【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するための一態様として、本発明は、(a)カビで植物性タンパク質原料を発酵させて穀物発酵液を得る工程;(b)細菌で前記穀物発酵液を発酵させてイノシン−5’−モノリン酸(IMP)発酵液及びグルタミン酸発酵液を製造する工程;(c)前記IMP発酵液を電気透析する工程;及び(d)工程(b)のグルタミン酸発酵液と、工程(c)のIMP発酵液を混合する工程を含む天然中性風味調味素材の製造方法を提供する。
【0013】
図1に本発明による天然調味素材の製造方法を概略的に示す。
【0014】
具体的には、グルタミン酸発酵液、IMP発酵液及び穀物発酵液は、第1発酵工程であるカビ発酵、及び第2発酵工程である細菌発酵により製造され、それぞれの調味素材に適した反応又は処理工程である第3工程に供されることによって、それぞれの天然調味素材を製造することができる。
【0015】
従って、本発明は、天然調味素材を製造するために、天然IMP発酵液及びグルタミン酸発酵液を原料として使用し、第1発酵工程であるカビ発酵及び第2発酵工程である細菌発酵を含む2段階の発酵過程により製造されることを特徴とする。
【0016】
前記第1発酵工程であるカビ発酵は、タンパク質原料を用いてペプチド及びアミノ酸を製造する工程である。第1発酵工程であるカビ発酵だけを行う場合、多量のペプチド及びアミノ酸を製造することができるため、調味素材として使用され得るグルタミン酸の生産が可能である。しかし、旨味(umami taste)を出し得るIMP又はグアノシン一リン酸(GMP)などの核酸物質は生産できないという欠点がある。さらに、植物性タンパク質原料を使用する場合、単にタンパク質を分解する工程のみを経るため、生産できるペプチド及びアミノ酸がタンパク質自体の濃度又は含量に依存するという問題がある。例えば、豆を使用する場合、生産される発酵液中のグルタミン酸含量が10%未満であり、小麦グルテンを使用する場合、生産される発酵液中のグルタミン酸含量が15%未満である。
【0017】
一方、前記第2発酵工程である細菌発酵は、核酸及びグルタミン酸発酵液を製造する工程である。第2発酵工程である細菌発酵のみを行う場合、核酸及びグルタミン酸を効果的に生産することはできるが、他のアミノ酸及びペプチドの含量が1%未満の濃度で生産されるため、細菌発酵液は、旨味には優れているものの、調味素材として使用できないという欠点がある。言い換えれば、細菌発酵だけにより得られた発酵液を調味素材として使用するためには、発酵液を食品に適用できるように発酵液に追加成分を添加しなければならないという欠点がある。
【0018】
従って、本発明者らは、前記カビ発酵工程及び細菌による発酵過程の欠点を克服すると共に、任意の追加成分を添加することなく、製造された発酵液だけを用いることで、任意の化学工程を行わずに天然調味素材を製造する方法を開発した。
【0019】
前記2段階の発酵過程を用いて、核酸及びグルタミン酸発酵液を製造するためには、炭素源及び窒素源と共に様々な無機塩、アミノ酸及びビタミン類が必要である。特に、既存の技術では、酵母抽出物又は植物性タンパク質加水分解物(HVP)が窒素源として使用されたが、この場合、最終発酵液は異味と異臭があり、収率が多少低いという欠点があった。さらに、細菌発酵で使用される様々な物質に依存して全体的な風味だけでなく、最終培養液の調味成分の含量に大きな差が生じる。従って、本発明では、カビ発酵(第1発酵工程)により得られ、窒素源としての役割を果たしながら、多様なアミノ酸及びペプチドを含むことができる穀物発酵液(穀物タンパク質加水分解物)を、第2発酵工程である細菌発酵の基質として用いた。
【0020】
細菌を用いて核酸又はMSGを製造する既存の工程では、培養液中の核酸及びMSGの濃度、並びに収率を増加させることだけが主に重要視されていた。このような増加は、旨味を向上させるには効果的であるが、場合によっては、最終調味素材の風味に悪影響を与える場合がある。しかし、本発明の3段階を用いて製造した様々な天然調味素材は、様々なアミノ酸、糖類、有機酸及び無機イオン等だけでなく、旨味成分であるIMP及びグルタミン酸の濃度を調節することによって風味を向上させることができるという利点がある。
【0021】
以下、本発明の方法における天然調味素材の製造方法に関する各工程について説明する。
【0022】
本発明における工程(a)の方法は、カビで植物性タンパク質原料を発酵させて穀物発酵液を得る工程である。
【0023】
工程(a)では、カビ発酵が植物性タンパク質原料を用いて行われるため、様々なアミノ酸及びペプチドを含み、また、第2発酵工程である細菌発酵において窒素源として使用され得るグルタミンなどの成分を含む、穀物発酵液を得ることができる。具体的には、穀物原料を基質にしてカビを培養することで、タンパク質分解酵素を含有する細胞培養液を製造し、その後、これを植物性タンパク質原料に添加し、次いで加水分解することによって、穀物タンパク質加水分解物を製造することができる。その後、穀物タンパク質加水分解物を濾過し細胞を除去することで、穀物発酵液を製造することができる。該穀物タンパク質加水分解物は、第2発酵工程である細菌発酵に窒素源を供給するために、全窒素含量が2%(w/v)以上であってもよい。
【0024】
前記植物性タンパク質原料として、カビで発酵させることのできるものであれば、本発明において当業界に公知の任意の原料を使用してもよい。前記植物性タンパク質原料の例としては、これらに限定されるものではないが、大豆、トウモロコシ、米、小麦、小麦グルテンなどを含む。一方、小麦グルテンを使用する場合、多量のグルタミンを含有しているため、細菌発酵の収率を向上させることができるという利点がある。従って、好ましくは、前記植物性タンパク質原料として小麦グルテンを使用してもよい。
【0025】
前記カビとして、植物性タンパク質原料を発酵させて本発明の穀物発酵液を製造できるものであれば、本発明で使用され得る任意のカビを使用してもよい。本発明で使用されるカビは、アスペルギルス属(Aspergillus sp.)の微生物を使用するのが好ましく、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)又はアスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)の微生物を使用することがより好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0026】
本発明の一実施例において、特許文献1(PCT国際公開WO2011−046249号に対応)に記載されているように、アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)、CJCC_080124P(KCCM11026P)を使用して第1発酵工程であるカビ発酵を行った。
【0027】
本発明における用語「穀物発酵液」とは、カビで植物性タンパク質原料(穀物)を発酵させることによって得られる産物を意味する。前記穀物発酵液は、第2発酵工程である細菌発酵の基質として利用することができ、また、発酵後に濾過及び細胞除去過程により穀物発酵液を得て調味材料を製造する最終工程にも利用することができる。従って、前述のように穀物発酵液は、2つの目的のために用いることができる。
【0028】
工程(b)は、工程(a)で得られた前記穀物発酵液をカビで発酵させてIMP発酵液及びグルタミン酸発酵液を製造する工程である。具体的には、第1発酵工程であるカビ発酵により得られた前記穀物発酵液は、細菌発酵の基質として用いられ、IMP発酵液及びグルタミン酸発酵液は、炭素源を補給した培地で穀物発酵液を細菌発酵に供することによって製造され得る。
【0029】
前記細菌発酵は、当業界に公知の一般的な細菌培養法により行うことができ、好ましくは、フラスコ培養、スケールアップ培養及び本(main)培養の3段階から構成され得る。具体的には、スケールアップを達成するために、1次培養培地及び2次培養培地を用いてフラスコ培養及び拡大培養を行い、その後、持続的に追加糖を供給しながら、本培養培地で工程(a)の穀物発酵液を基質として用いて細菌発酵を行うことで、IMP発酵液及びグルタミン酸発酵液を得た。
【0030】
前記細菌発酵用培地には、グルコース、フルクトースなどの炭素源を含んでもよく、特に、グルタミン酸発酵液を製造するための培地には、炭素源として原糖を含んでもよい。前記培地には、様々な無機塩、ビタミン類、アミノ酸などを含んでもよく、IMP発酵液若しくはグルタミン酸発酵液を製造しようとする目的の発酵産物に合うように前記培地組成を変えてもよい。
【0031】
例えば、前記IMP発酵液を製造する場合、本培養培地には、グルコース、フルクトース、硫酸マグネシウム、リン酸、水酸化カリウム及び穀物発酵液が含まれてもよく、好ましくは、本培養培地には、培地の総体積に対して、4.4〜5.2wt%のグルコース、3.7〜4.3wt%のフルクトース、1.3〜1.7wt%の硫酸マグネシウム、2.0〜2.4wt%のリン酸、1.4〜1.8wt%の水酸化カリウム、及び0.5〜0.9wt%の穀物発酵液を含んでもよい。さらに、グルタミン酸発酵液を製造する場合、本培養培地には、グルコース、フルクトース、原糖、ベタイン、硫酸マグネシウム、リン酸カリウム及びリン酸を含んでもよく、好ましくは、培地の総体積に対して、0.5〜0.7wt%のグルコース、0.9〜1.1wt%のフルクトース、4.5〜5.5wt%の原糖、0.005〜0.015wt%のベタイン、0.3〜0.5wt%の硫酸マグネシウム、0.8〜1.0wt%のリン酸カリウム、及び0.2〜0.4wt%のリン酸を含んでもよい。
【0032】
さらに、前記培地には、必要に応じて少量の他の成分をさらに含んでもよく、例えば、硫酸鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、硫酸亜鉛、CAPA、ニコチンアミド(nicotinamide、NCA)、ビオチン、塩化カルシウム、チアミン、ビタミンCなどを含んでもよい。これらの成分を含む各培地の代表的な例を、表5〜8及び表9〜12に示した。
【0033】
工程(a)におけるカビによる発酵の結果として、前記植物性タンパク質原料は、アミノ酸及びペプチドに分解され、カルシウム、マグネシウム及びリン酸などの無機イオンと、ビタミン類などはタンパク質原料から溶出される。前記カビによる発酵で生成されるアミノ酸は、グルタミン、システイン、メチオニン、バリン、ロイシン 、イソロイシンなどを含み、工程(b)における細菌発酵の窒素源として利用され得る。特に、高濃度のグルタミンは、プリン生合成に必須の成分であり、高含量のイノシン酸及びグルタミン酸生成のための主要なプロモーターとして作用し得る。さらに、前記溶出された無機イオン及びビタミン類は、細菌発酵における細菌菌体の成長にも役に立てる。本発明の実施例において、前記カビ発酵により得られた産物を栄養源として使用する場合、細菌菌体の増殖及び成長がより速くなるのが確認された(
図4)。この結果は、本発明の2段階過程の利点をさらに示す。
【0034】
本発明における用語「細菌(bacteria)」とは、工程(a)で得られた穀物発酵液を発酵させて、IMP発酵液及びグルタミン酸発酵液を製造することのできる任意の細菌を意味する。本発明により天然調味素材を製造するために、non−GMO菌株を使用してもよい。本発明で使用される前記細菌は、発酵によりIMP及びグルタミン酸を生産できる当業者に公知の任意の細菌を使用してもよい。例えば、IMP発酵液を製造する場合は、バシラス属(Bacillus sp.)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium sp.)又はエシェリヒア属(Escherichia sp.)の微生物を使用してもよく、グルタミン酸発酵液を製造する場合は、コリネバクテリウム属、ミクロバクテリウム属(Microbacterium sp.)、バシラス属、ストレプトミセス属(Streptomyces sp.)、ペニシリウム属(Penicillium sp.)、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)、アルスロバクター属(Arthrobacter sp.)、セラチア属(Serratia sp.)、カンディダ属(Candida sp.)、クレブシエラ属(Klebsiella sp.)、エルウイニア属(Erwinia sp.)、パンテア属(Pantoea sp.)又はエンテロバクター属(Enterobacter sp.)の微生物を使用してもよい。より好ましくは、本発明で使用される前記細菌は、コリネバクテリウム属の微生物を使用してもよく、最も好ましくは、IMP発酵液を製造するためには、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)を使用してもよく、グルタミン酸発酵液を製造するためには、コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)を使用してもよい。さらに、細菌として、先行特許文献に記載されており、IMP及びグルタミン酸を製造する能力を有することが知られている、多様な細菌を使用してもよい。例えば、前記IMP発酵液は、特許文献2(PCT国際公開WO2005−095627号に対応)に記載された細菌であるバシラス属又はエシェリヒア属により製造され、前記グルタミン酸発酵液は、特許文献3(米国特許US7247459号に対応)に記載されたエンテロバクター属又はクレブシエラ属を使用して製造され得るが、これらに限定されるものではない。
【0035】
本発明の一実施例では、IMP発酵液を製造するために、特許文献4(WO国際公開WO2002−051984号に対応)に記載されているように、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス、CJIP009(KCCM−10226)を使用しており、グルタミン酸発酵液を製造するために、特許文献5に記載されているように、コリネバクテリウム・グルタミクム(ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム)、CJ971010(KFCC11039)を使用した。
【0036】
工程(b)における細菌発酵により得られた前記発酵液には、約150g/Lの固形分を有する。本発明では、前記細菌発酵により得られたIMP及び/又はグルタミン酸発酵液が、任意の追加成分を添加することなく、天然調味素材の製造工程に使用されることを特徴とするので、前記発酵液には、所望の成分であるIMP及びグルタミン酸が多量に含むべきである。
【0037】
従って、第1発酵工程であるカビ発酵及び第2発酵工程である細菌発酵により製造されたIMP発酵液における固形分中に、好ましくは、IMP含量が30%以上有してもよく、より好ましくは、50%以上であってもよいが、これらに限定されるものではない。従って、IMP発酵液中のIMP濃度が、好ましくは、50g/L〜150g/Lであってもよく、より好ましくは、70g/L〜130g/Lであってもよい。
【0038】
さらに、第1発酵工程であるカビ発酵により生産される産物にアミノ酸を含むので、IMPに比べ、高濃度及び高収率でグルタミン酸を得ることができる。製造されたグルタミン酸発酵液における固形分中に、グルタミン酸含量が、好ましくは、50%以上、より好ましくは、60%以上有してもよいが、これらに限定されるものではない。従って、グルタミン酸発酵液中のグルタミン酸濃度が、好ましくは、75g/L〜150g/Lであってもよく、より好ましくは、90g/L〜130g/Lであってもよい。
【0039】
前述のように、発酵液中にIMP及びグルタミン酸を高含量で含むため、前記発酵液を乾燥などの過程により粉末化した場合に食品に適宜添加することができる。
【0040】
本発明における用語「調味素材(flavor)」とは、食品の風味を向上させるために添加する物質を意味する。前記調味素材は、味成分によって様々な調味素材に分類することができる。調味素材の具体的例としては、中性風味(neutral)調味素材、牛肉調味素材、鶏肉調味素材、豚肉調味素材及びコク味(kokumi)調味素材を含む。それぞれの調味素材は、本発明の2段階の発酵過程により製造されたIMP発酵液及びグルタミン酸発酵液を用いて製造することができる。その中で、本発明における用語「中性風味調味素材(neutral flavor)」とは、旨味を最大化する一方で、他の風味は最小化させることで、マイルドでクリーンな味を出す調味素材を意味する。例えば、カノーラ油又はブドウ種子油が中性風味を有すると報告されている。
【0041】
本発明の発酵液は、任意の追加成分を添加せず、精製などの追加的な化学工程を経ることなく、天然調味素材の製造過程に利用されることを特徴とするので、発酵液を食品、例えば、加工食品に直接含ませるためには、全ての培地成分が食品原料でなければならない。従って、発酵の間に添加される全ての培地成分は、食品原料であることが好ましい。本発明の一実施例では、培地成分を食品原料として使用するために、β−アラニンをカルシウム−パントテネート(CA−pantothenate; CAPA)に代替しても、70g/L以上のIMP濃度を有するIMP発酵液が製造できることを確認した。従って、本発明による細菌発酵用培地は、カルシウム−パントテネートを含むのが好ましい。
【0042】
それぞれのIMP発酵液及びグルタミン酸発酵液は、工程(a)及び工程(b)を含む2段階の発酵過程により製造することができ、前記製造された発酵液は、最終的に3段階の反応を経て、様々な調味素材を製造する工程に使用することができる。前記IMP発酵液及びグルタミン酸発酵液を基に、発酵液を混合する過程、又は反応或いは下記に説明する電気透析工程において、異なる原料を使用したり、培地組成を多少変更したり、又は温度、圧力及び時間を含む条件の過程を調節することによって様々な天然調味素材、例えば、中性風味調味素材、及び牛肉、鶏肉、豚肉、コク味などの調味素材を製造することができる。前記製造された天然調味素材の中から、それぞれの食品の目的に適した調味素材を食品に添加して最適の味を出すことができる。
【0043】
工程(c)では、中性風味調味素材に適した物性を持たせるために、IMP発酵液を電気透析する工程を含む。前記IMP発酵液は、その発酵過程により硫酸、アンモニア、及びMgとMnなどの様々な金属イオンを含むので、前記IMP発酵液は、クリーンな風味を出す中性風味調味素材に適さない異味と異臭を有する。従って、前記電気透析工程により異味と異臭を除去して中性風味調味素材からのさっぱりしない後味又は苦味を排除することで、中性風味調味素材がよりクリーンで且つマイルドな風味を持つことを可能にし、天然風味調味素材に適した物性を持たせることができる。さらに、必須ではないが、電気透析工程は、前記IMP発酵液に比べ、比較的に異味と異臭が少ないグルタミン酸発酵液が、よりクリーンな味を出すことも可能にすることができる。
【0044】
本発明の一実施例において、中性風味調味素材を電気透析工程を用いて製造し、前記製造された調味素材と、電気透析工程を行わずに製造された試料との官能特性を比較した。その結果、製造された調味素材の金属性風味の強度、苦味、さっぱりしない後味の強度及び色の濃さが低下し、それによって、前記製造された調味素材がクリーンで且つマイルドな風味を有し、前記調味素材に対する全体的な嗜好度が増加したことが示唆された(
図5)。
【0045】
本発明における用語「電気透析(electrodialysis、ED)」とは、イオン成分を溶液から分離する工程である。理論的に、電界(electric field)にかけた電圧によって溶液中のイオン成分が陽イオン交換樹脂膜と陰イオン交換樹脂膜を選択的に通過するという物質伝達の原理に基づく方法である。これは、逆浸透圧及び限外濾過工程と共に最も頻繁に用いられる膜工程である。前記電気透析工程は、化学的工程として解釈されないので、本発明の目的による天然調味素材の製造工程に用いることができる。本発明の目的上、前記発酵液中のイオン、例えば、金属イオン、特に、一価と二価の陽イオン及び陰イオンを電気透析工程により除去することができ、それによって異臭が排除される。
【0046】
脱色及び脱臭により異味と異臭を除去する工程として活性炭を処理する工程がよく知られている。しかし、活性炭の処理は、活性炭の物理的吸収により脱色及び脱臭をもたらすことはできるが、全てのイオン成分を濾過して取り除くことはできないという欠点がある。従って、本発明において、前記電気透析工程によって、よりクリーンで且つマイルドな風味を有する天然中性風味調味素材を製造することができ、それによって、異味と異臭を除去することができる。
【0047】
一方、工程(c)では、電気透析工程の前に、発酵液を活性炭で処理する工程をさらに含んでもよい。さらに、前記電気透析工程は、活性炭で処理した発酵液を遠心分離又は濾過した後に行うことができる。前記発酵液を活性炭で処理した後、濾過助剤として珪藻土でさらに処理してもよい。さらに、以後に行う濾過工程の収率を上げるために、前記発酵液を活性炭で処理する前に、前記発酵液を加熱する前処理過程により細胞溶解を誘導してもよい。前記加熱工程は、好ましくは、70〜90℃で行ってもよく、加熱時間は、好ましくは、15分以上であってもよく、より好ましくは、15〜60分であってもよい。
【0048】
工程(d)は、天然中性風味調味素材を製造するために、前の工程で得られた前記グルタミン酸発酵液とIMP発酵液を混合する工程である。さらに、工程(d)は、前記穀物発酵液を混合する工程をさらに含んでもよい。
【0049】
工程(d)では、本発明の製造方法により前記IMP発酵液とグルタミン酸発酵液を混合することによって、最終的に、天然中性風味調味素材を製造することができる。この際、前記IMP発酵液とグルタミン酸発酵液の混合比率は、好ましくは、0.2:1〜5:1であってもよく、より好ましくは、0.5:1〜2:1であってもよく、及び最も好ましくは、1:1であってもよいが、これらに限定されるものではない。さらに、前記混合した発酵液に、穀物発酵液をさらに混合することができる。
【0050】
本発明の前記混合工程は、発酵液を濃縮し、前記濃縮産物を乾燥して粉末に製造する工程をさらに含んでもよい。前記発酵液を粉末に製造する工程は、発酵液を混合する前又は後に行ってもよく、好ましくは、前記発酵液を混合する前に行うことができる。前記乾燥は、好ましくは、噴霧乾燥又は真空乾燥によって達成することができる。前記発酵液は、最終的に、食品への添加に適した粉末又はペーストの形態に製造することができる。
【0051】
他の一態様として、本発明は、本発明の製造方法により製造された天然牛肉風味調味素材を提供する。さらに他の一態様として、本発明は、前記天然中性風味調味素材を含む食品組成物もまた提供する。
【0052】
本発明の前記製造方法により製造された天然中性風味調味素材は、クリーンで且つマイルドな風味を有することから、食品の味を最大化するために適切な食品に添加してもよく、動物の飼料に適用してもよい。例えば、前記天然中性風味調味素材は、スナックシーズニング(snack seasoning)、スープストック、市販用調味素材、ドレッシングなどに添加してクリーンな味を出すことができる。