特許第6091581号(P6091581)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6091581単方向性の駆動構成を備えた巻きデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6091581
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】単方向性の駆動構成を備えた巻きデバイス
(51)【国際特許分類】
   G04B 1/00 20060101AFI20170227BHJP
【FI】
   G04B1/00
【請求項の数】17
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-214175(P2015-214175)
(22)【出願日】2015年10月30日
(65)【公開番号】特開2016-90579(P2016-90579A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2015年10月30日
(31)【優先権主張番号】14192336.7
(32)【優先日】2014年11月7日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504341564
【氏名又は名称】モントレー ブレゲ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】エリック・ゲラー
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 スイス国特許出願公開第00325582(CH,A3)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腕時計用の単方向性の駆動構成を備えた巻きデバイス(1)であって、
巻き車(5)と一体化されておりこの巻き車(5)と同軸に構成する中央アーバー(22)のまわりを自由回転するようにマウントされている少なくとも1つの太陽駆動ピニオン(2)と、
前記太陽ピニオン(2)の歯と噛み合い、前記中央アーバーと平行であり前記巻き車(5)に固定されているオフセットアーバー(7)のまわりを自由回転するようにマウントされている少なくとも1つの惑星歯車(3)と、及び
前記巻き車(5)に固定マウントされている少なくとも1つのフック(9)とを有し、
前記惑星歯車(3)は、前記オフセットアーバー(7)のまわりを特定の遊び(4)を有するように自由回転するようにマウントされており、
前記太陽ピニオン(2)が第1の回転方向に回転するときには、前記惑星歯車(3)の歯は、ロック位置となるように前記フック(9)と噛み合い、これによって、前記太陽ピニオン(2)の前記第1の回転方向の回転によって前記巻き車(5)が駆動され、
前記太陽ピニオン(2)が前記第1の回転方向とは反対の第2の回転方向に回転するときには、前記惑星歯車(3)が分離され、これによって、前記太陽ピニオン(2)は、前記巻き車(5)を駆動せずに、前記第2の回転方向に自由に回転し、
当該巻きデバイスは、さらに、前記巻き車(5)に同軸の形態で固定マウントされるフレーム(6)を有し、
このフレームは、前記惑星歯車(3)をハウジング内に包囲し、
前記フレーム(6)は、前記太陽ピニオン(2)が前記第1の回転方向に回転するような前記惑星歯車(3)の回転を妨げる前記フック(9)を有する
ことを特徴とする巻きデバイス。
【請求項2】
前記フック(9)は、前記フレーム(6)の周部において前記フレームの内側側面に設けられており、
前記フック(9)は、前記フレームと一体化されている
ことを特徴とする請求項に記載の巻きデバイス。
【請求項3】
前記フレームは、前記フレームの周部において前記フレームの内側側面に設けられている2つのフック(9、9’)を有し、
これらの2つのフック(9、9’)は、前記中央アーバー(22)から等距離に位置する
ことを特徴とする請求項に記載の巻きデバイス。
【請求項4】
前記2つのフック(9、9’)は、前記中央アーバー(22)を中心に互いから180°の位置に配置されている
ことを特徴とする請求項に記載の巻きデバイス。
【請求項5】
前記フレーム(6)の前記ハウジングは、前記惑星歯車(3)を覆う上側壁と、及び互いに平行であり前記中央アーバー(22)と前記オフセットアーバー(7)を結ぶ線に平行な2つの側壁とを有し、
前記フレーム(6)の周部において前記ハウジングの側壁のうちの1つにて第1のフック(9)が設けられており、
前記フレーム(6)の周部において前記側壁のうちの他のものにて第2のフック(9’)が設けられている
ことを特徴とする請求項に記載の巻きデバイス。
【請求項6】
各フック(9、9’)は、前記中央アーバー(22)と前記オフセットアーバー(7)の中心どうしを連結する線に対して、前記中央アーバー(22)の中心で、20°〜30°の角度、前記太陽ピニオン(2)の前記第1の回転方向にオフセットされている
ことを特徴とする請求項のいずれかに記載の巻きデバイス。
【請求項7】
前記フレーム(6)は、前記太陽ピニオン(2)の上側部分(2a)を通す開口(14)を有する
ことを特徴とする請求項に記載の巻きデバイス。
【請求項8】
前記太陽ピニオン(2)は、腕時計の計時器用ムーブメントの振動重量体に接続された駆動歯車によって、前記第1の回転方向及び前記第2の回転方向に、回転駆動されることができる上側部分(2a)と、及び
前記惑星歯車(3)と噛み合う下側部分(2b)とを有する
ことを特徴とする請求項に記載の巻きデバイス。
【請求項9】
前記太陽ピニオン(2)の前記下側部分(2b)の歯は、前記太陽ピニオン(2)が前記第1の回転方向に回転するときに前記惑星歯車の少なくとも1つの歯を前記下側部分(2b)の2つの歯の間にロックして前記ロック位置にすることを促進するような形を有する
ことを特徴とする請求項に記載の巻きデバイス。
【請求項10】
当該巻きデバイスは、2つの惑星歯車(3、3’)を有し、そのそれぞれは、前記太陽ピニオン(2)の歯と噛み合い、
各惑星歯車は、前記中央アーバーと平行な対応するオフセットアーバー(7、7’)のまわりを特定の遊び(4)を有するように自由回転するようにマウントされ、
前記オフセットアーバーは、前記巻き車(5)に固定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の巻きデバイス。
【請求項11】
前記2つの惑星歯車(3、3’)どうしは同じ直径を有し、
前記2つの惑星歯車(3、3’)の前記2つのオフセットアーバー(7、7’)どうしは、前記中央アーバー(22)から等距離の位置にあり、
前記中央アーバー(22)を中心に互いに180°の位置に配置される
ことを特徴とする請求項10に記載の巻きデバイス。
【請求項12】
当該巻きデバイスは、前記巻き車(5)に固定マウントされている2つのフック(9、9’)を有し、それらのうちの第1のフック(9)は、前記第1の惑星歯車(3)の反対側にあり、
それらのうちの第2のフック(9’)は、前記第2の惑星歯車(3’)の反対側にあり、
前記太陽ピニオン(2)が前記第1の回転方向に回転するときに、前記惑星歯車(3、3’)の少なくとも1つが前記フック(9、9’)の少なくとも1つと噛み合ってロック位置となり、これによって、前記巻き車(5)を回転駆動させる
ことを特徴とする請求項10に記載の巻きデバイス。
【請求項13】
前記2つの惑星歯車(3、3’)は、フレーム(6)のハウジングに包囲されており、
このフレーム(6)は、同軸の形態で前記巻き車(5)に固定マウントされており、
このフレーム(6)は、前記中央アーバー(22)を中心に互いに180°の位置に配置される2つの内側フック(9、9’)を有し、
これは、前記太陽ピニオン(2)の前記第1の回転方向における前記惑星歯車(3、3’)の少なくとも1つの回転を妨げる
ことを特徴とする請求項10に記載の巻きデバイス。
【請求項14】
前記巻き車(5)は、前記巻き車(5)が前記第2の回転方向に回転するときにロック爪(20)の歯(25)と連係することができるウルフ歯(15)を備えた巻き車である
ことを特徴とする請求項1に記載の巻きデバイス。
【請求項15】
前記ウルフ歯(15)を備えた巻き車(5)は、前記中央アーバー(22)の相補的な形の部分と連係する長方形の断面を有する中央開口(16)を有し、これによって、前記ウルフ歯を備えた巻き車が回転しているときに前記中央アーバーが前記ウルフ歯を備えた巻き車と一体化されているようにし、
前記中央アーバーは、バレル(21)のメインばね(23)の一端に接続されるように意図されるものであり、これによって、前記太陽ピニオン(2)が前記第1の回転方向に回転するときに前記メインばねが巻かれる
ことを特徴とする請求項14に記載の巻きデバイス。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれかに記載の巻きデバイス(1)によって、腕時計の計時器用ムーブメントの少なくとも1つのバレルの(21)の少なくとも1つのメインばね(23)を巻くアセンブリー(10)であって、
前記巻きデバイスの前記中央アーバー(22)は、前記メインばね(23)の一端に接続されており、これによって、前記太陽ピニオン(2)が前記第1の回転方向に回転するときに前記メインばねが巻かれる
ことを特徴とするアセンブリー。
【請求項17】
請求項16に記載のアセンブリー(10)であって、
第1の巻きデバイス(1)によって、腕時計の計時器用ムーブメントの第1のバレル(21)の第1のメインばね(23)を巻き、
前記第1の巻きデバイスとは逆に動作する第2の巻きデバイス(1)によって、第2のバレルの第2のメインばねを巻き、
計時器用ムーブメントの振動重量体に接続される駆動歯車が、前記第1の巻きデバイス(1)の前記太陽ピニオン(2)の前記上側部分(2a)及び前記第2の巻きデバイス(1)の前記太陽ピニオンの前記上側部分と噛み合うように構成し、
これによって、前記第1の巻きデバイス(1)によってその太陽ピニオン(2)の前記第1の回転方向に前記第1のメインばねを巻き、
前記第2の巻きデバイスによってその太陽ピニオンの前記第2の回転方向に前記第2のメインばねを巻き、前記第2の回転方向は、前記第1の巻きデバイス(1)の前記第1の回転方向とは反対方向である
ことを特徴とするアセンブリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腕時計用の単方向性の駆動構成を備えた巻きデバイスに関する。このデバイスは、計時器用ムーブメントを駆動するため、又は日付用ディスク又は時刻補正用ディスクなどを駆動するメインばねが巻かれるために使用されることがある。このデバイスは、巻き車と同軸で配置される中央アーバーのまわりの自由回転のためにマウントされる少なくとも1つの太陽駆動ピニオンを有し、この巻き車は、計時器用ムーブメントのメインばねバレルに接続することができる。
【背景技術】
【0002】
通常、少なくとも1つのバレルを巻くためのシステム、又は時間をセットしたり日付を変更したりするためのシステムにおいては、2つの爪と連係するウルフ歯を備えた車を使用する。これらの2つの爪は、この車に対して小さなばねで保持され、これによって、一方向にて回転を防ぎ、反対方向にて自由回転を可能にする。メインばねが巻かれるのを防ぐために、フレームの車の下にて別の爪を設けなければならない。この車の下のロック爪にアクセスするのは難しく、これによって、分解が困難になる。特に、バレル、又はバレルに接続される部品においてである。このことは、一般に、このような巻きシステムにおける課題である。
【0003】
欧州特許出願EP0278338A1においては、腕時計用ムーブメントの振動重量体を使用する自動巻きデバイス用の逆回転機構について記載している。この機構は、ウルフ歯を備える2つの車と同軸マウントされた巻き車を有し、これらの2つの車は、巻き車の両側に配置されている。この巻き車は、その各面上に、ばねによってロードされた少なくとも1つの爪を支えており、これは、ウルフ歯車のうちの1つとそれぞれ連係している。このアセンブリーは、ムーブメントの運動連鎖において、腕時計の振動重量体とメインばねバレルの間に挿入されるように配置される。これらの爪は、振動重量体の回転を伝達させるためであり、巻き車と一体化されている回転メンバーにそれぞれヒンジ付けされるように構成している。各回転メンバーは、振動重量体の一方の回転のために割り当てられた爪を支え、さらに、ばねのためのアンカーメンバーとしてもはたらく。このばねは、振動重量体の反対方向の回転を伝達させる爪をロードする。しかし、巻きデバイスを備えたこの機構は、部品の数が多すぎ、腕時計のメンテナンスを困難にする。これは、課題である。
【0004】
欧州特許出願EP2221676A1は、クロノグラフと腕時計としてはたらく計時器を開示している。クロノグラフの針は、第1の歯車によって駆動される。これは、次に、第1の共振器を駆動する。腕時計の針は、第1の歯車と独立に第2の歯車によって駆動され、これは、次に、第2の共振器を駆動する。第1及び第2の歯車は、単一のエネルギー源によって駆動される。このエネルギー源は、アーバーのまわりを自由に回転するバレルであり、これは、メインばねを有する。このメインばねは、バレルアーバー上でマウントされたウルフ歯を備え、爪によって一方の回転が妨害されるような車を駆動することによって巻くことができる。しかし、バレルに関連して単方向性の駆動構成がない。
【0005】
スイス特許出願CH173803Aは、単方向性の駆動構成を有する腕時計における巻きデバイスについて記載している。このデバイスは、太陽駆動ピニオンを有し、これは、巻き車と同軸に固定される中央アーバーのまわりを自由回転するようにマウントされる。また、このデバイスは、この太陽駆動ピニオンの歯と噛み合う惑星歯車を有する。この惑星歯車は、この惑星歯車に固定され中央アーバーと平行であるオフセットアーバーのまわりを自由回転するようにマウントされている。また、この惑星歯車は、一方向に回転するように惑星歯車と噛み合うために、巻き車に固定マウントされているフックを有する。このデバイスは、さらに、単方向性の駆動を可能にさせる比較的複雑な機械的構成を有する。このことは、課題である。
【0006】
さらに、スイス特許出願CH308939A及びCH308940Aには、スイス特許出願CH173803Aと同様な形態の巻きデバイスについて記載している。これは、さらに、単方向性の駆動を可能にする比較的複雑な機械的構成を有する。このことは、課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、単純な設計であって、また、バレルを備えたムーブメントの一部を修理のためにメンテナンスないし分解することを容易に可能にするような単方向性の駆動構成を備える巻きデバイスを提供することによって、前記最先端技術の課題を克服することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明は、独立請求項1に記載の特徴を有する、単方向性の駆動構成を備えた巻きデバイスに関する。
【0009】
単方向性の駆動構成を備えた巻きデバイスの特定の実施形態が、従属請求項2〜16に定められている。
【0010】
本発明に係るデバイスの1つの利点は、巻きを防ぐ多数の小さなばねや爪がもはや必要なくなるということに基づく。これによって、単方向の駆動構成を得ることができる。これは、特に、メインばねを巻くために使用される。従来技術の巻きシステムでは、このようにはならない。この場合、巻きデバイスによって、バレルの中心に接続された中央アーバーに対する直接の作用によって、メインばねをロードしたり巻いたりすることが可能になる。中央アーバーは、メインばねの内側端に接続することができる。当該デバイスの太陽ピニオンが第1の回転方向に回転するときに、中央アーバーに接続される巻き車は、回転駆動されて、ばねを巻く。太陽ピニオンが第2の回転方向で回転するとき、巻き車を駆動せずに分離がなされる。
【0011】
当該巻きデバイスの1つの利点は、太陽ピニオンが第1の回転方向に回転するときに少なくとも1つのフックに接する各惑星歯車のロックを促進するような形を太陽ピニオンの下側部分が有することに基づく。各惑星歯車は、巻き車に固定されたオフセットアーバーのまわりに特定の遊びを有するようにマウントされる。これによって、太陽ピニオンが第1の回転方向に回転するロック位置と、及び太陽ピニオンが第2の回転方向に回転する分離位置ないし自由回転位置とを得ることが可能になる。
【0012】
このために、本発明は、独立請求項17に記載された特徴を有する巻きデバイスを介して、腕時計の計時器用ムーブメントの少なくとも1つのバレルの少なくとも1つのメインばねを巻くアセンブリーに関する。
【0013】
従属請求項18にて、本アセンブリーの特定の実施形態が定められている。
【0014】
図面にて示された少なくとも1つの実施形態(これに制限されない)に基づく以下の説明において、単方向性の駆動構成を備えた巻きデバイスの目的、利点及び特徴が、より明確に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る単方向性の駆動構成を備えた巻きデバイスについての三次元的な上側からの斜視図(図1a)及び下側からの斜視図(図1b)である。
図2】バレル、爪メンバー及び巻きデバイスを有する本発明に係るアセンブリーについての三次元的な部分分解斜視図である。
図3】駆動回転方向(図3a)及び反対の分離回転方向(図3a)に回転している本発明に係る巻きデバイスの部分的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の説明において、単方向性の駆動構成を備える巻きデバイスについての動作について主として言及する。特に、機械的な腕時計のバレルメインばねを巻くためのものについてである。しかし、このような巻きデバイスを一又は複数の日付用ディスク又は時刻表示針に作用させるように用いることも思い描くことができる。
【0017】
図1a及び1bは、単方向性の駆動構成を備えた巻きデバイス1についての上側及び下側からの分解図を示す。巻きデバイス1は、自由回転するように巻き車5にマウントされている太陽ピニオン2を有し、この巻き車5は、ウルフ歯15を備えた車であることができる。太陽ピニオン2は、巻き車5の表面上に同軸に配置されている。図2に示すように、太陽ピニオン2は、中央シャフト又はアーバー22(図1a及び1bには示さず)のまわりを自由回転するようにマウントされており、これは、実質的に同じ直径の太陽ピニオン2の筒状の開口12に挿入される。
【0018】
巻きデバイス1は、さらに、太陽ピニオン2の歯と噛み合う少なくとも1つの惑星歯車3を有する。この惑星歯車3は、中央アーバー22と平行な「オフセット軸又はアーバー」7のまわりを特定の遊び4を有するように自由回転するようにマウントされる。このオフセットアーバー7は、巻き車5と垂直に固定される。惑星歯車3の開口の直径は、オフセットアーバー7の直径の20%〜30%、好ましくは、約25%の特定の自由回転の遊びを有するように定められる。
【0019】
巻きデバイス1は、さらに、巻き車5に固定マウントされた少なくとも1つのフック9を有し、これによって、オフセットアーバー7のまわりの惑星歯車3の位置に応じて惑星歯車3の歯と噛み合う。図3aにおいて時計回りの方向として示している方向「a」である第1の回転方向に太陽ピニオン2が回転していると、惑星歯車3の歯はフック9と噛み合い、したがって、ロック位置となる。また、惑星歯車3の少なくとも1つの歯も、太陽ピニオン2の2つの歯の間でロックされる。惑星歯車3のこのロック位置において、第1の回転方向の太陽ピニオン2の回転が巻き車5を駆動し、これによって、図2を参照しながら下で説明するように、バレルメインばねを巻くことが可能になる。
【0020】
太陽ピニオン2の第2の回転方向は、第1の回転方向と反対方向であって図3bに示す方向「b」であり、この方向に回転していると、惑星歯車3が分離される。このことは、オフセットアーバー7のまわりの惑星歯車3の開口の遊び4によって、第2の回転方向のピニオンの回転が、惑星歯車3をフック9から離す効果があることを意味する。したがって、太陽ピニオン2は、惑星歯車3が自由回転することで、巻き車5を駆動せずに、第2の回転方向に自由に回転する。
【0021】
好ましくは、図1a及び1bに示すように、2つの惑星歯車3、3’が設けられ、そのそれぞれは、太陽ピニオン2の歯と噛み合う。各惑星歯車3、3’は、中央アーバー22と平行な対応するオフセットアーバー7、7’のまわりを特定の遊び4を有するように自由回転するようにマウントされている。これらの2つのオフセットアーバー7、7’は、巻き車5に固定されている。2つの惑星歯車3、3’は、同じ直径を有することができる。2つの惑星歯車3、3’の2つのオフセットアーバー7、7’は、中央アーバー22から等距離にあり、好ましくは、中央アーバー22を中心に互いから180°の位置に配置される。
【0022】
巻き車5に固定マウントされている2つの惑星歯車3、3’に対して、巻きデバイス1は、さらに、2つのフック9、9’を有することができる。第1のフック9は、第1の惑星歯車3に対向しており、第2のフック9’は、第2の惑星歯車3’に対向している。太陽ピニオン2が第1の回転方向に回転駆動するとき、惑星歯車3、3’の少なくとも1つは、フック9、9’の少なくとも一方と噛み合ってロック位置となる。このことによって、巻き車5を回転駆動させることが可能になる。太陽ピニオン2が第2の回転方向に回転するとき、惑星歯車は、分離され、巻き車5を駆動しない。
【0023】
巻きデバイス1は、好ましくは、さらに、巻き車5に同軸の形態で固定マウントされるフレーム6を有する。このフレームは、ハウジング内にて、惑星歯車3又は惑星歯車3、3’を包囲する。このハウジングは、惑星歯車3、3’を覆う上側壁と、及び互いに平行な2つの側壁とを有する。これらの2つの側壁は、中央アーバー22とオフセットアーバー7、7’を結ぶ線に平行である。両方の側壁の間の距離は、太陽ピニオン2の直径と実質的に同じである。好ましくは、ハウジングは、反対側の2つの側方において開いている。これによって、この開いた側方を各惑星歯車3、3’の一部が通ることができるようになる。フレーム6は、太陽ピニオン2が第1の回転方向に回転しているときに惑星歯車3の回転を妨げる少なくとも第1のフック9を有する。図1a及び1bの実施形態によると、フレーム6は、好ましくは、第1及び第2の惑星歯車3、3’とそれぞれ対向するような第1及び第2のフック9、9’を有する。これらの2つのフック9、9’は、フレーム6の周部であってフレーム6の内側側面に配置されている。これらの2つのフック9、9’は、フレームの他の部分と一体化されている。
【0024】
2つの惑星歯車3、3’が同じ直径を有するので、2つのフック9、9’は、中央アーバー22から等距離である。これらのフック9、9’はそれぞれ、2つの惑星歯車3、3’を包囲するフレームのハウジングの対応する側壁のうちの1つから内側に曲がっている部分の形態として作られている。これらの2つのフック9、9’は、中央アーバー22を中心に互いから180°の位置に配置されている。フック9、9’のうちの1つは、フレーム6の周部であってハウジングの側壁のうちの1つに作られ、他方のフックは、フレーム6の周部であって他方の側壁に作られる。中央アーバー22の中心に対して、2つのフック9、9’は、2つの惑星歯車3、3’と比べて20°〜30°の角度、好ましくは、25°の角度、ずれている位置にある。これらは、太陽ピニオン2が第1の回転方向に回転しているときに20°〜30°の角度ずれている位置にある。
【0025】
図1a、1bの実施形態において、フレーム6における2つのフック9、9’も、太陽ピニオン2が第2の回転方向に回転するときに20°〜30°の角度ずれている位置にあるように構成する。この場合は、図1a及び1bを参照して説明した巻きデバイス1の動作構成とは逆である。この動作が逆のデバイスにおいて、ロック位置に対応する太陽ピニオン2の第1の回転方向は、図1a及び1bに示す太陽ピニオン2の第2の回転方向に対応する。この逆に動作するデバイスの第2の回転方向は、図1a及び1bに示す太陽ピニオン2の第1の回転方向に対応するが、惑星歯車はともに分離している。巻き車5は、図1a及び1bの実施形態の方向とは逆に回転することができる。
【0026】
フレーム6は、ウルフ歯15を備えた車である巻き車5に2つのねじ8によって固定される。これらの2つのねじ8は、フレームの開口6aに挿入され、巻き車5の、ねじ山がある開口5aにねじ込まれる。開口6aは、フレームの堅固な部分に設けられ、惑星歯車3、3’のオフセットアーバー7、7’の方向と垂直な方向に設けられる。フレーム6は、さらに、オフセットアーバー7、7’用の2つの通し開口6bを有する。これによって、巻き車5と、フレーム6のハウジングの内部との間で惑星歯車3、3’がロックされるように惑星歯車3、3’を保持する。
【0027】
フレーム6は、さらに、太陽ピニオン2の上側部分2aを通す上側開口14を有する。この太陽ピニオン2の上側部分2aは、巻き車5に固定されたフレーム6から突出し、駆動歯車(図示せず)によって第1の回転方向及び第2の回転方向に回転駆動されることができる。この駆動歯車は、腕時計の計時器用ムーブメントの振動質量体(図示せず)に接続される。太陽ピニオン2は、さらに、一又は複数の惑星歯車3、3’と噛み合う下側部分2bを有する。太陽ピニオン2の下側部分2bの歯は、一又は複数の惑星歯車3、3’の少なくとも1つの歯が下側部分2bの2つの歯の間でロックすることを促進するような形にされる。惑星歯車3、3’の少なくとも1つのロックが、太陽ピニオン2が第1の回転方向に回転しているときに発生する。
【0028】
また、巻き車5は、長方形の断面を有する中央開口16を有し、これは、中央アーバー22の相補的な形の部分と連係する。これによって、巻き車5の回転時に、中央アーバー22が巻き車5と一体化される。図2に示すように、中央アーバー22の下側部分(図示せず)は、バレル21のメインばね23の一端に接続されるようにされる。これによって、太陽ピニオン2の第1の回転方向の回転時に、ばねが巻かれる。
【0029】
巻きデバイス1の部品の特定の寸法構成を定めるために、各惑星歯車3、3’の外径は、太陽ピニオン2の外径よりも1.3〜1.5倍小さくすることができる。例えば、各惑星歯車3、3’の外径は、3mmのオーダーで、太陽ピニオン2の外径は、4mmのオーダーとすることができる。太陽ピニオン2の筒状の開口12の直径は、1.5mmのオーダーであることができる。各オフセットアーバーの直径は、約0.7mmのオーダーであることができ、各惑星歯車3、3’の軸方向の開口4は、約0.9mmのオーダーであることができる。フック9、9’はそれぞれ、中央アーバー22の中心から約2.6mmのオーダーの位置であることができる。このような寸法構成によって、惑星歯車3、3’は、7つの歯を有することができ、太陽ピニオン2は、10個の歯を有することができる。
【0030】
図2を参照して、腕時計の計時器用ムーブメントの少なくとも1つのバレル21の少なくとも1つのメインばね23を、巻きデバイス1によって巻くためのアセンブリー10について説明する。巻きデバイス1は、バレルのケージ21の上側面に、その巻き車5を介してマウントされる。バレルのケージ21の下側面上に、計時器用ムーブメントのギヤーチェーンの駆動車26が配置される。駆動車26をメインばね23の外端に接続することができる。
【0031】
メインばね23の内側端に、当該デバイスの中央アーバー22の下側部分が接続される。メインばね23の取り付けられる方の端は、らせん状のばねの中心側にある。このようにして、太陽ピニオン2が回転するときに、メインばね23を巻くことができる。具体的には、第1の回転方向に回転するときにである。これを達成するために、太陽ピニオン2の上側部分2aは、計時器用ムーブメントの振動重量体に接続される駆動歯車(図示せず)と噛み合うことができる。
【0032】
アセンブリー10は、さらに、ロック爪20を有し、これは、通常、計時器用ムーブメントのアセンブリーブリッジ又はプレート(図示せず)にマウントされる。ロック爪20の1つの歯25は、ウルフ歯15を備えた車である巻き車5の一方向の回転を妨げる。歯25は、図1a及び1bを参照して説明した巻きデバイス1のウルフ歯15を備えた巻き車5の第2の回転方向の回転を妨げる。
【0033】
より発展したアセンブリー10の実施形態において、第1のバレル21の第1のメインばね23を設けることができ、これは、図2に示す第1の巻きデバイス1と、及び第2のバレルの第2のメインばね(図示せず)とによって巻くことができ、この第2のバレルは、第1の巻きデバイスとは逆に動作する第2の巻きデバイスによって巻くことができる。このような場合、計時器用ムーブメントの振動重量体に接続される駆動歯車は、第1及び第2の巻きデバイスの太陽ピニオンの上側部分と噛み合うように構成する。第1のばねは、第1の巻きデバイスの太陽ピニオンの第1の回転方向に巻かれ、第2のばねは、第2の巻きデバイスの太陽ピニオンの第1の回転方向に巻かれる。この回転方向は、第1の巻きデバイスの第1の回転方向とは反対方向である。
【0034】
上の説明から、当業者であれば、請求項1によって定められる本発明の範囲から逸脱せずに、巻きデバイスのいくつかの異なる実施形態を思いつくことができるであろう。2を超える数の惑星歯車を設けて、2を超える数のフックとそれぞれ連係させることができる。当該巻きデバイスは、時刻をセットするために用いることができ、また、腕時計のステムクラウンによって活性化することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 巻きデバイス
2 太陽ピニオン
3 惑星歯車
4 遊び
5 巻き車
6 フレーム
7 オフセットアーバー
9 フック
10 アセンブリー
14 開口
15 ウルフ歯
16 中央開口
20 ロック爪
21 バレル
22 中央アーバー
23 メインばね
図1
図2
図3