【氏名又は名称原語表記】BEIJING RESEARCH INSTITUTE OF CHEMICAL INDUSTRY,CHINA PETROLEUM & CHEMICAL CORPORATION
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
合成ゴムラテックス及び/又は天然ゴムラテックスが、天然ゴムラテックス、スチレン−ブタジエンゴムラテックス、カルボキシル化スチレン−ブタジエンゴムラテックス、ニトリルブタジエンゴムラテックス、カルボキシル化ニトリルブタジエンゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックス、ポリブタジエンゴムラテックス、シリコーンゴムラテックス、アクリルゴムラテックス、及びスチレン−ブタジエン−ビニルピリジンゴムラテックスからなる群より選択される1つ以上であることを特徴とする、請求項13に記載の調製方法。
【背景技術】
【0002】
現代生活において、自動車は欠くことのできないツールになりつつある。しかし、自動車の動力は、実質的に、限りある化石油に由来する。同時に、自動車産業の急速な発展は、二酸化炭素の排出削減の圧力にも直面する。そのために、車両の燃料消費を削減する必要性がますます急追したものとなっている。燃料消費を削減することによって、車両操作コストだけではなく二酸化炭素の排出も削減することができ、そして、石油資源についての緊迫が軽減されうる。自動車の設計要因に加えて、タイヤの転がり抵抗も車両の燃料消費に影響する重要な要因である。タイヤの転がり抵抗に起因する燃料消費は、車両の燃料消費全体の14〜17%を占める。一般的に、タイヤの転がり抵抗の10%の低下に対して、燃料消費が1〜2%削減されうると考えられている。従って、タイヤの転がり抵抗を低下させることは、燃料消費の削減の最も重要な方法の1つであると見なされている。
【0003】
しかし、タイヤのゴム材料(主に、トレッドゴム)の転がり抵抗を低下させる研究において、転がり抵抗、濡れ滑り抵抗及び摩耗抵抗が相互に制限される、いわゆる「魔法の三角形」問題という厄介な問題に直面した。軟化剤の量を単に増加させるだけでは、タイヤの濡れ滑り抵抗は改善できるが、摩耗抵抗は減少し、転がり抵抗は増加する。補強充填剤(カーボンブラック又はシリカ)の量を増加させると転がり抵抗をある程度低下させることができるが、補強充填剤はゴム中に均一に分散させることが難しく、それは濡れ滑り抵抗の悪化を招く恐れがある。加硫剤の量を増加させる(すなわち、架橋密度を増加させる)と、補強充填剤の量を増加させたときに得られる効果と同じ効果がもたらされる。すなわち、転がり抵抗は低下するが、一方で、濡れ滑り抵抗が悪化する。上記の3つの特性の均衡を達成ために、タイヤ構造の設計を最適化する試みの他に、ゴム(主に、トレッドゴム)の処方についての広範な研究が世界中で実施されている。一方で、溶液重合スチレン−ブタジエンゴム(SSBR)、トランスポリイソプレン(TPI)、スチレン−イソプレン−ブタジエンゴム(SIBR)、高ビニルブタジエンゴム(HVBR)等の好適なゴム原料を合成することに労力が注がれている。他方では、良好な総合性能を有する修飾剤及び実用的処方の発見に労力が払われている。処方の研究において、いくつかの進展が達成された。代表例として、溶液重合スチレン−ブタジエンゴム(SSBR)等とカーボンブラック及びシリカ又は反転カーボンブラック系の併用が挙げられる。この系は、主要処方が実質的に固定されており補強充填剤だけが可変であること、及び産業化が容易であることを特徴とする。この系の欠点は、配合プロセス中にシランカップリング剤の追加及び設備荷重の増大が必要となること、ならびに加硫ゴムの摩耗抵抗が不十分であることである。
【0004】
過酸化物を使用して直接重合プロセス又は化学架橋プロセスにより製造されたゴムゲルは、適切に処方されたならば加硫ゴムの特性を改善しうる。例えば、欧州特許EP405216及び独国特許DE4220563は、それぞれ、加硫ゴムの疲労による摩耗抵抗及び温度上昇が、ネオプレンゴムゲル又はブタジエンゴムゲルをそれぞれゴム組成物に加えることによって改善されたことを報告している。しかし、濡れ滑り抵抗は減少する。
【0005】
そのために、多くの特許が、修飾ゴムゲルを使用することによって加硫ゴムの特性を改善することをし始めた。例えば、米国特許第6,184,296号において、表面修飾ブタジエンゴムゲル及びスチレン−ブタジエンゴムゲルが使用された(ゲル中のラテックス粒子は、4〜5の膨張指数及び60〜450nmの粒径を有する)。結果として、天然ゴム(NR)処方系の加硫ゴムの転がり抵抗は低下し、強度特性が悪化することはなかった。
【0006】
米国特許第6,133,364号では、クロロメチルスチレンをスチレン−ブタジエンゴムゲルの表面にグラフトし、次に、修飾したゴムゲルをNR処方系で使用した。結果として、加硫ゴムの転がり抵抗は低下し、濡れ滑り抵抗は改善される。
【0007】
米国特許第6,207,757号では、クロロメチルスチレン修飾スチレン−ブタジエンゴムゲルを使用することで、NR処方系での加硫ゴムの転がり抵抗を低下させる効果が得られ、そして同時に、ウェットグリップが改善され、タイヤの寿命が維持された。
【0008】
米国特許第6,242,534号では、カルボキシレート基及びアミノ基をそれぞれ含有するスチレン−ブタジエンゴムゲルが、NR処方系で一緒に使用された。加硫ゴム系の転がり抵抗は低下し、濡れ滑り抵抗は増大したが、一方で、所与の伸長時の応力は著しく増加した。
【0009】
欧州特許EP1431075では、スチレン−ブタジエンゴムゲル及び可塑化デンプンを使用して、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)とブタジエンゴム(BR)の組み合わせを含むシリカ系の特性を改善した。結果として、摩耗抵抗が改善され、転がり抵抗が低下し、加硫ゴムは低比重であった。
【0010】
米国特許第6,699,935号では、修飾スチレン−ブタジエンゴム処方系に、低い転がり抵抗ならびに優れた濡れ滑り抵抗及び摩耗抵抗を付与するために、共重合修飾スチレン−ブタジエンゴムゲルが使用された。
【0011】
上述した特許文献に挙げたゴムゲルは全て、高価な架橋モノマーと高いエネルギー消費を共に必要とする化学架橋プロセスであって、天然ゴム処方系又はスチレン−ブタジエンゴムのシリカ系及び修飾スチレン−ブタジエンゴム処方系に主に関係する化学架橋プロセスによって架橋されている。重要なことは、架橋ゴムゲルを修飾した後に初めて、転がり抵抗、濡れ滑り抵抗及び摩耗抵抗を同時に改善できることである。これらの特許の中で、ゴムゲルの粒径を開示しているものもあるが、これらのどれも、初期の一次粒径で分散を実現できるか否かを、そして、これらのゴムゲルが加硫ゴム中に分散されたときにナノスケールのゴムゲルを介する修飾効果を実際に達成できるか否かを開示していない。
【0012】
発明の開示
当該分野に示される問題に関して、本発明の目的の1つは、修飾ゴム成分とも呼ばれる修飾ゴムマスターバッチを提供することである。そのようなマスターバッチから製造されるゴム組成物の加硫ゴムは、低い転がり抵抗及び優れた濡れ滑り抵抗を示すだけでなく、優れた摩耗抵抗も示し、従って、優れた車両タイヤトレッドゴムとして使用することができる。
【0013】
本発明の別の目的は、修飾ゴムマスターバッチの調製方法を提供することである。
【0014】
本発明のさらに別の目的は、前記修飾ゴムマスターバッチを含むゴム組成物を提供することである。
【0015】
本発明の第四の目的は、前記ゴム組成物の調製方法を提供することである。
【0016】
本発明の第五の目的は、前記ゴム組成物の加硫ゴムを提供することである。
【0017】
本発明は、さらに下記の技術的実施態様に関する:
【0018】
1.非架橋ゴム及びその中に分散した架橋構造を有するゴム粒子を含む修飾ゴムマスターバッチであって、架橋構造を有するゴム粒子が、20〜500nm、好ましくは50〜200nm、より好ましくは70〜200nmの平均粒径、及び60%(重量)以上、好ましくは、75%(重量)以上のゲル分率を有する、合成ゴム粒子及び/又は天然ゴム粒子であり、非架橋ゴムがスチレン−ブタジエンゴムであり;そして、架橋構造を有するゴム粒子と非架橋ゴムの重量比が、20:80より大きく80:20以下である、修飾ゴムマスターバッチ。
【0019】
2.架橋構造を有するゴム粒子が、天然ゴム粒子、スチレン−ブタジエンゴム粒子、カルボキシル化スチレン−ブタジエンゴム粒子、ニトリルブタジエンゴム粒子、カルボキシル化ニトリルブタジエンゴム粒子、クロロプレンゴム粒子、ポリブタジエンゴム粒子、シリコーンゴム粒子、アクリルゴム粒子、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジンゴム粒子からなる群より選択される1つ以上;好ましくは、ニトリルブタジエンゴム粒子、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジンゴム粒子、スチレン−ブタジエンゴム粒子、カルボキシル化スチレン−ブタジエンゴム粒子からなる群より選択される1つ以上;より好ましくは、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジンゴム粒子、ニトリルブタジエンゴム粒子からなる群より選択される1つ以上;最も好ましくは、ニトリルブタジエンゴム粒子であることを特徴とする、実施態様1に記載の修飾ゴムマスターバッチ。
【0020】
3.架橋構造を有するゴム粒子が、均質構造であることを特徴とする、実施態様1又は2に記載の修飾ゴムマスターバッチ。
【0021】
4.架橋構造を有するゴム粒子と非架橋ゴムの重量比が、30:70〜80:20;好ましくは、40:60〜80:20であることを特徴とする、実施態様1〜3のいずれか1つに記載の修飾ゴムマスターバッチ。
【0022】
5.修飾ゴムマスターバッチが、非架橋ゴムラテックス及び架橋構造を有するゴム粒子のラテックスを含む成分を均質になるまで混合し、次に、これらを凝固することによって得られ、ここで、架橋構造を有するゴム粒子のラテックスが、放射線架橋によって得られるゴムラテックスであることを特徴とする、実施態様1〜4のいずれか1つに記載の修飾ゴムマスターバッチ。
【0023】
6.実施態様1〜5のいずれか1つに記載の修飾ゴムマスターバッチの調製方法であって、下記の工程:
(1)合成ゴム及び/又は天然ゴムのラテックスを放射線架橋に供し、それによって、架橋構造、前記ゲル分率そして同時に前記の平均粒径範囲に固定された平均粒径を有する、ラテックス中の合成ゴム及び/又は天然ゴム粒子を提供する工程;
(2)架橋構造を有するゴム粒子と非架橋ゴムの前記重量比に従って、上記の放射線架橋した合成ゴム及び/又は天然ゴムのラテックスと非架橋ゴムのラテックスを均質になるまで混合する工程;
(3)上記の混合したラテックスを凝固して、前記修飾ゴムマスターバッチを得る工程
を含む調製方法。
【0024】
7.合成ゴムラテックス及び/又は天然ゴムラテックスが、天然ゴムラテックス、スチレン−ブタジエンゴムラテックス、カルボキシル化スチレン−ブタジエンゴムラテックス、ニトリルブタジエンゴムラテックス、カルボキシル化ニトリルブタジエンゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックス、ポリブタジエンゴムラテックス、シリコーンゴムラテックス又はアクリルゴムラテックス、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジンゴムラテックス等からなる群より選択される1つ以上;好ましくは、ニトリルブタジエンゴムラテックス、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジンゴムラテックス、スチレン−ブタジエンゴムラテックス、カルボキシル化スチレン−ブタジエンゴムラテックスからなる群より選択される1つ以上;より好ましくは、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジンゴムラテックス、ニトリルブタジエンゴムラテックスからなる群より選択される1つ以上;最も好ましくは、ニトリルブタジエンゴムラテックスであることを特徴とする、実施態様6に記載の調製方法。
【0025】
8.実施態様1〜5のいずれか1つに記載の修飾ゴムマスターバッチとベースゴムのブレンドを含むゴム組成物であって、修飾ゴムマスターバッチが、ベースゴムの100重量部に対して、1〜70重量部、好ましくは、1〜40重量部、より好ましくは、1〜30重量部の量で存在する、ゴム組成物。
【0026】
9.ベースゴムが、天然ゴム、修飾天然ゴム、合成ゴムからなる群より選択される1つ以上;好ましくは、天然ゴム、乳化重合プロセスによって製造されるスチレン−ブタジエン共重合体又はその油展生成物、溶液重合プロセスによって製造されるスチレン−ブタジエン共重合体又はその油展生成物、及び当該分野において公知の任意の重合プロセスによって単量体としてのブタジエンから製造される任意の構造を有するポリブタジエンゴム又はその油展生成物等からなる群より選択される1つ以上;より好ましくは、乳化重合プロセスによって製造されるスチレン−ブタジエン共重合体又はその油展生成物、溶液重合プロセスによって製造されるスチレン−ブタジエン共重合体又はその油展生成物、及び当該分野において公知の任意の重合プロセスによって単量体としてのブタジエンから製造される任意の構造を有するポリブタジエンゴム又はその油展生成物等からなる群より選択されるいずれか1つ以上であることを特徴とする、実施態様8に記載のゴム組成物。
【0027】
10.修飾ゴムマスターバッチとベースゴムを、記載される量で配合して、ゴム組成物を得る工程を含む、実施態様8又は9に記載の調製方法。
【0028】
11.修飾ゴムマスターバッチの調製方法が、下記の工程:
(1)合成ゴム及び/又は天然ゴムのラテックスを放射線架橋に供し、それによって、架橋構造、前記ゲル分率そして同時に前記の平均粒径範囲に固定された平均粒径を有する、ラテックス中の合成ゴム及び/又は天然ゴム粒子を提供する工程;
(2)架橋構造を有するゴム粒子と非架橋ゴムの前記重量比に従って、上記の放射線架橋した合成ゴム及び/又は天然ゴムのラテックスと非架橋ゴムのラテックスを均質になるまで混合する工程;
(3)上記の混合したラテックスを凝固して、前記修飾ゴムマスターバッチを得る工程
を含むことを特徴とする、実施態様10に記載の調製方法。
【0029】
12.実施態様8又は9に記載のゴム組成物から製造された加硫ゴム。
【0030】
I.修飾ゴムマスターバッチ
2000年9月18日に出願人によって提出された国際特許出願WO01/40356(優先日:1999年12月3日)及び2001年6月15日に出願人によって提出された国際特許出願WO01/98395(優先日:2000年6月15日)は、完全に加硫された粉末状ゴムを開示した。該特許は、ゴムラテックスを放射線架橋した後、ラテックス粒子の粒径が固定され、そして、放射線架橋から生じたゴムラテックス中のラテックス粒子(ゴム粒子)の特定のゲル分率のおかげで、その後の乾燥プロセスにおいて接着も凝固も起こらないことを開示した。その研究の中で、発明者等は、そのような放射線架橋したゴムラテックスと非架橋スチレン−ブタジエンゴムラテックスを混合し、次に、これらを凝固することによって、架橋ゴム粒子によって修飾されたスチレン−ブタジエンゴムのゴム組成物が得られるであろうことを発見していた。接着及び凝固は、架橋構造を有する放射線架橋したゴム粒子間では起こらないが、一方で、凝固は、一般的な非架橋スチレン−ブタジエンゴムラテックスのラテックス粒子間で起こりうるため、架橋構造を有するゴム粒子は、非架橋スチレン−ブタジエンゴムラテックスの凝固後に得られた粗ゴムのマトリックス中にそれらの初期粒径で分散され、そして、その分散均一性は、完全に加硫された粉末状ゴムと粗ゴムを直接配合することによって得られる混合物の場合よりも良好である。それによって、修飾ゴムマスターバッチが得られる。
【0031】
得られた修飾ゴムマスターバッチを固体修飾剤として非架橋ブロックゴムに加え、内部ミキサー、二本ローラーミル又はスクリュー押出機等でこれらを混合して、配合ゴムを形成する。そのようにして得られた配合ゴムは、また、架橋構造を有する放射線架橋したゴム粒子が規定の粒径範囲で非架橋ゴムマトリックス中に分散された微細構造を確実にもたらし得る。組成物は、さらに、慣用のゴム加工添加剤と配合され、加硫した後、加硫ゴムが得られる。放射線架橋したゴム粒子は、すでに架橋構造を有するゴム粒子であるので、分散相の加硫を考慮する必要はなく、それによって、異なるゴムを含む組成物の共加硫の問題は解決されうる。同時に、架橋構造を有する放射線架橋したゴム粒子は、加硫ゴム中に非常に小さい初期粒径で均一に分散され、これによって、最終的に得られた加硫ゴムは、低い転がり抵抗と優れた濡れ滑り抵抗の両方、ならびに優れた摩耗抵抗を有することができる。
【0032】
さらに詳しく述べると、本発明の修飾ゴムマスターバッチは、非架橋ゴム及びその中に分散した架橋構造を有するゴム粒子を含む。非架橋ゴムは連続相であり、そして、架橋構造を有するゴム粒子は、分散相である。架橋構造を有するゴム粒子と非架橋ゴムの重量比は、20:80より大きく80:20以下、好ましくは、30:70〜80:20、より好ましくは、40:60〜80:20である。
【0033】
架橋構造を有するゴム粒子は、合成ゴム粒子及び/又は天然ゴム粒子であり、そして、例えば、天然ゴム粒子、スチレン−ブタジエンゴム粒子、カルボキシル化スチレン−ブタジエンゴム粒子、ニトリルブタジエンゴム粒子、カルボキシル化ニトリルブタジエンゴム粒子、クロロプレンゴム粒子、ポリブタジエンゴム粒子、シリコーンゴム粒子又はアクリルゴム粒子、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジンゴム粒子等からなる群より選択される1つ以上;好ましくは、ニトリルブタジエンゴム粒子、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジンゴム粒子、スチレン−ブタジエンゴム粒子、カルボキシル化スチレン−ブタジエンゴム粒子からなる群より選択される1つ以上;より好ましくは、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジンゴム粒子、ニトリルブタジエンゴム粒子からなる群より選択される1つ以上;最も好ましくは、ニトリルブタジエンゴム粒子であってもよい。前記ゴム粒子は、20〜500nm、好ましくは50〜200nm、より好ましくは70〜200nmの平均粒径、及び60%(重量)以上、好ましくは75%(重量)以上、より好ましくは80%(重量)以上のゲル分率を有する。上述した修飾ゴムマスターバッチ中の架橋構造を有するゴム粒子は均質構造であり、そして、グラフト修飾も表面修飾も必要ない。非架橋ゴムは、当該分野において公知の様々なスチレン−ブタジエンゴム、好ましくは、当該分野において公知の乳化重合スチレン−ブタジエンゴム、すなわち、乳化重合によって調製されたスチレン−ブタジエン共重合体から選択してもよい。
【0034】
本発明の修飾ゴムマスターバッチの調製方法は、非架橋ゴムラテックス及び架橋構造のゴム粒子を有する架橋ゴムラテックスを含有する成分を均質になるまで混合し、次に、これらを凝固することを含み、ここで、架橋構造のゴム粒子を有する架橋ゴムラテックスは、放射線架橋後に得られるゴムラテックスである。
【0035】
具体的には、前記修飾ゴムマスターバッチの調製方法は、下記の工程:
(1)ゴムラテックスを放射線架橋に供し、それによって、架橋構造、前記ゲル分率そして同時に前記の平均粒径範囲に固定された平均粒径を有する、ラテックス中のゴム粒子を提供する工程;
(2)架橋構造を有するゴム粒子と非架橋ゴムの前記重量比に従って、上記の放射線架橋したゴムラテックスと非架橋ゴムのラテックスを均質になるまで混合する工程;
(3)上記の混合したラテックスを凝固して、前記修飾ゴムマスターバッチを得る工程
を含む。
【0036】
上述した修飾ゴムマスターバッチの調製方法において、非架橋ゴムのラテックスは、スチレン−ブタジエンゴムラテックスであってもよい。スチレン−ブタジエンゴムラテックスは、当該分野において一般的に知られている合成ゴムラテックスであり、当該分野の乳化重合プロセスによって製造される乳化重合スチレン−ブタジエンラテックス、及び当該分野において公知の任意のプロセスに従って得られるスチレン−ブタジエンブロックゴムを乳化することによって得られるラテックス、好ましくは、当該分野において公知の乳化重合プロセスによって直接製造されるスチレン−ブタジエンラテックスが含まれる。放射線架橋前のゴムラテックスは、当該分野で公知の合成技術によって製造される天然ゴム及び/又は合成ゴムラテックスであってよく、例えば、天然ゴムラテックス、スチレン−ブタジエンゴムラテックス、カルボキシル化スチレン−ブタジエンゴムラテックス、ニトリルブタジエンゴムラテックス、カルボキシル化ニトリルブタジエンゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックス、ポリブタジエンゴムラテックス、シリコーンゴムラテックス又はアクリルゴムラテックス、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジンゴムラテックス等からなる群より選択される1つ以上;好ましくは、ニトリルブタジエンゴムラテックス、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジンゴムラテックス、スチレン−ブタジエンゴムラテックス、カルボキシル化スチレン−ブタジエンゴムラテックスからなる群より選択される1つ以上;より好ましくは、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジンゴムラテックス、ニトリルブタジエンゴムラテックスからなる群より選択される1つ以上;最も好ましくは、ニトリルブタジエンゴムラテックスであってもよい。放射線架橋したゴムラテックスの固体含有量とスチレン−ブタジエンゴムラテックスの固体含有量の重量比は、20:80より大きく80:20以下、好ましくは、30:70〜80:20、より好ましくは、40:60〜80:20である。
【0037】
上記工程(1)のゴムラテックスの放射線架橋は、国際特許出願WO01/40356(1999年12月3日の優先日を有する)に開示される完全に加硫された粉末状ゴムの場合と同じゴムラテックスの放射線架橋プロセスを用いて実施される。放射線架橋後に得られるゴムラテックスはまた、WO01/40356に開示される、放射後であるが乾燥前のゴムラテックスと同じである。
【0038】
より具体的には、ゴムラテックス中に架橋添加剤を場合により使用してもよい。使用される架橋添加剤は、単−、二−、三−、四又は多官能性架橋添加剤及びそれらの任意の組み合わせから選択してもよい。単官能性架橋添加剤の例としては、特に限定されないが、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。二官能性架橋添加剤の例としては、特に限定されないが、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンが挙げられる。三官能性架橋添加剤の例としては、特に限定されないが、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが挙げられる。四官能性架橋添加剤の例としては、特に限定されないが、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが挙げられる。多官能性架橋添加剤の例としては、特に限定されないが、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。本明細書において使用される用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。そのような架橋添加剤は、放射線架橋を促進するものであれば、単独で使用しても、それらの任意の組み合わせで使用してもよい。
【0039】
上記の架橋添加剤は、一般的に、ラテックス中のゴムの乾燥重量に対して、0.1〜10%(重量)、好ましくは、0.5〜9%(重量)、より好ましくは、0.7〜7%(重量)の量で加えられる。
【0040】
放射のための高エネルギー線源は、コバルト線源、UV線又は高エネルギー電子加速器、好ましくは、コバルト線源から選択される。放射線量は、0.1〜30Mrad、好ましくは、0.5〜20Mradの範囲であってもよい。一般的に、放射線量は、放射線架橋後のゴムラテックス中のゴム粒子のゲル分率が、60%(重量)以上、好ましくは、75%(重量)以上、より好ましくは、80%(重量)以上になるようにする。
【0041】
従って、そのような放射線架橋したゴムラテックスと一般的な非架橋スチレン−ブタジエンゴムラテックスを混合して、次に、これらを凝固することによって得られる修飾ゴムマスターバッチにおいて、非架橋の粗スチレン−ブタジエンゴムの連続相中に分散しているゴム粒子の分散相は、WO01/40356に開示される完全に加硫された粉末状ゴムと同じ特徴を有する。つまり、そのような架橋構造を有するゴム粒子は、60%(重量)以上、好ましくは、75%(重量)以上、より好ましくは、80%(重量)以上のゲル分率を有するゴム粒子である。そのような架橋構造を有するゴム粒子の粒子は、各々均質であって、つまり、個々の粒子は組成に関して均一であり、そして、粒子内にラメラ相及び相分離等の不均質現象は、今日入手可能な顕微鏡検査で検出されない。相当するゴムラテックスの放射線架橋のおかげで、架橋構造を有するゴム粒子の粒径は、初期のゴムラテックス中のラテックス粒子の粒径と一致するように固定される。初期のゴムラテックス中のゴム粒子(ラテックス粒子)は、一般的に、20〜500nm、好ましくは、50〜200nm、より好ましくは、70〜200nmの平均粒径を有する。従って、架橋構造を有する放射線架橋したゴム粒子は、一般的に、20〜500nm、好ましくは、50〜200nm、より好ましくは、70〜200nmの平均粒径を有する。このプロセスで凝固する2つのラテックスを均質に混合するおかげで、放射線架橋したゴムラテックス中のゴム粒子は、すでに架橋されて、それによって、特定のゲル分率を有し、これがラテックスの凝固プロセス中の接着又は凝固を不可能にする。さらに、そのような粒子は、非架橋スチレン−ブタジエンゴム中に均一に分散することができる。そのために、最終的に得られた修飾ゴムマスターバッチにおいて、分散相としての架橋構造を有するゴム粒子は、また、20〜500nm、好ましくは、50〜200nm、より好ましくは、70〜200nmの範囲の平均粒径を有する。
【0042】
本発明の修飾ゴムマスターバッチは、非架橋ゴムラテックスと放射線架橋したゴムラテックスを前記重量比で混合し、これらを凝固することによって製造される。調製方法の間、混合工程でこれら2つのゴムラテックスを混合する装置は、すなわち、当該分野において一般的に使用される混合装置であり、高速ミキサー又はニーダー等の機械式混合装置から選択してもよい。ラテックスの凝固のための条件及び装置は、ゴム業界でラテックスの凝固に一般的に使用されるものである。
【0043】
II.ゴム組成物
2000年9月18日に出願人によって提出された国際特許出願WO01/40356(優先日:1999年12月3日)及び2001年6月15日に出願人によって提出された国際特許出願WO01/98395(優先日:2000年6月15日)は、完全に加硫された粉末状ゴムを開示した。該特許は、ゴムラテックスを放射線架橋した後、ラテックス粒子の粒径が固定され、そして、放射線架橋から生じたゴムラテックス中のラテックス粒子(ゴム粒子)の特定のゲル分率のおかげで、その後の乾燥プロセスにおいて接着も凝固も起こらないことを開示した。その研究の中で、発明者等は、そのような放射線架橋したゴムラテックスと非架橋スチレン−ブタジエンゴムラテックスを混合し、次に、これらを凝固することによって、架橋ゴム粒子によって修飾されたスチレン−ブタジエンゴムのゴム組成物が得られるであろうことを発見していた。接着及び凝固は、架橋構造を有する放射線架橋したゴム粒子間では起こらないが、一方で、凝固は、一般的な非架橋スチレン−ブタジエンゴムラテックスのラテックス粒子間で起こりうるため、架橋構造を有するゴム粒子は、非架橋スチレン−ブタジエンゴムラテックスの凝固後に得られた粗ゴムのマトリックス中にそれらの初期粒径で分散され、そして、その分散均一性は、完全に加硫された粉末状ゴムと粗ゴムを直接配合することによって得られる混合物の場合よりも良好である。それによって、修飾ゴム組成物が得られる。
【0044】
得られた修飾ゴムマスターバッチを固体修飾剤として非架橋ブロックゴムに加え、内部ミキサー、二本ローラーミル又はスクリュー押出機等でこれらを混合して、配合ゴムを形成する。そのようにして得られた配合ゴムは、また、架橋構造を有する放射線架橋したゴム粒子が規定の粒径範囲で非架橋ゴムマトリックス中に分散された微細構造を確実にもたらし得る。組成物は、さらに、慣用のゴム加工添加剤と配合し、加硫した後、加硫ゴムが得られる。放射線架橋したゴム粒子は、すでに架橋構造を有するゴム粒子であるので、分散相の加硫を考慮する必要はなく、それによって、異なるゴムを含む組成物の共加硫の問題は解決されうる。同時に、架橋構造を有する放射線架橋したゴム粒子は、加硫ゴム中に非常に小さい初期粒径で均一に分散され、これによって、最終的に得られた加硫ゴムは、低い転がり抵抗と優れた濡れ滑り抵抗の両方、ならびに優れた摩耗抵抗を有することができる。
【0045】
具体的には、本発明のゴム組成物は、修飾ゴム成分とベースゴムのブレンドを含み、ここで、修飾ゴム成分は、ベースゴムの100重量部に対して、1〜70重量部、好ましくは、1〜40重量部、より好ましくは、1〜30重量部の量で存在する。
【0046】
ベースゴムは、天然ゴム、修飾天然ゴム、合成ゴムからなる群より選択される1つ以上;好ましくは、自動車タイヤ、特に、自動車トレッドゴムの調製に適する当該分野において公知の合成ゴム又は天然ゴムであってもよい。例えば、ベースゴムは、天然ゴム、乳化重合プロセスによって製造されるスチレン−ブタジエン共重合体又はその油展生成物、溶液重合プロセスによって製造されるスチレン−ブタジエン共重合体又はその油展生成物、当該分野において公知の任意の重合プロセスによって単量体としてのブタジエンから製造される任意の構造のポリブタジエンゴム又はその油展生成物等からなる群より選択される1つ以上;好ましくは、乳化重合プロセスによって製造されるスチレン−ブタジエン共重合体又はその油展生成物、溶液重合プロセスによって製造されるスチレン−ブタジエン共重合体又はその油展生成物、当該分野において公知の任意の重合プロセスによって単量体としてのブタジエンから製造される任意の構造のポリブタジエンゴム又はその油展生成物等からなる群より選択される1つ以上であってもよい。上記のゴム組成物の調製方法において、修飾ゴム成分は、非架橋ゴム及び非架橋ゴム中に分散した架橋構造を有するゴム粒子を含み、そして、架橋構造を有するゴム粒子と非架橋ゴムの重量比は、20:80より大きく80:20以下、好ましくは、30:70〜80:20;より好ましくは、40:60〜80:20である。
【0047】
非架橋ゴムは、当該分野において公知の様々なスチレン−ブタジエンゴム、好ましくは、当該分野において公知の乳化重合スチレン−ブタジエンゴム、すなわち、乳化重合プロセスによって製造されるスチレン−ブタジエン共重合体であってもよい。
【0048】
架橋構造を有するゴム粒子は、合成ゴム粒子及び/又は天然ゴム粒子であり、例えば、天然ゴム粒子、スチレン−ブタジエンゴム粒子、カルボキシル化スチレン−ブタジエンゴム粒子、ニトリルブタジエンゴム粒子、カルボキシル化ニトリルブタジエンゴム粒子、クロロプレンゴム粒子、ポリブタジエンゴム粒子、シリコーンゴム粒子又はアクリルゴム粒子、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジンゴム粒子等からなる群より選択される1つ以上;好ましくは、ニトリルブタジエンゴム粒子、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジンゴム粒子、スチレン−ブタジエンゴム粒子、カルボキシル化スチレン−ブタジエンゴム粒子からなる群より選択される1つ以上;より好ましくは、ニトリルブタジエンゴム粒子、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジンゴム粒子からなる群より選択される1つ以上;最も好ましくは、ニトリルブタジエンゴム粒子であってもよい。架橋構造を有するゴム粒子は、20〜500nm、好ましくは、50〜200nm、より好ましくは、70〜200nmの平均粒径、及び60%(重量)以上、好ましくは、75%(重量)以上、より好ましくは、80%(重量)以上のゲル分率を有する。修飾ゴム成分中の架橋構造を有するゴム粒子は、均質構造であり、そして、グラフト修飾も表面修飾もしていない。
【0049】
本発明の修飾ゴム成分の調製方法は、非架橋ゴムラテックス及び架橋構造のゴム粒子を有する架橋ゴムラテックスを含有する成分を均質になるまで混合し、次に、これらを凝固することを含み、ここで、架橋構造のゴム粒子を有する架橋ゴムラテックスは、放射線架橋後に得られるゴムラテックスである。
【0050】
具体的には、修飾ゴム成分の調製方法は、下記の工程:
(1)ゴムラテックスを放射線架橋に供し、それによって、架橋構造、前記ゲル分率そして同時に前記の平均粒径範囲に固定された平均粒径を有する、ラテックス中のゴム粒子を提供する工程;
(2)架橋構造を有するゴム粒子と非架橋ゴムの前記重量比に従って、上記の放射線架橋したゴムラテックスと非架橋ゴムのラテックスを均質になるまで混合する工程;
(3)上記の混合したラテックスを凝固して、前記修飾ゴム成分を得る工程
を含む。
【0051】
上記の修飾ゴム成分の調製方法において、非架橋スチレン−ブタジエンゴムラテックスは、当該分野において一般的な合成ゴムラテックスであり、当該分野において公知の乳化重合プロセスによって直接製造される乳化重合スチレン−ブタジエンラテックス、及び当該分野において公知の任意の調製方法によって製造されるスチレン−ブタジエンブロックゴムを乳化することによって得られるラテックス;好ましくは、当該分野において公知の乳化重合プロセスによって直接製造される乳化重合スチレン−ブタジエンラテックスが含まれる。放射線架橋前のゴムラテックスは、当該分野で公知の合成技術によって製造される天然ゴムラテックス及び/又は合成ゴムラテックスであってもよく、例えば、天然ゴムラテックス、スチレン−ブタジエンゴムラテックス、カルボキシル化スチレン−ブタジエンゴムラテックス、ニトリルブタジエンゴムラテックス、カルボキシル化ニトリルブタジエンゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックス、ポリブタジエンゴムラテックス、シリコーンゴムラテックス又はアクリルゴムラテックス、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジンゴムラテックス等からなる群より選択される1つ以上;好ましくは、ニトリルブタジエンゴムラテックス、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジンゴムラテックス、スチレン−ブタジエンゴムラテックス、カルボキシル化スチレン−ブタジエンゴムラテックスからなる群より選択される1つ以上;より好ましくは、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジンゴムラテックス、ニトリルブタジエンゴムラテックスからなる群より選択される1つ以上;最も好ましくは、ニトリルブタジエンゴムラテックスであってもよい。放射線架橋したゴムラテックスの固体含有量とスチレン−ブタジエンゴムラテックスの固体含有量の重量比は、20:80より大きく80:20以下、好ましくは、30:70〜80:20、より好ましくは、40:60〜80:20である。
【0052】
上記工程(1)のゴムラテックスの放射線架橋は、国際特許出願WO01/40356(1999年12月3日の優先日を有する)に開示される完全に加硫された粉末状ゴムの場合と同じゴムラテックスの放射線架橋プロセスを用いて実施される。放射線架橋後に得られるゴムラテックスはまた、WO01/40356に開示される、放射後であるが乾燥前のゴムラテックスと同じである。
【0053】
より具体的には、ゴムラテックス中に架橋添加剤を場合により使用してもよい。使用される架橋添加剤は、単−、二−、三−、四又は多官能性架橋添加剤及びそれらの任意の組み合わせから選択してもよい。単官能性架橋添加剤の例としては、特に限定されないが、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。二官能性架橋添加剤の例としては、特に限定されないが、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンが挙げられる。三官能性架橋添加剤の例としては、特に限定されないが、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが挙げられる。四官能性架橋添加剤の例としては、特に限定されないが、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが挙げられる。多官能性架橋添加剤の例としては、特に限定されないが、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが挙げられる。本明細書において使用される用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。そのような架橋添加剤は、放射線架橋を促進するものであれば、単独で使用しても、それらの任意の組み合わせで使用してもよい。
【0054】
上記の架橋添加剤は、一般的に、ラテックス中のゴムの乾燥重量に対して、0.1〜10%(重量)、好ましくは、0.5〜9%(重量)、より好ましくは、0.7〜7%(重量)の量で加えられる。
【0055】
放射のための高エネルギー線源は、コバルト線源、UV線又は高エネルギー電子加速器、好ましくは、コバルト線源から選択される。放射線量は、0.1〜30Mrad、好ましくは、0.5〜20Mradの範囲であってもよい。一般的に、放射線量は、放射線架橋後のゴムラテックス中のゴム粒子のゲル分率が、60%(重量)以上、好ましくは、75%(重量)以上、より好ましくは、80%(重量)以上になるようにする。
【0056】
従って、そのような放射線架橋したゴムラテックスと一般的な非架橋スチレン−ブタジエンゴムラテックスを混合して、次に、これらを凝固することによって得られる修飾ゴム成分において、非架橋の粗スチレン−ブタジエンゴムの連続相中に分散しているゴム粒子の分散相は、WO01/40356に開示される完全に加硫された粉末状ゴムと同じ特徴を有する。つまり、そのような架橋構造を有するゴム粒子は、60%(重量)以上、好ましくは、75%(重量)以上、より好ましくは、80%(重量)以上のゲル分率を有するゴム粒子である。そのような架橋構造を有するゴム粒子の粒子は、各々均質であって、つまり、個々の粒子は組成に関して均一であり、そして、粒子内にラメラ相及び相分離等の不均質現象は今日入手可能な顕微鏡検査で検出されない。相当するゴムラテックスの放射線架橋のおかげで、架橋構造を有するゴム粒子の粒径は、初期のゴムラテックス中のラテックス粒子の粒径と一致するように固定される。初期のゴムラテックス中のゴム粒子(ラテックス粒子)は、一般的に、20〜500nm、好ましくは、50〜200nm、より好ましくは、70〜200nmの平均粒径を有する。従って、架橋構造を有する放射線架橋したゴム粒子は、一般的に、20〜500nm、好ましくは、50〜200nm、より好ましくは、70〜200nmの平均粒径を有する。このプロセスで凝固される2つのラテックスを均質に混合することに起因して、放射線架橋したゴムラテックス中のゴム粒子は、すでに架橋されて、それによって、特定のゲル分率を有し、これがラテックスの凝固プロセス中の接着又は凝固を不可能にする。さらに、そのような粒子は、非架橋スチレン−ブタジエンゴム中に均一に分散することができる。そのために、最終的に得られた修飾ゴム成分において、分散相としての架橋構造を有するゴム粒子は、また、20〜500nm、好ましくは、50〜200nm、より好ましくは、70〜200nmの範囲の平均粒径を有する。
【0057】
本発明の修飾ゴムマスターバッチは、非架橋ゴムラテックスと放射線架橋したゴムラテックスを前記重量比で混合し、これらを凝固することによって製造される。調製方法の間、混合工程でこれら2つのゴムラテックスを混合する装置は、すなわち、当該分野において一般的に使用される混合装置であり、高速ミキサー又はニーダー等の機械式混合装置から選択してもよい。ラテックスの凝固のための条件及び装置は、ゴム業界でラテックスの凝固に一般的に使用されるものである。
【0058】
本発明のゴム組成物の調製は:
第一に、修飾ゴム成分を生成すること、すなわち、ゴムラテックスを放射線によって架橋し、ラテックス中のゴム粒子が架橋構造を有するようにし、次に、放射線架橋したゴムラテックスと非架橋スチレン−ブタジエンゴムラテックスを一般的に使用される混合装置中で混合し、これらを当該分野において一般的に使用されるゴムラテックスの凝固プロセスによって凝固して、修飾ゴム成分を生成すること;
第二に、固体修飾剤としての修飾ゴム成分と非架橋ブロックベースゴムを、ゴム用の慣用の他の添加剤と共に、ゴム業界で一般的なゴム配合プロセスによって配合して、ゴム組成物を製造すること
を含む。
【0059】
具体的には、本発明のゴム組成物の調製方法は、下記の工程:
(1)ゴムラテックスを放射線架橋に供し、それによって、架橋構造、前記ゲル分率そして同時に前記の平均粒径範囲(例えば、20〜500nm、好ましくは、50〜200nm、より好ましくは、70〜200nmの範囲)に固定された平均粒径を有する、ラテックス中のゴム粒子を提供する工程;
(2)架橋構造を有するゴム粒子と非架橋スチレン−ブタジエンゴムの前記重量比に従って、上記の放射線架橋したゴムラテックスと非架橋スチレン−ブタジエンゴムのラテックスを均質になるまで混合する工程(ここで、放射線架橋したゴムラテックスの固体含有量とスチレン−ブタジエンゴムラテックスの固体含有量の重量比は、20:80より大きく80:20以下、好ましくは、30:70〜80:20、より好ましくは、40:60〜80:20である);
(3)上記の混合したラテックスを凝固して、修飾ゴム成分を得る工程;
(4)上記で得られた修飾ゴム成分とベースゴムを前記の量で配合して、ゴム組成物を製造する工程(ここで、修飾ゴム成分は、ベースゴムの100重量部に対して、1〜70重量部、好ましくは、1〜40重量部、より好ましくは、1〜30重量部の量で存在する)
を含む。
【0060】
本発明のゴム組成物は、ゴム加工分野において一般的に使用される充填剤をさらに含んでもよい。以下の物質が、本発明の配合ゴム及び加硫ゴムの調製に特に適する充填剤である:カーボンブラック、シリカ、金属酸化物、ケイ酸塩、炭酸塩、硫酸塩、水酸化物、ガラス繊維、ガラスマイクロビーズ等又はそれらの任意の混合物。金属酸化物は、好ましくは、酸化チタン、アルミナ、マグネシア、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化亜鉛等からなる群より選択される少なくとも1つである。本発明のゴム組成物は、また、ゴム加工及び加硫において一般的に使用される添加剤、例えば、架橋剤、加硫促進剤、抗酸化剤、熱安定剤、光安定剤、オゾン安定剤、加工助剤、可塑剤、軟化剤、ブロッキング防止剤、発泡剤、染料、顔料、ロウ、増量剤、有機酸、難燃剤及びカップリング剤等を含有することができる。上記の添加剤は、それらの慣用の用量で使用され、実際の状況に応じて調整することができる。
【0061】
上記の様々な添加剤は、固体修飾剤としての修飾ゴム成分とベースゴムブロックを配合するとき、すなわち、一般的なゴム配合プロセス中に加えることができる。二本ローラーミル、内部ミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機等のゴム業界で慣用の装置及びプロセスを使用してよい。
【0062】
本発明のゴム組成物から製造される加硫ゴムは、ゴム業界で慣用の加硫系及びプロセスを使用して、上記の本発明のゴム組成物を配合及び加硫することによって得られる。
【0063】
本発明のゴム組成物からの加硫ゴムの製造は、加硫系によって影響を受けないであろうから、加硫は、通常の硫黄加硫系で実施しても非硫黄加硫系で実施してもよい。本発明のゴム組成物から製造される加硫ゴムは、加硫プロセスによって影響を受けないであろうから、加硫は、プレート加硫、射出成形加硫、加硫機による加硫、個別の加硫機による加硫、塩浴加硫、流動床加硫、マイクロ波加硫、高エネルギー放射線加硫等であってもよい。
【0064】
本発明のゴム組成物から加硫ゴムを製造するための配合及び加硫プロセスは、二本ローラーミル、内部ミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機等のゴム業界において慣用のプロセス及び装置によって実施することができる。
【0065】
具体的には、上述した本発明の修飾ゴム成分は、非架橋スチレン−ブタジエンゴムが連続相であり、一方で、架橋構造を有するゴム粒子が、20〜500nmの範囲の微粒子径を有する分散相である、微視的相状態である。修飾ゴム成分とベースゴムを配合することによって得られるゴム組成物から製造される加硫ゴムは、依然として同じ微細構造をもち、すなわち、修飾ゴム成分中の架橋構造を有するゴム粒子は、依然として20〜500nmの微粒子径でゴムマトリックス中に分散される。
【0066】
本発明のゴム組成物中の修飾ゴム成分において、ゴムラテックス中のゴム粒子の粒径が、放射線架橋によって、初期のラテックス粒子の粒径の範囲に固定されるので、放射線架橋したゴム粒子は、凝固プロセス中に分散相として作用し、そして、非架橋スチレン−ブタジエンゴム中に20〜500nmの微粒子径で均一に分散される。修飾剤としてのそのような修飾ゴム成分とベースゴムを配合することによって得られるゴム組成物から製造される加硫ゴムは、依然として同じ微細構造をもつ。つまり、修飾ゴム成分中の架橋構造を有するゴム粒子は、依然として20〜500nmの微粒子径でゴムマトリックス中に分散される。そのような微細形態によって、架橋構造を有するゴム粒子がナノ効果を発揮して、加硫プロセス中に起こる異なるゴムの共加硫の問題を解決することができ、それによって、本発明のゴム組成物から製造される加硫ゴムが、比較的低い転がり抵抗及び顕著な濡れ滑り抵抗を有するだけでなく、優れた摩耗抵抗も有することから、高性能のトレッドゴムとして使用することができる。また、上記の3つのパラメーターに関する具体的な要件に従って他の添加剤を加えることによって、ゴム組成物の全体の性能を調整することができ、それによって、異なる性能要件に合った車両トレッドゴムを製造する大きな余地が残る。
【0067】
本発明のゴム組成物及びその加硫ゴムの調製方法は、当該分野で一般的なプロセス条件により容易に実施及び稼働させることができ、従って、広範な用途に使用することができる。
【0068】
発明を実施するための形態
下記の実施例は、本発明をさらに実証するために提供される。しかし、本発明は、決してそれらに限定されるものではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0069】
(I)実施例の実験データは、下記の装置及び測定方法を用いて決定される:
(1)転がり抵抗:転がり力の損失を決定するために、RSS−IIゴム転がり抵抗試験機(Beijing Rubberinfo Co. Ltd.から)を使用する。
【0070】
所定の負荷をかけ、一定速度で移動する車輪形状のゴム被検物を、密着させた車輪ドラムと相対的に移動させる。車輪ドラムと接触しているゴム被検物の表面が負荷効果によって歪み、その歪度は、最初の接触点から中間点まで徐々に増加し、そして、中間点から残りの地点まで徐々にゼロに向かって減少する。様々なゴム処方の異なる粘弾性特性に起因して、最初の接触点から中間点までの歪みの間の合力は、中間点から残りの地点までの逆戻りの間の合力より高いだろう。負荷力と平行なこの力は、すなわち、ゴム被検物の力の損失値(J/r)であり、ゴム処方の転がり抵抗を特徴付けるために使用することができる。
【0071】
転がり抵抗指数(%):純粋なゴムの転がり抵抗値を基準として決定する。転がり抵抗指数は、純粋なゴムの転がり抵抗値に対する、他の修飾ゴムの測定値のパーセントとして計算される。
【0072】
(2)摩耗抵抗特性の決定:GB/T 1689-1998に従って、加硫ゴムの摩耗値は、WML−76モデルAkron摩耗試験機を使用して測定される。
【0073】
そのような決定の規則:被検物を、砥石車上で、特定の傾斜角で特定の負荷をかけて摩擦し、次に、特定の距離後の摩耗量を決定する。
【0074】
摩耗量は、下記のように計算される:
V=(m
1−m
2)/ρ
[式中、
V-被検物の摩耗量(cm
3)
m
1-摩擦する前の被検物の質量(g)
m
2-摩擦した後の被検物の質量(g)
ρ-被検物の密度(cm
3)]
【0075】
被検物の摩耗指数は、下記のように計算される:
摩耗指数=V
t/V
s×100%
[式中、
V
s−標準処方のゴムの摩耗量
V
t−修飾ゴムの摩耗量]
【0076】
摩耗指数(%):純粋なゴムの摩耗量値を基準として決定する。摩耗指数は、純粋なゴムの摩耗量値に対する、他の修飾ゴムの測定した摩耗量値のパーセントとして計算される。
【0077】
(3)動的機械特性の決定(濡れ滑り抵抗の測定):10Hz、歪み0.5%及びランプ速度2℃/分の試験条件で、US Rheometric Scientific CorporationからのDMTA IV(動的機械熱分析計)を使用する。
【0078】
湿潤表面のゴム材料の摩擦は、ヒステリシス損失に関連し、そして、濡れ滑り抵抗は、一般的に、0℃でのtanδによって特徴付けられる。0℃でのtanδ値が大きいほど、濡れた道路でのタイヤのグリップ性能が良好であることを示す。
【0079】
濡れ滑り抵抗指数(%):純粋なゴムの測定した濡れ滑り抵抗値tanδを基準として使用し、濡れ滑り抵抗指数は、純粋なゴムの濡れ滑り抵抗値に対する、他の修飾ゴムの測定した濡れ滑り抵抗値のパーセントとして計算される。
【0080】
(4)機械特性:関連する標準仕様に従って決定される。
【0081】
(5)放射線架橋したゴムラテックス中のゲル分率の決定:特定の条件下で放射線架橋した後のラテックスを噴霧乾燥して、完全に加硫された粉末状ゴムを製造する。完全に加硫された粉末状ゴムのゲル分率を、国際特許出願WO01/40356(1999年12月3日の優先日を有する)に開示されるプロセスによって決定し、これは放射線架橋したゴムラテックスのゲル分率に相当する。
【0082】
(II)修飾ゴムマスターバッチ及び乳化重合スチレン−ブタジエンゴム組成物の実施例及び比較例
原料:
乳化重合スチレン−ブタジエンゴムラテックスSBR1502:固体含有量20wt%、スチレン単位含有量23wt%、ムーニー粘度50、Qilu Petrochemical Corporationのゴムプラントから入手可能
乳化重合スチレン−ブタジエンゴム:SBR1500ブランドのブロック粗ゴム、南通のSHENHUA Chemical Industrialから入手可能
ニトリルブタジエンゴムラテックス:ブランド:ニトリル−26、肇東市のTIANYUAN Chemical Industrialから入手可能
カーボンブラック:N234、TIANJIN DOLPHIN CARBON BLACK DEVELOPMENT CO. LTDから入手可能
酸化亜鉛:市販品
ステアリン酸:市販品
硫黄:臨沂市のLUOZHUANG化学プラント
促進剤TBBS:N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、鄭州市のJINSHAN化学プラント
塩化カルシウム:市販品
デンプン:市販品
グリセロール:市販品
5%石炭酸溶液:市販品
【0083】
ラテックスの凝固のためのプロセス:
凝固剤溶液を表1に示す処方に従って処方した。次に、ゴムラテックスを、凝固剤溶液の重量と等量で、凝固剤溶液に加えた。15分間撹拌した後、固体ゴム(粗ゴム)を濾過、洗浄及び乾燥することによって得た。
【0084】
【表1】
【0085】
配合ゴムの調製及び加硫プロセス:
セクションI:
操作は、容量1.57Lのバンバリーミキサー(Farrel Bridge Corporation, UKの製品)内で、80r・min
-1のローター速度で実施した。具体的なプロセスは、乳化重合スチレン−ブタジエン粗ゴム又は本発明の修飾ゴム成分及び乳化重合スチレン−ブタジエン粗ゴムをそれぞれと、カーボンブラック及びその他の添加剤(硫黄及び促進剤は除く)を加え、ルーフボルトを取り付け、3分間混合し、次に、ゴムを排出すること(150〜160℃の温度で)を含んだ。
【0086】
セクションII:
上記セクション1に記載した配合ゴムに硫黄、促進剤を加えた後、XK−160二本ローラーミル(Shang Hai Rubber Machinery Factoryによって製造)によってその材料を6回薄膜化し、次に、バッチアウトした。そして、混合物を正の硫化時間T
90に従って160℃で加硫処理し、その後、加硫ゴム試料から標準試料片を製造した。様々な機械特性を試験し、その結果を表3に示した。配合ゴムの処方を表2に示した(単位は、重量部である)。
【0087】
実施例1
1.修飾ゴム成分の調製:
(1)放射線架橋したニトリルブタジエンゴムラテックスの調製:
45wt%の固体含有量を有するニトリルブタジエンゴムラテックス(ニトリル−26)と共に、架橋添加剤トリメチロールプロパントリアクリレートを、ニトリルブタジエンゴムラテックスの固体含有量に対して3wt%の量で加えた。次に、混合物を放射線量3.0Mradの放射線架橋に供し、放射線架橋したニトリルブタジエンゴムラテックスを調製した。その放射線架橋したニトリルブタジエンゴム粒子の平均粒径は100nmであり、ゲル分率は91%である。
【0088】
(2)ラテックスの混合及び凝固:
放射線架橋後のニトリルブタジエンゴムラテックスを、特定の固体含有量比で、非架橋の乳化重合スチレン−ブタジエンゴムラテックスSBR1502に加えた。その放射線架橋したニトリルブタジエンゴムラテックス中の固体含有量と非架橋の乳化重合スチレン−ブタジエンゴムラテックス中の固体含有量の重量比は、50:50であった。撹拌器で15分間高速撹拌した後、上述したラテックス凝固プロセスに従って凝固を実施して、固体の修飾ゴム成分Aを製造した。凝固剤溶液の組成は、表1に示す組成と同じであった。
【0089】
2.乳化重合スチレン−ブタジエンゴム組成物及びその加硫ゴムの調製:
上記で得られた修飾剤としての修飾ゴム成分Aを、他の添加剤と共に、ブロック粗ゴム(乳化重合スチレン−ブタジエンゴムSBR1500)に加えて混合し、配合ゴムを製造して、その処方(重量部)を表2に示した。配合ゴムの調製方法及び加硫プロセスは、上述したプロセスと同じであった。加硫ゴム被検物シートを標準被検物片に加工して、様々な機械特性を測定した。その結果を表3に示した。
【0090】
実施例2
1.修飾ゴム成分の調製:
放射線架橋したニトリルブタジエンゴムラテックスの調製とラテックスの混合及び凝固を、放射線架橋したニトリルブタジエンゴムラテックスの固体含有量と非架橋の乳化重合スチレン−ブタジエンゴムラテックスの固体含有量の重量比を80:20に変更した以外は実施例1に記載したプロセスと同じプロセスに従って実施した。固体の修飾ゴム成分Bを得た。
【0091】
2.乳化重合スチレン−ブタジエンゴム組成物及びその加硫ゴムの調製:
上記で得られた修飾剤としての修飾ゴム成分Bを、他の添加剤と共に、ブロック粗ゴム(乳化重合スチレン−ブタジエンゴムSBR1500)に加えて混合し、配合ゴムを製造して、その処方(重量部)を表2に示した。配合ゴムの調製方法及び加硫プロセスは、上述したプロセスと同じであった。加硫ゴム被検物シートを標準被検物片に加工して、様々な機械特性を測定した。その結果を表3に示した。
【0092】
比較例1
純粋な乳化重合スチレン−ブタジエンゴムの粗ゴム(乳化重合スチレン−ブタジエンゴムSBR1500)を、実施例1の工程2に記載したものと同じ配合及び加硫プロセスに従って配合及び加硫した。具体的なゴム組成物の配合ゴムの処方を表2に示した。加硫ゴムの特性を表3に示した。
【0093】
【表2】
【0094】
【表3】
【0095】
表3に示す結果からわかるように、本発明のゴム組成物から製造された加硫ゴムは、転がり抵抗指数、摩耗指数及び濡れ滑り抵抗指数が同時に改善され、それにより、製造された加硫ゴムが、より低い転がり抵抗及び優れた濡れ滑り抵抗を有するだけでなく、顕著な摩耗抵抗も有することが可能になった。その理由は、架橋構造を有する放射線架橋したニトリルブタジエンゴム粒子が、50〜200nmの微粒子径で、乳化重合スチレン−ブタジエンゴムマトリックスの連続相中に均一に分散したからである。本発明のゴム組成物のそのような特徴から、該ゴム組成物はトレッドゴムに特に適する。本発明のゴム組成物の「魔法の三角形」の3つのパラメーターが全て改善されているので、他の添加剤を3つのパラメーターに関する実際の適用における具体的な要件に従って加えることによって、ゴム組成物の総合特性を調節することが可能となり、それによって、異なる特性要件に合ったトレッドゴムを製造する大きな余地が残される。
【0096】
(III)修飾ゴムマスターバッチ及び油展乳化重合スチレン−ブタジエンゴム組成物の実施例及び比較例
原料:
乳化重合スチレン−ブタジエンゴムラテックスSBR1502:固体含有量20wt%、スチレン単位含有量23wt%、ムーニー粘度50、Qilu Petrochemical Corporationのゴムプラントから入手可能
油展乳化重合スチレン−ブタジエンゴム:SBR1712ブランドの油展ブロック粗ゴム、China Petrochemical CorporationのQilu Petrochemical Corporation branchから入手可能
ニトリルブタジエンゴムラテックス:ニトリル−26ブランド、肇東市のTIANYUAN Chemical Industrialから入手可能
カーボンブラック:N234、TIANJIN DOLPHIN CARBON BLACK DEVELOPMENT CO. LTDから入手可能
酸化亜鉛:市販品
ステアリン酸:市販品
硫黄:臨沂市のLUOZHUANG化学プラント
促進剤TBBS:N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、河南省のJINSHAN化学プラント
塩化カルシウム:市販品
デンプン:市販品
グリセロール:市販品
5%石炭酸溶液:市販品
【0097】
ラテックスの凝固のためのプロセス:
凝固剤溶液を表4に示す処方に従って処方した。次に、ゴムラテックスを、凝固剤溶液の重量と等量で、凝固剤溶液に加えた。15分間撹拌した後、固体ゴム(粗ゴム)を濾過、洗浄及び乾燥することによって得た。
【0098】
【表4】
【0099】
配合ゴムの調製及び加硫プロセス:
セクションI:
操作は、容量1.57Lのバンバリーミキサー(Farrel Bridge Corporation, UKの製品)内で、80r・min
-1のローター速度で実施した。具体的なプロセスは、油展乳化重合スチレン−ブタジエン粗ゴム又は本発明の修飾ゴム成分及び油展乳化重合スチレン−ブタジエン粗ゴムをそれぞれと、カーボンブラック及びその他の添加剤(硫黄及び促進剤は除く)を加え、ルーフボルトを取り付け、3分間混合し、次に、ゴムを排出すること(150〜160℃の温度で)を含んだ。
【0100】
セクションII:
上記セクション1に記載した配合ゴムに硫黄、促進剤を加えた後、XK−160二本ローラーミル(Shang Hai Rubber Machinery Factoryによって製造)によってその材料を6回薄膜化し、次に、バッチアウトした。そして、混合物を正の硫化時間T
90に従って160℃で加硫処理し、その後、加硫ゴム試料から標準試料片を製造した。様々な機械特性を試験し、その結果を表6に示した。配合ゴムの処方を表5に示した(単位は、重量部である)。
【0101】
実施例3及び4
1.修飾ゴムマスターバッチの調製:
(1)放射線架橋したニトリルブタジエンゴムラテックスの調製:
45wt%の固体含有量を有するニトリルブタジエンゴムラテックス(ニトリル−26)と共に、架橋添加剤トリメチロールプロパントリアクリレートを、ニトリルブタジエンゴムラテックスの固体含有量に対して3wt%の量で加えた。次に、混合物を放射線量3.0Mradの放射線架橋に供し、放射線架橋したニトリルブタジエンゴムラテックスを調製した。その放射線架橋したニトリルブタジエンゴム粒子の平均粒径は100nmであり、ゲル分率は91%である。
【0102】
(2)ラテックスの混合及び凝固:
放射線架橋後のニトリルブタジエンゴムラテックスを、特定の固体含有量比で、非架橋の乳化重合スチレン−ブタジエンゴムラテックスSBR1502に加えた。その放射線架橋したニトリルブタジエンゴムラテックス中の固体含有量と非架橋の乳化重合スチレン−ブタジエンゴムラテックス中の固体含有量の重量比は、50:50であった。撹拌器で15分間高速撹拌した後、上述したラテックス凝固プロセスに従って凝固を実施して、固体の修飾ゴムマスターバッチAを製造した。凝固剤溶液の組成は、表4に示す組成と同じであった。
【0103】
2.油展乳化重合スチレン−ブタジエンゴム組成物及びその加硫ゴムの調製:
上記で得られた修飾剤としての修飾ゴムマスターバッチAを、他の添加剤と共に、ブロック粗ゴム(油展乳化重合スチレン−ブタジエンゴムSBR1712)に加えて混合し、配合ゴムを製造して、その処方(重量部)を表5に示した。配合ゴムの調製方法及び加硫プロセスは、上述したプロセスと同じであった。加硫ゴム被検物シートを標準被検物片に加工して、様々な機械特性を測定した。その結果を表6に示した。
【0104】
実施例5及び6
1.修飾ゴムマスターバッチの調製:
放射線架橋したニトリルブタジエンゴムラテックスの調製とラテックスの混合及び凝固を、放射線架橋したニトリルブタジエンゴムラテックスの固体含有量と非架橋の乳化重合スチレン−ブタジエンゴムラテックスの固体含有量の重量比を80:20に変更した以外は実施例3に記載したプロセスと同じプロセスに従って実施した。固体の修飾ゴムマスターバッチBを得た。
【0105】
2.油展乳化重合スチレン−ブタジエンゴム組成物及びその加硫ゴムの調製:
上記で得られた修飾剤としての修飾ゴムマスターバッチBを、他の添加剤と共に、ブロック粗ゴム(油展乳化重合スチレン−ブタジエンゴムSBR1712)に加えて混合し、配合ゴムを製造して、その処方(重量部)を表5に示した。配合ゴムの調製方法及び加硫プロセスは、上述したプロセスと同じであった。加硫ゴム被検物シートを標準被検物片に加工して、様々な機械特性を測定した。その結果を表6に示した。
【0106】
比較例2
純粋な乳化重合スチレン−ブタジエンゴムの油展粗ゴム(油展乳化重合スチレン−ブタジエンゴムSBR1712)を、実施例3の工程2に記載したものと同じ配合及び加硫プロセスに従って配合及び加硫した。具体的なゴム組成物の配合ゴムの処方を表5に示した。加硫ゴムの特性を表6に示した。
【0107】
【表5】
【0108】
【表6】
【0109】
表6に示す結果からわかるように、本発明のゴム組成物から製造された加硫ゴムは、転がり抵抗指数、摩耗指数及び濡れ滑り抵抗指数が同時に著しく改善され、それにより、生成された加硫ゴムが、より低い転がり抵抗及び優れた濡れ滑り抵抗を有するだけでなく、顕著な摩耗抵抗も有することが可能になった。その理由は、架橋構造を有する放射線架橋したニトリルブタジエンゴム粒子が、50〜200nmの微粒子径で、乳化重合スチレン−ブタジエンゴムマトリックスの連続相中に均一に分散したからである。本発明のゴム組成物のそのような特徴から、該ゴム組成物はトレッドゴムに特に適する。本発明のゴム組成物の「魔法の三角形」の3つのパラメーターが全て改善されているので、他の添加剤を3つのパラメーターに関する実際の適用における具体的な要件に従って加えることによって、ゴム組成物の総合特性を調節することが可能となり、それによって、異なる特性要件に合ったトレッドゴムを製造する大きな余地が残される。
【0110】
(IV)修飾ゴムマスターバッチ及びポリブタジエンゴム組成物の実施例及び比較例
原料:
乳化重合スチレン−ブタジエンゴムラテックスSBR1502:固体含有量20wt%、スチレン単位含有量23wt%、ムーニー粘度50、Qilu Petrochemical Corporationのゴムプラントから入手可能
ポリブタジエンゴムラテックス:BR9000ブランド、China Petrochemical CorporationのYanshan Petrochemical Corporation branchから入手可能
ニトリルブタジエンゴムラテックス:ニトリル−26ブランド、肇東市のTIANYUAN Chemical Industrialから入手可能
カーボンブラック:N234、TIANJIN DOLPHIN CARBON BLACK DEVELOPMENT CO. LTDから入手可能
酸化亜鉛:市販品
ステアリン酸:市販品
硫黄:臨沂市のLUOZHUANG化学プラント
促進剤TBBS:N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、鄭州市のJINSHAN化学プラント
塩化カルシウム:市販品
デンプン:市販品
グリセロール:市販品
5%石炭酸溶液:市販品
【0111】
ラテックスの凝固のためのプロセス:
凝固剤溶液を表7に示す処方に従って処方した。次に、ゴムラテックスを、凝固剤溶液の重量と等量で、凝固剤溶液に加えた。15分間撹拌した後、固体ゴム(粗ゴム)を濾過、洗浄及び乾燥することによって得た。
【0112】
【表7】
【0113】
配合ゴムの調製及び加硫プロセス:
セクションI:
操作は、容量1.57Lのバンバリーミキサー(Farrel Bridge Corporation, UKの製品)内で、80r・min
-1のローター速度で実施した。具体的なプロセスは、ポリブタジエン粗ゴム又は本発明の修飾ゴム成分及びポリブタジエン粗ゴムをそれぞれと、カーボンブラック及びその他の添加剤(硫黄及び促進剤は除く)を加え、ルーフボルトを取り付け、3分間混合し、次に、ゴムを排出すること(150〜160℃の温度で)を含んだ。
【0114】
セクションII:
上記セクション1に記載した配合ゴムに硫黄、促進剤を加えた後、XK−160二本ローラーミル(Shang Hai Rubber Machinery Factoryによって製造)によってその材料を6回薄膜化し、次に、バッチアウトした。そして、混合物を正の硫化時間T
90に従って160℃で加硫処理し、その後、加硫ゴム試料から標準試料片を製造した。様々な機械特性を試験し、その結果を表9に示した。配合ゴムの処方を表8に示した(単位は、重量部である)。
【0115】
実施例7
1.修飾ゴムマスターバッチの調製:
(1)放射線架橋したニトリルブタジエンゴムラテックスの調製:
45wt%の固体含有量を有するニトリルブタジエンゴムラテックス(ニトリル−26)と共に、架橋添加剤トリメチロールプロパントリアクリレートを、ニトリルブタジエンゴムラテックスの固体含有量に対して3wt%の量で加えた。次に、混合物を放射線量3.0Mradの放射線架橋に供し、放射線架橋したニトリルブタジエンゴムラテックスを調製した。その放射線架橋したニトリルブタジエンゴム粒子の平均粒径は100nmであり、ゲル分率は91%である。
【0116】
(2)ラテックスの混合及び凝固:
放射線架橋後のニトリルブタジエンゴムラテックスを、特定の固体含有量比で、非架橋の乳化重合スチレン−ブタジエンゴムラテックスSBR1502に加えた。その放射線架橋したニトリルブタジエンゴムラテックス中の固体含有量と非架橋の乳化重合スチレン−ブタジエンゴムラテックス中の固体含有量の重量比は、80:20であった。撹拌器で15分間高速撹拌した後、上述したラテックス凝固プロセスに従って凝固を実施して、固体の修飾ゴムマスターバッチを製造した。凝固剤溶液の組成は、表7に示す組成と同じであった。
【0117】
2.ポリブタジエンゴム組成物及びその加硫ゴムの調製:
上記で得られた修飾剤としての修飾ゴムマスターバッチを、他の添加剤と共に、ブロック粗ゴム(ポリブタジエンゴムBR9000)に加えて混合し、配合ゴムを製造して、その処方(重量部)を表8に示した。配合ゴムの調製方法及び加硫プロセスは、上述したプロセスと同じであった。加硫ゴム被検物シートを標準被検物片に加工して、様々な機械特性を測定した。その結果を表9に示した。
【0118】
比較例3
純粋なポリブタジエン粗ゴム(ポリブタジエンゴムBR9000)を、実施例7の工程2に記載したものと同じ配合及び加硫プロセスに従って配合及び加硫した。凝固ゴム組成物の配合ゴムの処方を表8に示した。加硫ゴムの特性を表9に示した。
【0119】
【表8】
【0120】
【表9】
【0121】
表9に示す結果からわかるように、ポリブタジエンゴムはそれ自体で、優れた摩耗抵抗を示すが、濡れ滑り抵抗は不十分である。本発明のゴム組成物は、ポリブタジエンゴムの良好な摩耗抵抗を維持し、さらに濡れ滑り抵抗指数が顕著に増加して、同時に転がり抵抗が低下し、それにより、製造された加硫ゴムが、より低い転がり抵抗及び優れた濡れ滑り抵抗を有するだけでなく、顕著な摩耗抵抗も有することが可能になった。その理由は、架橋構造を有する放射線架橋したニトリルブタジエンゴム粒子が、50〜200nmの微粒子径で、ポリブタジエンゴムマトリックスの連続相中に均一に分散したからである。本発明のゴム組成物のそのような特徴は、トレッドゴムに特に適する。他の添加剤を3つのパラメーターに関する実際の適用における具体的な要件に従って加えることによって、ゴム組成物の総合特性を調節することが可能となり、それによって、異なる特性要件に合ったトレッドゴムを製造する大きな余地が残される。
【0122】
(V)修飾ゴムマスターバッチ及び溶液重合スチレン−ブタジエンゴム組成物の実施例及び比較例
原料:
乳化重合スチレン−ブタジエンゴムラテックスSBR1502:固体含有量20wt%、スチレン単位含有量23wt%、ムーニー粘度50、Qilu Petrochemical Corporationのゴムプラントから入手可能
溶液重合プロセスによって製造された溶液重合スチレン−ブタジエンゴム:T2000Rブランドのブロック粗ゴム、China Petrochemical CorporationのSHANGHAI GAOQIAO Petrochemical Corporation branchから入手可能
ニトリルブタジエンゴムラテックス:ニトリル−26ブランド、肇東市のTIANYUAN Chemical Industrialから入手可能
カーボンブラック:N234、TIANJIN DOLPHIN CARBON BLACK DEVELOPMENT CO. LTDから入手可能
酸化亜鉛:市販品
ステアリン酸:市販品
硫黄:臨沂市のLUOZHUANG化学プラント
促進剤TBBS:N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、鄭州市のJINSHAN化学プラント
塩化カルシウム:市販品
デンプン:市販品
グリセロール:市販品
5%石炭酸溶液:市販品
【0123】
ラテックスの凝固のためのプロセス:
凝固剤溶液を表10に示す処方に従って処方した。次に、ゴムラテックスを、凝固剤溶液の重量と等量で、凝固剤溶液に加えた。15分間撹拌した後、固体ゴム(粗ゴム)を濾過、洗浄及び乾燥することによって得た。
【0124】
【表10】
【0125】
配合ゴムの調製及び加硫プロセス:
セクションI:
操作は、容量1.57Lのバンバリーミキサー(Farrel Bridge Corporation, UKの製品)内で、80r・min
-1のローター速度で実施した。具体的なプロセスは、溶液重合スチレン−ブタジエン粗ゴム又は本発明の修飾ゴム成分及び溶液重合スチレン−ブタジエン粗ゴムをそれぞれと、カーボンブラック及びその他の添加剤(硫黄及び促進剤は除く)を加え、ルーフボルトを取り付け、3分間混合し、次に、ゴムを排出すること(150〜160℃の温度で)を含んだ。
【0126】
セクションII:
上記セクション1に記載した配合ゴムに硫黄、促進剤を加えた後、XK−160二本ローラーミル(Shang Hai Rubber Machinery Factoryによって製造)によってその材料を6回薄膜化し、次に、バッチアウトした。そして、混合物を正の硫化時間T
90に従って160℃で加硫処理し、その後、加硫ゴム試料から標準試料片を製造した。様々な機械特性を試験し、その結果を表12に示した。配合ゴムの処方を表11に示した(単位は、重量部である)。
【0127】
実施例8
1.修飾ゴム成分の調製:
(1)放射線架橋したニトリルブタジエンゴムラテックスの調製:
45wt%の固体含有量を有するニトリルブタジエンゴムラテックス(ニトリル−26)と共に、架橋添加剤トリメチロールプロパントリアクリレートを、ニトリルブタジエンゴムラテックスの固体含有量に対して3wt%の量で加えた。次に、混合物を放射線量3.0Mradの放射線架橋に供し、放射線架橋したニトリルブタジエンゴムラテックスを調製した。その放射線架橋したニトリルブタジエンゴム粒子の平均粒径は100nmであり、ゲル分率は91%である。
【0128】
(2)ラテックスの混合及び凝固:
放射線架橋後のニトリルブタジエンゴムラテックスを、特定の固体含有量比で、非架橋の乳化重合スチレン−ブタジエンゴムラテックスSBR1502に加えた。その放射線架橋したニトリルブタジエンゴムラテックス中の固体含有量と非架橋の乳化重合スチレン−ブタジエンゴムラテックス中の固体含有量の重量比は、80:20であった。撹拌器で15分間高速撹拌した後、上述したラテックス凝固プロセスに従って凝固を実施して、固体の修飾ゴム成分1を製造した。凝固剤溶液の組成は、表10に示す組成と同じであった。
【0129】
2.溶液重合スチレン−ブタジエンゴム組成物及びその加硫ゴムの調製:
上記で得られた修飾剤としての修飾ゴム成分を、他の添加剤と共に、ブロック粗ゴム(溶液重合スチレン−ブタジエンゴムT2000R)に加えて混合し、配合ゴムを製造して、その処方(重量部)を表11に示した。配合ゴムの調製方法及び加硫プロセスは、上述したプロセスと同じであった。加硫ゴム被検物シートを標準被検物片に加工して、様々な機械特性を測定した。その結果を表12に示した。
【0130】
比較例4
純粋な溶液重合スチレン−ブタジエン粗ゴム(溶液重合スチレン−ブタジエンゴムT2000R)を、実施例8の工程2に記載したものと同じ配合及び加硫プロセスに従って配合及び加硫した。具体的なゴム組成物の配合ゴムの処方を表11に示した。加硫ゴムの特性を表12に示した。
【0131】
【表11】
【0132】
【表12】
【0133】
表12に示す結果からわかるように、溶液重合スチレン−ブタジエンゴムはそれ自体で、優れた転がり抵抗を示す。本発明のゴム組成物は、溶液重合スチレン−ブタジエンゴムの低い転がり抵抗を維持し、さらに摩耗指数及び濡れ滑り抵抗指数が増加し、それにより、製造された加硫ゴムが、より低い転がり抵抗及び優れた濡れ滑り抵抗を有するだけでなく、顕著な摩耗抵抗も有することが可能になった。その理由は、架橋構造を有する放射線架橋したニトリルブタジエンゴム粒子が、50〜200nmの微粒子径で、溶液重合スチレン−ブタジエンゴムマトリックスの連続相中に均一に分散したからである。本発明のゴム組成物のそのような特徴は、トレッドゴムに特に適する。他の添加剤を3つのパラメーターに関する実際の適用における具体的な要件に従って加えることによって、ゴム組成物の総合特性を調節することが可能となり、それによって、異なる特性要件に合ったトレッドゴムを製造する大きな余地が残される。