(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材の印刷面に、複数回に分けてインキを印刷した後、前記基材に刷版を用いてニスを塗布する印刷方法において、前記刷版を製造するためのデータを生成するプログラムであって、
コンピュータを、
複数回に分けて行われるインキの印刷の各回でインキが印刷される領域を表す印刷データを入力する手段、
前記印刷面における第1領域および第2領域を指定する手段、および
前記第1領域に対しては、各回の印刷データの論理和を演算するとともに、前記第2領域に対しては、各回の印刷データの論理和の論理反転を演算して、前記刷版を製造するためのデータを生成する手段、
として機能させることを特徴とする刷版製造用データ生成プログラム。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷紙などの基材の表面にインキを印刷する方法として、凸版印刷、凹版印刷、平版印刷、孔版印刷などが知られている。例えば、平版印刷の代表例としては、オフセット印刷が挙げられる。オフセット印刷では、刷版(平版)に付けたインキをブランケットに転写した後、ブランケットから印刷紙に転写するようにしている。
【0003】
印刷で用いられるインキとしては、従来より油性インキが多く使用されている。近年では、紫外線などのエネルギーを与えることによって短時間で硬化させる速乾性インキも用いられるようになっている。
【0004】
ここで、速乾性インキは印刷から乾燥(硬化)までの時間が非常に短いため、印刷時間を大幅に短縮することができる。特に、紫外線の照射によって硬化するインキ(以下、「UVインキ」と言う。)では、紫外線の照射によって瞬間的な硬化が行われ、硬化後の塗膜の耐摩耗性や耐溶剤性などの耐性が高いというメリットがある。
【0005】
その一方で、UVインキは油性インキに比べて画線部の艶が出にくいというデメリットもある。
図7は、インキ表面の状態を例示する模式図であり、(a)は油性インキIK−OLの例、(b)はUVインキIK−UVの例である。
図7(a)に表したように、油性インキIK−OLの場合には、印刷してから乾燥するまでの時間で表面が平準化(レベリング)され、乾燥後の表面の凹凸が少なくなる。このため、線画部の表面での光の乱反射が少なく、艶のある仕上がりを得ることができる。
【0006】
図7(b)に表したように、UVインキIK−UVの場合には、印刷してから硬化するまでの時間が非常に短い。このため、レベリングされる前に硬化することになり、硬化後の表面の凹凸が多くなる。したがって、画線部の表面での光の乱反射が多く、艶の少ない仕上がりとなる。
【0007】
光沢感のある印刷を行う印刷装置として、特許文献1には、版胴及びブランケット胴の下流に、整面用ロールを配置して、印刷面を押圧することで、速乾性インキを用いた場合の光沢性の低下を抑制する技術が開示されている。また、特許文献2には、印刷基材の表面に印刷インキで印刷し、印刷面に紫外線硬化型上塗りワニスを塗布して硬化させることで、鏡面状の高光沢上塗り塗膜を形成する技術が開示されている。また、印刷面にニスを塗布することは、特許文献1にも記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、基材にインキを印刷した後にニスを塗布するといった表面処理を行う場合、インキが印刷されていない領域にもニスが塗布されることになる。これにより、本来であれば基材の表面が露出して素材感を出せる部分も一様に表面処理されてしまう。例えば、模様や凹凸感のある印刷紙を用いて印刷する場合、ニスを塗布することで、せっかくの模様や凹凸感を表現しきれず、仕上がりにおいて意図する素材感が損なわれてしまうという問題がある。
【0010】
また、例えばガラス、宝石、金属等の光沢のある被写体の写真を印刷する場合などでは、被写体の光沢感を表現するために光の反射を表現した白色の部分(すなわちインキが印刷されていない領域)について光沢を高めることで被写体の質感を表現したいという要求がある。その反面、例えば人物を被写体とする写真を印刷する場合などでは、人物の肌のような白っぽい部分については光沢を抑制することで肌の質感を表現したいという要求もある。
【0011】
本発明の目的は、基材の素材感を保ちつつ、ニスによる光沢感も得ることができる印刷装置、印刷方法及び刷版製造用データ生成プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の印刷装置は、基材の印刷面に印刷柄に応じたインキを印刷する印刷部と、印刷面においてインキが印刷された領域を印刷領域、インキが印刷されない領域を下地領域とした場合、下地領域にはニスを塗布せず、印刷領域にはニスを塗布する処理を行うニス塗布部と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
このような構成によれば、基材の印刷面においてインキが印刷された印刷領域にはニスが塗布され、光沢感を得ることができる。一方、インキが印刷されない下地領域にはニスが塗布されないため、下地の露出する部分にニスが塗られず、下地の素材感も保つことができる。
【0014】
本発明の印刷装置において、印刷部は、印刷面にそれぞれインキを印刷する複数の印刷ユニットを有し、ニス塗布部は、印刷面においていずれの印刷ユニットもインキを印刷しない領域を、下地領域としてニスを塗布しないよう処理するようにしてもよい。
【0015】
このような構成によれば、多色の印刷を行う場合であっても、どの色のインキも印刷されない下地領域を的確に峻別して、下地領域にニスを塗布しないようにすることができる。
【0016】
本発明の印刷装置の他の例では、基材の印刷面に印刷柄に応じたインキを印刷する印刷部と、印刷面においてインキが印刷された領域を印刷領域、インキが印刷されない領域を下地領域とした場合、下地領域にはニスを塗布し、印刷領域にはニスを塗布しない処理を行うニス塗布部と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
このような構成によれば、下地領域の艶を高めつつ、診察領域の艶を抑制した印刷を行うことが可能となる。
【0018】
本発明の印刷装置のさらに他の例では、基材の印刷面に印刷柄に応じたインキを印刷する印刷部と、印刷面においてインキが印刷された領域を印刷領域、インキが印刷されない領域を下地領域とした場合、印刷面内の第1領域に対しては、下地領域にはニスを塗布せず、印刷領域にはニスを塗布する処理を行うとともに、印刷面内の第2領域に対しては、下地領域にはニスを塗布せず、印刷領域にはニスを塗布する処理を行うニス塗布部と、を備えたことを特徴とする。
【0019】
このような構成によれば、インキが印刷された印刷領域の艶を高めた第1領域と、下地領域の艶を高めた第2領域とを混在させた印刷を行うことが可能となる。
【0020】
本発明の印刷装置において、印刷部は、外周に印刷用刷版が装着される印刷用版胴と、印刷用版胴と対向接触し、印刷用刷版からインキが転写される印刷用ブランケット胴と、印刷用ブランケット胴と対向接触し、印刷用ブランケット胴との間で搬送される基材を押圧して印刷用ブランケット胴から印刷面にインキを転写する印刷用圧胴と、を有し、ニス塗布部は、外周にニス用刷版が装着されるニス用版胴と、ニス用版胴と対向接触し、ニス用刷版からニスが転写されるニス用ブランケット胴と、ニス用ブランケット胴と対向接触し、ニス用ブランケット胴との間で搬送される基材を押圧してニス用ブランケット胴から印刷領域にニスを転写するニス用圧胴と、を有していてもよい。
【0021】
このような構成によれば、版胴、ブランケット胴及び圧胴を用いたオフセット印刷において、インキが印刷された印刷領域にはニスを塗布して光沢感を与えることができ、インキが印刷されない下地領域にはニスを塗布しないで下地の素材感を残しておく印刷を行うことができる。
【0022】
本発明の印刷装置において、基材の搬送経路における印刷部とニス塗布部との間に設けられ、印刷面に印刷されたインキの表面を平準化するレベリング部をさらに備えていてもよい。レベリング部は、印刷面に印刷されたインキを押圧することで平準化するように構成してもよい。このような構成によれば、インキを印刷した後にレベリング部でインキ表面の凹凸を低減できるようになる。
【0023】
本発明の印刷装置において、インキは紫外線照射硬化型インキであってもよい。このような構成によれば、紫外線の照射によって硬化する速乾性のインキを用いた場合でも、インキが印刷された印刷領域にはニスが塗られて光沢感を得ることができるとともに、インキが印刷されない下地領域にはニスが塗られず下地の素材感を保つことができる。
【0024】
本発明の印刷装置において、ニスは、紫外線照射硬化型ニスであり、基材の搬送経路におけるニス塗布部の下流側に設けられ、紫外線照射硬化型ニスに紫外線を照射する第2紫外線照射部をさらに備えていてもよい。このような構成によれば、インキが印刷された印刷領域に塗布したニスを短時間で硬化させることができる。
【0025】
本発明の印刷方法は、基材の印刷面に印刷柄に応じたインキを印刷する工程と、印刷面においてインキが印刷された領域を印刷領域、インキが印刷されない領域を下地領域とした場合、下地領域にはニスを塗布せず、印刷領域にはニスを塗布する処理を行う工程と、を備えたことを特徴とする。
【0026】
このような構成によれば、基材の印刷面においてインキが印刷された印刷領域にはニスが塗布され、光沢感を得ることができる。一方、インキが印刷されない下地領域にはニスが塗布されないため、下地の露出する部分にニスが塗られず、下地の素材感も保つことができる。
【0027】
本発明の印刷方法の他の例では、基材の印刷面に印刷柄に応じたインキを印刷する工程と、印刷面においてインキが印刷された領域を印刷領域、インキが印刷されない領域を下地領域とした場合、下地領域にはニスを塗布し、印刷領域にはニスを塗布しない処理を行う工程と、を備えたことを特徴とする。
【0028】
このような構成によれば、基材の印刷面においてインキが印刷されない下地領域にはニスが塗布され、下地の色について光沢感を得ることができる。一方、インキが印刷された印刷領域にはニスが塗布されないため、線画部の艶を抑制することができる。
【0029】
本発明の印刷方法のさらに他の例では、基材の印刷面に印刷柄に応じたインキを印刷する工程と、印刷面における第1領域および第2領域を指定する工程と、印刷面においてインキが印刷された領域を印刷領域、インキが印刷されない領域を下地領域とした場合、印刷面の第1領域に対しては、下地領域にはニスを塗布せず、印刷領域にはニスを塗布する処理を行うとともに、印刷面の第2領域に対しては、下地領域にはニスを塗布し、印刷領域にはニスを塗布しない処理を行う工程と、を備えたことを特徴とする。
【0030】
このような構成によれば、インキが印刷された印刷領域の艶を高めた第1領域と、下地領域の艶を高めた第2領域とを混在させた印刷を行うことが可能となる。その結果、印刷画に応じて質感の高い印刷を提供することができるようになる。
【0031】
本発明の印刷方法において、インキを印刷する工程と、ニスを塗布する処理を行う工程との間で、印刷面に印刷されたインキの表面を平準化するレベリング処理を行う工程をさらに備えていてもよい。レベリング処理を行う工程において、インキを押圧することで印刷面に印刷されたインキの表面を平準化するように構成してもよい。このような構成によれば、インキを印刷した後にレベリングによってインキ表面の凹凸を低減できるようになる。
【0032】
本発明の印刷方法において、インキは紫外線照射硬化型インキであってもよい。このような構成によれば、紫外線の照射によって硬化する速乾性のインキを用いた場合でも、インキが印刷された印刷領域にはニスが塗られて光沢感を得ることができるとともに、インキが印刷されない下地領域にはニスが塗られず下地の素材感を保つことができる。
【0033】
本発明の印刷方法において、ニスは、紫外線照射硬化型ニスであり、ニスを塗布する処理を行う工程の後、紫外線照射硬化型ニスに紫外線を照射する工程をさらに備えていてもよい。このような構成によれば、インキが印刷された印刷領域に塗布したニスを短時間で硬化させることができる。
【0034】
本発明の刷版製造用データ生成プログラムは、基材の印刷面に、複数回に分けてインキを印刷した後、基材に刷版を用いてニスを塗布する印刷方法において、刷版を製造するためのデータを生成するプログラムであって、コンピュータを、複数回に分けて行われるインキの印刷の各回でインキが印刷される領域を表す印刷データを入力する手段、および各回の印刷データの論理和を演算して刷版を製造するためのデータを生成する手段、として機能させることを特徴とする。
【0035】
このような構成によれば、多色の印刷を行う場合においてニスを塗布するための刷版を製造するためのデータとして、第1インキ領域を表す第1印刷データと、第2インキ領域を表す第2印刷データとの論理和によって得たデータを用いるため、どの色のインキも印刷されない下地領域にはニスを塗布しない刷版を的確に製造することができる。
【0036】
本発明の刷版製造用データ生成プログラムの他の例では、基材の印刷面に、複数回に分けてインキを印刷した後、基材に刷版を用いてニスを塗布する印刷方法において、刷版を製造するためのデータを生成するプログラムであって、コンピュータを、複数回に分けて行われるインキの印刷の各回でインキが印刷される領域を表す印刷データを入力する手段、および各回の印刷データの論理和の論理反転を演算して刷版を製造するためのデータを生成する手段、として機能させることを特徴とする。
【0037】
このような構成によれば、多色の印刷を行う場合においてニスを塗布するための刷版を製造するためのデータとして、第1インキ領域を表す第1印刷データと、第2インキ領域を表す第2印刷データとの論理和の論理反転によって得たデータを用いるため、どの色のインキも印刷されない下地領域にはニスを塗布し、いずれかのインキが印刷される印刷領域にはニスを塗布しない刷版を的確に製造することができる。
【0038】
本発明の刷版製造用データ生成プログラムの他のさらに例では、基材の印刷面に、複数回に分けてインキを印刷した後、基材に刷版を用いてニスを塗布する印刷方法において、刷版を製造するためのデータを生成するプログラムであって、コンピュータを、
複数回に分けて行われるインキの印刷の各回でインキが印刷される領域を表す印刷データを入力する手段、印刷面における第1領域および第2領域を指定する手段、および 第1領域に対しては、各回の印刷データの論理和を演算するとともに、第2領域に対しては、各回の印刷データの論理和の論理反転を演算して、刷版を製造するためのデータを生成する手段、として機能させることを特徴とする。
【0039】
このような構成によれば、どの色のインキも印刷されない下地領域にはニスを塗布しない第1領域と、どの色のインキも印刷されない下地領域にはニスを塗布し、いずれかのインキが印刷される印刷領域にはニスを塗布しない第2領域とが混在した刷版を的確に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0042】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
【0043】
(印刷装置の構成)
図1は、第1実施形態に係る印刷装置を例示する模式図である。
図1(a)には印刷装置1の全体構成図が示され、
図1(b)には印刷ユニットの内部構成図が示される。
図1に表したように、本実施形態に係る印刷装置1は、印刷部10、ニス塗布部20、給紙部30及び排紙部40を備える。印刷装置1は、基材である例えば印刷紙Pにオフセット印刷を行う装置である。
【0044】
給紙部30は、印刷される前の印刷紙Pを収容するとともに、印刷紙Pを1枚ずつ取り出して搬送経路Lに送り出す機構を有する。本実施形態では基材として印刷紙Pを例とするが、紙以外の材料から成るもの(例えば樹脂シート)であってもよい。
【0045】
印刷部10は、給紙部30から送り出された印刷紙Pの印刷面に印刷柄に応じたインキIKを印刷する部分である。本実施形態では、複数の印刷ユニット(10Y、10M、10C及び10K)が設けられる。印刷ユニット10Yは、黄色のインキIKを印刷するためのユニットである。印刷ユニット10Mは、マゼンタ色のインキIKを印刷するためのユニットである。印刷ユニット10Cは、シアン色のインキIKを印刷するためのユニットである。また、印刷ユニット10Kは、黒色のインキIKを印刷するためのユニットである。すなわち、印刷装置1は、1枚の印刷紙PにY(黄)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(黒)の4色のインキIKを重ねてカラー印刷を行う。
【0046】
図1(b)に表したように、各印刷ユニット10Y、10M、10C及び10Kのそれぞれには、印刷用版胴11、印刷用ブランケット胴12、印刷用圧胴13、印刷用水ローラ14及び印刷用インキローラ15が設けられる。
【0047】
印刷用版胴11の外周には、印刷用刷版PS1が装着される。印刷用刷版PS1は、例えば薄いアルミニウム板の表面に感光剤が塗られたものが用いられる。印刷用刷版PS1の感光剤に印刷柄に応じた露光を行うことで、親水層及び親油層が設けられる。
【0048】
印刷用ブランケット胴12、印刷用水ローラ14及び印刷用インキローラ15のそれぞれは、印刷用版胴11の周りで対向接触するように配置される。印刷用水ローラ14は、印刷用刷版PS1と接触して印刷用刷版PS1の表面に水WTを付着させる。水WTは、印刷用刷版PS1の親水層に付着し、親油層には付着しない。
【0049】
印刷用インキローラ15は、印刷用水ローラ14の後段に配置され、印刷用刷版PS1と接触して印刷用刷版PS1の表面にインキIKを付着させる。インキIKは、印刷用刷版PS1の親油層に付着し、親水層には付着しない。
【0050】
印刷用ブランケット胴12は、印刷用版胴11と接触して印刷用刷版PS1に付着したインキIKのみを写し取る。印刷用ブランケット胴12の表面には、印刷柄に応じたインキIKが転写される。
【0051】
印刷用圧胴13は、印刷用ブランケット胴12と対向接触するよう設けられる。印刷用圧胴13は、印刷用ブランケット胴12との間で搬送される印刷紙Pを押圧する。この押圧によって、印刷用ブランケット胴12に転写されたインキIKが印刷紙Pに印刷される。
【0052】
本実施形態では、インキIKとして速乾性インキを用いる場合を例とする。速乾性インキは、熱や光のエネルギーによって短時間で硬化するインキIKである。以下の説明では、インキIKとして、紫外線の照射によって硬化するUVインキを用いる場合を例とする。
【0053】
印刷部10の搬送経路Lの下流側には第1紫外線照射部51が設けられる。第1紫外線照射部51は、印刷紙Pに印刷されたインキIKに紫外線を照射する部分である。インキIKは、第1紫外線照射部51から照射された紫外線を受けて瞬間的に硬化する。
【0054】
ニス塗布部20は、第1紫外線照射部51の搬送経路Lの下流側に設けられる。ニス塗布部20は、印刷紙Pの印刷面にニスNSを塗布する部分である。ニス塗布部20の構成は、
図1(b)に表した印刷ユニット10Y、10M、10C及び10Kの構成と同様である。ニス塗布部20の場合、外周にニス用刷版PS2が装着されるニス用版胴21と、ニス用版胴21と対向接触するニス用ブランケット胴22、ニス用水ローラ24及びニス用インキローラ25と、ニス用ブランケット胴22と対向接触するニス用圧胴23と、が設けられる。
【0055】
本実施形態では、ニスNSとして紫外線の照射によって硬化する紫外線照射硬化型ニスが用いられる。ニス塗布部20は、印刷紙Pの印刷面においてインキIKが印刷された領域を印刷領域、インキIKが印刷されない領域を下地領域とした場合、下地領域にはニスNSを塗布せず、印刷領域にはニスNSを塗布する処理を行う。
【0056】
ニス塗布部20の搬送経路Lの下流側には第2紫外線照射部52が設けられる。第2紫外線照射部52は、印刷紙Pに塗布されたニスNSに紫外線を照射する部分である。ニスNSは、第2紫外線照射部52から照射された紫外線を受けて瞬間的に硬化する。
【0057】
排紙部40は、第2紫外線照射部52の搬送経路Lの下流側に設けられる。印刷部10でインキIKが印刷され、ニス塗布部20でニスNSが塗布された印刷紙Pは、排紙部40に送り出される。排紙部40には、印刷が完了した印刷紙Pが収容される。
【0058】
このような本実施形態に係る印刷装置1では、インキIKが印刷された印刷領域にニスNSが塗布されることで印刷領域の光沢感を得ることができる。一方、インキIKが印刷されない下地領域にはニスNSが塗布されないため、印刷紙Pの下地の露出部分にニスNSは塗られない。このため、印刷紙Pの下地の素材感を保つことができる。すなわち、印刷紙Pの素材感を保ちつつ、ニスNSによる光沢感も得ることが可能になる。
【0059】
(ブロック構成)
図2は、印刷装置のブロック構成図である。
本実施形態に係る印刷装置1の印刷部10、ニス塗布部20、給紙部30、排紙部40、第1紫外線照射部51及び第2紫外線照射部52は、制御部100によって制御される。制御部100は、給紙部30による印刷紙Pの給紙タイミングを制御する。また、制御部100は、印刷部10の各印刷ユニット10Y、10M、10C及び10Kによる各胴及びローラの回転制御、インキIKの温度制御などを行う。また、制御部100は、ニス塗布部20の各胴及びローラの回転制御、ニスNSの温度制御などを行う。また、制御部100は、第1紫外線照射部51及び第2紫外線照射部52のそれぞれの紫外線照射タイミングや照射量を制御する。また、制御部100は、排紙部40による印刷紙Pの排出タイミングを制御する。
【0060】
また、印刷装置1は、搬送部101、操作部102及び表示パネル103を備える。搬送部101は、モータ等の駆動系やローラを備えており、搬送経路Lに沿って印刷紙Pを搬送させる。操作部102は、印刷装置1の各種操作を行うためのスイッチなどを備える。表示パネル103には、印刷装置1の動作状態や設定内容などが表示される。
【0061】
(印刷方法)
次に、印刷方法について説明する。本実施形態では、印刷装置1を用いたオフセット印刷を例とする。
先ず、給紙部30に収容した印刷紙Pを1枚ずつ搬送経路Lに送り出す。印刷紙Pが印刷部10に搬送されると、YMCKの各印刷ユニット10Y、10M、10C及び10Kでそれぞれの色のインキIKを印刷紙Pに印刷する。すなわち、各印刷ユニット10Y、10M、10C及び10Kにおいて、印刷用ブランケット胴12から印刷紙PにインキIKを転写する。
【0062】
次に、印刷紙Pを第1紫外線照射部51に搬送し、インキIKに紫外線を照射する。これにより、インキIKが硬化する。次いで、印刷紙Pをニス塗布部20に搬送する。ニス塗布部20では、印刷紙PのインキIKが印刷された印刷領域にニスNSを塗布する。すなわち、ニス用ブランケット胴22から印刷紙Pの印刷領域にニスNSを転写する。
【0063】
次に、印刷紙Pを第2紫外線照射部52に搬送し、ニスNSに紫外線を照射する。これにより、ニスNSが硬化する。その後、印刷紙Pを排紙部40へ送り出す。
【0064】
このような印刷方法によって印刷された印刷物においては、インキIKが印刷された印刷領域に塗布されたニスNSによって光沢感を得られるとともに、インキIKが印刷されない下地領域にはニスNSが塗布されず、下地の素材感を保つことができる。
【0065】
図3は、印刷の状態を例示する模式図である。
図3(a)には、網点にインキIKが印刷された状態を例示する平面図が表され、
図3(b)には、
図3(a)におけるA−A線断面図が表される。また、
図3(c)には、インキIKの上にニスNSが塗布された状態を例示する平面図が表され、
図3(d)には、
図3(c)におけるB−B線断面図が表される。
【0066】
図3(a)に表したように、印刷柄において濃淡を表す場合、例えば網点の大きさを濃淡に合わせて変化させる。印刷紙Pの印刷面において、インキIKが印刷された領域は印刷領域R10である。印刷領域R10は、印刷面を平面視した場合に全ての網点におけるインキIKの付着した領域である。一方、印刷面を平面視した場合にインキIKの付着していない領域、すなわち、印刷紙Pの下地が表れている領域は下地領域R20である。
【0067】
図3(c)に表したように、印刷領域R10にニスNSを塗布すると、インキIKの上にのみニスNSが塗布され、下地領域R20にはニスNSは塗布されない。したがって、インキIKの印刷領域のみニスNSによる光沢感が得られる。一方、下地領域R20にはニスNSが塗布されないため、印刷紙Pの下地における素材感を残すことができる。さらに、ニスNSを印刷紙Pの全面に塗布しないため、ニスNSの消費量が少なく、経済的である。
【0068】
図4は、複数色を印刷した状態を例示する模式図である。
図4(a)には2色のインキが印刷された状態を例示する平面図が表され、
図4(b)には印刷領域R10及び下地領域R20を例示する平面図が表される。
【0069】
図4(a)に表したように、第1の色を有する第1インキIK1及び第2の色を有する第2インキIK2のそれぞれが網点によって表される場合、モアレ縞を抑制するため第1インキIK1及び第2インキIK2の互いのスクリーン角度を変えて重ね合わせる。例えば、第2インキIK2の網点のスクリーン角度は、第1インキIK1のスクリーン角度に対して15度傾斜している。
【0070】
このように、第1インキIK1及び第2インキIK2を重ねて印刷する場合、印刷紙Pの印刷面において、第1インキIK1が印刷された第1インキ領域R11と、第2インキIK2が印刷された第2インキ領域R12とは、互いに一部または全部で重なることになる。
【0071】
このような場合、ニス塗布部20においてニスNSを塗布する領域(印刷領域R10)は、
図4(b)に表したように、第1インキ領域R11と第2インキ領域R12との論理和となる領域が印刷領域R10となる。一方、第1インキIK1及び第2インキIK2のいずれも印刷されない下地領域R20は、第1インキ領域R11と第2インキ領域R12との否定論理和となる領域である。
【0072】
複数色を印刷する場合、ニス塗布部20は、色を問わずインキが印刷される領域を印刷領域R10として、ニスNSを塗布し、いずれのインキも印刷されない領域を、下地領域R20として、ニスを塗布しないよう処理する。すなわち、上記のように第1インキ領域R11と第2インキ領域R12との論理和の領域を印刷領域R10としてニスNSを塗布する。一方、第1インキ領域R11と第2インキ領域R12との否定論理和の領域を下地領域R20としてニスNSを塗布しないようにする。
【0073】
これにより、複数色であっても、第1インキIK1及び第2インキIK2の上にのみニスNSが塗布され、下地領域R20にはニスNSは塗布されない。したがって、複数色の印刷物において、ニスNSによる光沢感を得つつ、下地における素材感を残すことができる。
【0074】
なお、上記においては、第1インキIK1及び第2インキIK2の2色を例として説明したが、3色以上であっても同様である。
【0075】
(刷版製造用データ生成プログラム)
次に、ニス用刷版PS2を製造するためのデータを生成するプログラムについて説明する。
図5は、刷版製造用データ生成プログラムを説明するための図である。
図5(a)には、コンピュータ200のハードウェア構成図が例示され、
図5(b)には、プログラムのフローチャートが示される。
【0076】
図5(a)に表したように、刷版製造用データ生成プログラムはコンピュータ200によって実行される。すなわち、コンピュータ200は、CPU(Central Processing Unit)211、インタフェース212、出力部213、入力部214、主記憶部215及び副記憶部216を備える。
【0077】
CPU211は、各種プログラムの実行によって各部を制御する。インタフェース212は、外部機器との情報入出力を行う部分である。出力部213は、コンピュータ200で処理した結果を出力する部分である。出力部213には、モニタやプリンタなどが用いられる。
【0078】
入力部214は、ユーザから情報を受け付ける部分である。入力部214には、キーボードやマウスなどが用いられる。また、入力部214は、記録媒体MMに記録された情報を読み取る機能を含む。
【0079】
主記憶部215には、例えばRAM(Random Access Memory)が用いられる。主記憶部215の一部として、副記憶部216の一部が用いられてもよい。副記憶部216には、例えばHDD(Hard disk drive)やSSD(Solid State Drive)が用いられる。副記憶部216は、ネットワークを介して接続された外部記憶装置であってもよい。
【0080】
次に、コンピュータ200で実行される刷版製造用データ生成プログラムの流れを
図5(b)のフローチャートに沿って説明する。
先ず、ステップS101に表したように、コンピュータ200は印刷データの読み込みを行う。例えば、2色の印刷を行う場合、第1インキ領域R11を表す第1印刷データと、第2インキ領域R12を表す第2印刷データとを読み込む。第1印刷データは、印刷紙Pの印刷面において第1インキIK1を印刷する座標を示すデータである。同様に、第2印刷データは、印刷紙Pの印刷面において第2インキIK2を印刷する座標を示すデータである。YMCK4色の場合には、全ての色の印刷データを読み込む。
【0081】
次に、ステップS102に表したように、コンピュータ200は論理和の演算を行う。すなわち、コンピュータ200は、先のステップS101で読み込んだ第1印刷データと第2印刷データとの論理和を演算する。YMCK4色の場合には、4色全ての印刷データについての論理和を演算する。
【0082】
次に、ステップS103に表したように、コンピュータ200は刷版データの生成を行う。刷版データは、先のステップS102で演算して得た論理和のデータに基づき、ニス用刷版PS2を生成するためのデータである。論理和のデータは、
図4(b)に示す印刷領域R10と等価である。刷版データは、ニス用刷版PS2の感光剤を露光するためのデータである。このデータに基づき感光剤を露光すると、ニスNSを塗布する部分の感光剤が親油層となる。
【0083】
次に、ステップS104に表したように、コンピュータ200は生成した刷版出を出力する処理を行う。刷版データは、所定の記憶媒体に記憶されたり、ネットワークを介して外部の記憶媒体に記憶される。刷版データは、複数色データを合成した例えばCTP(Computer To Plate)用の1ビットのデータである。この刷版データを用いてニス用刷版PS2を製造すれば、印刷領域R10にニスNSが塗布され、下地領域R20にはニスNSが塗布されないニス用刷版PS2が完成する。
【0084】
なお、上記説明した刷版製造用データ生成プログラムは、コンピュータ読取可能な記録媒体MMに記録されていてもよい。すなわち、
図5(b)に示すステップS101〜ステップS104の一部または全部を、コンピュータ200に読み取り可能な形式で記録媒体MMに記録してもよい。また、刷版製造用データ生成プログラムは、ネットワークを介して配信されてもよい。
【0085】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態に係る印刷装置を説明する。
図6は、第2実施形態に係る印刷装置を例示する模式図である。
図6(a)には印刷装置1Bの全体構成図が示され、
図6(b)にはレベリング部60の内部構成図が示される。
【0086】
図6(a)に表したように、本実施形態に係る印刷装置1Bは、印刷紙Pの搬送経路Lにおける印刷部10とニス塗布部20との間に設けられたレベリング部60を備える。それ以外の構成は、第1実施形態に係る印刷装置1と同様である。
【0087】
レベリング部60は、印刷紙Pの印刷面に印刷されたインキIKを押圧する部分である。
図6(b)に表したように、レベリング部60には、互いに対向接触する第1ローラ61と第2ローラ62とが設けられる。第1ローラ61及び第2ローラ62の材料は、印刷されたインキIKが付着しない性質を有することが望ましく、例えばフッ素樹脂やシリコン樹脂が用いられる。インキIKが印刷された印刷紙Pは、第1ローラ61と第2ローラ62との間に搬送される。第1ローラ61と第2ローラ62との間を通過する際に押圧力を受けてインキIKがレベリングされる。レベリングによって、インキIKの表面の凹凸が抑制される。
【0088】
レベリング部60の下流側には第1紫外線照射部51が設けられ、レベリングされたインキIKに紫外線が照射される。これにより、インキIKの表面がレベリングされた状態で硬化することになる。本実施形態では、レベリングされたインキIKの表面にニスNSが塗布されるため、レベリングしないでニスNSを塗布する場合に比べて更なる光沢感を得ることが可能になる。
【0089】
なお、上記の印刷装置1Bにおいて、印刷紙Pの搬送経路Lにおいて、ニス塗布部20と第2紫外線照射部52との間に、ニスNSを押圧するレベリング部を設けてもよい。これにより、ニスNSの表面をレベリングして更なる光沢感を得ることができる。また、印刷部10と第1紫外線照射部51との間にレベリング部60を設けるとともに、ニス塗布部20と第2紫外線照射部52との間にニスNS用のレベリング部を設けてもよい。
【0090】
また、レベリング部60がインキIKの表面をローラで押圧することによりインキIKの表面をレベリング(平準化)する場合を例に説明したが、印刷部10の最終段の印刷ユニット10Kから第1紫外線照射部51までの距離を長く(例えば1.5メートル)設定し、搬送中に自然にレベリングに生じるのに十分な時間がかかるように構成してもよい。すなわち、インキを硬化をさせずに所定時間待機するようにしてもよい。また、レベリング部60は、搬送距離の延長とローラによる押圧の双方によってレベリングを行うようにしてもよい。ニス塗布部20と第2紫外線照射部52との間にレベリング部を設ける場合も同様である。
【0091】
以上説明したように、実施形態に係る印刷装置1及び1B、印刷方法及び刷版製造用データ生成プログラムによれば、印刷紙Pの素材感を保ちつつ、ニスNSによる光沢感も得ることができる。
【0092】
〔第3実施形態〕
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態に係る印刷装置は、第1実施形態に係る印刷装置1または第2実施形態に係る印刷装置1Bと同様であり、ニス用刷版PS2を製造するためのデータを生成する刷版製造用データ生成プログラムの機能および当該プログラムによって生成される刷版製造用データのみが異なっている。説明の重複を避けるべく、以下では第3実施形態の刷版製造用データ生成プログラムについて説明する。
【0093】
本実施形態の刷版製造用データ生成プログラムは、第1実施形態と同様、コンピュータ200で実行される。刷版製造用データ生成プログラムの流れを
図8のフローチャートに沿って説明する。
【0094】
先ず、ステップS201に表したように、コンピュータ200は印刷データの読み込みを行う。例えば、2色の印刷を行う場合、第1インキ領域R11を表す第1印刷データと、第2インキ領域R12を表す第2印刷データとを読み込む。YMCK4色の場合には、全ての色の印刷データを読み込む。
【0095】
次に、ステップS202に表したように、コンピュータ200は論理和の反転演算を行う。すなわち、コンピュータ200は、先のステップS101で読み込んだ第1印刷データと第2印刷データとの論理和を演算して得られた結果を論理反転して出力する。YMCK4色の場合には、4色全ての印刷データについての論理和を演算して得られた結果を論理反転する。
【0096】
次に、ステップS203に表したように、コンピュータ200は刷版データの生成を行う。刷版データは、先のステップS202で演算して得た論理和の反転データに基づき、ニス用刷版PS2を生成するためのデータである。論理和のデータは、
図4に示す下地領域R20と等価である。刷版データは、ニス用刷版PS2の感光剤を露光するためのデータである。このデータに基づき感光剤を露光すると、ニスNSを塗布する部分の感光剤が親油層となる。
【0097】
次に、ステップS204に表したように、コンピュータ200は生成した刷版出を出力する処理を行う。刷版データは、所定の記憶媒体に記憶されたり、ネットワークを介して外部の記憶媒体に記憶されたりする。刷版データは、複数色データを合成した例えばCTP(Computer To Plate)用の1ビットのデータである。この刷版データを用いてニス用刷版PS2を製造すれば、インキが付着していない下地領域R20にニスNSが塗布され、インキが付着した印刷領域R10にはニスNSが塗布されないニス用刷版PS2が完成する。
【0098】
上述のようにして製造されたニス用刷版を用いて、インキを印刷した後、インキが付着していない下地領域R20にのみニスNSを塗布することにより、インキが付着していない下地領域R20(下地が白色の場合には白色の部分)について光沢を高めることができる。その結果、例えばガラス、宝石、金属等の光沢のある被写体の写真を印刷する場合などのように、被写体の光沢感を表現するために光の反射を表現した白色の部分について光沢を高めることで被写体の質感を表現したいという要求がある場合に、質感の高い印刷を提供することができる。
【0099】
〔第4実施形態〕
次に、第4実施形態について説明する。第4実施形態に係る印刷装置は、第1実施形態に係る印刷装置1または第2実施形態に係る印刷装置1Bと同様であり、ニス用刷版PS2を製造するためのデータを生成する刷版製造用データ生成プログラムの機能および当該プログラムによって生成される刷版製造用データのみが異なっている。説明の重複を避けるべく、以下では第4実施形態の刷版製造用データ生成プログラムについて説明する。
【0100】
本実施形態の刷版製造用データ生成プログラムは、第1実施形態と同様、コンピュータ200で実行される。刷版製造用データ生成プログラムの流れを
図9のフローチャートに沿って説明する。
【0101】
先ず、ステップS301に表したように、コンピュータ200は印刷データの読み込みを行う。例えば、2色の印刷を行う場合、第1インキ領域R11を表す第1印刷データと、第2インキ領域R12を表す第2印刷データとを読み込む。YMCK4色の場合には、全ての色の印刷データを読み込む。
【0102】
次に、ステップS302に表したように、印刷面における第1領域および第2領域を指定する。第1領域は、インキの上にニスを塗布して線画部の艶を高める領域であり、第2領域はインキの付着していない下地にニスを塗布して下地の色(例えば白色)の艶を高める領域である。第1領域および第2領域はそれぞれ連続した領域である必要はなく、分割された領域であってもよい。
【0103】
次に、ステップS303に表したように、コンピュータ200は、第1領域に対しては論理和の演算を行い、第2領域に対しては論理和の反転演算を行う。すなわち、コンピュータ200は、先のステップS301で読み込んだ第1印刷データと第2印刷データとの論理和を演算し、第2領域に対してはさらに論理反転演算をして出力する。YMCK4色の場合には、4色全ての印刷データについての論理和を演算し、第2領域については得られた結果をさらに論理反転する。
【0104】
次に、ステップS304に表したように、コンピュータ200は刷版データの生成を行う。刷版データは、先のステップS202で演算して得た論理和の反転データに基づき、ニス用刷版PS2を生成するためのデータである。刷版データは、ニス用刷版PS2の感光剤を露光するためのデータである。このデータに基づき感光剤を露光すると、ニスNSを塗布する部分の感光剤が親油層となる。
【0105】
次に、ステップS305に表したように、コンピュータ200は生成した刷版出を出力する処理を行う。刷版データは、所定の記憶媒体に記憶されたり、ネットワークを介して外部の記憶媒体に記憶されたりする。刷版データは、複数色データを合成した例えばCTP(Computer To Plate)用の1ビットのデータである。この刷版データを用いてニス用刷版PS2を製造する。
【0106】
上述のようにして製造されたニス用刷版を用いて、インキを印刷した後、インキが付着していない下地領域R20にのみニスNSを塗布することにより、印刷物の中に、インキが付着した印刷領域R10について光沢を高めた第1領域と、インキが付着していない下地領域R20について光沢を高めた第2領域を混在させることができる。その結果、様々な印刷図柄に対して質感の高い印刷を提供することができる。
【0107】
〔第4実施形態の変形例〕
上記の第4実施形態では、ステップS302において、インキの上にニスを塗布して線画部の艶を高める第1領域と、インキの付着していない下地にニスを塗布して下地の色の艶を高める第2領域とを指定したが、これに加え、インキが付着しているか否かにかかわらずニスを塗布する第3領域、および/または、インキが付着しているか否かにかかわらずニスを塗布しない第4領域を指定してもよい。この場合、ステップS303〜S304において第3領域については領域内全体にニスを塗布する刷版データを生成し、第4領域については領域内全体にニスを塗布しない刷版データを生成する。
【0108】
このようにすれば、印刷物の中にインキが付着しているか否かにかかわらずニスを塗布する領域、および/または、インキが付着しているか否かにかかわらずニスを塗布しない領域を設けることができる。その結果、艶の有無によるコントラストを強調することができ、様々な印刷図柄に対してさらに質感の高い印刷を提供することができる。
【0109】
なお、上記に本実施形態を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、インキIKとしてUVインキを例として説明したが、熱によって硬化するインキIKや、速乾性以外のインキIKであっても適用可能である。また、インキIKとして、従来のインキよりも色表現領域が広く階調や色再現性に優れた広演色インキを用いてもよい。特に、紫外線照射硬化型の広演色インキを用いると、優れた色再現性や艶による高品質な印刷を、短時間で行うことが可能となる。また、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。