(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6091418
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】タービンロータアセンブリ
(51)【国際特許分類】
F03B 13/24 20060101AFI20170227BHJP
【FI】
F03B13/24
【請求項の数】39
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-534126(P2013-534126)
(86)(22)【出願日】2011年10月21日
(65)【公表番号】特表2013-543559(P2013-543559A)
(43)【公表日】2013年12月5日
(86)【国際出願番号】AU2011001333
(87)【国際公開番号】WO2012051656
(87)【国際公開日】20120426
【審査請求日】2014年9月26日
(31)【優先権主張番号】2010904731
(32)【優先日】2010年10月22日
(33)【優先権主張国】AU
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516041173
【氏名又は名称】ウェーブパワーリニューアブルズリミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095957
【弁理士】
【氏名又は名称】亀谷 美明
(72)【発明者】
【氏名】マードック ピーター ジョン
【審査官】
鈴木 貴雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−288139(JP,A)
【文献】
特開平09−287546(JP,A)
【文献】
特開昭57−083670(JP,A)
【文献】
特開昭63−085201(JP,A)
【文献】
特開昭57−193780(JP,A)
【文献】
特開昭60−090990(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/098007(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 13/12 − 13/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動する作用流体からエネルギーを抽出するためのタービンロータアセンブリであって、
中心軸の回りに回転可能なハブと、
前記中心軸の回りで前記ハブに取り付けられる複数のブレードとを備え、
各ブレードはリーディングエッジとトレーリングエッジとを有し、
前記リーディングエッジおよびトレーリングエッジは、前記ブレードが互いのエッジ同士が密接に近接した状態で取り付けられるように相補的なプロファイルを有するようになされ、
前記ブレードは、当該ブレードが前記作用流体の流れの方向に対するピッチを変更可能であるように、前記ハブに対して可動であり、かつ、
前記ブレードは、前記作用流体について所定の圧力が達成されるまで、当該ブレードが前記作用流体の流れを閉塞する位置に当該ブレードが保たれるように制御されるように適合される、
タービンロータアセンブリ。
【請求項2】
前記複数のブレードは、前記中心軸の回りで円配列を形成するように連続的に配置される、請求項1に記載のタービンロータアセンブリ。
【請求項3】
前記ブレードは、オーバーラップしない連続的な形で配置される、請求項1または2に記載のタービンロータアセンブリ。
【請求項4】
各ブレードは、取り付け手段を介して前記ハブに取り付けられる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のタービンロータアセンブリ。
【請求項5】
前記取り付け手段は、前記ハブにある複数の受け形状と、各ブレードの根元から延びるシャフトとを含み、
前記シャフトは前記受け形状によって受け入れられる、請求項4に記載のタービンロータアセンブリ。
【請求項6】
各ブレードは、前記作用流体によって前記ブレードに加えられた力に応じて動く、請求項1〜5のいずれか1項に記載のタービンロータアセンブリ。
【請求項7】
前記取り付け手段は、すべてのブレードが同時に同じ角度だけピッチを変更するようになされる、請求項4または5に記載のタービンロータアセンブリ。
【請求項8】
各ブレードは、関連付けられたシャフトの回りに回転して前記作用流体の流れの方向に対するピッチ角を変更し、前記ハブおよびブレードは流体の流れの方向に関わらず前記中心軸の回りの一方向にのみ回転する、請求項5に記載のタービンロータアセンブリ。
【請求項9】
各ブレードは、スピンドルの回りに所定の角度だけ回転可能であるようになされる、請求項1〜8のいずれか1項に記載のタービンロータアセンブリ。
【請求項10】
前記回転可能なブレードは、各ブレードが前記ハブの周の回りに配列されて前記ブレードを通過する流路を実質的に閉塞するニュートラルポジションまたはクローズドポジションに保たれることが可能である、請求項1〜9のいずれか1項に記載のタービンロータアセンブリ。
【請求項11】
前記作用流体の流れの方向に対する前記ブレードのピッチの変更は、アクチュエータによって制御される、請求項1〜10のいずれか1項に記載のタービンロータアセンブリ。
【請求項12】
前記アクチュエータは、通過する流れの中の支配的な作用流体の特性の変化に反応する、請求項11に記載のタービンロータアセンブリ。
【請求項13】
前記アクチュエータは、機械的に、電気機械的に、液圧的に、または空圧的に操作される、請求項11または12に記載のタービンロータアセンブリ。
【請求項14】
前記アクチュエータは、前記ブレードを、第1の基準セットに基づいて第1の方向に、第2の基準セットに基づいて第2の方向に開くようになされる、請求項11〜13のいずれか1項に記載のタービンロータアセンブリ。
【請求項15】
前記第1の基準セットは、上昇する波浪に関連付けられる特性から決定され、
前記第2の基準セットは、下降する波浪に関連付けられる特性から決定される、請求項14に記載のタービンロータアセンブリ。
【請求項16】
前記ブレードは、所定の圧力に到達すると、前記第1の方向に開放される、請求項14または15に記載のタービンロータアセンブリ。
【請求項17】
前記ブレードは、前記作用流体が所定の負圧に到達すると、前記第2の方向に開放される、請求項14〜16のいずれか1項に記載のタービンロータアセンブリ。
【請求項18】
制御手段が、前記ブレードの動きを制御するための前記アクチュエータに関連付けられる、請求項11〜17のいずれか1項に記載のタービンロータアセンブリ。
【請求項19】
前記制御手段は、ピッチの円滑および/または定常的な変化を提供するためのダンパを含む、請求項18に記載のタービンロータアセンブリ。
【請求項20】
前記ダンパは、前記ブレードが回転する速度を制御するように適合される、請求項19に記載のタービンロータアセンブリ。
【請求項21】
各ブレードのリーディングエッジおよびトレーリングエッジは、弓形にカーブした形状を有する、請求項1〜20のいずれか1項に記載のタービンロータアセンブリ。
【請求項22】
各リーディングエッジは、凸状にカーブしている、請求項21に記載のタービンロータアセンブリ。
【請求項23】
各トレーリングエッジは、凹状にカーブしている、請求項21または22に記載のタービンロータアセンブリ。
【請求項24】
各ブレードのリーディングおよびトレーリングエッジは、実質的にストレートである、請求項1〜20のいずれか1項に記載のタービンロータアセンブリ。
【請求項25】
前記取り付け手段および前記ブレードの形状は、前記ブレードの運転中の圧力中心が各ブレードのシャフトの回転軸の後ろに位置するようなものである、請求項5に記載のタービンロータアセンブリ。
【請求項26】
各ブレードは、略シンメトリーな断面プロファイルを有する、請求項1〜25のいずれか1項に記載のタービンロータアセンブリ。
【請求項27】
各ブレードの断面プロファイルは、翼状のプロファイルである、請求項1〜26のいずれか1項に記載のタービンロータアセンブリ。
【請求項28】
前記翼状のプロファイルは、拡大されて丸みを帯びたリーディングエッジと、より狭いトレーリングエッジに向かう内方へのテーパーを有する、請求項27に記載のタービンロータアセンブリ。
【請求項29】
前記ブレードは、タービンの異なる運転特性を実現するために、異なるプロファイルのブレードと交換することが可能である、請求項1〜28のいずれか1項に記載のタービンロータアセンブリ。
【請求項30】
第1のブレードのトレーリングエッジと、前記第1のブレードのすぐ後にある第2のブレードのリーディングエッジとが共にノズルを形成する、請求項11〜20のいずれか1項に記載のタービンロータアセンブリ。
【請求項31】
前記ハブおよびブレードが配置される振動水柱ダクトのエアチャンバ内の圧力を検出するための圧力センサを含み、
前記圧力センサは、運転中に所定の圧力が検出された場合に前記ブレードを回転させて前記ノズルを開くように、前記アクチュエータおよび/または制御手段に関連付けられる、請求項30に記載のタービンロータアセンブリ。
【請求項32】
前記タービンロータアセンブリは、ハウジングの流路の中に回転可能に配置される、請求項1〜31のいずれか1項に記載のタービンロータアセンブリ。
【請求項33】
前記ハウジングは、前記作用流体を前記ハブおよびブレードアセンブリのブレードに向けるようになされる、請求項32に記載のタービンロータアセンブリ。
【請求項34】
前記ハウジングは、前記作用流体を前記ブレードに向けるために前記流路に設けられるテーパーのついた、またはカーブした面を有する、請求項32または33に記載のタービンロータアセンブリ。
【請求項35】
前記作用流体を前記ブレードに向けるためのガイド手段が設けられる、請求項32〜34のいずれか1項に記載のタービンロータアセンブリ。
【請求項36】
駆動シャフトが前記ハブに近位の端部で連結され、遠位の端部では発電機に連結される、請求項1〜35のいずれか1項に記載のタービンロータアセンブリ。
【請求項37】
前記ハブは、フライホイールとして動作して前記ハブに実質的に定常的な角速度をもたせるために十分な質量を有する、請求項1〜36のいずれか1項に記載のタービンロータアセンブリ。
【請求項38】
振動する作用流体からエネルギーを抽出するためのタービンであって、
ハウジングと、
請求項1〜37のいずれか一項に記載のタービンロータアセンブリとを備え、
前記タービンロータアセンブリは、前記ハウジングを通過して流れる前記振動する作用流体に対応して一方向に回転するように前記ハウジングに回転可能に取り付けられるタービン。
【請求項39】
波浪エネルギー抽出システムであって、
振動水柱を受け付け、前記振動水柱が振動する気流を生成するダクトと、
前記ダクトに接続されて、前記振動する気流のための流路を規定するハウジングと、
請求項1〜37のいずれか一項に記載のタービンロータアセンブリであって、前記タービンロータアセンブリは前記振動する気流との流体的な関係(fluid communication)にあり、ロータが前記振動する気流によって駆動されるタービンロータアセンブリと、
前記タービンロータアセンブリによる回転のために構成され、電気エネルギーを生成する発電機と
を含むシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にはエネルギー変換装置に関する。より詳しくは、本発明は、タービン、主には一方向性反応タービンに関する。
【0002】
本発明は、主に、本願を参照してここで説明される、振動水柱を採用した波浪エネルギー抽出システムにおける使用のために開発されたものである。しかしながら、本発明がこの特定の利用分野に限定されないことは理解されるであろう。
【背景技術】
【0003】
旧来のエネルギーシステムが環境に及ぼした、また及ぼしている影響へのいや増す関心に伴って、そのようなシステムが環境に及ぼしている影響を低減するための新たな方法やシステムが現在開発されている。
【0004】
これらのシステムの多くは、発電機を回転させて電力を生成するためのタービンに依存している。現在までに提案されている多くのこのようなシステムにおける問題は、新たなシステムを立ち上げるためにはかなりの資本支出が要求されるということである。この資本支出の大きさは、しばしば出資者にとっての妨害物となってきた。投資による収益が、資本支出とシステムの効率との関係によってある程度限定されるためである。
【0005】
上記のようなシステムで現在採用されているタービンは、比較的低い効率で運用されており、エネルギー抽出システムは全体としてこれらのタービンの効率によって制約されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来技術の1またはそれ以上の不利な点を克服または改善する、または少なくとも有用な代替案を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面によれば、振動する作用流体からエネルギーを抽出するためのタービンロータアセンブリであって、中心軸の回りに回転可能なハブと、中心軸の回りでハブに取り付け可能な複数のブレードとを備え、各ブレードはリーディングエッジとトレーリングエッジとを有し、リーディングエッジおよびトレーリングエッジは、ブレードが互いのエッジ同士が密接に近接した状態で取り付けられるように相補的なプロファイルを有するようになされるタービンロータアセンブリが提供される。
【0008】
好ましくは、複数のブレードは、中心軸の回りで円配列を形成するように連続して配置される。各ブレードは、好ましくは、オーバーラップしない連続的な形で配置される。
【0009】
リーディングおよびトレーリングエッジの相補的なプロファイルによって実現されうる、連続して取り付けられたブレードの間の密接に近接した状態が、各ブレードの前線面(frontal surface)を増大させ、また当然にブレード間の間隙(ロータを正面または背面から−つまり中心軸線に沿って見た場合の)を少なくすることが理解されるであろう。さらに、相補的なプロファイルは、隣接するエッジの長さ方向に沿って均一な間隙幅を提供する。間隙はできるだけ小さいことが好ましく、機械的な動作のためのクリアランスを提供するだけでよい。つまり、間隙の幅は、好ましくはブレードの製造に関連付けられた所定の機械的許容誤差によって決定づけられる。いくつかの好適な実施形態では、隣接するブレードエッジの長さ方向に沿った間隙幅は、約1mm以下である。
【0010】
増大した表面領域は、それゆえに作用流体がより多くのブレード表面を通り過ぎることを可能にし、それが今度は、ブレード上を流れ、ノズルを通って加速する作用流体によって生成される揚力から生じる推力の効率を向上させる。推力は、中心軸の回りにハブおよびブレードを回転させるように作用する。
【0011】
好ましくは、各ブレードは取り付け手段を介してハブに取り付けられる。取り付け手段は、好ましくは、ハブに関連付けられる第1の取り付け要素と、ブレードに関連付けられる第2の取り付け要素とを含み、それぞれの第1の取り付け要素は第2の取り付け要素のうちの1つと協働して、ブレードをハブに確実に取り付ける。取り付け手段は、好ましくは、第1および第2の取り付け手段を互いに固定された関係で連結およびホールドする留め付け手段を含む。留め付け手段は、例えば、ネジまたはネジおよびナットの組み合わせなどでありうる。
【0012】
いくつかの好適な実施形態において、それぞれの第1の取り付け要素は、好ましくは、関連するブレードのスピンドルまたはスピゴットを受け入れるための、ハブにある複数の受け形状の形でありうる。ある好適な実施形態では、それぞれの第1の取り付け要素は、ブレードの根元から延びるシャフト、スピンドルまたはスピゴットである。
【0013】
好ましくは、ブレードが作用流体の流れの方向に対するピッチ(すなわちアタックの角度)を変更可能であるように、ブレードはハブに対して相対的に移動可能であり、それゆえハブおよびブレードは流体の流れの向きに関わらず同じ向きに回転する。
【0014】
いくつかの好適な実施形態において、各ブレードは、作用流体によってブレードに加えられる力または圧力に応じて動く。つまり、各ブレードは、好ましくは、自己修正する(self-rectifying)ようになされ、作用流体の支配的な特性に応じて自動的にそのピッチを変更する。例えば、ブレードは、作用流体の流れの向きおよび/または圧力の変更に応じてそれらのピッチを変更しうる。いくつかの実施形態において、取り付け手段は、すべてのブレードが同時に同じ角度だけピッチを変更するようになされる。他の好適な実施形態において、各ブレードのピッチは、他のブレードのピッチの変更とは独立して変更される。
【0015】
各ブレードは、好ましくは、シャフトを介してハブに回転可能に取り付けられ、シャフトまたはスピンドルがそのブレードの回転の軸を規定する。好ましくは、各ブレードのシャフトは、ブレードがハブに対して相対的に回転可能であるように、ハブにある受け形状に関連付けられたベアリングアレンジメントに取り付けられる。ベアリングアレンジメントは、好ましくは、1またはそれ以上のベアリングを含み、2またはそれ以上のベアリングがスタックされたアレンジメントであってもよい。スタックされたアレンジメントは、好ましくは、4つのアンギュラーコンタクト・スラストボールベアリングのスタックを含む。
【0016】
各ブレードは、好ましくは、その関連するシャフト/スピンドルの回りに回転して作用流体の流れの方向に対するピッチ角度を変更し、ハブおよびブレードは、中心軸の回りで一方向だけに回転する。好ましくは、各ブレードは、所定の角度だけスピンドルの回りに回転可能であるようになされる。ある好ましい実施形態において、各ブレードは、およそ±45°、±40°、±35°、±30°、±25°、±20°、±15°、±10°または±5°までの角度だけ回転可能である。1つの好適な実施形態では、各ブレードは、およそ±16°までの角度だけ回転可能である。ブレードが回転可能な実際の角度は、上記で提供された例には限定されず、個々の適用に合わせて設定されうることが理解されるであろう。
【0017】
好ましくは、回転可能なブレードは、各ブレードがハブの周の回りに配列されてブレードを通過する流路を実質的にまたは実効的に閉塞するニュートラルポジションまたはクローズドポジションに保つことが可能である。回転可能なブレードは、好適には、ブレードを通過する開放された流路を維持する最大のフォワードまたはリバースオープニングポジションに保つことが可能であってもよい。フォワードまたはリバースオープニング方向のいずれかにおいて、ブレードは、流体の流れの向きに依存して動く。
【0018】
いくつかの好適な実施形態では、支配的な作用流体および/またはエアチャンバ内の圧力の変化に応じてピッチが自動的に変更されるように、ブレードは回転自在であってもよい。他の好適な実施形態では、ブレードピッチの変化は、アクチュエータによって制御される。アクチュエータは、好適には、流路の中に配置されるセンサによって検出される作用流体の特性の変化(例えば、流れおよび/またはエアチャンバ圧力の向き)に反応する。さまざまな実施形態において、アクチュエータは、機械的に、電気機械的に、液圧的に、または空圧的に操作される。好ましくは、アクチュエータは、ブレードを、第1の基準セットに基づいて第1の方向(例えば、上昇する波浪による空気を吐きだす順方向)に、第2の基準セットに基づいて第2の方向(例えば、後退する/下降する波浪による空気を吸い込む逆方向)に開くようになされる。第1および第2の基準セットは、好ましくは、異なるパラメータを含む。
【0019】
ある好適な実施形態では、ピッチの変更を制御するために、制御手段がブレードに関連付けられてもよい。制御手段は、好ましくは、各ブレードのアクチュエータに関連付けられる。いくつかの好適な実施形態において、制御手段は、ピッチの円滑および/または定常的な変化を提供するためのダンパまたはバネを含む。他の実施形態において、制御手段は、ブレードが回転する速度を変化させてもよい。ある実施形態において、制御手段は、ブレードのピッチが変更可能な角または角度を制限するように動作してもよい。ある好適な実施形態において、制御手段は、例えばリーフスプリングのような、反応性の機械バネの形であってもよい。別の形として、制御手段はトルクアームを含む。いくつかの実施形態において、アクチュエータおよび/または制御手段は、例えばプログラマブルロジックコントローラ(PLC:programmable logic controller)のような中央制御部と通信する。
【0020】
各ブレードのリーディングエッジおよびトレーリングエッジは、好ましくは、弓形にカーブした形状を有する。好ましくは、各リーディングエッジは、凸状にカーブしている。好ましくは、各トレーリングエッジは、凹状にカーブしている。いくつかの実施形態において、リーディングおよびトレーリングエッジのカーブは、均一な曲率半径を有する。他の好適な実施形態において、リーディングおよびトレーリングエッジの曲率半径は、それぞれのエッジの長さ方向に沿って変化する。好ましくは、リーディングエッジの曲率半径は、トレーリングエッジの曲率半径よりも大きい。
【0021】
他の好ましい形では、各ブレードのリーディングおよびトレーリングエッジは、実質的にストレートである。いくつかの実施形態では、各ブレードのストレートなエッジは、ブレードの根元から先端に向けてテーパーがかけられて離間している。
【0022】
好ましくは、取り付け手段およびブレードの形状は、ブレードの運転中の圧力中心が各ブレードのスピンドルの回転軸の後ろに位置するようなものであり、ブレードは、ブレードに加わる圧力の変化に応じてシャフトの回りに回転することが可能である。
【0023】
好ましくは、各ブレードは、概してシンメトリーな断面プロファイルを有する。しかしながら、ある好適な形では、シンメトリーではないプロファイルが採用されうる。上記断面プロファイルは、好ましくは翼状であってもよい。好ましくは、上記の翼状は両凸(または凸状−凸状)のプロファイルを有してもよい。他の実施形態では、翼状の一面が凹状のプロファイルを有し、反対側の面が凸状である。上記の翼状のプロファイルは、好ましくは、拡大されて丸みを帯びたリーディングエッジと、より狭いトレーリングエッジに向かう内方へのテーパーを有する。他の好ましい形では、各ブレードは、実質的に平行な側面とともに、概して平坦なプロファイル(例えば平板)を有する。
【0024】
ある実施形態において、ブレードは、タービンの異なる運転特性を実現するために、異なるプロファイルのブレードと交換することが可能である。
【0025】
好ましくは、第1のブレードのトレーリングエッジと、第1のブレードのすぐ後にある第2のブレードのリーディングエッジとが共にノズルを形成する。ブレードがニュートラルポジションにある、または0°のピッチ角を有する場合に、リーディングおよびトレーリングエッジの相補的な形状が、実質的に均一な幅のノズルを提供することを容易にすることが、当業者には理解されるであろう。
【0026】
制御手段は、好ましくは振動水柱(OWC)ダクトのエアチャンバ内の圧力を検出するための圧力センサを含む。圧力センサは、運転中に所定の圧力が検出された場合にブレードを回転させてノズルを開くように、アクチュエータおよび/または制御手段に関連付けられる。
【0027】
好ましくは、各ブレードは、振動水柱(OWC)が上昇し始める(つまり、OWCの谷にある)ときにクローズドポジションにあって、空気の流路が実効的に閉塞される。ブレードは、好ましくは、エアチャンバ内が所定の圧力に到達すると、第1の向きに開放される。好ましくは、波浪がそのピークに達したときには、ブレードはクローズドポジションに戻る。波浪が下降し始めたときに、ブレードがクローズドポジションにあると、エアチャンバ内は好ましくは減圧される。好ましくは、ブレードは、エアチャンバ内が所定の圧力に到達すると、第2の向きに開放される。ブレードは、好ましくは、波浪が下降するときにエアチャンバ内が所定の負圧に到達すると、第2の向きに開放される。
【0028】
好ましくは、各ブレードの先端はカーブしている。各ブレードの先端は、好ましくは凸状である。好ましくは、各ブレードの先端のカーブは、複数のブレードが円配列を形成してハブに取り付けられたときに、配列の外周がおおよそ円形をなすようなものでありうる。
【0029】
好ましくは、上記のタービンロータアセンブリは、一段式のタービンに用いられる。タービンは、好ましくは一方向性反応タービンである。しかしながら、タービンロータアセンブリは、2またはそれ以上のロータを有する多段式のタービンにも容易に適用されうる。
【0030】
上記のタービンロータアセンブリは、振動する作用流体からエネルギーを抽出することにおける使用に有利に適する。より具体的には、上記のタービンロータアセンブリは、OWCダクトを有する振動水柱(OWC)エネルギー抽出システムに適する。タービンロータアセンブリは、好ましくは、エネルギー抽出システムのOWCダクトに取り付けられ、エアチャンバは、ダクト内の水面とハブおよびブレードとの間のダクトによって規定される。
【0031】
上記のロータアセンブリは、好ましくは、流体の流れの向きとは独立した単一方向の回転に適合する。好ましくは、回転軸が流体の流れの向きに対して実質的に平行になるように、ロータは流れの方向に対して実質的に垂直に配置される。
【0032】
上記のロータアセンブリの複数のブレードは、好ましくは、ロータが所定の向きに回転するようになされる。好ましくは、ロータアセンブリは、作用流体の流れの方向に対して実質的に垂直に配置され、ハウジングの長軸の回りに回転する。他の好ましい形では、ロータアセンブリは、流体の流れの向きに対して実質的に平行な向きに回転するように配置される。
【0033】
好ましくは、上記のタービンロータアセンブリは、ハウジング内の流路の中に回転可能に配置される。ハウジングは、好ましくは、作用流体をロータアセンブリのブレードに向けるようになされる。いくつかの実施形態において、ハウジングは、作用流体をブレードに向けるために流路に設けられるテーパーのついた、またはカーブした面を有するようになされる。
【0034】
ハウジングは、好ましくは、縦長であって、長軸に沿って延びる。いくつかの好適な実施形態において、ハウジングは概して円柱状の本体を有する。好ましくは、タービンロータアセンブリは、ハウジングの長軸と実質的に同じ軸で配置される
【0035】
ある実施形態において、ハウジングは、長軸が振動する作用流体の流れの方向に対して実質的に平行であるように配置される。他の実施形態では、ハウジングは、長軸が振動する作用流体の流れの方向に対して実質的に垂直であるように配置される。
【0036】
例えば、ある実施形態において、ハウジングは、長軸が実質的に鉛直であるように配置されうる。他の好ましい形では、ハウジングは、長軸が実質的に水平であるように配置されうる。ハウジングが上記の方向には限定されず、個々の適用に合わせて、作用流体の流れの方向との関係で他のさまざまな方向に配置されうることは、当業者には理解されるであろう。
【0037】
ある実施形態では、作用流体をロータのブレードに向けるために、ロータの上流にガイド手段が設けられる。好ましくは、ガイド手段は、作用流体をブレード上の所望の角度で方向づけるためにロータの両側に配置される第1および第2のガイドを含む。いくつかの実施形態において、ガイド手段は、作用流体をロータのブレードに向けて方向づけるために、ロータの上流に配置される1または複数のガイド羽根を含む。ガイド羽根は、好ましくは、ブレードの近くに、対極または円配列で配置される。ガイド羽根は、固定羽根に関連付けられるか、そうでなければハウジング内に配置される。ある実施形態において、ガイド手段は、ハブから延びるノーズコーンを含む。
【0038】
もちろん、ガイド羽根は特定の形に限定されず、作用流体をロータブレードに向けてそらすためのカーブした形状や平坦な形状を含む、さまざまな適切な形状でありうることが理解されるであろう。
【0039】
振動する作用流体は、好ましくは振動する気流である。本発明のある好適な実施形態において、上記のタービンロータは、波浪エネルギー抽出システムの振動水柱から生じる気流によって回転するようになされる。振動水柱(そしてそれゆえに気流)は、通過していく波浪の上昇および下降に対応して振動する。
【0040】
しかしながら、振動する作用流体は振動する気流には限定されず、特に振動水柱から生み出される振動する気流には限定されないことが、当業者には理解されるであろう。ある実施形態において、上記のタービンロータアセンブリは、一方向性の作用流体について用いられるために適合される。一方向性の作用流体に適合される実施形態において、ブレードはオーバーラップする形で配置され、連続するブレードのリーディングおよびトレーリングエッジが互いにオーバーラップしてもよい。
【0041】
好ましい実施形態において、ロータはハブに近位の端部で連結される駆動軸を有し、ハブの回転が駆動軸の対応する回転を生じさせ、その遠位の端部が発電機に連結されてこれを駆動するのに用いられてもよい。
【0042】
ハブは、好ましくは、使用中に、それがフライホイールとして動作して実質的に定常的な角速度を提供するために十分な質量を有する。
【0043】
本発明の第2の側面によれば、振動する作用流体からエネルギーを抽出するためのタービンであって、ハウジングと、上記第1の側面に係るタービンロータアセンブリとを備え、タービンロータアセンブリは、ハウジングを通過して流れる振動する作用流体に対応して単一方向に回転するためにハウジングに回転可能に取り付けられるタービンが提供される。
【0044】
本発明の第3の側面によれば、波浪エネルギー抽出システムであって、振動水柱を受け付け、振動水流が振動する気流を生成するダクトと、ダクトに接続されて、振動する気流のための流路を規定するハウジングと、上記第1の側面に係るタービンロータアセンブリであって、タービンロータアセンブリは振動する気流との流体的な関係(fluid communication)にあり、ロータは振動する気流によって駆動されるタービンロータアセンブリと、タービンロータアセンブリによる回転のために構成され、電気エネルギーを生成する発電機とを含むシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
本発明の好適な実施形態は、以下の添付図面を参照して、あくまで例示的なものとしてこれから説明される。
【0046】
【
図1】本発明に係るタービンロータアセンブリの透視図である。
【
図2】
図1のタービンロータアセンブリの正面図である。
【
図3】上記のタービンロータアセンブリの側面図である。
【
図4】上記のタービンロータアセンブリのブレードの拡大図である。
【
図5】上記のタービンロータアセンブリのブレードおよびスピンドルの透視図である。
【
図6】
図5のブレードおよびスピンドルの正面図である。
【
図7】ハブに取り付けられたブレードの模式的な概略図である。
【
図8】隣接するブレードのペアを、3つの異なるピッチ角で示す図である。
【
図9】翼形状のブレードおよび平坦なブレードをまたいだ圧力プロファイルを示す図である。
【
図10】ブレードの3つのペアを示す図であり、各ペアはさまざまな実施形態のための異なる断面プロファイルを有する。
【
図11】ブレードピッチ角を、OWCダクト内の振動水柱の高さと、水位とロータ(ハブおよびブレードアセンブリ)との間のエアチャンバの圧力との関係で示す図である。
【
図12】上記のタービンロータアセンブリが配置されるOWCエネルギー抽出システムの概略図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図面を参照すると、本発明は、振動する気流の形で振動的に働く流体からエネルギーを抽出するためのタービンロータアセンブリ1を提供する。タービンロータアセンブリ1は、具体的には、振動水柱を有するタイプの波浪エネルギー抽出システム(
図12)での使用のために開発された。
【0048】
このようなシステムにおいて、振動水柱(OWC:oscillating water column)は、通り過ぎていく波浪の上昇および下降に対応して気流を発生させるように構成される。OWCが波頭の通過に対応して上昇すると、上昇するOWCによって排気流が生成される。波が続き、その後に波底が通過すると、OWCは下降して吸気流が生成される。
【0049】
図1を参照すると、タービンロータアセンブリ1は、中心軸3の回りに回転可能なハブ2を含む。複数のブレード4が、中心軸の回りにハブ2に取り付けられる。
図2に最も明確に示されるように、ブレードは重なることなく規則的な形で配置され、ハブ2上に中心軸3の回りに円形状の配列を形成する。
【0050】
ブレード4をハブ2に取り付けるために、ハブは、ハブ2の外周を取り巻くように配置された放射状の穴5の形で、一連の第1の取り付け要素を有する。各ブレード4は、対応するハブ2の穴5に受け入れられるスピンドル6の形で、第2の取り付け要素を有する。
【0051】
それぞれのスピンドル6は、対応するブレード4が、スピンドル6によって定義される回転軸の回りでハブ2に対して回転することを可能にするベアリング要素7を含む。各ブレード4は、スピンドル6の回りに所定の角度だけ回転することができるように構成される。説明されている実施形態において、各ブレード4は、例えばおよそ±24°の角度だけ回転することができる。
図1〜4において、ブレード4は、排気流(
図3における左から右への流れ)に適するポジションになるように回転している。
【0052】
各ブレード4は、支配的な気流流体によってブレードに加えられた力に応じて移動する。この力は、ブレードを挟んだ圧力の差から生じる。ブレードがそれらのピッチ角を変えることができることによって、ロータ1に自己修正的な(self-rectifying)特性が提供される。特に、ブレード4は、吸気または排気流のどちらにも適するように回転し、ハブ2を中心軸の回りで一方向に回転させ続けることができる。
【0053】
リーフスプリング8のような反応性の機械バネの形で、制御手段が、ピッチ角の変更を制御するために各ブレード4に関連付けられる。リーフスプリング8は、ピッチの円滑および/または定常的な変化が提供されるように動作する。さらに、リーフスプリングは、ブレードのピッチが変化しうる角度を制限する。
【0054】
ここで、
図5および
図6を参照すると、各ブレード4は、リーディングエッジ(前縁)11およびトレーリングエッジ(後縁)12を有する。リーディングおよびトレーリングエッジ(11,12)は、ブレード4が互いのエッジ同士が密接に近接した状態でハブ2に取り付けられるように、相補的なプロファイルを有するようになされることが有利である。
【0055】
相補的なプロファイルを有するリーディングおよびトレーリングエッジによって実現される、連続するブレードの間の密接に近接した状態が、各ブレードの前線面(frontal surface)を増大させることに有利につながり、また当然にブレード間の間隙(ロータを正面または背面から−つまり中心軸線に沿って見た場合の)を少なくすることを、当業者は理解するであろう。さらに、ブレードがニュートラルポジション(ピッチ角=0°)にある場合、上記の相補的なプロファイルは、隣接するエッジ(11,12)の長さ方向に沿って実質的に均一な間隙幅をもたせる。
【0056】
上記のニュートラルポジションにおいて、ブレード間の間隙は単に明らかな間隙であって、利用可能な製造上の許容誤差まで最小化される。それゆえに、全体としての間隙の領域は、無視してよく、通り道(passageway)を事実上閉塞するのに十分であり、ブレードを通り抜ける気流を全体としてほとんど遮断する。換言すれば、ロータアセンブリの剛率比(solidity ratio、すなわち全体を合わせたブレード領域の、ブレードの受風領域に対する比率)は、ほぼ1.0である。従って、ブレードがニュートラルポジションにあって通り道を閉塞している場合、波浪が上昇することによる体積の減少のために、エアチャンバにおける圧力は増大する。同様に、波浪がそのピークから下降すると、閉塞されたブレードは空気がエアチャンバに取り込まれることを妨げ、それゆえチャンバにおける圧力を低下させる。
【0057】
所定の圧力が達成されるまでブレードを閉塞した状態に保つ能力は、OWCダクトにおける波浪高さの増幅度を有利に増大させ、タービンの効率を向上させる。全体的なエネルギー抽出における向上が、ブレードを閉塞した状態に保つことによって達成されることは、数値的にモデル化されている。
【0058】
さらに、ブレードが開くと、増加した表面領域が、気流がより多くのブレード表面を通過することを可能にし、それが今度はハブを回転させるさらなる揚力および推力を提供し、それゆえ以下でさらに詳細に説明するようにロータ1の効率が改善する。この改善された効率は、
図9に示されるような、各ブレードをまたぐ改善された圧力プロファイルから生じている。
【0059】
上述した実質的に均一な間隙の幅は、少なくとも好適な形では、支配的な気流の速度を増加させ、さらにブレードに加えられる揚力および推力を増大させるように機能するノズルを規定する。
【0060】
図7に最も明確に示されるように、取り付け手段およびブレードの形状は、運転中の圧力中心(COP:centre-of-pressure)が各ブレードのスピンドルの回転軸よりも後ろに位置するようになされる。つまり、スピンドルから離れるリーディングおよびトレーリングエッジは、COPを回転軸の後ろに位置させ、ブレードが回転軸の回りに回転することを可能にするために、スピンドルから離れるように湾曲する。
【0061】
ブレードの断面プロファイルの変形例が、
図8,9および10に示されている。これらの図を参照すると、各ブレードは、好適にはシンメトリーな断面プロファイルを有しうることが理解されるであろう。
【0062】
タービンロータアセンブリ1は、円柱状のハウジング9の流路の中に回転可能に配置される。
図1および3に最も明確に示されているように、ハウジング9は、気流をロータのブレードに向けるための湾曲した入口を有するようになされることが好ましい。気流をブレードに向けることをさらに促進するために、ハブ2から延びるノーズコーン10が設けられる。
【0063】
使用にあたっては、ロータ1のハブ2は、発電機(図示せず)に接続された駆動シャフトに連結されることが好ましい。ハブ2の回転は、それに対応する駆動シャフトの回転を起こし、それが発電機を駆動させる。
【0064】
ロータアセンブリ上のブレードの配置は、ニュートラル、または起動されていない(non-actuated)位置のようなものであり、ハウジングを通過する流体の流路は、(連続するブレードの間、およびブレードの先端とハウジングとの間には小さなクリアランスの間隙があるとはいえ)ほとんどすべてブレードによってブロックされる。このようなブロックは、上昇流と下降流との流れの方向の間で、ブレードをまたいで最大限に差動的な圧力を生成する。数値流体力学(CFD:Computational fluid dynamics)解析は、非常に薄いブレード片が優れた結果をもたらし、翼状の断面形状は決定的ではないことを示している。
【0065】
この流体流れのブロックは、ブレードの上昇流と下降流側とで、ブレードをまたいだ圧力差を形成する。圧力差は、ブレードの表面に対して垂直な力を、ロータの回転軸方向の要素と、ロータの回転方向の要素とを含む合力を伴って生成する。このロータの回転方向の要素は、タービンからの力を生み出すトルクである。「上昇流」および「下降流」という用語は、振動する気流の流れの向きに依存して相対的な意味で用いられていることが理解されるであろう。
【0066】
力を生み出すモードにおいて、作用流体(working fluid)は、連続して配置されたブレードのリーディングおよびトレーリングエッジの間に形成されるノズルの間を通過することができる。ノズルは、ハブの中心軸の回転軸と直交する、しかし必ずしもこれに直角ではない回転軸の回りにブレードが幾何学的に回転することによって形成される。ノズルは、作用流体が列をなすブレードを好ましい形で通過することを許容し、ブレード列の上昇流および下降流側をまたいだ圧力差分の割合は、ブレードがそれらのニュートラルポジションにある場合に生成される圧力と比べて実質的に減少しない。つまり、ブレードの上昇流から下降流側へのブレードをまたぐ圧力差は、ブレードがそれらのニュートラルポジションから移動することによってノズルが形成された場合にも有利に実質的には維持される。
【0067】
ブレードがそれぞれの軸の回りに回転したときにも圧力差が実質的に維持されることの結果は、各ブレードをまたいて作用する力ベクトルの合成回転であり、力ベクトルは、ブレード列の中心回転軸に対して平行な方向の軸方向の推力成分と、中心軸に直交する推力成分とを含む。この直交する推力成分が、ハブにおけるトルクモーメントを生成し、それが今度はロータアセンブリの中心軸回りの回転方向で有用な回転力を生み出す。
【0068】
それぞれのノズルを形成するための好適な方法は、ブレード全体を、ハブの中心軸に対して直交する軸の回りに回転させることによる。しかしながら、他の実施形態では、ノズルはブレードの構造的な変形によって形成されてもよい。このような形の変形は、変形するブレード面に流体圧が加えられることによってもよいし、他の電気機械的に誘発される制御方法によってもよい。
【0069】
ノズルの形状およびプロファイルは、誘発されて力を生み出すブレードの推力に二次的な便益をもたらしうる。特に、リーディングおよびトレーリングエッジは、好適には、流体の流れをノズルを通して加速させる、断面が小さくなる滑らかな領域を有するノズルプロファイルを規定するように形成され、これによって圧力エネルギーが力学エネルギーに変換される。この結果は、リーディングエッジと下降流側のブレードの前部とにまたがる圧力におけるさらなる低下である。この圧力低下は、軸方向および回転方向における成分を伴う垂直方向の力をもたらす。回転方向の力は中心軸回りのトルクに変換され、このさらなる寄与は回転力ベクトルの増幅度をさらに強化しうる。
【0070】
ブレードのピッチ角と、エアチャンバにおける対応する圧力は、
図11における完結した波浪サイクルにおいて見ることができる。ブレードがその谷から上昇する場合、チャンバにおいて所定の圧力が達成されるまで、ブレードは閉塞した状態に保たれる。ブレードは、波浪のピークがやってきた時から、それが下降して、チャンバにおいて第2の(負の)所定の圧力が生じるまでの間も、閉塞した状態に保たれる。
【0071】
チャンバにおける所定の圧力が達成されるまでブレードを閉塞した状態に保つために、バネのプレテンション力を含む機械バネシステムが用いられる。他の形では、アキュムレータまたは機械バネピストンアキュムレータにおける圧力によって規定されるプレロード流体圧を有する液圧式のピストンが用いられてもよい。プリセット保持力を有する磁気アクチュエータシステムも用いられうる。
【0072】
ブレードの閉塞は、時間依存のダンピングシステムを含み、ブレードの閉塞率は減衰し、ブレードの減衰率がOWCにおける圧力から独立したものになる(つまり、ダンピングシステムは、バネのプレテンション力に抵抗して作用する)。このシステムは、OWCチャンバ内のすべての空気が、波浪のストロークの最後には抜け出ていくことを可能にする。このことは、次のストロークの始まりでのより大きな初期波高振幅を可能にし、またアップストロークの前にチャンバに取り込まれる空気をより多くし、ダウンストロークが始まる前にチャンバに取り込まれる空気をより少なくすることを可能にする。
【0073】
プリセット吹き出し圧力は、プリセット吹き出し圧力がタービンの回転スピード(rpm)の関数になるように調節される。このような改良によって、タービンが、その最適効率の範囲で運転するとともに、タービンのrpmを、利用可能な波浪エネルギーの状態、特に入ってくる波浪の高さにより近くマッチさせることが可能になる。
【0074】
有利には、タービンの吸込みと吐出しとのサイクル ブレードピッチ制御は、上記で説明したようなメカニズムによって、互いに独立でありうる。
【0075】
繰り返すが、(両方の気流方向について)エアチャンバ内で所定の圧力が達成されるまでブレードが閉塞された状態が保たれるように制御できることは、有利にOWCの振幅を増幅し、それによって、抽出される空気の作用による力の量を増大させ、タービンの効率を向上させる。
【0076】
従って、本発明は、少なくともその好適な実施形態では、増大した効率のタービンロータアセンブリを提供する。タービンロータアセンブリは、有利に、振動し、または双方向に作用する流体から抽出されるエネルギーの量を増大させることを可能にする。特に、流体の流路を収縮させることによってブレードをまたいでより大きな圧力差を生じさせるタービンブレードの前部領域の増大が有利に提供されたブレードを有するタービンロータアセンブリは、ブレードに加えられる揚力および推力の増大をもたらす。ブレードのエッジ同士の密接な近接は、気流の速度を増大させ、また推力における合力を伴うブレードをまたぐ圧力差を増大させることができるノズルをも有利に提供する。
【0077】
タービンロータアセンブリは、特に、波浪エネルギー抽出システムにおける使用に好適である。作用流体が波浪エネルギー抽出システムの振動水柱によって生成された振動する気流が作用流体になり、振動水柱(そしてそれゆえに気流)が通過していく波浪の上昇および下降に対応して振動する。
【0078】
これらの、および他の面において、その好適な実施形態における本発明は、先行技術に対する実用的および商業的な顕著な改善をもたらす。
【0079】
本発明は特定の例を参照して説明されたが、当業者は、本発明が他の多くの形で実施されうることを理解するであろう。