特許第6091519号(P6091519)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6091519
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】酵母貯蔵のための材料およびパッケージ
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20170227BHJP
   C12N 1/16 20060101ALI20170227BHJP
   A21D 2/08 20060101ALI20170227BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20170227BHJP
   B65D 81/26 20060101ALI20170227BHJP
   B65D 77/06 20060101ALI20170227BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20170227BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   B32B27/32 E
   C12N1/16 H
   A21D2/08
   B65D65/40 D
   B65D81/26 A
   B65D77/06 F
   B32B27/28 101
   B32B27/28 102
   B32B27/00 H
【請求項の数】18
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-546615(P2014-546615)
(86)(22)【出願日】2012年12月13日
(65)【公表番号】特表2015-507553(P2015-507553A)
(43)【公表日】2015年3月12日
(86)【国際出願番号】FR2012052914
(87)【国際公開番号】WO2013088074
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2015年10月13日
(31)【優先権主張番号】1161599
(32)【優先日】2011年12月14日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】506261567
【氏名又は名称】ルサッフル・エ・コンパニー
【氏名又は名称原語表記】LESAFFRE ET COMPAGNIE
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】サンドリーヌ・ドベル
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・ベルナール・マラキン
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−124160(JP,A)
【文献】 特開2002−036462(JP,A)
【文献】 特表2010−533627(JP,A)
【文献】 特開平03−004730(JP,A)
【文献】 特表2004−502604(JP,A)
【文献】 特開平07−156970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/32
A21D 2/08
B32B 27/00
B32B 27/28
B65D 65/40
B65D 77/06
B65D 81/26
C12N 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス、好ましくは二酸化炭素(CO)を生成する液体または半液体の成分のためのラッピングとしての、B−A−B’構造を有する3層プラスチックフィルムの使用であって、
層Aが、一種のオレフィンコポリマーからなること、および
層BおよびB’の各々が、一種のオレフィンコポリマーからなること
を特徴とし、ならびに、
ISO規格15105−2:2003付属書Bにしたがって測定されたフィルムの二酸化炭素に対する透過率が、ΔP=1barで80l/m.24h以上であること、
フィルムが、20から50ミクロン、好ましくは30ミクロンの合計厚さを有すること、および
ISO規格15105−2:2003付属書Bにしたがって測定されたフィルムの酸素(O)に対する透過率が、ΔP=1barで30l/m.24h以下であること
を特徴とする、3層プラスチックフィルムの使用。
【請求項2】
ISO規格15105−2:2003付属書Bにしたがって測定された前記フィルムの二酸化炭素に対する透過率が、ΔP=1barで90l/m.24h以上であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
層BおよびB’が同一であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の使用。
【請求項4】
層BおよびB’が異なることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の使用。
【請求項5】
前記オレフィンコポリマーが、一種のエチレンのコポリマー、特にエチレン−酢酸ビニル(EVA)またはエチレン−ポリビニルアルコール(EVOH)であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
層Aが、酢酸ビニル含有率の高いエチレン−酢酸ビニル(EVA)からなること、および
層BおよびB’の各々が、層Aのエチレン−酢酸ビニルの酢酸ビニル含有率未満の酢酸ビニル含有率を有するエチレン−酢酸ビニル(EVA)を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
酢酸ビニル含有率の高い前記エチレン−酢酸ビニル(EVA)が、質量パーセントで、18%から42%の間の酢酸エチルを含むことを特徴とする、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
第1のプラスチックフィルムが、請求項1から7のいずれか一項に記載の3層プラスチックフィルムであり、第2のプラスチックフィルムが、均一に穿孔されていることを特徴とする、2種のプラスチックフィルムで構成されたプラスチック材料。
【請求項9】
前記第2のプラスチックフィルムが、配向したポリアミド(OPA)とポリエチレン(PE)とで、またはポリエチレンテレフタレート(PET)とポリエチレン(PE)とで構成されていることを特徴とする、請求項8に記載のプラスチック材料。
【請求項10】
プラスチック材料の前記第1のプラスチックフィルムが、貯蔵器/容器内部の体積を規定することを特徴とする、請求項8または請求項9に記載のプラスチック材料で構成された貯蔵器/容器を含むパッケージ。
【請求項11】
前記貯蔵器/容器が、1lから1000lの間、好ましくは10lから200lの間、およびより好ましくは1lから50lの間の全内部体積を有するパウチの形態であることを特徴とする、請求項10に記載のパッケージ。
【請求項12】
前記パウチがベースおよびキャップを含むことを特徴とする、請求項11に記載のパッケージ。
【請求項13】
バッグインボックスの形態であり、開口部を備えた厚紙の箱も含むことを特徴とする、請求項12に記載のパッケージ。
【請求項14】
ガス、好ましくは二酸化炭素を生成する液体または半液体の成分を受け入れることを意図する容器/貯蔵器を製造するための、請求項8または請求項9に記載のプラスチック材料の使用。
【請求項15】
生成したガスの排気を可能にすることを特徴とする、ガス、好ましくは二酸化炭素を生成する液体または半液体の成分を貯蔵および使用するための、請求項10から13のいずれか一項に記載のパッケージの使用。
【請求項16】
ガス、好ましくは二酸化炭素を生成する液体または半液体の成分を貯蔵および使用するための方法であって、以下のステップ:
請求項10から13のいずれか一項に記載のパッケージにおいて、ガスを生成する成分をパッケージするステップ、
0から6℃の間の温度および50%から100%の間の相対湿度において、前記パッケージされた成分を使用するまで貯蔵するステップ、および
ガスを生成する液体または半液体の成分を使用するステップ
を含む方法。
【請求項17】
ガスを生成する前記液体または半液体の成分が酵母またはパン種を含むことを特徴とする、請求項1から7、14および15のいずれか一項に記載の使用、または請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ガスを生成する前記液体または半液体の成分が、液体酵母またはクリーム状酵母であることを特徴とする、請求項17に記載の使用または方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス、好ましくは二酸化炭素(CO2)を生成する液体または半液体の製品のパッキングおよび貯蔵分野に関し、より詳細には、酵母またはパン種を含有する液体または半液体の製品をパッケージするための材料に関わる。
【背景技術】
【0002】
水性懸濁液中の酵母は、有利な条件下で貯蔵される場合には、固体形態にある酵母、いわゆる圧縮酵母またはドライイーストに対して明白な利点を有するが、それは、特に、使用が簡単であること、予め適量に分けられること、およびその優れた性能レベルのためであり、それによって、さらに製パン業に従事する人々によって高く評価される製品になっている。実際には、水性懸濁液中にある酵母は、貯蔵条件、特に環境(温度、pH、CO2/O2含有率その他)に非常に敏感な製品であり、特に汚染に曝される。したがって、それは衛生的な貯蔵条件を必要とし、同時に、その微生物の品質、特に発酵能力に関するその性能レベル、およびその官能的な品質を維持することを可能にする貯蔵条件を必要とする、パッケージすることが難しい製品である。それに加えて、酵母の活性および反応性は、その使用中の優れた性能レベルの要因であるが、一方ではそのような製品の貯蔵に特有な欠点となる。それ故、酵母を良好に貯蔵するために、実際上は、水性懸濁液中の前記酵母を約4℃の低温に維持し、および特別な脱ガス手段、特に酵母の呼吸代謝から生ずるガス、特に二酸化炭素の放出手段を提供し、その間、同時に、特に汚染の進むのを避けるために、他のガス交換(周囲の空気からの酸素)を制限することが望ましい。
【0003】
水性懸濁液の酵母をパッケージするための数通りの解決法が提案されている。これらの解決法の1つは、液体酵母をバッグインボックスにパッケージすることにある。バッグインボックスの原理は、一般に、厚紙製の箱の中に(例えば、米国特許第6,223,981号を参照されたい)、1つまたは複数のベースと呼ばれる充填口および/または出し口を有する可撓性のバッグを有することである(例えば、米国特許第4,863,770号を参照されたい)。各ベースは、それぞれ、キャップをねじ留めまたはクリップ留めすることを可能にするねじ線条または環を有してもよい。このように形成されたバッグインボックスは、0から6℃の間の温度および50%から100%の間の相対湿度で数週間貯蔵することができる。使用者は、キャップを外した後、ベースに付けられたバルブまたはタップを使用して、このように貯蔵された水性懸濁液の酵母の所定量を回収することができる。バルブが適当な位置に付けられている場合には、使用者は、バッグインボックスを完全に上下逆さにして、それを適当な冷蔵分配器中に置く(例えば、国際出願WO2004/048253中に本出願人が記載したシステムを参照されたい)。タップが取り付けられている場合には、バッグインボックスは、冷蔵庫または冷蔵室中で水平な位置に置かれる。
【0004】
酵母により生じた二酸化炭素の作用で、バッグインボックスのカートン中に入れられている可撓性バッグが膨張するのを避けるために、通気口を形成する開口部が、特別の脱ガス手段として備えられる(例えば、本出願人による欧州特許EP0792930-B1および国際出願WO2004/048253を参照されたい)。さらに、可撓性バッグは、脱ガスキャップを通してガスが抜けることを可能にする十分な圧力に達するまで、バッグインボックス中にガスが蓄えられるのに十分なヘッドスペースを残すように、釣り合わされる。しかしながら、この脱ガス系は、特に、貯蔵される液体酵母が、安定化された酵母よりも多量のCO2を生成する安定化されていない酵母である場合には、完全に満足ということはない。実際、可撓性バッグの膨張は、カートンの変形の原因となり、それに膨らんだ外見を与えることがあり、バッグインボックスの安定性の問題を生じさせるだけでなく、その冷蔵分配器中への挿入を妨げることもあり得る。ある場合には、膨張は、カートンの破裂に至り得る。さらに、バッグインボックスが加圧下にある場合には、使用者がそれを開くと、製品の噴出が起こることもある。最後に、バッグインボックスを移動するかまたは取り扱うときに、酵母が脱ガスキャップと接触すると、脱ガスキャップは、一時的にまたは永久に閉塞し得る。
【0005】
本出願人による出願EP2019051には、特に製品の膨張を防止するために、および汚染物質の侵入を防止するために決定された、S/M比(cm2で表示される材料の交換表面積S、対、グラムで表示される酵母を含有する液体製品の質量M)ならびに酸素(O2)透過率および二酸化炭素(CO2)透過率係数を有する透過性材料を含む、酵母を含有する液体製品のパッケージが記載されている。しかしながら、そのようなS/M比は、パウチの形状および寸法に関して多くの自由度を許容しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,223,981号
【特許文献2】米国特許第4,863,770号
【特許文献3】国際出願WO2004/048253
【特許文献4】欧州特許EP0792930-B1
【特許文献5】EP2019051
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、酵母を含有する液体製品の貯蔵および維持に適し、酵母の呼吸代謝により生成されるCO2のより優れた脱ガスを可能にするパッケージに対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一般に、本発明は、バッグインボックス系の可撓性バッグの内側の部分を形成するために使用することができる、特別の組成および厚さおよびガス透過性を有する、B-A-B'構造の多層プラスチックフィルムの使用に基づく。既存の脱ガス系と対照的に、本発明のフィルムを使用して得られる脱ガスは、経時的に一定であり、およびバッグの全表面にわたって一様である。それ故、それは、可撓性バッグの膨張およびこの膨張に関連する潜在的な全ての問題を防止する。
【0009】
さらに具体的に、第1の態様において、本発明は、ガス、好ましくは二酸化炭素(CO2)を生成する液体または半液体の成分のラッピング/パッキングとしての、B-A-B'構造を有する3層プラスチックフィルムであって、
層Aが、ポリメチルペンテン(PMP)およびオレフィンコポリマーから選択されたポリマーからなること、および
層BおよびB'の各々が、ポリメチルペンテン(PMP)およびオレフィンコポリマーから選択されたポリマーを含むこと
を特徴とし、ならびに、
ISO規格15105-2:2003付属書Bにしたがって測定されたフィルムの二酸化炭素(CO2)に対する透過率が、ΔP=1barで80l/m2.24h以上であること、
フィルムを構成する層は、20から50ミクロン、好ましくは25から35ミクロンの合計厚さに押し出されること、および
ISO規格15105-2:2003付属書Bにしたがって測定されたフィルムの酸素(O2)に対する透過率が、ΔP=1barで30l/m2.24h以下であること
を特徴とする3層プラスチックフィルムに関する。
【0010】
ある実施形態において、ISO規格15105-2:2003付属書Bにしたがって測定されたフィルムの二酸化炭素に対する透過率は、ΔP=1barで90l/m2.24h以上である。
【0011】
ある実施形態において、オレフィンコポリマーとしては、特に、エチレンコポリマー、特にエチレン-酢酸ビニル(EVA)およびエチレン-ポリビニルアルコール(EVOH)が挙げられる。ある実施形態において、層Bの組成と層B'の組成は同一である。他の実施形態において、層Bの組成と層B'の組成とは異なる。
【0012】
本発明のある特定の実施形態において、層Aは、酢酸ビニル含有率の高いエチレン-酢酸ビニル(EVA)からなり、層BおよびB'の各々は、層Aのエチレン-酢酸ビニルの酢酸ビニル含有率未満の酢酸ビニル含有率を有するエチレン-酢酸ビニル(EVA)を含む。ある実施形態において、層Bに含まれるEVAの酢酸ビニル含有率は、層B'に含まれるEVAの酢酸ビニル含有率と同一である。他の実施形態において、これらは異なる。ある実施形態において、酢酸ビニル含有率が高いEVAは、質量パーセントで、18%から42%の間の酢酸ビニルを含む。
【0013】
層BおよびB'の各々は、少なくとも1つの抗ブロック剤および/またはスリップ剤も含んでもよい。ある実施形態において、層BおよびB'は、1種または複数種の同一の抗ブロック剤および/またはスリップ剤を、同じ比率または異なった比率で含む。他の実施形態において、層BおよびB'は、1種または複数種の異なった抗ブロック剤および/またはスリップ剤を含む。さらに他の実施形態において、層BおよびB'の一方は、1種または複数種の抗ブロック剤および/またはスリップ剤を含み、他の層は、さらなる抗ブロック剤および/またはスリップ剤を含まない。
【0014】
第2の態様において、本発明は、第1のプラスチックフィルムが、本発明の3層プラスチックフィルムであり、第2のプラスチックフィルムが、均一に穿孔されているかまたはCO2に対して第1のプラスチックフィルムの透過率以上の透過率を有することを特徴とする2種のプラスチックフィルムで構成されるプラスチック材料に関する。
【0015】
本発明の特定の一実施形態において、第2のプラスチックフィルムが、配向されたポリアミド(OPA)とポリエチレン(PE)とで、またはポリエチレンテレフタレート(PET)とポリエチレン(PE)とで構成される。
【0016】
第3の態様において、本発明は、プラスチック材料の第1のプラスチックフィルムが、貯蔵器/容器の内部の体積を規定することを特徴とする、本発明のプラスチック材料で構成される貯蔵器/容器を含むパッケージに関する。
【0017】
本発明のある実施形態において、貯蔵器/容器は、全内部体積が1lから1000lの間、好ましくは10lから200lの間、およびさらにより好ましくは10lから50lの間であるパウチの形態にある。
【0018】
パウチは、少なくとも1つのベースおよび1つのキャップを含んでいてもよい。
【0019】
本発明のある実施形態において、パッケージは、バッグインボックスの形態にあり、開口部のある厚紙の箱も含む。ある実施形態において、パウチのベースはカートンの開口部にねじ込まれるかまたはクリップ留めされている。他の実施形態において、パウチのベースはカートンの開口部に取り付けられていない。
【0020】
第4の態様において、本発明は、ガス、好ましくはCO2を生成する液体または半液体の成分を受け入れることを意図した貯蔵器/容器を製造するための本発明のプラスチック材料の使用に関する。
【0021】
第5の態様において、本発明は、生成したガスの除去/排気を可能にすることを特徴とする、ガス、好ましくはCO2を生成する液体または半液体の成分の貯蔵および使用のための本発明のパッケージの使用に関する。
【0022】
第6の態様において、本発明は、以下のステップ、すなわち、
ガスを生成する成分を本発明のパッケージ中にパッケージするステップ、
0から6℃の間の温度および50%から100%の間の相対湿度で、前記パッケージされた成分を、使用するまで貯蔵するステップ、および
ガスを生成する液体または半液体の成分を使用するステップ
を含む、ガス、好ましくはCO2を生成する液体または半液体の成分を貯蔵または使用するための方法に関する。
【0023】
本発明のある好ましい実施形態において、ガスを生成する液体または半液体の成分は、パン種または酵母、特に液体酵母またはクリーム状酵母を含む。
【0024】
本発明のある好ましい実施形態を、下でさらに詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
上記のように、本発明は、多層プラスチックフィルム(場合により穿孔された第2のプラスチックフィルムで補強されている)を、ガス、特に二酸化炭素を生成する液体または半液体の成分のためのラッピング/パッキングとして使用することに基づく。
【0026】
I. 多層プラスチックフィルム
本発明による多層プラスチックフィルムは、以下の性質、すなわち、
フィルムが、B-A-B'型構造を有すること、
フィルムを形作る層が、20から50ミクロンの間、好ましくは25から35ミクロンの間、さらにより好ましくは27から32ミクロンの間の合計厚さに押し出されること、
フィルムの二酸化炭素に対する透過率が、ΔP=1barで60l/m2.24h以上であること、および
フィルムが、酸素(O2)および/または空気に対してわずかに不透過性であり、酸素に対してΔP=1barで30l/m2.24h以下の透過率を有すること
により特徴づけられる
【0027】
本発明による3層プラスチックフィルムは、液体の水および好ましくは水蒸気に対して一般的に不透過性である。さらに、このプラスチックフィルムは、酵母を含有する液体または半液体の製品が入ることが意図されているので、食物製品と接触する材料に関する規制にしたがう適当な構成成分からなることが好ましい。
【0028】
B-A-B'-型3層構造において、層BおよびB'の組成は、全てに関して同一であってもよい。あるいは、層BとB'の組成は異なってもよい。
【0029】
ある好ましい実施形態において、本発明による多層プラスチックフィルムは、B-A-B'構造を有し、その場合、層Aは、ポリオレフィンおよびオレフィンコポリマーから選択されたポリマーからなり、層BおよびB'の各々は、ポリオレフィンおよびオレフィンコポリマーから選択されたポリマーを含む。ポリオレフィンおよびオレフィンコポリマーは、疎水性であり、一般的に、それを食物ラッピングに適した材料にする高い化学的不活発さを有する。
【0030】
用語「ポリオレフィン」または「ポリアルケン」では、オレフィンの重合から生成する合成の飽和脂肪族ホモポリマーを意味することが意図される。本発明による多層フィルムの製造に適したポリオレフィンとして、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、4-メチルペンタ-1-エンモノマーの重付加から生ずるポリメチレン(PMP)、およびポリブテン-1(PB-1)が挙げられる。
【0031】
用語「オレフィンコポリマー」では、エチレンおよびその誘導体などのオレフィンと前記オレフィン以外のモノマーとの重合から生成する合成の飽和脂肪族コポリマーを意味することが意図される。本発明による多層フィルムの製造に適したオレフィンコポリマーとして、例えば、エチレンと酢酸ビニルの共重合から生ずるエチレン-酢酸ビニル(EVA);エチレンとビニルアルコールの共重合から生ずるエチレン-ポリビニルアルコール(EVOH);エチレン-メチルアクリレート(EMA)およびエチレン-エチルアクリレート(EEA)などのエチレン-アクリルエステルコポリマー、およびエチレン-アクリルエステル-無水マレイン酸(EAEMA)が挙げられる。
【0032】
特定の一実施形態において、層Aは、酢酸ビニル含有率の高いエチレン-酢酸ビニル(EVA)からなり、層BおよびB'の各々は、酢酸ビニル含有率がそれより低いエチレン-酢酸ビニル(EVA)を含む。用語「酢酸ビニル含有率の高いEVA」では、18%から42%の間の酢酸ビニルを含有するEVAを意味することが意図され、この場合パーセントは質量パーセントである。本明細書において使用される用語「酢酸ビニル含有率の低いEVA」は、層Aを形成するEVAより低いパーセンテージの酢酸ビニルを含有するEVAを意味することが意図される。層BおよびB'は、同じエチレン-酢酸ビニル(それ故、同じ酢酸ビニル含有率を含有する)または異なった酢酸ビニル含有率を含むEVAコポリマーで構成されていてもよい。任意の事象において、これらの酢酸ビニル含有率は、層Aを形成するEVAの酢酸ビニル含有率未満でなければならない。B-A-B'構造の1層は、層全体にわたって一定の酢酸ビニル質量含有率を有していてもよい。あるいは、B-A-B'構造の1層は、酢酸ビニル質量含有率が、所定の層の方向で、例えば、増加または減少する組成勾配を有していてもよい。
【0033】
ある実施形態において、層Bまたは層B'は、またはそうでなければ層BおよびB'の各々が、ポリマーに加えて、少なくとも1種の抗ブロック剤および/またはスリップ剤を含む。本明細書において使用される用語「抗ブロック剤および/またはスリップ剤」とは、例えば、最終フィルムの表面と製造用具との間の摩擦を低下させる任意の作用剤、および/または粘着のいかなるリスクも防止することによりフィルムの操作に対して望ましい効果を有する任意の作用剤を意味することが意図される。本発明を実施するために適した抗ブロック剤および/またはスリップ剤は、珪藻土、タルク、オレアミドおよびエルカ酸アミド、およびそれらの組合せから選択することができる。層A、BおよびB'を形成するポリマーの性質、多層フィルムの製造に使用された機械の型およびそのフィルムの将来の用途に応じて、当業者は、抗ブロック剤および/またはスリップ剤またはそのような作用剤の特定の組合せを選択することができて、このまたはこれらの所望の抗ブロック剤および/または滑り効果を得るために必要なこれらの作用剤の量を決定することができるであろう。層Bと層B'は、1種または複数種の同一の抗ブロック剤および/またはスリップ剤を、同じ比率でまたは異なった比率で含んでいてもよい。あるいは、層Bと層B'は、1種または複数種の異なった抗ブロック剤および/またはスリップ剤を含んでいてもよく、またはあるいは、層BおよびB'の1つが1種または複数種の抗ブロック剤および/またはスリップ剤を含んでいてもよく、および他の層はそれまたはそれらを含まなくてもよい。
【0034】
本発明による多層プラスチックフィルムの調製は、当技術分野において公知の任意の適当な方法を使用して実施することができる。ある好ましい実施形態において、3層プラスチックフィルムは、共ラミネート化または共押し出しにより調製することができる。共押し出しは、平坦なダイ押出し(キャスト押出しと称する)技法または押出し吹込み成形技法を使用して実施することができる。当業者は、多層プラスチックフィルムの組成および/または調製されるべきフィルムの寸法にしたがって最も適当な技法を選択することができる。当業者は、選択した技法を実行するために最適の操業温度、圧力および相対湿度条件を決定することもできるであろう。
【0035】
驚くべきことに、本出願人は、CO2の効率的な毎日の排気を可能にして、同時に一般的に使用される成形機械による可撓性バッグの製造を可能にするために、3層プラスチックフィルムは、20ミクロンから50ミクロンの間、好ましくは25ミクロンから35ミクロンの間、およびさらにより好ましくは27ミクロンから32ミクロンの間の厚さを有しなければならないことを発見した。
【0036】
ガスを生成する液体または半液体の製品、および特に酵母を含有する液体または半液体の製品のラッピング/パッキングにおける本発明による多層プラスチックフィルムの効用は、そのガス透過性の結果である。さらに具体的には、本発明によるフィルムは、CO2に対して、ΔP=1barで80l/m2.24h以上、好ましくはΔP=1barで90l/m2.24h以上の透過率を有し、酸素および/または空気に対してはわずかに不透過性である。本明細書において使用される用語「酸素および/または空気に対して不透過性」は、酸素(O2)に対してΔP=1barで30l/m2.24h以下の透過率を有するフィルムを意味することが意図される。
【0037】
本発明によれば、CO2およびO2に対する透過率、いわゆる透過係数(CP)は、1bar当たり24h当たり1m2当たりのcm3(cm3/m2.24h.barまたはl/m2.24h.bar)で表される二酸化炭素および酸素それぞれの透過係数として定義され、ISO規格15105-2:2003付属書Bにしたがって、注入バルブおよびサンプリングループを備えたガスクロマトグラフで熱伝導率測定型検出法を使用して測定される。測定に先だって、材料を23℃で48時間、0%RHの湿気含有率のガスでコンディショニングする。透過係数の測定は、23℃の温度で湿度0%RHのガスを用いて実施される。材料の外表面は、試験ガスに曝され、測定は50cm2の3枚の試験試料で実施される。試験ガスは、50%酸素と50%二酸化炭素の混合物からなる。クロマトグラフィーによる検出は、クロマトグラフを酸素および二酸化炭素濃度が分かっているガス標準を用いて較正後に、140℃の検出器温度、および200mAのフィラメント電流でPorapak (R)Q検出器を使用して実施する。
【0038】
O2に対するわずかな透過率係数CP(すなわち、5000cm3/m2.24h.bar未満)の測定における精度をさらに高めるために、測定は、ISO規格15105-2:2003付属書AおよびASTM標準D3985-05にしたがってSystech 8000装置を使用して実施する。測定に先だって、材料は、23℃で48時間および0%RHのガス湿気含有率でコンディショニングされる。透過係数の測定は、23℃の温度で湿気含有率0%RHのガスを用いて実施する。材料の外表面は、試験ガスに曝され、測定は、21%酸素を用いて0.5dm2の3枚の試験試料で実施する。安定化時間は24時間である。
【0039】
装置の検出閾値に達する場合、再び検出条件下に置かれるように、試験ガスのO2含有率および/または測定される表面積を減少させることが可能である。その場合必要とされることは、適用された含有率の減少および/または適用された表面積の減少により得られた結果を重みづけすることだけである。
【0040】
CO2の透過率係数のみを測定するために、ISO規格15105-2:2003付属書Bにしたがって、注入バルブおよびサンプリングループを備えたガスクロマトグラフを用いてフレームイオン化による検出方法を適用することも可能である。
【0041】
II. プラスチック材料
本発明によるプラスチック材料は、2種のプラスチックフィルムで構成され、第1のフィルムは、上記のように多層プラスチックフィルムであり、第2のプラスチックフィルムは、穿孔されているかおよび/または第1のプラスチックフィルムのCO2透過率以上のCO2透過率を有する。第2のプラスチックフィルムは、2つの役割を有し、それは、そのようにして製造される可撓性バッグに機械的強度を賦与すること、およびその透過性および/またはその穿孔により、酵母により生じたガスの排気が可能になり、第1のプラスチックフィルムの透過性により排気されることである。
【0042】
驚くべきことに、本出願人は、第2のプラスチックフィルムが、CO2に対して第1のプラスチックフィルムの透過率以上の透過率を有しない場合には、第2のプラスチックフィルムの全表面にわたって分布する穿孔のみが酵母により生ずるガスの効率的な排気を可能にすることに気づいた。可撓性バッグ中に貯蔵された酵母により生じたガスの優れた排気を可能にするために、穿孔密度は高くなければならないことも観察された。したがって、第2のプラスチックフィルムは、少なくとも1000穿孔/m2、好ましくは少なくとも5000穿孔/m2およびさらにより好ましくは約7000穿孔/m2を含まなくてはならない。
【0043】
上で示したように、酵母の入った可撓性バッグの外側にあるように意図されている第2のプラスチックフィルムは、このバッグに機械的強度を賦与する。それ故、プラスチックフィルムの構成成分は、それに応じて選択されなければならない。本明細書において使用される用語「機械的強度」は、可撓性バッグの堅牢性を増す任意の性質または硬度、剛性、柔軟性、弾性、その他の性質の組合せを意味することが意図されている。例えば、機械的強度は、落下に対する耐性および/または衝撃に対する耐性であってもよい。実際、工業製品の輸送中に、時として落とされることは事実上不可避であることを考慮すれば、液体または半液体の製品を含有する貯蔵器が、衝撃中に密封されたままであることが望ましい。
【0044】
ある好ましい実施形態において、第2のプラスチックフィルムの構成成分は、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)および配向したポリアミド(OPA)、ならびにそれらの混合物および/または組合せから選択される。特に、第2のプラスチックフィルムは、配向したポリアミド(OPA)とポリエチレン(PE)とで、またはポリエチレンテレフタレート(PET)とポリエチレン(PE)とで有利に構成することができる。第2のプラスチックフィルムは、例えば、押出し、共押出しまたはラミネート化により得ることができる。
【0045】
本発明によるプラスチック材料の調製は、当技術分野において公知の任意の方法により実施することができるが、但し、生じるプラスチックにおいて、2種のプラスチックフィルムの各々は、その役割を果たすことができる(すなわち、第1のプラスチックフィルムについては、特に、二酸化炭素に対する透過性ならびに酸素および/または空気に対するわずかな透過性、第2のプラスチックフィルムについては、機械的強度および穿孔によるガスの排気またはCO2に対する透過性)。ある好ましい実施形態において、第1のおよび第2のプラスチックフィルムは、可撓性バッグの製造時にのみ、例えば、バッグの4縁における2種のフィルムの溶接により組み立てられる。さらに他の例は、バッグインバッグ系であり、その場合、バッグは、4縁のいずれかで、またはベースレベルだけで互いに取り付けられる。
【0046】
III. パッケージ
本発明によるパッケージは、一般に、上記のようなプラスチック材料からなる貯蔵器または容器を含み、ここで第1のプラスチックフィルムは、ガスを生成する液体または半液体の製品を入れる貯蔵器の内部の体積を限定する。貯蔵器または容器は、どのような形状(円筒状、立方体、平行六面体、平坦、その他)および/または任意の寸法であってもよい。ある好ましい実施形態において、貯蔵器または容器は、比較的平らな可撓性バッグまたはパウチ、特にバッグインボックス系で使用されることが意図された可撓性バッグまたはパウチである。
【0047】
ある実施形態によれば、本発明によるパウチは、ガスを生成する少なくとも20gの液体または半液体の製品、一般的な市場の消費者向けを意図した用途の、例えば、25gから600gの間の製品を含有することができる。そのような実施形態において、パウチは、全内部体積が、20mlから800mlの間、好ましくは20mlから500mlの間の可撓性バッグである。
【0048】
他の実施形態によれば、本発明によるパウチは、ガスを生成する少なくとも5kgの液体または半液体の製品、例えば、職業人、例えば製パン業で働く人々、例えばパン屋または工業的製パン業者のためを意図した用途向けの10kgから1000kgの間、または10kgから100kgの間の製品、またはそうでなければ10kgから50kgの間の製品を含むことができる。そのような実施形態において、パウチは、全内部体積が1lから1000lの間、例えば10lから200lの間、または50lから500lの間、またはそうでなければ500lから1000lの間である可撓性バッグである。
【0049】
本発明によるパウチは、キャップをねじ留めするかまたはクリップ留めするためのねじ線条または環を有する1つまたは複数のベースを含んでいてもよい。そのようなベースにより、パウチに充填するかおよび/またはそれを空にすることが可能になる(例えば、米国特許第4,863,770号を参照されたい)。一般に、少なくとも1つのベースが、使用中に、液体または半液体の製品を重力によりまたはサイホンにより取り出すことができるように、底に位置する。バッグまたはパウチは、より容易におよび/またはより完全に、バッグまたはパウチを空にするかまたは排液するための手段も有することができる。そのような手段は、特に、DE-A-3502455、WO89/00535、WO85/0483、WO90/06888、WO01/79072およびEP-A-0138620に記載されている。
【0050】
ある実施形態において、本発明によるパウチは、使用者がパウチ中に存在する液体または半液体の製品の量を視覚的に決定するかまたは見積もることを可能にすることができる。特に、パウチは、透明または半透明であってもよく、または1箇所または複数箇所の透明なまたは半透明な部分を含んでいてもよい。
【0051】
ある実施形態において、本発明によるパッケージは、バッグインボックス形態にある。そのような実施形態において、パッケージは、可撓性バッグまたはパウチに加えて、例えば、米国特許第6,223,981号に記載されている、このバッグまたはパウチを入れることができる、支持するワイヤバスケットまたは剛直な(自己支持)箱を含む。剛直な箱はカートンであってもよい。
【0052】
IV. パッケージの使用
ガスを生成する液体または半液体の成分
本発明によるパッケージは、ガス、特にCO2を生成する任意の液体または半液体の成分を貯蔵するために使用することができる。本発明のある実施形態において、ガスを生成する液体または半液体の成分は、酵母またはパン種を含む。本発明のある特定の実施形態において、成分は液体酵母またはクリーム状酵母である。
【0053】
表現「酵母を含有する液体または半液体の成分」は、酵母を含む液体懸濁液、典型的には水性懸濁液を意味することが意図される。これは、一般的に新鮮酵母または再懸濁された乾燥酵母を含む。本発明の好ましい一実施形態によれば、酵母は新鮮酵母である。有利なことに、前記酵母は、パッケージされたときに、1グラム当たり少なくとも105コロニー形成単位(CFU)の酵母、好ましくは1グラム当たり少なくとも108コロニー形成単位(CFU)の酵母、および有利には1グラム当たり少なくとも109コロニー形成単位(CFU)の酵母を含む。
【0054】
好ましくは、酵母を含有する液体の成分は、生きた酵母細胞の乾燥体の含有率が、少なくとも0.03質量%、より好ましくは少なくとも0.1%、およびさらにより好ましくは少なくとも5%である。
【0055】
本発明によるパッケージは、それらの発酵活性のために使用される酵母を貯蔵するため特に適する。それらは、特にサッカロミセス科のファミリーに属する酵母(The Yeasts, A Taxonomic Study, Kurtzman C. P and Fell C. W., 4th edition, Elsevier, 1998の分類)である。したがって、本発明は、原理的に製パン業者の酵母の貯蔵に関するが、液体または半液体形態における貯蔵の問題が生ずるワイン醸造業者、蒸留酒製造業者および/または醸造業者の酵母の貯蔵にも関する。
【0056】
ワイン醸造業者、蒸留酒製造業者および/または醸造業者の酵母は、好ましくはサッカロミセス(Saccharomyces)属、特にS. バイアヌス(S. bayanus)およびS. セレビシアエ(S. cerevisiae)、特に変種のウバルム(uvarum)、カールスベルゲンシス(calbergensis)およびセレビシアエ(cerevisiae)、クルイベロミセス(Kluyveromyces)属、特にK. テルモトレランス(K. thermotolerans)、ブレタノミセス(Brettanomyces)属、特にB. ブルクセレンシス(B. bruxellensis)、およびトルラスポラ(Torulaspora)属、特にT. デルブリュッキー(T. delbrueckii)から、単独でまたは混合物として選択される。
【0057】
製パン業者の酵母は、好ましくは、サッカロミセス・セレビシアエ(saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・シュバリエリ(saccharomyces chevalierii)およびサッカロミセス・ボウラルディイ(saccharomyces boulardii)から選択された酵母である。
【0058】
ガスを生成する成分(例えば、酵母を含有する成分)は、液体または半液体であり、すなわち、それは、500mlの試料に標準的粘度計、例えばJ. P. Selecta ST2001粘度計(L1=注射針;600センチポイズの粘度までは、速度=10rpm、600センチポイズを超えては、速度=1.5rpm)を使用して、約10℃の温度で測定して、20000センチポイズ未満、好ましくは1000センチポイズ以下の粘度を有する。製パン業者のパン生地は典型的には液体または半液体の製品ではない。
【0059】
酵母を含有する液体または半液体の成分は、好ましくは1.01から1.25の間、さらにより好ましくは1.05から1.15の間の密度を有する。
【0060】
表現「酵母を含有する液体または半液体の成分」は、特に本発明によれば、クリーム状酵母、好ましくは製パン業者のクリーム状酵母、および液体パン種を意味する。
【0061】
表現「クリーム状酵母、好ましくは製パン業者のクリーム状酵母」は、生きた酵母細胞、好ましくは製パン業者の酵母細胞の懸濁液、典型的には水性懸濁液を意味すると理解され、前記懸濁液は、好ましくは、少なくとも12質量%および一般的には12質量%から50質量%の間の乾燥体含有率を有する(クリーム状酵母の広い定義)。好ましくは、液体または半液体クリーム状酵母は、厳密な意味ではクリーム状酵母の定義に対応し、すなわち、それは、12質量%から25質量%の間、およびさらにより好ましくは15質量%から22質量%の間の乾燥体含有率を有する。しかしながら、本発明は、それより高い、すなわち、少なくとも25質量%の乾燥体含有率を有するクリーム状酵母、好ましくは製パン業者のクリーム状酵母、例えば、特に、1種または複数種の浸透圧性薬剤、例えば可食性のポリヒドロキシ化合物および可食性の塩を含有する「高密度」の製パン業者のクリーム状酵母などのための使用にも関わる。特に25質量%から48質量%、またはそうでなければ25質量%から46質量%の乾燥体含有率を有していてもよいそのような高密度の製パン業者のクリーム状酵母は公知であり、例えば、WO91/12315およびWO03/048342に記載されている。
【0062】
用語「液体パン種」は、本発明により、生きた酵母細胞、好ましくは製パン業者の酵母細胞、生きた乳酸菌細胞と小麦粉との液体懸濁液、典型的には水性懸濁液を意味すると理解される。好ましくは、液体パン種は、12質量%から20質量%の間、およびより好ましくは15質量%から17質量%の間の乾燥体含有率を有する。
【0063】
本発明によりパッケージするのに適した安定な、直ぐに使用できる液体のパン種は、特に、本出願人により、欧州特許EP0953288-B1号および国際出願WO2004/080187に記載されたものである。
【0064】
有利なことに、液体パン種は、少なくとも1種のモルト処理されていない穀粉および水を含む培地を使用することにより、異種の発酵乳酸菌の少なくとも1種の調合物および酵母の少なくとも1種の調合物による接種を実施することにより、好ましくはそれに加えてアミラーゼまたはアミラーゼの任意の等価の供給源を提供する少なくとも1種のモルト処理した穀粉を使用することにより、および/または同種の発酵乳酸菌の調合物による少なくとも1種の接種を実施することにより得られる。したがって、パン種がパッケージされたとき、それは、好ましくは、1グラム当たり少なくとも106コロニー形成単位(CFU)の乳酸菌および1グラム当たり少なくとも104コロニー形成単位(CFU)の酵母、およびさらにより好ましくは1グラム当たり少なくとも109コロニー形成単位(CFU)の乳酸菌および1グラム当たり少なくとも106コロニー形成単位(CFU)の酵母を含み、4と4.3の間の安定な最終pHおよび13%と20%の間の乾燥体含有率を有し、および好ましくは、15から30g/kgの乳酸および6から10g/kgの酢酸を含有する。そのようなパン種の調合物は、例えば、欧州特許EP0953288-B1号に記載されている。
【0065】
本発明による別の特に有利な直ぐに使用できる液体パン種は、少なくとも1種の穀粉と水を含有する小麦粉を主成分とする培地を含み、前記培地には、乳酸を生物変換する少なくとも同種発酵乳酸菌を接種して発酵させ、少なくとも1種の酵母の調合物、好ましくは製パン業者の酵母を接種する。直ぐに使用できる液体パン種は、好ましくは、アミラーゼまたはアミラーゼの任意の等価の供給源を提供する少なくとも1種のモルト処理された穀粉も含む。したがって、それは、1グラム当たり108コロニー形成単位(CFU)の乳酸菌(その60%は乳酸を生物変換する同種発酵乳酸菌である)および少なくとも106コロニー形成単位(CFU)の酵母を含み、3.8から4.5の間の安定な最終pHおよび27%から35%の間の乾燥体含有率を有し、少なくとも7gの酢酸、好ましくは15から20g/kgの乳酸および7から10g/kgの酢酸を含有する。
【0066】
好ましくは、パン種調製のために使用される酵母は、サッカロミセス・シュバリエリ(Saccharomyces chevalierii)酵母であってもよく、同種の発酵細菌は、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)および/またはラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)種の細菌であり、異種の発酵株はこれらのラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)種の細菌である。
【0067】
ある実施形態において、液体酵母製品、好ましくは液体の新鮮酵母製品、特に液体クリーム状酵母および液体パン種は、1種または複数種の食物安定剤を添加することにより安定化される。これらの安定剤は、懸濁液中における酵母細胞の沈降分離を遅らせるかまたは防止する。懸濁液中におけるそれらの存在により、液体の新鮮酵母製品、好ましくはクリーム状酵母または液体のパン種は、攪拌せずに貯蔵したときに、その均質性をより長く保つ。クリーム状酵母を安定化するために使用される種々の食物安定剤の中で、キサンタンガムなどのガム、ならびに熱的および/または化学的に加工されたデンプン、例えば、加工デンプンE1422の定義に対応するアセチル化アジピン酸架橋デンプン(acetylated distarch adipate)などを挙げることができる。そのような安定化されたクリーム状酵母は、例えば、EP-A-0792930に記載されている。
【0068】
酵母またはパン種の組成物は、添加剤または助剤を含有していてもよく、その役割は、製パン改良剤として作用することおよび/または懸濁液の均質性を維持することである。これらの添加剤は、アスコルビン酸などの酸化剤、L-システインなどの還元剤、1種または複数種の酵素活性を有する酵素製剤、例えばアミラーゼ、キシラナーゼ、リパーゼおよび/またはホスホリピダーゼ製剤、またはオキシダーゼ、例えばグルコースオキシダーゼであってもよい。これら添加剤は、1種または複数種の浸透圧性の酸、例えば可食性ポリヒドロキシ化合物および可食性塩であってもよい。
【0069】
ガスを生成する液体または半液体の成分の貯蔵
本発明の対象は、ガスを生成する液体または半液体の成分、特に上記のような酵母を含有する液体または半液体の成分を貯蔵するための上記のようなパッケージの使用でもある。そのようなパッケージは、より詳細には、8℃未満、好ましくは0℃から6℃の間の温度および50%から100%の間の相対湿度で使用され、酵母を含有する液体または半液体の製品を、少なくとも4週間、好ましくは少なくとも6週間、さらにより好ましくは少なくとも8週間新鮮に貯蔵することを可能にする。
【0070】
これらの貯蔵条件下で、そのようなパッケージは、それに加えて、35℃までの範囲になり得る可能な温度変動で最大で8時間、および好ましくは4時間、さらにより好ましくは20℃までの範囲になり得る可能な温度変動で最大2時間、使用することができる。
【0071】
特に断りのない限り、本記載中で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野における通常の専門家により普通に理解されるのと同じ意味を有する。同様に、全ての出版物、全ての特許出願、全ての特許および本明細書中で挙げた任意の他の参考文献は、引用により組み込まれる。
【0072】
(実施例)
以下の実施例に本発明のいくつかの実施形態を記載する。しかしながら、実施例は単に例示として提供されるものであり、決して本発明の範囲を限定することがないことは理解されるべきである。
【0073】
(実施例1)
エチレン-酢酸ビニル(EVA)を主成分とする3層フィルムを、当業者に周知のブローンフィルム押出法を使用して調製した。2種のフィルム、すなわちフィルム1およびフィルム2を、それぞれ30μmおよび40μmの厚さで得た。これらフィルムの各々の中央層Aは、18%から42%の間の酢酸ビニル質量含有率を有するEVAからなり、外層BおよびB'とは、層AのEVA含有率未満の酢酸ビニル質量含有率を有するEVAで作製した。
【0074】
透過率測定:酸素および二酸化炭素の透過係数を、気候室中23℃および90%の相対湿度(RH)で48時間コンディショニングした後、標準条件下で、フィルムの試料について測定した。
【0075】
酸素および二酸化炭素の透過係数は、LYSSY GPM5000装置を使用して測定した。各試料は、2つのチャンバー(下側のチャンバーにはヘリウムを一定で流し、他のチャンバーは試験ガス(CO2/O2/N2混合物を1/3、1/3、1/3の比率で)と接触している)の間の50cm2の試験用の小室に置いた。フィルム試料を通過するどのガスもベクターガスにより熱伝導率測定型検出器を備えたガスクロマトグラフに移送した。使用した実験条件は以下の通りである。
ベクターガス:ヘリウム、
試験ガス: 1/3、1/3、1/3の比率のCO2/O2/N2の混合物、
試験温度:23℃、
フィルムは、そのままで、およびその後23℃および90%RHで48時間コンディショニング後に試験した。
【0076】
フィルム試料の厚さは、Adamel Lhomargie精密マイクロメーター(精度1μm)を使用して測定した。測定は、各フィルムの3片の異なった試料について実施した。
【0077】
結果:得られた結果を、以下の表1および表2に示す。表中、PCO2およびPO2はl/m2/24h/atmで表示する。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
コンディショニング前および後のフィルムの透過率に有意な差はない。
【0081】
(実施例2)
液体酵母および/またはクリーム状酵母のラッピング/パッキングのためを意図する10kgおよび20kgのパウチを、実施例1のフィルムを使用して調製した。空のパウチは長方形のまたは正方形の形状で、内部の寸法は、20kgパウチでは500×680、10kgパウチでは500×500である。
【0082】
パウチは、次の組成:23g/m2の密度を有するOPA(ナイロン)の20μmの層、接着剤の層、および、74g/m2の密度を有するLLDPE/LDPEの80μmの層、を有する第2の多層フィルムで補強した。
【0083】
第2のフィルムは、穿孔されており、1m2当たり7090個の穿孔を含む。パウチは、上側の封から105mmの位置に、ねじ込み式のベースを備えていた。
【0084】
対照パウチを対照として使用した。これらの対照パウチは、CO2に対してわずかに透過性のポリエチレンフィルム(ΔP=1barで17から27l/m2/24hの透過率)からなり、貯蔵および輸送中に生成した二酸化炭素の排気を可能にする脱ガスキャップを有した。
【0085】
放出されたガスを測定する試験:この試験の目的は、本発明によるバッグインボックス(BIB)(すなわち、「カートン+本発明によるパウチ」)および対照BIB(すなわち、「カートン+対照パウチ」)が、同じ製造から生じた、酵母を含有する液体製品で満たされた後、貯蔵される間に、各々を通して漏出したCO2の量を評価することであった。この目的のために、BIBで満たした各々を、密封バッグ中に完全に入れた。したがって、ラッピング系から漏出する任意のガスはバッグ中で捕捉される。毎日、密封バッグから排気しながら、このガスをメスシリンダーの原理を使用して測定した。すなわち、メスシリンダーと類似した系を、最初に水で満たす。次に、BIBを含有するパウチおよびメスシリンダーの栓を開く。ガスが水を追い出して、このようにして排出されたガスの体積が測定される。得られた結果を以下の表3で報告する。
【0086】
【表3】
【0087】
表3から認められるように、本発明によるBIBの挙動と対照BIBの挙動とは、1日当たりに漏出したガスの平均量、および試験した24日間に漏出したCO2体積の合計の両方に関して一致する(表4に示した)。
【0088】
【表4】