特許第6091497号(P6091497)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イートン コーポレーションの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6091497
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】簡易化されたルーツ型ブロワ
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/18 20060101AFI20170227BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   F04C18/18 A
   F04C29/00 C
【請求項の数】13
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-513789(P2014-513789)
(86)(22)【出願日】2012年6月4日
(65)【公表番号】特表2014-519574(P2014-519574A)
(43)【公表日】2014年8月14日
(86)【国際出願番号】US2012040736
(87)【国際公開番号】WO2012167248
(87)【国際公開日】20121206
【審査請求日】2015年5月13日
(31)【優先権主張番号】61/492,520
(32)【優先日】2011年6月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390033020
【氏名又は名称】イートン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】EATON CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100109690
【弁理士】
【氏名又は名称】小野塚 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100135035
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 明夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131266
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼ 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】アイバーゲン、ウイリアム、ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ウイリアムズ、ケリー、アン
【審査官】 田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−131686(JP,U)
【文献】 特開昭60−011693(JP,A)
【文献】 特開平02−286895(JP,A)
【文献】 特開2010−150964(JP,A)
【文献】 特開平04−298697(JP,A)
【文献】 特開2003−161270(JP,A)
【文献】 特開2010−019099(JP,A)
【文献】 特開2011−064078(JP,A)
【文献】 特開昭62−203988(JP,A)
【文献】 特開昭60−261989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/18
F04C 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ロータボア及び第2ロータボアを形成し、また、前記第1ロータボアに対応する第1ベアリングポケット及び前記第2ロータボアに対応する第2ベアリングポケットを形成し、更に、ギヤ室を形成する成型されたワンピースのポリマー構造を有するロータボアハウジングと、
前記第1ベアリングポケット内に取付けられる第1ベアリング及び前記第2ベアリングポケット内に取付けられる第2ベアリングと、
第1ロータシャフト軸に沿って位置決めされる第1ロータシャフトを有する第1ルーツ型ロータ及び第2ロータシャフト軸に沿って位置決めされる第2ロータシャフトを有する第2ルーツ型ロータとを備え、
前記第1及び第2ルーツ型ロータは、それぞれ前記第1ロータボア及び前記第2ロータボア内配置され、前記ロータボアハウジングに対して、それぞれ前記第1及び第2ロータシャフト軸回りに回転可能であり、前記第1及び第2ロータシャフト軸は、前記第1及び第2ルーツ型ロータがそれぞれ前記第1及び第2ロータシャフト軸回りに回転するとき、前記第1及び第2ルーツ型ロータが互いに噛み合うように相対的に配置され、前記第1ロータシャフトは、前記第1ベアリングによって支持され、前記第2ロータシャフトは、前記第2ベアリングによって支持され、
更に、前記ギヤ室内に配置された第1及び第2ギヤを備え、
前記第1ギヤは、前記第1ロータシャフトに連結され、前記第2ギヤは、前記第2ロータシャフトに連結され、前記第1及び第2ギヤは、互いに噛み合って前記第1及び第2ロータシャフト間でトルクを伝達するように構成され
前記成型されたポリマー構造は、ポリマー基材及び該基材に埋め込まれた強化用繊維を含み、
前記ロータボアハウジングは、前記第1及び第2ベアリングポケットをそれぞれ形成する第1及び第2円筒状ポケット形成壁を含み、前記第1及び第2円筒状ポケット形成壁にそれぞれ強化用繊維が円周方向に配置されていることを特徴とするルーツ型ブロワ。
【請求項2】
前記第1及び第2ロータボアは、それぞれ2度未満の抜き勾配を有していることを特徴とする請求項1に記載のルーツ型ブロワ。
【請求項3】
前記第1及び第2ロータボアは、それぞれゼロに等しい抜き勾配を有していることを特徴とする請求項1に記載のルーツ型ブロワ。
【請求項4】
前記ロータボアハウジングは、前記第1及び第2ロータボアをそれぞれ形成する第1及び第2ロータボア形成壁を含み、前記第1及び第2ロータボア形成壁内の強化用繊維は、前記第1及び第2ロータシャフト軸に対して平行に向けられていることを特徴とする請求項1に記載のルーツ型ブロワ。
【請求項5】
前記第1及び第2ロータボアは、250立方センチメートル未満の合計容積を有することを特徴とする請求項1に記載のルーツ型ブロワ。
【請求項6】
前記ロータボアハウジングは、前記第1及び第2ロータボアに流体接続する出口を形成し、前記出口並びに前記第1及び第2ベアリングは、前記第1及び第2ロータシャフト軸に垂直な基準平面が前記出口並びに前記第1及び第2ベアリングを横切るように相対的に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のルーツ型ブロワ。
【請求項7】
第1ロータボア及び第2ロータボアを形成し、また、前記第1ロータボアに対応する第1ベアリングポケット及び前記第2ロータボアに対応する第2ベアリングポケットを形成し、更に、ギヤ室を形成する成型されたワンピースのポリマー構造を有するロータボアハウジングと、
前記第1ベアリングポケット内に取付けられる第1ベアリング及び前記第2ベアリングポケット内に取付けられる第2ベアリングと、
第1ロータシャフト軸に沿って位置決めされる第1ロータシャフトを有する第1ルーツ型ロータ及び第2ロータシャフト軸に沿って位置決めされる第2ロータシャフトを有する第2ルーツ型ロータとを備え、
前記第1及び第2ルーツ型ロータは、それぞれ前記第1ロータボア及び前記第2ロータボア内配置され、前記ロータボアハウジングに対して、それぞれ前記第1及び第2ロータシャフト軸回りに回転可能であり、前記第1及び第2ロータシャフト軸は、前記第1及び第2ルーツ型ロータがそれぞれ前記第1及び第2ロータシャフト軸回りに回転するとき、前記第1及び第2ルーツ型ロータが互いに噛み合うように相対的に配置され、前記第1ロータシャフトは、前記第1ベアリングによって支持され、前記第2ロータシャフトは、前記第2ベアリングによって支持され、
更に、前記ギヤ室内に配置された第1及び第2ギヤを備え、
前記第1ギヤは、前記第1ロータシャフトに連結され、前記第2ギヤは、前記第2ロータシャフトに連結され、前記第1及び第2ギヤは、互いに噛み合って前記第1及び第2ロータシャフト間でトルクを伝達するように構成され、
前記第1及び第2ベアリングは、それぞれ前記第1及び第2ベアリングポケットのポリマーに包まれ、
更に、前記第1ベアリングを囲む第1ベアリングシールド及び前記第2ベアリングを囲む第2ベアリングシールドを備え、前記第1及び第2ベアリングシールドは、前記ロータボアハウジングを構成するポリマーが前記第1及び第2ベアリングに侵入するのを防止するように構成されていることを特徴とするルーツ型ブロワ。
【請求項8】
前記第1及び第2ルーツ型ロータは、初期慣らし運転期間中にロータボアハウジングを切削して前記第1及び第2ロータボアを形成するための切刃を有していることを特徴とする請求項1に記載のルーツ型ブロワ。
【請求項9】
前記ロータボアハウジングは、前記第1及び第2ロータシャフト軸に沿って互いに間隔をもって両端に配置された第1及び第2端部を有し、前記ギヤ室は、前記第1端部に隣接して配置され、前記第1ベアリングは、前記第1ロータボアと前記第1ギヤとの間に配置され、前記第2ベアリングは、前記第2ロータボアと前記第2ギヤとの間に配置され、前記ロータボアハウジングは、前記第1及び第2端部間に出口を形成し、
当該ルーツ型ブロワは、更に、前記ロータボアハウジングの前記第2端部に取付けられる入口ハウジングを含み、該入口ハウジングは、前記第1及び第2ロータボアに流体接続する入口を形成することを特徴とする請求項1又はに記載のルーツ型ブロワ。
【請求項10】
前記入口ハウジングは、前記第1ロータシャフト軸に同心に配置された第3ベアリングポケットを形成し、前記入口ハウジングは、前記第2ロータシャフト軸に同心に配置されたベアリング取付突出部を形成し、
当該ルーツ型ブロワは、第3及び第4ベアリングを含み、前記第3ベアリングは、前記第1ロータシャフトを支持し、前記第3ベアリングポケット内に取付けられ、前記第4ベアリングは、前記第2ロータシャフトを支持し、前記ベアリング取付突出部に取付けられ、
当該ルーツ型ブロワは、更に、前記第4ベアリングに取付けられてスプライン結合によって前記第2ロータシャフトに連結されたプーリを含むことを特徴とする請求項に記載のルーツ型ブロワ。
【請求項11】
前記入口ハウジングは、金属であることを特徴とする請求項9又は10に記載のルーツ型ブロワ。
【請求項12】
第1ロータボア及び第2ロータボアを形成し、また、前記第1ロータボアに対応する第1ベアリングポケット及び前記第2ロータボアに対応する第2ベアリングポケットを形成し、更に、ギヤ室を形成する成型されたワンピースのポリマー構造を有するロータボアハウジングと、
前記第1ベアリングポケット内に取付けられる第1ベアリング及び前記第2ベアリングポケット内に取付けられる第2ベアリングと、
第1ロータシャフト軸に沿って位置決めされる第1ロータシャフトを有する第1ルーツ型ロータ及び第2ロータシャフト軸に沿って位置決めされる第2ロータシャフトを有する第2ルーツ型ロータとを備え、
前記第1及び第2ルーツ型ロータは、それぞれ前記第1ロータボア及び前記第2ロータボア内配置され、前記ロータボアハウジングに対して、それぞれ前記第1及び第2ロータシャフト軸回りに回転可能であり、前記第1及び第2ロータシャフト軸は、前記第1及び第2ルーツ型ロータがそれぞれ前記第1及び第2ロータシャフト軸回りに回転するとき、前記第1及び第2ルーツ型ロータが互いに噛み合うように相対的に配置され、前記第1ロータシャフトは、前記第1ベアリングによって支持され、前記第2ロータシャフトは、前記第2ベアリングによって支持され、
更に、前記ギヤ室内に配置された第1及び第2ギヤを備え、
前記第1ギヤは、前記第1ロータシャフトに連結され、前記第2ギヤは、前記第2ロータシャフトに連結され、前記第1及び第2ギヤは、互いに噛み合って前記第1及び第2ロータシャフト間でトルクを伝達するように構成され
前記ロータボアハウジングは、前記第1及び第2ロータシャフト軸に沿って互いに間隔をもって両端に配置された第1及び第2端部を有し、前記ギヤ室は、前記第1端部に隣接して配置され、前記第1ベアリングは、前記第1ロータボアと前記第1ギヤとの間に配置され、前記第2ベアリングは、前記第2ロータボアと前記第2ギヤとの間に配置され、前記ロータボアハウジングは、前記第1及び第2端部間に出口を形成し、
当該ルーツ型ブロワは、更に、前記ロータボアハウジングの前記第2端部に取付けられる入口ハウジングを含み、該入口ハウジングは、前記第1及び第2ロータボアに流体接続する入口を形成し、
前記ロータボアハウジングと前記入口ハウジングとは、位置決め接合部で互いに結合し、前記位置決め接合部は、前記第1及び第2ロータボアのそれぞれの前記第1及び第2ロータシャフト軸回り同心度を向上させるように構成され
前記位置決め接合部は、前記入口ハウジングによって形成された位置決め受部内に受入れられる前記ロータボアハウジングの前記第2端部の軸方向突出部を含み、
前記軸方法突出部及び前記位置決め受部は、前記第1ロータシャフト軸回りに延びる第1湾曲部及び前記第2ロータシャフト軸回りに延びる第2湾曲部を含むことを特徴とするルーツ型ブロワ。
【請求項13】
更に、前記軸方向突出部の外側に設けられた複数の軸方向のリブを備えていることを特徴とする請求項12に記載のルーツ型ブロワ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国を除く全ての指定国に対する出願人である米国企業のイートン コーポレーション、並びに、米国のみの指定国に対する出願人であるカナダ国民のウイリアム ニコラス アイバーゲン及び米国民のケリー アン ウイリアムズの名義でPCT国際特許出願として、2011年6月2日に提出された米国特許出願第61/492520号の優先権を主張して、2012年6月4日に提出され、この米国特許出願における全ての開示内容は、参考として本説明に含まれる。
【0002】
本開示は、一般的にはブロワに関する。より具体的には、本開示は、ルーツ型エアブロワ等のブロワに関する。
【背景技術】
【0003】
ルーツ型エアブロワは、互いに噛み合ったロータの利用によりエアを移動させる容積型ポンプである。これらのロータは、ロータボアハウジングによって形成されたロータボア内に取付けられている。ロータは、一般的に、ロータボアハウジングに取付けたベアリングプレートアセンブリ内に取付けられたベアリングで支持される。ベアリングは、ロータをベアリングプレートに位置決めして、ベアリングプレートに機械加工されたポケットに圧入される。ロータ間又はロータとロータボアハウジングとの間には、確実に接触させないため、比較的高い精度が要求される。このため、ベアリングプレートアセンブリ及びロータボアハウジングは、しっかり管理された組立及び機械加工操作を使用した金属から製造される。上述の観点において、効率的な作動が可能でありながら、コスト効果的な方法で製造することができる簡易化されたルーツ型ブロワの設計が要求されている。
【0004】
現行のルーツ型ブロワの設計に対するもう一つの課題は、騒音の発生に関する。例えば、現行のルーツ型ブロワの設計は、一般的に、ロータによって送られた高圧のエアが出口で
大気中に噴出したとき、騒音が発生する。この出口でのエアの脈動は、可聴騒音となり、現行のルーツ型ブロワを製造するのに使用される一般的なハウジング及びベアリングプレートの材料によって増幅される。更に、エンジントルクによるタイミングギヤのラトル音も既存のルーツ型ブロワを製造するのに使用される現行の材料によって増幅される。このため、騒音減衰領域の改良が要求されている。
【発明の概要】
【課題を解決しようとする手段】
【0005】
本開示の一つの特徴は、ベアリングポケットと一体成型された成型ポリマー製のボアハウジングを有する簡易化されたルーツ型ブロワに関する。このタイプの設計は、機械加工の必要性を解消する。
【0006】
本開示のもう一つの特徴は、成型されたポリマー製のボアハウジング、及び、起動時の慣らし運転期間中にそのハウジングを正確な寸法に切削する切刃(sharp edges)を設けるように設計されたロータを有するルーツ型ブロワに関し、これにより、容積効率及び熱効率を改善する。初期の慣らし運転期間中にロータが回転されることにより、ロータの外周縁部がロータボアを形成するハウジングの一部を切削して、ロータボアの内側形状がロータがそれぞれの軸回りに回転されたときにロータの外周縁部によって形成される外側形状に合致するようにする。特定の実施形態では、ロータボアの少なくとも一部が意図的に僅かに小さめに成型されて、起動時の初期の慣らし運転期間中に、ロータボアの小さめな部分がロータによって切削されるようにしている。
【0007】
本開示の更なる特徴は、タイミングギヤのラトル音の低減及び騒音に関係するエア脈動の増幅の制限に役立つ減衰特性有するポリマー(例えばプラスチック)で成型又は他の方法で製造されたルーツ型ブロワに関する。一つの実施形態では、同じハウジング部分に一体化されたベアリングポケット及びロータボアを有する設計と組み合わせて減衰プラスチック材料を使用することにより、一般的な従来のルーツ型ブロワの脈動騒音及びギヤラトル音を減少させることができる。特定の実施形態では、プラスチックタイミングギヤ又は金属(例えばスチール)とプラスチックの組合せのタイミングギヤの使用により、ギヤラトル音の減少に多大な効果を奏することができる。
【0008】
本開示の更なる特徴は、一体化されたロータボア及びベアリングポケットを含む射出形成されたワンピースのハウジングを有するルーツ型ブロワに関する。特定の実施形態では、ベアリングは、インサートモールド技術を使用してベアリングポケット内にモールドされる。特定の実施形態では、ハウジングのポリマー材料は、グラスファイバー等の補強部材で補強される。特定の実施形態では、グラスファイバーは、部品の精度の向上及び構造的完全性を特に考慮している。特定の実施形態では、ロータボア及びベアリングポケットを形成する成型ポリマーハウジングは、金属構造を有する入口ハウジングに結合する。特定の実施形態では、この金属製の入口ハウジングと成型プラスチックロータボアハウジングとの間に位置決め/案内接合部が設けられる。この位置決め接合部分は、ロータボアの同心度を改善又は維持するのに役立つように構成することができる。
【0009】
本開示の更にもう一つの特徴は、ルーツ型ブロワの出口に直接取付けられたロータベアリングを有する小型ルーツ型ブロワに関する。一つの実施形態では、このルーツ型ブロワは、ロータボア、ロータボア内に回転可能に取付けられたロータ、ルーツ型ブロワの一端部に取付けられたロータタイミングギヤ、及び、ルーツ型ブロワの他端部に取付けられたロータ駆動プーリを含む。そのような実施形態では、ロータボアは、駆動プーリとロータタイミングギヤとの間に配置される。特定の実施形態では、ルーツ型ブロワの入口は、ルーツ型ブロワの第2端部にほぼ隣接して配置され、ルーツ型ブロワの出口は、ルーツブロワの第1端部にほぼ隣接して配置される。
【0010】
本開示の更にもう一つの特徴は、成型ポリマー構造を有するロータボアハウジングを含むルーツ型ブロワに関する。このロータボアハウジングは、第1ロータシャフト軸に沿って位置決めされた第1ロータボア、及び、第2ロータシャフト軸に沿って位置決めされた第2ロータボアを形成する。また、このロータボアハウジングは、第1ロータシャフト軸と同心に位置決めされた第1ベアリングポケット、及び、第2ロータシャフト軸に同心に位置決めされた第2ベアリングポケットを形成する。ロータボアハウジングは、更に、ギヤ室を形成する。また、ルーツ型ブロワは、第1ベアリングポケット内に取付けられる第1ベアリング及び第2ベアリングポケット内に取付けられる第2ベアリングを含む。ルーツ型ブロワは、更に、第1ロータシャフト軸に沿って位置決めされた第1ロータシャフトを有する第1ルーツ型ロータ及び第2ロータシャフト軸に沿って位置決めされた第2ロータシャフトを有する第1ルーツ型ロータを含む。第1ロータシャフトは、第1ベアリングによって支持されて、第1ルーツ型ロータがロータボアハウジングに対して第1ロータシャフト軸回りに回転自在になっている。第2ロータシャフトは、第2ベアリングによって支持されて、第2ルーツ型ロータがロータボアハウジングに対して第2ロータシャフト軸回りに回転自在になっている。ルーツ型ブロワは、更に、ギヤ室内に配置された第1及び第2ギヤを含む。第1ギヤは、第1ロータシャフトに連結され、第2ギヤは、第2ロータシャフトに連結される。第1及び第2ギヤは、互いに噛み合って、第1及び第2ロータシャフト間でトルクを伝達するように構成される。特定の実施形態では、ロータボアハウジングは、ルーツ型ブロワの出口を形成し、このルーツ型ブロワは、更に、ロータボアハウジングに取付ける金属製の入口ハウジングを含む。この入口ハウジングは、ルーツ型ブロワの入口を形成する。
【0011】
本開示の更にもうひとつの特徴は、繊維強化ポリマー構造を有するロータボアハウジングを含むルーツ型ブロワに関する。このロータボアハウジングは、第1ロータボア及び第2ロータボアを形成する。また、ロータボアハウジングは、第1ロータボアに対応する第1ベアリングポケット及び第2ロータボアに対応する第2ベアリングポケットを形成する。ロータボアハウジングは、更に、ギヤ室を形成する。また、ルーツ型ブロワは、第1ベアリングポケット内に取付けられる第1ベアリング及び第2ベアリングポケット内に取付けられる第2ベアリングを含む。ルーツ型ブロワは、更に、第1ロータシャフトを有する第1ルーツ型ロータ及び第2ロータシャフトを有する第2ルーツ型ロータを含む。第1ルーツ型ロータは、第1ロータボア内に位置決めされ、第2ルーツ型ロータは、第2ロータボア内に位置決めされる。第1及び第2ロータシャフトは、第1及び第2ルーツ型ロータが回転するとき、第1及び第2ルーツ型ロータが互いに噛み合うように位置決めされたロータシャフト軸回りに回転可能になっている。第1ロータシャフトは、第1ベアリング内で支持され、第2ロータシャフトは、第2ベアリングによって支持される。ルーツ型ブロワは、更に、ギヤ室内に配置された第1及び第2ギヤを含む。第1ギヤは、第1ロータシャフトに結合され、第2ギヤは、第2ロータシャフトに結合される。第1及び第2ギヤは、互いに噛み合って第1及び第2ロータシャフト間でトルクを伝達するように構成されている。また、特定の実施形態では、ルーツ型ブロワは、ロータボアハウジングに取付けられる入口ハウジングを含むことができる。入口ハウジングは、金属構造を有することができ、また、第1及び第2ロータボアに流体接続するルーツ型ブロワの入口を形成することができる。ロータボアハウジングは、第1及び第2ロータボアに流体接続するルーツ型ブロワの出口を形成することができる。
【0012】
以下の説明に様々な追加の特徴が示される。これらの特徴は、個々の特徴及び特徴の組合せに関係する。以上の一般的な説明及び以下の詳細な説明の両方は、例示的で説明のためのみのものであり、ここに開示された実施形態が基づく広範な概念を制限しないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
添付の図面は、本説明の一部に含まれ、また、本説明の一部を構成するものであり、本開示のいくつかの特徴を図示している。これらの図面の簡単な説明は、次のとおりである。
【0014】
図1】従来技術のルーツ型ブロワの概略図である。
図2】本開示の原理に従ったルーツ型ブロワの正面、上面の斜視図である。
図3図2のルーツ型ブロワの後面、上面の斜視図である。
図4図2のルーツ型ブロワの後面、底面の斜視図である。
図5図2のルーツ型ブロワの正面、底面の斜視図である。
図6図2のルーツ型ブロワの上面図である。
図7図2のルーツ型ブロワの後面図である。
図8図2のルーツ型ブロワの正面図である。
図9図2のルーツ型ブロワの底面図である。
図10図2のルーツ型ブロワの第1側面図である。
図11図2のルーツ型ブロワの第2側面図である。
図12図8の12−12線に沿った断面図である。
図13図8の13−13線に沿った断面図である。
図14図8の14−14線に沿った断面図である。
図15図2のルーツ型ブロワの入口ハウジングを取外した上面、正面の斜視図である。
図16図2のルーツ型ブロワのギヤ室カバーを取外した底面、後面の斜視図である。
図17図2のルーツ型ブロワのロータボアハウジングの上面、正面の斜視図である。
図18図17のロータボアハウジングの底面、後面の斜視図である。
図19図17のロータボアハウジングの上面図である。
図20図17のロータボアハウジングの正面図である。
図21図17のロータボアハウジングの後面図である。
図22図17のロータボアハウジングの底面図である。
図23図17のロータボアハウジングの第1側面図である。
図24図17のロータボアハウジングの第2側面図である。
図25図17のロータボアハウジングの縦断面図である。
図26図17のロータボアハウジングの他の縦断面図である。
図27図2のルーツ型ブロワの入口ハウジングの上面、後面の斜視図である。
図28図27の入口ハウジングの底面、正面の斜視図である。
図29図27の入口ハウジングの上面図である。
図30図27の入口ハウジングの底面図である。
図31図27の入口ハウジングの後面図である。
図32図27の入口ハウジングの正面図である。
図33図27の入口ハウジングの第1側面図である。
図34図27の入口ハウジングの第2側面図である。
図35図2のルーツ型ブロワのロータの斜視図である。
図36】保護シールドがベアリングをロータボアハウジングから分離するルーツ型ブロワの実施形態を示す図である。
図37図17のロータボアハウジングの強化繊維の方向配置を図式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、概して騒音特性を改善する簡易化された設計を有するルーツ型ブロワに関する。便宜上及び説明の簡単化のため、実施形態の様々な側面は、上面、底面、正面及び後面側として指定されている。当然のことながら、そのような側面の指定は、便宜的なものに過ぎず、装置がどのように使用されるのかを限定するものではない。この件については、当然のことながら、本開示の原理に従う実施形態は、どの方向でも使用することができる。
【0016】
図1は、従来技術のルーツ型ブロワ20を示している。ここで使用される「ルーツ型ブロワ」という用語は、ロータハウジングのロータボアを通してエアを円周方向に移動するように協働する互いに噛み合ったロータを有するブロワを意味する。図1に示されるように、ルーツ型ブロワ20は、第1及び第2ロータボア24a、24bを形成するロータハウジング22を含む。ルーツ型ブロワ20は、ロータボア24a、24bに流体連通する入口26及び出口28を含む。第1ロータボア24a内に第1ロータ30aが配置され、第2ロータボア24b内に第2ロータ30bが配置される。これらロータ30a、30bは、それぞれ突出部32及びポケット34を含む。ルーツ型ブロワ20の作動中、ロータ30a、30bは、これらの中心軸回りに回転して互いに噛み合う。ロータ30a、30bの回転は、回転中に第1ロータ30aの突出部32が第2ロータ30bのポケット34内に受け入れられ、第2ロータ30bの突出部32が第1ロータ30aのポケット34に受け入れられるように調整される。ロータ30a、30bが回転することにより、入口26からのエアがポケット34へ移動して、ロータボア24a、24bに沿って円周方向に出口28へ送られる。図1に示されるように、領域38は、エアが入口26からロータボア24aに移動するエア入口に対応し、領域40は、エアがロータ30bによってロータボア24bに沿って円周方向に入口26から出口28に向けて送られる領域に対応し、また、領域42は、ロータボア24a内のエアがロータボア24aから出口28へ送られる領域を表す。
【0017】
図2〜14は、本開示の原理に従ったルーツ型ブロワ50を示す。ルーツ型ブロワ50は、前部52、後部54、上部56及び下部58を含む。ルーツ型ブロワ50の部52は、ブロワ入口62を形成する入口ハウジング60によって形成される。入口62は、上方に面して示されるが、同様に他の方向(例えば横方向)に面してもよい。また、ルーツ型ブロワ50は、位置決め接合部66(図3、13及び14参照)で入口ハウジング62に結合するロータボアハウジング64を含む。当然のことながら、入口ハウジング66及びロータボアハウジング64は、ファスナを使用して、又は、接着剤等(例えば、紫外線硬化型接着剤)の接合技術によって結合してもよい。ロータボアハウジング64は、ルーツ型ブロワ50の下部58に配置されたブロワ出口68を形成する。ブロワ出口68は、下方に向けて示されているが、同様に他の実施形態では、他の方向(例えば横方向)に面せてもよい。また、ルーツ型ブロワ50は、ルーツ型ブロワ50の前部で入口ハウジング60に取付けられた駆動プーリ70及びベアリングキャップ72を含む。ルーツ型ブロワ50の後部で、ロータボアハウジング64にギヤ室カバー74(図3及び4参照)が結合されている。
【0018】
図12〜15を参照して、ルーツ型ブロワ50は、また、第1ルーツ型ロータ76及び第2ルーツ型ロータ7を含む。第1ルーツ型ロータ76は、第1ロータシャフト軸82に沿って位置決めされた第1ロータシャフト80を含む。第2ルーツ型ロータ78は、第2ロータシャフト軸86に沿って位置決めされた第2ロータシャフト84を含む。第1及び第2ロータシャフト軸82、86は、好ましくは互いに平行である。第1及び第2ルーツ型ロータ76、78は、ロータボアハウジング64に形成された第1及び第2ロータボア88、90にそれぞれ配置されている。第1及び第2ロータボア88、90の少なくとも一部は、好ましくは円筒状である。例えば、第1ロータボア88は、第1ロータシャフト軸82をほぼ中心とする曲率半径を有する第1円筒状部分92(図14及び20参照)を含み、第1円筒状部分92が第1ロータシャフト軸80回りに曲線を描くようになっている。同様に、第2ロータボア90は、第2ロータシャフト軸86をほぼ中心とする曲率半径を有する第2円筒状部分94(図13及び20参照)を含み、第2円筒状部分94が第2ロータシャフト軸82回りに曲線を描くようになっている。これにより、第1及び第2円筒状部分92、94は、好ましくは、第1及び第2ロータシャフト軸82、86と同心で延びるロータシャフト軸を形成する。
【0019】
第1ルーツ型ロータ76は、第1ロータボア88内で回転するように構成され、第2ルーツ型ロータ78は、第2ロータボア90内で回転するように構成されている。互いに噛み合ったタイミングギヤ96、98(図12及び16参照)は、第1及び第2ロータシャフト80、84間でトルクを伝達し、これにより、第1及び第2ルーツ型ロータ76、78間の回転を調整する。第1タイミングギヤ96は、スプライン結合等のトルク伝達結合によって第1ロータシャフト80の後端部に連結されている。同様に、第2タイミングギヤ98は、スプライン結合等のトルク伝達結合によって第2ロータシャフト84の後端部に連結されている。第1及び第2タイミングギヤ96、98は、ロータボアハウジング64によって形成されたギヤ室100内に配置されている。ギヤ室100は、ロータボアハウジング64の中間分割壁構造102によって第1及び第2ロータボア88、90から分離されている。ギヤ室100は、タイミングギヤ96、98にアクセスするために取外し可能なギヤ室カバー74によって囲われている。ギヤ室100は、潤滑油又はグリースを収容することができる。シール191(図12参照)を使用して、潤滑油がギヤ室100からロータボア88、90に漏れるのを防止することができる。
【0020】
ルーツ型ロータ76、78を回転させるためのトルクは、駆動プーリ70によって供給することができる。例えば、ルーツ型ブロワ50がスーパチャージャとして使用される場合、駆動プーリ70は、過給されるエンジンのクランクシャフトによって駆動されるベルトによって回転させることができる。図12に示されるように、駆動プーリ70は、スプライン結合等のトルク伝達結合によって第2ロータシャフト84の前端部に結合される。駆動プーリ70は、ベアリング104によって入口ハウジング60に対して回転するように取付けられる。ベアリング104は、入口ハウジング60の本体から前方に突出したベアリング取付突出部106に取付けられる。ベアリング104は、駆動プーリ70を入口ハウジング60に対して第2ロータシャフト軸86回りに回転できるようにする。また、ベアリング104は、駆動プーリ70を介して、第2ロータシャフト84を回転可能に支持するように機能し、これにより、第2ロータシャフト84を入口ハウジング60に対して第2ロータシャフト軸86回りに回転できるようにする。
【0021】
プーリ70と第2ロータシャフト84との間のスプライン結合は、駆動プーリ70と第2ロータシャフト84との間の相対的な摺動を可能にする。これにより、この結合は、シャフト84とハウジング(例えば、入口ハウジング及び/又はロータボアハウジング)との間の熱成長差を補償することができる。このような補償は、ベアリング104及び/又はベアリング110への過負荷の防止に役立てることができる。図12に示されるように、駆動プーリ70及びタイミングギヤ96、98は、これらの間に配置される第1及び第2ロータボア88、90を有するルーツ型ブロワ50の両端部/両側に配置される。
【0022】
第1及び第2ルーツ型ロータ76、78は、比較的簡素な軸受構造によって入口ハウジング60及びロータボアハウジング64に対して回転可能に支持されている。例えば、第1及び第2ロータシャフト80、84は、その後端部に隣接してベアリング108、110(図12参照)によって支持されている。ベアリング108は、ロータボアハウジング64によって形成された第1ベアリングポケット112内に取付けられ、ベアリング110は、ロータボアハウジング64によって形成されたベアリングポケット114内に取付けられている。特定の実施形態では、ベアリング108、110は、それぞれ第1及び第2ベアリングポケット112、114内(図12参照)に圧入することができる。他の実施形態では、ベアリング108、110は、インサートモールド技術又は他の成型技術を利用して第1及び第2ベアリングポケット112、114内にモールドすることができる。ベアリング108、110は、第1及び第2ロータシャフト80、84の後端部を支持して、シャフト80、84がそれぞれの軸82、86回りにロータボアハウジング64に対して回転できるようにしている。第1ロータシャフト80の前端部は、入口ハウジング60によって形成されたベアリングポケット118(図12参照)内に取付けられたベアリング116(図12参照)によって回転可能に支持されている。ベアリングポケット118は、ベアリングキャップ72によって覆われている。上述のように、第1ロータシャフト84は、駆動プーリ70が取付けられるベアリング104によって第2ロータシャフト軸86回りに回転可能に支持されている。
【0023】
図13、25及び26を参照して、ブロワ出口68のベアリング108、110及びタイミングギヤ96、98に対する特別な配置が比較的コンパクトな構造を可能にしている。具体的には、ロータボアハウジング64は、第1及び第2ロータボア88、90からブロワ出口68へ下方に向けて角度がつけられた湾曲面120(図13、20、25及び26参照)を含む。湾曲面120がブロワ出口68に向かって延びるので、湾曲面120は、直接、ベアリング108、110の真下に、また、直接、タイミングギヤ96、98の部分の真下に延びている。これにより、ブロワ出口68は、少なくとも一部が前後方向においてベアリング108、112及びタイミングギヤ96、98と重なって、ルーツ型ブロワ50の全長を比較的コンパクトにすることを可能にする。図13に示されるように、ベアリング108、110及びブロワ出口68は、第1及び第2ロータシャフト軸82、86に対して垂直な基準平面122を横切っている。
【0024】
図17〜26は、ロータボアハウジング64を様々な視点から図示している。好ましい実施形態では、ロータボアハウジング64は、ポリマー構造を有し、射出形成法等の成型法を利用して製造される。特定の実施形態では、このポリマー構造は、基材としてポリマー材料を含み、また、ロータボアハウジング64の構造的な強化に役立つ強化要素(例えば、グラスファイバー、アラミド糸、カーボンファイバー等の強化用繊維)を含む。ポリマー基材の例は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(ナイロン)66(PA66)、ポリアミド(ナイロン)46(PA46)等のポリアミド/ナイロン、及び、ポリフタルアミド(PPA)を含む。図示の実施形態では、ロータボアハウジング64の全体が一つの継目のない一体部品として成型されている。これにより、ロータボアハウジング64は、第1及び第2ロータボア88、90及びこれらに対応するベアリングポケット112、114の両方を含むワンピースで継目のない一体ハウジングを提供する。
【0025】
図18を参照して、ブロワ出口68の端部にフランジ124が設けられている。出口通路は、フランジ124へ延びるベル状の湾曲部171を形成する。
【0026】
図17及び20を参照して、ロータボアハウジング64は、ロータボアハウジング64の前端部でロータボアハウジング64の本体から前方に突出する軸方向突出部126を含む。軸方向突出部126は、第1ロータボア88に対応する第1円筒状部分128及び第2ロータボアに対応する第2円筒状部分130を含む。第1及び第2円筒状部分128、130は、頂部132で交わる。第1及び第2円筒状部分128、130は、頂部132に隣接して略三角形の中間部分134を形成する。特定の実施形態では、ロータボアハウジング64の構造的特性の向上及び振動及び関連する騒音の減少に役立てるために、1つ又はそれ以上の強化部材(例えば、強化ロッド、強化バー等)を三角形の中間部分内にモールドすることができる。引続き図17を参照して、軸方向突出部126の本体の外側表面に複数の軸方向のリブ136が設けられている。軸方向のリブ136は、互いに平行で、第1及び第2ロータシャフト軸82、86に平行に延びている。
【0027】
図27〜34は、入口ハウジング60を様々な視点から図示している。好ましい一実施形成では、入口ハウジング60は、アルミニウム等の金属材料で構成されている。特定の実施形態では、入口ハウジング60は、アルミニウム又は他の材料から製造された鋳造部品である。他の実施形態では、入口ハウジング60は、ポリマー構造を有することができる。例えば、特定の実施形態では、入口ハウジング60は、必要な部位でハウジングを強化するための金属インサート等の強化インサートを有するポリマー材料で構成することができる。一実施形態では、そのようなインサートは、入口ハウジング60の能力を増強してプーリ70にかかるベルトの荷重を支持するために設けることができる。
【0028】
金属で構成されたハウジング60の一つの利点は、入口ハウジング60が比較的精密な公差で製造することができることである。特定の実施形態では、入口ハウジング60は、金属で構成されて、軸方向突出部126を受入れる寸法の精密な公差(例えば、精密に機械加工された)を有する案内受部140を含み、位置決め接合部66(図13参照)を提供する。軸方向突出部126と同様、案内受部140は、入口ハウジング60がロータボアハウジング64に結合されたとき、ロータシャフト軸82、86と同心になるように構成された第1円筒状部分142及び第2円筒状部分144を有する。また、案内受部140は、三角形の中間部分145を有する。当然のことながら、案内受部140は、軸方向突出部126を受入れて案内する寸法である。軸方向突出部126が案内受部140に結合したとき、案内受部140及び軸方向突出部126の壁部間の接触により、軸方向突出部126が、円筒状部分128、130が第1及び第2ロータシャフト軸82、86に対して同心となる位置へ向けて押付けられる。これにより、案内受部140は、第1及び第2ロータボア88、90の同心度を確保するのに役立つ案内機能を提供する。また、入口ハウジング60は、ロータボアハウジング64の対応する受部149(図17参照)に結合する案内突出部147(図27及び31参照)を含む。案内突出部147は、ロータボア88、90の所望の曲率及び同心度に合致する湾曲部(例えば、円筒状部分147a、147b)を有する。
【0029】
図27に示されるように、ブロワ入口62は、略長方形の形状である。入口ハウジング60がロータボアハウジング64に取付けられたとき、入口ハウジング60内の湾曲されて角度がつけられた表面150は、ブロワ入口62からの流れを第1及び第2ロータボア88、90へ送る。
【0030】
図35は、第2ルーツ型ロータ78を示している。図示のルーツ型ロータ78は、対応するロータシャフト80、84から外方に突出する突出部200を含む。突出部200の間にポケット202が形成されている。好ましい一実施形態では、突出部200の外周縁部204は、切刃として機能するように鋭利になっている。ロータ76,78は、好ましくは、金属構造を有している。当然のことながら、第1ルーツ型ロータ76は、同様の突出部及びポケットの構造有している。当然のことながら、他のルーツ型ロータ構造を同様に利用することができる。
【0031】
特定の実施形態では、ロータボアハウジング64には、僅かに小さめの寸法の第1及び第2ロータボア88、90を有するように成型される。ルーツ型ブロワ50の組立時に、ルーツ型ロータ76、78がロータボア88、90内に取付けられる。初期始動時に、ルーツ型ロータ76、78は、これらのそれぞれの軸82、86回りに回転される。このときロータ76、78の切刃がロータボアハウジング64の一部を切取ってロータボア88、90を形成する。このタイプの切削法は、ルーツ型ロータ76、78がこれらのそれぞれの軸82、86回りに回転するとき、ロータボア88、90の内面がルーツ型ロータ76、78の外周縁部204によって形成される形状に一致する形状を有することを確実にする。換言すると、ロータ76、78の刃先がプラスチックのロータボアを正確な直径に切削し、これにより、漏れを減少させて効率を改善する。この比較的正確なロータボア88、90の寸法出しは、円筒状部分92、94に沿ってロータ76、78の外周面とロータボアハウジン部64の壁面との間をエアが通過するのを確実に防止する。これは、この装置の容積効率及び熱効率を向上させるのに役立つ。ブロワの使用中に、エアがロータの端部から漏れて効率が低下するのを防止するため、ロータハウジングのシャフト穴は、ロータのシャフトに緊密になるように寸法出し(例えば、モールド、又は、インサートによって形成)することが望ましい。特定の実施形態では、シャフト穴は、ロータボア側でロータ76、78の突出部/羽根(projections/blades)の基部/根元部(bases/roots)よりも小さい寸法とされている。
【0032】
特定の実施形態では、ルーツ型ブロワ50は、比較的小型であり、比較的小さいエンジン用のスーパチャージャとして使用するのに適している。例えば、一実施形態では、ロータボア88、90は、250立方センチメートル以下の合計容積を形成して、ルーツ型ブロワ50は、1リッター未満又は0.6〜1.0リッターの範囲の排気量を有するエンジンに使用するスーパチャージャとして使用するのに適している。もちろん、本開示の特徴は、同様に、より大きな容量のブロワ―にも適用することができる。
【0033】
上述のように、この設計については、ルーツ型ロータ76、78とロータボアハウジング64の円筒状部分92、94との間の漏れを防止するように構成することが望ましい。この点に関して、ロータボア88、90には、好ましくは2度未満、より好ましくは1度未満、さらに好ましくは0に等しい抜き勾配が設けられる成型法を利用するとよい。
【0034】
特定の実施形態では、ファスナの使用を避けることが望ましい。例えば、様々な部品は、紫外線硬化型接着剤等の接着剤の使用により一体に結合することができる。一実施形成では、ロータボア64は、紫外線硬化型接着剤等の接着剤によって入口ハウジング60に結合される。当然のことながら、入口ハウジング6の形の金属製部品によって形成されていると共に、ベアリング108、110、タイミングギヤ96、98及び各ルーツ型ロータ76、78の大部分は、好ましくはポリマー(例えば、プラスチック)製のロータボアハウジング64内に設けられている。同様に、ブロワ出口68は、ポリマー製のロータボアハウジング64に設けられている。当然のことながら、ロータボアハウジング64のポリマー構造は、金属と比べて、消音及び振動減衰特性を改善する。これにより、ポリマー製ロータボアの利用は、ブロワ出口を通るエアの急速な流れによって生じる騒音を減衰するのに役立てることができ、また、ギヤラトルに関する騒音の減衰あるいは抑制に役立てることができる。
【0035】
特定の実施形態(図36参照)では、ベアリング108、110とロータボアハウジング64との間にプラスチック又は金属のシールド300が設けられている。特定の実施形態では、シールド300は、ロータシャフト80、84を受入れるための中心穴302を有するカップ状とすることができる。シールド300は、段付構造を有するように図示されている。段付構造は、径方向の段部によって互いに間隔を有する第1、第2及び第3環状リング304、306及び308を含む。第1環状リングは、ベアリング108、110の外側レースに係合する。段付構造は、好ましくは、ロータボアハウジング64の内側のボアの形状に一致する。第3環状リング308は、ロータボアハウジング64とロータシャフト80、84との間に設けられて、ロータボア88、90とギヤ室100との間の分割壁でボアシール面を設けるのに役立てることができる。
【0036】
ロータボアハウジング64を射出形成するのに先立って金属のシールド300がベアリング108、110に圧入されて、射出形成工程中にプラスチックがベアリング108、110に流入、汚染するのを防止する。図36に示されるように、環状リング306にシールが圧入され、環状リング304にベアリング108、110が圧入されている。射出形成工程中に、射出成形型は、閉じてベアリング108、110の第1の面/側をシールすると共に、ベアリング108、110の反対の面/側のシールド300をシールして、インサートモールド工程中にプラスチックがベアリング108、110に侵入するのを防止する。特定の実施形態では、環状リング304、306間の径方向の段部は、ベアリングのレースの厚さに対応する。特定の実施形態では、環状リング308は、ロータシャフト回りに緊密に嵌ってブロワの運転中にエアがシャフトボアを通して漏れるのを抑制する。
【0037】
上述のように、ロータボアハウジング64は、好ましくはポリマー構造を有する。特定の実施形態では、強化用繊維(例えば、アラミドファイバー、グラスファイバー、カーボンファイバー等)がロータボアハウジング64を形成するポリマー基材に埋め込まれる。図37に示されるように、ロータボアハウジング64は、好ましくは、強化用繊維の方向性を考慮して射出成形される。例えば、強化用繊維は、ベアリングポケット112、114に沿って略円周方向に向けられ(矢印400参照)、また、第1及び第2ロータボア88、90に沿って略軸方向(例えば、矢印402によって示されるように、ロータシャフト軸82、86に略平行)に向けられる。
【0038】
以上の詳細な説明から、本開示の技術的思想及び範囲から逸脱することなく、修正及び変更が可能であることは明らかである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37