特許第6091454号(P6091454)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6091454
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】断熱材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/02 20060101AFI20170227BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20170227BHJP
   B32B 3/26 20060101ALI20170227BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20170227BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   F16L59/02
   B32B7/02 105
   B32B3/26 Z
   B05D5/00 E
   B05D7/24 303C
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-40043(P2014-40043)
(22)【出願日】2014年3月3日
(65)【公開番号】特開2015-164765(P2015-164765A)
(43)【公開日】2015年9月17日
【審査請求日】2015年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100780
【氏名又は名称】アイシン化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
(72)【発明者】
【氏名】寺本 正澄
(72)【発明者】
【氏名】大谷 淳
(72)【発明者】
【氏名】岡山 修
(72)【発明者】
【氏名】荒深 眞
【審査官】 赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−066578(JP,A)
【文献】 特開2000−220095(JP,A)
【文献】 特開2001−259514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00− 43/00
B05D 1/00− 7/26
C08J 7/04− 7/06
C09D 1/00− 10/00,
101/00−201/10
F16L 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材の表面粗さRaを示す面が金属性粉末を10体積%以上含有する塗膜で被覆され、前記表面粗さRaと前記塗膜の膜厚との関係が以下の(1)乃至(3)のいずれかの関係にあり、
前記金属性粉末の平均粒径が1〜200μmの範囲内であり、
前記金属性粉末のアスペクト比(平均粒径/厚み)が10〜500の範囲内であることを特徴とする断熱材。
(1)前記表面粗さRaが30μm以下のとき、前記塗膜の最低膜厚が7μm
(2)前記表面粗さRaが30μmを越え60μm以下のとき、前記塗膜の最低膜厚が10μm
(3)前記表面粗さRaが60μmを越え300μm以下のとき、前記塗膜の最低膜厚が27μm
【請求項2】
前記金属性粉末の厚みが0.01〜10μmの範囲内である請求項1に記載の断熱材。
【請求項3】
前記部材の表面粗さRaを測定する工程、
前記表面粗さRaに応じ、前記塗膜の膜厚を決定する工程、
を含む請求項1又は2に記載の断熱材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮熱性塗膜をもつ断熱材とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の開発現場には、使用者等からの車室内居住空間の拡大の要求及び燃費向上の要求が寄せられる。これらの要求に応えるため、自動車のエンジンルームを狭くする検討や、過給機の採用を増大させる検討が行われている。しかし、これらの検討の結果、エンジンルーム内の種々の部品は以前よりも熱負荷を受けやすい環境下に置かれることになる。そこで、熱源からの熱による劣化を抑制するための、熱遮断部材が提案されている。
【0003】
特許文献1には、輻射熱遮断部材としてアルミニウムパネルを用いた車両用バッテリーカバーが記載されている。
【0004】
しかし、アルミニウムパネルを用いることにより、重量の増加が生じるし、また、煩雑な取り付け作業及び工数の増加が生じる。さらに、アルミニウムが大気と直接接することによるパネルの表面劣化及びそれに伴う輻射熱遮断性能劣化が懸念される。
【0005】
そこで、特許文献2に示すように、金属粉末を含む塗膜をもつ遮熱構造物が提案された。特許文献2には、塗膜の膜厚が8μmと薄くても十分な遮熱特性が発現されると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−035514号公報
【特許文献2】特開2012−066578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者が、特許文献2に開示の技術を種々の部材に適用したところ、部材の種類及び塗膜の膜厚により遮熱効果に差が観られることを知見した。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、好適な遮熱効果を奏する断熱材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者が遮熱効果の変化の原因を探求すべく、多くの試行錯誤を伴う試作及び分析を行ったところ、意外にも部材の表面粗さRaの違いにより、好適な塗膜の膜厚の範囲が異なることを見出した。すなわち、本発明の断熱材は、表面粗さRaを示す面を有する部材の前記面を、金属性粉末を10体積%以上で含有する塗膜によって被覆し、このときの前記表面粗さRaと前記塗膜の膜厚との関係が以下の(1)乃至(3)であることを特徴とする。
(1)前記表面粗さRaが30μm以下のとき、前記塗膜の最低膜厚が7μm
(2)前記表面粗さRaが30μmを越え60μm以下のとき、前記塗膜の最低膜厚が10μm
(3)前記表面粗さRaが60μmを越え300μm以下のとき、前記塗膜の最低膜厚が27μm
ここで、最低膜厚7μmとは、塗膜の膜厚が少なくとも7μm以上有ればよいことを指す。最低膜厚10μm、最低膜厚27μmも同様である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の断熱材は、塗膜の遮熱効果によって好適な断熱効果を奏する。なお、部材が発泡部材のときは、部材の発泡による断熱効果に加えて塗膜による遮熱効果により更に断熱効果が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の断熱材の一態様を示す断面模式図である。
図2】表1の結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の断熱材は、表面粗さRaを示す面を有する部材に、金属性粉末を10体積%以上で含有する塗膜を前記部材の前記面に被覆した構造を有する。
【0013】
本発明の断熱材は好適な断熱効果を奏するので、断熱効果を要求される部材として用いることができる。本発明の断熱材は、熱変動が生じるのが好ましくない物の周辺に配置されるか、熱源に対向して又は熱源の周辺に配置されるのが好ましい。例えば、本発明の断熱材は、自動車床下の排気管に対向する箇所、エンジンルームのエンジンに対向する箇所、ダッシュパネルのエンジン側、バッテリー周辺、瓦などの屋根材周辺や内外壁材周辺、クーラーボックス周辺、冷凍庫周辺、飲食品庫周辺、冬季の水道管周辺に配置されるのが好ましい。また、本発明の部材をダッシュパネル、バッテリーカバー、屋根材、内外壁材、クーラーボックス、冷凍庫、飲食品庫、各種容器などの材料として用いても良い。
【0014】
本発明の断熱材を配置する際には、熱源側からみて、部材、塗膜の順となるよう配置するのが好ましい。本発明の断熱材をこのように配置すると、熱源からの対流や伝導による熱の断熱が部材で行われるとともに、部材によって輻射エネルギーが抑制されることにより塗膜からの輻射熱の放射が低減される。したがって、対流、伝導、輻射による熱を効率よく断熱することが可能となる。
【0015】
部材としては、熱源に対向して配置可能なものであればよい。部材の材料としては、金属、セメントなどの無機材料、樹脂、ゴム、木材などの有機材料を例示することができる。断熱性の観点からは、熱伝導性の低い材料が好ましい。また、断熱材の軽量化の観点からは、比較的密度が低い材料が好ましく、同じ種類の材料であっても空隙率のより高い材料が好ましい。空隙率の高い材料は熱伝導性が低いので、この点でも好ましい。具体的に好適な材料としては、発泡させながら製造した発泡合成樹脂、合成ゴムを挙げることができる。発泡合成樹脂の材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル、ユリア樹脂、シリコーン、ポリイミド、ポリアミド、ABS樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、PET樹脂、アクリル樹脂、並びにこれらのポリマーを形成するモノマー各種を相互に組み合わせた共重合体を挙げることができる。合成ゴムとしては、ニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムを挙げることができる。
【0016】
表面粗さRaは、JIS B 0601の算術平均粗さRaを意味する。すなわち、表面粗さRaは部材の面の基準長さにおける高さの絶対値の平均である。
【0017】
塗膜は、前記部材の表面粗さRaを示す面を被覆する膜であり、金属性粉末を10体積%以上含有する。
【0018】
金属性粉末は、表面が金属からなる粉末である。すなわち、金属性粉末は、粉末すべてが金属のものでも良いし、ガラス、雲母又はタルクなどの無機粉末の表面に金属層を形成させた粉末でも良い。なお、無機粉末表面に金属層を形成するには、蒸着法、スパッタリング法などのPVD法、あるいは無電解めっきなどのCVD法を用いればよい。粉末の表面に金属が存在することで、金属性粉末は近赤外線、中赤外線、遠赤外線などの熱線を反射することができる。
【0019】
上記金属としては、近赤外線、中赤外線、遠赤外線などの熱線を好適に反射するものが好ましい。好ましい金属として、アルミニウム、金、銀、インジウム、銅などを挙げることができる。これらの金属は、熱線に対する反射率が95%以上を示すと言われている。特に、波長4μmの遠赤外線の反射率が99%と高いアルミニウムが最も好ましい。
【0020】
金属性粉末の形状は、熱線の反射面となり得る平面を有するものが好ましく、いわゆる鱗片状のものがより好ましい。金属性粉末の平均粒径と厚みとの関係でいうと、アスペクト比(平均粒径/厚み)が10〜500の範囲内のものが好ましく、30〜300の範囲内のものがより好ましく、50〜200の範囲内のものがさらに好ましい。アスペクト比が10〜500の範囲内の金属性粉末であれば、塗膜形成の際、部材の表面と平行に、金属性粉末の平面が配向して配置されやすい。その結果として、金属性粉末が部材の表面を効率的に被覆することができ、効果的に熱線を反射することができる。
【0021】
なお、平均粒径とは、金属性粉末を一般的なレーザー回折式粒度分布測定装置で測定した場合のD50の値を意味する。また、厚みとは、金属性粉末の最大平面を底面としたときの高さを意味する。金属性粉末の平均粒径は1〜200μmの範囲内が好ましく、5〜150μmの範囲内がより好ましく、10〜100μmの範囲内がさらに好ましく、30〜70μmの範囲内が特に好ましい。金属性粉末の平均粒径が1μm未満であると熱線の乱反射が生じやすくなり、その結果として、塗膜を多くの熱線が通過して、本発明の断熱材の断熱効果が軽減する恐れがある。金属性粉末の平均粒径が200μmを超えると、塗膜となる塗料を作製する製造器具や製造方法に制限が生じたり、断熱材の外観が損なわれる恐れがある。金属性粉末の厚みは0.01〜10μmの範囲内が好ましく、0.05〜7μmの範囲内がより好ましく、0.1〜5μmの範囲内がさらに好ましく、0.2〜3μmの範囲内が特に好ましい。
【0022】
塗膜において、金属性粉末は10体積%以上で存在すればよいが、好ましくは10〜60体積%であり、より好ましくは10〜30体積%であり、さらに好ましくは15〜25体積%である。
【0023】
塗膜は膜形成剤を含有するのがよい。膜形成剤は、膜を形成できる材料を意味する。膜形成剤の存在により、塗膜の部材からの脱落や、金属性粉末の塗膜からの脱落を好適に抑制できる。塗膜は膜形成剤を90体積%未満含有するのがよく、好ましくは40〜90体積%であり、より好ましくは70〜90体積%であり、さらに好ましくは75〜85体積%である。一般的な膜形成剤は赤外線等の熱線を吸収する性質を有するため、塗膜における膜形成剤の量が90体積%以上となると、熱が塗膜内に過剰に残存する恐れがある。
【0024】
具体的な膜形成剤としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン樹脂、ABS樹脂、アクリロニトリルスチレン共重合体、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、PET、PBT、ポリイミド、ポリアミドイミド、熱可塑性エラストマなどの熱可塑性樹脂、ニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなどのゴム類、ポリオールとイソシアネートからなるウレタン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂などの熱硬化性樹脂を挙げることができる。また、これらの具体的なポリマーの一部を化学変換した誘導体を膜形成剤として採用しても良い。膜形成剤としては、できるだけ熱線の吸収率が低いものを選択することが望ましい。
【0025】
部材と塗膜との接着性を考慮すると、膜形成剤の材料としては部材の材料と化学構造が類似するものや、部材の材料との親和性が高いものが好ましい。例えば、部材がポリオレフィンを材料とするものであれば、膜形成剤の材料はポリプロピレン等のポリオレフィン骨格を有する樹脂が好ましく、特に、塩素化ポリエチレンや塩素化ポリプロピレンなどの、ポリオレフィン骨格に塩素等のハロゲンが付加した樹脂が好ましい。
【0026】
本発明の断熱材は、部材の表面粗さRaと塗膜の膜厚との関係が以下(1)乃至(3)のいずれかの関係にあることを特徴とする。
(1)前記表面粗さRaが30μm以下のとき、前記塗膜の最低膜厚が7μm
(2)前記表面粗さRaが30μmを越え60μm以下のとき、前記塗膜の最低膜厚が10μm
(3)前記表面粗さRaが60μmを越え300μm以下のとき、前記塗膜の最低膜厚が27μm
【0027】
(1)について説明する。表面粗さRaは30μm以下であれば良い。あえて表面粗さRaの下限値を示すと1μm、2μm、10μmを挙げることができる。塗膜の膜厚は7μm以上であれば良い。あえて膜厚の上限値を示すと150μm、200μmを挙げることができる。
【0028】
(2)について説明する。表面粗さRaは30μmを越え60μm以下であれば良く、このときの塗膜の膜厚は10μm以上であれば良い。あえて膜厚の上限値を示すと150μm、200μmを挙げることができる。
【0029】
(3)について説明する。表面粗さRaは60μmを越え300μm以下であれば良く、このときの塗膜の膜厚は27μm以上であればよい。あえて膜厚の上限値を示すと150μm、200μmを挙げることができる。
【0030】
なお、塗膜の膜厚は部材を被覆する塗膜の厚みであり、本発明の実施形態では以下の方法で測定した膜厚tを塗膜の膜厚としている。すなわち、後述する塗膜形成工程において、部材と共に鋼板を配置する。そして、該部材と該鋼板に対し、単位面積当たりの塗布量が同量となるように、塗膜形成液を塗布する。そうして得られた鋼板上の膜厚tを塗膜の膜厚としている。
【0031】
本発明の断熱材における塗膜には、金属性粉末及び膜形成剤以外の成分は含まない方がよい。塗膜に他の成分が存在すると、本発明の断熱材の断熱性能が低下する恐れがある。しかしながら、本発明の断熱材における塗膜には、タレ止め剤、シランカップリング剤、可塑剤などの各種助剤、有機顔料、無機顔料などを、断熱性能に特段の影響が無い範囲、例えば5質量%以下で含むこともできる。
【0032】
本発明の断熱材の製造方法について説明する。
本発明の断熱材の製造方法は、断熱材の部材の表面粗さRaを測定する工程(以下、「表面粗さRa測定工程」ということがある。)と、前記表面粗さRaに応じ塗膜の膜厚を決定する工程(以下、「膜厚決定工程」ということがある。)を有することを特徴とする。
【0033】
表面粗さRa測定工程において、断熱材の部材の表面粗さRaは、一般的なレーザー顕微鏡を用いて、部材の表面を例えば基準長さ500μmで測定すればよく、本発明の実施においては基準長を約500μmとして測定した。
【0034】
膜厚決定工程では、表面粗さRa測定工程で得られた表面粗さRaに応じ、上記(1)乃至(3)に記載の範囲内の膜厚を決定する。
【0035】
本発明の断熱材の製造方法について、より具体的に説明する。
まず、塗膜を形成させるための塗料を作製する工程、つまり金属性粉末、膜形成剤及び溶媒を含む塗膜形成液を準備する工程(以下、「塗膜形成液準備工程」ということがある。)について説明する。この工程は、表面粗さRa測定工程及び膜厚決定工程の前に行われても良いし、後に行われても良い。
【0036】
溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、エチルメチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル系溶媒、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族溶媒、水を挙げることができる。溶媒としては、上述の具体的なものを単独で用いても良いし、又は併用してもよい。環境への影響を考慮すると、水を選択するのが好ましい。
【0037】
塗膜形成液において、金属性粉末及び膜形成剤の合計量と溶媒との配合質量比は、(金属性粉末及び膜形成剤の合計量):(溶媒)=10:90〜70:30の範囲内が好ましく、20:80〜60:40の範囲内がより好ましく、30:70〜50:50の範囲内が特に好ましい。
【0038】
また、塗膜形成液には、金属性粉末、膜形成剤及び溶媒を好適に分散又は溶解させるために、界面活性剤を加えても良い。界面活性剤としては、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤を例示することができる。その配合量は、塗膜形成液全体に対して、0.01〜1質量%程度が好ましい。
【0039】
次に、塗膜形成液を部材に塗布し、塗膜を形成する工程(「塗膜形成工程」ということがある。)について説明する。この工程は表面粗さRa測定工程及び膜厚決定工程の後に行われる。
【0040】
塗布方法は、従来公知の方法を適宜採用すれば良い。特に、スプレーガンを用いて塗布を行うことが、作業の簡便性、金属性粉末の配向性の点から好ましい。
【0041】
塗膜形成工程では、塗布対象となる部材の横に鋼板を配置し、部材と共に鋼板にも単位面積あたり同量の塗膜形成液の塗布を行う。塗膜形成液を部材及び鋼板に塗布し、そして、鋼板を乾燥してその膜厚tを測定する。測定された膜厚tが膜厚決定工程で決定された膜厚に合致しているか否かを確認しながら、塗膜形成工程を実施するのが好ましい。なお、塗膜形成液の塗布量と膜厚との関係が把握できた場合には、鋼板の配置及び鋼板への塗膜形成液の塗布を行わなくても良い。
【0042】
塗膜形成液の塗布後には、溶媒を除去するための乾燥を行う。そして、部材の単位面積当たりの塗膜と同量の塗膜を形成させた鋼板上の膜厚tを、本発明の断熱材における膜厚とする。
【0043】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
【実施例】
【0044】
以下に、実験例等を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実験例によって限定されるものではない。
【0045】
(実験例1)
部材として、ニトリルブタジエンゴム製のゴムシートを準備した。このシート表面の表面粗さRaをレーザー顕微鏡VK−9710(株式会社キーエンス)を用いて基準長さ約500μmで測定した。このゴムシートの表面粗さRaは2μmであった。
ミキサーを用いて、金属性粉末としてのアルミニウム粉末、膜形成剤としての塩素化ポリオレフィン、及び溶媒としての水を混合し塗膜形成液を得た。なお、塗膜形成液中のアルミニウム粉末、塩素化ポリオレフィン及び水の配合質量比は、15:23:62であった。また、アルミニウム粉末としては、平均粒子径54μm、厚さ0.5μm(アスペクト比108)のものを用いた。
スプレーガンを用い、部材に塗膜形成液を塗布した。塗布時には、部材の横に鋼板を配置し、部材と共に鋼板にも単位面積あたり同量の塗布を行った。
塗膜形成液を塗布した後の部材と鋼板を室温で10分間放置し、その後、80℃で15分間乾燥し、部材上及び鋼板上に塗膜を形成させた。鋼板上の塗膜の膜厚は5μmであった。
塗膜が形成された部材を実験例1の断熱材とした。実験例1の断熱材における塗膜には金属性粉末が20体積%で含まれている。なお、以下の実験例2〜30で用いた塗膜形成液は実験例1のものと同一であり、実験例2〜30の塗膜にも金属性粉末が20体積%で含まれている。
【0046】
(実験例2)
膜厚を10μmとした以外は実験例1と同様の方法で、実験例2の断熱材を得た。
【0047】
(実験例3)
膜厚を20μmとした以外は実験例1と同様の方法で、実験例3の断熱材を得た。
【0048】
(実験例4)
膜厚を30μmとした以外は実験例1と同様の方法で、実験例4の断熱材を得た。
【0049】
(実験例5)
膜厚を50μmとした以外は実験例1と同様の方法で、実験例5の断熱材を得た。
【0050】
(実験例6)
膜厚を100μmとした以外は実験例1と同様の方法で、実験例6の断熱材を得た。
【0051】
(実験例7)
部材として、ポリプロピレン製の発泡シートを準備した。このシート表面の表面粗さRaをレーザー顕微鏡VK−9710(株式会社キーエンス)を用いて基準長さ約500μmで測定した。この発泡シートの表面粗さRaは10μmであった。
以下、実験例1と同様の方法で、膜厚5μmを有する実験例7の断熱材を得た。
【0052】
(実験例8〜12)
実験例7と同様の方法で膜厚を10μmとした実験例8、20μmとした実験例9、30μmとした実験例10、50μmとした実験例11、100μmとした実験例12、の各々の断熱材を得た。
【0053】
(実験例13)
部材として、エチレンプロピレンゴム製のゴムシートを準備した。このシート表面の表面粗さRaをレーザー顕微鏡VK−9710(株式会社キーエンス)を用いて基準長さ約500μmで測定した。このゴムシートの表面粗さRaは30μmであった。
以下、実験例1と同様の方法で、膜厚5μmを有する実験例13の断熱材を得た。
【0054】
(実験例14〜18)
実験例13と同様の方法で膜厚を10μmとした実験例14、20μmとした実験例15、30μmとした実験例16、50μmとした実験例17、100μmとした実験例18、の各々の断熱材を得た。
【0055】
(実験例19)
部材として、ウレタン樹脂製の発泡シートを準備した。このシート表面の表面粗さRaをレーザー顕微鏡VK−9710(株式会社キーエンス)を用いて基準長さ約500μmで測定した。このゴムシートの表面粗さRaは60μmであった。
以下、実験例1と同様の方法で、膜厚5μmを有する実験例19の断熱材を得た。
【0056】
(実験例20〜24)
実験例19と同様の方法で膜厚を10μmとした実験例20、20μmとした実験例21、30μmとした実験例22、50μmとした実験例23、100μmとした実験例24、の各々の断熱材を得た。
【0057】
(実験例25)
部材として、メラミン樹脂製の発泡シートを準備した。このシート表面の表面粗さRaをレーザー顕微鏡VK−9710(株式会社キーエンス)を用いて基準長さ約500μmで測定した。このゴムシートの表面粗さRaは300μmであった。
以下、実験例1と同様の方法で、膜厚5μmを有する実験例25の断熱材を得た。
【0058】
(実験例26〜30)
実験例25と同様の方法で膜厚を10μmとした実験例26、20μmとした実験例27、30μmとした実験例28、50μmとした実験例29、100μmとした実験例30、の各々の断熱材を得た。
【0059】
(評価例)
積分球を備えた赤外分光光度計を用い、実験例1〜30の断熱材の塗膜の赤外線反射率を測定した。赤外線の波長は5〜15μmとし、この範囲の波長における塗膜の平均反射率を算出させた。実験例1〜30の断熱材の部材の表面粗さRa、塗膜の膜厚、及び赤外線の平均反射率の結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
(評価)
表1の結果から明らかなように、膜厚が同じであっても部材の表面粗さRaの違いにより、赤外線の反射率が異なることがわかる。また、部材の表面粗さRaの違いにより、赤外線の反射率が好適な膜厚の範囲が異なることがわかる。表1の結果をグラフ化したのが図2である。図2から塗膜が好適に赤外線を65%以上反射するには以下に示す条件を満足すれば良いことが判明した。
(1)前記表面粗さRaが30μm以下のとき、前記塗膜の最低膜厚が7μm
(2)前記表面粗さRaが30μmを越え60μm以下のとき、前記塗膜の最低膜厚が10μm
(3)前記表面粗さRaが60μmを越え300μm以下のとき、前記塗膜の最低膜厚が27μm
【0062】
ここで表面粗さRaが10μm以下のとき塗膜の膜厚が10μm〜30μmになると、また表面粗さRaが30μmのとき膜厚が20μm〜30μmとなると80%以上の反射率を示しより好適である。なお、表面粗さRa300μmを除いて膜厚の増加に伴い反射率はピークをともなってピークの膜厚を越えると反射率は低下傾向を示す。しかし、この低下率は小さく、膜厚100μmで70%以上の反射率を維持している。このことから、膜厚を厚くしても、通常コストに見合った膜厚の範囲内では十分使用可能と判断できる。
【0063】
以下、赤外線の反射率と断熱性との関係について説明する。
通常、物体に入射した光は、物体に反射される反射光、物体に吸収される吸収光、物体を透過する透過光に分割される。エネルギー保存の法則から述べると、反射率+吸収率+透過率=1となる。
【0064】
ここで、光の一態様である赤外線は熱線の代表的なものであるから、上記実験例の断熱材における塗膜に入射された赤外線は反射光、吸収光及び透過光に分割される。そして、キルヒホッフの法則から、吸収率は放射率に等しい。
【0065】
そうすると、赤外線の反射率が高い塗膜ほど、赤外線の吸収率すなわち放射率、及び透過率が低くなり、その結果として、塗膜から輻射伝導される熱エネルギー、及び、塗膜を透過する熱エネルギーは減少する。すなわち、赤外線の反射率が高い塗膜ほど、断熱効果が高いといえる。
【0066】
なお、一般的に金属は赤外線を透過しないこと、すなわち透過率が0であることを考慮すると、金属性粉末が部材を十分に被覆している断熱材の場合、赤外線の透過光は無視してよい水準となる。
【符号の説明】
【0067】
1:断熱材、2:部材、3:塗膜、4:金属性粉末、5:膜形成剤
図1
図2