特許第6091488号(P6091488)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6091488
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】機能性粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/02 20060101AFI20170227BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   C09J7/02 Z
   B32B27/00 L
   B32B27/00 M
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-507835(P2014-507835)
(86)(22)【出願日】2013年3月22日
(86)【国際出願番号】JP2013058430
(87)【国際公開番号】WO2013146616
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2016年3月9日
(31)【優先権主張番号】特願2012-73515(P2012-73515)
(32)【優先日】2012年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000125978
【氏名又は名称】株式会社きもと
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】特許業務法人 山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 雄三
【審査官】 澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/126515(WO,A1)
【文献】 特開2010−247399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/00−7/04
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体、粘着層、セパレータをこの順に有し、前記支持体は前記粘着層と接する面の反対面に機能層を有する機能性粘着シートであって、
前記セパレータは前記粘着層と接する面に離型処理が施された離型処理層を有し、さらに前記粘着層と接する面とは反対面に、ピークカウント値Pcがピークカウントレベル+H=0.5μmで90カウント以上且つ、ピークカウントレベル+H=1.5μmで30カウント以上の粗面化処理が施されてなるものであり、
前記離型処理層は、シリコーン系樹脂またはシリコーンオイルを含むことを特徴とする機能性粘着シート。
【請求項2】
前記セパレータの粗面化処理のピークカウント値Pcがピークカウントレベル+H=0.5μmで200カウント以下且つ、ピークカウントレベル+H=1.5μmで130カウント以下である請求項1に記載の機能性粘着シート。
【請求項3】
支持体、粘着層、セパレータをこの順に有し、前記支持体は前記粘着層と接する面の反対面に機能層を有する機能性粘着シートであって、前記セパレータは、前記粘着層と接する面に離型処理が施され、さらに前記粘着層と接する面とは反対面に、粗面化剤と樹脂とを含む粗面化層が形成されており、前記粗面化層の表面は、ピークカウント値Pcがピークカウントレベル+H=0.5μmで90カウント以上且つ、ピークカウントレベル+H=1.5μmで30カウント以上の粗面であることを特徴とする機能性粘着シート。
【請求項4】
前記粗面化層の表面は、ピークカウント値Pcがピークカウントレベル+H=0.5μmで200ウント以下且つ、ピークカウントレベル+H=1.5μmで130カウント以下の粗面であることを特徴とする請求項3に記載の機能性粘着シート。
【請求項5】
前記粗面化層は、樹脂と無機粒子を含み、平均粒子径が2μm〜10μmの無機粒子を樹脂成分100重量部に対し5〜30重量部含むことを特徴とする請求項3又は4に記載の機能性粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能層(所定の機能が付与された層)を有する支持体、粘着層、セパレータを順次設けた機能性粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷適性、光拡散性、光防眩性などの機能を有する粘着シートが多く利用されている。また、印刷適性を有する粘着シートは、印刷用ラベル、プリンタメディア、建物用ウインドウフィルムなどに用いられる。
【0003】
このような、印刷適性を有する粘着シートは、支持体の印刷適性を有する面とは反対の面に粘着層を設けた後、その粘着層とセパレータの離型面とを貼り合せ、ロール状に巻き取り製造する。その後、この支持体の印刷適性を有する面にオフセット印刷、シルク印刷、熱転写印刷、インクジェット印刷や乾式および湿式電子写真印刷などの方式により画像を印刷する。
【0004】
しかし、このような印刷適性を有する粘着シートでは、印刷をした際に印刷のムラが部分的に発生してしまう問題を生じた。また、印刷適性以外の機能を有する機能性粘着シートでも、その機能が部分的に阻害されるという問題を生じた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−347183号公報(請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、機能層(所定の機能が付与された層)を有する支持体、粘着層、セパレータをこの順に有する機能性粘着シートであって、機能不良が生じることがない機能性粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、機能不良の原因は以下のとおり生じることを解明した。まず図3(a)に示すように、セパレータ20は、その片面にシリコ−ンなどの離型処理を行いロール状に巻き保管するので、その離型処理面21と裏面の非離型面22が重なり合い、非離型面22に離型成分21aが転写する。つぎに、図3(b)に示すように、セパレータの離型処理層22の上に、片面に機能面11を持つ機能性粘着シート10の粘着層12を対向させてラミネートし巻き取ると、セパレータ20の非離型面22と機能性粘着シート10の機能面11が接触する。ここでセパレータ20が非離型面22に離型成分21aが転写されているものであると、非離型面22に転写された離型成分21aが粘着シート10の機能面11へ二次転写し、その離型成分により機能面11の機能を阻害する。
【0008】
セパレータ20の非離型面22に転写している離型成分21aの二次転写を抑えるために、セパレータをロールから巻き出した後、粘着シートに貼着するまでの間に、セパレータ20の非離型面22に塗膜を形成することが考えられる。しかし、単に塗膜を形成しただけでは、離型成分が塗膜を浸透して表面に浮き出てしまい二次転写を抑制する効果は得られなかった。
【0009】
そこでさらに、塗膜の表面形状と二次転写の関係を検討した結果、塗膜に特定の粗面化処理を施すことにより二次転写を抑え、離型成分による機能不良が生じることなく、良好な機能を有する機能性粘着シートを得ることができることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明の機能性粘着シートは、支持体、粘着層、セパレータをこの順に有し、前記支持体は前記粘着層と接する面の反対面に機能層を有する機能性粘着シートであって、前記セパレータは前記粘着層と接する面に離型処理が施され、さらに前記粘着層と接する面とは反対面に、ピークカウント値Pcがピークカウントレベル+H=0.5μmで90カウント以上且つ、ピークカウントレベル+H=1.5μmで30カウント以上の粗面化処理が施されてなるものであることを特徴とするものである。
【0011】
なお、本発明でいうピークカウント値Pcは、アメリカ機械工学会
ASME B46.1(1995年)に基づくものである。ピークカウント値Pcは塗膜の中心線平均粗さRa測定時に得られた断面曲線の中心線に対して、平行に+Hの距離だけ離れたピークカウントレベル線を設け、ピークカウントレベル線と粗さ曲線とが交差する点が2回存在する時を1山としてカウントし、測定長さ4mm当たりの山数をカウントして求めたものである。
【0012】
また本発明の機能性粘着シートは、粗面化層が樹脂と無機粒子を含むものであって、平均粒子径が2μm〜10μmの無機粒子を樹脂成分100重量部に対し5〜30重量部含むことを特徴とする。なお本発明でいう平均粒子径は、コールターカウンター法によって測定した値である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の機能性粘着シートは、セパレータの非離型面に特定の粗面化処理を施すことにより、セパレータの非離型面に転写しているシリコ−ンなどの離型成分が支持体の機能層を有する面へ二次転写することを抑え、離型成分による機能不良が生じることなく、良好な機能を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の機能性粘着シートの断面を模式的に示す図。
図2】本発明の機能性粘着シートの製造方法の一例を示す図。
図3】本発明の課題を説明する図。
図4】実施例1の表面状態を示す図。
図5】比較例2の表面状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の機能性粘着シートは、支持体、粘着層、セパレータをこの順に有し、前記支持体は前記粘着層と接する面の反対面に機能層を有する機能性粘着シートであって、前記セパレータは前記粘着層と接する面に離型処理が施され、さらに前記粘着層と接する面とは反対面に、ピークカウント値Pcがピークカウントレベル+H=0.5μmで90カウント以上且つ、ピークカウントレベル+H=1.5μmで30カウント以上の粗面化処理が施されてなるものであることを特徴とするものである。
図1に、本実施形態の機能性粘着シートの断面を模式的に示す。この機能性粘着シートは、機能層11が形成された支持体10と、セパレータ20とを備え、支持体10とセパレータ20との間に粘着層12が形成されている。セパレータ20は粘着層12との接触面が離型処理され離型面21となり、その反対側の面(非離型面)に粗面化処理層23が形成されている。以下、各構成要素の実施の形態について説明する。
【0016】
本発明の機能性粘着シートに用いる支持体としては、紙やプラスチックフィルムがあげられる。紙の種類としては、上質紙、グラビア紙、アート紙、コート紙、合成紙などがあげられ、プラスチックフィルムとしては、ポリエステル、ポリカーボネート、アクリル、トリアセチルセルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体等があげられる。また、このような支持体は、通常用いられる各種紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、スリップ剤等が含有されたものでも良く、別途これらを含有する層を有するものであっても良い。
【0017】
支持体の厚みは使用する用途によって異なるので一概にいえないが、印刷適性、光拡散性、光防眩性などの機能性処理を考慮し、10μm〜350μmのものが使用される。また、後述するセパレータの剥がし易さを考慮すると、30μm〜188μm程度が好適である。
【0018】
機能層は、支持体の一方の面に、粘着層が設けられる面と反対側の面に積層され、支持体に所定の機能を付与したり、支持体自体が有する機能を強化したりするものであり、付与すべき機能に応じて種々の層構成を取り得る。例えば、機能層が印刷適性を向上させるための層である場合には、印刷の種類に応じて印刷インクやトナーとの接着性や吸収性などが良好な層を設けることができる。印刷適性を向上させた層は、オフセット印刷やシルク印刷では印刷インキ易接着層、熱転写印刷やインクジェット印刷ではインク受容層、乾式および湿式電子写真印刷でトナー受容層等と称される層であり、公知の材料で構成することができる。
【0019】
また、光拡散性、防眩性、反射防止性などの光学特性を向上或いは付与するための層として、光拡散層、防眩層、或いは反射防止層など、硬度や弾性を付与するための層として、ハードコート層や弾性体層など、特定の波長の光などを吸収する層として、紫外線吸収層や赤外線吸収層などであってもよい。また一つの機能層が互いの機能を阻害しない限り複数の機能を持たせることも可能であるし、複数の機能層を積層したものでもよい。
【0020】
粘着層は本発明の機能性粘着シートを、所望の被着体に貼着するために形成される層で主な成分として粘着剤から構成される。粘着剤としては、一般に使用されるアクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤などが使用される。また、帯電防止などの性能を持つ粘着剤を使用しても良い。粘着層の厚みは特に限定されないが、機能性粘着シートの被着体への貼付性、剥離性等を考慮すると、2μm〜60μm、好ましくは5μm〜40μmであることが望ましい。
【0021】
粘着層は、一般には、上記粘着剤を必要に応じて溶剤に溶解または分散して塗布液とし、この塗布液を公知の塗布方法によって、支持体の印刷適性を有する面とは反対面に塗布、乾燥することによって形成される。
【0022】
本発明の機能性粘着シートの構成要素の一つであるセパレータは、本発明の機能性粘着シートを被着体に貼着するまでの間、粘着層の上に貼り合せられるものであり、基材の一方の面すなわち粘着層と接する面に離型処理面を有し、他方の面に粗面化層を有する。
【0023】
セパレータの基材としては、ポリエチレンラミネート紙や、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、アクリル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体等のプラスチックフィルムがあげられる。セパレータの厚みは機能性粘着シートの剥がし易さを考慮し、10μm〜250μm、好ましくは25μm〜125μmのものが使用される。
【0024】
離型処理面は、フッ素系、シリコーン系等の離型性の良い樹脂や、シリコーンオイルなどの離型剤を樹脂に混ぜ、溶剤に溶解または分散して塗布液とし、この塗布液を公知の塗布方法によって基材表面に塗布、乾燥することにより形成することができる。塗布層の厚みは、特に限定されるものではないが、適度の離型性を付与し、且つセパレータを浸透して粗面化処理層側に浮き出てくる離型剤を抑制するために、0.03〜1.0μm程度が好ましい。
【0025】
離型処理面と反対の面(非離型面)に形成される粗面化層は、離型処理後のセパレータをロール状に巻いて保管することによって非離型面に転写された離型剤を覆い、非離型面と接することになる粘着シートの機能層を保護するために形成される。従って粗面化層は、非離型面を覆うように形成された樹脂層からなり、その表面が特定の表面形状となるように粗面化処理されたものである。以下、粗面化層の表面形状について説明する。
【0026】
粗面化層のピークカウント値Pcは、ピークカウントレベル+H=0.5μmで90カウント以上且つ、ピークカウントレベル+H=1.5μmで30カウント以上とする。なお、ピークカウントレベル+H=0.5μmでは、120カウント以上がより好ましく、140カウント以上がさらに好ましい。また、ピークカウントレベル+H=1.5μmでは、45カウント以上がより好ましく、60カウント以上がさらに好ましい。
【0027】
ピークカウント値Pcがピークカウントレベル+H=0.5μmで90カウント以上且つ、ピークカウントレベル+H=1.5μmで30カウント以上の粗面化層を設けることにより離型成分の二次転写を抑え、機能性不良を抑えることが出来る。この理由は、以下のように考えられる。
【0028】
ピークカウント値Pcが+H=0.5μmで90カウント以上とは、断面曲線の中心線に対して平行に+0.5μm離れたピークカウントレベル線と粗さ曲線とが交差する山の数が90以上有ることである。このような塗膜では、山の数が多くあるので浮き出てきた離型成分が塗膜表面に溜まりにくくなる(山と山の間に存在する多数の谷の部分に溜まった状態である)。しかし山の数が多くても山が低い場合には塗膜表面と機能性面との接触を防ぐことはできない。一方、ピークカウント値Pcが+H=1.5μmで30カウント以上とは、断面曲線の中心線に対して平行に+1.5μm離れたピークカウントレベル線と粗さ曲線とが交差する山の数が30以上有ることである。このような塗膜では、山が高いので塗膜表面と機能性面との接触を防ぎやすくできる。しかし山が高くてもその数が少ない場合には離型成分は山と山の間の比較的平坦な塗膜表面に溜まることになり、塗膜表面に溜まりやすくなる。
【0029】
これに対して本発明のように、特定のピークカウント値Pcで規定できる低い山と高い山を同時に設けることにより、離型成分が塗膜表面に溜まりにくく、且つ塗膜表面と機能性面との接触が防ぎやすくなり、セパレータの非離型面に転写している離型成分が支持体の機能性面へ二次転写することを防止することが出来ると考えられる。
【0030】
なお、粗面化処理層のピークカウント値Pcの上限については、ピークカウントレベル+H=0.5μmで200カウント以下且つ、ピークカウントレベル+H=1.5μmで130カウント以下が好ましい。なお、ピークカウントレベル+H=0.5μmでは、180カウント以下がより好ましく、160カウント以下がさらに好ましい。また、ピークカウントレベル+H=1.5μmでは、100カウント以下がより好ましく、70カウント以下がさらに好ましい。
【0031】
ピークカウント値Pcがピークカウントレベル+H=0.5μmで200カウント以下且つ、ピークカウントレベル+H=1.5μmで130カウント以下の粗面化層を施すことにより離型成分の二次転写を抑え、機能性不良を抑えやすくなる。これらのピークカウントレベルにおけるピークカウント値が大きくなると、山の高さは変わらないが谷の深さが浅くなり塗膜表面が比較的平坦となるため、平坦な谷の部分に溜まった離型成分が2次転写しやすくなると考えられる。
【0032】
また粗面化層は、その算術平均傾斜R△aが、好ましくは0.25以上、0.45以下である。このような塗膜では、山の傾斜が一定の範囲にあるので、浮き出てきた離型成分が塗膜表面に溜まりにくくなり離型成分の二次転写を抑え、機能性不良を抑えることが出来る。
【0033】
なお、本発明でいう算術平均傾斜R△aは、アメリカ機械工学会 ASME B46.1(1995年)に基づくものである。算術平均傾斜R△aは、塗膜の中心線平均粗さRa測定時に得られた断面曲線から測定長さLだけ抜き取り、この抜き取り部分を微分して傾き曲線を得、その曲線の各点の絶対値を求めたとき、この多数の絶対値の算術平均値をいう。すなわち算術平均傾斜R△aは、断面曲線の測定方向の座標をxとして得られた断面曲線関数g(x)から、測定長さをLとして下式より求めた値である。
R△a=(1/L)∫L|(d/dx)g(x)|dx
【0034】
粗面化層を形成する手法としては、樹脂成分に粗面化剤を添加してものを塗布することにより粗面化層を形成する方法や、樹脂からなる層の表面にエンボス処理やサンドブラスト処理などを施す方法を採用することができる。粗面化剤を用いて粗面化層を形成する場合、層の厚みや用いる粗面化剤の種類(平均粒子径、粒度分布を含む)を調整することにより上述したピークカウント値を満たすように調整することができる。またエンボス処理の場合には、マイクロマシン作製技術で所望の表面形状(ピークカウント値で規定される形状と凹凸が反転した形状)を作りこんだエンボスロールを用いる。またサンドブラスト処理の場合には、処理に用いる研磨剤の種類(材料や粒子径)を異ならせて多段階に分けて処理を行うなどの手法を採用することができる。
【0035】
粗面化層に含まれる樹脂成分としては、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、アセタール系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、シリコーン系樹脂等の熱可塑性樹脂または熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂などがあげられ、これらの1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0036】
粗面化剤を用いる場合、粗面化剤として、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、シリカ、アルミナ、クレイ、カオリン、パーライト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、焼成アルミナ、ケイ酸カルシウム、タルク、マイカ二酸化チタン、酸化ジルコニウムなどの無機物微粒子や、アクリル系樹脂粒子、シリコーン系樹脂粒子、ナイロン系樹脂粒子、スチレン系樹脂粒子、ポリエチレン系樹脂粒子、ベンゾグアナミン系樹脂粒子、ウレタン系樹脂粒子などの樹脂粒子などがあげられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。特に、無機粒子は、セパレータの非離型面に転写している離型成分が支持体の機能性を有する面へ再転写することを抑える効果が優れており好ましく用いられる。
【0037】
粗面化剤の平均粒子径は、粗面化層の厚みによって異なってくるので一概にいえないが1μm〜20μmが好ましく、2μm〜10μmがより好ましく、3μm〜5μmがさらに好ましい。また、粗面化剤の粒子径の粒度分布は広いものが好ましく、粒子径の変動係数は10%より大きいことが好ましい。また、粗面化剤の添加量は、粗面化剤の種類や粒子径によって異なるので一概にいえないが、樹脂成分100重量部に対し1重量部〜50重量部が好ましく、5重量部〜30重量部がより好ましく、8重量部〜15重量部がさらに好ましい。また、粗面化処理層の厚みは、使用する粗面化剤の平均粒子径との組み合わせによるので特に限定されないが、0.1μm〜18μmが好ましく、0.5μm〜10μmがより好ましい。このように平均粒子径、添加量および厚みを上記の範囲とすることにより、粗面化層のピークカウント値Pcを本発明の範囲に調整しやすくなり、離型成分の機能性面への移行を抑えやすくなる。
【0038】
このような粗面化層は、上述のような樹脂成分、粗面化剤のほかに上述した性能を損なわない範囲で、導電剤、着色剤、帯電防止剤、架橋剤、レベリング剤、消泡剤等の添加剤を添加することができる。特に、印刷用シート同士やホコリ等が静電気によりくっついてしまわないように帯電防止性能を付与するため、金属微粉末などの導電剤や、界面活性剤、帯電防止性樹脂等の帯電防止剤を添加することが好ましい。
【0039】
このような粗面化層は、上述の樹脂、粗面化剤を用いて粗面化処理する場合には粗面化剤、必要に応じて添加する添加剤を溶剤に溶解または分散した塗布液を、公知の塗布方法によって塗布、乾燥することにより形成することができる。粗面化剤を用いない場合には、樹脂の層を形成後、エンボス処理或いはサンドブラスト処理を行う。
【0040】
次に本発明の機能性粘着シートの製造方法を説明する。図2に機能性粘着シートの製造方法の一例を示す。まずセパレータ20の基材25の片面に離型処理層21を形成してロール状に巻き保管する(図2(a))。一方、支持体10に機能層11を形成してロール状に巻き保管する(図2(b))。次にセパレータ20と機能層11が形成された支持体10をそれぞれロールから巻き出し、両者を、粘着層を介してラミネートする。このため、まず、図2(c)に示すように、セパレータ20の離型処理層21とは反対の面に粗面化層23を形成し、つぎに、セパレータの離型処理層21の上に粘着層12を形成し、その粘着層12と支持体10の機能層11とは反対の面とを対向させてラミネートする(図2(d))。
【0041】
なお、図2(c)では、粘着層12をセパレータ20の離型処理層21の上に形成する場合を示したが、支持体10の機能層11とは反対の面に粘着層12を形成し、セパレータ20の離型処理層21が形成された面を粘着層12と対向させてラミネートしてもよい。
【0042】
また図2では、セパレータ20の非離型面に粗面化層23を形成した後、セパレータ20と、機能層11が形成された支持体10とをラミネートする場合を示したが、セパレータ20と機能層11が形成された支持体10とをラミネートした後に、セパレータ20の非離型面に粗面化層23を形成することも可能である。
【0043】
このような構造の機能性粘着シートは、保管時は、粗面化層23側または機能層11側が内側となるようにロール状に巻かれて保管される。ロール状に巻かれた状態では、粗面化層23と機能層11とが接することになるが、粗面化層23はセパレータ保管時に非離型面に離型剤が転写されていたとしても、それが機能層11を二次転写されるのを防止する。また機能性粘着シートの使用時は、保護する粘着層12がセパレータ2の離型面21との界面で剥離するので、露出した粘着層12を所望の被着体に貼り合わせて、機能層11が形成された支持体10を所望の被着体に貼着する。
【実施例】
【0044】
以下、実施例により本発明を更に説明する。なお、「部」、「%」は特に示さない限り、重量基準とする。
【0045】
1.機能性粘着シートの作製
厚み75μmのポリエステルフィルム(S−10、東レ社)の片面に、溶剤で溶解したシリコーン樹脂(SRX370:東レ・ダウコーニング・シリコーン社)、及び触媒(SRX212:東レ・ダウコーニング・シリコーン社)を塗布、乾燥し、厚み0.5μmの離型処理層を形成して、ロール状に巻き取りながらセパレータを作製した。ロール状に巻いたセパレータを7日間保管した。
【0046】
つぎに、厚み50μmの透明ポリエステルフィルム(T600E、三菱樹脂社)に、ポリビニルアルコール(ゴーセノールKH−17:日本合成化学工業社)に対しアルミナゾル(川研ファインケミカル社)を500%加え、10%溶液に調整し、メイヤーバーコーター法により塗布乾燥させ、厚さ5μmのインク受容層を形成しインクジェット印刷材料を得た。このインクジェット印刷材料もロール状に巻いた状態で保管した。
【0047】
次に、上記のとおりロール状で保管したセパレータをロールから巻き出しながら、その離型処理層とは反対の面に、下記実施例1〜4および比較例1〜4の組成の粗面化層塗布液を、乾燥後の厚みが2μmとなるようにバーコーティング法により塗布、乾燥して粗面化層を形成した。次いで、セパレータの離型処理層の上に、溶剤で溶解したアクリル系粘着剤(日本カーバイド工業社製、製品名:ニッセツKP-1410)を塗布、乾燥し、厚み15μmの粘着層を形成し、その上に上記インクジェット印刷材料のインク受容層とは反対の面を重ねてラミネートし、実施例1〜4および比較例1〜4の機能性粘着シートを作製した。これら機能性粘着シートも作製時にロール状に巻きとり、そのまま7日間保管した。
【0048】
<粗面化層塗布液>
・熱可塑性ポリエステル樹脂 8部
(バイロン200、東洋紡績社、固形分100%)
・表1記載の粗面化剤 1部
・希釈溶剤 91部
【0049】
【表1】
【0050】
2.評価
実施例1〜4および比較例1〜4で得られた機能性粘着シートについて、以下の評価を行なった。結果を表2に示す。また実施例1及び比較例2の粗面化処理層の断面曲線を図4及び図5に示す。なお、断面曲線は、触針式表面粗さ測定機(SURFCOM 1500SD2−3DF:東京精密社)を用いてJIS B0601:2001に従い中心線平均粗さRaを測定した際に得られたものである。
【0051】
(1)粗面化層のピークカウント値Pc
機能性粘着シートのセパレータの粗面化層の中心線平均粗さRaを測定し、得られた断面曲線の中心線に対して、平行に+H=0.5μmおよび+H=1.5μmの距離だけ離れたピークカウントレベル線を設け、ピークカウントレベル線と粗さ曲線とが交差する点が2回存在する時を1山としてカウントし、測定長さ4mm当たりの山数をカウントしてピークカウントレベル+H=0.5μmおよび+H=1.5μmのピークカウント値Pcを求めた。
【0052】
(2)粗面化層の算術平均傾斜R△a
機能性粘着シートのセパレータの粗面化層の中心線平均粗さRaを測定し、得られた断面曲線から測定長さL(4mm)だけ抜き取り、この抜き取り部分を微分して傾き曲線を得た。次いで、この曲線をもとに、次式により算術平均傾斜RΔaを算出した。
R△a=(1/L)∫L|(d/dx)g(x)|dx
【0053】
(3)インク受容層での印刷ムラ
機能性粘着シートのインク受容層に、インクジェット印刷機(Luxel Jet、富士フイルム社)を用いて印刷し、印刷ムラについて評価した。印刷ムラの評価については、印刷ムラが生じないものを「◎」、印刷ムラがわずかに生じるが支障がないものを「○」、印刷ムラが生じたものを「×」とした。結果を表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
3.考察
表2から以下のことが理解できる。
実施例2〜4の機能性粘着シートは、セパレータの、粘着層と接する面とは反対面にピークカウント値Pcがピークカウントレベル+H=0.5μmで90カウント以上且つ、ピークカウントレベル+H=1.5μmで30カウント以上の粗面化処理層が施されているので、インク受容層での印刷ムラはわずかに生じたが支障がなかった。
【0056】
特に、実施例1の機能性粘着シートは、粗面化層のピークカウント値Pcがピークカウントレベル+H=0.5μmで140カウント以上且つ、+H=1.5μmで60カウント以上なのでインク受容層での印刷ムラは生じなかった。
【0057】
一方、比較例1、3および4の機能性粘着シートは、粗面化層のピークカウント値Pcがピークカウントレベル+H=0.5μmで90カウント未満且つ、+H=1.5μmで30カウント未満なのでインク受容層での印刷ムラを生じた。なお、比較例2の機能性粘着シートは、粗面化層のピークカウント値Pcがピークカウントレベル+H=1.5μmで30カウント以上であるが、ピークカウントレベル+H=0.5μmで90カウント未満であるので、インク受容層での印刷ムラを生じた。
【符号の説明】
【0058】
10・・・支持体、11・・・機能層、12・・・粘着層、20・・・セパレータ、21・・・離型処理層、23・・・粗面化層、25・・・セパレータの基材
図1
図2
図3
図4
図5