特許第6091612号(P6091612)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6091612
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】注射器およびプレフィルドシリンジ
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20170227BHJP
   A61M 5/28 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   A61M5/315 514
   A61M5/315 512
   A61M5/28
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-521235(P2015-521235)
(86)(22)【出願日】2013年6月6日
(86)【国際出願番号】JP2013065698
(87)【国際公開番号】WO2014196057
(87)【国際公開日】20141211
【審査請求日】2016年4月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089060
【弁理士】
【氏名又は名称】向山 正一
(72)【発明者】
【氏名】古川 光一郎
【審査官】 武内 大志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−142508(JP,A)
【文献】 国際公開第01/97885(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/128265(WO,A1)
【文献】 特表平9−512727(JP,A)
【文献】 特開2010−246842(JP,A)
【文献】 特開2007−202822(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0184920(US,A1)
【文献】 特表2006−519070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/00−5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端が閉塞し基端が開口する筒状体であり、かつ、基端側より先端側に延びる内腔部を備えるガスケットと、先端開口部を備えかつ前記ガスケットを摺動可能に収納する外筒と、前記ガスケットの前記内腔部内に収納可能なヘッド部を有するプランジャとを備える注射器であって、
前記プランジャは、前記ヘッド部の外面に設けられた螺旋状リブを備え、
前記ガスケットは、前記内腔部の内面に、前記プランジャの前記螺旋状リブと螺合する螺合部を形成する螺旋状突起と、該螺旋状突起の付近かつ先端側に位置するプランジャ抜け止め用環状リブとを備え、さらに、前記内腔部は、前記抜け止め用環状リブより先端側に前記プランジャの前記ヘッド部の前記螺旋状リブ形成部位を収納するための収納部を備え、前記抜け止め用環状リブは、前記プランジャと前記ガスケットの螺合の進行により前記抜け止め用環状リブに到達した前記螺旋状リブを前記収納部に誘導するためのリブ欠損部を備え、
前記ガスケットは、外周面に、前記外筒の内径よりも大きな外径を有する先端側環状リブと、前記外筒の内径よりも大きな外径を有する基端側環状リブと、前記先端側環状リブと前記基端側環状リブ間に設けられた中間部環状リブを備え、さらに、前記中間部環状リブは、前記抜け止め用環状リブの側部となる部位に設けられていることを特徴とする注射器。
【請求項2】
前記中間部環状リブの外径は、前記先端側環状リブの外径および前記基端側環状リブの外径よりも小さいものとなっている請求項1に記載の注射器。
【請求項3】
前記中間部環状リブは、前記外筒の内径よりも大きな外径を有している請求項2に記載の注射器。
【請求項4】
前記中間部環状リブと前記外筒の内周面との接触面積は、前記先端側環状リブと前記外筒の内周面との接触面積および前記基端側環状リブと前記外筒の内周面との接触面積よりも小さいものとなっている請求項3に記載の注射器。
【請求項5】
前記中間部環状リブの縦断面形状は、頂部を有する山型形状である請求項1ないし4のいずれかに記載の注射器。
【請求項6】
前記中間部環状リブは、前記中間部環状リブの最も外側に突出した頂点部が、前記抜け止め用環状リブの基端側部分の側部に位置するように設けられている請求項1ないし5のいずれかに記載の注射器。
【請求項7】
前記螺旋状突起の先端は、前記抜け止め用環状リブの前記リブ欠損部に隣接する部分に連結しており、前記螺旋状突起の先端部の先端側の面は、前記リブ欠損部の基端に隣接している請求項1ないし6のいずれかに記載の注射器。
【請求項8】
前記ヘッド部は、軸部を備え、前記螺旋状リブは、前記軸部に設けられており、さらに、前記螺旋状リブの基端は、前記軸部の中心軸に対してほぼ直交するように、前記軸部の周方向に延びる周方向延出部となっている請求項1ないし7のいずれかに記載の注射器。
【請求項9】
前記注射器は、プレフィルドシリンジ用の注射器である請求項1ないし8のいずれかに記載の注射器。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の注射器と、前記外筒の前記先端開口部を封止する封止部材と、前記外筒内に収納された薬剤とを備えるプレフィルドシリンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射器および予め薬液が充填されたプレフィルドシリンジに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、予め薬液などの液体が充填されたプレフィルドシリンジが多く利用されている。このようなプレフィルドシリンジの中には、バイアル内の薬剤を溶解するための溶解液が充填されているものもある。
プレフィルドシリンジにおけるガスケット挿入は、先端開口がシールされた外筒内に薬剤を充填した状態とし、減圧下雰囲気(真空下雰囲気)にて、ガスケットを外筒の開口部に配置し、その後、常圧状態とすることにより、ガスケットを外筒内に挿入させるといういわゆる真空打栓といわれる方法を用いるのが一般的である。ガスケットにプランジャが装着された状態では、外筒の開口部へのガスケットの配置が困難であるため、ガスケット単体にて上記の打栓作業が行われる。このため、プレフィルドシリンジとしては、外筒内にガスケットを挿入後に、ガスケットにプランジャを装着する作業を行うことが一般的である。そして、ガスケットへのプランジャ装着作業を容易なものとし、かつ、装着作業時における液漏れ発生防止、内部圧の上昇抑制を少ないものとするために、プランジャに雄ねじ部、ガスケットに雌ねじ部を設け、両者の螺合による装着機構を有するものが一般的となっている。
【0003】
そして、上述したように、溶解液が充填されたプレフィルドシリンジでは、バイアル内の薬剤を溶解液で溶解したり、溶解した薬剤を回収したりするために、ガスケットに装着されたプランジャを引く操作を行う場合がある。しかし、プランジャを引く操作を行った際に行う場合、プランジャがガスケットから外れ、薬剤を溶解できなかったり、溶解した薬剤を回収できない恐れがあった。
【0004】
このようなガスケットの外れ防止機構を有するものとしては、プランジャの螺旋状リブと螺合する螺旋状螺合部が設けられたガスケットの内腔部に、螺旋状螺合部よりも奥側に、プランジャの抜け止め用環状リブを備えるものが知られている。ねじ込まれたプランジャの螺旋状リブを、ガスケットの内腔部に設けられた抜け止め用環状リブの奥側の収納部に収納して、ガスケットの外れ防止をおこなうものである。そして、このような外れ防止機構のうち、抜け止め用環状リブを備えていても、プランジャのねじ込み装着時にガスケットが回転することがなく、また、ガスケットへのプランジャの装着を容易にするものとしては、本願出願人が提案する特開2009−142508号公報(特許文献1)がある。
【0005】
特許文献1の注射器10は、ガスケット3と外筒2とプランジャ4とを備える。プランジャ4は、ヘッド部42の外面に設けられた螺旋状リブ44を備え、ガスケットは、螺旋状リブ44と螺合するための螺旋状螺合部33と、螺旋状螺合部33の付近かつ先端側に位置するプランジャ抜け止め用環状リブ34と、プランジャ4のヘッド部42の螺旋状リブ形成部位収納部32を備える。そして、抜け止め用環状リブ34は、プランジャの螺旋状リブとガスケットの螺旋状螺合部との螺合の進行により、抜け止め用環状リブに到達した螺旋状リブを収納部に誘導するためのリブ欠損部35を備えている。この注射器10では、ガスケット3へのプランジャ4の装着の際には、螺旋状リブ44は、リブ欠損部35を通って抜け止め用環状リブ34を通過するものとなっており、抜け止め用環状リブ34を直接乗り越えるものではないため、螺旋状リブ44と抜け止め用環状リブ34とが強く接触することがなく、装着作業時におけるプランジャ4の回転によりガスケット3が回転することがない。また、螺旋状リブ44が抜け止め用環状リブ34を直接乗り越えるものではないため、装着作業も容易におこなうことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−142508号公報(図13等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のものでは、抜け止め用環状リブ34にリブ欠損部35を設けることにより、ガスケット3へのプランジャ4のねじ込み装着の作業時には、ガスケット3の抜け止め用環状リブ34とプランジャ4の螺旋状リブ44とが強く接触しないように構成され、装着作業時においてプランジャ4の回転によりガスケット3までもが回転することなく、プランジャ4の装着作業も容易である。本発明者等が鋭意検討したところ、抜け止め用環状リブ34にリブ欠損部35が備えられているため、プランジャ4を外筒2から引き抜くように基端側に引っ張って抜け止め用環状リブ34に力が加わった場合に、ゴム等の軟質な材料からなるガスケット3の抜け止め用環状リブ34の内径が広がり、プランジャ4がガスケット3から離脱する恐れがあることを知見した。そこで、プランジャ4を外筒2から引き抜くような力が加わった場合に対して、プランジャ4がガスケット3からの離脱をより確実に防止できるものを検討した。
【0008】
本発明の目的は、プランジャの装着時にガスケットの回転を招くことがなく、ガスケットへのプランジャ装着を容易とするとともに、さらに、装着後のプランジャからのガスケットの離脱を確実に抑制することができる注射器およびそれを用いたプレフィルドシリンジを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
先端が閉塞し基端が開口する筒状体であり、かつ、基端側より先端側に延びる内腔部を備えるガスケットと、先端開口部を備えかつ前記ガスケットを摺動可能に収納する外筒と、前記ガスケットの前記内腔部内に収納可能なヘッド部を有するプランジャとを備える注射器であって、前記プランジャは、前記ヘッド部の外面に設けられた螺旋状リブを備え、前記ガスケットは、前記内腔部の内面に、前記プランジャの前記螺旋状リブと螺合する螺合部を形成する螺旋状突起と、該螺旋状突起の付近かつ先端側に位置するプランジャ抜け止め用環状リブとを備え、さらに、前記内腔部は、前記抜け止め用環状リブより先端側に前記プランジャの前記ヘッド部の前記螺旋状リブ形成部位を収納するための収納部を備え、前記抜け止め用環状リブは、前記プランジャと前記ガスケットの螺合の進行により前記抜け止め用環状リブに到達した前記螺旋状リブを前記収納部に誘導するためのリブ欠損部を備え、前記ガスケットは、外周面に、前記外筒の内径よりも大きな外径を有する先端側環状リブと、前記外筒の内径よりも大きな外径を有する基端側環状リブと、前記先端側環状リブと前記基端側環状リブ間に設けられた中間部環状リブを備え、さらに、前記中間部環状リブは、前記抜け止め用環状リブの側部となる部位に設けられている注射器。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施例の注射器を用いたプレフィルドシリンジの正面図である。
図2図2は、図1に示したプレフィルドシリンジの縦断面図である。
図3図3は、本発明の注射器に使用されるガスケットの拡大正面図である。
図4図4は、図3のA−A線断面図である。
図5図5は、図4のB−B線断面図である。
図6図6は、本発明の注射器に使用されるプランジャの正面図である。
図7図7は、図6に示したプランジャの先端部の拡大右側面図である。
図8図8は、本発明の注射器におけるガスケットとプランジャの装着時の作用を説明するための説明図である。
図9図9は、本発明の注射器に使用される外筒の一例の部分破断正面図である。
図10図10は、本発明の注射器に使用されるシールキャップの一例の断面図である。
図11図11は、本発明の注射器に使用される他の例のプランジャの先端部の拡大正面図である。
図12図12は、図11に示したプランジャの右側面図である。
図13図13は、図11および図12に示すプランジャを用いた注射器におけるガスケットとプランジャの装着時の作用を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の注射器およびプレフィルドシリンジについて、図面に示した実施の形態を用いて説明する。
本発明の注射器10は、図1および図2に示すように、先端が閉塞し基端が開口する筒状体であり、かつ、図4に示すように、基端側より先端側に延びる内腔部30を備えるガスケット3と、図2に示すように、先端開口部を備えかつガスケット3を摺動可能に収納する外筒2と、図6に示すように、ガスケット3の内腔部30内に収納可能なヘッド部42を有するプランジャ4とを備える。
そして、ガスケットは、図8に示すように、内腔部30の内面に、プランジャ4の螺旋状リブ44と螺合する螺合部を形成する螺旋状突起36と、螺旋状突起36の付近かつ先端側に位置するプランジャ抜け止め用環状リブ34とを備える。さらに、内腔部30は、抜け止め用環状リブ34より先端側にプランジャ4のヘッド部42の螺旋状リブ形成部位を収納するための収納部32を備える。抜け止め用環状リブ34は、プランジャ4とガスケット3の螺合の進行により、抜け止め用環状リブ34に到達した螺旋状リブ44を収納部32に誘導するためのリブ欠損部35を備えている。
さらに、ガスケット3の外周面には、外筒2の内径よりも大きな外径を有する先端側環状リブ38と、外筒2の内径よりも大きな外径を有する基端側環状リブ39と、先端側環状リブ38と基端側環状リブ39間に設けられた中間部環状リブ37を備える。中間部環状リブ37は、抜け止め用環状リブ34の側部となる部位に設けられている。
【0012】
このため、プランジャ4の螺旋状リブ44が抜け止め用環状リブ34を押し広げるように、プランジャ4が強く基端側に引かれた時、抜け止め用環状リブ34に付与される基端側への変形力は、中間部環状リブ37に伝達される。中間部環状リブ37は、外筒2の内周面に当接することにより、伝達される力に対抗し、抜け止め用環状リブ34の変形を阻害する。これにより、抜け止め用環状リブ34が所定以上押し広げられることが防止される。よって、螺旋状リブ44の基端面と抜け止め用環状リブ34の先端面との当接状態が維持され、プランジャが基端側に引かれた時におけるプランジャの離脱が防止される。また、抜け止め用環状リブ34にはリブ欠損部35が設けられているため、プランジャ4の螺旋状リブ44が抜け止め用環状リブ34を乗り越えやすいものとなっている。もし、乗り越え時に、螺旋状リブ44がリブ欠損部35付近の抜け止め用環状リブ34と強く接触することにより抵抗が発生した場合には、中間部環状リブ37が内側から押され、外筒2の内面に強く接触するため、ガスケット3の回転抵抗も高くなる。このため、中間部環状リブは37、プランジャの装着時、特に、螺旋状リブ44のリブ欠損部通過時におけるガスケット3の回転を防止する。
【0013】
また、図1および図2に示すように、本発明のプレフィルドシリンジ1は、プレフィルドシリンジ用注射器10と、外筒2の先端開口部を封止する封止部材5と、外筒2内に収納された薬剤8とを備える。この実施例の注射器10は、外筒2と、外筒2内に摺動可能に収納されたガスケット3と、ガスケット3に取り付けられたまたは取付可能なプランジャ4とからなる。そして、プレフィルドシリンジ1は、上記の注射器10と、外筒2の先端開口部を封止する封止部材5と、注射器内(外筒内)に収納された薬剤8とからなる。この実施例のガスケット3は、図1ないし図5に示すように、閉塞した先端と、基端開口より先端側に延びる内腔部30を有する筒状体である。図3および図4に示すように、ガスケット3の先端部位には、先端側に向かってテーパー状に縮径するテーパー部31を有する。
【0014】
シリンジ用ガスケット3は、内腔部30を備え、この内腔部30が、プランジャ取付機能を備えている。内腔部30は、その内面に、プランジャ4の螺旋状リブ44と螺合するための螺合部33を形成する螺旋状突起36と、螺旋状突起36の付近かつ先端側に位置するプランジャ抜け止め用環状リブ34とを備える。さらに、内腔部30は、抜け止め用環状リブ34より先端側にプランジャ4のヘッド部42の螺旋状リブ形成部位を収納するための収納部32を備える。抜け止め用環状リブ34は、プランジャ4のヘッド部42の螺旋状リブ44とガスケット3の螺合部33との螺合の進行により、抜け止め用環状リブ34に到達した螺旋状リブ44を収納部32に誘導するためのリブ欠損部35を備えている。
【0015】
螺合部33は、内腔部30の開口部付近に基端33aを有し、先端方向に所定長延び、かつ、抜け止め用環状リブ34のリブ欠損部35付近に先端33bを有している。この実施例では、螺合部33は、後述するするプランジャ4のヘッド部42の螺旋状リブ44に対応するように、二条(二本)の螺合部33となっている。そして、この実施例のガスケット3では、図4および図5に示すように、2本の螺旋状突起36(36a,36b)を備えている。なお、上記のような複数(具体的には、二条)の螺旋状突起を備えることが好ましいが、螺旋状突起は、一条(一本)のみであってもよい。
また、この実施例では、螺合部33は、ガスケット3の内腔部30の内壁面より突出する螺旋状突起36間により形成された溝状部分となっている。螺合部33は、プランジャ4の螺旋状リブ44と螺合可能であり、かつ、螺旋状リブ44を先端方向に誘導可能となっている。
【0016】
そして、ガスケット3は、螺合部33の付近かつ螺合部33より先端側に位置する部位の内面に設けられたプランジャ抜け止め用環状リブ34を備えている。この実施例のガスケットでは、抜け止め用環状リブ34は、ガスケット3の中心軸に対してほぼ直交する方向に延びるものとなっている。なお、抜け止め用環状リブ34は、ガスケット3の中心軸に対して直交する方向に延びることが望ましいが、直交状態より若干斜めとなっていてもよい。また、ガスケット3は、抜け止め用環状リブ34より先端側にプランジャ4のヘッド部42の螺旋状リブ形成部位を収納するための収納部32を備えている。
【0017】
さらに、抜け止め用環状リブ34は、プランジャ4のヘッド部42の螺旋状リブ44とガスケット3の螺合部33との螺合の進行により、抜け止め用環状リブ34に到達した螺旋状リブ44を収納部32に誘導するためのリブ欠損部35を備えている。特に、この実施例のガスケット3では、上述したように、螺合部33は、二条の螺旋状リブに対応する二条の螺旋状螺合部となっており、これに対応するように、抜け止め用環状リブのリブ欠損部は、図5に示すように、ほぼ向かい合う位置に2つ設けられている。言い換えれば、このガスケット3では、2つに区分された抜け止め用環状リブ34a、34bと、両者間に位置する2つのリブ欠損部35a,35bを備えるものとなっている。さらに、図5に示すように、抜け止め用環状リブ34(34a,34b)は、リブ欠損部35(35a,35b)に向かって徐々にリブが小さくなっていることが好ましい。なお、抜け止め用環状リブ34(34a,34b)は、リブ欠損部35(35a,35b)に向かって徐々に幅が狭くなるもの、または徐々に高さが低くなるもの、さらには、徐々に幅が狭くなるとともに徐々に高さも低くなるもののいずれであってもよい。このようにすることにより、プランジャ4の螺旋状リブ44の抜け止め用環状リブ34の通過、言い換えれば、収納部32への進入がより容易なものとなる。なお、リブ欠損部は当該部分の抜け止め用環状リブが完全に欠損していなくても、ヘッド部の螺旋状リブを誘導する機能を有する程度に欠損していればよい。
【0018】
そして、螺旋状突起36は、内腔部30の開口部付近に基端を有し、先端方向に所定長延び、かつ、抜け止め用環状リブ34のリブ欠損部35に隣接する部分に連結した先端36cを有している。そして、螺旋状突起36の先端部の先端側の面は、リブ欠損部35の基端に隣接している。これにより、螺旋状リブ44は、リブ欠損部35付近の抜け止め用環状リブ34を大きく変形させることなくリブ欠損部35を通過して、抜け止め用環状リブ34を乗り越えることができる。抜け止め用環状リブ34は、中間部環状リブ37により変形し難くなっているが、リブ欠損部35により、抜け止め用環状リブ34を大きく変形させることなく螺旋状リブ44が抜け止め用環状リブ34を乗り越えられる。このため、ガスケット3へのプランジャ4の装着が容易となる。また、この実施例では、抜け止め用環状リブ34は、欠損部35により形成された一端と他端を有している。そして、螺旋状突起36の先端部は、欠損部35に近接しかつ先端方向に向かって斜めに延び、螺旋状突起36の先端部の先端は、抜け止め環状リブ34の一端の基端側側面と連結している。
【0019】
そして、図4に示すように、螺旋状突起36と抜け止め用環状リブ34との距離は、リブ欠損部35に向かって(同様に、螺合部33の先端33bに向かって)狭くなるものとなっている。このため、プランジャ4の螺旋状リブ44の抜け止め用環状リブ34のリブ欠損部35への誘導を確実なものとしている。また、ガスケット3の螺合部33を形成するための螺旋状突起36の突出高さは、抜け止め用環状リブ34の突出高さより、高いものであることが好ましい。ガスケット3へのプランジャ4の装着の際、回転されるプランジャ4の螺旋状リブ44が、抜け止め用環状リブ34のリブ欠損部35を確実に通過して収納部32内に螺旋状リブ44形成部位が収納されるようにするために、螺旋状突起36と螺旋状リブ44が螺合状態を確実に保つことが容易となるためである。
【0020】
抜け止め用環状リブ34の高さ(内側への突出長)は、ガスケットの大きさや硬さによって相違するが、0.5〜2.0mmであることが好ましく、特に、0.8〜1.5mmが好ましい。また、ガスケット3の周方向における抜け止め用環状リブ34のリブ欠損部35の幅は、0.5〜3.0mmであることが好ましく、特に、0.5〜1.5mmが好ましい。
また、ガスケット3は、先端部内面の中央部に基端側に突出する小さな突起部を備えている。この突起部は、ガスケット3の先端部が基端側に変形したときに、プランジャのヘッド部の先端に当接可能なものとなっており、ガスケット3の先端部の過剰な変形を防止する。突起部は、略半球状であることが好ましい。そして、ガスケット3は、直径が5〜30mm、全長が5〜30mm程度のものが一般的である。
【0021】
そして、ガスケット3の外周面には、外筒2の内径より大きな外径を有する先端側環状リブ38と、外筒2の内径より大きな外径を有する基端側環状リブ39と、先端側環状リブ38と基端側環状リブ39間に設けられた中間部環状リブ37を備える。
先端側環状リブ38は、筒状本体部の先端部外面に設けられ、基端側環状リブ39は、本体部の基端部外面に設けられている。先端側環状リブ38の外径および基端側環状リブ39の外径は、外筒2の内径より0.5〜1.5mm大きいことが好ましく、特に、外筒2の内径が8〜10mmの場合、外筒2の内径より0.5〜0.8mm大きいことが好ましい。これにより、ガスケット3と外筒2の内周面との間の液密性を保ちながら、外筒2内を摺動するガスケット3の摺動抵抗を低く抑えることができる。また、先端側環状リブ38および基端側環状リブ39は、ガスケット3の軸方向に直線状に延びる最も外側に突出した頂点部を有している。先端側環状リブ38の頂点部は、図3に示すように、軸方向に幅広に形成されていることが好ましい。また、先端側環状リブ38の頂点部の軸方向の長さは、基端側環状リブ39の軸方向の長さより長いことが好ましい。先端側環状リブ38の軸方向の長さは、0.8〜2mm、特に、0.8〜1.5mmであることが好ましい。基端側環状リブ39の軸方向の長さは、0.1〜1.0mm、特に、0.2〜0.5mmであることが好ましい。以上のような構成により、ガスケット3と外筒2の内周面との接触面積が大きくなるので液密性が高くなり薬液が漏れにくくなる。
【0022】
中間部環状リブ37は、ガスケット3の外周面に設けられており、先端側環状リブ38と基端側環状リブ39との間に形成されている。中間部環状リブ37は、ガスケット3の外周面に沿って、ガスケット3の中心軸に直交する方向において周設されている。また、図3ないし図5に示すように、中間部環状リブ37は、ガスケット3の外周面からほぼ一様にガスケット3の全周に渡って突出されるように形成されている。
図4に示すように、中間部環状リブ37は、抜け止め用環状リブの側部となる部位に設けられている。また、プランジャ4が強く基端側に引かれた時、抜け止め用環状リブ34に付与される基端側への変形力は、抜け止め用環状リブ34の先端面より若干基端側に位置するガスケット3の外周面に伝達される。このため、中間部環状リブ37は、抜け止め用環状リブ34の先端面より基端側に位置していることが好ましい。これにより、抜け止め用環状リブ34の変形がより確実に阻害され、螺旋状リブ44の基端面と抜け止め用環状リブ34の先端面との当接状態がより確実に維持され、プランジャ4のガスケット3からの離脱がより確実に防止される。
【0023】
なお、この実施例では、中間部環状リブ37の最も外側に突出した頂点部が、抜け止め用環状リブ34の基端側部分の側部に位置するように設けられている。また、中間部環状リブ37は、抜け止め用環状リブ34の基端側部分かつ螺旋状突起36の先端36cの側部となる部位に設けられている。具体的には、中間部環状リブの最も外側に突出した頂点部は、抜け止め用環状リブ34の最も内側に突出した頂点部より若干基端側に位置するものとなっている。なお、中間部環状リブ37の少なくとも頂点より先端側部分は、抜け止め用環状リブ4の基端側部分と軸方向において重なっている。
また、中間部環状リブ37は、図4に示すように、螺旋状突起36の先端36cと軸方向に重なるように形成されている。さらに、この実施例のガスケット3では、図4に示すように、螺旋状突起36の先端36cは、抜け止め用環状リブ34のリブ欠損部35に隣接する部分に連結している。そして、中間部環状リブ37は、連結部(先端36c)付近に頂点が位置するように配置されている。そして、この実施例のガスケット3では、抜け止め用環状リブ34が、ガスケット3の中心軸に対して直交するものとなっており、これに対応して、中間部環状リブ37も同様なものとなっている。
【0024】
図4に示すように、中間部環状リブ37の外径は、先端側環状リブ38の外径および基端側環状リブ39の外径よりも小さいものとなっている。これにより、外筒2内を摺動するガスケット3の摺動抵抗を低く抑えることができる。また、中間部環状リブ37の外径は、外筒2の内径よりも大きいものとなっている。これにより、プランジャ4が強く基端側に引かれた時、中間部環状リブ37が確実に外筒2の内周面に当接し、抜け止め用環状リブ34の変形を確実に阻害することができる。
また、中間部環状リブ37と外筒2の内周面との接触面積は、先端側環状リブ38と外筒2の内周面との接触面積および基端側環状リブ39と外筒2の内周面との接触面積よりも小さいことが好ましい。このようにすることにより、外筒2へのガスケット3の真空打栓時やプランジャ4の操作時におけるガスケット3の外筒2への接触抵抗(摺動抵抗)を低く抑えることができ、かつ、先端側環状リブ38および基端側環状リブ39によって、充填される薬剤8に対する液密性は確保できる。
【0025】
また、この実施例では、中間部環状リブ37の縦断面形状は、横方向に向いて頂部が尖った山型形状とされており、頂部の先端が、外筒2の内面に当接可能となっている。頂部を有する山型形状に形成されることにより、中間部環状リブ37の外筒2の内周面への接触面積を減らすことができる。なお、抜け止め用環状リブ34の変形をより規制するために、外筒2内周面に接触する中間部環状リブの当接部の面積を広くし、中間部環状リブを十分に支持可能なものとしてもよい。この場合、中間部環状リブを、例えば、その縦断面形状が矩形状や半球状となるようにすることが好ましい。
【0026】
なお、中間部環状リブの外径は、外筒2の内径より0〜1.0mm大きいことが好ましく、特に、外筒2の内径が8〜10mmの場合、外筒2の内径より0.1〜0.5mm大きいことが好ましい。これにより、プランジャ4を基端側に引っ張った際の抜け止め用環状リブ34の変形を阻害しながら、外筒2内を摺動するガスケット3の摺動抵抗を低く抑えることができる。なお、プランジャ4が強く基端側に引かれた時、中間部環状リブ37が外筒2の内周面に当接し、抜け止め用環状リブ34の変形を阻害する範囲において、中間部環状リブの外径を外筒2の内径より小さくしてもよい。
【0027】
ガスケット3の構成材料としては、従来からガスケットに使用されている公知のものが使用できる。例えば、ゴム、エラストマー、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂が挙げられる。ゴムとしては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、シリコーンゴムが好ましく、特に、加硫処理したものが好ましい。エラストマーとしては、例えば、ポリ塩化ビニル系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー及びこれらの混合物が好ましい。上記ゴム、エラストマーの中でも、特に、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、スチレン系エラストマーが、好適な硬度、弾性特性を有し、γ線滅菌、電子線滅菌、高圧蒸気滅菌などの各種滅菌方法が採用可能であることから好ましい。
【0028】
また、ガスケットの先端側部分に低薬剤吸着性物質等を被覆したものであってもよい。低薬物吸着層の材質としては、従来からラミネートガスケットに使用されている公知のものが使用できる。低薬物吸着層の材質としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂が挙げられる。具体的に、ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、超高分子量ポリエチレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)、環状ポリオレフィン等が好ましく、フッ素系樹脂としては、四フッ化エチレン−パーフルオロエトキシエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体等が好ましい。また、ガスケット3の外面、少なくとも先端側環状リブ38、基端側環状リブ39及び中間部環状リブ37の表面に潤滑剤の塗布を行うことが好ましい。潤滑剤としては、シリコーンオイルが好適である。
【0029】
プランジャ4は、図1図2図6ないし図8に示すように、プランジャ本体部41と、プランジャ本体部41より先端方向に突出するヘッド部42とを備える。プランジャ本体部41は、先端に位置し、ヘッド部42が突出する円盤部48と、基端に位置する押圧部45とを備えている。プランジャ本体部41は、図6および図9に示すように断面十字状に形成されたシャフト部を備え、その先端に円盤部48が設けられ、基端に円盤状のプランジャ押圧部45が設けられている。
ヘッド部42は、プランジャ4の先端部に設けられた突出部である。ヘッド部42は、本体部41の先端に設けられた円盤部48の中央付近から前方に突出している。ヘッド部42は、棒状のものとなっている。図6ないし図8に示すように、ヘッド部42は、軸部43とその外面に形成された螺旋状リブ44を備えている。また、軸部43の先端は平坦になっている。軸部43は、筒状、円柱状、断面が4角形、5角形、6角形等の多角形、十字形状等であってもよい。
【0030】
そして、プランジャ4のヘッド部42の先端部外面、具体的には、軸部43の先端部外面には、螺旋状リブ44が形成されている。この実施例におけるプランジャ4では、図6ないし図8に示すように、上述したガスケット3の螺合部33に対応するように、二条(二本)の螺旋状リブ44が形成されている。螺旋状リブ44は、プランジャ4のヘッド部42の先端部、具体的には、軸部43の先端に始端を有し、所定長基端側に延びるものとなっている。このような複数(具体的には、二条)の螺旋状リブを備えることが好ましいが、螺旋状リブは、一条(一本)のみであってもよい。
【0031】
そして、プランジャ4の螺旋状リブ44の高さ(外側への突出長)は、以下のようなものであることが好ましい。プランジャ4の螺旋状リブ44の高さとしては、0.5〜2.5mmが好ましく、特に、1.0〜2.0mmが好ましい。プランジャ4の構成材料としては、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等の硬質もしくは半硬質樹脂を用いることが好ましい。
【0032】
外筒2は、透明もしくは半透明材料により、好ましくは、酸素透過性、水蒸気透過性の少ない材料により形成された筒状体である。外筒2は、図2および図9に示すように、ノズル部22と、カラー23とを備える。ノズル部22は、外筒2の先端に設けられており、外筒内の薬液等を排出するための先端開口部を備えるとともに先端に向かってテーパー状に縮径するように形成されている。カラー23は、ノズル部22を取り囲むようにノズル部22と同心的に円筒状に形成されている。また、カラー23は、先端が開口しており、カラー23の内径および外径は基端(外筒先端面21)から先端までほぼ同一径となっている。また、カラー23の先端開口からはノズル部22の先端部が突出しており、ノズル部22およびカラー23の先端部は、ノズル部22およびカラー23を封止部材(シールキャップ)5内に収納しやすくするため面取り加工されている。
【0033】
カラー23の内周面には、後述するシールキャップ5のノズル収納部53に形成されたネジ山(キャップ側螺合部)54と螺合するためのネジ溝(外筒側螺合部)25が形成されている。これにより、外筒2とシールキャップ5はカラー23内周面とノズル収納部53外周面との間で螺合する。また、ネジ溝(外筒側螺合部)25は、シールキャップ5を外筒から取り外した後注射針(注射針のハブ)を取り付ける部分となる。外筒は、図1図2および図9に示すように、フランジ24を有する。フランジ24は、外筒2の基端全周より垂直方向に突出するように形成された楕円ドーナツ状の円盤部である。フランジ24は、図1図2図9に示すように向かい合う幅広となった2つの把持部24a,24bを備え、さらに、把持部の先端面側には、複数のリブが形成されている。
【0034】
外筒2の形成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、環状ポリオレフィンのような各種樹脂が挙げられるが、その中でも成形が容易で耐熱性があることから、ポリプロピレン、環状ポリオレフィンのような樹脂が好ましい。封止部材であるシールキャップ5は、図1図2図10に示すように、閉塞端51と、ノズル収納部53とカラー収納部52を備えている。
【0035】
ノズル収納部53は、シールキャップ5の中央部に設けられ、先端が閉塞し円筒状である。ノズル収納部53の内径は、ノズル部22より若干大きく作製され、先端から基端まで基端に向かって若干テーパー状に拡径しており、基端開口からノズル部22全体を収納するものとなっている。ノズル収納部53の内側閉塞面(閉塞端51の内面)には、外筒2の先端開口部を液密に密封するためのシール部材55が収納されている。シール部材55としては、外筒2の先端開口部を液密に密封可能なように弾性部材であることが好ましい。シール部材の形成材料としては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム等の合成ゴム、オレフィン系エラストマーやスチレン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー等を使用することが好ましい。また、ノズル収納部53の外面には、外筒2のカラー23の内面に形成されたネジ溝(外筒側螺合部)25と螺合するためのネジ山(キャップ側螺合部)54が形成されている。これにより、外筒2とシールキャップ5は、ノズル収納部53の外面とカラー23の内面との間で螺合する。
【0036】
カラー収納部52は、ノズル収納部53を取り囲むように形成され先端が閉塞した円筒状体であり、カラー収納部52の内面とノズル収納部53の外面との間にカラー23を収納する。また、円筒状に形成されたカラー収納部52は、ノズル収納部53と同心状となっており、カラー収納部52の内径は、先端から基端までほぼ同一径となっている。また、図1に示すように、シールキャップ5の外側面(カラー収納部52の外周面)には、シールキャップ5を回転させる時に指等が滑らないようにするために縦方向に刻み加工が施されている。シールキャップ5の形成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、環状ポリオレフィンのような各種樹脂が挙げられるが、その中でも成形が容易で耐熱性があることから、ポリプロピレン、環状ポリオレフィンのような樹脂が好ましい。
【0037】
そして、本発明のプレフィルドシリンジ1は、図1および図2に示すように、上述した注射器10と、外筒2の先端開口部を封止する封止部材5とガスケット3間により形成される空間に充填された薬剤8とを備えている。薬剤8としては、どのような薬剤でもよいが、例えば、シクロスポリン、ベンゾジアゼピン系薬剤、塩化ナトリウム注射液、ビタミン剤、ミネラル類などの薬液、生理食塩水などの溶解液、さらには、抗生物質、タンパク製剤等の粉末状もしくは凍結乾燥薬剤あるいは液剤が使用される。本発明のプレフィルドシリンジは、特にバイアルなどに収納された薬剤を溶解する溶解液が充填されたプレフィルドシリンジに適している。このような溶解液としては、生理食塩水、注射用水、ブドウ糖液などが挙げられる。
【0038】
次に、本発明の注射器10ならびにプレフィルドシリンジ1の作用を図7および図8を用いて説明する。この実施例のプレフィルドシリンジ1は、例えば、ガスケット3にプランジャ4が装着されていない状態で提供される。そして、使用時にガスケット3にプランジャ4が装着される。
そして、プランジャ4の螺旋状リブ44をガスケット3の螺合部33の基端に挿入した後、プランジャ4を回転させることにより、螺旋状リブ44と螺合部33との螺合が進行する。さらにプランジャ4を回転させると、螺旋状リブ44は、抜け止め用環状リブ34のリブ欠損部35を通過し、収納部32内に進入し、プランジャの回転を継続することにより、図8に示すように、螺旋状リブ44の全体は、抜け止め用環状リブ34のリブ欠損部35を通過し、プランジャ4のヘッド部42の螺旋状リブ形成部位は、ガスケット3の収納部32内に収納された状態となる。これにより、プランジャ4のガスケット3への装着作業は、完了する。なお、装着作業において、螺旋状リブ44は、リブ欠損部35を通過することにより、環状リブを通過するものとなっており、抜け止め用環状リブ34を直接乗り越えるものではないため、両者が強く接触することがなく、装着作業時におけるプランジャの回転によりガスケットが回転することがない。
【0039】
そして、プランジャ4がガスケット3に装着された状態では、プランジャ4の螺旋状リブ44の基端面は、ガスケット3の抜け止め用環状リブ34の先端面と当接するため、プランジャ4のガスケット3からの離脱が規制される。また、プランジャ4のヘッド部42の螺旋状リブ形成部位がガスケット3の収納部32に収納された状態では、プランジャ4は、空転するものとなっている。さらに、通常状態にていずれの方向に回転しても、螺旋状リブ44の基端が、抜け止め用環状リブ34のリブ欠損部35に進入することはなく、プランジャ4の回転によるプランジャ4の離脱ならびにガスケット3の回転を抑制する。
【0040】
上述したようにプランジャ4の螺旋状リブ44の基端面はガスケット3の抜け止め用環状リブ34の先端面と当接して、プランジャ4のガスケット3からの離脱が規制されている。また、螺旋状リブ44が抜け止め用環状リブ34を押し広げるまで、プランジャ4が基端側に引かれた場合には、中間部環状リブ37が外筒2の内周面に当接することにより抜け止め用環状リブ34が所定以上押し広げられないように規制する。特に、抜け止め用環状リブ34にはリブ欠損部35が設けられているため、螺旋状リブ44が抜け止め用環状リブ34をより乗り越えやすくなっている。しかし、中間部環状リブ37が、螺旋状リブ44の基端面が抜け止め用環状リブ34の先端面との当接状態を維持することにより、プランジャ4の引き抜き動作に対抗し、プランジャ4の離脱が防止される。なお、中間部環状リブ37は、螺旋状突起36の先端付近についても押し広げられないように規制することができるので、仮に抜け止め用環状リブ34から螺旋状リブ44が引き抜かれても、螺旋状突起36と螺旋状リブ44との当接状態を維持して、プランジャ4が直ちには離脱しないようにすることもできる。
【0041】
なお、本発明の注射器10に用いられるプランジャは、図11ないし図13に示すような先端形状を有するプランジャ4aであってもよい。
このプランジャ4aと上述したプランジャ4との相違は、螺旋状リブの形態のみである。
プランジャ4aのヘッド部42aの先端部外面、具体的には、軸部43の先端部外面には、螺旋状リブ44が形成されている。また、この実施例におけるプランジャ4aにおいても、図11ないし図13に示すように、上述したガスケット3の螺合部33に対応するように、二条(二本)の螺旋状リブ44が形成されている。螺旋状リブ44は、プランジャ4aのヘッド部42aの先端部、具体的には、軸部43の先端に始端を有し、所定長基端側に延びるものとなっている。このような複数(具体的には、二条)の螺旋状リブを備えることが好ましいが、螺旋状リブは、一条(一本)のみであってもよい。
【0042】
そして、この実施例のプランジャ4aでは、螺旋状リブ44は、軸部43の周方向に延びる周方向延出部47を螺旋状リブ44の基端に有している。周方向延出部47は、軸部43の中心軸にほぼ直交するように所定長周方向に延びるものなっている。このため、実質的に、螺旋形態を持たないものなっている。そして、周方向延出部47の基端面は、ほぼ平坦面となっている。また、周方向延出部47は、ガスケット3の螺合部33および抜け止め用環状リブ34のリブ欠損部を通過可能なものとなっている。周方向延出部47の中心角は、30〜150度であることが好ましく、特に80〜100度が好ましい。なお、ここで言う周方向延出部の中心角とは、周方向延出部の始端および終端と軸部の中心軸とをそれぞれ結んだ2つの直線がなす角度のことである。
【0043】
そして、このプランジャ4aは、ガスケット3に上述したプランジャ4と同様に、プランジャ4aの螺旋状リブ44をガスケット3の螺合部33の基端に挿入した後、プランジャ4aを回転させることにより、螺旋状リブ44と螺合部33との螺合が進行する。さらにプランジャ4aを回転させると、螺旋状リブ44は、抜け止め用環状リブ34のリブ欠損部35を通過し、収納部32内に進入し、プランジャの回転を継続することにより、図13に示すように、螺旋状リブ44の全体は、抜け止め用環状リブ34のリブ欠損部35を通過し、プランジャ4aのヘッド部42aの螺旋状リブ形成部位は、ガスケット3の収納部32内に収納された状態となる。
【0044】
そして、プランジャ4aが、ガスケット3に装着された状態では、プランジャ4aの螺旋状リブ44(周方向延出部47)の基端面は、ガスケット3の抜け止め用環状リブ34の先端面と当接するため、プランジャ4aのガスケット3からの離脱が規制される。さらに、この実施例のプランジャ4aでは、螺旋状リブ44が基端に周方向延出部47を有している。この周方向延出部47の基端面は、図7に示すプランジャ4の螺旋状リブ44の基端面より大きい。このため、抜け止め用環状リブ34の先端面に当接するプランジャ4aの螺旋状リブ44の基端面が大きくなり、プランジャ4aが基端側に引かれた場合におけるガスケット3からのプランジャ4aの離脱がより確実に防止される。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の注射器は、以下のものである。
(1)先端が閉塞し基端が開口する筒状体であり、かつ、基端側より先端側に延びる内腔部を備えるガスケットと、先端開口部を備えかつ前記ガスケットを摺動可能に収納する外筒と、前記ガスケットの前記内腔部内に収納可能なヘッド部を有するプランジャとを備える注射器であって、前記プランジャは、前記ヘッド部の外面に設けられた螺旋状リブを備え、前記ガスケットは、前記内腔部の内面に、前記プランジャの前記螺旋状リブと螺合する螺旋状突起と、該螺旋状突起の付近かつ先端側に位置するプランジャ抜け止め用環状リブとを備え、さらに、前記内腔部は、前記抜け止め用環状リブより先端側に前記プランジャの前記ヘッド部の前記螺旋状リブ形成部位を収納するための収納部を備え、前記抜け止め用環状リブは、前記プランジャと前記ガスケットの螺合の進行により前記抜け止め用環状リブに到達した前記螺旋状リブを前記収納部に誘導するためのリブ欠損部を備え、前記ガスケットの外周面には、前記外筒の内径よりも大きな外径を有する先端側環状リブと、前記外筒の内径よりも大きな外径を有する基端側環状リブと、前記先端側環状リブと前記基端側環状リブ間に設けられた中間部環状リブを備え、さらに、前記中間部環状リブは、前記抜け止め用環状リブの側部となる部位に設けられている注射器。
【0046】
このため、プランジャの螺旋状リブが抜け止め用環状リブを押し広げるように、プランジャが強く基端側に引かれた時、抜け止め用環状リブに付与される基端側への変形力は、中間部環状リブに伝達される。中間部環状リブは、外筒の内周面に当接することにより、伝達される力に対抗し、抜け止め用環状リブの変形を阻害する。これにより、抜け止め用環状リブが所定以上押し広げられることが防止される。よって、螺旋状リブの基端面と抜け止め用環状リブの先端面との当接状態が維持され、プランジャが基端側に引かれた時におけるプランジャの離脱が防止される。また、抜け止め用環状リブにはリブ欠損部が設けられているため、プランジャの螺旋状リブが抜け止め用環状リブを乗り越えやすいものとなっている。もし、乗り越え時に、螺旋状リブがリブ欠損部付近の抜け止め用環状リブと強く接触することにより抵抗が発生した場合には、中間部環状リブが内側から押され、外筒に強く接触するため、ガスケットの回転抵抗も高くなる。このため、中間部環状リブは、プランジャの装着時、特に、螺旋状リブのリブ欠損部通過時におけるガスケットの回転を防止する。
【0047】
そして、上記注射器の実施形態としては、以下のものであってもよい。
(2) 前記中間部環状リブの外径は、前記先端側環状リブの外径および前記基端側環状リブの外径よりも小さいものとなっている上記(1)に記載の注射器。
(3) 前記中間部環状リブは、前記外筒の内径よりも大きな外径を有している上記(2)に記載の注射器。
(4) 前記中間部環状リブと前記外筒の内周面との接触面積は、前記先端側環状リブと前記外筒の内周面との接触面積および前記基端側環状リブと前記外筒の内周面との接触面積よりも小さいものとなっている上記(3)に記載の注射器。
(5) 前記中間部環状リブの縦断面形状は、頂部を有する山型形状である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の注射器。
(6) 前記中間部環状リブは、前記中間部環状リブの最も外側に突出した頂点部が、前記抜け止め用環状リブの基端側部分の側部に位置するように設けられている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の注射器。
【0048】
(7) 前記螺旋状突起の先端は、前記抜け止め用環状リブの前記リブ欠損部に隣接する部分に連結しており、前記螺旋状突起の先端部の先端側の面は、前記リブ欠損部の基端に隣接している上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の注射器。
(8) 前記ヘッド部は、軸部を備え、前記螺旋状リブは、前記軸部に設けられており、さらに、前記螺旋状リブの基端は、前記軸部の中心軸に対してほぼ直交するように、前記軸部の周方向に延びる周方向延出部となっている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の注射器。
(9) 前記注射器は、プレフィルドシリンジ用の注射器である上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の注射器。
本発明のプレフィルドシリンジは、以下のものである。
(10) 上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の注射器と、前記外筒の前記先端開口部を封止する封止部材と、前記外筒内に収納された薬剤とを備えるプレフィルドシリンジ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13