(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記低段側圧縮機の圧縮比と前記高段側圧縮機の圧縮比とが同等となるように、前記低段側圧縮機の容量と前記高段側圧縮機の容量との容量比を調節することを特徴とする請求項1に記載の冷凍機。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る冷凍機を含む冷凍装置の好適な実施の形態について図面を参照して説明する。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る冷凍装置の構成を示す図である。
図1において、低段側圧縮機1、補助放熱器2、高段側圧縮機3、高段側放熱器4、減圧装置としての膨張弁5及び冷却器として機能する蒸発器6が順次接続されて冷媒回路が構成されている。本実施の形態では、低段側圧縮機1、補助放熱器2、高段側圧縮機3、高段側放熱器4及び膨張弁5を冷凍機11が有しており、蒸発器6は負荷装置となる室内機12が有している。ここで、膨張弁5については室内機12が有するようにしてもよい。
【0013】
低段側圧縮機1は、吸入側配管側からの冷媒を圧縮して吐出する。補助放熱器2は、低段側圧縮機1が吐出した冷媒と周囲空気(外気)とを熱交換させ、冷媒を放熱させる。高段側圧縮機3は、補助放熱器2で放熱された冷媒を圧縮して吐出する。高段側放熱器4は、高段側圧縮機3が吐出した冷媒と周囲空気とを熱交換させ、冷媒を放熱(凝縮)させる。膨張弁5は、高段側放熱器4で放熱された冷媒を減圧する。蒸発器6は、膨張弁5で減圧された冷媒を蒸発させる。
【0014】
ここで、高段側放熱器4及び補助放熱器2は、一体型放熱器7を構成している。一体型放熱器7の近傍には放熱器ファン8が設けられている。放熱器ファン8は、一体型放熱器7に外気を通過させ、一体型放熱器7の伝熱管を通過する冷媒と熱交換させた後、熱交換後の外気を一体型放熱器7外に排気させる。
【0015】
図2は、本発明の実施の形態1に係る冷凍装置の一体型放熱器7の構成を示す概略図である。
図2において、一体型放熱器7は、平板状の伝熱フィン71に伝熱管72を貫通して構成したプレートフィンチューブ型熱交換器である。ここで、本実施の形態では、高段側放熱器4及び補助放熱器2は、伝熱フィン71を共有することによって一体化しているが、伝熱フィン71部分を分割して構成するようにしてもよい。一体化することで、熱交換器の構造上、製造が容易となる。一方、高温となる補助放熱器2と高段側放熱器4との間で伝熱フィン71を分割した構成とした場合には熱絶縁効果が大きくなるため、補助放熱器2及び高段側放熱器4の双方がより効率よく放熱可能となる。
【0016】
また、一体型放熱器7では、
図2に示すように、低段側圧縮機1が吐出した高温となるガス状の冷媒(ガス冷媒)を冷却する補助放熱器2を熱交換器の上方部(重力方向の上側)に配置し、高段側放熱器4を下方部(重力方向の下側)に配置する。これにより、補助放熱器2の放熱が高段側放熱器4側に干渉することがない。したがって、補助放熱器2で暖められた被熱伝達流体が高段側放熱器4側に移動することがなく、補助放熱器2及び高段側放熱器4の双方が効率よく放熱可能となる。
【0017】
本実施の形態では、
図2に示しているように、一体型放熱器7の全放熱量(高段側放熱器4の放熱量+補助放熱器2の放熱量)に対する補助放熱器2の放熱量比率を、所定の低周囲温度の放熱量比率以下の範囲内として一体型放熱器7(高段側放熱器4と補助放熱器2)を構成した装置とすることに特徴を有するものである。詳細については後述する。
【0018】
このように構成された冷凍装置に用いる冷媒は、本実施の形態では二酸化炭素(CO
2)とする。例えば、本実施の形態の冷凍機11の接続対象となる室内機12として、例えばスーパーマーケットのショーケース等においては、配置換え等により配管等が開放されることがあり、冷媒漏れが発生する可能性がある。そこで、冷媒漏れを考慮すると、地球温暖化に対する影響が小さいCO
2を冷媒として用いることが望ましい。
【0019】
また、本実施の形態の冷凍装置は、冷凍機内蔵型のショーケース等にも適用することができる。冷凍機内蔵型のショーケースは、冷媒回路が開放されることがないため、冷媒漏れ量も小さい。このため、従来用いられている地球温暖化係数の高いHFC系冷媒でもよいが、本来的には、地球温暖化に対する影響が小さい冷媒である、例えばHFO冷媒、HC系冷媒、CO
2、アンモニア、水等が望ましい。
【0020】
以上のように構成された冷凍装置の動作について冷媒の流れに基づいて説明する。
低段側圧縮機1はCO
2冷媒を圧縮する。圧縮されて吐出されたCO
2冷媒は、一体型放熱器7内の補助放熱器2で放熱することで冷却された後、高段側圧縮機3に吸入される。高段側圧縮機3はCO
2冷媒をさらに圧縮する。高段側圧縮機3で圧縮されて吐出されたCO
2冷媒は、一体型放熱器7内の高段側放熱器4で放熱することで凝縮された後、膨張弁5で減圧されて蒸発器6に流入する。蒸発器6に流入したCO
2冷媒は蒸発して、低段側圧縮機1へ還流する。蒸発器6においてCO
2冷媒が蒸発する際に負荷を冷却する。
【0021】
本実施の形態の冷凍装置では、低段側圧縮機1と高段側圧縮機3との容量比により低段側高圧(中間圧力)を調節する。ここで、本実施の形態では、圧縮機を駆動させるモータの回転数を制御できる運転容量可変式とすることで、低段側高圧の調節を行えるようにするが、低段側圧縮機1と高段側圧縮機3の排除容積比により低段側高圧を調節してもよい。
【0022】
図3は、冷凍装置におけるエンタルピと圧力との関係を示す図である。本実施の形態の冷凍装置では、外気温度に応じて冷却負荷が変化し、冷却負荷に対して冷凍能力(蒸発器6の熱交換量)を決定しており、その決定した冷凍能力を一定に保つように、低段側圧縮機1により冷媒流量を制御している。このため、ある運転状態から高段側圧縮機3の駆動回転数を上げて高段側圧縮機3の容量を増大させても、低段側圧縮機1の駆動回転数が追従するわけではない。したがって、高段側圧縮機3の容量が増大すると高段側吸入圧力が低下し、低段側高圧(低段側吐出圧力)も低下するという関係がある。逆に、高段側圧縮機3の容量を低減すれば低段側高圧が上昇する。
【0023】
また、
図3から明らかなように、高段側圧縮機3の駆動回転数を上げて低段側高圧が低下すると、高段側圧縮機3の入力(電力)は大きくなる(WH1<WH2)のに対し、低段側圧縮機1の入力は小さくなる(WL1>WL2)。
【0024】
ところで、低段側圧縮機1と高段側圧縮機3の圧縮比が略同等となるときに、合計入力(高段側圧縮機3の入力+低段側圧縮機1の入力)が最小となり、二段サイクル全体の運転効率が最適となる。そこで、高段側圧縮機3の容量を調節して、低段側圧縮機1と高段側圧縮機3との圧縮比が略同等となるように低段側高圧を調節する。よって、低段側高圧は超臨界とならない運転となる。このため、圧力によって相変化が生じる飽和温度が決まることとなる。
【0025】
図4は、中間圧力と圧縮機の入力との関係を示す図である。
図4は、前述した関係を整理したものであり、横軸を低段側高圧(中間圧力)とし、縦軸を二段サイクル冷凍装置における入力として、高段側圧縮機3の入力(エンタルピ差)と低段側圧縮機1の入力(エンタルピ差)とそれらの合計入力をそれぞれ示している。
図4に示すように、高段側圧縮機3と低段側圧縮機1とにおける圧縮機入力が略同じになるときに合計入力が最も小さくなることがわかる。そして、このときCOP(=冷凍能力/(高段側圧縮機入力+低段側圧縮機入力))が最大となる。
【0026】
以上より、高段側圧縮機3と低段側圧縮機1とにおける圧縮比を略同じとする低段側高圧(以下、最適中間圧という)を目標として高段側圧縮機3の容量制御を行う。これにより、二段サイクル冷凍装置のCOPが最大となる効果を得ることができる。ここで、本実施の形態では、高段側圧縮機3の容量制御を行う場合について説明するが、本発明はこれに限らず、低段側圧縮機1の圧縮比と高段側圧縮機3の圧縮比とが同等となるように、低段側圧縮機1の容量と高段側圧縮機3の容量との容量比を調節すればよい。
【0027】
高段側高圧は、高段側放熱器4において冷媒との熱交換に係る周囲空気の温度によって変化する。本実施の形態では高段側放熱器4は屋外設置の冷凍機11が収容している。このため、高段側放熱器4において冷媒と熱交換するのは外気空気である。例えば外気温度が上昇すれば高段側高圧が上昇し、最適中間圧も上昇する。一方、外気温度が低下すれば同様に最適中間圧が低下する。このように、外気温度に伴って最適中間圧が変化することになる。
【0028】
ここで、本実施の形態では、圧縮機の圧力運転範囲を維持するため、放熱器ファン8の回転速度を制御して高段側高圧を調節する。このとき、本実施の形態のように高段側圧縮機3と低段側圧縮機1とにおける圧縮比を略同じとする最適中間圧を目標として高段側圧縮機3の容量制御を行おうとすると、最適中間圧における冷媒の飽和温度が外気温度よりも高くなる可能性がある。
【0029】
<低段側凝縮温度が外気温度よりも低い場合と高い場合の補助放熱器2の放熱量の違いについて>
次に、補助放熱器2の放熱量について考察する。本実施の形態の冷凍装置では、上記のような圧力制御を行うため、最適中間圧の飽和温度が外気温度(周囲温度)に対して低くなる場合と高くなる場合(同じ場合も含む)とがある。補助放熱器2は外気に冷媒の熱を放熱する放熱器であるため、低段側圧縮機1から吐出された冷媒は補助放熱器2で外気と熱交換しても、最大でも外気温度までしか下がらない。また、低段側凝縮温度が外気温度よりも低い場合と高い場合とでは吐出温度の冷媒を補助放熱器2で同じ外気温度まで下げるにあたっても、その放熱量は異なるものとなる。
【0030】
図5は、凝縮温度が外気温度よりも低い場合と高い場合との放熱量をモリエル線図で説明した図である。
図5(a)は、凝縮温度が外気温度よりも高い場合の放熱エンタルピ差、
図5(b)は、凝縮温度が外気温度よりも低い場合の放熱エンタルピ差を示している。
【0031】
(a)凝縮温度が外気温度よりも高い場合
圧縮機の吐出冷媒の温度(a点の温度)が例えば80℃〜90℃であり、外気温度が20℃で凝縮温度が25℃の場合について考える。
放熱器は外気に冷媒の熱を放熱する放熱器であるため、
図5(a)に示すように、80℃〜90℃の冷媒(点a)は、放熱器での外気との熱交換により、まず、ガス状態のまま凝縮温度である25℃(点b)まで下がる。そして、25℃を保ちながら凝縮して液状態となる(c点)。外気温度は20℃であるため冷媒はさらに放熱可能であり、液状態で20℃(点d)まで下がる。このように凝縮温度が外気温度よりも高い場合、冷媒は凝縮するため、相変化を伴う冷却を行うことになる。
【0032】
(b)凝縮温度が外気温度よりも低い場合
低段側圧縮機1の吐出冷媒の温度(a点の温度)が例えば80℃〜90℃であり、外気温度が20℃で凝縮温度が10℃の場合について考える。補助放熱器2は外気に冷媒の熱を放熱する放熱器であるため、上述したように80℃〜90℃の冷媒は、補助放熱器2における外気との熱交換により最大でも外気温度の20℃までしか下がらない。したがって、
図5(b)に示すように、80℃〜90℃の冷媒(点a)は、補助放熱器2でガス状態のまま20℃(点b)となる。このため、凝縮温度が外気温度より低い場合は、補助放熱器2では凝縮による相変化を伴う冷却を行えず、ガス状のまま冷却を行うことになる。
【0033】
<補助放熱器2の放熱量とCOPとの関係>
図6は、補助放熱器2の放熱量とCOPとの関係を説明するための図である。
図6においては、二段サイクルのモリエル線図を示している。二段サイクルを構成するにあたり、補助放熱器2での放熱量をQsub1にした場合(
図6(a))とQsub2にした場合(
図6(b))とを比較する(Qsub1<Qsub2)。
図6に示すように、冷凍能力が一定とすると、θh1<θh2となるため、放熱量Qsub1で放熱する場合に比べて放熱量Qsub2で放熱する方が高段側圧縮機3の入力(エンタルピ差)を少なくすることができる(WH1>WH2)。このため、高段側圧縮機3の吸入温度が低ければ同じ昇圧量でも圧縮機動力は少なくなる。よって、補助放熱器2の放熱量が多い方が高段側圧縮機3の入力を小さくできる。
【0034】
本実施の形態の冷凍装置では、冷凍能力一定の制御が行われており、COP=冷凍能力/(高段側圧縮機3の入力+低段側圧縮機1の入力)であるため、高段側圧縮機3の入力を小さくすることができればCOPを大きくすることができる。
【0035】
以上の内容を整理すると、高段側圧縮機3の圧縮比と低段側圧縮機1の圧縮比とを略同じとする運転制御によりCOPを最大とすることができ、また、補助放熱器2の放熱量を多くするほど、COPの値を大きくすることができることになる。
【0036】
よって、補助放熱器2の冷媒流出口において、ちょうど飽和ガスとなるような放熱量とすれば、高段側圧縮機3の液圧縮を回避しつつ、最大のCOPを得られる。低段側圧縮機1から吐出された冷媒が飽和ガス状態となる程度に補助放熱器2の放熱量を確保する。この放熱量を以下では所要放熱量という。この所要放熱量を達成するには、例えば、放熱器ファン8の風量を制御したり、補助放熱器2自体の構造的な設計を行ったりすることになる。このように補助放熱器2の放熱量を所要放熱量とすることにより、高段側圧縮機3の液圧縮を回避しつつ、最大限のCOPを得ることができる。
【0037】
ここで、高段側圧縮機3と低段側圧縮機1とにおける圧縮比を制御し、低段側凝縮温度が外気温度より低くなるようにすれば、補助放熱器2における冷媒の冷却(放熱)では相変化が伴わないので、必ず高段側圧縮機3の液圧縮を回避することはできる。しかしながら、高段側圧縮機3と低段側圧縮機1とにおける圧縮比を略同じとする最適中間圧を目標とするものではないため、最大限のCOPは得られないこととなる。
【0038】
ところで、所要放熱量は外気温度によって異なる。よって、年間を通じて高段側圧縮機3の液圧縮を回避しつつ、最大限のCOPを得るには、低外気条件のときの所要放熱量と高外気条件のときの所要放熱量とを把握しておく必要がある。本実施の形態の冷凍装置では、補助放熱器2の所要放熱量と高段側放熱器4の放熱量との間には、外気条件に応じた所定の放熱量比が存在する。ここで、本実施の形態では補助放熱器2と高段側放熱器4とが一体型放熱器7で構成されているため、所定の放熱量比は、一体型放熱器7の全体放熱量に対する補助放熱器2の放熱量の割合に置き換えられる。したがって、低外気条件のときの放熱量割合、又は高外気条件のときの放熱量割合のいずれか小さい方の放熱量割合を設定することにより、年間を通じて高段側圧縮機3の液圧縮を回避しつつ、最大限のCOPを得ることが可能な冷凍装置を構成することができる。
【0039】
後述するように、上記の一体型放熱器7における全放熱量に対する補助放熱器2の放熱量割合は、低外気条件の方が小さくなり、外気温度の変化に対して増減の傾向は変化しない単調変化となる。このため、低外気条件の放熱量割合で補助放熱器2を構成すれば、年間を通じて高段側圧縮機3の液圧縮を回避しつつ、最大COPが得られる所要放熱量を確保できることとなる。
【0040】
特に本実施の形態の冷凍装置において、使用環境の想定がつく場合、年間を通じて最も低い外気温度条件によって放熱量割合を設定すれば、年間を通じて高段側圧縮機3の液圧縮を回避できるため、高信頼性を得ることができる。
【0041】
以下、JIS規格に基づく低外気条件(7℃)及び高外気条件(35℃)のときの放熱量割合の説明に先立って、一体型放熱器7全体の放熱量について説明する。
【0042】
<一体型放熱器7の放熱量>
図7は、本発明の実施の形態1に係る冷凍装置の一体型放熱器7の放熱量を説明するための図である。
図7においては、本実施の形態の冷凍装置のモリエル線図を示している。一体型放熱器7の放熱量QALLは、次の(1)式のように、高段側放熱器4の放熱量QCHと補助放熱器2の放熱量Qsubを加算した量となる。
【0043】
QALL=Qsub+QCH …(1)
【0044】
<一体型放熱器7における補助放熱器2の放熱量割合>
補助放熱器2の放熱量Qsubを所要放熱量とすると、この放熱量Qsubと一体型放熱器7全体の放熱量QALLとの間には、外気温度及びCO
2冷媒の物性に応じた関係がある。この関係について以下に説明する。
【0045】
図8は、本発明の実施の形態1に係る冷凍装置の一体型放熱器における補助放熱器の放熱量割合を説明するための図である。
図8においては、外気温度35℃と外気温度7℃のときのモリエル線図を示している。
【0046】
例えば外気温度が35℃のとき、
図8の高段側放熱器4の放熱量A1と、補助放熱器2の放熱量B1との比が67:33になることがCO
2冷媒の物性に基づき決まっている。また、外気温度が7℃(低外気条件)のとき、高段側放熱器4の放熱量A2と、補助放熱器2の放熱量B2との比が83:17になることがCO
2冷媒の物性に基づき決まっている。
【0047】
以上より、本実施の形態の冷凍装置をCOPが最大となる制御で運転し、補助放熱器2で凝縮させずに最大可能な放熱量を確保して高いCOPを得るための構成とするには、一体型放熱器7の全放熱量に対する補助放熱器2の放熱量割合を、外気温度が35℃の場合は33%とし、外気温度が7℃の場合は17%とすることが好ましい。そして、この冷凍装置は年間を通して使用されることを鑑みると、一体型放熱器7の全放熱量は、低外気温度7℃での割合17%以下を補助放熱器2で放熱する構成とすることが望ましいということになる。
【0048】
また、上記の全放熱量に対する補助放熱器2の放熱量割合は、外気温度変化に対して増減の傾向は変化しないため、外気温度に対して単調増加、又は単調減少となる。よって、例えば最低外気温度7℃のときの放熱量割合で補助放熱器2を構成すれば、年間を通じて高段側圧縮機3の液圧縮を回避しつつ、最大COPが得られる所要放熱量となる。
【0049】
ここで、上述した外気温度は一例である。冷凍装置が配置される環境に応じて適宜設定することができる。例えば低外気条件の温度(所定の低周囲温度)は、外気温度として想定される温度の下限値に応じた温度であり、高外気条件の温度(所定の高周囲温度)は、外気温度として想定される温度の上限値に応じた温度である。そして、一体型放熱器7の全放熱量に対する補助放熱器2の放熱量比率を、外気温度が低外気条件の際に、補助放熱器2により冷媒状態を略飽和ガス状態まで冷却させた場合での放熱量比率より低くなるように、補助放熱器2を構成すればよい。
【0050】
例えば本実施の形態の冷凍装置で用いるCO
2冷媒は超臨界冷媒となる。そのため、高段側放熱器4のエンタルピ差が小さく、また、比熱比が大きいため吐出温度が高く、補助放熱器2のエンタルピ差が大きい。よって、一体型放熱器7の全放熱量に対する補助放熱器2の放熱量割合は大きいものとなる。
【0051】
図9は、補助放熱器2の放熱量比率を冷媒毎に示す図である。次に凝縮潜熱を利用する冷媒について考察する。
図9においては、CO
2冷媒、凝縮潜熱を利用する代表的な冷媒(プロパン、イソブタン、アンモニア、HFO1234yf、HFO1234ze、R134a、R410A、R32)を用いた場合における、一体型放熱器7の全放熱量に対する補助放熱器2の放熱量比率を、低外気条件(7℃)と高外気条件(35℃)とでそれぞれグラフで示している。
【0052】
凝縮潜熱を利用した場合、CO
2冷媒とは対照に、高段側放熱器4のエンタルピ差が大きく、補助放熱器2のエンタルピ差が小さくなる。よって、一体型放熱器7の全放熱量に対する補助放熱器2の所要放熱量割合はCO
2冷媒より小さいものとなる。各冷媒の中で、最小の放熱量割合はイソブタンの7.7%となり、最大の放熱量割合はR410A、又はR32の16.9%となる。よって、CO
2冷媒以外の凝縮潜熱を利用する冷媒を、年間を通して使用することを鑑みると、一体型放熱器7の全放熱量の8%以下を補助放熱器2で放熱する構成とすることが望ましいということになる。
【0053】
本実施の形態の冷凍装置において、上記のような放熱量割合にするための具体的な構成として任意の構成を採用することができる。例えば、
図1に示すように補助放熱器2と高段側放熱器4とで共通の放熱器ファン8を備えた構成とする場合は、補助放熱器2の伝熱面積を一体型放熱器7の伝熱面積の17%以下とする。
【0054】
また、補助放熱器2と高段側放熱器4とでそれぞれ別々の放熱器ファン8を用いる構成であれば、各放熱器ファン8の回転数を変えて放熱量割合を制御するようにしてもよい。この場合、外気温度が7℃の場合には放熱量割合が17%、外気温度が35℃のときは放熱量割合が33%となるように、図示しない制御装置により外気温度に応じて各放熱器ファン8を制御するようにしてもよい。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態によれば、高段側放熱器4の冷媒の放熱量と補助放熱器2の冷媒の放熱量との合計放熱量に対する補助放熱器2の冷媒の放熱量の割合である放熱量比率を、低外気条件の際に補助放熱器2の放熱量を所要放熱量とした場合における放熱量比率より低くするようにした。このため、低い周囲温度における放熱量に基づいて高段側放熱器4と補助放熱器2とを構成することで、補助放熱器2における冷媒の凝縮は年間を通じて発生せず、高段側圧縮機3の液圧縮を回避できるため、高い信頼性を得ることができる。また、圧縮機の発停等が抑えられ、安定した駆動を行うことができるので省エネルギー効果を得ることが可能となる。ここで、本実施の形態では、高段側放熱器4と補助放熱器2との構成を、放熱量比率(割合)に基づいて設定するようにしたが、例えば高段側放熱器4と補助放熱器2とにおける冷媒の放熱量について、比等の関係に基づいて構成を定めるようにしてもよい。
【0056】
また、地球温暖化に対する影響が小さい自然冷媒として、運転効率の低いCO
2冷媒を用いた冷凍装置に関して、年間を通した外気温度変化、負荷変動と、冷媒の特性、高段と低段の消費電力比率を考慮しつつ、放熱量割合を選定するようにしたので、高段側圧縮機3の液圧縮を回避しつつ、冷凍装置全体の運転効率が向上することで年間を通した省エネルギー効果を得ることができる。例えば、また、補助放熱器2の放熱量を一体型放熱器7の全放熱量に対して17%以下としたことにより、CO
2冷媒を冷凍装置に使用した場合であっても、年間を通して大きな省エネルギー効果を得ることができる。
【0057】
さらに、補助放熱器2と高段側放熱器4とを一体とした一体型放熱器7で形成することでコンパクトな冷凍装置を得ることができる。さらに、補助放熱器2の放熱量を一体型放熱器7の全放熱量に対して17%以下にするにあたり、一体型放熱器7において、補助放熱器2と高段側放熱器4とで伝熱面積を分けるように構成することにより、無駄なく一体型放熱器7を使用することができ、信頼性が高く、かつ年間を通して大きな省エネルギー効果となるコンパクトな冷凍装置を得ることができる。
【0058】
本実施の形態の冷凍装置において、補助放熱器2の放熱量を一体型放熱器7の全放熱量に対して17%以下にすれば補助放熱器2において信頼性が高く、最も高い省エネルギー効果が得られるのは上述の通りである。これは、全放熱量に対して一体型放熱器7が十分な熱処理能力を有している場合に成立する。一方、例えば一体型放熱器7が十分な熱処理能力を有していないような場合は、高段側高圧が高くなるため、補助放熱器2の割合を減らして高段側放熱器4に割り当てた方が省エネルギー効果が大きくなる。また、高段側高圧が過上昇するような場合は、信頼性を確保するため補助放熱器2を高段側放熱器4に割り当てざるを得ない。しかし、これらは補助放熱器2で所要放熱量が得られないため、所要放熱量が得られる場合と比較するとCOPは大きく悪化する。
【0059】
よって、一体型放熱器7が十分な熱処理能力を有している場合に補助放熱器2の所要放熱量を得ることができるため、二段サイクルにおける補助放熱器2の効果を最大限に活かすには、一体型放熱器7は十分な熱処理能力を有していた方が良い。
【0060】
図10は、本発明の実施の形態1に係る放熱量に対する十分な熱処理能力を説明するための図である。
図10に基づいて、放熱量に対する十分な熱処理能力について具体的に説明する。放熱量は、蒸発器6(冷却器)の熱交換量(冷凍能力)+圧縮機入力となる。例えば、COP=2の単段サイクルの冷凍装置の場合、圧縮機入力が「1」に対して冷凍能力が「2」となるため、放熱量は「3」となる。よって、一般的に放熱器の熱処理能力は冷却器の1.5倍程度で設計される。
【0061】
また、蒸発器6において、冷媒温度(蒸発温度)と被冷却媒体(冷蔵庫内空気)との温度差を所望の温度(例えば10℃)とするため、放熱器の冷媒温度(凝縮温度)と外気温度との温度差がその所望の温度(例えば10℃)となれば十分な熱処理能力を有する。例えば本実施の形態のような二段サイクル冷凍装置の一体型放熱器7において、冷媒温度(凝縮温度)と外気温度との温度差を、放熱器の冷媒温度(凝縮温度)と外気温度との温度差以下(例えば10℃以下)とすれば、補助放熱器2の効果を含めて確実に単段サイクルより高いCOPを得ることができる。
【0062】
ここで、熱処理能力とは、熱交換器の伝熱面積と熱通過率の積で表される。熱通過率は、主に冷媒側の熱伝達率と空気側の熱伝達率で決まる。低温機器用の冷却器は着霜耐力向上の観点から、伝熱管やフィンのピッチが大きく、放熱器より熱通過率が小さいため、伝熱面積は大きいが、熱処理能力は放熱器より小さい。
【0063】
実施の形態2.
図11は、本発明の実施の形態2に係る冷凍装置の構成を示す図である。
図11において、
図1等と同じ符号を付している機器等については、実施の形態1で説明したことと同様の動作等を行う。
図11(a)、
図11(b)に示すように、本実施の形態の冷凍装置は、冷媒回路における補助放熱器2から高段側圧縮機3の間の経路にアキュムレータ9を備える。補助放熱器2において凝縮した液冷媒が生じても、アキュムレータ9により液を貯留することが可能となり、気液分離を行うことができる。このため、高段側圧縮機3にはガス冷媒のみを流出させることができるため、高段側圧縮機3の液圧縮を回避可能となる。
【0064】
そして、特に
図11(b)では、アキュムレータ9において、気液分離により貯留した液冷媒の取出口を備え、流量調節弁10を介して流量調節、減圧等を行って蒸発器6の上流側へ液冷媒を流して、高段側放熱器4、膨張弁5を通過した冷媒と合流させる構成とする。
図11(b)の冷凍装置では、アキュムレータ9内の中間圧冷媒を、圧縮、凝縮等の過程を経ずに、蒸発器6に直接導くことができるため、高段側圧縮機3の入力を低減することができ、省エネルギー効果も得ることができる。
【0065】
本実施の形態の冷凍装置についても、冷媒のノンフロン化やフロン冷媒の削減、機器の省エネルギー化が要求されるショーケース、業務用冷凍冷蔵庫、自動販売機等の冷蔵あるいは冷凍機器にも広く適用することができる。