特許第6091593号(P6091593)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6091593慢性閉塞性肺疾患の急性増悪の治療におけるピラゾール誘導体の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6091593
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】慢性閉塞性肺疾患の急性増悪の治療におけるピラゾール誘導体の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/415 20060101AFI20170227BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20170227BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   A61K31/415
   A61P11/00
   A61K9/20
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-500892(P2015-500892)
(86)(22)【出願日】2013年3月19日
(65)【公表番号】特表2015-510916(P2015-510916A)
(43)【公表日】2015年4月13日
(86)【国際出願番号】EP2013055730
(87)【国際公開番号】WO2013139809
(87)【国際公開日】20130926
【審査請求日】2016年3月17日
(31)【優先権主張番号】61/613,187
(32)【優先日】2012年3月20日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516336068
【氏名又は名称】メレオ バイオファーマ 1 リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】フォード,ポール アンドリュー
【審査官】 長岡 真
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−521278(JP,A)
【文献】 CHEST, 2011, vol.139, No.6, p.1470-1479
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/415
A61K 9/20
A61P 11/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
慢性閉塞性肺疾患の急性増悪を治療するための医薬組成物であって、3−[5−アミノ−4−(3−シアノベンゾイル)−ピラゾール−1−イル]−N−シクロプロピル−4−メチルベンズアミドまたは医薬的に許容されるその塩和物または溶媒和物を含む、医薬組成物
【請求項2】
慢性閉塞性肺疾患の急性増悪の治療のための医薬組成物であって、単一用量の3−[5−アミノ−4−(3−シアノベンゾイル)−ピラゾール−1−イル]−N−シクロプロピル−4−メチルベンズアミドまたは医薬的に許容されるその塩和物または溶媒和物を含む、医薬組成物
【請求項3】
慢性閉塞性肺疾患の急性増悪を治療するための経口医薬組成物であって、−[5−アミノ−4−(3−シアノベンゾイル)−ピラゾール−1−イル]−N−シクロプロピル−4−メチルベンズアミドまたは医薬的に許容されるその塩和物または溶媒和物を含む、経口医薬組成物。
【請求項4】
0〜100mgの3−[5−アミノ−4−(3−シアノベンゾイル)−ピラゾール−1−イル]−N−シクロプロピル−4−メチルベンズアミドまたは医薬的に許容されるその塩、水和物または溶媒和物を含む、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
0〜90mgの3−[5−アミノ−4−(3−シアノベンゾイル)−ピラゾール−1−イル]−N−シクロプロピル−4−メチルベンズアミドまたは医薬的に許容されるその塩、水和物または溶媒和物を含む、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
5mgの3−[5−アミノ−4−(3−シアノベンゾイル)−ピラゾール−1−イル]−N−シクロプロピル−4−メチルベンズアミドまたは医薬的に許容されるその塩、水和物または溶媒和物を含む、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
5mgの遊離形態の3−[5−アミノ−4−(3−シアノベンゾイル)−ピラゾール−1−イル]−N−シクロプロピル−4−メチルベンズアミドを含む、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
錠剤形態である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
錠剤形態である、請求項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、有機化合物および医薬品(pharmaceuticals)としてのその使用に関し、より具体的には、3−[5−アミノ−4−(3−シアノベンゾイル)−ピラゾール−1−イル]−N−シクロプロピル−4−メチルベンズアミドまたは医薬的に許容されるその誘導体の新規な使用、すなわち、慢性閉塞性肺疾患の急性増悪の治療における新規な使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
国際特許出願WO2005/009973は、サイトカイン阻害剤活性を有する、種々のピラゾール−およびイミダゾール系化合物または医薬的に許容されるその誘導体を開示している。そのような化合物は、とりわけ、ぜんそく、アレルギー、成人呼吸窮迫症候群および慢性閉塞性肺疾患を含めて、p38キナーゼ、特にp38αおよびβキナーゼに関連する状態を治療するのに使用することができることを開示している。
【0003】
WO2005/009973は、1つのそのような新規なピラゾール系p38キナーゼ阻害剤としての3−[5−アミノ−4−(3−シアノベンゾイル)−ピラゾール−1−イル]−N−シクロプロピル−4−メチルベンズアミドを開示し、その調製方法を記載している。
【0004】
3−[5−アミノ−4−(3−シアノベンゾイル)−ピラゾール−1−イル]−N−シクロプロピル−4−メチルベンズアミドおよび医薬的に許容されるその誘導体は、慢性閉塞性肺疾患の急性増悪の治療に有用であることが見出された。驚くべきことに、例えば、経口投与される単一用量(single dose)は、安定な病状への回復を促進する。したがって、この治療は、少なくとも短期的には、新しく刷新的なタイプの病態修飾療法を表し、それによって既存の維持療法および既存のレスキュー療法に比べ大きな利益を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要旨
第1の態様では、本発明は、慢性閉塞性肺疾患の急性増悪を治療するための医薬(medicament)の製造における3−[5−アミノ−4−(3−シアノベンゾイル)−ピラゾール−1−イル]−N−シクロプロピル−4−メチルベンズアミドの使用に関する。
【0006】
第2の態様では、本発明は、慢性閉塞性肺疾患の急性増悪の治療に使用するための3−[5−アミノ−4−(3−シアノベンゾイル)−ピラゾール−1−イル]−N−シクロプロピル−4−メチルベンズアミドまたは医薬的に許容されるその誘導体に関する。
【0007】
第3の態様では、本発明は、3−[5−アミノ−4−(3−シアノベンゾイル)−ピラゾール−1−イル]−N−シクロプロピル−4−メチルベンズアミドまたは医薬的に許容されるその誘導体の有効量を、それを必要とする被験者に投与する工程を含む、慢性閉塞性肺疾患の急性増悪の治療方法に関する。
【0008】
第4の態様では、本発明は、3−[5−アミノ−4−(3−シアノベンゾイル)−ピラゾール−1−イル]−N−シクロプロピル−4−メチルベンズアミドまたは医薬的に許容されるその誘導体を含有する経口投与のための医薬組成物に関する。
【0009】
用語
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての専門用語および科学用語は、本発明(複数可)が属する分野の当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0010】
本明細書で使用される用語は、以下の意味を有する。
【0011】
本明細書で使用される「慢性閉塞性肺疾患」または「COPD」は、防ぎ得る治療可能な一般的疾病であり、それは、通常進行性であり、気道および肺の有害ガス粒子への増強された慢性炎症応答と関連する持続的気流制限を特徴とする。疾病の特徴的症状には、呼吸困難、慢性咳および慢性痰生成が含まれる。
【0012】
本明細書で使用される「慢性閉塞性肺疾患の急性増悪」または「AECOPD」は、慢性閉塞性肺疾患のいずれかの症状の突然の悪化を意味し、通常、安定COPDに比べ、気流の減少および肺過膨張の増加を伴う。急性増悪は、一般に患者の健康にかなりの悪影響を及ぼし、通常、患者を以前の安定な病状に戻すため、病院での緊急医療処置を患者に受けさせる必要がある。
【0013】
本明細書で使用される「医薬的に許容される誘導体」は、医薬製品の活性成分としての使用に適した治療効果のある(therapeutically active)当該化合物の誘導体を意味する。
【0014】
本明細書で使用される「努力性呼気1秒量」または「FEV」は、肺活量計で測定される、完全吸気後の1秒間で強制的に吐き出すことができる空気量である。それは、肺の機能または能力の大きさ(measure)である。健康な人のFEVの平均値は、主に性別および年齢に依存する。平均値の80%〜120%の間の値は、正常と考えられる。
【0015】
本明細書で使用される「BORGスコア」は、Borgスケールによる呼吸困難の測定を指す。そのスケールで、0は、息切れが全くないことを表し、10は、最大息切れを表す。
【0016】
本明細書で使用される「EXACT PRO」は、慢性閉塞性肺疾患の増悪の頻度、重度および期間を評価するための慢性肺疾患の増悪ツール(EXAcerbation of Chronic pulmonary disease Tool)(EXACT)、新しい患者報告結果[アウトカム](PRO)機器を開発するために使用した質的調査を指す。ツールおよびその開発は、Leidyらにより、International Society for Pharmacoeconomics and Outcomes Research、vol.13、no.8、2010年、965〜975頁に記載されている。ツールおよびそのバリデーションは、Leidyらにより、Am. J. Respir. Crit. Care Med. Vol. 183、2011年、323〜329頁、CelliおよびVestbo、Am. J. Respir. Crit. Care Med. Vol. 183、 2011年、287〜291頁、およびJonesら、Chest vol.139、no.6、2011年、1388〜1394頁に記載されている。
【0017】
本明細書で使用される「p38α」は、Hanら、(1995)Biochim. Biophys. Acta 1265(2-3):224〜7頁に開示される酵素を指す。
【0018】
本明細書で使用される「p38β」は、Jiangら、(1996)J. Biol. Chem. 271 (30):17920〜6頁に開示される酵素を指す。
【0019】
本明細書全体で、および続く特許請求の範囲で、文脈から別段の要求がない限り、語「含む(comprise)」、または「含む(comprises)」や「含む(comprising)」などの変形は、他の任意の整数もしくはステップまたは整数もしくはステップの群の除外ではなく、定められた整数もしくはステップまたは整数もしくはステップの群の包含を意味すると理解すべきである。
【0020】
本特許明細書で言及される各米国特許および国際特許出願の全体の開示はそれぞれ、すべての目的のために参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
本発明は、3−[5−アミノ−4−(3−シアノベンゾイル)−ピラゾール−1−イル]−N−シクロプロピル−4−メチルベンズアミドまたは医薬的に許容されるその誘導体の新規な使用、すなわち、慢性閉塞性肺疾患の急性増悪治療での新規な使用に関する。
【0022】
これは、(a)慢性閉塞性肺疾患の急性増悪の治療のための医薬の製造における3−[5−アミノ−4−(3−シアノベンゾイル)−ピラゾール−1−イル]−N−シクロプロピル−4−メチルベンズアミドまたは医薬的に許容されるその誘導体の使用;(b)慢性閉塞性肺疾患の急性増悪の治療における使用のための3−[5−アミノ−4−(3−シアノ−ベンゾイル)−ピラゾール−1−イル]−N−シクロプロピル−4−メチルベンズアミドまたは医薬的に許容されるその誘導体;または(c)3−[5−アミノ−4−(3−シアノベンゾイル)−ピラゾール−1−イル]−N−シクロプロピル−4−メチル−ベンズアミドまたは医薬的に許容されるその誘導体の有効量を、それを必要とする被験者に投与する工程を含む慢性閉塞性肺疾患の急性増悪の治療方法として表すこともできる。
【0023】
3−[5−アミノ−4−(3−シアノベンゾイル)−ピラゾール−1−イル]−N−シクロプロピル−4−メチルベンズアミド(本明細書で「化合物A」)は、以下の化学構造を有する。
【化1】
【0024】
国際特許出願WO2005/009973は、サイトカイン阻害活性を有する種々のピラゾール−およびイミダゾール系化合物または医薬的に許容されるその誘導体を開示している。これらの化合物は、3−[5−アミノ−4−(3−シアノベンゾイル)−ピラゾール−1−イル]−N−シクロプロピル−4−メチルベンズアミドを含む。
【0025】
WO2005/009973は、ピラゾール−およびイミダゾール系化合物または医薬的に許容されるその誘導体が、膵炎(急性または慢性)、ぜんそく、アレルギー、成人呼吸窮迫症候群、慢性閉塞性肺疾患、糸球体腎炎、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、慢性甲状腺炎、グレーブス病、自己免疫性胃炎、糖尿病、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性好中球減少症、血小板減少症、アトピー性皮膚炎、慢性活動性肝炎、重症筋無力症、多発性硬化症、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、乾癬、移植片対宿主病、エンドトキシン誘導炎症反応、結核、アテローム性動脈硬化症、筋肉変性、悪液質、乾癬性関節炎、ライター症候群、痛風、外傷性関節炎、風疹性関節炎、急性滑膜炎、膵β細胞疾病;大量の好中球浸潤を特徴とする疾病;リウマチ様脊椎炎、痛風性関節炎および他の関節炎状態、脳マラリア、慢性肺炎症性疾患、珪肺、肺サルコイソーシス(sarcoisosis)、骨吸収疾病、同種移植の拒絶反応、感染による発熱および筋肉痛、感染に伴う悪液質、メロイド(meloid)形成(fonnation)、瘢痕組織形成(fonnation)、潰瘍性大腸炎、発熱(pyresis)、インフルエンザ、骨粗鬆症、変形性関節症および多発性骨髄腫関連骨障害、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、転移性黒色腫、カポジ肉腫、多発性骨髄腫、5敗血症(5 sepsis)、敗血性ショック、および細菌性赤痢;アルツハイマー病、パーキンソン病、外傷により引き起こされる脳虚血または神経変性病;固形腫瘍を含む血管新生不全(angiogenic disorder)、眼の血管新生、および小児血管腫(haemangiomas);急性肝炎感染(A型肝炎、B型肝炎およびC型肝炎を含む)を含むウイルス疾患、HIV感染およびCMV網膜炎、AIDS、SARS、ARCまたは悪性腫瘍、およびヘルペス;脳卒中、心筋虚血、脳卒中心臓発作における虚血、臓器低酸素症(hyposia)、血管過形成、心臓および腎臓の再かん流傷害、血栓症、心臓肥大、トロンビン誘導血小板凝集、内毒素血および/または毒素性ショック症候群、およびプロスタグランジンエンドペルオキシダーゼシンターゼ−2に関連する状態を含めた、p38αおよびβキナーゼに関連する状態を治療し、p38キナーゼ関連の状態を治療するのに使用することができることを開示している。
【0026】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)および慢性閉塞性肺疾患の急性増悪(AECOPD)は、別個の適応症であり、または、異なる治療を必要とする別個の病状に少なくとも関係している。
【0027】
COPDは、防ぎ得る治療可能な一般的疾病であり、それは、通常進行性であり、気道および肺の有害ガス粒子への増強された慢性炎症応答と関連する持続的気流制限を特徴とする。COPDは、世界中で8,000万人を超える人々に影響を及ぼしている。それは、現在、世界の死亡原因の第4位であり、2030年までに死亡原因の第3位になると予測されている。疾病の特徴的症状には、呼吸困難、慢性咳および慢性痰生成が含まれる。これらの内、呼吸困難が、通常最も顕著でつらい症状である。COPDの主要な病態生理学的特徴は、呼気流量制限(expiratory airflow limitation)および空気トラッピングであり、それは、呼吸が亢進している間の肺過膨張および動的肺過膨張として表れる。この肺過膨張は、安定疾病時の呼吸困難およびその結果生じる活動制限の一因となる。疾病が進行すると、呼吸困難および他の症状の重症度が増し、患者の生活の質が低下する。
【0028】
安定な慢性病状にあるCOPDの治療には、通常、長時間作用型気管支拡張剤、例えば、長時間作用型β−作動薬(LABA)または長時間作用型ムスカリン拮抗薬(LAMA)のみまたはコルチコステロイド(ICS)との組み合わせの患者自己投与が含まれる。これらの化合物は、一般に、1つまたは複数の吸入装置を使用して1日最大4回の肺内投与用に配合される。そのような治療は、維持療法を提供するように意図され、症状を緩和し、急性増悪を防ぐ手助けとなる。
【0029】
COPD、特に重度のCOPDを有する患者は、急性増悪、すなわち、患者を安定状態に戻すのに入院を必要とする突然で重い状態の悪化を経験する可能性がある。医者は、通常、急性増悪を経験している患者を経口ステロイド(例えば、プレドニゾン)および/または抗生物質および/または酸素を用いて治療するが、臨床的利点、特に経口ステロイド用のものは、ひいき目に見てもあまり良くない。臨床診療および入院費用の相違のため国により異なるが、患者は、以前の安定な病状に戻るのに、平均で8.4日間の入院が必要であろう。時には回復は完全ではない。一部の急性増悪は、致命的である。
【0030】
急性増悪を経験しているCOPD患者を化合物Aの単一用量を用いて治療すると、回復時間が短縮することがわかった。これにより、病院で過ごす時間が減少し、したがって、患者のストレスを減らし、患者、保険業者、国の健康保険制度または他の関連支払人の入院費用を低減する。さらにこの治療は、治療の失敗/医療ミスを減らし、ベースラインへの復帰を増やし、ステロイド治療を減らし、またはことによると除去し、次の急性増悪の発症をもしかすると遅らせる可能性がある。したがって、この治療は、少なくとも短期的には疾患修飾性である新規で革新的な治療を表し、それによって、既存の維持療法および既存のレスキュー治療に比べ、大きな利益を提供する。
【0031】
化合物Aは、WO2005/009973に記載されるプロセスにより調製することができ、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。より具体的には、化合物Aは、WO2005/009973の実施例52または実施例161に記載される方法により調製することができる。
【0032】
化合物Aのすべての立体異性体が、混和物として、または純粋な形態もしくは実質的に純粋な形態として考慮される。本明細書で使用される化合物Aは、可能性のある立体異性体およびその混合物をすべて含む。それは、ラセミ体および特定の活性を有する単離された光学異性体を含む。ラセミ体は、物理的方法、例えば、分別結晶、ジアステレオマー誘導体の分離もしくは結晶化またはキラルカラムクロマトグラフィーによる分離により分割することができる。個々の光学異性体は、通常の方法、例えば、光学活性酸との塩形成、次いで結晶化により、ラセミ化合物などから得ることができる。化合物Aは、プロドラッグの形態を有することもできる。生物活性剤を提供するためにin vivoで変換されることになる任意の化合物は、プロドラッグである。プロドラッグの種々の形態は、当技術分野で良く知られている。
【0033】
化合物Aの医薬的に許容される誘導体には、塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、アセタール、ケタール、オルトエステル、ヘミアセタール、ヘミケタール、酸、塩基、溶媒和物、水和物またはそのプロドラッグが含まれる。そのような誘導体は、そのような誘導体化のための既知の方法を使用してこの分野の技術者により容易に調製することができる。生産された化合物は、実質的な毒性作用なしで動物またはヒトに投与することができ、医薬的に活性であるか、またはプロドラッグである。医薬的に許容される塩には、これに限定されないが、アミン塩、例えば、これらに限定されないが、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、アンモニア、ジエタノールアミンおよび他のヒドロキシアルキルアミン、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン、プロカイン、N−ベンジルフェネチルアミン、I−パラ−クロロベンジル−2−ピロリジン−1’−イルメチル−ベンズイミダゾール、ジエチルアミンおよび他のアルキルアミン、ピペラジンおよびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン;アルカリ金属塩、例えば、これらに限定されないが、リチウム、カリウムおよびナトリウム;アルカリ土類金属塩、例えば、これらに限定されないが、バリウム、カルシウムおよびマグネシウム;遷移金属塩、例えば、これに限定されないが、亜鉛;ならびに他の金属塩、例えば、これらに限定されないが、リン酸水素ナトリウムおよびリン酸二ナトリウムが含まれ;ならびに、これらに限定されないが、硝酸塩、ホウ酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、鉱酸の塩、例えば、これに限定されないが、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩および硫酸塩;ならびに有機酸の塩、例えば、これらに限定されないが、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、シュウ酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、酪酸塩、吉草酸塩およびフマル酸塩も含まれる。さらに、両性イオン(「内塩」)を形成することができる。ある実施形態では、化合物の塩の形態は、化合物の溶解速度および経口生物学的利用能を改善する。医薬的に許容されるエステルには、これらに限定されないが、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、シクロアルキルならびに、これらに限定されないが、カルボン酸、リン酸、ホスフィン酸、スルホン酸、スルフィン酸およびボロン酸を含めて、酸性基のヘテロシクリルエステルが含まれる。医薬的に許容されるエノールエーテルには、これらに限定されないが、式C=C(OR)の誘導体が含まれ、Rは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、シクロアルキルまたはヘテロシクリルである。医薬的に許容されるエノールエステルには、これらに限定されないが、式C=C(OC(O)R)の誘導体が含まれ、Rは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、シクロアルキルまたはヘテロシクリルである。医薬的に許容される溶媒和物および水和物は、1つもしくは複数の溶媒または水分子、または1〜約100、もしくは1〜約10、もしくは1〜約2、3もしくは4つの溶媒または水分子と化合物の複合体である。
【0034】
化合物Aは、任意の適切な経路により投与されるよう配合することができる、例えば、経口的に、例えば、錠剤またはカプセルの形態で;非経口的に、例えば、静脈内に;皮膚に局所的に、例えば、乾癬の治療で;鼻腔内に、例えば、花粉症治療で;または吸入により。そのような組成物は、従来の希釈剤または賦形剤およびガレヌス分野で知られる技法を使用して調製することができる。したがって、経口剤形(dosage form)は、錠剤およびカプセルを含むことができる。局所投与のための組成物は、クリーム、軟膏、ゲルまたは経皮デリバリーシステム、例えば、パッチの形態をとることができる。吸入のための組成物は、エアロゾルまたは他の噴霧性調合物もしくは乾燥粉末調合物を含むことができる。
【0035】
本発明のある好ましい実施形態では、3−[5−アミノ−4−(3−シアノベンゾイル)−ピラゾール−1−イル]−N−シクロプロピル−4−メチルベンズアミドまたは医薬的に許容されるその誘導体を含有する経口投与のための医薬組成物が提供される。
【0036】
本発明を実施するのに使用される投薬量(dosage)は、例えば、投与方法に依存して変化することになる。本発明のある好ましい実施形態では、50〜100mg、例えば、75mgを含めて60〜90mgの3−[5−アミノ−4−(3−シアノベンゾイル)−ピラゾール−1−イル]−N−シクロプロピル−4−メチルベンズアミドまたは医薬的に許容されるその誘導体を含有する経口投与用の医薬組成物を提供する。
【0037】
さらなる実施形態および特徴は、引き続く記載で一部説明され、明細書の審査で当業者に一部明らかになるものであり、または本発明の実施により知ることができる。
【0038】
本発明は、限定的と解釈されるべきではない以下の実施例によりさらに例示される。
【実施例】
【0039】
実施例1
急性COPD増悪を有する患者に経口投与した3−[5−アミノ−4−(3−シアノベンゾイル)−ピラゾール−1−イル]−N−シクロプロピル−4−メチルベンズアミドの単一75mg用量の有効性、安全性および忍容性を評価するための調査、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、多施設共同研究
急性COPD増悪を有する患者に経口投与される3−[5−アミノ−4−(3−シアノベンゾイル)−ピラゾール−1−イル]−N−シクロプロピル−4−メチルベンズアミド(化合物A)の単一75mg用量の有効性、安全性および忍容性を実施した。
【0040】
研究目的は、以下の通りであった。
第一目的:プラセボと比べて、治療の最初の5日間でのFEVの改善により測定される増悪を呈するCOPD患者における化合物Aの単一の75mg用量の有効性を評価する
第二目的:安全性および忍容性、患者報告結果、ならびに次の増悪までの時間。
【0041】
研究デザイン
90名の患者を無作為に1:1:1の3つの治療群に分けた。
治療A(n=15)
=1日目に化合物Aの単一75mg用量+プレドニゾン プラセボ×10日間
治療B(n=15)
=1日目に化合物A プラセボの単一用量+プレドニゾン プラセボ×10日間
治療C(n=15)
=1日目に化合物A プラセボの単一用量+40mgの経口によるプレドニゾン プラセボ×10日間
すべての治療群
=ドキシサイクリン100mg用量×10日間または局所処方抗生物質ガイドラインと併用の非マクロライド抗生物質。
3、5および14日目の訪問および30および90日間のフォローアップ訪問。研究訪問は6カ月間で終了。
第1暫定分析は、5日目の患者45名を含んだ。
本データ(present data)(第2暫定)は、30日間のフォローアップを伴う総計91名の無作為に選ばれた患者を含む。
【0042】
調査対象母集団のための包含基準は、以下の通りであった。
・男性/女性 40歳以上〜80歳以下
・GOLDステージ 2〜4
・喫煙歴 少なくとも10たばこの箱年(10 pack years)
・治験責任医師により画定されたCOPD増悪
【0043】
調査対象母集団のための除外基準は以下の通りであった。
・動脈血pH 無作為で7.26未満
・臨床的に制御されていない左心不全の病歴または存在
・肺炎の臨床的または放射線学的証拠
・長期酸素 1日当たり15時間超
・臨床的に重要なECG異常の病歴
・腎機能障害の病歴または存在
・無作為化の48時間以内のマクロライド抗生物質の使用
【0044】
主要な有効性エンドポイント
・5日目のベースラインからのFEV改善
・BORGスコア
・EXACT PRO:
・回復は、発症に続く14日間にわたる最大観察スコア(MOV:3日周期平均を使用する最高EXACTスコア)を基準にして9ポイント以上のEXACTスコアの減少と定義される。
・回復時間
・重度
・最大重度−30日間での最高exactスコア
・総重症度−発症(すなわち1日目)〜回復/30日目(どちらが最初に来るにせよ)の総exactスコアを基準にする曲線下面積。
・増悪の期間(発症から回復/30日目までの日数)
・30日目で回復した患者の頻度
・治療の失敗:
・経口コルチコステロイドを用いて治療した患者が、COPDに関連する症状で病院に入院した、COPDに関連する抗生物質療法に変更された、または主治医の意見で、別の増悪のための治療を必要とした。
【0045】
定義
ベースラインは、安定な状況であり、4週間毎にリセットし、第4週の最後の7日間がベースライン値をリセットするのに使用される。
事象の発症は、連続2日間の患者の平均ベースラインスコアから12ポイント以上のEXACTスコアの増加(2日間の1日目を1日目(事象の発症)とする)、または連続3日間の患者の平均ベースラインから9ポイント以上の増加(3日間の1日目を事象の1日目(発症)とする)として定義される。
回復は、3日周期平均を使用して7日間持続する事象の14日間の最大観測値から少なくとも9ポイントのEXACTスコアの改善または減少と定義される。
事象期間は、発症、3日周期平均、最大観測値、改善および回復の閾値により定義される。
3日周期平均は、増悪時に起こり得るEXACTスコアの日々の変動を説明するのに使用される(それは発症の1日目に始まり、回復の1日目に終了する)。
【0046】
本研究の結果を、以下の表に要約する。
【表1】
【0047】
これらの結果は、化合物Aを用いて治療した患者は、プラセボまたはプレドニゾン(経口ステロイド)を用いた患者より、本研究で参加を中止しない傾向が強かったことを示す。
【表2】
【0048】
これらの結果は、群間(プレドニゾン群FEV p>0.05 対 化合物Aおよびプラセボ群)で人口統計に違いがないことを示す。
【表3】
【0049】
これらの結果は、化合物Aを用いて治療を受ける患者が、プラセボおよびプレドニゾンに比べ、FEVでは3日目で大きな改善を示したことを示す。
【0050】
ベースラインからのFEV変化は、繰り返し測定のためのANCOVA(分散分析)モデルを用いて分析した。見積もられた患者間の標準偏差 約200ml。
【0051】
化合物Aを用いて治療を受ける患者の60%は、3日目で100ml超の改善をした。プラセボを用いて治療を受ける患者の27%は、3日目で100ml超の改善をした。
【表4】
【0052】
これらの結果は、化合物Aを用いて治療を受ける患者は、プレドニゾンを用いて治療を受けた患者より14日間にわたり平均で息切れがより少なかったことを示す。
【0053】
LSは、最小二乗の略語である。
【0054】
治療失敗の複合エンドポイントは、抗生物質、経口ステロイド、死亡、入院、または別の増悪を示唆する治験責任医師の意見での治療を伴う再治療と定義した。各治療の治療失敗は、以下の通りであった。
・化合物A=患者0名
・プラセボ(標準治療+抗生物質のみ)=患者5名
・プレドニゾン=患者5名
【0055】
安全性の結果を以下の表に要約する。
【表5】
【0056】
これらの結果は、単一用量として投与された化合物Aが、安全で耐容性良好であったことを示す。COPD有害事象は、化合物Aに関して何も観察されなかった。
【0057】
ベースラインでのCOPD増悪のための最初の入院は、重篤有害事象(SAE)として記録しなかった。それに続く入院のみを記録した。表5は、本研究の少なくとも2名の被験者が経験した有害事象のみを示す。発疹は認められなかった。異常な事象または治療群間の不均衡は認められなかった。
【0058】
上記の個々のセクションで言及した、本発明の種々の特徴および実施形態は、必要な変更を加えて、他のセクションに適切に適用する。したがって、一セクションで挙げられる特徴は、他のセクションで挙げられる特徴と適切に組み合わせることができる。
【0059】
当業者は、単なるルーチン実験を使用して、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態に多くの等価物を認めることになり、または確認できることになる。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲に含まれるものと意図される。

本発明は、以下の態様を包含し得る。
[1]
慢性閉塞性肺疾患の急性増悪の治療に使用するための3−[5−アミノ−4−(3−シアノベンゾイル)−ピラゾール−1−イル]−N−シクロプロピル−4−メチルベンズアミドまたは医薬的に許容されるその誘導体。
[2]
慢性閉塞性肺疾患の急性増悪の治療に使用するための3−[5−アミノ−4−(3−シアノベンゾイル)−ピラゾール−1−イル]−N−シクロプロピル−4−メチルベンズアミドまたは医薬的に許容されるその誘導体の単一用量。
[3]
慢性閉塞性肺疾患の急性増悪を治療するための医薬の製造における3−[5−アミノ−4−(3−シアノベンゾイル)−ピラゾール−1−イル]−N−シクロプロピル−4−メチルベンズアミドの使用。
[4]
慢性閉塞性肺疾患の急性増悪の治療のための医薬の製造における、単一用量の3−[5−アミノ−4−(3−シアノベンゾイル)−ピラゾール−1−イル]−N−シクロプロピル−4−メチルベンズアミドの使用。
[5]
3−[5−アミノ−4−(3−シアノベンゾイル)−ピラゾール−1−イル]−N−シクロプロピル−4−メチルベンズアミドまたは医薬的に許容されるその誘導体の有効量を、それを必要とする被験者に投与する工程を含む、慢性閉塞性肺疾患の急性増悪の治療方法。
[6]
3−[5−アミノ−4−(3−シアノベンゾイル)−ピラゾール−1−イル]−N−シクロプロピル−4−メチルベンズアミドまたは医薬的に許容されるその誘導体の単一用量が投与される、上記[5]に記載の方法。
[7]
前記単一用量が50〜100mgの3−[5−アミノ−4−(3−シアノベンゾイル)−ピラゾール−1−イル]−N−シクロプロピル−4−メチルベンズアミドまたは医薬的に許容されるその誘導体を含む、上記[6]に記載の方法。
[8]
前記単一用量が60〜90mgの3−[5−アミノ−4−(3−シアノベンゾイル)−ピラゾール−1−イル]−N−シクロプロピル−4−メチルベンズアミドまたは医薬的に許容されるその誘導体を含む、上記[6]に記載の方法。
[9]
前記単一用量が75mgの3−[5−アミノ−4−(3−シアノベンゾイル)−ピラゾール−1−イル]−N−シクロプロピル−4−メチルベンズアミドまたは医薬的に許容されるその誘導体を含む、上記[6]に記載の方法。
[10]
前記単一用量が75mgの遊離形態の3−[5−アミノ−4−(3−シアノベンゾイル)−ピラゾール−1−イル]−N−シクロプロピル−4−メチルベンズアミドを含む、上記[6]に記載の方法。
[11]
3−[5−アミノ−4−(3−シアノベンゾイル)−ピラゾール−1−イル]−N−シクロプロピル−4−メチルベンズアミドまたは医薬的に許容されるその誘導体を含有する経口投与のための医薬組成物。
[12]
50〜100mgの3−[5−アミノ−4−(3−シアノベンゾイル)−ピラゾール−1−イル]−N−シクロプロピル−4−メチルベンズアミドまたは医薬的に許容されるその誘導体を含有する、上記[11]に記載の医薬組成物。
[13]
60〜90mgの3−[5−アミノ−4−(3−シアノベンゾイル)−ピラゾール−1−イル]−N−シクロプロピル−4−メチルベンズアミドまたは医薬的に許容されるその誘導体を含有する、上記[12]に記載の医薬組成物。
[14]
75mgの3−[5−アミノ−4−(3−シアノベンゾイル)−ピラゾール−1−イル]−N−シクロプロピル−4−メチルベンズアミドまたは医薬的に許容されるその誘導体を含有する、上記[13]に記載の医薬組成物。
[15]
75mgの遊離形態の3−[5−アミノ−4−(3−シアノベンゾイル)−ピラゾール−1−イル]−N−シクロプロピル−4−メチルベンズアミドを含有する、上記[14]に記載の医薬組成物。
[16]
錠剤形態である、上記[11]に記載の医薬組成物。
[17]
錠剤形態である、上記[15]に記載の医薬組成物。