【実施例1】
【0015】
図1は、本実施例の電力消費量予測制御装置として動作するコンピュータのハードウェア構成例を示す図である。
図1において、本実施例のコンピュータは、CPU(Central Processing Unit)およびFPGA(Field Programmable Gate Array)等で構成される制御部1と、ROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory)等の各種メモリを含む記憶部2と、キーボード8およびマウス9等のユーザインタフェースを含む入力部3と、印刷等の出力処理を行う出力部4と、ディスプレイである表示部5と、所定のネットワークを介して外部と通信を行う通信部6とを備える。なお、
図1では、キーボード8およびマウス9等のユーザインタフェースを含む入力部3を備えることとしたが、本実施例のコンピュータは、これに限らず、表示部5にタッチパネルの機能を持たせることによって、入力部3を設けない構成、または入力部3と併用する構成としてもよい。
【0016】
図1において、制御部1では、本実施例の電力消費量予測プログラムを実行する。記憶部2は、本実施例の電力消費量予測プログラムおよび各種入力情報や、処理の過程で得られたデータ等を記憶する。制御部1は、記憶部2に記憶されているプログラムを読み出すことにより本実施例の電力消費量予測制御を実行する。なお、記憶部2は、内部メモリに限るものではなく、たとえば、外付けハードディスク,DVD(Digital Versatile Disc),SDメモリ等の外部記憶媒体であってもよいし、また、内部メモリおよび外部記憶媒体の両方で構成されることとしてもよい。
【0017】
また、本実施例の電力消費量予測制御装置は、発電所,電力会社,小売事業者(買電,売電等)等、太陽光発電を事業とする会社の他、将来の電力消費量を予測するためのパラメータ(情報)を入手可能な環境が整っている場所であれば、容易に設置可能である。
【0018】
ここで、本実施例の電力消費量予測制御装置がオフィス,工場等、建物単位の電力消費量を予測するための前提として、電力需要量の分解イメージについて説明する。
図2は、電力需要量の分解イメージの一例を示す図である。オフィス等の電力需要は、たとえば、サーバ,ルータや自動販売機等、電源が常時ONとなっている機器にかかる電力である第1の消費電力部分と、パソコンや照明等、オフィスに滞在する人の人数により消費電力が増減する機器によって消費される電力部分である第2の消費電力部分と、エアコン(空調機器)等、気象条件(気温,湿度,季節等)により消費電力が増減する機器によって消費される電力部分である第3の消費電力部分と、に分解することが可能である。
【0019】
第1の消費電力部分は、電源が常時ONとなっているため、朝,昼,夜を問わず、略一定の消費電力となる。第2の消費電力部分は、オフィスに滞在する人の人数に依存し、気象条件に依存しない部分であり、本実施例では、一例として、従業員が在籍している朝6時〜深夜24時(従業員在籍期間)の消費電力を想定する。第3の消費電力部分は、気象条件に基づき、エアコンの電源ON/OFFや、冷房運転,暖房運転,送風運転の切り替え等が行われることにより電力が消費される部分であり、一例として、最初に出社した従業員によりエアコンの電源が入れられてから最後に退社する従業員がエアコンの電源を切るまでの、朝6時〜深夜24時(空調機器等稼働期間)の消費電力を想定する。なお、本実施例では、一例として、従業員在籍期間と空調機器等稼働期間を同一時間帯としているが、これに限らず、たとえば、定時後に従業員に在籍しているにもかかわらず冷房や暖房を切る場合等、必ずしも両者が一致する必要はない。
【0020】
本実施例では、過去の電力消費量を第1の消費電力部分と第2の消費電力部分と第3の消費電力部分に分解して重回帰分析を行い、導出される相関式(過去の電力消費量を変数に分解)を用いて将来の電力消費量を予測する。
【0021】
図3は、本実施例の電力消費量予測制御装置の機能ブロック構成の一例を示す図であり、詳細には、上記制御部1が記憶部2から電力消費量予測プログラムを読み出して実行することで実現される機能ブロックを示している。
図3において、制御部1は、本実施例の電力消費量予測制御を実行するための機能ブロックとして、送受信制御部11と日時管理部12と電力消費量計算部13とを有する。なお、本実施例の電力消費量予測制御装置のハードウェア構成および機能ブロック構成は、説明の便宜上、本実施例の処理にかかわる構成を列挙したものであり、電力消費量予測制御装置のすべての機能を表現したものではない。
【0022】
また、本実施例の電力消費量予測プログラムは、通信部6およびインターネットなどのネットワークを介して配布可能である。また、このプログラムは、ハードディスク,フレキシブルディスク(FD),CD−ROM,MO,DVD,USBメモリ,SDメモリなどの、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよく、この場合は、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。
【0023】
つづいて、本実施例の電力消費量予測制御にかかる処理を、フローチャートを用いて詳細に説明する。
図4は、本実施例の電力消費量予測制御にかかる処理を示すフローチャートである。
【0024】
なお、本実施例の電力消費量予測制御にかかる処理を実行する場合の前提となる構成として、記憶部2には、オフィスや工場等の建築物の地理的な情報や構造上の情報を含む所定の建築物情報を格納するための建築物情報DB21と、対象となる建築物を利用する人数や勤務形態等のワークスタイルに関する各種情報を格納するためのワーク情報DB22と、過去の電力消費量を所定時間単位に格納するための電力消費量実績DB23と、過去の気象データおよび最新の天気予報データを所定時間単位に格納するための気象情報DB24と、が設けられている。
【0025】
図5は、建築物情報DB21の構成の一例を示す図である。建築物情報DB21については、システムの管理者が、入力部3を利用して、建物の名称,地理情報(緯度,経度),構造(鉄筋コンクリート造,木造等),その他の情報(建物の向き等)の入力処理を行う。なお、本実施例の建築物情報DB21に格納された情報は一例であり、これに限るものではない。
【0026】
図6は、ワーク情報DB22の構成の一例を示す図である。ワーク情報DB22については、システムの管理者が、入力部3を利用して、従業員数,人員構成(内勤,外勤等),稼働日および稼働時間等の稼働状況,機器の使用状況等の入力処理を行う。このワーク情報DB22は、上記建築物情報DB21と関連付けられた状態で、記憶部2に格納される。また、稼働状況欄には、稼働時間として、たとえば、始業時間,昼休み時間,終業時間,残業の状況等の情報が詳細に記録されている。また、機器の使用状況欄には、電気機器ごとに、待機電力の有無や、常時電源ONか利用時電源ONかを示す情報等が詳細に記録されている。なお、本実施例のワーク情報DB22に格納された情報は一例であり、これに限るものではない。
【0027】
図7は、電力消費量実績DB23の構成の一例を示す図である。電力消費量実績DB23は、一例として、将来の電力消費量の予測に必要となる期間である過去対象期間(本実施例では過去2か月)を、業務カレンダー等に基づいてそれぞれ「残業のある平日」,「残業のない平日」,「土曜」,「日曜・祝日」等の日付区分に分類した構造を有し、たとえば、30分単位で計測された2か月分の電力消費量実績データ(kWh)が日付区分毎に格納されている。具体的には、送受信制御部11が、日時管理部12と連携し、インターネット等の外部回線および通信部6経由で、電力会社等から電力消費量実績データを定期的(本実施例では30分毎)に受け取り、それらのデータを、対応する日付区分に振り分けて記憶部2内の電力消費量実績DB23に蓄積する。なお、過去2か月分の電力消費量実績データの各日付区分への振り分けは、送受信制御部11がワーク情報DB22に記録された情報に基づいて行うものとする。また、
図7では、一例として、1週間分(月曜日〜日曜日(祝日を含む場合も想定))の電力消費量実績データが表現されているが、本来は、過去2か月分のすべての電力消費量実績データが日付区分のいずれかに対応付けられた状態で格納されている。また、本実施例では、日付区分を、一例として、「残業のある平日」,「残業のない平日」,「土曜」,「日曜・祝日」と規定しているが、電力消費量に特定の傾向が表れるような分類の仕方であればこれに限るものではない。
【0028】
図8は、気象情報DB24の構成の一例を示す図である。送受信制御部11は、日時管理部12と連携し、インターネット等の外部回線および通信部6経由で、天気予報データを、たとえば、一時間毎(本実施例では30分毎)に受け取り、そのデータを気象情報として記憶部2内の気象情報DB24に記憶する。同様に、過去の気象データを、たとえば、一時間毎(本実施例では30分毎)に受け取り、そのデータを気象情報として気象情報DB24に記憶する。
【0029】
上記のように各種データが記憶部2に格納されている状態において、制御部1は、
図4に示す電力消費量予測制御を実行する。なお、本実施例では、説明の便宜上、電力消費量の予測計算を実際に行う日を予測計算日、電力消費量の予測対象となる日(本実施例では予測計算日の次の日以降に設定)を予測対象日、とそれぞれ定義する。また、制御部1の電力消費量計算部13は、常に日時管理部12と連携して動作するものとする。また、電力消費量計算部13は、ワーク情報DB22に格納された情報から従業員在籍期間および空調機器等稼働期間を予め把握しているものとする。
【0030】
図4において、電力消費量計算部13は、日時管理部12から予め規定された予測開始時刻に達した旨を通知された場合に、電力消費量実績DB23に格納された情報に基づいて、過去対象期間における第1の消費電力部分の電力値(過去BPと定義する)を求める(ステップS1)。詳細には、電力消費量計算部13は、たとえば、予測計算日の2か月前から予測計算日の前日までの所定時間帯(本実施例では従業員在籍期間および空調機器等稼働期間以外の時間帯)の電力消費量実績データ(R
1)を電力消費量実績DB23からすべて読み出し、全R
1の平均電力を計算する。そして、その計算結果を過去BP(kWh)として記憶部2に格納する。
【0031】
図9は、過去対象期間における第1の消費電力部分の電力値(過去BP)の計算処理のイメージを示す図である。ステップS1により得られた過去BPは、気象条件や従業員の人数に依存しない一定の値であることから、後述する予測対象日の電力消費量予測処理においても、予測対象日の第1の消費電力部分の電力値(=BP)としてそのまま適用される。
【0032】
つぎに、電力消費量計算部13は、電力消費量実績DB23に格納された情報および上記ステップS1により得られた過去BPに基づいて、過去対象期間における第2の消費電力部分の電力値(過去OWPと定義する)を求める(ステップS2)。詳細には、電力消費量計算部13は、たとえば、予測計算日の2か月前から予測計算日の前日までの従業員在籍期間の電力消費量実績データ(R
2)を、特定の日付区分である「残業のある平日」,「残業のない平日」,「土曜」毎に、電力消費量実績DB23からすべて読み出す。ここで、「残業のある平日」の2か月分の電力消費量実績データをそれぞれR
21とし(R
21の集合)、「残業のない平日」の2か月分の電力消費量実績データをそれぞれR
22とし(R
22の集合)、「土曜」の2か月分の電力消費量実績データをそれぞれR
23とする(R
23の集合)。なお、本実施例では、日曜日および祝日を休日として第2の消費電力部分がない日と仮定し、日付区分「日曜・休日」の2か月分の電力消費量実績データR
24の読み出しは行わない。
【0033】
さらに、電力消費量計算部13は、読み出した日付区分毎の電力消費量実績データ(R
21の集合,R
22の集合,R
23の集合)をそれぞれ時間帯毎(本実施例では30分毎)に集計する。これにより、たとえば、時間帯AのR
21の集合,R
22の集合,R
23の集合や、時間帯BのR
21の集合,R
22の集合,R
23の集合や、時間帯CのR
21の集合,R
22の集合,R
23の集合、…、が得られる。そして、集計により、同一日付区分かつ同一時間帯であることを単位として分類された電力消費量実績データからそれぞれ最小の電力値(たとえば、時間帯AのR
21の最小値,時間帯AのR
22の最小値,時間帯AのR
23の最小値、…等)を抽出し、さらに、抽出した最小の電力値からそれぞれ上記過去BPを減算し、減算の結果として得られる各電力値を、それぞれ日付区分および時間帯により分類された過去OWP(kWh)として記憶部2に格納する。
【0034】
図10は、過去対象期間における第2の消費電力部分の電力値(過去OWP)の計算処理のイメージを示す図である。たとえば、「残業のある平日」の6:00〜6:30の過去OWPは、過去対象期間の6:00〜6:30のR
21の最小値から過去BPを減算した値となる。また、「残業のない平日」の6:00〜6:30の過去OWPは、過去対象期間の6:00〜6:30のR
22の最小値から過去BPを減算した値となる。また、「土曜」の6:00〜6:30の過去OWPは、過去対象期間の6:00〜6:30のR
23の最小値から過去BPを減算した値となる。そして、このようにして得られた各過去OWPは、それぞれ日付区分(「残業のある平日」,「残業のない平日」,「土曜」)および時間帯(30分単位)により分類された過去OWPとして記憶部2に格納される。ステップS2により得られた過去OWPは、過去の電力消費量実績データから特定することができる値であることから、後述する予測対象日の電力消費量予測処理においても、予測対象日の第2の消費電力部分の電力値(=OWP)としてそのまま適用される。
【0035】
つぎに、電力消費量計算部13は、電力消費量実績DB23に格納された情報、上記ステップS1により得られた過去BP、および上記ステップS2により得られた過去OWPに基づいて、過去対象期間における第3の消費電力部分の電力値(過去ACPと定義する)を求める(ステップS3)。詳細には、電力消費量計算部13は、たとえば、予測計算日の2か月前から予測計算日の前日までの空調機器等稼働期間の電力消費量実績データ(R
3)を、特定の日付区分である「残業のある平日」,「残業のない平日」,「土曜」毎に電力消費量実績DB23からすべて読み出す。なお、本実施例では、日曜日および祝日を休日として第3の消費電力部分がない日と仮定し、日付区分「日曜・休日」の2か月分の電力消費量実績データの読み出しは行わない。
【0036】
そして、電力消費量計算部13は、たとえば、読み出したR
3から過去BPと、そのR
3と同一日付区分かつ同一時間帯の過去OWPと、を減算する処理を、上記で読み出したすべてのR
3に対して1つずつ実行し、減算結果として得られるすべての電力値を、実際の日付かつ時間帯により分類された2か月分の過去ACPとして記憶部2に格納する。
【0037】
図11は、過去対象期間における第3の消費電力部分の電力値(過去ACP)の計算処理のイメージを示す図である。たとえば、予測計算日の前日の6:00〜6:30の過去ACPは、予測計算日の前日の6:00〜6:30の電力消費量実績データR
3から過去BPを減算し、さらに、このR
3と同一日付区分かつ同一時間帯(6:00〜6:30)の過去OWPを減算した値となる。また、たとえば、2か月前の日の6:00〜6:30の過去ACPは、2か月前の日の6:00〜6:30の電力消費量実績データR
3から過去BPを減算し、さらに、このR
3と同一日付区分かつ同一時間帯(6:00〜6:30)の過去OWPを減算した値となる。
【0038】
つぎに、電力消費量計算部13は、上記ステップS3で得られた過去対象期間の過去ACPおよび気象情報DB24に蓄積された過去対象期間の気象情報xに基づいて下記(1)式を算出し、気象情報xの関数となるように近似式を導出する(ステップS4)。本実施例では、一例として、2次の多項式近似を利用し((2)式参照)、この近似式を、予測対象の建物(オフィス,工場等)の第3の消費電力部分y(=ACP)として定義する。ここで、下記(1)式のRは、上記R
3である。すなわち、Rは、日付区分「日曜日・祝日」以外の、予測計算日の2か月前から予測計算日の前日までの空調機器等稼働期間の電力消費量実績データ(kWh)である。また、下記(1)式の過去OWP(時間帯)は、Rと同一日付区分かつ同一時間帯の過去OWPである。また、a,b,cは係数である。
【0039】
f(x)=過去ACP=R−過去OWP(時間帯)−過去BP ・・・(1)
【0040】
y=ACP=ax
2+bx+c ・・・(2)
【0041】
さらに、電力消費量計算部13は、ステップS1により得られたBP(=過去BP)、ステップS2により得られたOWP(=過去OWP)、上記(1)式および上記(2)式に基づいて、予測対象日の電力消費量の予測式を下記(3)式のように導出する(ステップS5)。ここで、電力消費量(時間帯)は時間帯単位の電力消費量の予測値を表し、ACP(時間帯)は時間帯単位のACP(気象情報xの関数)を表し、OWP(日付区分,時間帯)は日付区分および時間帯で分類されたOWPを表す。
【0042】
電力消費量(時間帯)=
ACP(時間帯)+OWP(日付区分,時間帯)+BP ・・・(3)
【0043】
その後、電力消費量計算部13は、予測対象日の気象情報xを気象情報DB24から時間帯毎にすべて読み出し、上記(2)式に対し読み出した気象情報xを代入してACP(時間帯)を算出し、さらに、算出したACP(時間帯)を記憶部2に格納する。そして、電力消費量計算部13は、記憶部2からACP(時間帯),OWP(日付区分,時間帯),BPを読み出し、それらを上記(3)式に代入して電力消費量(時間帯)を算出し(ステップS6)、算出した電力消費量を時間帯毎に記憶部2の電力消費量DB25に格納する。
図12は、電力消費量DB25の構成の一例を示す図である。上記ステップS6で算出された電力消費量(時間帯)は、時間帯単位の電力消費量の予測値として電力消費量DB25に格納される。
【0044】
最後に、電力消費量計算部13は、電力消費量DB25からすべての時間帯の電力消費量の予測値を読み出し、これらを合計した値を、予測対象日の電力消費量の予測値(kWh)とする(ステップS7)。
【0045】
以上のように、本実施例では、電力消費量計算部13が、過去対象期間の電力消費量を、気象条件や建物内の人数に依存しない略一定の消費電力部分である第1の消費電力部分と、建物内の人数により消費電力が増減する人依存型の機器によって消費される電力部分である第2の消費電力部分と、気象条件により消費電力が増減する気象依存型の機器によって消費される電力部分である第3の消費電力部分と、に分解して重回帰分析を行い、これにより導出される相関式を用いて予測対象日の電力消費量を予測することとした。これにより、オフィス,工場等、建物単位の電力消費量を高精度に予測することが可能となる。