【実施例】
【0159】
追加の実施形態を下記の実施例において更に詳細に開示するが、いかなる意味においても請求項の範囲を限定するものではない。
【0160】
[実験材料及び方法]
下記の実験材料及び方法を以下の実施例1〜9について用いた。
【0161】
[AAV定量及び機能的検証]
精製したAAVを下記の一般的手順を用いてqPCRにより定量した。凍結したAAVのアリコットを融解し、10ユニットのDNAseI(Roche)を含む処理バッファ中10倍希釈し、37℃で30分間インキュベートした。DNase処理したウイルスを連続的に希釈し、5mLの各希釈を、PerfeCTa SYBR Green SuperMiz,Rox(Quanta Biosciences)、及び、CMVエンハンサー(5’CMV:AACGCCAATAGGGACTTTCC(配列番号:31)、3’CMV:GGGCGTACTTGGCATATGAT(配列番号:32))又はルシフェラーゼ導入遺伝子(5’Luc:ACGTGCAAAAGAAGCTACCG(配列番号:33)、3’Luc:AATGGGAAGTCACGAAGGTG(配列番号:34))に対してデザインされたプライマーを用いた、15μLのqPCR反応に用いた。サンプルを2回、Applied Biosystems 7300 Real Time PCR Systemに供した。下階のサイクリング条件を用いた:50℃2分1サイクル、95℃10分1サイクル、95℃15秒及び60℃60秒40サイクル。ウイルス力価を、pVIPルシフェラーゼ発現ベクターをXhoI/NheIで切断した精製DNA断片、又は、前もってDNA標準に対して滴定した精製済みの4E10抗体を発現するAAV2/8からなる対照標準のいずれかを用いて作成した標準曲線と比較して、決定した。
【0162】
滴定したウイルスの各ロットの機能的活性を検証するため、インビトロ感染アッセイを293T細胞を用いて、抗体の濃度を細胞上澄み中で測定した。感染24時間前、12ウェルプレートに1mL培地中の500K細胞を播種した。感染2時間前、培地をウェル当たり500μLの新鮮な培地で置換した。各ウイルスのゲノムコピー(10
11)を各ウェルに加え、6日間感染させた。上澄みを取り出し、DLISAにより総IgG産生を定量した。
【0163】
[マウス株]
免疫不全のNOD/SCID/γc(NSG)、免疫適格のC57BL/6(B6)、及びBalb/Cマウスを、Jackson Laboratoryから得た。免疫不全のRag2/gcマウスをA.Bernsから得た。
【0164】
[AAV筋肉内注射及び生物発光イメージング]
前もって滴定したウイルスのアリコットを氷上でゆっくりと融解し、TFB2中に希釈して、40μL容量の所定用量を得た。マウスをイソフルラン吸引により麻酔し、40μL1回注射を28Gインスリンシリンジを用いて腓腹筋に投与した。ベクター投与後様々な時間点で、マウスを、血清中の抗体濃度を決定するために出血させるか、又は、ゼノジェン(登録商標)IVIS 200 Series imaging system(Caliper Lifesciences)を用いて画像化した。画像化するために、マウスをイソフルラン吸引により麻酔し、100μLの15mg/mLのD−ルシフェリン(Gold Boitechnology)を腹腔内注射により与えた。画像をD−ルシフェリン注射後5〜10分の間に撮った。
【0165】
[DLISAによる抗体産生の定量]
総ヒトIgGを検出するために、ELISAプレートを1ウェル当たり1μgのヤギ抗−ヒトIgG−Fc抗体(Bethyl)で1時間被覆した。プレートを、TBS中の1%BSA(KPL)で少なくとも2時間ブロックした。サンプルを1%BSA(KPL)を含むTBST中で室温で1時間インキュベートし、その後、HRP−コンジュゲートヤギ抗−ヒトカッパ軽鎖抗体(Bethyl)を用いて30分間インキュベートした。サンプルを、TMB Microwell Peroxidase Substrate System(KPL)を用いて検出した。標準曲線を、Human Reference Serum(Lot3、Bethyl)又は精製ヒトIgG/Kappa(Bethyl)のいずれかを用いて作成した。
【0166】
gp120−結合IgGを検出するために、ELISAプレートを1ウェル当たり0.04−0.10μgのHIV−1gp120MNタンパク質(Protein Sciences)で1時間被覆した。サンプルを1%BSA(KPL)を含むTBST中で室温で1時間インキュベートし、その後、HRP−コンジュゲートヤギ抗−ヒトIgG−Fc抗体(Bethyl)を用いて30分間インキュベートした。サンプルを、TMB Microwell Peroxidase Substrate System(KPL)を用いて検出した。標準曲線を、精製b12又はVRC01タンパク質のいずれかをサンプルに対して適切に用いて作成した。
【0167】
[HIVウイルスの産生及び力価]
293T細胞を、10%ウシ胎仔血清、1%ペニシリン−ストレプトマイシンミックス(Mediatech)、1%グルタミン(Mediatech)を添加したDMEM培地中で、37℃の5%CO
2インキュベーターにおいて維持した。トランスフェクション3日前に、2つの15cmプレートに、各25μL培地中の3.75×10
6細胞を播種した。トランスフェクション2時間前に、培地を15mLの新たな培地に交換した。40μgのHIVの感染力ある分子クローンをコードするpNL4−3プラスミド36を、製造業者の指示に従って、Trans−IT reagent(Mirus)を用いてトランスフェクトした。トランスフェクション24、48、及び72時間後に、上澄み回収を行い、それぞれの培養後に15mLの新鮮な培地をプレートにゆっくりと加えた。集めた上澄みを0.45μmフィルターを用いてフィルターして、細胞片を取り除き、−80℃での保存のためにアリコットした。HIVを、製造業者の指示に沿って、Alliance HIV−1 p24抗原ELISAキット(Perkin−Elmer)を用いて定量した。
【0168】
[インビトロHIV保護アッセイ]
ルシフェラーゼレポーター細胞中でのインビトロ中和アッセイを、下記の一般的な手順に従って行った。国立保健研究所の“AIDS Research and Reference Reagent Program”から得たTZM−bl細胞を、10%ウシ胎仔血清、1%ペニシリン−ストレプトマイシンミックス(Mediatech)、1%グルタミン(Mediatech)を添加したDMEM培地中で、37℃の5%CO
2インキュベーターにおいて維持した。アッセイの前に、TZM−bl細胞をトリプシン処理し、計数し、合計容量15mLで1mL当たり10
5細胞の濃度で再懸濁した。細胞を、75μg/mLのDEAD−デキストラン、及び図示される様々な濃度の各抗体と混合し、ウイルスの調製中氷上でインキュベートさせた。ウイルス希釈を調製するために、保存のNL4−3を生育培地中で250ng/mLまで希釈し、その後、アッセイプレート中で4倍の系列希釈をした。抗体とプレインキュベートした10000細胞を含む100μLの培地を、前もって希釈したウイルスを含むウェルに加えた。感染を37℃の5%CO
2インキュベーターにいて48時間進行させた。プレートを読む前に、100mLnoBriteLite reagent(Perkin Elmer)を各ウェルに加え、プレートを室温で2分間インキュベートした。各ウェルの120μLをその後不透明プレートに写し、VICTOR3(Wallac 1420 VICTOR3 plate reader、Perkin Elmer)により読んだ。
【0169】
[インビボ感染用のヒト化マウス]
ヒト化マウスを実質的に下記の手順に従って産生した。ヒト末梢血単核細胞(AllCells)を−80℃から融解し、10%ウシ胎仔血清、1%ペニシリン−ストレプトマイシンミックス(Mediatech)、1%グルタミン(Mediatech)、50μMβ−メルカプトエタノール、10mMHEPES(Gibco)、13非必須アミノ酸(Gibco)を含むRPMI培地中に増殖させ、T−細胞増加のために5μg/mLのフィトヘムアグルチニン(Sigma)及び10ng/mLのヒトIL−2(Peprotech)を用いて37℃の5%CO
2インキュベーターにおいて刺激した。細胞を使用前に7〜13日間増殖させた。生着のため、2ミリオン〜4ミリオンの細胞を300mL容量の培地中で、NSGマウスに腹腔内で注射した。
【0170】
[HIV保護実験]
HIV感染の1日前に、各マウスからの血液サンプルを、抗体定量のためのELISA及びベースラインとなるCD4/CD8比を決定するためのフローサイトメトリーの両方に供した。翌日、マウスを、PBS中に希釈した特定の用量のHIVを含む100μLの腹腔内又は静脈内注射のいずれかにより感染させた。感染させたマウスについて、T細胞サブセット中のCD4とCD8との比をフローサイトメトリーにより決定するために、毎週の血液サンプリングを行った。
【0171】
[フローサイトメトリー]
血液サンプルを、後眼窩採決によりマウスから採取し、1150gで5分間遠心分離して血漿を細胞ペレットから分離した。血漿は、取り出されて将来の分析のために凍結され、細胞ペレットは1.1mLの1×RBC溶解バッファ(Biolegend)中に再懸濁され赤血球細胞を取り除くために少なくとも10分間氷上でインキュベートされた。溶解後、サンプルを微小遠心管中、室温で5分間1150gでペレットにし、5μLの抗−ヒトCD3−FITC、5μLの抗−ヒトCD4−PE、5μLの抗−ヒトCD8a−APC抗体(Biolegend)、及び、2%ウシ胎仔血清(PBS1)を添加した50μLのリン酸緩衝生理食塩水を含む65μLのカクテルを用いて染色した。サンプルを1mLのPBS+で洗浄し、微小遠心管中5分間1150gで再びペレットにした。ペレットにした細胞を、ヨウ化プロピジウム(Invitrogen)を添加した200μLのPBS+中に再懸濁して、FACS Calibur flow cytometer(Ceckton−Deckinson)で分析した。サンプルを、このサブセット内のCD4とCD8細胞の非を決定する前に、初めにCD3発現でゲートをかけた。20未満のCD3
+の現象を有するサンプルは分析から除外した。
【0172】
[HIVp24についての組織学的染色]
インビボ投与実験の結果、脾臓をマウスから取り出し、10%中性緩衝ホルマリン中に24時間含浸した。固定後に組織を取り出し、標準的なパラフィン包埋及び処理まで70%エタノール中においた。一片(4mm厚)をその後採取し、Kal−1マウスモノクローナル抗体及び標準的な抗原回復手法を用いて、免疫組織化学染色をHIV−p24検出のために行った。スライドは、Olympus BX51 light microscope上で病理学者(D.S.R.)により観察され、SPOT Insight Digital Camera(Diagnostic Instruments)を用いて画像が得られた。
【0173】
(実施例1)モジュラーAAV導入ベクターの構築及びクローニング
AAV導入ベクターを構築するために、145塩基対(bp)の、ユビキチン制限部位により分離された、「フリップ」方向のAAV2−由来の末端逆位配列1(ITR1)及び「フロップ」配列のITR2をコードするオリゴヌクレオチドを合成し(Integrated DNA Technologies)、PBR322プラスミドベクターにライゲーションする前にアニールした。その後、適した部位に挟まれた、プロモーター、導入遺伝子、及びポリアデニル化シグナルをPCTにより増幅し、ITR間でクローン化して、制限部位の特有の組み合わせが各要素を挟む、モジュラーAAV導入ベクターを得た。
【0174】
筋肉発現における様々なプロモーターの発現能力を評価するため、パネルの遍在及び組織特有のプロモーターにより動かされるルシフェラーゼ遺伝子を有する一連のベクターを作製した。これらのベクターを、腓腹筋に単回投与により筋肉内で投与し、ルシフェラーゼ発現をモニターして、この標的組織における各プロモーターの相対的な発現能力を決定した。サイトメガロウイルス最初期プロモーター(CMV)、キメラトリ−β−アクチン(CAG)、及びユビキチンC(UBC)プロモーターは、着実な筋肉発現を与えた(
図1A)
【0175】
新規の合成CASIプロモーター(長さ約1.05kb)を生成した(
図1B)。CASIプロモーターは、転写開始部位を含む、サイトメガロウイルス最初期プロモーター(CMV)とそれに続くトリ−β−アクチン(CAG)プロモーターの断片からなる。この融合体には、直後に、ヒトユビキチンC(UBC)プロモーターのエンハンサー領域を挟む共通のスプライス供与及びスプライス受容配列を用いる、合成的にデザインされたイントロンが続いている。インビボ試験は、CASIプロモーターが34%超コンパクトであるにも拘らず、CAGプロモーターよりも筋肉において大幅に活性があることが示された(
図1C)。ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)をその後AAV導入ベクターに導入したところ、導入遺伝子の発現を有意に向上させた(
図1D)。
【0176】
様々なポリアデニル化シグナルの効率も筋肉由来の発現について調べた。SV40後期ポリ(A)、ウサギβ−グロビン(RBG)ポリ(A)、及びウシ成長ホルモン(BGH)ポリ(A)の全ては、同等のレベルの発現を示した(
図1D)。
【0177】
図1Eは、モノクローナル抗体由来の重鎖及び軽鎖V領域を挿入することができる、IgG1スキャフォールドをコードする筋肉−最適化発現ベクターの一部の模式図を示す。
【0178】
図2は、挿入されたルシフェラーゼ導入遺伝子を有する、筋肉−最適化発現ベクターのマップの模式図を示す。補足
図2に示される通り、ベクターは、各モジュラー要素に挟まれた特有の制限部位を有する(例えば、XhoI、SpeI、NotI、BamHI、Acc65I、HindIII、及びNheI)。このベクターでは、AAV配列は、XhoI制限部位に直後に続き、AAV2由来の145bpの「フリップ」末端逆位配列(ITR)を有し、SpeI制限部位及びCASIプロモーターに続く。CASIプロモーターは、ルシフェラーゼ導入遺伝子のATGの前に、NotI制限部位、及びコザック共通配列を模倣する共通認識配列のGCGGCCGC(配列番号:35)切断部位に続く1つの追加のC残基に続く。導入遺伝子の3’末端は、BamHI部位の前に、TAAストップコドンで終結し、1つの追加のA残基に続く。WPTE要素は、この制限部位に続き、SV40後期ポリアデニル化シグナルに先立つAcc65I制限部位、及びHindIII制限部位まで続く。加えて、2つ目の145bpAAV2「フロップ」−ITRがNheI部位の前に位置する。
【0179】
(実施例2)組換え型AAVウイルスの産生及び精製
組換え型AAVウイルスを、以下に記載する手順による培養物の上澄みで産生及び精製した。
【0180】
293T細胞を、10%ウシ胎仔血清、1%ペニシリン−ストレプトマイシンミックス(Mediatech)、及び1%グルタミン(Mediatech)を添加したDMEM中に、37℃の5%CO
2インキュベータにおいて維持した。トランスフェクションの3日前に、4つの15cmプレートについて、3.75×10
6細胞を各25mLの培地中に、播種した。代わりに、トランスフェクションの4日前に、1プレートにつき、1.875×10
6細胞を、播種した(ウイルス当たり7.5×10
6細胞を播種)。トランスフェクションの2時間前に、培地を15mLの新鮮な培地に交換した。
【0181】
AAV導入ベクターを、アデノウイルスヘルパーベクター(pHELP(Applied Viromics)又はpAd−delta−F6)、及びAAv(pAAV2/8 SEED)のRep及びCap遺伝子産物を発現するヘルパープラスミドを用いて、0.25:1:2で、Bioトランスフェクション試薬(Bioland Scientific)を用いて、同時トランスフェクションした。トランスフェクション当たりに用いられたDNAの総量は80μgであった。5つのAAVウイルス回収を、トランスフェクションの36、48、72、96、及び120時間後に行った。各時間点において、培地を0.2μmフィルターにより濾過し、15mLの新鮮な培地をゆっくりとプレートに加えた。
【0182】
回収後、約75mLの5×PEG溶液(40%ポリエチレングリコール、2.5M Nacl)を、回収された上澄みの全量(〜300mL)に加え、ウイルスを氷上で少なくとも2時間沈殿させた。珍談させたウイルスは、7277gで30分間(Sorvall RC 3B Plus、H−6000A rotor)でペレットにし、1.37g/mLの塩化セシウム中に再懸濁した。再懸濁したウイルスを、Quick−Sealチューブ(Beckman)中に均等に分け、329738gで20℃で24時間スパンした(Beckman Coulter、 Optima LE−80K、70Ti rotor)。100−200mLの画分を96ウェル平底組織培養プレート中に回収し、屈折計を用いて5mLの各画分の屈折率を定量した。屈折率が1.3755及び1.3655の間を示すウェルを混ぜ合わせ、TEST Formulation Buffer 2(TFB2、100mMクエン酸ナトリウム、10mMトリス、pH8)を用いて、最終容量15mLに希釈した。ウイルスを100kDa MWCO遠心フィルター(Millipore)に加え、1mLの残余分が残るまで4℃で500gで遠心分離した。残ったウイルスをその後再び、TFB2中で最終容量15mLに希釈し、この操作をウイルスが3回洗浄されるように繰り返した。最終残余分の容量は全部で500〜1000mLの間であり、アリコットして−80℃で保存した。
【0183】
(実施例3)抗体導入遺伝子の最適化
抗体の発現について最適なフレームワークを作るため、F2A自己プロセッシングペプチド配列により分離された、幾つかの広範な中和HIV抗体の重鎖及び軽鎖を、CMVプロモーターのコントロールの下、哺乳類発現ベクターにクローン化した。これらのベクターでトランスフェクションした293T細胞は、ELISAにより検出され得る培養物の上澄み中に、ヒトIgGの分泌を示した(
図3A)。発現を向上させるため、F2A配列を、哺乳類のコドン使用頻度をよく反映させるために再操作し、また、最適なプロセッシングのためにそのN末端にフリン切断部位を導入した。最適化されたF2A配列を有するベクター(配列番号:9)と、標準のF2A配列を有するベクター(配列番号:10)とをトランスフェクションによる比較により、最適化されたF2A配列を有するベクターが、より高いレベルでテストされた4つ全ての抗体を産生することが示した。
【0184】
抗体の分泌を向上させるために、内在的なシグナル配列を、ヒト成長ホルモン(HGH)由来のコドン最適化配列と置き換え、重鎖、軽鎖、又は両鎖のいずれかが分離したHGHシグナル配列により動かされる4E10発現ベクターのバージョンを作製し、トランスフェクションによりそれらの発現を比較した。ベクター中の繰り返し配列を最小化するために、2つのHGH配列(配列番号:11及び12)を合成した。異なるヌクレオチド配列を有するが、同じアミノ酸をコード化し、それぞれは重鎖又は軽鎖のいずれかにのみ用いられる。重鎖又は軽鎖のいずれかでの内在的シグナル配列のHGH配列での置換により、より高いレベルの抗体産生が得られ、両鎖のシグナル配列の置換により最高の結果が得られた(
図3B)。
【0185】
抗体をコード化する転写物の不適切なスプライシングの可能性を取り除くために、配列をインシリコのスプライス予測に供し、その部位、又は、これが可能でないときは周辺配列に、保存的変位を用いて、可能性のあるスプライス供与及び受容配列の全てを取り除いた。このスプライス−最適化フレームワーク中におかれたとき、4E10抗体の向上した発現が観察された(
図3C)。
【0186】
最終の抗体導入遺伝子の構造の模式図を
図3Dに示す。
図3Dに示すように、抗体導入遺伝子は、HGHシグナル配列と、それに続く交換可能なVH領域、スプライス−最適化された重鎖定常領域、2つ目のHHシグナル配列と融合した最適化したF2Aペプチドに結合したフリン切断部位、交換可能なVL領域、及びスプライス−最適化されたカッパ軽鎖定常領域、からなる。
【0187】
遺伝子発現を向上させるためになされた上記最適化が、抗体の中和能力に影響を与えていないことを確認するために、数種類のよく研究された広範な中和抗体(例えば、b12、2G12、4E10、及び2F5抗−HIV抗体)を、最適化した発現ベクターから発現させた。産生した抗体を精製し、TZM−blルシフェラーゼレポーター細胞を用いたインビトロプロテクションアッセイで試験した。HIVの量を増加させながらの投与する前に、HIV−誘発翻訳因子(TZM−bl細胞)のコントロールの下、ルシフェラーゼ遺伝子を有する細胞を、各抗体の希釈物とインキュベートした。細胞を、NL4−3 HIV株の力価を増大させながら投与する前に、様々な濃度の抗体と共に播種した。投与の2日後、細胞をリンスし、ルシフェリン基質の添加後ルシフェラーゼ活性を定量した。TZM−bl細胞感染における着実な低減が、以前に確立された、この株についてテストされた4つの抗体全てに関するIC50及びIC90の値とよく相関する抗体濃度で、観察された(
図4A−D)。
【0188】
(実施例4)抗体導入遺伝子のインビボ発現
ルシフェラーゼ、又はサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターにより動かされる4E10HIV中和抗体のいずれかを発現する、血清型8由来のカプシドを有する組換え型AAVウイルスを、腓腹筋への単回注射によりマウスに投与した。1×10
10ゲノムコピーのルシフェラーゼを発現するAAV2/8を筋肉内注射して15週後の、代表的なRag2/γcマウスのゼノジェン画像を示す(
図5A)。投与の1週間以内に、ルシフェラーゼ又は抗体遺伝子発現のいずれかが検出できた(それぞれ、
図5B及び5C)。発現は上昇し続け、12〜16週後に最大に達し、その後2から3倍減少し、少なくとも64週間の研究の期間に亘って安定した。
図5B−Cは、抗体産生が用量依存的であり、少なくとも64週間維持されたことを示す。
【0189】
HIV−中和b12抗体の重鎖及び掲載可変領域を、AAV導入ベクターにクローン化し、2つの免疫不全、及び2つの免疫適格のマウス株:NOD/SCID/γc(NSG)、Rag2/γc(RAG)、C57BL/6(B6)、及びBalb/Cの腓腹筋中への1×10
11ゲノムコピーの筋肉内投与について、組換え型AAVストックを産生させた。マウスは、コード化された抗体を、非最適化ベクターを用いて達成されるレベルとよりも100倍高い血清濃度で産生し、この発現レベルは少なくとも52週間続いた(
図5Cと比較した
図6)。B6マウス中でヒトb12−IgGに対して非常に限られたマウス抗体が生じ、Balb/C動物はヒトIgGレベルに影響を与えないと見られる導入遺伝子に対する検出可能なマウス抗体を生じた。
【0190】
(実施例5)HIV投与により生じるCD4細胞の喪失の予防
HuPBMC−NSGヒト化マウスは、複製可能なHIVを用いた投与後にCD4細胞欠損を示す(20ng p24 NL4−3、n=4、
図7)。このマウスモデルを、インビボ投与からマウスを保護するための本願明細書に記載されるベクターの能力をテストするために用いた。
【0191】
ルシフェラーゼ又はb12抗体を発現する組換え型AAVウイルスを、NSGマウスに投与し、6週間以内に、濃度約100μg/mLの安定な血清b12抗体を産生させた。これらのマウスに、増殖した末梢血単核球(huPBMCs)を適合的に移植し、2週間の間に亘って生着させた。マウスをその後、HIVのNL4−3株の腹腔内注射により投与した。
【0192】
HIV投与の後、ルシフェラーゼを発現する大部分のマウスは、CD4細胞の劇的な喪失を示したが、b12抗体を発現するマウスはCD4細胞の欠損を全く示さなかった(
図8B)。
【0193】
この実施例は、抗−HIV抗体を発現する組換え型AAVウイルスが、HIV感染により生じるCD4細胞の喪失からマウスを保護することができることを示す。
【0194】
(実施例6)様々なHIV中和抗体を用いた保護
様々な広範な中和HIV抗体の保護能力を比較するために、b12、2G12、4E10、及び2F5を発現する組換え型AAVウイルスを、それぞれ産生してNSGマウスに投与した。投与7週間後、NSGマウスは20−250μg/mLの図示の抗体を産生した。各HIV抗体のインビボの血清濃度を測定した。結果を
図3Aに示す。
【0195】
形質導入されたマウスに、huPBMCsを適合的に移植し、HIVを静脈内注射により投与し、経時的にCD4細胞の欠損を定量するために毎週資料採取した(
図9B)。
図9Bに示されるように、b12を発現する動物は、感染から完全に保護され、2G12、4E10、及び2F5を発現するものは部分的に保護された。部分的な保護を示した群は、遅れたCD4細胞の欠損のある動物、及び実験コースを通して高いCD4細胞レベルを維持した動物、からなる。
【0196】
投与8週間後、マウスを殺処分し、感染の程度を定量するために、パラフィン包埋の脾臓部位を、HIV−発現p24抗体について、の疫組織化学的染色に供した。
【0197】
(実施例7)抗−HIV保護の頑強性の決定
b12抗体を発現するマウスの大コホートに、huPBMCsを適合的に移植した。投与前に、全マウスは高レベルのヒトIgGを発現しており、これは生着させたヒトB細胞によるものと思われた(
図10A)が、b12−発現ベクターを受けたもののみが、gp120に特異的なIgGを産生し、100μg/mLに達した(
図10B)。
【0198】
ルシフェラーゼ又はb12のいずれかを発現するモック感染のマウスは、着実な高レベルのCD4細胞生着を、実験コースを通して、示し、導入遺伝子の毒性はCD4細胞喪失に寄与していないことを示した(
図11)。対照的に、1ngのHIVを受けたルシフェラーゼを発現する細胞は、迅速かつ大規模なCD4細胞の欠損を生じた。高用量では、ルシフェラーゼを発現するマウスにおける感染は、より着実であり、幾つかのケース(25、125ng)において検出レベル以下CD4細胞の欠失となった。特記すべきことに、b12を発現する全てのマウスは、8つ中7つのコントロール動物において欠損するための必要量の100倍超のHIV用量を受けているにも拘らず、CD4細胞喪失からの保護を示す(
図11)。
【0199】
この実施例は、本願明細書に開示される組換え型AAVウイルスが、HIV感染に対して効果的且つ頑強な免疫学的予防を提供するために用いることができることを示す。
【0200】
(実施例8)b12抗−HIV抗体の発現
図12Aは、AAv投与青に採取された血清サンプルについての、総ヒトIgG ELISAにより決定した、用量に応じた、経時的なb12発現を示すプロットである(n=8)。ルシフェラーゼ−発現ベクターを受けたマウスは、検出可能なヒト抗体を示さなかった(n=12)。
図12Bは、投与1日前、ヒトPBMCsの適合的導入の3週間後、及び、HIVに結合することができる抗体の断片を測定するためのgp120特異的ELISAにより決定される図示した用量のAAVの筋肉内投与の15週間後における、血清中のb12の濃度を示す(n=8−12)。
図12Cは、b12の範囲を発現する動物への10ngのNL4−3の静脈内投与の結果として、huPBMC−NSGヒト化マウスにおけるCD4細胞欠損を示し、感染に対する保護に必要な抗体の最小用量を示す。
図12A及びCに、平均及び標準誤差を示し、プロットBは個別の動物及び平均を示す。
【0201】
(実施例9)抗−HIV保護におけるb12及びVRC01抗体の比較
この実施例では、b2抗体をVRC01抗体と比較し、抗−HIV抗体がインビトロで90%超の血液循環のHIV株を中和することを見出した。b12又はVRC01のいずれかを発現するベクターの用量を減少させながらNSGマウスに投与し、経時的な抗体の発現をモニターした。
【0202】
両方の抗体について、用量依存的な発現が分析された全ての時間点において観察された(
図12A、及び
図13A)。様々なレベルのルシフェラーゼ又は抗体を発現するマウスに、huPBMCを適合的に生着させた。投与直前に、gp120−特異的な酵素免疫測定法(ELISA)により各群における効果的な抗体濃度を確認した(
図12B、及び
図13B)。10ngのHIVによる静脈内投与の後、CD4細胞をモニターして抗体濃度の影響を決定した。平均34μg/mLのb12濃度、及び8.3μg/mLのVRC01濃度が、感染からマウスを保護した(
図12C、及び
図13C)。低能度のb12及びVRC01を発現する群は、部分的に保護され、検出可能なCD4の喪失は見られない動物も、CD4細胞の欠損の遅れを示す動物もあった。
【0203】
(実施例10)インフルエンザ感染からの保護
この実施例では、本願明細書に開示されるAAVベクターを、抗−インフルエンザ抗体を発現する組換え型AAVウイルスを産生するために用い、組換え型AAVウイルスがインフルエンザウイルス感染からマウスを保護するのに効果的であることが見出された。
【0204】
(実験材料及び方法)
[インフルエンザウイルス産生及び定量]
この実施例におけるマウス感染に用いられる全てのインフルエンザウイルスは、その6つの内部遺伝子(PB2、PB1、PA、NP、M、及びNS)が、A/Puerto Rico/8/1934(H1N1)株に由来する。HA及びNA遺伝子は、下記の3つの株に由来し、下記の略号が与えられる:
(1)PR8:A/Puerto Rico/8/1934(H1N1)由来のHA及びNA、広く用いられている実験用株
(2)CA/09:A/California/07/2009(H1N1)由来のHA及びNA、ヒトにおける2009年豚由来のH1N1の大流行発生の所期に単離された株
(3)SI/06:A/Solomon Islands/3/2006(H1N1)由来のHA及びNA、季節性のヒトH1N1ワクチン株
【0205】
インフルエンザウイルスは、8−プラスミド 双方向逆遺伝学システムを用いて発生させた。手短に言えば、293T及びMDCK細胞を、10%ウシ胎仔血清(Omega Scientific)、100IU/mLペニシリン(Mediatech)、100μg/mLストレプトマイシン(Mediatech)、及び1%L−グルタミン(Mediatech)を添加したDMEM(Mediatech)中に維持した。293T及びMDCK細胞の共培養物を含む6−ウェル細胞培養皿(Corning)を、250ngの各8つのプラスミドを用いてコトランスフェクトした。トランスフェクション14時間後、培地を吸引し、細胞をPBSで1回洗浄し、インフルエンザ生育培地、及び3μg/mLのTPCK処理トリプシン(Sigma−Aldrich)を細胞に加えた。インフルエンザ成長培地は、0.01%ウシ胎仔血清、0.3%ウシ血清アルブミン(Invitrogen)、100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、及び100μg/mL塩化カルシウムを有する、Opti−MEM I(Invitrogen)からなる。72時間後、上澄みを回収し、インフルエンザ生育培地及び3μg/mLトリプシン中のほぼコンフルエントなMDCK細胞を含む15cm皿(Corning)に移した。72時間後、ウイルスの上澄みを培養し、2000×gで5分間遠心分離した。ウイルスの上澄みを取り除き、アリコットを−80℃で冷凍した。
【0206】
[プラークアッセイ]
インフルエンザウイルスを、Avicel(登録商標)微結晶性セルロースの被覆を用いて、MDCK細胞におけるプラークアッセイにより定量した。手短に、MDCK細胞を6ウェル細胞培養皿に播種した。細胞が95%コンフルエントになったとき、培地を取り除き、ウイルス種菌の連続的な10倍希釈を、最終容量1mLのインフルエンザ生育培地に加えた。40分後、種菌を吸引により取り除き、2.4%Avicel(登録商標)微結晶性セルロース、及び3μg/mLのTPCK処理トリプシンを含む4mLのインフルエンザ生育培地により置換した。プレートを37℃で3日間静置して生育した。被覆をその後吸引により取り除き、細胞層をPBSで2回洗浄し、細胞を20%エタノール中の0.1%クリスタルバイオレットで15分間染色した。この染色液をその後吸引により除去し、細胞を再びPBSで洗浄し、プラークを視認で数えてプラーク形成単位(PFU)の単位でウイルス力価を決定した。
【0207】
[マウス染色]
4〜5週齢の免疫適格性のBALB/cJ(BALB/c)及び免疫不全性のNOD/SCID/γ
−/−(NSG)マウスを、JAckson Laboratory(JAX)から入手し、高齢のマウスを用いた実験については、これらの動物を、インフルエンザ投与前に所定の期間障壁条件下で生育及び収容した。
【0208】
[インフルエンザ中和抗体のAAVベクターへのクローニング]
様々なインフルエンザ抗体の重鎖及び軽鎖可変領域に対応する配列を、合成し(Integrated DNA Technologies)、また、IgG1定常領域フレームワークを含むAAV導入ベクターにクローン化した。幾つかの例では、抗体遺伝子を、ビボにおける抗体産生を向上させるように最適化した。
【0209】
[マウスに対するAAV産生及び投与]
AAV産生及び静脈内注射を下記手順に従って行った。手短に言えば、1.2×10
8の293T細胞を、0.25:1:2の、80μgの興味の抗体をコードするベクター、pHEOP(Applied Viromics)、及びpAAV 2/8 SEED(University of Pennsylvania Vector Core)を用いてトランスフェクションした。上澄みを120時間かけて5回回収した。ウイルスを、100k MWCO遠心フィルター(Millipore)を通して100mMクエン酸ナトリウム、及び10mMトリスpH8からなるバッファ中に、透析濾過、濃縮、及びバッファ交換される前に、PEG沈殿及び塩化セシウム画分により精製し、アリコット及び−80℃で凍結した。アリコットを定量するために、ウイルスを凍結乾燥し、DNAseで処理し、前述(13)の通りqPCTにより滴定した。手短に言えば、ウイルス力価を、前述の滴定、精製した4E10抗体をコードするAAV2/8から生成した標準曲線を用いて、定量PCRにより決定した。ウイルスアリコットの感染力を、293T細胞に形質導入すること、且つELISAにより細胞上澄み液の抗体濃度を定量することによって、インビトロで確認した。
【0210】
[マウスのAAV形質導入、及び遺伝子発現の定量]
筋肉内注射の前に、組換え型AAVウイルスを凍結乾燥し、図示の用量にまで40μL容量のバッファ(100mMクエン酸ナトリウム、10mMトリスpH8)を用いて希釈した。マウスをイソフルラン吸入により麻酔し、ウイルスを40μLの一回注射として腓腹筋に投与した。
【0211】
生物発光イメージングを、IVIS200機器を用いて、特に、前述のように下記の修正により行った:生物発光イメージを、1.5mgのD−ル氏フェリン(Gold Biotechnology)の腹腔内注射後10分間撮った。ヒトIgGマウス血清の濃度を、精製したヒトIgG/Kappa(Bethyl)から作成した標準曲線を用いて、ELISを行うことによって決定した。
【0212】
[マウスのインフルエンザの投与]
インフルエンザウイルスを凍結乾燥し、20μL容量において図示の用量とするために、PBS中に希釈した。接種前に、マウスを軽量し、PBS中に希釈された2mgのケタミン及び0.2mgのキシラジンを含む200μLのカクテルの腹腔内注射により麻酔した。マウスを、20μLの希釈したウイルスの鼻腔内接種により、10μLを鼻孔を通して、インフルエンザで罹患させた。感染したマウスを毎日同じ時間に計量した。
【0213】
[GFPインフルエンザウイルス産生及び定量]
GFPをPB1部分にパッケージした、PB1フランク−GFPインフルエンザウイルスを、Bllom et al.Science 328:1272(2010)に記載の方法に従って精製した。Bllom et al.に記載の通り、PB1フランク−GFPウイルスを、喪失したPB1タンパク質をトランスで供給された、293T−CMV−PB1及びMDCK−SIAT1−CMV−PB1細胞において生育及びアッセイした。PB1フランク−GFPウイルスを、8−プラスミド双方向逆遺伝学システムを用いて、但し、標準的なPB1プラスミドをpHH−PB1フランク−eGFPにより置換して、形成した。これらのウイルスについて、他の5つの内部遺伝子(PB2、PA、NP、M、及びNS)を、マウス感染に用いられるウイルスに関するPR8株から由来させた。PR8、CA/09、及びSI/06由来のHA及びNAを有するウイルスに加えて、2つの追加のウイルスをこれらのアッセイにおいて用いた。
(1)JP/57:A/Japan/305/1957(H2N2)由来のHA及びNA、アジアでのインフルエンザの大流行由来の初期株
(2)Viet/04:A/Vietnam/1203/2004(H5N1)由来のHA、高病原性トリインフルエンザ株。このウイルスのNAは、実験用のA/WSN/1933 (H1N1)株に由来する。多塩基の切断部位をHAから除去した。
【0214】
PB1フランク−GFPウイルスをフローサイトメトリーにより定量した。MDCK−SIAT1−CMV−PB1細胞を、1mLのインフルエンザ生育培地中、ウェル当たり10
5細胞で、12ウェル皿(Corning)に播種した。播種の8時間後、ウイルスを1:10、1:100、及び1:1000で培地中に希釈した。ウェルを50μLのこれらの各希釈液を用いて感染させた。細胞を、250μLnoトリプシン−EDTA(Invitrogen)を用いた5分間のインキュベーション、トリプシンの吸引による除去、2%ウシ胎仔血清、及び2μg/mLのヨウ化プロピジウム(Invitrogen)を添加したPBS中での懸濁により、感染後16.5時間培養した。サンプルをFACS Caliburフローサイトメーター(Beckton−Dickinson)により分析し、0.3〜3%の間のGFP−陽性細胞のパーセントを有するサンプルを、ウイルス力価の定量のために用いた。力価をGFP−陽性細胞のパーセント、希釈因子、及びウェル当たり10
5細胞の総カウントから計算した。
【0215】
[中和アッセイ]
PB1フランク−GFPインフルエンザウイルス及びMDCK−SIAT1−CMV−PB1細胞を用いて行った。40μLのインフルエンザ生育培地を、57μLの培地を入れた列A以外、平底96ウェル組織培養皿(Corning)の全てのウェルに加えた。マウス血清サンプルを、3μLの血清を、57μLの列A中のインフルエンザ生育培地に加えることによって、連続的に希釈し、その後、1:3連続希釈を列Gまで行い、1:20の初期希釈物及び1:4.374×10
4の最終希釈物を得た。2×10
4のPB1フランク−GFPウイルスの感染粒子(フローサイトメトリータイターにより決定)を、20μL容量のインフルエンザ生育培地中のサンプルに加えた。希釈された血清及びウイルスの混合物を、37℃の5%CO
2インキュベータ中で1時間インキュベートした。インキュベーション後、20μL容量のインフルエンザ生育培地中の2×10
4のMDCK−SIAT1−CMV−PB1細胞を、MOIを1として全てのウェルに加えた。細胞のみのコントロール、これは、未変性のBALB/cマウス血清、ウイルスなし、を受けたものン、及び、ウイルスコントロール、これは未変性のBALB/cマウス血清を受けたものを各ウイルスについて含めた。プレートを37℃の5%CO
2インキュベータ中で18時間インキュベートした。インキュベーション後、40μLのPBS中の1.5%Triton X−100(Sigma−Aldrich)を各ウェルに加えて、最終濃度0.5%のTriton X−100を得て、プレートを室温で5分間インキュベートした。読み取りのため、100μLの各サンプルを不透明の96−ウェルプレート(Corning)に移した。GFP蛍光を、485nmの励起波長、515nmの発光波長、励起及び発光両方についてのスリット幅12nm、「最適」ゲインセット、500μsの積分時間、ウェル当たり5回読みで、初めから読み取るように構成された、Safire2 Plate Reader(Tecan)を用いて定量した。細胞のみのコントロールからのベースライン蛍光を全ての読み取り地から引いた。サンプルをウイルスコントロールに対して標準化した。
【0216】
[組織学]
インビボ感染実験の結論として、肺をマウスから除去し、この組織の半分を10%中和バッファホルマリン中に24時間含浸した。固定化後、組織をホルマリンから取り出し、標準的なパラフィン包埋及び操作を行うまで70%エタノール中に入れた。4ミクロン厚の切片を取り出し、ヘマトキシリン及びエオシン染色(H&E染色)を行った。スライドは、Olympus BS51 蛍光顕微鏡を用いて、病理学者(D.S.R.)により観察され、イメージをSPOT Insight Digital Camera(Diagnostic Instruments)を用いて得た。炎症を以下のように評価した;0=なし〜最小の炎症、1=細気管支中に時折の浸潤(10%未満の細気管支)、2=細気管支中に容易に同定される浸潤(10〜50%の細気管支)、3=実質性の浸潤及び/又は初期のパッチ状の線維症を伴う細気管支中に容易に同定される浸潤、4=>50%の浸潤を伴う細気管支、又は、細気管支、血管壊死、又は広範な線維症における、10〜50%の広範なネクローシスの上皮を伴う細気管支。スコアリングは、盲検により行われ、順序尺度はあらゆる統計試験について見積もられた。
【0217】
[RT−PCRによる相対的なウイルス定量]
肺組織を100μLPBS中でホモジナイズした。25μLのホモジネートをTRIzol氏訳(Invitrogen)を用いたRNA抽出のために用いた。精製したRNAをヌクレアーゼフリーの水に再懸濁し、RNA濃度を150ng/μLに標準化した。リアルタイムRT−qPCRを、qScript One−Step SYBR Green qRT−PCR Kit、Rox(Quanta Biosciences)を用いて、PR8Mに対してデザインされたプライマー、及びマウスリボソームタンパク質L32のみからなる内在性コントロールを用いて、行った。Forward−M:CAAGCAGCAGAGGCCATGGA (配列番号:36)、Reverse−M:GACCAGCACTGGAGCTAGGA (配列番号:37)、Forward−L32:AAGCGAAACTGGCGGAAAC (配列番号:38)、Reverse−L32:TAACCGATGTTGGGCATCAG (配列番号:39)。サンプルをTurbo DNAse kit(Invitrogen)を用いてDNAse処理し、下記のプログラムで、ABI7300Real−Time PCR System(Life Technologies)で3回実験した:50℃10分間、95℃5分間、40サイクルの95℃15秒間及び55℃30秒間、融解曲線分析。インプットされるRNAにおける変化の要因であるL32シグナルにより各サンプルを個別に標準化した。
【0218】
[インビボにおける抗−インフルエンザ抗体の発現]
未就職の全長F10又はCR6261抗インフルエンザ抗体を発現する組換え型AAVウイルスを産生した。1×10
11ゲノムコピー(GC)の組換え型AAVの筋肉内注射により、Balb/cマウスの腓腹筋に投与した。血清サンプルを毎週得て、ヒトIgGをSLISAにより定量した(
図14)。100μg/mLを超えるb12抗体の顕著な発現が見られた。対照的に、F10及びCR6261抗体の両方は、1週間に約1μg/mLの発現を示した。第7週まで血清の数μg/mLにまでゆっくりと上昇する前に、以下の時間点で検出できなかった。
【0219】
F10及びCR6251抗体のインビボ発現を向上させるため、F10及びCR6251抗体の各々の軽鎖をb12の軽鎖で置換したキメラ抗体コンストラクトを準備した。293T細胞のトランスフェクション後、b12軽鎖を対にしたときに、両抗体の実質的に高い発現が観察された。非未変性の軽鎖が抗体発現を向上させることを示した(
図15A)。天然の軽鎖の発現を向上させるために、b12又は4E10抗体のいずれかの軽鎖に由来する5’及び3’結合配列を含む変性した軽鎖可変領域のセット、を作製した。用いられた変性した軽鎖可変領域を
図15Bに挙げる。293T細胞のトランスフェクションの後、b12及び4E10由来の配列を含むF10O24軽鎖は、インビトロにおいて12倍の高い発現を示した(
図15C)。同様に、b12抗体由来の配列を有するCR6261LO13軽鎖を含むコンストラクトのトランスフェクションは、20倍の高い発現を示す(
図15D)。これらの変性抗体はインビトロ中和アッセイを用いて試験され、結果から変性の軽鎖を含む抗体はインフルエンザの2つの株を中和する能力を維持することが確認された。変性した掲載について見られる実質的に向上した抗体発現の点では、全ての後の実験を、F10LO24及びCR6261LO13、それぞれ、変性され、F10及びCR6261と称される配列を用いて行った。用いられた完全な可変領域配列は、キメラ軽鎖可変領域を含めて、配列番号:40〜43に与えられる。
【0220】
図16Aに示すように、1×10
11ゲノムコピー(GC)のAAVのBALB/cマウスへの1回の筋肉内注射により、注射1週間以内に検出可能な抗体が産生された。抗体濃度は、一過的に減少し、それに続く6〜8週に亘って増加し、50〜200μg/mLでプラトーに達し、40週の研究の期間維持された。
【0221】
[インビトロ中和アッセイ]
組換え型AAVウイルスで処理した動物由来の血清中和能力の大きさを決定するため、3つの異なるHAサブタイプ(H1、H2、及びH5)由来の5つの異なるヘマグルチニンを含むGFP−レポーターインフルエンザビリオンを用いて、インビトロ中和アッセイを行った。16Bに示すように、ネガティブコントロールの抗体(b12、HIVに対する抗体)を発現するマウス由来の血清は、テストされた5つの株のいずれかの感知できるほどの中和は示さなかった。対照的にF10又はCR6261のいずれかを発現する組換え型AAVウイルスを受けた動物由来の血清は、全ての5つの株を中和する顕著な能力を示した。
【0222】
(実施例10)
[インビボ保護]
マウスをインフルエンザ感染から保護するための組換え型AAVウイルスの能力を決定するために、組換え型ウイルスを動物に投与し、5週間抗体発現させた。インフルエンザ感染の直前に、約100〜200μg/mLのb12及びF10抗体の両方、並びに、0.1μg/mLから100μg/mLまでの広範な濃度のCR6261をマウスの血液循環中に観察した(
図17B)。CR6261を発現するマウスは、血清IgG濃度に対して逆比例する重量喪失を示し、この抗体の7.5μg/mLの最小血清濃度がCA/09感染由来の疾患を予防するために必要であることが示唆された。
【0223】
インビボにおけるVIPの他の株に対して保護する能力を試験するために、b12コントロール、又はF10抗体を発現する動物にSI/06株を投与した(
図17C)。コントロール抗体を発現するマウスは2週間の期間に亘って重量喪失を示した。対照的に、F10を発現するマウスは、SI/06投与後に疾患の徴候を示さなかった。
【0224】
インフルエンザを投与されたマウスにおいけるCA/09及びSI/06投与の、内在的な免疫反応に対する影響を決定するために、かかる動物由来の血清サンプルを中和アッセイを用いて分析した。コントロールのb12抗体を発現した以前に投与を受けたマウス由来の血清は、投与株に対して強い中和活性を示したが、異種株に対して検出可能な活性を示さなかった(
図17F〜G)。これらの結果から、広範な中和抗体の発現が疾患に対して保護し、追加的な、より効能ある、内在的な体液性免疫の形成を更に可能にすることを示唆した。
【0225】
この実施例は、本願明細書に開示される組換え型AAVウイルスが、様々なインフルエンザウイルスにより生じる感染に対する効果的な免疫学的予防を提供するために用いることができる。
【0226】
(実施例11)
[高齢且つ免疫不全の動物におけるインフルエンザ感染からの保護]
広範にインフルエンザ抗体を中和するF10及びCR6261由来の可変領域を発現する組換え型AAVウイルスを産生した。
【0227】
免疫不全のNOD/SCID/γ−/−(NSG)マウスは、適合性免疫を完全に欠くマウスであり、生まれつきの免疫反応の相当の低下を示す。F10及びCR6261抗体を発現する組換え型AAVウイルスを、kg当たり5×10
12GCの標準化された用量で、比較的若齢(14〜19週齢)又は高齢(46〜55週齢)であるNSG動物に対して投与した。遺伝子発現をゼノジェンイメージング又はELISAを用いて4週間に亘って定量した(それぞれ、
図18A及び18B)。両方の動物群は、全ての時間点でほぼ同様のレベルの遺伝子発現を示し、年齢はAAV由来の筋肉ベースの遺伝子発現の能力に影響を与えないことを示唆した。インビボ抗体発現がこれらの免疫不全動物をインフルエンザの投与から保護するのに十分であるかどうか決定するために、1000PFUの致死量のPR8株を若齢及び高齢のマウス群の両方に投与した(それぞれ、
図18C及び18D)。
【0228】
両方の場合において、ルシフェラーゼを発現するコントロールマウスにおいて、疾患及び重量喪失が見られ、研究コースに亘って全てのかかる動物が死亡した。対照的に、F10を発現する若年及び高齢のNSG動物の両方は、インフルエンザ誘導される重量喪失から完全に保護され、これらの濃度のF10抗体のみでも内在的な免疫反応の非存在下においてマウスを保護するのに十分であることを示唆した。F10がNSGマウスにおいて疾患を予防可能である程度を更に調査するために、動物を、研究期間を通して犠牲にし、肺組織の組織学的サンプルにおける炎症のレベルを評価した。ルシフェラーゼを発現する感染したマウスは、細気管支の実質的な管腔の炎症を感染5日後に示した(
図18E左)。対照的に、F10により保護された動物は、これらのマウスの実質的に低レベルの病理と一致して、非常に低レベルの炎症、及びきれいな細気管支を示した(
図18F)。F10抗体を発現するマウスは、ルシフェラーゼコントロールマウスと比較して、全ての時間点において実質的に低い炎症を示した。
【0229】
組換え型AAVウイルスのウイルス複製を制御する能力を直接定量するために、殺処分時に培養した肺組織由来の総RNAを抽出することによって、NSGマウスにおけるウイルスの量を決定し、定量的RT−PCRによりウイルスRNAを測定した。
図18Gに示すように、ルシフェラーゼを発現するマウス由来の肺は、実験過程を通して高いウイルス量を示した。対照的に、初期の時間点で分析されたF10を発現する動物は、内在的適合性免疫を欠如しているにも拘らず、F10抗体の存在下において劇的にウイルス複製が低減した結果として、経時的に実質的に減少する中程度のウイルスRNAレベルを含んでいた。
【0230】
(実施例12)
[骨肝臓胸腺(BLT)ヒト化マウスにおけるHIV感染からの保護]
骨肝臓胸腺(BLT)ヒト化マウスモデルは、腟内HIV感染の予防のよく確立されたモデルである。BLTヒト化マウスは、胎生組織を免疫不全のNOD/SCID/γC(NSG)レシピエントへの外科的移植、その後の造血幹細胞の移植により産生した。これらの移植された細胞は、HIV感染後の機能的免疫反応を生むことができるマウスにおいて鍛えられた完全な免疫細胞のレパートリーを生む。BLTモデルは、腟及び大腸を含む粘膜組織の有意なヒト細胞の生着を示すことが見出され、粘膜を濃縮したCCR5−向性JR−CSF HIVウイルスへの暴露に続く、HIV感染を支持することが示された。この実施例において、BLTマウスは、抗−HIV抗体を発煙する組換え型AAVウイルスの、粘膜経路を通したHIV感染を予防する能力を試験するために用いた。
【0231】
VRC01抗−HIV抗体又はルシフェラーゼタンパク質を発現する組換え型AAVウイルスを、本願明細書に記載される方法に従って産生した。VRC01抗体の粘膜表面におけるHIV感染を予防する効能を試験するために、BLT動物のコホートを産生し、VRC01を発現する組換え型AAVウイルスを、BLTマウスに投与して、100μg/mLの血清濃度のVRC01中和抗体、及びネガティブコントロールとしてのルシフェラーゼタンパク質のいずれかを発現する動物を生み出した。
【0232】
ヒト粘膜HIV感染の比較的低頻度な性質をモデル化するために、非濃縮のJR−CSF HIVウイルスの表面を傷つけない毎週の腟内投与という低用量の繰り返し投与の投与計画(レジメン)を採用した。HIVの投与計画の概要を
図19Aに示す。14週の期間、マウスを出血させ、種菌の表面を傷つけない腟内投与により、毎週50ngのJR−CSF HIVウイルスのp24を投与した。CD4細胞レベルを毎週フローサーとメトリーを用いて測定した(
図19B)。
図17Bに示すように、ルシフェラーゼを発現する動物におけるCD4+細胞について、VRC01を産生するものと比較して、中程度しかし統計学的に有意な減少があった。繰り返しのHIVの膣内投与の13週後、殺処分時のHIVプラズマウイルス量をAbbott RealTime HIV−1 Viral Load qPCR assay(このアッセイの検出限界は200コピー/mL)により測定した。結果を
図19Cに示し、ルシフェラーゼを発現する全ての動物は感染する一方、VRC01を発現する8つ中2つのマウスしかウイルス複製の実質的なエビデンスを示さないことを明らかにする。これらの結果は、抗−HIV抗体を発現する組換え型AAVウイルスが、BLTマウスにおける粘膜HIVを予防することができることを示す。
【0233】
(実施例13)
[FVBマウスにおけるC型肝炎ウイルス(HCV)抗体の産生]
この実施例は組換え型AAVウイルスがビボで高レベルのHCV抗体を産生するために用いられることを例示する。
【0234】
B12、AR3A、及びAR3B抗体のコード配列を含むAAVベクターを構築した。AAVベクターは、それぞれ、B12、AR3A、及びAR3B抗体を発現する組換え型AAVウイルスを産生するために用いられる。組換え型AAVウイルスはFVBマウスに投与される。動物の血清中の対応する抗体の発現レベルを毎週測定した。結果を
図20に示す。
図20に示すように、HCV抗体の相当なレベルが動物中で産生した。
【0235】
(実施例14)
[HIV感染の予防]
この実施例は、HIV感染の発症のリスクにある患者の免疫学的予防を例示する。
【0236】
組換え型AAVを、抗−HIV中和抗体をコードするポリヌクレオチドを含むAAV導入ベクターを用いて産生した。特に限定されることなく、b12抗−HIV抗体、2G12抗−HIV抗体、4E10抗−HIV抗体、2F5抗−HIV抗体、及びこれらのあらゆる変異体を含む、あらゆる公知の抗−HIV中和抗体を用いることができる。例えば、CASIプロモーター、抗−HIV中和抗体のコード配列、WPRE及びSSV40ポリ(A)配列を有するAAV導入ベクターを用いることができる。かかるAAV導入ベクターの例は、配列番号:17〜21、24に示されるベクターを含むベクターを含む。患者は、HIV感染の発症のリスク時に同定され、有効量の組換え型AAVを投与された。組換え型AAVは筋肉内注射により患者に投与された。組換え型AAVは抗−HIV抗体を患者中で発現させ、患者がHIV注射で発症するリスクを低減する。患者中のHIVウイルス量を、患者が組換え型AAVを投与された後の様々な時間点で決定することができる。適切な用量(すなわち、抗−HIV抗体の発現レベル)及び治療計画は、特に限定されることなく、投与の経路及び患者へのHIV暴露の程度を含む多くの要因に基づいて、当業者が容易に決定することができる。免疫学的予防の効能を、AAV治療を受けていない患者と比較したHIV感染のリスクを低減を観察することによって評価した。
【0237】
(実施例15)
[大腸ガンの治療]
この実施例は、大腸ガンを受けている又は発症のリスクにある患者の治療を例示する。
【0238】
組換え型AAVを、IMC−C225抗体(Cetuximab(登録商標)、上皮増殖因子受容体(EGFR)抗体)をコードするポリヌクレオチドを含むAAV導入ベクターを用いて産生した。例えば、IMC−C225抗体のコード配列は、CASIプロモーター、WPRE、及びSV40ポリ(A)配列を有するAAV導入ベクター中に挿入することができる。大腸ガンを受けている又は発症のリスクにある患者を、同定し、有効量の組換え型AAVを投与した。組換え型AAVを筋肉内注射により患者に投与した。組換え型AAVはIMC−C225抗体を患者中で発現させ、患者中でのガンの進行を阻害した。適切な用量(すなわち、IMC−C225抗体の発現レベル)、及び治療計画は、特に限定されることなく、投与経路及び患者の疾患状態を含む、多数の因子に基づいて、当業者が容易に決定することができる。治療効果は、疾患進行の遅延又は緩徐、疾患状態の寛解又は緩和、及び緩解を観察することによって評価された。
【0239】
(実施例16)
[感染の予防]
この実施例は、HCV感染の発症のリスク時の患者の免疫学的予防を例示する。
【0240】
組換え型AAVを、抗−HCV中和抗体をコードするポリヌクレオチドを含むAAV導入ベクターを用いて産生した。特に限定されることなく、AR3A、抗−HCV抗体、AR3B抗−HCV抗体、AR4A抗−HCV抗体、及びこれらのあらゆる変異体を含む、あらゆる公知の抗HCV中和抗体を用いることができる。例えば、CASIプロモーター、抗−HCV中和抗体のコード配列、WPRE、及びSV40ポリ(A)配列を有するAAV導入ベクターを用いることができる。かかるAAV導入ベクターの例は、配列番号22、23、28に示されるベクターを含む。
【0241】
患者は、HCV感染の発症のリスク時に同定され、有効量の組換え型AAVを投与される。組換え型AAVは、筋肉内注射により患者に投与される。組換え型AAVは患者中でAR3A抗体を発現し、患者がHCV注射で発症するリスクを低減する。適切な用量(すなわち、抗−HCV抗体の発現量)及び治療計画は、特に限定されることなく、投与経路及び患者に対するHCV暴露の程度を含む多数の因子に基づいて、当業者が容易に決定することができる。免疫学的予防能力は、AAV治療を受けていない患者と比較した、HCV感染のリスクの低減を観察することによって、評価された。
【0242】
(実施例17)
[インフルエンザウイルス感染の予防]
この実施例は、インフルエンザウイルス感染の発症のリスク時の患者の免疫学的予防を例示する。
【0243】
組換え型AAVを抗−インフルエンザ中和抗体をコードするポリヌクレオチドを含むAAV導入ベクターを用いて産生した。特に限定されることなく、F10抗−インフルエンザ抗体、CR6261抗−インフルエンザ抗体、FI6抗−インフルエンザ抗体、TCN32抗−インフルエンザ抗体、及びこれらのあらゆる変異体を含む、あらゆる公知の抗−インフルエンザ中和抗体を用いることができる。例えば、CASIプロモーター、抗−インフルエンザ中和抗体のコード配列、WPRE及びSV40ポリ(A)配列を有するAAV導入ベクターを用いることができる。かかるAAV導入ベクターの例は、配列番号:25〜27、29、30で示されるベクターを含む。
【0244】
患者は、インフルエンザ感染の発症のリスク時に同定され、有効量の組換え型AAVを投与される。組換え型AAVは、筋肉内注射により患者に投与される。組み換え型AAVは患者中でF10抗体を発現し、患者がインフルエンザウイルス注射で発症するリスクを低減する。適切な用量(すなわち、抗−インフルエンザ中和抗体の発現レベル)及び治療計画は、特に限定されることなく、投与経路及び患者に対するインフルエンザウイルス暴露の程度を含む多数の因子に基づいて、当業者が容易に決定することができる。患者中のインフルエンザウイルス量は、患者が組換え型AAVを投与された後の様々な時間点で決定することができる。
【0245】
少なくとも幾つかの前述の実施形態において、そのような置換が技術的に可能ではないわけでない場合には、ある実施形態において用いられた1つ又は複数のエレメントは、別の実施形態において交換可能に用いることができる。請求に係る主題の範囲から逸脱することなく、様々な他の脱落、追加、及び変性を上記の方法及び構造に対してなすことができることは、当業者によって理解される。全てのかかる変性及び変更は、添付の請求項により規定されるように、主題の範囲内とすることを意図する。
【0246】
本願明細書における実質的にあらゆる複数及び/又は単数形の使用に関して、文脈及び/又は応用に適切であるように、当業者は複数から単数に、及び/又は単数から複数に置き換えて理解することができる。様々な単数/複数の置換は、明確性のために本願明細書に明示的にと説明され得る。
【0247】
当業者により理解される。一般的に、本願明細書、及び特に添付の請求項(例えば、添付の請求項の本体部)で用いられる用語は、一般的に、「開いた(open)」用語(例えば、「含む(including)」という用語は、「特に限定されることなく、含む(including but not limited to)」)と解釈されるべきであり、「有する(having)」という用語は、「少なくとも有する(having at least,)」と解釈されるべきであり、「含む(includes)」という用語は、「特に限定されることなく、含む(includes but is not limited to,)」と解釈されるべきである)を意図する。更に、当業者は、特定の番号の組み込まれた請求項の引用が意図される場合、かかる意図は明示的に請求項中に記載され、そのような記載がない場合、かかる意図は存在しない。例えば、理解の助けとして、以下に添付する請求項は、請求項の引用を導入する「少なくとも1つ(at least one)」、及び「1つ又は複数の(one or more)」という導入句の使用を含むことができる。しかしながら、 たとえ、同じ請求項が、導入句「1つ又は複数の(one or more)」又は「少なくとも1つ(at least one)」と、「a」又は「an」等の不定冠詞とを含む(例えば、「a」及び/又は「an」が、「1つ又は複数の(one or more)」又は「少なくとも1つ(at least one)」を意味すると解釈されるべき場合であっても、かかる句の使用が、不定詞「a」又は「an」による請求項の引用の導入が、1つのみのかかる引用を含む実施形態に対するかかる導入された請求項の引用を含む、あらゆる特定の請求項を限定することを示唆すると解されるべきでない;同様のことが請求項の引用の導入に用いられる不定冠詞の使用についても当てはまる。加えて、たとえ、特定の番号の導入された請求項の引用が明示的に記載されていたとしても、当業者はかかる引用が少なくとも記載された番号を意味するものと解されるべきであると理解する(例えば、「2つの引用」の裸の引用は、他の修正なく、少なくとも2つの引用、又は2以上の引用を意味する)。更には、「少なくともA、B及びC等の1つ」に類する慣用句が用いられる例では、概して、かかる構成は、当業者がかかる慣用句を理解するであろう意味を意図する(例えば、「少なくともA、B、及びCの1つを有するシステム」は、特に限定されることなく、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A及びBを共に、A及びCを共に、B及びCを共に、並びに/又は、A、B及びCを共に、有するシステムを含む)。「少なくとも1つのA、B、又はC等の1つ」に類する慣用句が用いられる例では、概して、かかる構成は、当業者がかかる慣用句を理解するであろう意味を意図する(例えば、「少なくともA、B、又はCの1つを有するシステム」は、特に限定されることなく、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A及びBを共に、A及びCを共に、B及びCを共に、並びに/又は、A、B及びCを共に、有するシステムを含む)。明細書、請求項、又は図面のいずれかにある、2つ以上の代替用語を示す、実質的にあらゆる離接語及び又は句は、1つの用語、いずれかの用語、又は両方の用語を含む可能性を考慮するものと理解されたい。例えば、「A又はB」は、「A」、「B」又は「A及びB」の可能性を含むものと理解されたい。
【0248】
加えて、本開示の特徴又は態様がマーカッシュグループの形式で記載される場合には、当業者は、当該開示がマーカッシュグループのあらゆる個々の要素又は要素のサブグループについても記載されることを認識するであろう。
【0249】
当業者に理解されるように、明細書を提供するという点等、あらゆる全ての目的について、本願明細書に開示されるあらゆる範囲は、そのあらゆる全ての部分的範囲及び部分的範囲の組み合わせも包含する。挙げられているあらゆる範囲は、同範囲を少なくとも半分、三分の一、四分の一、五分の一、十分の一等とすることを、十分に、記載しまた可能にする。非制限例として、本願明細書に記載される各範囲は、容易に、下三分の一、真ん中三分の一、上三分の一等にすることができる。「up to」、「at least」、「greater than」、「less than」等のあらゆる言葉、及びその同等物は、記載された数字を含み、上記議論のようにその後部分的範囲にすることができる範囲を指すことを、当業者によって理解される。最後に、当業者に理解されるように、1つのグループは各個々の要素を含む。このように、例えば、1〜3項目を有するグループは、1、2又は3項目を有するグループを指す。同様に1〜5項目を有するグループは、1、2、3、4又は5項目を有するグループ等を指す。
【0250】
様々な態様及び実施形態が本願明細書に開示されるが、他の態様及び実施形態は当業者に明らかである。本願明細書に開示される様々な態様及び実施形態は例示の目的であり、限定を意図するものでなく、真の範囲及び精神は下記の請求項により示される。