【実施例】
【0041】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0042】
<実施例1>
i)感温性カチオン性ホモポリマーの光重合による合成
2−(N,N−ジメチルアミノエチル)メタクリレート7.0gを50mL容の透明軟質ガラス製のバイアル瓶へ加えてマグネットスタラーで混合し、高純度窒素ガスで10分間パージした後に、丸型ブラック蛍光灯で紫外線を21時間照射した。約5時間で増粘し、15時間で固化した。光照射物をクロロホルムへ溶解して回収し、n−ヘキサンで重合物を再沈殿させ、クロロホルム/n−ヘキサン系で6回再沈殿を繰り返して精製し、n−ヘキサンを蒸散させた後に少量のベンゼンへ溶解し、0.2μmフィルターで濾過してから凍結乾燥させて感温性カチオン性ホモポリマーを得た。
【0043】
ポリエチレングリコールを標準物質とした数平均分子量は、GPCにより120,000(Mw/Mn=2.4)と測定された。続いて、
1H−NMR(in CD
3OD)の測定結果は、δ0.8−1.2ppm(br,3H,−CH
2−CH
3−),δ1.6−2.0ppm(br,2H,−CH
2−CH
3−),δ2.2−2.4ppm(br,6H,N−CH
3),δ2.5−2.7ppm(br,2H,CH
2−N),δ4.0−4.2ppm(br,2H,O−CH
2)となった。
【0044】
ii)曇点の測定
i)で合成した感温性カチオン性ホモポリマー(以下、単に「ポリマー」と称す。)の3重量%(以下、「%」は「重量%」を示す。)水溶液(以下、単に「ポリマー溶液」と称すことがある。)を調製し、660nmでの吸光度の温度依存性を20℃〜40℃の間で測定した。なお、このii)での測定は、40℃で懸濁させたポリマーの水溶液を毎分1℃の速度で20℃まで降温させて行き、溶液が透明となった時の温度を曇点とした。その結果、32℃付近に曇点を有することが分かった。
【0045】
iii)曇点降下(Tris999添加効果の測定例I)
2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(和光純薬製、Tris999、以下「Tris」と記載する。)の顆粒をii)で調製したポリマー溶液と混合し、水を加えて終濃度を1mM〜1000mMの範囲に調整した。ポリマーの終濃度は0.01%〜2.5%の範囲で調整した。
【0046】
室温において、Trisの顆粒をポリマー溶液へ混合した瞬間にポリマー溶液は懸濁を開始し、ポリマー濃度0.5%以上では溶液全体がゲル化し、ポリマー濃度0.2%未満では凝集したポリマー塊が水と相分離して沈殿した。Trisの濃度が10mM未満では凝集したポリマー塊が水と相分離して沈殿し、100mM以上では溶液全体がゲル化した。ポリマー側鎖と2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール分子が定量的に架橋性の結合を起すことによりポリマー材料が凝集しやすくなっているものと考えられる。ポリマー塊が凝集相分離した系、ゲル化した系ともに冷蔵庫中へ移すと速やかに溶解して無色透明な水溶液となり、室温へ戻すと応答性良くポリマー塊が凝集相分離した系かゲル化した系へ戻り、繰り返しこの操作を行なっても応答性に変化はなく可逆的に相転移する現象が起こることが確認された。
【0047】
上記ii)と同様にして曇点を測定した結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
iv)培養皿へのコーティングと遺伝子導入
ホタルルシフェラーゼをコードするDNA(プロメガ社、pGL3コントロール)20μgを2000μLの生理食塩水へ溶解して4℃で保管した。上記i)で合成したポリマー1580μgを500μLの生理食塩水へ4℃で溶解しA液とした。Tris 1580μgを500μLの生理食塩水へ4℃で溶解しB液とした。A液とB液を300μLずつ分取して混合し、4℃で保管した。
【0050】
2mLPCRチューブ(DNase、パイロジェンフリー)へこの混合溶液を6、10、14、20、および40μLずつ分取し、生理食塩水を94、90、86、80、60μLずつ加えて混合した。ここへDNA溶液を100μLずつ加えて混合し(これにてC/A比は3、5、7、10および20となる)、さらに生理食塩水100μLずつを加えて混合した。溶液を十分に4℃で冷却し、24Well培養皿へ300μL(全量)を各Wellへ加えて素早く流延させた。この流延操作の際に核酸複合体が疎水化して培養皿の底面へ沈着するのが視認された。さらに37℃の培養器へ3分間入れてインキュベートした後、クリーンベンチ内で15分間放置し、培養皿の各Well内の液体成分を吸引除去した。これは、通常、当業者がクリーンベンチで遺伝子導入の操作をするのに十分な時間を室温下で放置し、LCSTが室温以下の溶解性の成分を吸引除去したことに相当する。
【0051】
続いてこの培養皿の各Wellに細胞密度5×10
4個/mLへ調整したCOS−1細胞の完全培地浮遊液(DMEM+10%FCS溶液)を1mLずつ播種し、48時間培養した。培養48時間後に培地を除去し、PBSで2回洗浄後に各Wellに細胞溶解剤200μLを加え、4℃で30分間放置し、超遠心処理で不溶物を沈殿させて上澄を遺伝子導入活性評価用の試料とした。遺伝子導入活性の評価はルシフェラーゼアッセイで行った。ホタルルシフェラーゼ活性はプロメガ社のルシフェラーゼアッセイキットを使用し、規格化はタンパク濃度で行った。タンパク定量はBioRad社のBradford試薬で行った。結果を
図1に示す。
【0052】
図1の通り、室温で操作し、15分間放置して吸引除去操作を行なった培養基材の底面から遺伝子が導入されたことが分かる。この結果より、本実施例で用いたポリマー材料が室温環境でも培養皿へ固着して剥離や溶離していないことが認められた。
【0053】
<比較例1>
上記i)で合成したポリマーを単独で使用する(Trisを混合しないで等量の生理食塩水を混合した)こと以外はすべて実施例1に準拠して実験を行った。まず、24Well培養皿へポリマー溶液と核酸と生理食塩水の混合溶液を滴下し、流延した後に37℃へ3分間加温し、その後室温へ戻して15分間放置した後に吸引除去を行なった。
【0054】
乾燥後にWellの底面を観察するとWell外周へ塩様の成分がわずかに確認されたのみで固形分は残っていなかった。
【0055】
吸引除去後にCOS1細胞を使用して遺伝子導入実験を行ったが、ルシフェラーゼ活性は盲検の値と優位差を認めなかった。
【0056】
<比較例2>
比較例1において37℃に加温した後に速やかに(温度が下がらないように)、液体を吸引除去することなく細胞浮遊液を加えてただちに37℃へ戻し、遺伝子導入活性を評価した。その結果、核酸複合体はコーティングされなかった。また、細胞浮遊液へ混合して新品の培養皿へ播種した際の導入活性の値とt検定により優位差を認めなかった。いずれの系でも培地溶液中へ分解溶解している核酸複合体が培地側からCOS細胞へ取り込まれた結果であると考えられる。
【0057】
<実施例2>
実施例1において、Trisをポリマーに対して4重量倍となるようにA液とB液を混合し、細胞溶解剤200μLを添加する代りに、20μLの細胞溶解剤の液滴を培養皿の底面にドット模様で部分的に付着させた以外は、同様にして遺伝子導入を行い、得られた試料の培養皿の底面のGFP蛍光顕微鏡像を
図2に示した。
【0058】
<比較例3>
実施例2において、TrisのB液を混合しなかったこと以外は同様にして遺伝子導入を行い、GFP蛍光顕微鏡像を
図2に示した。
【0059】
図2から明らかなように、実施例2では、ドットの模様の通りにGFP遺伝子が発現されて緑色の蛍光を発することが確認された。この結果から、核酸複合体を付着させた部位以外ではGFP遺伝子は発現されず、パターンニング制御が可能である、即ち、目的部分にだけ目的遺伝子を導入することができる、ことが分かる。この技術は、例えば、インクジェットプリンターなどを利用して複数の核酸複合体溶液を狙い通りに印刷して(加温により局在化させて)、種々の遺伝子を、制御された部分にのみ導入した細胞層を形成させることができることを示すものであると言える。
【0060】
<実施例3>
実施例1において、Trisをポリマーに対して4重量倍となるようにA液とB液を混合し、37℃でのインキュベートを加湿を行うことなく24時間行って溶液を乾燥させたこと以外は同様にして遺伝子導入を行い、同様に遺伝子導入活性を評価したところ、遺伝子導入活性は、乾燥工程を含まない実施例1の約100倍となった。
【0061】
特開2006−131591号公報に記載の遺伝子導入実験や、核酸複合体を乾燥させた場合の従来法では、凍結乾燥であっても、いずれも遺伝子導入の発現効果が得られないのに対して、本発明では、乾燥を行うとむしろ遺伝子導入活性を高めることができる。
この効果が得られる理由として、核酸複合体を100nm〜200nmの微粒子として細胞へ取り込ませる従来法では、乾燥工程が入ると遺伝子の分解や微粒子の凝集によるマクロ粒子化(細胞へ取り込まれないサイズまで増大)してしまうのに対して、本発明では、元々固相からの遺伝子導入であり、乾燥させなくともポリマーの凝集層から遺伝子を細胞へ取り込ませているので、乾燥により失活することはないことが挙げられる。また、乾燥を行わない場合に比べて、100倍の活性が得られる理由は定かではないが、遺伝子が凝集層から抜けやすくなっていることが考えられる。
【0062】
[Tris添加効果の測定例II]
上記実施例1のi)で合成したポリマーとTrisを水に溶解し、終濃度をポリマー0.1%、Trisはポリマーとの重量比で0、0.5、1.0、2.0、4.0又は8.0となるように調整した。なお、0はTrisを添加しなかったものである。
【0063】
各水溶液2mLを10mm×10mm角石英セル(厚み1mm)へ入れ、37℃の水浴で加温して白濁させた。
【0064】
25℃の恒温室に設置した吸光度計に各セルをセットし、波長600nmの光透過率の経時変化を測定した。結果を
図3に示す。
【0065】
図3の通り、Trisの添加量が多くなるほど白濁液が透明になるまでの時間が長くなる。これは、Trisの添加量が多くなるほど、ポリマー材料が凝集し易くなるためであると考えられる。上記iii)の実験は、曇点以上の温度環境で凝集させたポリマー溶液が速やかに透明になる時の温度を測定した評価系であり、この<Tris添加効果の測定例II>の実験は、凝集させたポリマーを25℃に維持した際に溶解するまでの時間を測定した評価系であり、いずれの場合も『曇点』と呼んで良いと考えられるが、測定方法によって差異が生じることが分かる。
【0066】
[Tris添加効果の測定例III]
上記実施例1のi)で合成したポリマーとTrisを水に溶解し、終濃度をポリマー0.1%、Trisはポリマーとの重量比で0、0.5、1.0、2.0、4.0又は8.0となるように調整した。なお、0はTrisを添加しなかったものである。
【0067】
各水溶液2mLを10mm×10mm角石英セル(厚み1mm)へ入れた。
【0068】
20℃の恒温室に設置した吸光度計に各セルをセットし、40分経過後、波長600nmの光透過率を測定した。
【0069】
また、温度を21℃、22℃、・・・又は37℃(1℃刻み)としたこと以外は上記と同じ測定を行った。結果を表2に示す。
なお、上記Tris添加効果の測定例IIの実験の結果から、水溶液の温度を一定に維持した場合、約30〜40分後にポリマーの状態が安定化することが分かっているため、このTris添加効果の測定例IIIの実験での測定値が外的因子の影響を受けにくい『曇点』であると言える。
【0070】
【表2】
【0071】
表2の通り、このポリマーの曇点は32℃であり、Trisを添加することにより曇点が低下すること、Trisの添加量と曇点低下量との間には緩い相関があることが認められた。
【0072】
[Tris添加効果の測定例IV]
上記実施例1のi)で合成したポリマーとTrisを重水に溶解し、終濃度をポリマー0.1%、Trisはポリマーとの重量比で0.65、1.3、2.6又は5.8となるように調整した。
【0073】
各Tris/ポリマー溶液について、4℃、25℃又は37℃の各温度でNMRを測定し、ポリマー側鎖の−N(CH
3)
2の
1H積分値とTris中の−CH
2−の
1H積分値との比を算出し、結果を
図4に示した。
【0074】
図4より明らかなように、ポリマー側鎖の−N(CH
3)
2の
1Hの積分値とTris中の−CH
2−の
1Hの積分値の比は、4℃では配合比通りとなっているが、25℃ではTris添加量が多い領域で理論値からはずれてゆき、37℃ではポリマー側鎖のピークは検出されない。これは、疎水凝集によるミセル形成によって遮蔽された結果であると考えられる。
【0075】
[Tris添加効果の測定例V]
上記実施例1のi)で合成したポリマーとTrisを水に溶解し、終濃度をポリマー0.1%、Trisはポリマーとの重量比で0、0.5、1.0、2.0、4.0又は8.0となるように調整した。なお、0はTrisを添加しなかったものである。
【0076】
各Tris/ポリマー溶液について、それぞれ40℃で凝固させたものを瞬時に25℃まで冷却して維持した際の微分DSC曲線を測定し、結果を
図5に示した。
図5より、Tris配合量の増大に伴い、吸熱が起こる(疎水凝集体が溶解する)までの時間に遅延が生じることが分かる。
【0077】
[Tris添加効果の測定例VI]
上記実施例1のi)で合成したポリマーとTrisを水に溶解し、終濃度をポリマー30%、Trisはポリマーとの重量比で0、0.5又は2.0となるように調整した。なお、0はTrisを添加しなかったものである。
本測定では、IRの検出感度の関係で遺伝子導入実験の20倍濃度で測定を行った。
【0078】
細胞培養用ポリスチレンシャーレを20mm×50mmサイズに切り、上記の各Tris/ポリマー溶液を100μLづつ滴下して加湿しながら37℃で6時間インキュベートした。その後、室温下で溶液を吸引除去した後、加湿を止めた37℃のインキュベーター中で24時間乾燥させた。
ATR法により赤外吸収スペクトルを測定し、基材表面に残るポリマーのTris濃度依存性を調べた。
【0079】
その結果、
図6に示す通り、ポリマーのC=Oに由来する1730cm
−1の吸収とシャーレのポリスチレンに由来する1601cm
−1の吸収の比は、それぞれ、Tris0=0.00、Tris0.5=0.45、Tris2.0=0.62であり、Tris添加により濃度依存的にポリマーがポリスチレン基材表面に残存したことが分かる。
【0080】
[考察]
以上の原理の異なる4つの測定例、即ち、
測定例II:水中凝集による光透過性(濁り)
測定例IV:水中での疎水凝集による磁場遮蔽
測定例V:再溶解時の熱エネルギー変化
測定例VI:赤外吸収
の結果より、Trisを配合することによって、Tris/ポリマー組成物の熱的応答性が変化することが確認された。
この結果から、本発明によれば、Tris配合によって、25℃での操作中にポリマーのコーティング層が溶出してしまうことを防ぎ、温度感応的に形成された凝集層の目的を十に発揮できるという効果が得られることが分かる。
【0081】
<実施例4>
GFPをコードする遺伝子(TAKARA Biomedicals社、pQB125)を生理食塩水へ溶解して濃度1μg/30μLとし、4℃で保管した。上記実施例1のi)で合成したポリマーを生理食塩水へ4℃で溶解し濃度4μg/30μLのC液とした。Tris 1580μgを500μLの生理食塩水へ4℃で溶解しD液とした。C液とD液を300μLずつ分取して混合し、4℃で保管した。
【0082】
2mLPCRチューブ(DNase、パイロジェンフリー)へこの混合溶液を3.8,7.5,15、および30μLずつ分取し、生理食塩水を96.2,92.5,85.70μLずつ加えて混合した。ここへGFP含遺伝子溶液を50μLずつ加えて混合した。これにてC/A比は1,2,4および8となる。溶液を十分に4℃で冷却し、24Well培養皿へ150μLを各Wellへ加えて素早く流延させた。さらに37℃の培養器へ6時間入れてインキュベートした。
【0083】
続いてこの培養皿の各Wellに細胞密度7×10
4個/mLへ調整したHela細胞の完全培地浮遊液(DMEM+10%FCS溶液)を1mLずつ播種し、10日間培養した。遺伝子導入活性の評価は蛍光顕微鏡観察で行った。結果を
図7に示す。
【0084】
<比較例4>
実施例4において、C液及びD液の混合溶液の代わりにLipofectamine2000(invitrogen社)を用いたこと以外は同様にして実験を行った。結果を
図7に示す。
【0085】
図7の通り、比較例4では1日目からGFP蛍光の発現が確認され、2日目に発現のピークを迎え、以降、GFP蛍光は急激に減光して7日目にはほとんど発現は確認されなくなった。これは、核酸複合体溶液を添加した際に、これを取り込んだ細胞(一部で分裂細胞へも継承)でのみGFP蛍光が発現し、細胞内のDNA(mRNA)が消費・分解されるとGFP蛍光が発現されなくなったためであると考えられる。これに対し、実施例4では、1日目にはほとんどGFP蛍光の発現は確認されず、GFP蛍光が確認されるまでに1.5日間程度を要した。以降、GFP蛍光の発現率は高くなり、5日目にはピークを迎え、比較例の10倍程度の発現率までに至った。実施例4では、この高発現率がそのまま持続し、7日目(10日目までも)でも減光することがなかった。実施例4では、培養皿底面からDNA又はDNA複合体が徐々に時間をかけて放出されるので、GFP蛍光の発現のピークは約5日目以降であるが、そのまま高発現を維持できる。徐放性の効果で分裂して増えた細胞や、一度DNAを取り込んだ後にこれを消費・分解した細胞にも、DNA複合体を取り込む機会が与えられた結果であると言える。この徐放性により、上記した以外にも次の(i),(ii)の効果が奏される。
(i) 従来法による遺伝子導入が、通常、細胞の分裂期へ核酸を供給するタイミングを合わせる必要がある(タイミングが合った細胞に導入の機会が与えられるとも言える)のに対して、長期に渡って核酸を供給することは、あらゆる細胞周期にある多くの細胞へ均等に導入の機会を与えことができる。
(ii) 増殖速度の小さい細胞への導入にも有利である。
【0086】
実施例4及び比較例4の遺伝子導入後の細胞に対し、市販の細胞毒性評価キット(Dojindo社、WST−8)を使用して細胞毒性を評価した。その結果、実施例4では100%の生存率、比較例4では80%程度の生存率となった。これにより、一気に多量の細胞の細胞膜を傷害させて核酸を供給する従来法(比較例4)と、少しずつ時間をかけて核酸を供給して行く実施例4とでは、細胞への傷害性に差異があることが認められた。即ち、本発明の遺伝子導入組成物の持つ徐放性の効果は、遺伝子を導入する以外に細胞傷害性に関しても有利であることが分かる。
【0087】
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更が可能であることは当業者に明らかである。
なお、本出願は、2011年12月28日付で出願された日本特許出願(特願2011−287594)に基づいており、その全体が引用により援用される。