム、チオシアン酸ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、トリクロロ酢酸ナトリウム、トリフルオロ酢酸ナトリウム、および尿素などが含まれるが、これらに限定するものではない。
【0035】
ステップa)および/またはステップd)での少なくとも1種のタンパク質分解化合物とのインキュベーションは、通常、標的核酸の分解に至らないpH値で行われる。さらに、タンパク質分解酵素をタンパク質分解化合物として使用する場合、タンパク質分解酵素が活性であるpH値が使用されるべきである。好ましくは、ステップa)および/またはステップd)での少なくとも1種のタンパク質分解化合物とのインキュベーションは、4.3から9、6から8の間のpHで行われ、好ましくは中性pH値で行われる。
【0036】
タンパク質の効率的な分解を確実にするために、ステップa)のサンプル、それぞれステップd)の標的核酸含有溶出液は、効率的なタンパク質分解を確実にするために、少なくとも3分間にわたり、好ましくは少なくとも5分間にわたりインキュベートすべきである。好ましい実施形態によれば、インキュベーションは、ステップa)で少なくとも5分間、およびステップd)で少なくとも10分間行われる。
【0037】
好ましい実施形態によれば、ステップa)およびステップd)でのインキュベーションは、加熱、揺動の下、カオトロピック剤の存在下、6から8のpHで、好ましくは中性pHで、少なくとも3分間、好ましくは少なくとも5分間のインキュベーション時間で行われる。
【0038】
好ましい実施形態によれば、タンパク質分解化合物はタンパク質分解酵素である。タンパク質分解酵素は、例えばタンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、およびペプチドにおけるペプチド結合の切断を触媒する酵素を指す。例示的なタンパク質分解酵素には、プロテイナーゼおよびプロテアーゼ、特にズブチリシン、ズブチラーゼ、およびアルカリセリンプロテアーゼなどが含まれるが、これらに限定するものではない。ズブチラーゼは、セリンプロテアーゼのファミリーであり、即ち活性部位にセリン残基を有する酵素である。ズブチリシンは、広範な基質特異性を有する細菌性セリンプロテアーゼである。ズブチリシンは、尿素および塩酸グアニジなどのカオトロピック剤や、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などの陰イオン界面活性剤による、変性に対して比較的耐性がある。例示的なズブチリシンには、プロテイナーゼK、プロテイナーゼR、プロテイナーゼT、ズブチリシン、ズブチリシンA、およびQIAGEN Proteaseなどが含まれるが、これらに限定するものではない。ズブチラーゼ、ズブチリシン、プロテイナーゼK、およびその他のプロテアーゼの考察は、とりわけGenovら、Int. J. Peptide Protein Res.45巻:391〜400頁、1995年に見出すことができる。好ましくは、タンパク質分解酵素はプロテイナーゼKである。プロテイナーゼKなどのタンパク質分解酵素の使用には、タンパク質分解酵素それ自体もインキュベーション中に消化されるという利点がある。タンパク質分解酵素を使用するインキュベーションは、タンパク質分解酵素が活性である条件下で行われる。
【0039】
非限定的な態様では、タンパク質分解酵素は、インキュベーションステップa)および/またはd)において、約0.001mg/mlから約50mg/mlの間の濃度で使用される。その他の実施形態では、その範囲は、約0.01mg/mlから約5mg/mlの間、または約0.2mg/mlから約1.0mg/mlの間にすることができる。
【0040】
一実施形態によれば、1種または複数の追加の添加剤が、インキュベーションステップa)および/またはd)中に存在する。例えば、サンプルの溶解、タンパク質の分解を支援し、かつ/または標的核酸をインキュベーション混合物中に保存する添加剤を、添加することができる。非限定的な例には、キレート化剤、界面活性剤、緩衝剤、アルカリ化剤、ヌクレアーゼ阻害剤、およびβ−メルカプトエタノールが含まれるが、これらに限定するものではない。
【0041】
一実施形態によれば、ステップa)および/またはステップd)でのインキュベーションは、少なくとも1種のヌクレアーゼ阻害剤の存在下で行われる。好ましくは、RNAを単離する場合にRNase阻害剤を使用し、DNAを単離する場合にDNase阻害剤を使用する。そのようなヌクレアーゼ阻害剤の組合せを使用することも、本発明の範囲内にある。適切なヌクレアーゼ阻害剤は、従来技術で公知であり、したがって詳細に記述する必要はない。
【0042】
一実施形態によれば、ステップb)および/またはステップe)における結合は、カオトロピック剤の存在下および/またはアルコールの存在下で行われる。
【0043】
ステップb)および/またはステップe)での結合中に使用されるカオトロピック剤の濃度は、0.05Mから飽和限界までの範囲内にあってよい。好ましい濃度範囲は、使用されるカオトロピック剤に応じて、0.1Mから7M、1Mから7M、1.5Mから6M、および2Mから4Mの範囲内にある。適切なカオトロピック剤には、塩酸グアニジニウム、チオシアン酸グアニジニウム、イソチオシアン酸グアニジニウム、チオシアン酸ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、および尿素などが含まれるがこれらに限定するものではなく、特に好ましいのは過塩素酸ナトリウム、トリクロロ酢酸ナトリウム、およびトリフルオロ酢酸ナトリウムである。
【0044】
このように、標的核酸としてRNAを単離する場合に特に好ましい一実施形態によれば、カオトロピック塩が、トリクロロアセテート、パークロレート、およびトリフルオロアセテートからなる群から選択されるカオトロピック陰イオンを含むカオトロピック剤として使用される。トリクロロアセテート、パークロレート、およびトリフルオロアセテートからなる群から選択される前記カオトロピック陰イオンは、少なくとも0.05Mから飽和限界までの濃度での結合中に存在してもよい。一実施形態によれば、濃度は、0.05Mから4Mの範囲内にある。一実施形態によれば、濃度は、0.05Mから3Mの範囲内にあり、好ましくは0.05Mから2Mの範囲内にある。非常に好ましい実施形態によれば、トリクロロアセテート、パークロレート、およびトリフルオロアセテートからなる群から選択される前記カオトロピック陰イオンの濃度は、0.1Mから1Mの範囲内にある。最も好ましくは、前記カオトロピック陰イオンの濃度は1M未満であり、0.1Mから0.9M、または0.1Mから0.8Mの範囲内にある。したがって、トリクロロアセテート、パークロレート、およびトリフルオロアセテートからなる群から選択されるカオトロピック陰イオンを含むカオトロピック塩は、好ましくは、本発明によるカオトロピック陰イオンに関して、特に塩が1価の陽イオンを含む場合に、上記の濃度での結合中に存在する。陽イオンとして、好ましくはナトリウムなどのアルカリ金属イオンを使用することができる。したがって一実施形態によれば、カオトロピック剤は、過塩素酸ナトリウム、トリクロロ酢酸ナトリウム、およびトリフルオロ酢酸ナトリウムからなる群から選択される。これらのカオトロピック塩は、低分子RNA種を含むRNAの単離に、特に十分適切である。好ましくは、トリクロロ酢酸ナトリウムは、0.1Mから1M未満の濃度で、好ましくは0.1Mから0.7Mの濃度で結合組成物中に存在する。望む場合、例えば一般に使用されるグアニジニウム塩などのその他のカオトロピック塩も、トリクロロアセテート、パークロレート、およびトリフルオロアセテートからなる群から選択されるカオトロピック陰イオンを含むカオトロピック塩に加えて使用することができる。
【0045】
アルコールとして、好ましくは1から5個の炭素原子を有する短鎖分岐または非分岐アルコールを使用することが好ましい。例は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、およびブタノールである。アルコールの混合物も使用することができる。アルコールは、好ましくはイソプロパノールおよびエタノールから選択され、特に十分適切なのは、標的核酸としてRNAを単離する場合、イソプロパノールである。好ましくは、本発明による方法は、フェノールおよび/またはクロロホルムの使用を含まない。
【0046】
アルコールは、ステップb)および/またはステップe)の結合混合物中に、10%v/vから90%v/v、特に15%v/vから80%v/v、20%から80%v/vの濃度で含まれていてもよい。低分子RNAも含む標的核酸としてRNAを単離する場合、結合の間に、そしてしたがって結合混合物において、アルコール濃度≧30%v/v、好ましくは≧40%v/vから≦80%v/vを使用することが有益である。より高いアルコール濃度は結合を改善し、したがって短い核酸(通常、500nt以下のサイズを有する)、特に低分子RNA種の単離を改善する。最も好ましいのは、低分子RNAを含むRNAの単離が意図される場合、結合中のアルコール濃度が≧40%v/vから≦80%v/vまたは≧40%v/vから≦65%v/vである。
【0047】
必要に応じて、1種または複数の界面活性剤を、ステップb)および/またはステップe)で標的核酸を固相に結合するのに使用することができる。好ましくは、イオン性および/または非イオン性界面活性剤が界面活性剤として使用される。好ましくは、非イオン性界面活性剤は、少なくとも5%の濃度で使用される。前記界面活性剤は、例えば結合緩衝液と共に添加することができる。
【0048】
さらに、生物学的緩衝液は、結合に使用することができる。生物学的緩衝液の非限定的な例には、HEPES、MES、MOPS、TRIS、BIS−TRIS Propaneなどが含まれるが、これらに限定するものでない。好ましくは、Tris緩衝液は、標的核酸を固相に結合するのに使用される。
【0049】
したがって、本発明の方法の一実施形態によれば、標的核酸を固相に結合するために、そして、したがって適切な結合条件をステップb)および/またはステップe)の結合混合物において得るために、ステップa)のサンプル(それぞれ、インキュベーションステップd)で処理された溶出標的核酸)を、ステップb)で(それぞれ、ステップe)において)、少なくとも1種のアルコールおよび少なくとも1種のカオトロピック剤および必要に応じて生物学的緩衝液、好ましくはTrisを含む結合緩衝液に接触させて、標的核酸を固相に結合する。必要に応じて、結合緩衝液も、上記のような界面活性剤を含んでいてもよい。しかし、適切な結合組成物を形成するために、構成要素を別々に添加することもできる。好ましくは、結合緩衝液のpHは、8を含む範囲にある。一実施形態によれば、結合緩衝液のpHは、pH7.0から9の範囲内にあり、好ましくは7.5から8.5;最も好ましくは、結合緩衝液はpH8を有する。
【0050】
一実施形態によれば、標的核酸が固相に結合した状態で、1つまたは複数の洗浄ステップを、ステップb)とc)との間、および/またはステップe)の後に行う。この目的で、一般的な洗浄溶液を使用してもよい。一実施形態によれば、洗浄のために使用される溶液は、少なくとも1種のカオトロピック剤、少なくとも1種のアルコール、少なくとも1種の界面活性剤、および/または少なくとも1種の緩衝成分を含む。洗浄溶液中に使用することができるカオトロピック剤には、塩酸グアニジニウム、チオシアン酸グアニジニウム、イソチオシアン酸グアニジニウム、およびヨウ化ナトリウムが含まれるが、これらに限定するものではない。さらに、トリクロロアセテート、パークロレート、およびトリフルオロアセテートからなる群から選択されるカオトロピック陰イオンを含むカオトロピック塩を使用することができる。それぞれのカオトロピック塩の例は、過塩素酸ナトリウム、トリクロロ酢酸ナトリウム、およびトリフルオロ酢酸ナトリウムのようなアルカリ塩である。アルコールとして、好ましくは1から5個の炭素原子を有する短鎖分岐または非分岐アルコールを、洗浄のために、それぞれ洗浄溶液中に使用することができる。例は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、およびブタノールである。好ましくは、イソプロパノールおよび/またはエタノールが使用される。好ましくは、洗浄溶液は、少なくとも50%のアルコールおよび少なくとも1Mのカオトロピック塩、好ましくは少なくとも2Mのカオトロピック塩を含む。さらに、洗浄溶液は、界面活性剤を含んでいてもよい。好ましくは、イオン性および/または非イオン性界面活性剤が界面活性剤として使用される。好ましくは、非イオン性界面活性剤は、少なくとも5%の濃度で使用される。本明細書に記述されるステップ以外の、追加の中間ステップを行うことも、本発明の範囲内にある。しかし、特定の実施形態によれば、本明細書に記述されるステップ以外の追加のステップは行わない。
【0051】
上記の洗浄溶液の代わりにまたはそれに加えて使用することができる、さらなる適切な洗浄溶液には、アルコールおよび生物学的緩衝液が含まれる。適切なアルコールおよび生物学的緩衝液については既に記述されている。好ましくは、イソプロパノールまたはエタノール、最も好ましくはエタノールを、この第2の洗浄ステップで使用する。好ましくは、エタノールは、少なくとも70%v/v、好ましくは少なくとも80%v/vの濃度で使用される。生物学的緩衝液は、好ましくは、pHが約7から8のTrisである。
【0052】
単離された核酸の純度は、従来技術で公知の適切な方法により決定することができる。一実施形態によれば、純度は、分光光度分析により決定される。タンパク質汚染の程度を決定する1つの一般的な方法は、260:280の比の決定である。核酸は260nmの光を吸収し(adsorb)、タンパク質は280nmの光を吸収する。純粋なDNAの場合、A
260/280は約1.8であり、純粋なRNAの場合、A
260/280は約2である。核酸は、タンパク質のそれに比べて260nmおよび280nmでより高い吸光係数を有するので、260/280の比のごくわずかな差も、それが、様々なタンパク質含量を示すので重要である。260/280の比が低下するにつれ、分析された核酸サンプル中のタンパク質汚染物の量は高くなる。RNAに関し、単離されたRNAの260/280の比が1.8から2.2、好ましくは1.9から2.1の範囲内にある場合、通常その純度に関しては許容される。しかし、特定のサンプルを処理する場合、核酸単離手順が特定の条件下でまたは時々この純度に到達可能であることが、単に重要なのではない。逆に言えば、異なるサンプルおよび様々な量のタンパク質を含むサンプル(血液または血液産物など)が処理される場合であっても、これらの純度に信頼性を持ってかつ連続して到達することが、重要なのである。本発明による方法はこれを実現するが、それは、たとえ強力な結合条件が使用される場合であっても、またはたとえ多量のおよび様々な量のタンパク質を含むサンプルが処理される場合であっても、所与の範囲内にある信頼性ある純度で、単離された標的核酸を連続して提供するからである。したがって本発明による方法は、異なるサンプルおよび様々な量のタンパク質を含むサンプル(血液または血液産物など)が処理される場合であっても、高い収量および信頼性ある純度での標的核酸の単離を可能にする。標的核酸としてRNAを単離するための一実施形態によれば、精製されたRNAの80%、好ましくは90%、最も好ましくは95%の260/280の比は、1.8から2.2、好ましくは1.85から2.1の範囲内にある。このように、方法を100回行った場合、95のケースでそれぞれの純度が到達される。
【0053】
「サンプル」という用語は、本明細書では広い意味で使用され、核酸を含有する様々な供給源を含むものとする。サンプルは、生物学的サンプルであってもよいが、この用語は、その他のもの、例えば核酸を含む人工サンプルも含む。例示的なサンプルには、全血;赤血球;白血球;バフィコート;頬スワブ、喉スワブ、膣スワブ、尿道スワブ、頚部スワブ、喉スワブ、直腸スワブ、病変スワブ、膿瘍(abcess)スワブ、および鼻咽頭スワブなどを含むがこれらに限定されないスワブ;尿;痰;唾液;精液;リンパ液;羊水;脳脊髄液;腹水;胸水;嚢胞からの液;滑液;硝子体液;房水;滑液包液;眼洗浄液;眼吸引液;血漿;血清;肺洗浄液;肺吸引液;肝臓、脾臓、腎臓、肺、腸、脳、心臓、筋肉、膵臓、細胞培養物を含むがこれらに限定されない組織、ならびに溶解産物、抽出物、または任意の細胞および微生物およびウイルスから得られた材料であって、サンプル上もしくはサンプル中に存在し得るものなどが含まれるが、これらに限定するものではない。核酸を含有する、臨床的または法医学的状況から得られた材料も、サンプルという用語の意図する意味に含まれる。さらに当業者なら、上述の例示的なサンプルのいずれかから得られた溶解産物、抽出物、もしくは材料、またはそれらの部分も、サンプルという用語の範囲内にあることを理解する。好ましくは、サンプルは、ヒト、動物、植物、細菌、または真菌由来の生物学的サンプルである。特に「サンプル」という用語は、タンパク質も含む核酸含有サンプルを指す。好ましくは、サンプルは、細胞、組織、細菌、ウイルス、ならびに体液、例えば血液、血液産物(バフィコート、血漿、および血清など)、尿、髄液、痰、便、CSFおよび精液、上皮スワブ、バイオプシー、骨髄サンプル、および組織サンプル、好ましくは肺および肝臓などの器官組織サンプルからなる群から選択される。好ましくは、サンプルは、全血と、バフィコート、血清、または血漿などの血液産物から選択される。
【0054】
本明細書で使用される「核酸」という用語は、特に、典型的にはサブユニット間のホスホジエステル結合によって、しかし場合によってはホスホロチオエートおよびメチルホスホネートなどにより共有結合したリボヌクレオシドおよび/またはデオキシリボヌクレオシドを含む、ポリマーを指す。核酸には、gDNA;環状DNA;循環DNA;hnRNA;mRNA;rRNA、tRNA、miRNA(マイクロRNA)、siRNA(低分子干渉RNA)、snoRNA(核小体低分子RNA)、snRNA(核内低分子RNA)、およびstRNA(一過性低分子RNA)を含むがこれらに限定されない非コードRNA(ncRNA);断片化核酸;ミトコンドリアまたは葉緑体などの細胞内小器官から得られる核酸;ならびに生物学的サンプル中に存在し得る微生物、寄生生物、またはDNAもしくはRNAウイルスから得られる核酸が含まれるが、これらに限定するものではない。生物学的サンプルに添加されまたは「スパイク」されるヌクレオチド類似体を含んでいてもいなくてもよい合成核酸配列も、本発明の範囲内にある。低分子RNAまたは低分子RNA種という用語は特に、500nt、400nt、300nt、または100nt未満の長さを有するRNAを指し、miRNA、siRNA、その他の短鎖干渉核酸、およびsnoRNAなどが含まれるが、これらに限定するものではない。
【0055】
本発明による方法は、少なくとも標的核酸を精製するための方法に関する。本発明の方法により処理することができるサンプルの詳細な例から明らかにされるように、サンプルは、複数のタイプの核酸を含んでいてもよい。意図される用途に応じて、サンプルから全てのタイプの核酸を(例えば、後で共に標的核酸になり得るDNAおよびRNA)、または特定の複数のタイプの核酸もしくは特定の1つのタイプの核酸(例えば、DNAではなくRNAのみ、またはその逆)のみを単離することが望ましい場合がある。これら全ての変種は、本発明の範囲内にある。
【0056】
このように、一実施形態によれば、サンプルは、少なくとも1種の非標的核酸および少なくとも1種の標的核酸を含む。
【0057】
一実施形態によれば、本発明による方法は、非標的核酸の少なくとも一部を除去するステップb)の前に行われるステップa)の後に、中間ステップを含む。好ましくは、非標的核酸は、適切な条件下で非標的核酸の少なくとも一部を固相に結合し、次いで固相に結合した非標的核酸を、標的核酸を含む残りのサンプルから分離することによって除去される。これは例えば、主に非標的核酸が固相に結合する条件下での適切な固相の添加によって、実現することができる。非標的核酸を標的核酸から選択的に除去するための適切な方法は、例えば、参照により本明細書に組み込まれるEP 0 880 537およびWO 95/21849に記載されている。
【0058】
標的核酸としてRNA(のみ)を単離しようとする場合、非標的核酸は通常DNAである。
【0059】
非標的核酸の量をさらに低減させるために、適切な酵素を使用して非標的核酸を分解するための中間ステップを、ステップd)の前、好ましくはステップc)の後に行うことができる。RNAが標的核酸として単離される一実施形態によれば、したがってDNase処理はステップd)の前に行われる。前記DNase消化は任意のステップで行うことができるが、DNase処理はステップc)の後およびステップd)の前に行うことが好ましい。DNase消化を行うための条件は従来技術で周知であるので、その条件について本明細書でさらに記述する必要はない。ステップd)の前にDNase消化を行うことには、第2のタンパク質分解ステップd)中にDNaseも分解し、したがってDNaseは、単離した標的核酸中に含有されるタンパク質汚染物の量に寄与せず、それぞれそれほど寄与しないという利点がある。基本的に同じことが、標的核酸としてDNAを単離する場合、したがって非標的核酸としてRNAを分解するのにRNaseを使用する場合にも当てはまる。
【0060】
固相として、サンプル中に存在するかまたはサンプルから放出される核酸を結合することが可能な任意の材料を使用することができ、その材料には、適切な条件下で核酸を結合することのできる様々な材料を含めることができる。本発明と併せて使用することができる例示的な固相には、シリカ粒子、二酸化ケイ素、珪藻土、ガラス、アルキルシリカ、ケイ酸アルミニウム、およびボロシリケートを含むがこれらに限定されないシリカを含む化合物;ニトロセルロース;ジアゾ化紙;ヒドロキシアパタイト(ヒドロキシルアパタイトとも呼ばれる);ナイロン;金属酸化物;ジルコニア;アルミナ;ポリマー支持体、ジエチルアミノエチル誘導体化支持体およびトリエチルアミノエチル誘導体化支持体、ならびに疎水性クロマトグラフィー樹脂(フェニルセファロースまたはオクチルセファロースなど)などが含まれるが、これらに限定するものではない。固相という用語は、その形態またはデザインに関していかなる限定も意味するものではない。このように、固相という用語は、多孔質または非多孔質;透過性または不透過性であり;膜、フィルター、シート、粒子、磁性粒子、ビーズ、ゲル、粉末、および繊維などを含むがこれらに限定されない適切な材料を包含する。一実施形態によれば、例えばシリカ固相などの固相の表面は修飾されず、例えば官能基で修飾されない。
【0061】
好ましい実施形態によれば、シリカを含む固相が使用される。タンパク質汚染の問題は特に、シリカ粒子を固相として使用する場合に生じることが見出された。このように、本発明は特に、固相としてシリカ粒子を使用するときのタンパク質汚染の問題を解決する。ビーズの形態で使用することができ、好ましくは約0.02から30μm、より好ましくは0.05から15μm、最も好ましくは0.1から10μmの粒子サイズを有するシリカ粒子の使用が、特に好ましい。核酸結合キャリアの処理を容易にするには、好ましくは磁性シリカ粒子を使用する。磁性シリカ粒子は、例えばフェリ磁性、強磁性、常磁性、または超常磁性であってもよい。適切な磁性シリカ粒子は、例えばWO 01/71732、WO 2004/003231、およびWO 2003/004150に記載されている。その他の磁性シリカ粒子も従来技術から公知であり、例えばWO 98/31840、WO 98/31461、EP 1 260 595、WO 96/41811、およびEP 0 343 934に記載されており、例えば磁性シリカガラス粒子も含まれる。
【0062】
全血または血液産物などの生物学的サンプルからRNAが単離される場合に特に好ましい一実施形態によれば、サンプル中に含有される核酸は、サンプルの現状、特に転写パターンを保存するために、好ましくは生物学的サンプルがその自然環境から採取された直後に安定化される。これは、医療および診断の分野で特に有益である。
【0063】
したがって一実施形態によれば、サンプルは、前記サンプルから核酸を単離する前に前記サンプル中で核酸を安定化させるための、核酸貯蔵安定化組成物と混合する。一実施形態によれば、前記安定化組成物は、
a)一般式
Y
+R
1R
2R
3R
4X
−
(式中、Yは窒素またはリン、好ましくは窒素を表し、
R
1R
2R
3およびR
4は独立して、分岐状または非分岐状のC
1〜C
20アルキル基、C
6〜C
20アリール基、および/またはC
6〜C
26アラルキル基を表し、
X
−は、無機または有機の一塩基酸または多塩基酸の陰イオンを表す)
の陽イオン化合物と、
b)少なくとも1種のプロトン供与体であって、プロトン供与体が好ましくは50mMを超えて飽和に至る濃度で組成物中に存在し、プロトン供与体が、好ましくは飽和脂肪族モノカルボン酸、不飽和アルケニルカルボン酸、飽和および/もしくは不飽和脂肪族C
2〜C
6ジカルボン酸、脂肪族ヒドロキシルジカルボン酸および脂肪族ヒドロキシルトリカルボン酸、脂肪族ケトカルボン酸、アミノ酸、または無機酸、またはそれらの塩からなる群から、それ自体でまたは組み合わせて選択されるプロトン供与体と
を含む。
【0064】
好ましくは、R
1は、12、14、または16個の炭素原子を有する高級アルキル基を示し、R
2、R
3、およびR
4は、それぞれメチル基を表す。
【0065】
好ましくは、陰イオンX
−は、ハロゲン化水素酸の陰イオンまたは一塩基性有機酸もしくは二塩基性有機酸の陰イオンを表し、最も好ましくは、陰イオンX
−は、臭化物、塩化物、ホスフェート、スルフェート、ホルメート、アセテート、プロピオネート、オキサレート、マロネート、スクシネート、またはシトレートからなる群から選択される。
【0066】
好ましくは、プロトン供与体は、飽和脂肪族モノカルボン酸、不飽和アルケニルカルボン酸、飽和および/もしくは不飽和脂肪族C
2〜C
6ジカルボン酸、脂肪族ケトカルボン酸、アミノ酸、または無機酸、またはそれらの塩、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される。好ましくは、脂肪族モノカルボン酸には、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、n−吉草酸、イソ吉草酸、エチルメチル酢酸(2−メチル酪酸)、2,2−ジメチルプロピオン酸(ピバル酸)、n−ヘキサン酸、n−オクタン酸、n−デカン酸、またはn−ドデカン酸(ラウリン酸)、またはそれらの混合物からなる群から選択されるC
1〜C
6アルキルカルボン酸が含まれる。好ましくは、脂肪族アルケニルカルボン酸は、アクリル酸(プロペン酸)、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、またはビニル酢酸、またはそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、飽和脂肪族C
2〜C
6ジカルボン酸は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、またはアジピン酸、またはそれらの混合物からなる群から選択される。脂肪族ジカルボン酸は、シュウ酸またはコハク酸またはそれらの混合物であることが、最も好ましい。好ましくは、脂肪族ヒドロキシ−ジカルボン酸および脂肪族ヒドロキシ−トリカルボン酸は、タルトロン酸、D−(+)、L−(−)、もしくはDLリンゴ酸、(2R,3R)−(+)−酒石酸、(2S,3S)−(−)−酒石酸、メソ酒石酸、およびクエン酸、またはそれらの混合物からなる群から選択される。不飽和ジカルボン酸は、マレイン酸および/もしくはフマル酸またはそれらの混合物であることが、最も好ましい。好ましくは、不飽和トリカルボン酸は、アコニット酸である。好ましくは、脂肪族ケトジカルボン酸は、メソキサル酸、またはオキサロ酢酸、またはそれらの混合物である。好ましくは、アミノ酸は、アミノ酢酸(グリシン)、α−アミノプロピオン酸(アラニン)、α−アミノ−イソ吉草酸(バリン)、α−アミノ−イソカプロン酸(ロイシン)、およびα−アミノ−β−メチル吉草酸(イソロイシン)、またはそれらの混合物からなる群から選択される。
【0067】
好ましくは、安定化組成物は水性溶液中に存在する。好ましくは、陽イオン化合物は、0.01重量パーセントから15重量パーセントの範囲の濃度で含まれる。
【0068】
適切な安定化溶液は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,270,953号にも記載されている。
【0069】
上記のように安定化する複合サンプルは、安定化溶液中の添加剤およびサンプルの高いタンパク質含量が原因で、核酸の単離が特に難しくなる。本発明の方法は、これらの困難を克服し、安定化サンプル、特に複合生物学的サンプルであって、全血ならびに、血液産物(バフィコート、血清、および/もしくは血漿など)の生物学的サンプル、または組織サンプル、特に器官組織サンプル、例えば肺もしくは肝臓から得られたサンプルから、それぞれ、望む場合は良好な収量および高純度で、低分子RNAを含むRNAを単離することが可能になる。したがって本発明の方法は、医療分野、および特に診断の分野で特に有用である。
【0070】
本発明の好ましい実施形態によれば、少なくともRNAおよびDNAを含むサンプルからRNAを精製するための方法が提供され、前記方法は、少なくとも以下のステップ:
a)カオトロピック剤の存在下、サンプルを少なくとも40℃に加熱することによって、サンプルを、少なくとも1種のタンパク質分解酵素と共にインキュベートするステップと、
−DNAを第1の固相に結合することによって、DNAの少なくとも一部を除去し、前記第1の固相に結合したDNAを、RNAを含む残りのサンプルから分離するステップと、
b)RNAを第2の固相に結合するステップであって、少なくとも1種のカオトロピック剤および濃度≧30%v/vのアルコールがこの結合ステップb)中に使用されるステップと、
−前記第2の固相に結合したRNAを洗浄するための、少なくとも1つの洗浄ステップを行うステップと、
c)前記第2の固相からRNAを溶出するステップと、
d)カオトロピック剤の存在下、サンプルを少なくとも40℃に加熱することによって、溶出されたRNAを、少なくとも1種のタンパク質分解酵素と共にインキュベートするステップと、
e)RNAを再び固相に結合するステップであって、少なくとも1種のカオトロピック剤および濃度≧30%v/vのアルコールがこの結合ステップe)中に使用されるステップと、
−固相に結合したRNAを洗浄するための、少なくとも1つの洗浄ステップを行うステップと、
f)必要に応じて、結合した標的核酸を固相から溶出するステップと
を含む。
【0071】
上記のように本発明の方法は、結合を促進ししたがってタンパク質汚染物の共精製を促進する結合条件が使用される場合であっても、大量のタンパク質を含む複合サンプルから、RNAを高純度で、そして、したがって低いタンパク質汚染状態で単離するのに特に適切である。個々のステップを行うのに適切な条件は上記にて詳述され、RNAを単離するためのこの特定の実施形態にも当てはまる上記開示を参照されたい。本発明による方法のこの特定の実施形態は、血液および血液産物などのタンパク質を多量に含むサンプルから、miRNAなどの低分子RNAを含むRNAを単離するのに特に適切である。低分子RNAを含むRNAを単離するための適切な結合条件は、上記にて詳述される。ここにも当てはまる上記開示を参照されたい。
【実施例】
【0072】
1.RNA単離プロトコル
全RNAを、安定化溶液を含むPAXgene Blood RNAチューブ中の、12名の異なるドナーから得た全血(2.5ml)から、3つ組みで、単離した。適切な安定化溶液についても既に記述されている。安定化サンプルを含むPAXgene Blood RNAチューブ(PreAnalytiX)を、市販のキットQIAsymphony PAXgene Blood RNA Kit(PreAnalytiX)についての指示マニュアル、miRNAなどの低分子RNA種も単離するためのその改訂版、または本発明による方法に従ってさらに処理した。
【0073】
安定化サンプルは、下記の通り処理した:
a)QIAsymphony PAXgene Blood RNA(PreAnalytiX)
詳細なプロトコルは、該当するハンドブックに記載されている。したがって、それぞれのプロトコルについては、本明細書では手短にしか記述しない:
1.PAXgene Blood RNAチューブを、10分間、3000〜5000×gで、スイングアウトローターを使用して遠心分離した。
2.遠心分離後、上清をデカンテーションにより除去した。上清を廃棄し、ペレットを、ステップ3での再懸濁用に取っておいた。
3.チューブ当たり300μlのBuffer BR1を添加した。チューブを閉鎖し、ペレットをボルテックスによって完全に再懸濁した。マルチチューブボルテックスミキサーを、30秒間全速で、再懸濁するために使用し、それぞれペレットが完全に再懸濁するまで行った。
4.クロージャーを除去し、廃棄した。
5.ロボットシステムQIAsymphony SPを、さらなる処理に使用した。PAXgene Blood RNA単離のために必要とされる試薬カートリッジ、および消耗品を、「試薬および消耗品」の引出し(drawer)に投入した。さらに、必要とされる溶出ラックを、「溶出液」の引出しに投入した。
6.ステップ4からのサンプルを、適切なサンプルキャリアに配置し、「サンプル」の引出しに投入した。その後サンプルを、該当するプログラムでQIAsymphonyにより処理した。手短に言うと、ロボットシステムQIAsymphonyは、溶解緩衝液BR2、プロテイナーゼK、およびMagAttractビーズを添加することによって、プローブを処理した。最初にDNAをビーズに結合し、除去した。その後、さらなる磁性ビーズを、結合緩衝液QSB1に加えて添加した。その後、複合体を、緩衝液QSB1および緩衝液BR4で前洗浄した。
7.サンプルを、緩衝液BR5で先に溶出し、残りのDNAを消化した。RNAは、緩衝液QSB2を添加することにより再結合した。その後、さらなる洗浄ステップを行い、複合体を乾燥し、RNAを溶出した。
b)miRNAなどの低分子RNAを含むために改訂されたQIAsymphonyプロトコル
miRNAなどの低分子RNAも単離するための、改訂されたQIAsymphony PAXgene Bloodプロトコルを、QIAsymphonyロボットシステムで行った。手短に言うと、下記のステップを行った:
1.PAXgene Blood RNAチューブを10分間、3,000から6,000rpmで遠心分離した。ペレットを、酢酸アンモニウムを含む緩衝液(300μl)を添加しボルテックスによって再懸濁した。適切な緩衝液は、緩衝液BR1(QIAGEN)である。
2.さらなる溶解剤、好ましくはProteinase K(40μl)と、3M超のカオトロピック塩、好ましくはGITCを含む溶解緩衝液(230μl)とを添加した。適切な緩衝液は緩衝液BR2(QIAGEN)である。その後、サンプルを10分間、56℃、100rpmでインキュベートした。
3.MagAttractビーズ(QIAGEN)を添加して、DNAをシリカ粒子に結合させて一緒に除去した。
4.RNAを結合するため、追加のMagAttractビーズを添加し(60μl)、80%のイソプロパノール(またはエタノール)、それぞれ0.6Mの過塩素酸ナトリウム、トリフルオロ酢酸ナトリウム、またはトリクロロ酢酸ナトリウム、およびTrisを含む、本発明による結合緩衝液1500μlを添加した。
5.2つの洗浄ステップを行った。第1の洗浄ステップは、イソプロパノール、GTC、および界面活性剤を含む緩衝液を用いて行い、第2の洗浄ステップは、エタノールおよびTrisを含む洗浄緩衝液を用いて行った。
6.その後、溶出緩衝液(例えば、BR5、QIAGEN)250μlでRNAを先に溶出し、DNase消化を行った(225μlの緩衝液RDD(QIAGEN)および25μlのDNase I原液(QIAGEN))。
7.RNAをビーズに再結合するため、同じ結合緩衝液(上記参照)1400μlを添加した。この第2の結合ステップは、低分子RNAの良好な収量を確実にする。
8.その後、4回の追加の洗浄ステップを行った。
9.全RNAを、適切な溶出緩衝液(BR5、QIAGEN)を使用することにより溶出した。水またはTris緩衝液など、その他の一般的な溶出緩衝液も使用することができる。
c)本発明による方法
本発明による方法も、QIAsymphonyロボットシステムで行った。方法は、b)で記述された方法に該当するが、追加のプロテイナーゼK消化を、DNase消化後に行った。手短に言うと、下記のステップを行った:
1.PAXgene Blood RNAチューブを、10分間、3,000から6,000rpmで遠心分離した。ペレットを、酢酸アンモニウムを含む緩衝液(300μl)を添加しボルテックスによって再懸濁した。適切な緩衝液は、緩衝液BR1(QIAGEN)である。
2.さらなる溶解剤、好ましくはProteinase K(20μl)と、3M超のカオトロピック塩、好ましくはGITCを含む溶解緩衝液(230μl)とを添加した。適切な緩衝液は、緩衝液BR2(QIAGEN)である。その後、サンプルを10分間、56℃、100rpmでインキュベートした。
3.MagAttractビーズ(QIAGEN)を添加して、DNAをシリカ粒子に結合させて一緒に除去した。
4.RNAを結合するため、追加のMagAttractビーズを添加し、80%のイソプロパノール(またはエタノール)、それぞれ0.6Mの過塩素酸ナトリウム、トリフルオロ酢酸ナトリウム、またはトリクロロ酢酸ナトリウム、およびTrisを含む、本発明による結合緩衝液1500μlを添加した。
5.2回の洗浄ステップを行った。第1の洗浄ステップは、イソプロパノール、GTC、および界面活性剤を含む緩衝液を用いて行い、第2の洗浄ステップは、エタノールおよびTrisを含む洗浄緩衝液を用いて行った。
6.その後RNAを、溶出緩衝液(例えば、BR5、QIAGEN)250μlを用いて先に溶出し、DNase消化を行った(225μlの緩衝液RDD(QIAGEN)および25μlのDNase I原液(QIAGEN))。
7.次いで第2のプロテイナーゼK消化ステップを行った。この目的のため、20μlのプロテイナーゼKと、3M超のカオトロピック塩、好ましくはGITCを含む溶解緩衝液(200μl)とを添加し(適切な緩衝液はBR2、QIAGENである)、サンプルを5分間、56℃、100rpmでインキュベートした。
8.RNAをビーズに再結合するため、本発明による同じ結合緩衝液(上記参照)1400μlを添加した。この第2の結合ステップは、低分子RNAの良好な収量を確実にする。
9.その後、4回の追加の洗浄ステップを行った。この目的のため、洗浄緩衝液QSB1、AW1、およびBR4(全てQIAGEN)を使用することができる。
9.全RNAを、適切な溶出緩衝液(BR5、QIAGEN)を使用することにより溶出した。水またはTris緩衝液など、その他の一般的な溶出緩衝液も使用することができる。
2.結果
結果を、
図1から7に示す。
【0074】
図1.1は、QIAsymphony PAXgene Blood RNAプロトコルにより、RNAに、高く信頼性ある純度が1.8から2.0の範囲内で安定してかつ一貫して与えられることを示す。RNAの全収量、特に単離された全RNA中のmiRNAなどの低分子RNAの収量が増加するよう設計された、改訂されたQIAsymphony PAXgene Blood RNAプロトコルは、最適な純度を提供しないが、それは260/280の比が1.8よりもしばしば低く存在し、さらに高い変動を示したからである。
図1.2に見られるように、平均純度も1.8より下である。
【0075】
純度におけるこの低下は、この改訂されたQIAsymphony PAXgene Blood RNA(miRNA)プロトコルが、強力な結合化学(強力なカオトロピック剤および高いアルコール濃度)を使用することに起因する。これらの結合条件は、全RNAの収量を増加させ、低分子RNA種も結合し、したがって高効率で単離されるという有利な効果を有する。しかし、これらの強力な結合条件には、タンパク質汚染物もシリカ粒子に結合し、それによって純度が許容レベルよりも下に低下し、さらに、自動化プロセスでは特に許容できない変動を、得られた純度にもたらすという欠点がある。
【0076】
図2.1および
図2.2は、第2のプロテイナーゼK消化がRNAの純度に及ぼす影響を示す。これらの図は、本発明による方法が、低分子RNAの結合を増加させるだけではなくタンパク質汚染物の結合も増加させるという結合化学を使用したにも関わらず(
図1.1および1.2も参照)、QIAsymphony PAXgene Blood RNAプロトコルと同等の純度をもたらしたことを示す。ほとんどのサンプルの純度は、QIAsymphony PAXgene Blood RNAプロトコルと同様に1.8から2.2の範囲内にあった。
図2.2は、異なる方法によって得られた主な純度を示す。結果は、RNAを高い収量で提供しかつ低分子RNA種も単離しながら優れた純度が連続して実現されたので、本発明によるプロトコルは従来の方法より優れた著しい改善を示したことを示す。
【0077】
図3は、追加のプロテイナーゼK消化が全収量に及ぼす影響を示す。明らかなように、本発明によるプロトコル(プロトコル発明Iでは、再結合が2.5分間行われ、発明IIでは、再結合が5分間行われた)は、QIAsymphony PAXgene Blood RNAプロトコルに比べて著しく増加した収量でRNAを提供した。このように、収量の増加に関する強力な結合化学の利点は、タンパク質汚染物に関する強力な結合化学の欠点を回避しながら維持された。
【0078】
図4は、has−miR 16の発現を決定することにより、得られたRNAにおけるmiRNAの収量を分析するために行われた、RT−PCRのC
T値を示す。C
T値が高くなるほど、単離されたRNA中のそれぞれのmiRNAの含量は低くなる。明らかなように、本発明による方法は、良好な収量で、低分子RNA種を含む全RNAを提供し、一方、それほど強力ではない結合化学を使用するQIAsymphony PAXgene Blood RNAプロトコルは、高C
T値から誘導することができるような高い収量で、低分子RNA種を提供しなかった。これは、本発明による方法が、良好な純度を提供しながら、強力な結合化学により低分子核酸の単離も可能にすることを、実証する。
【0079】
図5.1から5.4は、QIAsymphony PAXgene Blood RNAキット、miRNAを単離するための改訂版(QIAsymphony PAXgene Blood miRNA)、および本発明の方法による純度の比較を示す。明らかなように、本発明による方法は、純度を著しく改善した。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
少なくとも1種の標的核酸をサンプルから精製するための方法であって、少なくとも、a)該サンプルを、少なくとも1種のタンパク質分解化合物と共にインキュベートするステップと、
b)該標的核酸を固相に結合するステップと、
c)該標的核酸を該固相から溶出するステップと、
d)溶出された該標的核酸を、少なくとも1種のタンパク質分解化合物と共にインキュベートするステップと、
e)該標的核酸を再び固相に結合するステップと、
f)必要に応じて、結合した該標的核酸を該固相から溶出するステップと
を含む方法。
(項目2)
ステップa)および/またはステップd)での前記インキュベーションが、
a)加熱、
b)揺動、
c)塩の存在、
d)カオトロピック剤の存在、
e)6から9の間のpH値、および/または
f)少なくとも3分間のインキュベーション時間
の1つまたは複数を含む条件下で行われる、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記少なくとも1種のタンパク質分解化合物がタンパク質分解酵素である、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
ステップb)および/またはステップe)での結合が、
a)結合が、少なくとも1種のカオトロピック剤の存在下で行われ、
b)結合が、アルコールの存在下で行われ、
c)結合が、界面活性剤の存在下で行われ、
d)結合が、タンパク質と前記固相との結合を促進させる条件下で行われ、そして/または
e)結合が、低分子核酸、特に低分子RNA種の結合を促進させる条件下で行われる
という特徴の1つまたは複数を有する条件下で行われる、項目1から3の一項またはそれより多くの項に記載の方法。
(項目5)
ステップb)および/またはステップe)での結合が、
a)10%v/vから90%v/v、15%v/vから90%v/v、20%v/vから80%v/v、30%v/vから80%v/v、40%v/vから80%v/v、40%v/vから70%、40%v/vから65%からなる群から選択されるアルコール濃度が使用され、
b)0.05Mから飽和限界まで、0.1Mから4M、および1Mから4Mからなる群から選択される、1種もしくは複数のカオトロピック剤の濃度が使用され、そして/またはc)少なくとも30%v/vのアルコール濃度、および少なくとも1種のカオトロピック剤が、低分子RNAを含めたRNAを前記固相に結合するために使用される
という特徴の1つまたは複数を有する結合条件下で行われる、項目4に記載の方法。
(項目6)
1つまたは複数の洗浄ステップが、ステップb)とc)の間、および/またはステップe)の後に行われる、項目1から5の一項またはそれより多くの項に記載の方法。
(項目7)
洗浄に使用される溶液が、少なくとも1種のカオトロピック剤、少なくとも1種のアルコール、少なくとも1種の界面活性剤、および/または少なくとも1種の緩衝成分を含む、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記サンプルが、少なくとも1種の非標的核酸および少なくとも1種の標的核酸を含み、好ましくは該非標的核酸がDNAであり、該標的核酸がRNAである、項目1から7の一項またはそれより多くの項に記載の方法。
(項目9)
非標的核酸を除去するための中間ステップが、ステップa)の後およびステップb)の前に行われる、項目8に記載の方法。
(項目10)
酵素処理が、残りの非標的核酸を分解するためにステップd)の前に行われる、項目8または9に記載の方法。
(項目11)
前記サンプルを核酸安定化組成物と混合し、該安定化組成物が、
a)一般式
Y+R1R2R3R4X−
(式中、Yは窒素またはリン、好ましくは窒素を表し、
R1R2R3およびR4は独立して、分岐状または非分岐状のC1〜C20アルキル基、C6〜C20アリール基、および/またはC6〜C26アラルキル基を表し、
X−は、無機または有機の一塩基酸または多塩基酸の陰イオンを表す)
の陽イオン化合物と、
b)少なくとも1種のプロトン供与体と
を含む、項目1から10の一項またはそれより多くの項に記載の方法。
(項目12)
少なくとも、
a)カオトロピック剤の存在下、前記サンプルを少なくとも40℃に加熱することによって、該サンプルを、少なくとも1種のタンパク質分解酵素と共にインキュベートするステップと、
−DNAを第1の固相に結合することによって、該DNAの少なくとも一部を除去し、該第1の固相に結合した該DNAを、前記RNAを含む残りの該サンプルから分離するステップと、
b)該RNAを第2の固相に結合するステップであって、少なくとも1種のカオトロピック剤および濃度≧30%v/vのアルコールがこの結合ステップb)中に使用されるステップと、
−該第2の固相に結合した該RNAを洗浄するための、少なくとも1つの洗浄ステップを行うステップと、
c)該第2の固相から該RNAを溶出するステップと、
d)カオトロピック剤の存在下、該サンプルを少なくとも40℃に加熱することによって、溶出された該RNAを、少なくとも1種のタンパク質分解酵素と共にインキュベートするステップと、
e)該RNAを再び固相に結合するステップであって、少なくとも1種のカオトロピック剤および濃度≧30%v/vのアルコールがこの結合ステップe)中に使用されるステップと、
−該固相に結合した該RNAを洗浄するための、少なくとも1つの洗浄ステップを行うステップと、
f)必要に応じて、結合した前記標的核酸を該固相から溶出するステップと
を含む、少なくともRNAおよびDNAを含むサンプルからRNAを精製するための、項目1から11の一項またはそれより多くの項に記載の方法。
(項目13)
低分子RNAを含む全RNAが標的核酸として単離され、単離された該核酸の95%の純度が1.8から2.2の間となる、項目1から12の一項またはそれより多くの項に記載の方法。
(項目14)
前記サンプルが、体液、血液、血液産物、組織、および骨髄から選択される生物学的サンプルである、項目1から13のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
核酸を結合することが可能な前記固相が、シリカ、磁性シリカ粒子、珪藻土、ガラス、アルキルシリカ、ケイ酸アルミニウム、ボロシリケート、ニトロセルロース、ヒドロキシアパタイト(ヒドロキシルアパタイトとも呼ばれる)、金属酸化物、ポリマー支持体、膜、および磁性粒子を含みまたはそれらからなる固相からなる群から選択される、項目1から14のいずれか一項に記載の方法。