特許第6091596号(P6091596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6091596高純度シクロペプチド化合物およびその製造方法と使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6091596
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】高純度シクロペプチド化合物およびその製造方法と使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/30 20060101AFI20170227BHJP
   C07K 7/56 20060101ALN20170227BHJP
   A61K 38/00 20060101ALN20170227BHJP
   A61P 31/10 20060101ALN20170227BHJP
【FI】
   C07K1/30
   !C07K7/56
   !A61K37/02
   !A61P31/10
【請求項の数】4
【全頁数】47
(21)【出願番号】特願2015-502080(P2015-502080)
(86)(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公表番号】特表2015-512898(P2015-512898A)
(43)【公表日】2015年4月30日
(86)【国際出願番号】CN2013073508
(87)【国際公開番号】WO2013143497
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2014年11月28日
(31)【優先権主張番号】201210090338.1
(32)【優先日】2012年3月30日
(33)【優先権主張国】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514247780
【氏名又は名称】シャンハイ テックウェル バイオファーマシューティカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI TECHWELL BIOPHARMACEUTICAL CO.,LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】リウ,シードン
(72)【発明者】
【氏名】ツァン,ツァオリー
(72)【発明者】
【氏名】ワン,シウシェン
(72)【発明者】
【氏名】ツァン,シャオ
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ,グァンジュン
(72)【発明者】
【氏名】ヘー,ビンミン
(72)【発明者】
【氏名】タン,ツィージュン
(72)【発明者】
【氏名】ジー,シャオミン
【審査官】 野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−535701(JP,A)
【文献】 特表2004−524318(JP,A)
【文献】 特開平04−352799(JP,A)
【文献】 特開平05−239090(JP,A)
【文献】 特表2002−538165(JP,A)
【文献】 特表2005−523245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00−19/00
C12N 15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
純度が99.0%以上で、Rは、H又は薬学的に許容される塩を形成することができるカチオンを表すことを特徴とする、構造が式I
【化1】

で表される高純度のシクロペプチド化合物の精製方法であって、
(a)式Iで表される化合物の粗製品を水または有機溶媒(i)の水性溶液に溶解させ、溶解液のpHを調整する工程と、
(b)降温及び/又は有機溶媒(i)の添加によって前述高純度のシクロペプチド化合物を得る工程と
を含み、
ここで、前述工程(a)及び/又は工程(b)における前述の有機溶媒(i)はC1-C4の低級アルコールから選択され、
前述工程(a)の溶解液のpHは2.0〜5.0とし、
前述の工程(a)の溶解液における式I化合物の濃度は、10〜500mg/mlであることを特徴とする、前記精製方法。
【請求項2】
前述工程(a)の溶解液のpHは3.5〜4.5とすることを特徴とする請求項1に記載の精製方法。
【請求項3】
前述工程(a)及び/又は工程(b)における前述の有機溶媒(i)はメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノールから選ばれる一種又は複数種の混合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の精製方法。
【請求項4】
前述工程(a)〜(b)は1回または1回以上繰り返すことを特徴とする請求項13のいずれか一項に記載の精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度シクロペプチド化合物およびその製造方法に関し、このような高純度シクロペプチド化合物の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
真菌感染は、既に免疫不全患者の発症率及び死亡率が向上する要因となっている。過去の20年間で、カビ感染の発症率が顕著に増加してきた。真菌感染の危険性が高い人は、重篤な患者、外科の患者およびHIV感染、血液癌や他の腫瘍の患者を含む。同様に、臓器移植を受けた患者も、真菌感染の危険性の高い人たちである。
【0003】
エキノカンジンは、新規な抗真菌薬として、カンジダ菌やアスペルギルス菌による感染の治療に効果が優れたものである。このような薬物は、カスポファンギンやミカファンギンが代表的である。
エキノカンジン系薬物は、1,3-βグリコシド結合の形成を阻害することによって真菌を抑制することで、人体への障害をより減少させ、効率的で且つできるだけ副作用を低下させるため、使用の過程において従来の抗真菌薬よりも安全である。
【0004】
FK463は、ミカファンギンナトリウムとも呼ばれ、式IIで表される化合物(R=ナトリウムイオン)で、日本藤沢社(Japan Fujisawa Toyama Co.,Ltd,Takaoka Plant)によって開発され、商品名がマイカミン(Mycamine)で、現在は静脈投与の抗真菌薬として多くの国で販売されている。FR901379、即ち、式IIIで表される化合物(R=ナトリウムイオン又は水素イオン)を前駆体として、酵素で側鎖を除去し、FR179642、式Iで表される化合物(R=水素イオン又はナトリウムイオン)を得た後(具体的な方法は米国特許US5376634、EP0431350及び中国特許CN1161462Cを参照)、化学修飾をして上述化合物を得ることができるが、具体的な製造や精製の方法は特許公開WO9611210、WO9857923、WO2004014879を参照する。
【0005】
【化1】
【0006】
具体的なスキームは以下の通りである。
【化2】
【0007】
しかしながら、本発明者は、HPLCで既存のミカファンギン製剤を分析したところ、製剤には、主に不純物6a、不純物7a、不純物8a、不純物9a及び不純物10aが含まれ、且つ調製カラムで上述不純物6a、不純物7a、不純物8a、不純物9a及び不純物10aを少量で調製し、MS及び1H-NMRで構造を確認したところ、その構造が式IVa、Va、VIa、VIIa、VIIIaで表される通りである。
【0008】
不純物6aの化学名は5-[(1S,2S,3S)-4-[(1S,2R)-4-アミノ-1-[[(2S,3S,4S)-2-カルバミル-3-ヒドロキシ-4-メチル-1-ピロリル]カルボニル]-2-ヒドロキシ-4-オキソブチル]アミノ]-3-[[[(2S,4R)-1-[(2S,3R)-2-[[[(2S,4R)-4,5-ジヒドロキシ-1-[4-[5-[4-(ペンチルオキシ)フェニル]-3-イソオキサゾリル]ベンゾイル]-2-ピロリル]カルボニル]アミノ]-3-ヒドロキシブチリル]-4-ヒドロキシ-2-ピロリル]カルボニル]アミノ]-1,2-ジヒドロキシ-4-オキソブチル]-2-ヒドロキシベンゼン硫酸ナトリウムである。
【0009】
【化3】
【0010】
不純物6aのMSと1H-NMRのデータは、以下の通りである。
MS:1314.5[M+Na]+
1H-NMR(DMSO-d6):0.81-1.03(6H,m),1.12(3H,d),1.3-1.7(4H,m),1.7-2.1(5H,m),2.11-2.41(3H,m),2.52-2.62(lH,m),3.03-3.14(lH,m),3.62-4.65(15H,m),4.70-5.22(10H,m),5.24(lH,d),5.53(lH,d),6.53-6.71(3H,m),7.12-7.70(7H,m), 7.82(2H,d), 7.83-8.24(5H,m), 8.61-9.11(2H,m)
【0011】
不純物7aの化学名は、5-[(1S,2S)-2-[(3S,6S,9S,11R,15S,18S,20R,21R,24S,25S)-3-[(R)-2-カルバミル-1-ヒドロキシエチル]-11,20,21,25-テトラヒドロキシ-15-[(R)-1-ヒドロキシエチル]-2,5,8,14,17,23-ヘキサカルボニル-18-[4-[5-(4-ペンチルオキシフェニル)イソオキサゾール-3-イル]ベンゾイルアミノ]-1,4,7,13,16,22-ヘキサアザトリシクロ[22.3.0.09,13]ヘプタコサン-6-イル]-1,2-ジヒドロキシエチル]-2-ヒドロキシベンゼン硫酸ナトリウムである。
【0012】
【化4】
【0013】
不純物7aのMSと1H-NMRのデータは、以下の通りである。
MS:1300.5[M+Na]+
1H-NMR(DMSO-d6):0.87(3H,t),1.12(3H,d),1.42-1.65(4H,m),1.62-2.16(6H,m),2.11-2.43(3H,m),2.51-2.65(lH,m),3.04-3.11(lH,m), 3.62-4.63(15H, m),4.71-5.23(10H,m),5.24(lH,d),5.69(lH,d),6.51-6.72(3H,m),7.11-7.74(7H,m),7.83(2H,d),7.84-8.11(4H,m),8.26(lH,d),8.61-9.12(2H,m)
【0014】
不純物8aの化学名は、5-[(1S,2S)-2-[(3S,6S,9S,11R,15S,18S,20R,21R,24S,25S,26S)-3-[(R)-2-カルバミル-1-ヒドロキシエチル]-11,20,21,25-テトラヒドロキシ-15-[(R)-1-ヒドロキシメチル]-26-メチル-2,5,8,14,17,23-ヘキサカルボニル-18-[4-[5-(4-ペンチルオキシフェニル)イソオキサゾール-3-イル]ベンゾイルアミノ]-1,4,7,13,16,22-ヘキサアザトリシクロ[22.3.0.09,13]ヘプタコサン-6-イル]-1,2-ジヒドロキシエチル]-2-ヒドロキシベンゼン硫酸ナトリウムである。
【0015】
【化5】
【0016】
不純物8aのMSと1H-NMRのデータは、以下の通りである。
MS:1300.4[M+Na]+
1H-NMR(DMSO-d6):0.83-1.02 (6H,m), 1.32-1.72(4H,m), 1.75-2.14(6H,m), 2.13-2.46(3H, m), 2.52-2.64(lH, m),3.01-3.13(lH, m), 3.62-4.64(15H, m), 4.72-5.22(10H,m),5.24(lH,d),5.53(lH,d),6.52-6.73(3H,m),7.11-7.75(7H,m),7.85(2H,d),7.85-8.17(4H,m),8.27(lH,d),8.65-9.12(2H,m)
【0017】
不純物9aの化学名は、5-[(1S,2S)-2-[(3S,6S,9S,11R,15S,18S,20R,21S,24S,25S,26S)-3-[(R)-2-カルバミル-1-ヒドロキシエチル]-11,20,21,25-テトラヒドロキシ-15-[(R)-1-ヒドロキシエチル]-26-メチル-2,5,8,14,17,23-ヘキサカルボニル-18-[4-[5-(4-ペンチルオキシフェニル)イソオキサゾール-3-イル]ベンゾイルアミノ]-1,4,7,13,16,22-ヘキサアザトリシクロ[22.3.0.09,13]ヘプタコサン-6-イル]-1,2-ジヒドロキシエチル]-2-ヒドロキシベンゼン硫酸ナトリウムである。
【0018】
【化6】
【0019】
不純物9aのMSと1H-NMRのデータは、以下の通りである。
MS:1314.4[M+Na]+
1H-NMR(DMSO-d6): 0.87-1.11 (6H, t), 1.13(3H, d), 1.41-1.61(4H, m), 1.62-2.17(6H, m), 2.11-2.43(3H, m), 2.53-2.65(lH, m), 3.05-3.11(lH, m), 3.62-4.63(15H, m), 4.71-5.23(10H, m), 5.26(lH, d), 5.69(lH, d), 6.53-6.72(3H, m), 7.11-7.72(7H,m), 7.81(2H, d), 7.86-8.11(4H, m), 8.28(lH, d), 8.62-9.12(2H, m)
【0020】
不純物10aの化学名は、5-[(1S,2S)-2-[(3S,6S,9S,11R,15S,18S,20R,21R,24S,25S,26S)-3-[(R)-2-カルバミル-1-ヒドロキシエチル]-11,21,25-トリヒドロキシ-15-[(R)-1-ヒドロキシエチル]-26-メチル-2,5,8,14,17,23-ヘキサカルボニル-18-[4-[5-(4-ペンチルオキシフェニル)イソオキサゾール-3-イル]ベンゾイルアミノ]-1,4,7,13,16,22-ヘキサアザトリシクロ[22.3.0.09,13]ヘプタコサン-6-イル]-1,2-ジヒドロキシエチル]-2-ヒドロキシベンゼン硫酸ナトリウムである。
【0021】
【化7】
【0022】
不純物10aのMSと1H-NMRのデータは、以下の通りである。
MS:1298.4[M+Na]+
1H-NMR(DMSO-d6): 0.87-1.11 (6H, t), 1.13(3H, d), 1.41-1.61(4H, m), 1.62-2.17(8H, m), 2.11-2.43(3H, m), 2.53-2.65(lH, m), 3.05-3.11(lH, m), 3.62-4.63(14H, m), 4.71-5.23(10H, m), 5.26(lH, d), 5.69(lH, d), 6.53-6.72(3H, m), 7.11-7.72(7H,m), 7.81(2H, d), 7.86-8.11(4H, m), 8.28(lH, d), 8.62-9.12(2H, m)
【0023】
中では、不純物6aの含有量は0.3%よりも高く、不純物7aと8aの合計含有量は0.6%よりも高く、不純物9aの含有量は0.2%よりも高く、不純物10aの含有量は0.2%よりも高く、ミカファンギンの含有量は98.0%程度しかない。しかし、FDAによって、臨床で安全に使用されるため、APIができるだけ不純物を含有しないように要求されている。例えば、FDAは、一部の不純物の含有量が0.1%以下であるように要求するが、具体的にICH Good ManufacturIng PractIce GuIde for ActIve PharmaceutIcal IngredIents, Q7A, Current Step 4 VersIon(November 10, 2000)を参照する。
【0024】
WO03018615では、ある程度の精製効果を有するミカファンギンナトリウム(例えば式IIで表される化合物)の結晶化方法が記載されている。しかし、その出願者である日本藤沢製薬社がこの方法によって得たミカファンギンを使用して生産した市販のミカファンギンナトリウム製剤は、純度が98.0%程度だけで、臨床での応用にはある程度のリスクがある。
【0025】
本分野で周知のように、薬物の中間体の純度が高ければ、化学修飾した最終の薬物製品の純度も高くなる。同様の理由で、中間体としての式I化合物の純度が高ければ、化学修飾した反応後の式II化合物(FK463)の純度も高くなる。化学修飾した式II化合物(FK463)の純度が高ければ、極力に式II化合物の精製工程のプロセスの圧力を軽減し、簡易な精製プロセスで高純度の最終の薬物製品である式II化合物(FK463)を得ることができる。ミカファンギンの構造類似体、例えば不純物6、不純物7、不純物8、不純物9、不純物10の構造から、上述ミカファンギンのこのような構造類似体は、基本的に式I化合物の構造類似体を化学修飾反応したことによるものであることがわかる。
【0026】
【化8】
【0027】
【化9】
【0028】
しかし、式I化合物の構造類似体は、分離精製の難易度が高く、特に精製の過程で純度と収率も考慮すると、さらに困難になる。CN91104847では、主な精製手段に、YMC GEL ODS-AM 120をフィラーとして使用し、高圧で液相を調製して行う式I化合物の精製分離が記載されている。式I化合物の構造式から、式I化合物の極性は、強い親水性を持ち、YMC GEL ODS-AM 120フィラーでの保持性が弱いことがわかる。そのため、式I化合物は、YMC GEL ODS-AM 120フィラーで高圧で液相を調製しようとしても、良い精製効果が得られない。CN91104847で記載された精製方法によって、得られる式I化合物は、純度が97.51%しかない。
【0029】
また、発明者は、イオン交換樹脂、マクロポーラス型吸着樹脂、及びC18シリカゲル結合の逆相調製クロマトグラフィーと球状シリカゲルの順相調製クロマトグラフィーを含むいくつかの本分野でよく使用される精製方法で式I化合物のクロマトグラフィー精製を行ってみたが、いずれも合計純度99.0%以上の式I化合物が得られなかった。
結晶化及び/又は再結晶などの精製手段によって、本発明者は、純度97%程度の式I化合物を合計純度99.0%以上(好ましくは合計純度99.8%以上)で、単一不純物がいずれも0.25%よりも少ないようにすることができる。結晶化精製の過程では、収率が高く、工業化生産に非常に適切である。
【0030】
WO9611210、WO03018615およびWO2004014879では、ミカファンギンの合成および精製のプロセスに関して報告されている。中では、WO9611210では、製造カラムで分離して製造することが報告されているが、この方法では、大量の有機溶媒が必要で、環境に厳重な汚染が生じ、拡大生産が困難で、且つ得られる産物の純度が高くない。WO03018615、WO2004014879では、結晶化の方法で精製するが、結晶化は有効に不純物6、不純物7、不純物8、不純物9及び不純物10を除去することができない。そのため、本発明者は、薬物の中間体の段階で、特定の精製手段によって、薬物の中間体、即ち、式I化合物を高純度の中間体とすることを切望している。さらに、化学修飾して高純度の式II化合物(FK463)を得て、FDAの要求に応じる高純度のミカファンギンを製造する。
【発明の概要】
【0031】
本発明の一つの目的は、式I化合物のような高純度の物質を提供することにある。
本発明のもう一つの目的は、前述高純度の物質(式I化合物)の製造方法を提供することである。
本発明の第三の目的は、前述高純度の物質(式I化合物)の使用を提供することである。
【0032】
本発明の第四の目的は、もう一つの高純度の物質(式II化合物)を提供することである。
本発明の第五の目的は、もう一つの高純度の物質(式II化合物)の製造方法を提供することである。
【0033】
高純度の式I化合物
本発明は、純度が99.0%以上である、高純度の式I化合物を提供する。ここで、Rは、H又は薬学的に許容される塩を形成することができるカチオン、好ましくはH、ナトリウムイオン又はジイソプロピルエチルアミンイオンを表す。
本発明の一つの好適な例において、前述式I化合物の純度は99.2%以上である。
【0034】
本発明の一つの好適な例において、前述式I化合物の純度は99.5%以上である。
本発明のもう一つの好適な例において、前述式I化合物の純度は99.8%以上である。
【0035】
ここで、前述式I化合物の純度はHPLCで測定されるものである。
ここで、前述式I化合物の純度及び/又は不純物の含有量の計算方法は、HPLCのグラフで、式I化合物及び/又はある不純物のピーク曲線下面積をHPLCグラフの合計曲線下面積で割る方法である。
【0036】
ここで、前述HPLCの測定方法は以下の通りである。
クロマトグラフィーカラム:ACE 3 AQ, 150×4.6mm,3μm
移動相:A:1000ml水、10mlメタノール、100μlトリフルオロ酢酸
B:600ml水、400mlメタノール、100μlトリフルオロ酢酸
流速:0.55ml/min
カラム温度:50℃
勾配:
【0037】
【表1】
仕込み温度:5℃
検出波長:225nm
【0038】
本発明のもう一つの好適な例において、前述高純度の式I化合物における不純物Aの含有量は0.25%以下である。
本発明のもう一つの好適な例において、前述不純物AのHPLCにおける相対保持時間(RRTと略する)が約0.45、即ち、0.45±0.02である。
本発明のもう一つの好適な例において、前述不純物Aの含有量は0.10%以下である。
【0039】
本発明のもう一つの好適な例において、前述不純物Aの含有量は0.05%以下である。
本発明のもう一つの好適な例において、前述高純度の式I化合物における不純物Bの含有量は0.25%以下である。
【0040】
本発明のもう一つの好適な例において、前述不純物AのHPLCにおける相対保持時間(RRTと略する)が約0.65、即ち、0.65±0.02である。
本発明のもう一つの好適な例において、前述不純物Bの含有量は0.15%以下である。
本発明のもう一つの好適な例において、前述不純物Bの含有量は0.10%以下である。
本発明のもう一つの好適な例において、前述不純物Bの含有量は0.03%〜0.10%である。
本発明のもう一つの好適な例において、前述不純物Bの含有量は0.03%以下である。
【0041】
本発明のもう一つの好適な例において、前述高純度の式I化合物における不純物Cの含有量は0.25%以下である。
本発明のもう一つの好適な例において、前述不純物CのHPLCにおける相対保持時間(RRTと略する)が約0.88、即ち、0.88±0.02である。
本発明のもう一つの好適な例において、前述不純物Cの含有量は0.15%以下である。
【0042】
本発明のもう一つの好適な例において、前述不純物Cの含有量は0.10%以下である。
本発明のもう一つの好適な例において、前述不純物Cの含有量は0.02%〜0.10%である。
本発明のもう一つの好適な例において、前述不純物Cの含有量は0.02%以下である。
【0043】
本発明のもう一つの好適な例において、前述高純度の式I化合物における不純物Dの含有量は0.20%以下である。
本発明のもう一つの好適な例において、前述不純物DのHPLCにおける相対保持時間(RRTと略する)が約1.08、即ち、1.08±0.02である。
本発明のもう一つの好適な例において、前述不純物Dの含有量は0.15%以下である。
本発明のもう一つの好適な例において、前述不純物Dの含有量は0.10%以下である。
本発明のもう一つの好適な例において、前述不純物Dの含有量は0.04%〜0.10%である。
本発明のもう一つの好適な例において、前述不純物Dの含有量は0.04%以下である。
【0044】
本発明のもう一つの好適な例において、前述高純度の式I化合物における不純物Eの含有量は0.15%以下である。
本発明のもう一つの好適な例において、前述不純物EのHPLCにおける相対保持時間(RRTと略する)が約1.29、即ち、1.29±0.02である。
本発明のもう一つの好適な例において、前述不純物Eの含有量は0.10%以下である。
本発明のもう一つの好適な例において、前述不純物Eの含有量は0.05%以下である。
【0045】
本発明のもう一つの好適な例において、前述高純度の式I化合物における不純物Fの含有量は0.15%以下である。
本発明のもう一つの好適な例において、前述不純物FのHPLCにおける相対保持時間(RRTと略する)が約1.92、即ち、1.92±0.02である。
本発明のもう一つの好適な例において、前述不純物Fの含有量は0.10%以下である。
本発明のもう一つの好適な例において、前述不純物Fの含有量は0.05%以下である。
【0046】
本発明のもう一つの好適な例において、前述高純度の式I化合物における他の関連不純物の含有量はいずれも0.10%以下で、前述他の関連不純物とはA〜F以外の存在しうる不純物を指す。
本発明のもう一つの好適な例において、前述他の関連不純物の含有量は0.05%以下である。
本発明のもう一つの好適な例において、前述他の関連不純物の含有量は0%である。
【0047】
高純度の式I化合物の製造
発明者は、研究したところ、意外に、式I化合物は、水または水と相溶する低級アルコールの混合溶液に溶解し、且つ式I化合物の溶解液が飽和溶解度付近に維持することを見出した。この時、溶解液のpHを所定の範囲内にすると、式I化合物が良い形態の結晶を形成する。この結晶化過程は、優れた精製効果があるため、高純度の式I化合物が製造される。また、式I化合物はシクロペプチド化合物で、アミノ酸の縮合時に形成するペプチド結合が高温溶液で加水分解して断裂する。そのため、シクロペプチド物質が開環して分解しないように、式I化合物を結晶化の過程で一定の温度範囲にするべきである。本製造方法は、結晶化溶媒の選択で大量の緻密な作業をしたところ、中では、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノールまたは混合溶液で結晶化すると、式I化合物は良い形態の結晶となり、結晶化過程は優れた精製効果がある。アセトン、アセトニトリル、酢酸エチルのような溶媒で結晶化すると、式I化合物は無定形の沈殿を形成し、且つ上述沈殿過程は精製して不純物を除去する効果が得られない。
【0048】
本発明に係る製造方法は、以下の工程を含む。
(a)式Iで表される化合物の粗製品を水または有機溶媒(i)の水性溶液に溶解させ、溶解液のpHを調整する。
(b)降温及び/又は有機溶媒(i)の添加によって前述高純度の式I化合物を得る。
ここで、工程(a)における前述溶解の温度は10〜50℃で、好ましくは20〜40℃である。
ここで、工程(a)における前述有機溶媒(i)の水性溶液において、有機溶媒(i)と水の体積比は0.01〜100で、好ましくは0.1〜10で、より好ましくは0.5〜3.0である。
【0049】
ここで、工程(a)における前述溶解液の合計体積に対して、式Iで表される化合物を10〜500mg/ml、好ましくは100〜400mg/ml含有する。
ここで、工程(a)における前述溶解液のpHは、2.0〜5.0、好ましくは3.5〜4.5となるように調整する。
ここで、工程(b)における前述の降温の温度は-40〜35℃で、好ましくは-10〜35℃で、より好ましくは-5〜30℃で、最も好ましくは5〜10℃である。
【0050】
ここで、工程(b)における前述有機溶媒(i)と工程(a)における前述溶解液の体積比は0.1〜50で、好ましくは0.1〜10で、最も好ましくは1〜5である。
ここで、工程(a)及び/又は工程(b)における前述の有機溶媒(i)はC1-C4の低級アルコールで、好ましくはメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノールから選ばれる一種又は複数種の混合物である。
ここで、工程(b)で得られる高純度の式I化合物は結晶である。
【0051】
ここで、工程(b)の後、さらに以下の工程を行ってもよい。
(c)遠心またはろ過を行う。
(d)溶媒と大半の水を除去し(乾燥)、高純度の式I化合物を得る。
ここで、工程(a)〜(b)は再結晶を1回または2回以上、好ましくは1〜4回繰り返してもよい。
【0052】
本発明の一つの実施形態において、以下の工程で高純度の式I化合物を得る。
(a)式Iで表される化合物を水に溶解させ、溶解液のpHを調整する。
(b)溶解液の温度を下げ、式I化合物の結晶を得る。
(c)遠心またはろ過を行う。
(d)乾燥し、高純度の式I化合物を得る。
【0053】
ここで、工程(a)における前述溶解の温度は10〜50℃で、好ましくは20〜40℃である。
ここで、工程(a)における前述溶解液の合計体積に対して、式Iで表される化合物を10〜500mg/ml、好ましくは100〜400mg/ml含有する。
ここで、工程(a)における前述溶解液のpHは、2.0〜5.0、好ましくは3.5〜4.5となるように調整する。
ここで、工程(b)における前述の降温の温度は-10〜35℃で、好ましくは-5〜30℃で、最も好ましくは5〜10℃である。
【0054】
本発明のもう一つの実施形態において、以下の工程で高純度の式I化合物を得る。
(a)式Iで表される化合物を水に溶解させ、溶解液のpHを調整する。
(b)有機溶媒(i)を入れて式I化合物の結晶を完全に析出させる。
(c)遠心またはろ過を行う。
(d)結晶を乾燥し、高純度の式I化合物を得る。
【0055】
ここで、工程(a)における前述溶解の温度は10〜50℃で、好ましくは20〜40℃である。
ここで、工程(a)における前述溶解液の合計体積に対して、式Iで表される化合物を10〜500mg/ml、好ましくは50〜300mg/ml含有する。
ここで、工程(a)における前述溶解液のpHは、2.0〜5.0、好ましくは3.5〜4.5となるように調整する。
ここで、工程(b)における前述の有機溶媒(i)はC1-C4の低級アルコールで、好ましくはメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノールから選ばれる一種又は複数種の混合物である。
ここで、工程(b)における前述有機溶媒(i)と工程(a)における前述溶解液の体積比は0.1〜50で、好ましくは0.1〜10で、最も好ましくは1〜5である。
【0056】
本発明のもう一つの実施形態において、以下の工程で高純度の式I化合物を得る。
(a)式Iで表される化合物を水に溶解させ、溶解液のpHを調整する。
(b)溶液の温度を下げながら有機溶媒(i)を入れ、式I化合物の結晶を完全に析出させる。
(c)遠心またはろ過を行う。
(d)結晶を乾燥し、高純度の式I化合物を得る。
【0057】
ここで、工程(a)における前述溶解の温度は10〜50℃で、好ましくは20〜40℃である。
ここで、工程(a)における前述溶解液の合計体積に対して、式Iで表される化合物を10〜500mg/ml、好ましくは50〜300mg/ml含有する。
ここで、工程(a)における前述溶解液のpHは、2.0〜5.0、好ましくは3.5〜4.5となるように調整する。
【0058】
ここで、工程(b)における前述の有機溶媒(i)はC1-C4の低級アルコールで、好ましくはメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノールから選ばれる一種又は複数種の混合物である。
ここで、工程(b)における前述の降温の温度は-40〜35℃で、好ましくは-10〜35℃で、より好ましくは-5〜30℃で、最も好ましくは5〜10℃である。
ここで、工程(b)における前述有機溶媒(i)と工程(a)における前述溶解液の体積比は0.1〜50で、好ましくは0.1〜10で、最も好ましくは1〜5である。
【0059】
本発明のもう一つの実施形態において、以下の工程で高純度の式I化合物を得る。
(a)式Iで表される化合物を有機溶媒(i)の水性溶液に溶解させ、溶解液のpHを調整する。
(b)溶液の温度を下げ、式I化合物の結晶を完全に析出させる。
(c)遠心またはろ過を行う。
(d)結晶を乾燥し、高純度の式I化合物を得る。
【0060】
ここで、工程(a)における前述溶解の温度は10〜50℃で、好ましくは20〜40℃である。
ここで、工程(a)における前述有機溶媒(i)の水性溶液において、有機溶媒(i)と水の体積比は0.01〜100で、好ましくは0.1〜10で、より好ましくは0.5〜3.0である。
ここで、工程(a)における前述溶解液の合計体積に対して、式Iで表される化合物を10〜500mg/ml、好ましくは100〜400mg/ml含有する。
ここで、工程(a)における前述溶解液のpHは、2.0〜5.0、好ましくは3.5〜4.5となるように調整する。
ここで、工程(a)における前述の有機溶媒(i)はC1-C4の低級アルコールで、好ましくはメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノールから選ばれる一種又は複数種の混合物である。
ここで、工程(b)における前述の降温の温度は-40〜35℃で、好ましくは-10〜35℃で、より好ましくは-5〜30℃で、最も好ましくは5〜10℃である。
【0061】
本発明のもう一つの実施形態において、以下の工程で高純度の式I化合物を得る。
(a)式Iで表される化合物を有機溶媒(i)の水性溶液に溶解させ、溶解液のpHを調整する。
(b)有機溶媒(i)を入れて式I化合物の結晶を完全に析出させる。
(c)遠心またはろ過を行う。
(d)結晶を乾燥し、高純度の式I化合物を得る。
【0062】
ここで、工程(a)における前述溶解の温度は10〜50℃で、好ましくは20〜40℃である。
ここで、工程(a)における前述有機溶媒(i)の水性溶液において、有機溶媒(i)と水の体積比は0.01〜100で、好ましくは0.1〜10で、より好ましくは0.5〜3.0である。
ここで、工程(a)における前述溶解液の合計体積に対して、式Iで表される化合物を10〜500mg/ml、好ましくは100〜400mg/ml含有する。
ここで、工程(a)における前述溶解液のpHは、2.0〜5.0、好ましくは3.5〜4.5となるように調整する。
ここで、工程(b)における前述有機溶媒(i)と工程(a)における前述溶解液の体積比は0.1〜10で、好ましくは1〜5である。
ここで、工程(a)及び工程(b)における前述の有機溶媒(i)はC1-C4の低級アルコールで、好ましくはメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノールから選ばれる一種又は複数種の混合物である。
【0063】
本発明のもう一つの実施形態において、以下の工程で高純度の式I化合物を得る。
(a)式Iで表される化合物を有機溶媒(i)の水性溶液に溶解させ、溶解液のpHを調整する。
(b)溶液の温度を下げながら有機溶媒(i)を入れ、式I化合物の結晶を完全に析出させる。
(c)遠心またはろ過を行う。
(d)結晶を乾燥し、高純度の式I化合物を得る。
【0064】
ここで、工程(a)における前述溶解の温度は10〜50℃で、好ましくは20〜40℃である。
ここで、工程(a)における前述有機溶媒(i)の水性溶液において、有機溶媒(i)と水の体積比は0.01〜100で、好ましくは0.1〜10で、より好ましくは0.5〜3.0である。
ここで、工程(a)における前述溶解液の合計体積に対して、式Iで表される化合物を10〜500mg/ml、好ましくは100〜400mg/ml含有する。
ここで、工程(a)における前述溶解液のpHは、2.0〜5.0、好ましくは3.5〜4.5となるように調整する。
【0065】
ここで、工程(b)における前述の降温の温度は-40〜35℃で、好ましくは-10〜35℃で、より好ましくは-5〜30℃で、最も好ましくは5〜10℃である。
ここで、工程(b)における前述有機溶媒(i)と工程(a)における前述溶解液の体積比は0.1〜50で、好ましくは0.1〜10で、最も好ましくは1〜5である。
ここで、工程(a)及び工程(b)における前述の有機溶媒(i)はC1-C4の低級アルコールで、好ましくはメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノールから選ばれる一種又は複数種の混合物である。
本発明によって提供される方法で製造される式I化合物は純度が高いため、式II化合物の製造に好適である。
【0066】
高純度の式II化合物
本発明の一つは、HPLC純度が98.8%以上で、好ましくは99.0%以上で、より好ましくは99.5%以上である、高純度の式II化合物を提供する。ここで、Rは、H又は薬学的に許容される塩を形成することができるカチオン、好ましくはH、ナトリウムイオン又はジイソプロピルエチルアミンイオンを表す。
ここで、前述式II化合物の純度はHPLCで測定されるものである。
【0067】
ここで、前述式II化合物の純度及び/又は不純物の含有量の計算方法は、HPLCのグラフで、式II化合物及び/又はある不純物のピーク曲線下面積をHPLCグラフの合計曲線下面積で割る方法である。
前述式II化合物の液相純度は以下のようなHPLC方法によって測定される。
HPLC分析カラム:
YMC-ODS 250*4.6mm、5μm
移動相:アセトニトリル:リン酸塩緩衝液=70:45
溶離プロセス:定組成
流速:1.15ml/min
カラム温度:35℃
検出波長:210nm
稼動時間:45min
希釈液:水のリン酸塩緩衝液
【0068】
本発明の一つの好適な例において、前述高純度の式II化合物における不純物6(構造は式IVで表される)の含有量は0.2%未満で、好ましくは0.1%未満で、より好ましくは0.05%未満である。ここで、Rは、H又は薬学的に許容される塩を形成することができるカチオン、好ましくはH、ナトリウムイオン又はジイソプロピルエチルアミンイオンを表す。
【0069】
【化10】
【0070】
本発明のもう一つの好適な例において、前述高純度の式II化合物における不純物7(構造は式Vで表される)及び不純物8(構造は式VIで表される)の合計含有量は0.5%未満で、好ましくは0.3%未満で、より好ましくは0.1%未満である。ここで、Rは、H又は薬学的に許容される塩を形成することができるカチオン、好ましくはH、ナトリウムイオン又はジイソプロピルエチルアミンイオンを表す。
【0071】
【化11】
【0072】
本発明のもう一つの好適な例において、前述高純度の式II化合物における不純物9(構造は式VIIで表される)の含有量は0.2%未満で、好ましくは0.1%未満である。ここで、Rは、H又は薬学的に許容される塩を形成することができるカチオン、好ましくはH、ナトリウムイオン又はジイソプロピルエチルアミンイオンを表す。
【0073】
【化12】
【0074】
本発明のもう一つの好適な例において、前述高純度の式II化合物における不純物10(構造は式VIIIで表される)の含有量は0.2%未満で、好ましくは0.1%未満である。ここで、Rは、H又は薬学的に許容される塩を形成することができるカチオン、好ましくはH、ナトリウムイオン又はジイソプロピルエチルアミンイオンを表す。
【化13】
【0075】
本発明のもう一つの好適な例において、前述高純度の式II化合物における不純物11の含有量は0.15%以下で、好ましくは0.1%以下で、最も好ましくは0.05%以下で、前述不純物11のHPLCにおける相対保持時間(RRTと略する)が約0.96、即ち、0.96±0.02である。
本発明のもう一つの好適な例において、前述高純度の式I化合物における他の関連不純物の含有量はいずれも0.02%以下で、好ましくは0.01%以下で、最も好ましくは0%である。前述他の関連不純物とは不純物6〜11以外の存在しうる不純物を指す。
【0076】
高純度の式II化合物の製造方法
高純度の式II化合物を製造する方法は、請求項1〜11のいずれかに記載の高純度のシクロペプチド化合物を原料とし、式IIで表される化合物を製造し、Rは、H、ジイソプロピルエチルアミン又は他の薬学的に許容される塩を形成することができるカチオンを表すことを特徴とする。
【0077】
【化14】
合成スキームは、多くの特許、例えばWO9611210、9857923、2604014879などで報告されている。
【0078】
高純度の式I化合物の使用およびその組成物
本発明において、高純度の式I化合物の使用を提供する。一方、Rは、H、ジイソプロピルエチルアミン又は他の薬学的に許容される塩を形成することができるカチオンを表す、高純度の式II化合物を簡単に製造することに好適である。
もう一方、本発明によって提供される高純度の式I化合物は、直接真菌感染を治療する薬物の製造に使用することができる。高純度の式I化合物と、薬学的に許容される担体とを含む薬物組成物を提供することができる。
【0079】
高純度の式II化合物の使用およびその組成物
本発明において、高純度の式II化合物の使用を提供する。本発明によって提供される高純度の式II化合物は、直接真菌感染を治療する薬物の製造に使用することができる。高純度の式II化合物と、薬学的に許容される担体とを含む薬物組成物を提供することができる。
【0080】
本発明において、以下のような高純度の式II化合物を含む薬物組成物の製造方法を提供する。
本発明の高純度の式II化合物と薬学的に許容される担体を混合し、高純度の式II化合物を含む薬物組成物を得る。
ここで用いられるように、「式Iで表される化合物」または「式I化合物」は、いずれも以下の構造式を持つ化合物またはその薬学的に許容される塩を指し、入れ替えて使用することができる。
【0081】
【化15】
【0082】
ここで、Rは、H又は薬学的に許容される塩を形成することができるカチオン、好ましくはH、ナトリウムイオン又はジイソプロピルエチルアミンイオンを表す。
薬学的に許容される塩は、好ましく、金属塩、例えばアルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩)、アルカリ土金属塩(例えばカルシウム塩、マグネシウム塩など)、アンモニウム塩、有機塩基と形成した塩(例えばトリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩、ジイソプロピルエチルアミン塩など)など、有機酸付加塩(例えばギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩など)、無機酸付加塩(例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩など)、アミノ酸(例えばアルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸など)と形成した塩などを含む。
【0083】
ここで用いられるように、「式IIで表される化合物」または「式II化合物」は、いずれも以下の構造式を持つ化合物またはその薬学的に許容される塩を指し、入れ替えて使用することができる。
【化16】
【0084】
ここで、Rは、H又は薬学的に許容される塩を形成することができるカチオン、好ましくはH、ナトリウムイオン又はジイソプロピルエチルアミンイオンを表す。
薬学的に許容される塩は、好ましく、金属塩、例えばアルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩)、アルカリ土金属塩(例えばカルシウム塩、マグネシウム塩など)、アンモニウム塩、有機塩基と形成した塩(例えばトリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩、ジイソプロピルエチルアミン塩など)など、有機酸付加塩(例えばギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩など)、無機酸付加塩(例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩など)、アミノ酸(例えばアルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸など)と形成した塩などを含む。
【0085】
ここで用いられるように、「式Iで表される化合物の純度」、「化合物Iの純度」または「化合物IのHPLC純度」は、いずれも本発明によって提供される高速液相クロマトグラフィー(HPLC)の検出条件で測定された化合物Iおよび全部のピークのピーク面積の合計の百分率を指し、入れ替えて使用することができる。
ここで用いられるように、「式IIで表される化合物の純度」、「化合物IIの純度」または「化合物IIのHPLC純度」は、いずれも本発明によって提供される高速液相クロマトグラフィー(HPLC)の検出条件で測定された化合物IIおよび全部のピークのピーク面積の合計の百分率を指し、入れ替えて使用することができる。
【0086】
ここで用いられるように、「式Iで表される化合物の粗製品」または「化合物Iの粗製品」は、いずれも本発明によって提供される高速液相クロマトグラフィー(HPLC)の検出条件で化合物Iの含有量<98%の混合物を指し、入れ替えて使用することができる。本分野で既存の方法を使用して化合物Iの粗製品を得ることができる。例えば、微生物の発酵産物である式III化合物を開始原料としてもよいが、これに限定されない。脱アシル化酵素で脱アシル化した半合成誘導体(例えば式I化合物)をさらに分離精製し、化合物Iの粗製品を得ることができる。US5376634、EP0431350及びCN1161462Cに記載の化合物Iの粗製品を製造する方法を参照する。例えば、日本藤沢社などから、市販品としても得られるが、これに限定されない。
【0087】
ここで用いられる用語「相対保持時間(RRT)」とは、一定のHPLC条件におけるあるピークの主要ピークに対する保持時間の比で、例えば、一定のHPLC条件において、主要ピークの保持時間が1分で、もう一つのピークの保持時間が2分である場合、後者の相対保持時間(RRT)は2となる。
【0088】
ここで用いられる用語「相対保持時間(RRT)」は、所定の範囲内で変化しうる。
周知のように、高速液相クロマトグラフィーは、系統適応性の問題のため、ある程度の系統誤差が存在し、相対保持時間(RRT)がシフトすることもある。一般的に、許容される範囲は、±0.02である。例えば、国家食品薬品監督管理局の輸入薬品の登録規格では、注射用ミカファンギンナトリウム及び関連不純物の相対保持時間(RRT)に対する所定の範囲がある。
ここで用いられるように、「C1-C4の低級アルコール」とは、炭素原子数が1〜4のアルコール類物質を指す。
【0089】
ここで用いられるように、「薬学的に許容される塩」は、好ましく、金属塩、例えばアルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩)、アルカリ土金属塩(例えばカルシウム塩、マグネシウム塩など)、アンモニウム塩、有機塩基と形成した塩(例えばトリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩、ジイソプロピルエチルアミン塩など)など、有機酸付加塩(例えばギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩など)、無機酸付加塩(例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩など)、アミノ酸(例えばアルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸など)と形成した塩などを含む。
【0090】
ここで用いられるように、用語「薬学的に許容される担体」とは、治療剤の給与のための担体で、各種の賦形剤と希釈剤を含む。この用語は、自身が必要な活性成分ではなく、かつ使用後過度の毒性がない薬剤の担体のことを指す。適切な担体は、当業者に熟知である。Remington's Pharmaceutical Sciences(Mack Pub. Co.,N.J. 1991)において、薬学的に許容される賦形剤に関する十分な検討が見つけられる。組成物において、薬学的に許容される担体は液体、例えば水、生理食塩水、グリセリンやエタノールを含んでもよい。さらに、これらの担体には、補助的な物質、例えば崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝物質等が存在してもよい。
【0091】
本発明の主な利点は以下の通りである。
1.本発明は、大幅に式I化合物の純度を向上させ、極力にその不純物を減少し、非常に高純度の式I化合物を得るため、既存技術における解決するべき技術問題を解決した。
2.本発明は、製造条件の実験を繰り返すことによって、特定の製造条件を見つけ、意外な技術効果が生じ、大規模生産に好適で収率が高い高純度の式I化合物を製造する方法を提供した。
3.本発明は、高純度の式II化合物を製造する新たな方法を提供し、高純度の前駆体である式I化合物を使用して式II化合物を製造し、大幅に式II化合物の精製工程のプロセス圧力を軽減し、簡易な精製プロセスで高純度の最終薬物製品である式II化合物を得ると同時に、収率も大幅に上がり、予想しなかった技術効果が生じた。
【図面の簡単な説明】
【0092】
図1図1は、式I化合物の粗製品のHPLC分析グラフを示す。
【表2】
【0093】
図2図2は、実施例5で得られた高純度の式I化合物のHPLC分析グラフを示す。
【表3】
【0094】
図3図3は、実施例17で得られた高純度の式II化合物のHPLC分析グラフを示す。
【表4】
【0095】
図4図4は、比較例3で得られた式II化合物のHPLC分析グラフを示す。
【表5】
【0096】
図5図5は、実施例22で得られた高純度の式II化合物のHPLC分析グラフを示す。
【表6】
【0097】
図6図6は、比較例8における市販のミカファンギンナトリウム製剤のHPLC分析グラフを示す。
【表7】
【0098】
具体的な実施形態
以下、具体的な実施例によって、さらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を説明するために用いられるものだけで、本発明の範囲の制限にはならないと理解されるものである。以下の実施例において、具体的な条件が記載されていない実験方法は、通常、通常の条件、或いはメーカーの薦めの条件で行われた。別の説明がない限り、すべての百分率、比率、比例或いは部は、重量で計算される。
【0099】
本発明における重量体積百分率の単位は当業者にとって熟知で、例えば100mLの溶液における溶質の重量を指す。
別の定義がない限り、本文に用いられるすべての専門用語と科学用語は、本分野の技術者に知られている意味と同様である。また、記載の内容と類似或いは同等の方法及び材料は、いずれも本発明の方法に用いることができる。ここで記載の好ましい実施方法及び材料は例示のためだけである。
前述式I化合物の液相純度は以下のようなHPLC方法によって測定される。
クロマトグラフィーカラム:ACE 3 AQ, 150×4.6mm,3μm
移動相:A:1000ml水、10mlメタノール、100μlトリフルオロ酢酸
B:600ml水、400mlメタノール、100μlトリフルオロ酢酸
流速:0.55ml/min
カラム温度:50℃
勾配:
【0100】
【表8】
仕込み温度:5℃
検出波長:225nm
【0101】
前述式II化合物の液相純度は以下のようなHPLC方法によって測定される。
HPLC分析カラム:YMC-ODS 250*4.6mm、5μm
移動相:アセトニトリル:リン酸塩緩衝液=70:45
溶離プロセス:定組成
流速:1.15ml/min
カラム温度:35℃
検出波長:210nm
稼動時間:45min
希釈液:水のリン酸塩緩衝液
【0102】
ここで、式II化合物及び関連の不純物の相対保持時間は以下の通りである。
【表9】
【0103】
実施例1
化合物Iの粗製品の製造
米国特許5376634の実施例1の方法を参照し、製造した化合物Iの固体粉末76gで、HPLC測定含有量97.51%で、図1のHPLC分析グラフを参照する。
【表10】
【0104】
実施例2
高純度の式I化合物の製造
30℃で、3.6gの実施例1で製造された化合物Iの粗製品を25mlの水と20mlのn-プロパノールの混合溶液に溶解させ、撹拌し、化合物Iを完全に溶解させた。氷酢酸でpHを3.5とし、溶液を15℃に冷却し、化合物Iの結晶が析出し、15℃で撹拌を5時間続け、化合物Iの結晶を生長させた。n-プロパノールを90ml滴下し、滴下完了後、15℃で1時間撹拌した。吸引ろ過し、真空乾燥し、化合物Iが3.5g得られ、HPLC測定純度が99.00%であった。その中の主な関連不純物の含有量は、表2に示す。
【0105】
【表11】
【0106】
実施例3
高純度の式I化合物の製造
40℃で、3.5gの実施例2で製造された化合物I(実施例2で製造された化合物I、HPLC純度99.00%)を19mlの水と16mlのn-プロパノールの混合溶液に溶解させ、撹拌し、化合物Iを完全に溶解させた。氷酢酸でpHを2.0とし、溶液を15℃に冷却し、化合物Iの結晶が析出し、15℃で撹拌を5時間続け、化合物Iの結晶を生長させた。n-プロパノールを70ml滴下し、滴下完了後、15℃で1時間撹拌した。吸引ろ過し、真空乾燥し、化合物Iが3.4g得られ、HPLC測定純度が99.23%であった。その中の関連不純物の含有量は、表3に示す。
【表12】
【0107】
実施例4
高純度の式I化合物の製造
40℃で、8mlの水と7mlのn-プロパノールの混合溶液を使用し、氷酢酸でpHを5.0とし、さらに化合物I(実施例3で製造された化合物I、HPLC純度99.23%)を溶解させ、撹拌し、化合物Iを完全に溶解させた。溶液を15℃に冷却し、化合物Iの結晶が析出した。15℃で撹拌を5時間続け、化合物Iの結晶を生長させた。n-プロパノールを30ml滴下し、滴下完了後、15℃で1時間撹拌した。吸引ろ過し、真空乾燥し、化合物Iが3.3g得られた。HPLC測定純度が99.57%であった。その中の関連不純物の含有量は、表4に示す。
【0108】
【表13】
【0109】
実施例5
高純度の式I化合物の製造
40℃で、8mlの水と7mlのn-プロパノールの混合溶液を使用し、氷酢酸でpHを4.0とし、さらに化合物I(実施例4で製造された化合物I、HPLC純度99.57%)を溶解させ、撹拌し、化合物Iを完全に溶解させた。溶液を15℃に冷却し、化合物Iの結晶が析出した。15℃で撹拌を5時間続け、化合物Iの結晶を生長させた。n-プロパノールを30ml滴下し、滴下完了後、15℃で1時間撹拌した。吸引ろ過し、真空乾燥し、化合物Iが3.2g得られた。HPLC測定純度が99.81%であった。その中の関連不純物の含有量は、表5及び図2のHPLC分析グラフに示す。
【0110】
【表14】
【0111】
実施例6
高純度の式I化合物の製造
30℃で、2.6gの実施例1で製造された化合物Iを8mlの水に溶解させ、氷酢酸でpHを3.8とし、撹拌し、化合物Iを完全に溶解させた。ゆっくりn-プロパノールを10ml滴下し、化合物Iの結晶が析出し、15℃で撹拌を2時間続けた。その後、ゆっくりn-プロパノールを35ml滴下し、滴下完了後、化合物Iを含有する溶解液をゆっくり15℃に降温し、さらに2時間撹拌し、式I化合物の結晶を完全に析出させた。吸引ろ過し、式I化合物の湿潤固体を得た。30℃で、さらに8mlの水を使用し、氷酢酸でpHを3.8とし、さらに化合物Iの湿潤固体を溶解させ、撹拌し、化合物Iを完全に溶解させた。溶液を15℃に冷却し、ゆっくりn-プロパノールを10ml滴下し、化合物Iの結晶が析出した。15℃で撹拌を2時間続けた。ゆっくりn-プロパノールを35ml滴下し、滴下完了後、さらに2時間撹拌し、式I化合物の結晶を完全に析出させた。吸引ろ過し、式I化合物の湿潤固体を得た。上述再結晶工程を繰り返し、計3回の再結晶を行った。吸引ろ過し、得られた化合物Iを真空乾燥し、2.4gの化合物Iを得た。全体収率が92.3%で、化合物IのHPLCによる純度が99.81%であった。
【0112】
実施例7
高純度の式I化合物の製造
30℃で、1.6gの実施例1で製造された化合物Iの粗製品を80mlの水と80mlのエタノールの混合溶液に溶解させ、撹拌し、化合物Iを完全に溶解させた。氷酢酸でpHを2.8とし、さらにゆっくり温度を-20℃に下げ、-20℃で撹拌を2時間続けた。ゆっくりエタノールを450ml滴下し、滴下完了後、さらに2時間撹拌し、式I化合物の結晶を完全に析出させた。吸引ろ過し、真空乾燥し、化合物Iが1.5g得られ、HPLC測定純度が98.89%であった。その中の関連不純物の含有量は、表6に示す。
【0113】
【表15】
【0114】
実施例8
高純度の式I化合物の製造
30℃で、1.5gの実施例7で製造された化合物Iの粗製品を80mlの水と80mlのエタノールの混合溶液に溶解させ、撹拌し、化合物Iを完全に溶解させた。氷酢酸でpHを3.0とし、さらにゆっくり温度を-20℃に下げ、-20℃で撹拌を2時間続けた。ゆっくりエタノールを450ml滴下し、滴下完了後、さらに2時間撹拌し、式I化合物の結晶を完全に析出させた。吸引ろ過し、真空乾燥し、化合物Iが1.4g得られ、HPLC測定純度が99.36%であった。その中の関連不純物の含有量は、表7に示す。
【0115】
【表16】
【0116】
実施例9
高純度の式I化合物の製造
30℃で、1.4gの実施例8で製造された化合物Iの粗製品を80mlの水と80mlのエタノールの混合溶液に溶解させ、撹拌し、化合物Iを完全に溶解させた。氷酢酸でpHを3.0とし、さらにゆっくり温度を-20℃に下げ、-20℃で撹拌を2時間続けた。ゆっくりエタノールを450ml滴下し、滴下完了後、さらに2時間撹拌し、式I化合物の結晶を完全に析出させた。吸引ろ過し、真空乾燥し、化合物Iが1.3g得られ、HPLC測定純度が99.68%であった。その中の関連不純物の含有量は、表8に示す。
【0117】
【表17】
【0118】
実施例10
高純度の式I化合物の製造
10℃で、1.8gの実施例1で製造された化合物Iを10mlの水に溶解させ、撹拌し、化合物Iを完全に溶解させた。氷酢酸でpHを3.5とし、溶液を2℃に冷却し、2℃で撹拌を2時間続けた。ゆっくりイソプロパノールを40ml滴下し、滴下完了後、さらに2時間撹拌し、式I化合物の結晶を完全に析出させた。吸引ろ過し、真空乾燥し、1.5gの化合物Iが得られ、HPLCによる純度が98.89%で、その中の関連不純物の含有量は、表9に示す。
【0119】
【表18】
【0120】
実施例11
高純度の式I化合物の製造
10℃で、1.5gの実施例10で製造された化合物Iを10mlの水に溶解させ、撹拌し、化合物Iを完全に溶解させた。氷酢酸でpHを3.5とし、溶液を2℃に冷却し、2℃で撹拌を2時間続けた。ゆっくりイソプロパノールを40ml滴下し、滴下完了後、さらに2時間撹拌し、式I化合物の結晶を完全に析出させた。吸引ろ過し、真空乾燥し、1.4gの化合物Iが得られ、HPLCによる純度が99.41%で、その中の関連不純物の含有量は、表10に示す。
【0121】
【表19】
【0122】
実施例12
高純度の式I化合物の製造
10℃で、1.4gの実施例11で製造された化合物Iを10mlの水に溶解させ、撹拌し、化合物Iを完全に溶解させた。氷酢酸でpHを3.5とし、溶液を2℃に冷却し、2℃で撹拌を2時間続けた。ゆっくりイソプロパノールを40ml滴下し、滴下完了後、さらに2時間撹拌し、式I化合物の結晶を完全に析出させた。吸引ろ過し、真空乾燥し、1.3gの化合物Iが得られ、HPLCによる純度が99.73%で、その中の関連不純物の含有量は、表11に示す。
【0123】
【表20】
【0124】
実施例13
高純度の式I化合物の製造
10℃で、1.3gの実施例12で製造された化合物Iを10mlの水に溶解させ、撹拌し、化合物Iを完全に溶解させた。氷酢酸でpHを3.5とし、溶液を2℃に冷却し、2℃で撹拌を2時間続けた。ゆっくりイソプロパノールを40ml滴下し、滴下完了後、さらに2時間撹拌し、式I化合物の結晶を完全に析出させた。吸引ろ過し、真空乾燥し、1.2gの化合物Iが得られ、HPLCによる純度が99.90%で、その中の関連不純物の含有量は、表12に示す。
【0125】
【表21】
【0126】
実施例14
高純度の式I化合物の製造
20℃で、2.0gの実施例1で製造された化合物Iを5mlの水と15mlのメタノールの混合溶液に溶解させ、撹拌し、化合物Iを完全に溶解させた。氷酢酸でpHを4.5とし、溶液を10℃に冷却し、化合物Iの結晶が析出し、さらにゆっくり-40℃に降温し、-40℃で撹拌を2時間続けた。ゆっくりメタノールを80ml滴下し、滴下完了後、さらに2時間撹拌し、式I化合物の結晶を完全に析出させた。吸引ろ過し、式I化合物の湿潤固体を得た。20℃で、5mlの水と16mlのメタノールの混合溶液を使用し、氷酢酸でpHを4.5とし、さらに化合物Iの湿潤固体を溶解させ、30分間撹拌し、化合物Iを完全に溶解させた。溶液を10℃に冷却し、化合物Iの結晶が析出し、さらにゆっくり-40℃に降温し、-40℃で撹拌を2時間続けた。ゆっくりメタノールを80ml滴下し、滴下完了後、さらに2時間撹拌し、式I化合物の結晶を完全に析出させた。吸引ろ過し、式I化合物の湿潤固体を得た。上述再結晶工程を繰り返し、計3回の再結晶を行った。吸引ろ過し、得られた化合物Iを真空乾燥し、1.5gの化合物Iの固体を得た。全体収率が89.0%で、化合物IのHPLCによる純度が99.83%で、その中の関連不純物の含有量は、表13に示す。
【0127】
【表22】
【0128】
実施例15
高純度の式I化合物の製造
50℃で、5.0gの実施例1で製造された化合物Iを10mlの水に溶解させ、撹拌し、化合物Iを完全に溶解させた。氷酢酸でpHを5.0とし、溶液を30℃に冷却し、化合物Iの結晶が析出し、さらにゆっくり2℃に降温し、2℃で撹拌を10時間続けた。吸引ろ過し、式I化合物の湿潤固体を得た。50℃で、9mlの水を使用し、氷酢酸でpHを5.0とし、さらに化合物Iの湿潤固体を溶解させ、30分間撹拌し、化合物Iを完全に溶解させた。溶液を30℃に冷却し、化合物Iの結晶が析出し、さらにゆっくり2℃に降温し、2℃で撹拌を10時間続けた。吸引ろ過し、式I化合物の湿潤固体を得た。上述再結晶工程を繰り返し、計3回の再結晶を行った。吸引ろ過し、得られた化合物Iを真空乾燥し、3.0gの化合物Iの固体を得た。全体収率が85.0%で、化合物IのHPLCによる純度が99.85%で、その中の関連不純物の含有量は、表14に示す。
【0129】
【表23】
【0130】
比較例1
高純度の式I化合物の製造に対するpHの影響
40℃で、1.8gの実施例1で製造された化合物Iを8mlの水と6mlのイソプロパノールの混合溶液に溶解させ、撹拌し、化合物Iを完全に溶解させた。氷酢酸でpHを6.5とし、溶液を20℃に冷却し、化合物Iの結晶が析出し、さらに20℃で撹拌を2時間続けた。ゆっくりイソプロパノールを35ml滴下し、滴下完了後、さらに2時間撹拌し、式I化合物の固体を完全に析出させた。吸引ろ過し、式I化合物の湿潤固体を得た。40℃で、8mlの水と6mlのイソプロパノールの混合溶液を使用し、氷酢酸でpHを6.5とし、さらに化合物Iの湿潤固体を溶解させ、撹拌し、化合物Iを完全に溶解させた。溶液を20℃に冷却し、化合物Iの結晶が析出し、20℃で撹拌を2時間続けた。ゆっくりイソプロパノールを35ml滴下し、滴下完了後、さらに2時間撹拌し、式I化合物の固体を完全に析出させた。吸引ろ過し、式I化合物の湿潤固体を得た。上述「再結晶」工程を繰り返し、計4回の「再結晶」を行った。吸引ろ過し、得られた化合物Iを真空乾燥し、1.5gの化合物Iを得た。全体収率が83.6%で、化合物IのHPLCによる純度が98.90%で、その中の関連不純物の含有量は、表15に示す。
【0131】
【表24】
【0132】
比較例2
高純度の式I化合物の製造に対する異なる溶媒の影響
30℃で、2.4gの実施例1で製造された化合物Iを7mlの水に溶解させ、氷酢酸でpHを3.8とし、撹拌し、化合物Iを完全に溶解させた。ゆっくりアセトニトリルを15ml入れ、2時間撹拌し、固体が析出し、顕微鏡で固定のマイクロ構造を観察したところ、ほとんど不規則固体であった。吸引ろ過し、得られた化合物Iを真空乾燥した。HPLCによる化合物Iの固体の純度が97.57%で、その中の主な不純物の含有量は、表6のように、ほとんど変わっていなかった。
【0133】
【表25】
【0134】
18℃で、2.1gの実施例1で製造された化合物Iを7mlの水に溶解させ、氷酢酸でpHを3.8とし、撹拌し、化合物Iを完全に溶解させた。ゆっくりアセトンを20ml入れ、2時間撹拌し、固体が析出し、顕微鏡で固定のマイクロ構造を観察したところ、ほとんど不規則固体であった。吸引ろ過し、得られた化合物Iを真空乾燥した。HPLCによる化合物Iの固体の純度が97.79%で、その中の主な不純物の含有量は、表17のように、ほとんど変わっていなかった。
【0135】
【表26】
【0136】
実施例16
高純度の式I化合物を使用した高純度の式II化合物の製造
WO2004014879のミカファンギンの合成プロセスを参照し、式I化合物から式II化合物を合成した。本出願の実施例2で得られた式I化合物(HPLCによる純度99.00%(1.00g、1.07mmol))をDMF 12mlに溶解させ、氷浴で0℃以下に冷却し、ジイソプロピルエチルアミン(0.22g、1.67mmol)を入れ、温度を0℃に維持し、ゆっくりMKC-8(1-[4-[5-(4-ペンチルオキシフェニル)イソオキサゾール-3-イル]ベンゾイルオキシ]-1H-1,2,3-ベンゾトリアゾール)(0.53g、1.14mmol)を入れ、反応系が2〜6℃に昇温し、4時間反応させ、反応終了後直接60mlの酢酸エチルを反応液に入れ、撹拌を1時間続け、ろ過し、ミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩を得た。当該塩をアセトン30mlと酢酸エチル30mlに溶解させ、洗浄し、ろ過した。ミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩を真空乾燥して残った有機溶媒を除去し、HPLCによるミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩の純度が98.81%で、収率が90.6%であった。HPLC分析グラフにおける5分前のクロマトグラフィーピークは溶媒ピークと反応副生物の1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)で、WO2004014879で開示された精製プロセスでは除去しにくい。その中の主な関連不純物の含有量は、表18に示す。
【0137】
【表27】
【0138】
実施例17
高純度の式I化合物を使用した高純度の式II化合物の製造
WO2004014879のミカファンギンの合成プロセスを参照し、式I化合物から式II化合物を合成した。本出願の実施例3で得られた式I化合物(HPLCによる純度99.23%(1.00g、1.07mmol))をDMF 12mlに溶解させ、氷浴で0℃以下に冷却し、ジイソプロピルエチルアミン(0.22g、1.67mmol)を入れ、温度を0℃に維持し、ゆっくりMKC-8(1-[4-[5-(4-ペンチルオキシフェニル)イソオキサゾール-3-イル]ベンゾイルオキシ]-1H-1,2,3-ベンゾトリアゾール)(0.53g、1.14mmol)を入れ、反応系が2〜6℃に昇温し、4時間反応させ、反応終了後直接60mlの酢酸エチルを反応液に入れ、撹拌を1時間続け、ろ過し、ミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩を得た。当該塩をアセトン30mlと酢酸エチル30mlに溶解させ、洗浄し、ろ過した。ミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩を真空乾燥して残った有機溶媒を除去し、HPLCによるミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩の純度が99.15%で、収率が91.6%であった。図3のHPLC分析グラフのように、HPLC分析グラフにおける5分前のクロマトグラフィーピークは溶媒ピークと反応副生物の1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)で、WO2004014879で開示された精製プロセスでは除去しにくい。その中の主な関連不純物の含有量は、表19に示す。
【0139】
【表28】
【0140】
参照例1
式II化合物の粗製品における不純物6〜10の製造
実施例1で得られた化合物Iの粗製品を原料として使用し、WO2004014879の実施例におけるミカファンギンの合成と精製のプロセスを参照し、ミカファンギンのナトリウム塩を約23g製造した。約5gのミカファンギンのナトリウム塩を50mlの純水に溶解させ、10回に分けて仕込み、製造カラム(Prep Nova-PakRHR 7.8*300mm)で製造し、アセトニトリル:水=70:45で溶離し、それぞれ相対保持時間が0.71-0.74、0.90-0.93、1.08-1.10、1.11-1.13の溶離液を収集し、それぞれ濃縮し、乾燥し、MSと1H-NMRで分析したところ、上述相対保持時間に相応する不純物がそれぞれ不純物6、不純物7と8の混合物、不純物9及び不純物10であった。 構造式は、それぞれ式IV、式V、式VI、式VII及び式VIIIで表される。
【0141】
製造条件:
HPLC製造カラム:
Prep Nova-Pak(登録商標)HR 7.8*300mm
移動相:アセトニトリル:水=70:45
溶離プロセス:定組成
流速:4ml/min
カラム温度:35℃
稼動時間:40min
希釈液:純水
【0142】
実施例18
高純度の式I化合物を使用した高純度で単一不純物がいずれも0.1%未満の式II化合物の製造
WO2004014879のミカファンギンの合成プロセスを参照し、式I化合物から式II化合物を合成した。
本出願の実施例4で得られた式I化合物(HPLCによる純度99.57%(1.00g、1.07mmol))をDMF 12mlに溶解させ、氷浴で0℃以下に冷却し、ジイソプロピルエチルアミン(0.22g、1.67mmol)を入れ、温度を0℃に維持し、ゆっくりMKC-8(1-[4-[5-(4-ペンチルオキシフェニル)イソオキサゾール-3-イル]ベンゾイルオキシ]-1H-1,2,3-ベンゾトリアゾール)(0.53g、1.14mmol)を入れ、反応系が2〜6℃に昇温し、4時間反応させ、反応終了後直接60mlの酢酸エチルを反応液に入れ、撹拌を1時間続け、ろ過し、ミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩を得た。当該塩をアセトン30mlと酢酸エチル30mlに溶解させ、洗浄し、ろ過した。ミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩を真空乾燥して残った有機溶媒を除去し、HPLCによるミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩の純度が99.49%で、収率が95.1%であった。その中の主な関連不純物の含有量は、表20に示す。
【0143】
【表29】
【0144】
実施例19
高純度の式I化合物を使用した高純度で単一不純物がいずれも0.1%未満の式II化合物の製造
WO2004014879のミカファンギンの合成プロセスを参照し、式I化合物から式II化合物を合成した。
本出願の実施例5で得られた式I化合物(HPLCによる純度99.81%(1.00g、1.07mmol))をDMF 12mlに溶解させ、氷浴で0℃以下に冷却し、ジイソプロピルエチルアミン(0.22g、1.67mmol)を入れ、温度を0℃に維持し、ゆっくりMKC-8(1-[4-[5-(4-ペンチルオキシフェニル)イソオキサゾール-3-イル]ベンゾイルオキシ]-1H-1,2,3-ベンゾトリアゾール)(0.53g、1.14mmol)を入れ、反応系が2〜6℃に昇温し、4時間反応させ、反応終了後直接60mlの酢酸エチルを反応液に入れ、撹拌を1時間続け、ろ過し、ミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩を得た。当該塩をアセトン30mlと酢酸エチル30mlに溶解させ、洗浄し、ろ過した。ミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩を真空乾燥して残った有機溶媒を除去し、HPLCによるミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩の純度が99.80%で、収率が97.5%であった。その中の主な関連不純物の含有量は、表21に示す。
【0145】
【表30】
【0146】
比較例3
式I化合物の粗製品を使用した式II化合物の製造
WO2004014879のミカファンギンの合成プロセスを参照し、式I化合物から式II化合物を合成した。
本出願の実施例1で得られた式I化合物(HPLCによる純度97.51%(10.7mmol))をDMF 12mlに溶解させ、氷浴で0℃以下に冷却し、ジイソプロピルエチルアミン(2.2g、16.7mmol)を入れ、温度を0℃に維持し、ゆっくりMKC-8(1-[4-[5-(4-ペンチルオキシフェニル)イソオキサゾール-3-イル]ベンゾイルオキシ]-1H-1,2,3-ベンゾトリアゾール)(5.3g、11.4mmol)を入れ、反応系が2〜6℃に昇温し、4時間反応させ、反応終了後直接600mlの酢酸エチルを反応液に入れ、撹拌を1時間続け、ろ過し、ミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩を得た。当該塩をアセトン300mlと酢酸エチル300mlに溶解させ、洗浄し、ろ過した。ミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩を真空乾燥して残った有機溶媒を除去し、HPLCによるミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩の純度が95.75%で、モル収率が75.2%であった。図4のHPLC分析グラフのように、HPLC分析グラフにおける5分前のクロマトグラフィーピークは溶媒ピークと反応副生物の1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)で、WO2004014879で開示された精製プロセスでは除去しにくい。その中の主な関連不純物の含有量は、表22に示す。
【0147】
【表31】
【0148】
実施例20
高純度のミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩を使用した高純度のミカファンギンナトリウムの製造
WO2004014879における実施例6の製造プロセスを参照し、ミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩からミカファンギンナトリウム塩を製造した。
本出願の実施例16で製造されたミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩の固体(0.97mmol)を全部15mlの75%のメタノール水溶液に溶解させた。ミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩を含有する溶解液を30mlのUBK510Lイオン交換樹脂にかけ、75%のメタノール水溶液で溶離し、ミカファンギンナトリウムが1.0g/Lよりも低くなるまで溶離して収集を終えた。0.1mol/Lの水酸化ナトリウムで収集液のpHを6.0とした。収集液をメタノール濃度が35%となるように精製水で希釈し、仕込み、事前に処理した50mlのHP20ssマクロポーラス型吸着樹脂で吸着させた。35%のメタノール水溶液100mlで洗浄した後、80%のメタノール水溶液200mlで洗浄した。溶離させて収集し、ミカファンギンナトリウムが0.5g/Lよりも多くなった時点から収集を開始し、また0.5g/Lよりも少なくなるまで溶離して収集を終え、濃度の要求に応じたミカファンギンナトリウムを含有する画分を収集し、HPLCでミカファンギンナトリウム(0.90mmol)を定量分析し、収率が93%であった。光を避け、ミカファンギンナトリウムを含有する画分を直接減圧蒸留して液を合併し、固体を得て真空乾燥し、HPLCによるミカファンギンナトリウムの純度が99.00%であった。ここで、反応副生物である1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)が完全に除去された。主な関連不純物の含有量は、表23に示す。
【0149】
【表32】
【0150】
比較例4
比較例で製造されたジイソプロピルエチルアミン塩を使用したミカファンギンナトリウムの製造
WO2004014879における実施例6の製造プロセスを参照し、ミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩からミカファンギンナトリウム塩を製造した。
本出願の比較例3で製造されたミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩の固体(0.97mmol)を全部15mlの75%のメタノール水溶液に溶解させた。ミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩を含有する溶解液を30mlのUBK510Lイオン交換樹脂にかけ、75%のメタノール水溶液で溶離し、ミカファンギンナトリウムが1.0g/Lよりも低くなるまで溶離して収集を終えた。0.1mol/Lの水酸化ナトリウムで収集液のpHを6.0とした。収集液をメタノール濃度が35%となるように精製水で希釈し、仕込み、事前に処理した50mlのHP20ssマクロポーラス型吸着樹脂で吸着させた。35%のメタノール水溶液100mlで洗浄した後、80%のメタノール水溶液200mlで洗浄した。溶離させて収集し、ミカファンギンナトリウムが0.5g/Lよりも多くなった時点から収集を開始し、また0.5g/Lよりも少なくなるまで溶離して収集を終え、濃度の要求に応じたミカファンギンナトリウムを含有する画分を収集し、HPLCでミカファンギンナトリウム(0.88mmol)を定量分析し、収率が91%であった。光を避け、ミカファンギンナトリウムを含有する画分を直接減圧蒸留して液を合併し、固体を得て真空乾燥し、HPLCによるミカファンギンナトリウムの純度が96.17%しかなかった。ここで、反応副生物である1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)が完全に除去された。主な関連不純物の含有量は、表24に示す。
【0151】
【表33】
実施例20と比較例4から、高純度の式I化合物(純度99.0%)を使用して製造した高純度のミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩は、簡単な精製工程を行うだけで、純度が98.99%のミカファンギンナトリウムが得られたことがわかった。米国特許5376634の実施例1で製造された式I化合物(純度97.51%)を使用して製造した高純度のミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩は、同じ精製工程を行ったミカファンギンナトリウムの純度が96.17%しかなかった。高純度の式I化合物からミカファンギンナトリウムを製造する場合、純度では顕著な優越性がある。
【0152】
実施例21
高純度のミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩を使用した高純度のミカファンギンナトリウムの製造
WO2004014879における実施例6の製造プロセスを参照し、ミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩からミカファンギンナトリウム塩を製造した。
本出願の実施例17で製造されたミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩の固体(0.98mmol)を全部15mlの水溶液に溶解させた。ミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩を含有する溶解液を30mlのUBK510Lイオン交換樹脂にかけ、精製水溶液で溶離し、ミカファンギンナトリウムが1.0g/Lよりも低くなるまで溶離して収集を終えた。0.1mol/Lの水酸化ナトリウムで収集液のpHを6.0とした。仕込み、事前に処理した40mlのSP-207ssマクロポーラス型吸着樹脂で吸着させた。35%のエタノール水溶液120mlで洗浄し、さらに80%のエタノール水溶液150mlで溶離した。溶離させて収集し、ミカファンギンナトリウムが0.5g/Lよりも多くなった時点から収集を開始し、また0.5g/Lよりも少なくなるまで溶離して収集を終え、濃度の要求に応じたミカファンギンナトリウムを含有する画分を収集し、HPLCでミカファンギンナトリウム(0.92mmol)を定量分析し、収率が93.9%であった。光を避け、ミカファンギンナトリウムを含有する画分を直接減圧蒸留して液を合併し、固体を得て真空乾燥し、HPLCによるミカファンギンナトリウムの純度が99.40%であった。ここで、反応副生物である1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)が完全に除去された。主な関連不純物の含有量は、表25に示す。
【0153】
【表34】
【0154】
比較例5
比較例で製造されたジイソプロピルエチルアミン塩を使用したミカファンギンナトリウムの製造
WO2004014879における実施例6の製造プロセスを参照し、ミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩からミカファンギンナトリウム塩を製造した。
本出願の比較例3で製造されたミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩の固体(0.98mmol)を全部15mlの水溶液に溶解させた。ミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩を含有する溶解液を30mlのUBK510Lイオン交換樹脂にかけ、精製水溶液で溶離し、ミカファンギンナトリウムが1.0g/Lよりも低くなるまで溶離して収集を終えた。0.1mol/Lの水酸化ナトリウムで収集液のpHを6.0とした。仕込み、事前に処理した40mlのSP-207ssマクロポーラス型吸着樹脂で吸着させた。35%のエタノール水溶液120mlで洗浄し、さらに80%のエタノール水溶液150mlで溶離した。溶離させて収集し、ミカファンギンナトリウムが0.5g/Lよりも多くなった時点から収集を開始し、また0.5g/Lよりも少なくなるまで溶離して収集を終え、濃度の要求に応じたミカファンギンナトリウムを含有する画分を収集し、HPLCでミカファンギンナトリウム(0.84mmol)を定量分析し、収率が86.1%であった。光を避け、ミカファンギンナトリウムを含有する画分を直接減圧蒸留して液を合併し、固体を得て真空乾燥し、HPLCによるミカファンギンナトリウムの純度が96.16%しかなかった。ここで、反応副生物である1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)が完全に除去された。主な関連不純物の含有量は、表26に示す。
【0155】
【表35】
【0156】
実施例21と比較例5から、高純度の式I化合物(純度99.23%)を使用して製造した高純度のミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩は、簡単な精製工程を行うだけで、純度が99.40%のミカファンギンナトリウムが得られたことがわかった。米国特許5376634の実施例1で製造された式I化合物(純度97.51%)を使用して製造した高純度のミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩は、同じ精製工程を行ったミカファンギンナトリウムの純度が96.16%しかなかった。高純度の式I化合物からミカファンギンナトリウムを製造する場合、純度では顕著な優越性がある。
【0157】
実施例22
高純度のミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩を使用した単一不純物がいずれも0.1%未満のミカファンギンナトリウムの製造
WO2004014879における実施例6の製造プロセスを参照し、ミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩からミカファンギンナトリウム塩を製造した。
本出願の実施例18で製造されたミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩の固体(1.01mmol)を全部15mlの水溶液に溶解させた。ミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩を含有する溶解液を30mlのUBK510Lイオン交換樹脂にかけ、精製水溶液で溶離し、ミカファンギンナトリウムが1.0g/Lよりも低くなるまで溶離して収集を終えた。0.1mol/Lの水酸化ナトリウムで収集液のpHを6.0とした。仕込み、事前に処理した40mlのSP-700マクロポーラス型吸着樹脂で吸着させた。30%のアセトン水溶液100mlで洗浄し、さらに80%のアセトン水溶液150mlで溶離した。溶離させて収集し、ミカファンギンナトリウムが0.5g/Lよりも多くなった時点から収集を開始し、また0.5g/Lよりも少なくなるまで溶離して収集を終え、濃度の要求に応じたミカファンギンナトリウムを含有する画分を収集し、HPLCでミカファンギンナトリウム(0.92mmol)を定量分析し、収率が91.1%であった。光を避け、ミカファンギンナトリウムを含有する画分を直接減圧蒸留して液を合併し、固体を得て真空乾燥し、HPLCによるミカファンギンナトリウムの純度が99.79%であった。ここで、反応副生物である1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)が完全に除去された。HPLCグラフは、図5に、主な関連不純物の含有量は、表27に示す。
【0158】
【表36】
【0159】
比較例6
比較例で製造されたジイソプロピルエチルアミン塩を使用したミカファンギンナトリウムの製造
WO2004014879における実施例6の製造プロセスを参照し、ミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩からミカファンギンナトリウム塩を製造した。
本出願の比較例3で製造されたミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩の固体(1.01mmol)を全部15mlの水溶液に溶解させた。ミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩を含有する溶解液を30mlのUBK510Lイオン交換樹脂にかけ、精製水溶液で溶離し、ミカファンギンナトリウムが1.0g/Lよりも低くなるまで溶離して収集を終えた。0.1mol/Lの水酸化ナトリウムで収集液のpHを6.0とした。仕込み、事前に処理した40mlのSP-700マクロポーラス型吸着樹脂で吸着させた。30%のアセトン水溶液100mlで洗浄し、さらに80%のアセトン水溶液150mlで溶離した。溶離させて収集し、ミカファンギンナトリウムが0.5g/Lよりも多くなった時点から収集を開始し、また0.5g/Lよりも少なくなるまで溶離して収集を終え、濃度の要求に応じたミカファンギンナトリウムを含有する画分を収集し、HPLCでミカファンギンナトリウム(0.83mmol)を定量分析し、収率が82.1%であった。光を避け、ミカファンギンナトリウムを含有する画分を直接減圧蒸留して液を合併し、固体を得て真空乾燥し、HPLCによるミカファンギンナトリウムの純度が96.29%であった。ここで、反応副生物である1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)が完全に除去された。主な関連不純物の含有量は、表28に示す。
【0160】
【表37】
【0161】
実施例22と比較例6から、高純度の式I化合物(純度99.57%)を使用して製造した高純度のミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩は、簡単な精製工程を行うだけで、純度が99.79%のミカファンギンナトリウムが得られたことがわかった。米国特許5376634の実施例1で製造された式I化合物(純度97.51%)を使用して製造した高純度のミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩は、同じ精製工程を行ったミカファンギンナトリウムの純度が96.29%しかなかった。高純度の式I化合物からミカファンギンナトリウムを製造する場合、純度では顕著な優越性がある。
【0162】
実施例23
高純度のミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩を使用した単一不純物がいずれも0.1%未満のミカファンギンナトリウムの製造
WO2004014879における実施例6の製造プロセスを参照し、ミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩からミカファンギンナトリウム塩を製造した。
本出願の実施例19で製造されたミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩の固体(1.04mmol)を全部15mlの水溶液に溶解させた。ミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩を含有する溶解液を25mlのUBK510Lイオン交換樹脂にかけ、精製水溶液で溶離し、ミカファンギンナトリウムが1.0g/Lよりも低くなるまで溶離して収集を終えた。0.1mol/Lの水酸化ナトリウムで収集液のpHを6.0とした。仕込み、事前に処理した40mlのHP2MGマクロポーラス型吸着樹脂で吸着させた。30%のエタノール水溶液200mlで洗浄し、さらに70%のエタノール水溶液200mlで溶離した。溶離させて収集し、ミカファンギンナトリウムが0.5g/Lよりも多くなった時点から収集を開始し、また0.5g/Lよりも少なくなるまで溶離して収集を終え、濃度の要求に応じたミカファンギンナトリウムを含有する画分を収集し、HPLCでミカファンギンナトリウム(0.92mmol)を定量分析し、収率が88.5%であった。光を避け、ミカファンギンナトリウムを含有する画分を直接減圧蒸留して液を合併し、固体を得て真空乾燥し、HPLCによるミカファンギンナトリウムの純度が99.88%であった。ここで、反応副生物である1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)が完全に除去された。主な関連不純物の含有量は、表29に示す。
【0163】
【表38】
【0164】
比較例7
比較例で製造されたジイソプロピルエチルアミン塩を使用したミカファンギンナトリウムの製造
WO2004014879における実施例6の製造プロセスを参照し、ミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩からミカファンギンナトリウム塩を製造した。
本出願の比較例3で製造されたミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩の固体(1.04mmol)を全部15mlの水溶液に溶解させた。ミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩を含有する溶解液を25mlのUBK510Lイオン交換樹脂にかけ、精製水溶液で溶離し、ミカファンギンナトリウムが1.0g/Lよりも低くなるまで溶離して収集を終えた。0.1mol/Lの水酸化ナトリウムで収集液のpHを6.0とした。仕込み、事前に処理した40mlのHP2MGマクロポーラス型吸着樹脂で吸着させた。30%のエタノール水溶液200mlで洗浄し、さらに70%のエタノール水溶液200mlで溶離した。溶離させて収集し、ミカファンギンナトリウムが0.5g/Lよりも多くなった時点から収集を開始し、また0.5g/Lよりも少なくなるまで溶離して収集を終え、濃度の要求に応じたミカファンギンナトリウムを含有する画分を収集し、HPLCでミカファンギンナトリウム(0.86mmol)を定量分析し、収率が82.7%であった。光を避け、ミカファンギンナトリウムを含有する画分を直接減圧蒸留して液を合併し、固体を得て真空乾燥し、HPLCによるミカファンギンナトリウムの純度が96.29%であった。ここで、反応副生物である1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)が完全に除去された。主な関連不純物の含有量は、表30に示す。
【0165】
【表39】
【0166】
実施例23と比較例7から、高純度の式I化合物(純度99.81%)を使用して製造した高純度のミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩は、簡単な精製工程を行うだけで、純度が99.88%のミカファンギンナトリウムが得られたことがわかった。米国特許5376634の実施例1で製造された式I化合物(純度97.51%)を使用して製造した高純度のミカファンギンジイソプロピルエチルアミン塩は、同じ精製工程を行ったミカファンギンナトリウムの純度が96.29%しかなかった。高純度の式I化合物からミカファンギンナトリウムを製造する場合、純度では顕著な優越性がある。
【0167】
比較例8
市販製剤製品との不純物含有量の比較
市販製剤製品:商品名:マイカミン
一般名:注射用ミカファンギンナトリウム
メーカー:アステラス製薬株式会社
ロット番号:0901
【表40】
【0168】
表31から、本発明で得られた高純度のミカファンギンナトリウムの純度は、顕著に市販の製剤製品よりも高く、中でも、不純物6、不純物7、不純物8、不純物9、不純物10及び不純物11の含有量は市販の製剤製品よりも遥かに低かったことがわかる。そのHPLCグラフは、図5に、市販の製剤製品のHPLCグラフは、図6に示す。
【0169】
実施例24
【表41】
【0170】
乳糖を50℃未満で加熱しながら純水(200ml)に溶解させた。20℃以下に冷却した後、乳糖溶液に実施例3で得られた高純度の化合物Iを入れ、泡が立たないようにゆっくり撹拌した。2%クエン酸水溶液(0.95ml)を入れた後、pHが5.5となるように溶液に0.4%水酸化ナトリウム水溶液(約24ml)を入れ、さらに純水で希釈し、所定の体積(250ml)とした。得られた溶液を100個の体積10mlのバイアルに2.5mlずつ分けて入れた。通常の方法で、冷凍乾燥装置で各バイアルにおける溶液を冷凍乾燥し、それぞれ25mgの化合物Iを含有する冷凍乾燥組成物を得た。
【0171】
以上の説明は本発明の好ましい実施例だけで、本発明の実質の技術内容の範囲を限定するものではなく、本発明の実質の技術内容は広義的に出願の請求の範囲に定義され、他の人が完成した技術実体或いは方法は、出願の請求の範囲に定義されたものとまったく同じものであれば、或いは効果が同等の変更であれば、いずれもその請求の範囲に含まれるとみなされる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6