特許第6091753号(P6091753)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6091753試料及びプローブの別々の変性によるハイブリダイゼーションの実施のための組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6091753
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】試料及びプローブの別々の変性によるハイブリダイゼーションの実施のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20170227BHJP
   C12Q 1/68 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   C12N15/00 A
   C12Q1/68 A
【請求項の数】18
【全頁数】63
(21)【出願番号】特願2011-551544(P2011-551544)
(86)(22)【出願日】2010年2月26日
(65)【公表番号】特表2012-518430(P2012-518430A)
(43)【公表日】2012年8月16日
(86)【国際出願番号】IB2010000659
(87)【国際公開番号】WO2010097707
(87)【国際公開日】20100902
【審査請求日】2013年2月26日
【審判番号】不服2015-18046(P2015-18046/J1)
【審判請求日】2015年10月2日
(31)【優先権主張番号】PA200900278
(32)【優先日】2009年2月27日
(33)【優先権主張国】DK
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2009/006548
(32)【優先日】2009年5月27日
(33)【優先権主張国】IB
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2009/005893
(32)【優先日】2009年5月27日
(33)【優先権主張国】IB
(31)【優先権主張番号】61/289,617
(32)【優先日】2009年12月23日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/155,683
(32)【優先日】2009年2月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】399126008
【氏名又は名称】ダコ・デンマーク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(72)【発明者】
【氏名】マチーセン, スティーン, ハウゲ
【合議体】
【審判長】 大宅 郁治
【審判官】 中島 庸子
【審判官】 松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第91/02088(WO,A1)
【文献】 特表2002−544506(JP,A)
【文献】 特表2009−502210(JP,A)
【文献】 高橋 豊三,DNAプローブの応用技術,シーエムシー,2000年 3月30日,p.36−39
【文献】 村松 他 編集,実験医学別冊 新 遺伝子工学ハンドブック,1998年 8月10日,p.202−203
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C12Q
EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸をハイブリダイズさせるインサイツの方法において、
− 二本鎖核酸を変性させるのに有効な量の少なくとも一種の極性非プロトン溶媒を含有する第一の水性組成物中で第一の核酸配列を含む第一の二本鎖核酸を変性させ、
− 二本鎖核酸を変性させるのに有効な量の少なくとも変性剤を含有する第二の水性組成物中で第二の核酸配列を含む第二の二本鎖核酸を変性させ、
− 第一の核酸配列を含む核酸及び第二の核酸配列を含む核酸をハイブリダイズさせるために8時間未満、第一及び第二の水性組成物を組み合わせることを含み、
ここで極性非プロトン溶媒は、
【化1】
からなる群から選択されるインサイツの方法。
【請求項2】
第二の水性組成物中の変性剤が極性非プロトン溶媒である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一及び/又は前記第二の二本鎖核酸を変性させる時間が1分、2分、3分、4分、5分、10分、15分、又は30分である請求項1及び請求項2の何れか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記第一の核酸配列を含む核酸及び前記第二の核酸配列を含む核酸を前記ハイブリダイズさせる際に前記第一及び第二の水性組成物を加熱及び冷却する工程を含む、請求項1から3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第一の核酸配列を含む核酸及び前記第二の核酸配列を含む核酸を前記ハイブリダイズさせるのに要する時間が1時間未満、30分未満、15分未満、又は5分未満である請求項1から4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
第一及び第二の水性組成物中の極性非プロトン溶媒の濃度が5%から10%(v/v)、10%から20%(v/v)、又は20%から30%(v/v)である請求項に記載の方法。
【請求項7】
第一及び第二の水性組成物中の極性非プロトン溶媒が無毒性である請求項に記載の方法。
【請求項8】
第一及び第二の水性組成物中の極性非プロトン溶媒が、17.7から22.0MPa1/2の範囲の分散溶解度パラメータ、13から23MPa1/2の範囲の極性溶解度パラメータ、及び3から13MPa1/2の範囲の水素結合溶解度パラメータを有する請求項に記載の方法。
【請求項9】
第一及び第二の水性組成物が、緩衝剤、塩、促進剤、キレート剤、洗浄剤、及びブロッキング剤からなる群から選択される少なくとも一種の更なる成分を更に含む請求項1から8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
促進剤がデキストラン硫酸であり、塩がNaCl及び/又はホスフェートバッファーである請求項9に記載の方法。
【請求項11】
デキストラン硫酸が5%から40%の濃度で存在し、NaClが0mMから1200mMの濃度で存在し、及び/又はホスフェートバッファーが0mMから50mMの濃度で存在する請求項10に記載の方法。
【請求項12】
デキストラン硫酸が10%から30%の濃度で存在し、NaClが300mMから600mMの濃度で存在し、及び/又はホスフェートバッファーが5mMから20mMの濃度で存在する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
促進剤が、ホルムアミド、DMSO、グリセロール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、ジエチレングリコール、エチレングリコール、グリコール、及び1,3プロパンジオールからなる群から選択され、緩衝剤がクエン酸バッファーである請求項9に記載の方法。
【請求項14】
ホルムアミドが0.1−5%の濃度で存在し、DMSOが0.01%から10%の濃度で存在し、グリセロール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、ジエチレングリコール、エチレングリコール、グリコール、及び1,3プロパンジオールが0.1%から10%の濃度で存在し、クエン酸バッファーが1mMから50mMの濃度で存在する請求項13に記載の方法。
【請求項15】
第一及び第二の水性組成物が40%の少なくとも一種の極性非プロトン溶媒、10%のデキストラン硫酸、300mMのNaCl、及び/又は5mMのホスフェートバッファーを含有する請求項9に記載の方法。
【請求項16】
第一及び第二の水性組成物が15%の少なくとも一種の極性非プロトン溶媒、20%のデキストラン硫酸、600mMのNaCl、及び10mMのクエン酸バッファーpH6.2を含有する請求項9に記載の方法。
【請求項17】
インサイツハイブリダイゼーション用途における標的核酸の別々の変性を実施するための、
【化2】
からなる群から選択される極性非プロトン溶媒を1%から95%(v/v)含有する組成物の使用。
【請求項18】
組成物が極性非プロトン溶媒を5%から10%(v/v)、10%から20%(v/v)、又は20%から30%(v/v)含有する、請求項17に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターゲット及びプローブを別々に変性させることを含むハイブリダイゼーション用途のための組成物及び方法に関する。一実施態様では、本発明は、DNA及びRNAのインビボ、インビトロ、及びインサイツでの分子的検査に使用できる。特に、本発明は、細胞診、組織診断、及び分子生物学の分野におけるDNA及びRNAの分子的検査に使用することができる。他の実施態様では、本発明はインサイツハイブリダイゼーション(ISH)に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
二本鎖核酸分子(例、DNA(デオキシリボ核酸)、DNA/RNA(リボ核酸)及びRNA/RNA)は、二重螺旋構造で結合する。この二重螺旋構造は、塩基が特定の様式(A+T/U又はG+C)でペアをなした場合の対鎖の塩基間の水素結合及び積み重なった塩基間の疎水性結合によって安定化される。相補的な塩基対合(ハイブリダイゼーション)は核酸が関わる全てのプロセスの中心である。
【0003】
ハイブリダイゼーションの基本的な例では、核酸プローブ又はプライマーは、試料中の標的核酸、例えばDNA又はRNAと結合するか又は「ハイブリダイズ」するように設計される。一つのタイプのハイブリダイゼーション応用であるインサイツハイブリダイゼーション(ISH)は、検体中の標的へのハイブリダイゼーションを含み、ここで、検体はインビボ、インサイツ又はインビトロで、例えばガラススライドに固定され又は付着されうる。プローブは標識され、蛍光又は明視野顕微鏡/スキャナーの使用によってプローブ・標的ハイブリッドの同定が可能になる。
【0004】
核酸ハイブリダイゼーションアッセイの効率と精度は、殆どは3つの主要な因子の少なくとも一つに依存する:a)変性条件、b)再生条件、及びc)ハイブリダイゼーション後の洗浄条件。
【0005】
プローブ又はプライマーが試料中の標的核酸に結合するためには、核酸の相補鎖が分離されねばならない。この鎖の分離工程は、「変性」と名付けられるが、二重螺旋の水素結合と疎水性結合を破壊する活動的状態を一般的に必要とする。プローブ及び標的分子は、別々に又は一緒に(共変性)変性しうる。別々の変性は形態をより良く保つ一方、共変性は具体的な工程数を減らすと議論されてきた。これらの理由により、別々な変性の工程は、ほとんどの場合分子細胞遺伝学の用途に使用され、共変性はほとんどの場合組織切片を分析する場合に使用される。
【0006】
伝統的なハイブリダイゼーション実験、例えばISHアッセイは、二本鎖核酸を変性させるためにホルムアミド含有溶液を使用する。ホルムアミドは、ゆるくかつ均質に結合した水和物分子を置換することにより、またワトソン・クリック結合部位の「ホルムアミド化」により塩基対を破壊する。従って、ホルムアミドは二本鎖の核酸及びアナログに不安定化作用を有する。
【0007】
ひとたび、核酸の相補鎖が分離されると、「再生」又は「再アニーリング」工程により、プライマー又はプローブが試料中の標的核酸へ結合することができるようになる。この工程は時に「ハイブリダイゼーション」工程とも呼ばれる。ホルムアミドは二本鎖の核酸及びアナログの変性を促進するが、ホルムアミドの無い水性変性溶液と比較して再生時間を著しく延長もする。実際、再アニーリング工程は伝統的なハイブリダイゼーション用途における最も時間を要する態様である。伝統的なハイブリダイゼーション時間の例を図1及び2に示す。
【0008】
更に、ホルムアミドは長い処理時間を上回る不利な点がある。ホルムアミドは、毒性で有害物質であり、使用と廃棄に対して厳しい規制を受ける。更に、高濃度のホルムアミドの使用は細胞、核、及び/又は染色体構造の形態破壊を引き起こしうるので、検出の最中に高いバックグランドシグナルを生じる。
【0009】
而して、従来のハイブリダイゼーション用途に関する不利を克服する必要性が存在する。この必要性に対応することにより、本発明は先行技術のハイブリダイゼーション用途に対して幾つかの潜在的な利点を提供する。
【発明の概要】
【0010】
先行技術のハイブリダイゼーション用途に対して次の利点の少なくとも一つを持つハイブリダイゼーション用途を生じる方法及び組成物を提供することが本発明の目的である:より低いバックグランド、より均質なバックグランド、試料形態の保存、より容易な自動化、より早い手順、及びより安全な(より毒性の少ない)試薬。本発明がそれらの目的を達成する一つの方法は、プローブと標識を別々に変性するための方法と組成物を提供することによる。
【0011】
本発明の組成物及び方法は任意のハイブリダイゼーション法に応用可能である。本発明の組成物及び方法は、例えばDNA、RNA、PNA、LNA、及びその合成及び天然アナログのような塩基対を使用してハイブリダイズし又は結合する任意の分子系にも適用可能である。
【0012】
本発明の核酸ハイブリダイゼーション方法及び組成物は、ゲノムDNA、染色体、染色体断片、遺伝子、及び染色体異常、例えば正常な状態又は疾患に関連する転座、欠損、増幅、挿入、変異、又は逆位のインビボ、インビトロ又はインサイツ分析に使用されうる。更に、その方法と組成物は、感染剤並びに例えばmRNAのようなRNA及びその相補DNA(cDNA)の発現レベルの変化の検出に有用である。
【0013】
他の用途は、メッセンジャーRNA(mRNA)、ウイルスRNA、ウイルスDNA、低分子干渉RNA(siRNA)、核内低分子RNA(snRNA)、非翻訳RNA(ncRNA、例えばtRNA及びrRNA)、転移メッセンジャーRNA(tmRNA)、マイクロRNA(miRNA)、piwi相互作用(piwi-interacting)RNA(piRNA)、長非翻訳RNA、核小体低分子RNA(snoRNA)、アンチセンスRNA、二本鎖RNA(dsRNA)、メチレーション及び他の塩基修飾、一塩基多型(SNPs)、コピー数多型(CNVs)、及び例えば単独で又は非抄紙機核酸と組み合わせて、放射性同位体、蛍光分子、ビオチン、ジゴキシゲニン(DIG)又は抗原で標識された核酸のインビボ又はインビトロ分析を含む。
【0014】
本発明の核酸ハイブリダイゼーション方法及び組成物は、PCR、インサイツPCR、ノーザンブロット、サザンブロット、フローサイトメトリー、オートラジオグラフィー、蛍光顕微鏡、化学発光、免疫組織化学、仮想核型、遺伝子アッセイ、DNAマイクロアレイ(例えば、アレイ比較的ゲノムハイブリダイゼーション(アレイCGH))、遺伝子発現プロファイリング、遺伝子ID、タイリングアレイ、ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、及びインサイツハイブリダイゼーション、例えばFISH、SISH、CISHのような技術を使用する核酸のインビボ又はインビトロ分析に有用である。本発明の組成物及びキットは、骨髄スメア、血液スメア、パラフィン包埋組織調製物、酵素的に解離された組織試料、骨髄、羊膜細胞、サイトスピン調製物、インプリント等のようなインビトロ及びインビボ試料に使用されうる。
【0015】
一実施態様では、本発明は、分子と標的に対して別々の変性工程を使うことで、少なくとも一つの分子(例えば、プローブ)を標的(例えば、生物学的試料)へハイブリダイズするための方法及び組成物を提供する。他の実施態様では、本発明は、伝統的な変性バッファー中の例えば70%のホルムアミドから本発明の組成物及び方法においては50%、25%、15%、10%、5%、2%、1%又は0%v/vのホルムアミドとし、かかる変性工程においてホルムアミドの使用を排除し、又はそれへの依存性を低減しうる。よって、ある態様では、本発明は、そうした伝統的なハイブリダイゼーションアッセイにおけるホルムアミドの使用に関係した主要な毒性問題及び時間のかかる再生工程を含む伝統的なハイブリダイゼーションアッセイにおける幾つかの不具合を克服する。
【0016】
本発明の一態様は、ハイブリダイゼーション用途におけるプローブ及び標的を別々に変性させるための組成物及び溶液である。標的を変性させるための組成物はプローブを変性させるための組成物と同じ成分を含み得、又は二つの組成物は異なる構成成分を含みうる。本発明に使用される組成物は、二本鎖ヌクレオチド配列を変性させるのに有効な量の少なくとも一種の極性非プロトン溶媒を含有する水性組成物を含みうる。二本鎖ヌクレオチド配列を変性させるために有効な量は、ハイブリダイゼーションを可能にする量である。例えば、極性非プロトン溶媒がハイブリダイゼーションをなすのに効果的かどうかを試験する一方法は、極性非プロトン溶媒が、例えば実施例1におけるように、ここに記載のハイブリダイゼーション方法及び組成物に使用される場合、検出可能なシグナル及び/又は増幅された核酸産物を生じるかどうかを決定することである。
【0017】
極性非プロトン溶媒の有効量の非限定的例は、例えば約1%から約95%(v/v)を含む。ある実施態様では、極性非プロトン溶媒の濃度は5%から60%(v/v)である。他の実施態様では、極性非プロトン溶媒の濃度は10%から60%(v/v)である。更に他の実施態様では、極性非プロトン溶媒の濃度は30%から50%(v/v)である。1%から5%、5%から10%、10%、10%から20%、20%から30%、30%から40%、40%から50%、50%から60%、又は60%から70%(v/v)の濃度もまた適している。ある実施態様では、極性非プロトン溶媒は0.1%、0.25%、0.5%、1%、2%、3%、4%、又は5%(v/v)の濃度で存在するであろう。他の実施態様では、極性非プロトン溶媒は7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、10%、10.5%、11%、11.5%、12%、12.5%、13%、13.5%、14%、14.5%、15%、15.5%、16%、16.5%、17%、17.5%、18%、18.5%、19%、19.5%、又は20%(v/v)の濃度で存在するであろう。
【0018】
本発明の別の態様によれば、極性非プロトン溶媒を含有する水性組成物は減少した毒性を有している。例えば、ハイブリダイゼーション用途で使用される伝統的な溶液よりも毒性の少ない組成物は、組成物がホルムアミドを含まない条件、又は組成物が25%未満、又は10%未満、又は5%未満、又は2%未満、又は1%未満、又は0.5%未満、又は0.1%未満、又は0.05%未満、又は0.01%未満のホルムアミドを含む条件の組成物を含みうる。一実施態様では、毒性の少ない組成物は、組成物がジメチルスルホキシド(DMSO)を含まない条件、又は組成物が25%、10%、5%、2%未満、又は1%未満、又は0.5%未満、又は0.1%未満、又は0.05%未満、又は0.01%未満のDMSOを含む条件の組成物を含みうる。
【0019】
本発明の一態様では、本発明での使用のために適した極性非プロトン溶媒は、そのハンセン溶解度パラメータに基づき選択されうる。例えば、適切な極性非プロトン溶媒は、17.7から22.0MPa1/2の分散溶解度パラメータ、13から23MPa1/2の極性溶解度パラメータ、及び3から13MPa1/2の水素結合溶解度パラメータを有しうる。
【0020】
本発明の一態様によれば、本発明において使用される適切な極性非プロトン溶媒は環状化合物である。環状化合物は環状基本構造を有する。例にはここに開示された環状化合物を含む。他の実施態様では、極性非プロトン溶媒は以下の式1−4から選択されうる:

ここで、XはOであり、R1はアルキルジイルである。
【0021】
本発明の他の態様によれば、本発明において使用される適切な極性非プロトン溶媒は以下の式5から選択されうる:
ここで、Xは任意であり、存在する場合は、O又はSから選択され;
ここで、Zは任意であり、存在する場合は、O又はSから選択され;
ここで、A及びBは独立してO又はN又はS又はアルキルジイルの一部又は第1級アミンであり;
ここで、Rはアルキルジイルであり;
ここで、YはO又はS又はCである。
【0022】
式5に係る適切な極性非プロトン溶媒の例を以下の式6−9に提供する:
【0023】
本発明の更なる他の実施態様によれば、極性非プロトン溶媒はラクトン、スルホン、 ニトリル、サルファイト、又はカーボネート官能性を有する。かかる化合物は、その比較的高い比誘電率、高い双極子モーメント及び水への溶解度によって区別される。
【0024】
本発明の他の態様によれば、ラクトン官能性を有する極性非プロトン溶媒はγ−ブチロラクトン(GBL)であり、スルホン官能性を有する極性非プロトン溶媒はスルホラン(SL)であり、ニトリル官能性を有する極性非プロトン溶媒はアセトニトリル(AN)であり、サルファイト官能性を有する極性非プロトン溶媒はグリコールサルファイト/エチレンサルファイト(GS)であり、カーボネート官能性を有する極性非プロトン溶媒はエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、又はエチレンチオカーボネート(ETC)である。本発明の更に他の態様では、本発明の組成物及び方法は、極性非プロトン性溶媒を含有し、但し極性非プロトン性溶媒はアセトニトリル(AN)又はスルホラン(SL)ではない。
【0025】
更に他の態様によれば、本発明は、核酸をハイブリダイズする方法において、
− 第一核酸配列を、二本鎖ヌクレオチド配列を変性させるのに有効な量の少なくとも一種の極性非プロトン溶媒を含有する第一水性組成物と組合わせ、
− 第二核酸配列を、二本鎖ヌクレオチド配列を変性させるに有効な量の少なくとも一種の変性剤を含有する第二水性組成物と組合わせ、
− 第一及び第二核酸配列を、第一及び第二核酸配列をハイブリダイズするために少なくとも十分な時間の間、組合わせ
ることを含む方法を開示する。
【0026】
他の更なる態様によれば、本発明は、核酸配列をハイブリダイズする方法において、
− 第一核酸配列を、二本鎖ヌクレオチド配列を変性させるのに有効な量の少なくとも一種の極性非プロトン溶媒を含有する第一水性組成物と組合わせ、
− 第二核酸配列と二本鎖ヌクレオチド配列を変性させるのに有効な量の少なくとも一種の変性剤を上記第一核酸配列に、第一及び第二核酸配列をハイブリダイズさせるのに少なくとも十分な時間の間、適用する
ことを含む方法を開示する。
【0027】
一実施態様では、第二水性組成物中の変性剤は極性非プロトン性溶媒である。一実施態様では、第一及び第二水性組成物は同一成分を含有する。他の実施態様では、第一及び第二水性組成物は異なる成分を含む。
【0028】
一実施態様では、第一核酸配列は生物学試料中にある。他の実施態様では、生物学試料は細胞学又は組織学試料である。
【0029】
一実施態様では、第一核酸配列は単鎖配列であり、第二核酸配列は二本鎖配列である。他の実施態様では、第一核酸配列は二本鎖配列であり、第二核酸配列は単鎖配列である。更に他の実施態様では、第一及び第二核酸配列は両方とも二本鎖である。更に他の実施態様では、第一及び第二核酸配列は両方とも一本鎖である。
【0030】
一実施態様では、第一核酸配列を変性させるために十分な時間が与えられる。一実施態様では、第一核酸配列を変性させるために十分なエネルギーが与えられる。他の実施態様では、第二核酸配列を変性させるために十分な時間が与えられる。他の実施態様では、第二核酸配列を変性させるために十分なエネルギーが与えられる。他の実施態様では、第一及び第二核酸配列をハイブリダイズさせるために十分な時間が与えられる。他の実施態様では、第一及び第二の核酸をハイブリダイズさせるために十分なエネルギーが与えられる。
【0031】
本発明の更に他の態様によれば、エネルギーは、水性組成物と核酸配列を加熱することにより提供される。よって、本発明の方法は、水性組成物と核酸配列を加熱し冷却する工程を含みうる。
【0032】
本発明の更なる態様では、十分な量のエネルギーを提供する工程は、マイクロ波、温浴、熱板、熱電線、ペルチェ素子、誘導加熱、又は加熱ランプの使用により実施される加熱工程を含む方法を含む。
【0033】
更なる態様によれば、本発明はハイブリダイゼーション用途における標的及び試料を別々に変性させるための、1から95%(v/v)の少なくとも一種の極性非プロトン溶媒を含有する組成物の使用に関する。
【0034】
別の他の態様によれば、本発明はプローブ及び標的が別々に変性されるハイブリダイゼーションアッセイに使用するための本発明の組成物を含んでなるキットに関する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、ホルムアルデヒド固定パラフィン包埋組織片(組織検体)で共変性した一次標識FISHプローブを用いた単一遺伝子座検出の典型的な時間経過を示す。バーは、伝統的なハイブリダイゼーション溶液を使用して実施されたハイブリダイゼーションアッセイを表す。左側の最初のバーは脱パラフィン工程を表し;二番目のバーは加熱前処理工程を表し;三番目のバーは消化工程を表し;四番目のバーは変性及びハイブリダイゼーション工程を表し;五番目のバーはストリンジェンシー洗浄工程を表し;六番目のバーはマウント工程を表す。
図2図2は、細胞検体と共変性された一次標識FISHプローブを用いた単一遺伝子座検出の典型的な時間経過を示す。バーは、伝統的なハイブリダイゼーション溶液を使用して実施されたハイブリダイゼーションアッセイを表す。左側の最初のバーは固定工程を表し;二番目のバーは変性及びハイブリダイゼーション工程を表し;三番目のバーはストリンジェンシー洗浄工程を表し;四番目のバーはマウント工程を表す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
A.定義
本発明の文脈において、次の用語は次の通りに理解されなければならない:
「生物学的試料」は、一又は複数の細胞又は細胞断片の任意のインビボ、インビトロ、又はインサイツ試料として理解されなければならない。これは、例えば単細胞又は多細胞生物、組織片、細胞試料、染色体スプレッド、精製核酸配列、例えば生物学ベースのシステム又は化学合成、マイクロアレイ、又は核酸チップの他の形態によって作製された人工的に作製された核酸配列でありうる。一実施態様では、試料は哺乳動物試料、例えば ヒト、マウス、ネコ、ラット、又はイヌ試料である。
【0037】
「核酸」、「核酸鎖」、及び「核酸配列」は、天然に生じるヌクレオチドから形成された骨格を有するオリゴマー又はポリマー及び/又は非標準核酸塩基及び/又は非標準骨格を含む核酸アナログ(例えば、ペプチド核酸(PNA)又はロックド核酸(LNA))、又は核酸の任意の誘導体化形態を含む、塩基対形成を使用して結合又はハイブリダイズする任意のものを意味する 。
【0038】
ここで使用される場合、「ペプチド核酸」又は「PNA」なる用語は、限定するものではないが、例えば全てが出典明示によりここに援用される米国特許第5539082号、第5527675号、第5623049号、第5714331号、第5718262号、第5736336号、第5773571号、第5766855号、第5786461号、第5837459号、第5891625号、第5972610号、第5986053号、第6107470号、第6201103号、第6228982号及び第6357163号、国際公開第96/04000号又はそこで引用されている文献の任意のものにおいてペプチド核酸として言及され又は請求項に記載されたオリゴマー又はポリマーセグメントの任意のものを含むペンダント核酸塩基と共にポリアミド骨格を有する合成ポリマー(天然に生じるもの及び修飾されたもの)を意味する。例えばPNA上のプリン又はピリミジン塩基のようなペンダント核酸塩基は、例えばPCT/US02/30573又はそこに引用された文献の任意のものに教示されているリンカーの一つのようなリンカーを介して骨格に連結されうる。一実施態様では、PNAはN−(2−アミノエチル)−グリシン)骨格を有している。PNAは、PCT/US02/30573又はそこに引用された文献の任意のものに教示されているようにして合成され(場合によっては標識され)うる。PNAは、PNA骨格が変わらないので、DNA及びRNAと堅固にかつ高い配列特異性をもってハイブリダイズする。よって、短いPNAプローブは長いDNA又はRNAプローブに匹敵する特異性を示しうる。PNAプローブはまた相補DNA又はRNAへの結合において大なる特異性を示しうる。
【0039】
ここで使用される場合、「ロックド核酸」又は「LNA」なる用語は、少なくとも一又は複数のLNAサブユニットを含むオリゴマー又はポリマーを意味する。ここで使用される場合、「LNAサブユニット」なる用語は、リボースの2’−酸素を4’−炭素と結合させるメチレン架橋を含むリボヌクレオチドを意味する。一般に、Kurreck, Eur. J. Biochem., 270:1628-44 (2003)を参照のこと。
【0040】
核酸及び核酸アナログの例はまた二本鎖及び一本鎖デオキシリボヌクレオチド(DNA)、リボヌクレオチド(RNA)、そのα−アノマー型、その合成及び天然アナログ等々を含むヌクレオチドモノマーのポリマーを含む。核酸鎖は全体がデオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)、その合成又は天然アナログ、又はその混合物から構成されうる。DNA、RNA、又はここに定義される他の核酸を本発明の方法及び組成物において使用することができる。
【0041】
「極性非プロトン溶媒」は、雰囲気温度又はその近傍、例えば約20℃で、少なくとも5%(体積)の水溶性、約2デバイ単位以上の双極子モーメントを有し、略中性のpH、つまりpH5から9の範囲、又は6から8の範囲で有意な水素交換を受けない有機溶媒を意味する。極性非プロトン溶媒は以下に検討される ハンセン溶解度パラメータに従って定義されるものを含む。
【0042】
「アルキルジイル」は、親のアルカン、アルケン、又はアルキンの二つの異なった炭素原子から一つの水素原子を除去することによって誘導された二つの一価ラジカル中心を有する飽和又は不飽和、分枝、直鎖又は環状炭化水素基を意味する。
【0043】
「水溶液」は、例え少量の水でさえ、水を含む溶液として理解されなければならない。例えば、1%の水を含む溶液は水溶液として理解されなければならない。
【0044】
「ハイブリダイゼーション用途」、「ハイブリダイゼーションアッセイ」、「ハイブリダイゼーション実験」、「ハイブリダイゼーション手順」、「ハイブリダイゼーション技術」、「ハイブリダイゼーション法」等は、核酸のハイブリダイゼーションを含む任意のプロセズを意味するものと理解されなければならない。別の定義がなされない限り、「ハイブリダイゼーション」及び「ハイブリダイゼーション工程」という用語は、ハイブリダイゼーション手順の再アニーリング工程並びに再変性工程(もし存在すれば)を意味するものと理解されなければならない。
【0045】
「ハイブリダイゼーション組成物」は、例えば核酸配列にプローブを結合させるためにハイブリダイゼーション手順を実施するための本発明の水溶液を意味する。ハイブリダイゼーション組成物は、例えば少なくとも一種の極性非プロトン溶媒、少なくとも一つの核酸配列、及びハイブリダイゼーション溶液を含みうる。ハイブリダイゼーション組成物は、酵素又は例えば生物学的試料中の核酸を増幅させるためのデオクシヌクレオシド三リン酸(dNTPs)のような他の成分を含まない。
【0046】
「ハイブリダイゼーション溶液」は、本発明のハイブリダイゼーション組成物において使用される水溶液を意味する。ハイブリダイゼーション溶液は以下に詳細に検討され、例えば緩衝剤、促進剤、キレート剤、塩、洗浄剤、及びブロッキング剤を含みうる。
【0047】
「ハンセン溶解度パラメータ」及び「HSP」は次の凝集エネルギー(溶解度)パラメータを意味する:(1)原子間力から誘導された非極性相互作用を測定する分散溶解度パラメータ(d、「Dパラメータ」);(2)永久双極子−永久双極子相互作用を測定する極性溶解度パラメータ(d、「Pパラメータ」);及び(3)電子交換を測定する水素結合溶解度パラメータ(d、「Hパラメータ」)。ハンセン溶解度パラメータは更に以下に定義する。
【0048】
「反復配列」は、哺乳動物ゲノムの成分を急速に再アニールする(およそ25%)及び/又は中間的に再アニールする(およそ30%)ことを意味するものと理解されなければならない。急速に再アニールする成分は、通常はタンデムで見出される(例えばサテライトDNA)小さい(数ヌクレオチド長)高度に反復性の配列を含む一方、中間的に再アニールする成分は散在反復DNAを含む。散在反復配列はSINEs(短い散在反復配列)又はLINEs(長い散在反復配列)の何れかとして分類され、その双方が霊長類においてレトロトランスポゾンとして分類される。SINEs及びLINEsは、限定しないが、Alu−リピート、Kpn−リピート、ジヌクレオチドリピート、トリヌクレオチドリピート、テトラヌクレオチドリピート、ペンタヌクレオチドリピート及びヘキサヌクレオチドリピートを含む。AluリピートはヒトSINEsの大部分を構成し、ヘッドトゥーテール二量体として配された二つの類似配列からなるおよそ280から300bpのコンセンサス配列によって特徴付けられる。SINEs及びLINEsに加えて、リピート配列は染色体の末端の染色体テロメア及び染色体セントロメアにもまた存在し、これは、染色体の中心領域にのみ存在する別のリピート配列を含む。しかしながら、ゲノム全体にわたって無作為に分散しているSINEs及びLINEsとは異なり、テロメア及びセントロメアリピート配列は染色体のある領域内に局在化している。
【0049】
「非毒性」及び「減少した毒性」は、ホルムアミドの毒性標識に関して、"Directive 1999/45/EC of the European Parliament and of the Council of 31 May 1999 concerning the approximation of the laws, regulations及びadministrative provisions of the Member States relating to the classification, packaging, and labelling of dangerous preparations" (ecb.jrc.it/legislation/1999L0045EC.pdf) (「Directive」)に従って定義される。Directiveに従えば、毒性は次の分類順を使用して定義される:T+「非常に毒性」;T「毒性」、C「腐食性」、Xn「有害」、Xi「刺激性」。リスクフレーズ(「Rフレーズ」)は分類された毒性のリスクを記述する。ホルムアミドはT(毒性)及びR61(胎児に害を及ぼしうる)としてリストされている。次の化学物質の全てがホルムアミドよりも毒性が少ないものとして分類されている:アセトニトリル(Xn、R11、R20、R21、R22、R36);スルホラン(Xn、R22);γ−ブチロラクトン(Xn、R22、R32);及びエチレンカーボネート(Xi、R36、R37、R38)。本出願の出願時には、エチレントリチオカーボネート及びグリコールサルファイトは現在は分類されていない。
【0050】
ここで使用される「変性」は、核酸又はタンパク質が、化合物、例えば強酸又は塩基、濃縮無機塩、有機溶媒の適用により、及び/又は例えば熱のような外部ストレスにより、その三次及び/又は二次構造を減少させたり又は失わせたりする過程を意味する。これは、変性が核酸に関連し、上記核酸が二本鎖である場合、その鎖が部分的に又は完全に分離することを意味する。これは、更に、二本鎖核酸の結合相互作用が、変性によって十分に弱められ、例えば、別の相補鎖とのハイブリダイゼーションが、変性が無い場合よりも効率的に起こり得ることを意味する。
【0051】
「変性剤」は、水に比して核酸の相補鎖の相互結合親和性を低減させることのできる任意の物質を意味する。変性剤の非限定的な典型例は、ホルムアミド、尿素、DMSO及びテトラアルキルアンモニウムハロゲン化物又はその組み合わせのような有機溶媒を含む。変性条件は配列依存性であり、異なる環境パラメータ下で異なる。融解温度(T)は、変性剤の存在下で相補的塩基対合を減少させるために変性条件を調節するために使用できる。Tは標的配列の50%が完全に適合したプローブとハイブリダイズする(定義されたイオン強度及びpH下での)温度である。DNA−DNAハイブリッドでは、Tmは以下の式から近似できる。
=81.5℃+16.6(logM)+0.41(%GC)−0.61(%form)−500/L
ここで、Mは一価カチオンの濃度、%GCはDNA中のグアノシン及びシトシンヌクレオチドの割合、%formはハイブリダイゼーション溶液中のホルムアミドの割合であり、Lは塩基対のハイブリッド長である。Tは各1%のミスマッチに対し約1℃減少する。
【0052】
ここで使用される「別々の変性」は、標的核酸がプローブの非存在下で変性し、及び/又はプローブが標的核酸の非存在下で変性させられるハイブリダイゼーション法を意味する。例えば、標的は第一溶液中で変性され得、プローブは第二溶液中で変性され得、ついで変性されたプローブは、標的とプローブをハイブリダイズするのに十分な時間の間、変性された標的と組み合わされうる。他の例では、標的は第一溶液中で変性され得、ついで標的とプローブをハイブリダイズするのに十分な時間の間、プローブと組み合わされうる。また更なる例では、プローブは第一溶液中で変性させら得、ついで標的とプローブをハイブリダイズするのに十分な時間の間、標的と組み合わされうる。
【0053】
B.溶媒選択
本発明に使用される適切な極性非プロトン溶媒は、そのハンセン溶解度パラメータに基づいて選択することができる。ある溶媒に対してHSPを実験的に決定し及び/又は計算するための方法は当該分野で知られており、HSPは1200を越える化学物質に対して報告されている。
【0054】
例えば、Dパラメータは、屈折率に基づいて合理的な精度で計算することができ、又は臨界温度及びモル体積を樹立した後、類似のサイズ、形状、及び組成の既知の溶媒と比較したチャートから誘導することができる。Pパラメータは、式1を使用して既知の双極子モーメント(例えば、McClellan A.L., Tables of Experimental Dipole Moments (W.H. Freeman 1963)を参照)から推定することができる:
式1:δ=37.4(双極子モーメント)/V1/2
ここで、Vはモル体積である。Hパラメータを計算するための式はない。その代わりに、Hパラメータは通常グループ寄与に基づいて決定される。
【0055】
HSP特徴付けは、球の中心の実験的に決定された適切な参照溶媒のHSPを用いて、簡便には球標示を使用して可視化される。球半径(R)は、「良好な」相互作用が起こるのを尚可能にする参照溶媒のHSPからの最大の許容可能な変動を示す。良好な溶媒は球の内部にあり悪いものは外である。その各HSP値に基づく2つの溶媒間の距離 Raは、式2を使用して決定することができる:
式2:(R)=4(δD1−δD2)+(δP1−δP2)H1−δH2)
ここで、添え字1は参照試料を示し、添え字2は試験化学物質を示し、全ての値はMPa1/2である。良好な溶解度は、Rが溶解度球の実験的に決定された半径Rよりも少ないことを必要とする。2つの溶媒間の相対的なエネルギー差、つまりRED数は、式3に示すように、Rに対するRの比をとることによって計算することができる。
式3:RED=R/R
1.0未満のRED数は高親和性を示し;1.0に等しいか近いRED数は境界条件を示し;漸次高くなるRED数は漸次低くなる親和性を示している。
【0056】
ある実施態様では、本発明の極性非プロトン溶媒のDパラメータは、17.7から22.0MPa1/2である。このような相対的に高いDパラメータは一般に環状構造及び/又は硫黄又はハロゲンを持つ構造の溶媒に関連する。直鎖状化合物は本発明で使用されるための最も適した溶媒にはなり得ないが、そのP及びHパラメータが以下に検討する範囲内にあれば考慮されうる。Dパラメータは式2において4倍されているので、限界はRの半分である。また、約21又はそれ以上のD値はしばしば固体の特徴であることに留意されなければならない。
【0057】
ある実施態様では、本発明の極性非プロトン溶媒のPパラメータは13から23MPa1/2である。そのような指数的に高いPパラメータは、一般に、高い双極子モーメント及びおそらくは相対的に低いモル体積を有する溶媒に関連する。例えば、60cc/モルに近いVでは、双極子モーメントは4.5と3.1の間である。90cc/モルに近いVでは、双極子モーメントは5.6と3.9の間でなければならない。
【0058】
ある実施態様では、本発明の極性非プロトン溶媒のHパラメータは3から13MPa1/2である。一般に、アルコール基を有する極性非プロトン溶媒は、かかる溶媒のHパラメータが余りに高いので、本発明の組成物及び方法においては有用ではない。
【0059】
極性非プロトン溶媒のモル体積は、それが3つのハンセン溶解度パラメータ全ての評価に入るので、また関係している。モル体積が小さくなるにつれて、液体は急速に蒸発する傾向にある。モル体積が大きくなるにつれ、液体が上述のD及びPパラメータの範囲の固体領域に入る傾向がある。よって、本発明の極性非プロトン溶媒は、HSP空間における液体/固体境界にむしろ近い。
【0060】
ある実施態様では、本発明の極性非プロトン溶媒は、ラクトン、スルホン、ニトリル、サルファイト、及び/又はカーボネート官能性を有する。かかる化合物は、その相対的に高い比誘電率、高い双極子モーメント、及び水への溶解度によって区別される。ラクトン官能性を有する例示的な極性非プロトン溶媒はγ−ブチロラクトン(GBL)であり、スルホン官能性を有する例示的な極性非プロトン溶媒はスルホラン(SL;テトラメチレンスルフィド−ジオキシド)であり、ニトリル官能性を有する例示的な極性非プロトン溶媒はアセトニトリル(AN)であり、サルファイト官能性を有する例示的な極性非プロトン溶媒はグリコールサルファイト/エチレンサルファイト(GS)であり、カーボネート官能性を有する例示的な極性非プロトン溶媒はエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、又はエチレントリチオカーボネート(ETC)である。これらの例示的な溶媒の構造を以下に提供し、そのハンセン溶解度パラメータ、RED数、及びモル体積を表1にまとめる。
【0061】
【0062】
本発明で使用されうる他の適切な極性非プロトン溶媒は環状化合物、例えばε−カプロラクトンある。また、置換ピロリジノン及び5−又は6−員環の窒素を含む関連構造、及び二つのニトリル基、又は一つの臭素及び一つのニトリル基を持つ環状構造がまた本発明の使用に適している場合がある。例えば、N−メチルピロリドン(以下に示す)は本発明の方法及び組成物における使用に適している極性非プロトン溶媒でありうる。
他の適切な極性非プロトン溶媒は環ウレタン基(NHCOO−)を含みうる。しかしながら、必ずしもかかる化合物の全てが適切な訳ではない。当業者はここに記載の本発明の組成物及び方法に有用な化合物をスクリーニングすることができる。本発明における使用に適していよう例示的な化学物質を以下の表2及び3に記載する。
【0063】
【0064】
表2はそのハンセン溶解度パラメータに基づき本発明の組成物及び方法において使用される潜在的な化学物質の例示的なリストを記載する。勿論、他の化合物、例えば表3に記載されたものもこれらの要件を満たしうる。
【0065】
表2及び3に列挙される化学物質の幾つかは、従来からハイブリダイゼーション及び/又はPCR用途に使用されてきた(例えば、ジメチルスルホキサイド(DMSO)はハイブリダイゼーション及びPCR用途に使用され、スルホラン(SL)、アセトニトリル(AN)、2−ピロリドン、ε−カプロラクタム、及びエチレングリコールはPCR用途に使用されてきた)。よって、幾つかの実施態様では、極性非プロトン溶媒は、DMSO、スルホラン、アセトニトリル、2−ピロリドン、ε−カプロラクタム、又はエチレングリコールではない。しかしながら、ほとんどの極性非プロトン溶媒は、従来のハイブリダイゼーション用途には使用されてこなかった。その上、そうした化合物が使用された時でさえ、先行技術では、それらが、本出願で開示したように、そのようなハイブリダイゼーション用途においてプローブ及び標識を別々に変性することに有利に使用されうることは認識されていなかった。
【0066】
加えて、表2及び3に列挙される化学物質の全てが、本発明の組成物及び方法においての使用に適しているわけではない。例えば、DMSOは、ハンセン溶解度パラメータ(HSPs)が上に記載された範囲に入るので、表2に列挙されているが、DMSOは、本発明の組成物及び方法のプローブと標的を別々に変性させるためには機能しない。しかしながら、提供された実施例の一つにおける化合物の試験を含むここで提供されるガイダンスを使用して適切な化合物をスクリーニングすることは当業者の技量の範囲内である。例えば、ある実施態様では、適切な極性非プロトン溶媒は、上に記載された範囲のHSPsと上記の式1−9に示された構造を有している。
【0067】
C.組成物、バッファー、及び溶液
(1)変性溶液
プローブ及び標的を別々に又は共に変性させるための伝統的な組成物は当該分野で知られている。かかる溶液は、例えば緩衝剤、促進剤、キレート剤、塩、洗浄剤、及びブロッキング剤を含みうる。
例えば、緩衝剤は、SSC、HEPES、SSPE、PIPES、TMAC、TRIS、SET、クエン酸、リン酸バッファー、例えばリン酸カリウム又はピロリン酸ナトリウム等を含みうる。緩衝剤は0.01×から50×の濃度で、例えば、0.01×、0.1×、0.5×、1×、2×、5×、10×、15×、20×、25×、30×、35×、40×、45×、又は50×で存在しうる。典型的には、緩衝剤は0.1×から10×の濃度で存在する。
【0068】
促進剤は、ポリマー、例えばFICOLL、PVP、ヘパリン、デキストラン硫酸、タンパク質、例えばBSA、グリコール、例えばエチレングリコール、グリセロール、1,3プロパンジオール、プロピレングリコール、又はジエチレングリコール、その組合せ、例えばデンハート溶液及びBLOTTO、及び有機溶媒、例えばホルムアミド、ジメチルホルムアミド、DMSO等を含みうる。促進剤は、1%から80%又は0.1×から10×の濃度、例えば、0.1%(又は0.1×)、0.2%(又は0.2×)、0.5% (又は0.5×)、1%(又は1×)、2%(又は2×)、5%(又は5×)、10%(又は10×)、15%(又は15×)、20%(又は20×)、25%(又は25×)、30%(又は30×)、40%(又は40×)、50%(又は50×)、60%(又は60×)、70%(又は70×)、又は80%(又は80×)で存在しうる。典型的には、ホルムアミドは25%から75%の濃度で、例えば、25%、30%、40%、50%、60%、70%、又は75%で存在する一方、DMSO、デキストラン硫酸、及びグリコールは5%から10%の濃度で、例えば、5%、6%、7%、8%、9%又は10%で存在する。
【0069】
キレート剤は、EDTA、EGTA等を含みうる。キレート剤は0.1mMから10mMの濃度で、例えば、0.1mM、0.2mM、0.5mM、1mM、2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、又は10mMで存在しうる。典型的には、キレート剤は0.5mMから5mMの濃度で、例えば、0.5mM、1mM、1.5mM、2mM、2.5mM、3mM、3.5mM、4mM、4.5mM、又は5mMで存在する。
【0070】
塩は塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸マグネシウム等を含みうる。塩は1mMから750mMの濃度で、例えば、1mM、5mM、10mM、20mM、30mM、40mM、50mM、100mM、200mM、300mM、400mM、500mM、600mM、700mM、又は750mMで存在しうる。典型的には、塩は10mMから500mMの濃度で、例えば、10mM、20mM、30mM、40mM、50mM、100mM、200mM、300mM、400mM、又は500mMで存在する。
【0071】
洗浄剤は、Tween、SDS、トリトン、CHAPS、デオキシコール酸等を含みうる。洗浄剤は0.001%から10%の濃度で、例えば、0.001、0.01、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10%で存在しうる。典型的には、洗浄剤は0.001%から10%の濃度で、例えば、0.01%、0.02%、0.03%、0.05%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、又は1%で存在する。
【0072】
核酸ブロッキング剤は、例えば酵母tRNA、ホモポリマーDNA、変性サケ精液DNA、ニシン精液DNA、全ヒトDNA、COT1 DNA等を含みうる。ブロッキング核酸は、0.05mg/mLから100mg/mLの濃度で存在しうる。しかしながら、本発明の組成物及び方法は、驚くべきことに、ブロッキング剤を必要としないで著しく減少したバックグランドレベルを示す。
【0073】
ハイブリダイゼーション用途のための伝統的な変性溶液に関する文献には様々な変形例が存在している。例えば、伝統的な溶液は5x又は6xのSSC、0.01MのEDTA、5×デンハート液、0.5%のSDS、及び100mg/mLの剪断変性サケ精液DNAを含みうる。他の伝統的な溶液は、50mMのHEPES、0.5MのNaCl、及び0.2mMのEDTAを含みうる。RNA検出のための生物学的検体でのFISHの典型的な溶液は、例えば2xSSC、10%のデキストラン硫酸、2mMのバナジル−リボヌクレオシド複合体、50%のホルムアミド、0.02%のRNAse不含有BSA、及び1mg/mLの大腸菌tRNAを含みうる。DNA検出のための生物学的検体でのFISHの典型的な溶液は、例えば2xSSC、10%のデキストラン硫酸、50%のホルムアミド、及び例えば0.3mg/mLのサケ精液DNA又は0.1mg/mLのCOT1 DNAを含みうる。他の典型的な溶液は、40%のホルムアミド、10%のデキストラン硫酸、30mMのNaCl、5mMのリン酸バッファー、Alu−PNA(ブロッキングPNA)又はCOT−1 DNAを含み得、ある場合には0.1μg/μLの全ヒトDNA(THD)を含みうる。更なる変性バッファーは、「ハイブリダイゼーション条件」と題したセクションで以下に検討する。
【0074】
本発明の組成物は、少なくとも一種の極性非プロトン溶媒と組み合わせた、上述の伝統的な組成物の何れかを含みうる。伝統的な組成物は伝統的な変性溶液において使用されるものと同じ濃度で存在し得、又はより高いかもしくはより低い濃度で存在し得、あるいは完全に省かれてもよい。
【0075】
例えば、本発明の組成物が塩、例えばNaCl及び/又はリン酸バッファーを含む場合、塩は、0−1200mMのNaCl及び/又は0−200mMのリン酸バッファーの濃度で存在しうる。ある実施態様では、塩の濃度は、例えば0mM、15mM、30mM、45mM、60mM、75mM、90mM、105mM、120mM、135mM、150mM、165mM、180mM、195mM、210mM、225mM、240mM、255mM、270mM、285mM、又は300mMのNaCl及び5mMのリン酸バッファー、又は600mMのNaCl及び10mMのリン酸バッファーでありうる。他の実施態様では、塩の濃度は、例えば0.1×、0.2×、0.3×、0.4×、0.5×、0.6×、0.7×、0.8×、0.9×、1×、2×、3×、4×、5×、6×、7×、又は8×SSCで存在する濃度でありうる。
【0076】
本発明の組成物がデキストラン硫酸、グリコール、又はDMSOのような促進剤を含む場合、デキストラン硫酸は5%から40%の濃度で存在し得、グリコールは0.1%から10%の濃度で存在し得、DMSOは0.1%から10%でありうる。ある実施態様では、デキストラン硫酸の濃度は10%又は20%であり得、エチレングリコール、1,3プロパンジオール、又はグリセロールの濃度は1%から10%でありうる。ある実施態様では、DMSOの濃度は1%でありうる。ある実施態様では、水性組成物は促進剤としてDMSOを含まない。ある実施態様では、水性組成物は促進剤としてホルムアミドを含まず、又はホルムアミドを含むが、但し、25%未満、又は10%未満、又は5%未満、又は2%未満、又は1%未満、又は0.5%未満、又は0.1%未満、又は0.05%未満、又は0.01%未満である。
【0077】
本発明の組成物がクエン酸を含む場合、濃度は1mMから100mMの範囲であり得、pHは5.0から8.0の範囲であり得る。ある実施態様では、クエン酸の濃度は10mM及びpHは6.2でありうる。
【0078】
本発明の組成物は、例えば細胞膜への非特異的結合を減少させる薬剤、例えばサケ精液又は少量の全ヒトDNAを含み得、又は例えばそれらは標的への例えば反復配列の結合をブロックするためのブロッキング剤、例えば多量の全ヒトDNA又はリピートリッチ化DNA又は特異的ブロッキング剤、例えばPNA又はLNA断片及び配列を含みうる。これらの薬剤は0.01−100μg/μL又は0.01−100μMの濃度で存在しうる。例えば、ある実施態様では、これらの薬剤は0.1μg/μLの全ヒトDNA、又は0.1μg/μLの非ヒトDNA、例えばニシン精液、サケ精液、又はウシ胸腺DNA、又は5μMのブロッキングPNAであろう。しかしながら、本発明の組成物及び方法は、ブロッキング試薬を必要とすることなく、有意に減少したバックグランドレベルを示す。
【0079】
本発明の一態様は、ハイブリダイゼーション用途で、プローブ及び標的を別々に変性するための組成物又は方法である。標的を変性するための組成物はプローブを変性させる組成物と同じ成分を含有し得、又は2つの組成物は異なる成分を含有しうる。本発明において使用される組成物は、二本鎖ヌクレオチド配列を変性させるのに有効な量の少なくとも一種の極性非プロトン溶媒を含む水性組成物を含む。二本鎖ヌクレオチド配列を変性させるのに有効な量はハイブリダイゼーションを可能にする量である。例えば、極性非プロトン溶媒の量がハイブリダイゼーションを可能にするのに有効かどうかを試験する一方法は、実施例1のようにここに記載のハイブリダイゼーション方法及び組成物に使用される場合、極性非プロトン溶媒が検出可能なシグナル及び/又は増幅された核酸産物を生じるかどうかを決定することである。
【0080】
極性非プロトン溶媒の有効量の非限定的な例は、例えば約1%から約95%(v/v)を含む。ある実施態様では、極性非プロトン溶媒の濃度は5%から60%(v/v)である。他の実施態様では、極性非プロトン溶媒の濃度は10%から60%(v/v)である。更に他の実施態様では、極性非プロトン溶媒の濃度は30%から50%(v/v)である。1%から5%、5%から10%、10%、10%から20%、20%から30%、30%から40%、40%から50%、50%から60%、又は60%から70%(v/v)の濃度がまた適切である。ある実施態様では、極性非プロトン溶媒は0.1%、0.25%、0.5%、1%、2%、3%、4%、又は5%(v/v)の濃度で存在する。他の実施態様では、極性非プロトン溶媒は7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、10%、10.5%、11%、11.5%、12%、12.5%、13%、13.5%、14%、14.5%、15%、15.5%、16%、16.5%、17%、17.5%、18%、18.5%、19%、19.5%、又は20%(v/v)の濃度で存在する。
【0081】
本発明の組成物がハイブリダイゼーションアッセイにおいて使用される場合、それらは一又は複数の核酸プローブを更に含みうる。プローブは直接的に又は間接的に検出可能な化合物、例えば酵素、発色団、蛍光色素、及びハプテンで標識されうる。DNAプローブは0.1から100ng/μLの濃度で存在しうる。例えば、ある実施態様では、プローブは1から10ng/μLの濃度で存在しうる。PNAプローブは0.5から5000nMの濃度で存在しうる。例えば、ある実施態様では、プローブは5から1000nMの濃度で存在しうる。
【0082】
一実施態様では、本発明の組成物は、40%の極性非プロトン溶媒(v/v)(例えばエチレンカーボネート、「EC」)、10%のデキストラン硫酸、300mMのNaCl、5mMのリン酸バッファー、及び1−10ng/μLプローブの混合物を含有する。本発明の他の例示的な組成物は、15%のEC、20%のデキストラン硫酸、600mMのNaCl、10mMのリン酸バッファー、及び0.1μg/μlの全ヒトDNAの混合物を含有する。更に他の例示的な組成物は、15%のEC、20%のデキストラン硫酸、600mMのNaCl、10mMのクエン酸pH6.2、及び0.1μg/μLの非ヒトDNA(例えばニシン精子、サケ精液、又はウシ胸腺)又は0.5%ホルムアミド又は1%グリコール(例えばエチレングリコール、1,3プロパンジオール、又はグリセロール)を含む。更に他の例示的な組成物は、15%EC、20%デキストラン硫酸、600mMのNaCl、及び10mMのクエン酸、pH6.2を含有する。
【0083】
(2)極性非プロトン溶媒
異なった極性非プロトン溶媒は本発明の組成物に異なった性質を付与しうる。例えば、極性非プロトン溶媒の選択は、ある種の極性非プロトン溶媒は経時的に分解しうるので、組成物の安定性に寄与しうる。例えば、極性非プロトン溶媒のエチレンカーボネートは比較的安定な分子であるエチレングリコールと、水と相互作用して炭酸を形成しうる二酸化炭素に分解し、本発明の組成物の酸性を変える。理論に拘束されるものではないが、エチレンカーボネートの分解時のpH変化及び長期保存によるDNA損傷は本発明の組成物をハイブリダイゼーションに対して効果的ではないものにすると思われる。しかしながら、安定性は、典型的には約pH7.4で使用される伝統的なリン酸バッファーの代わりにpH6.2のバッファーとしてクエン酸を添加し、及び/又は例えば0.1%から10%、又は0.5%から5%、例えば1%、2%、3%等の濃度でエチレングリコールを添加することにより、組成物のpHを減少させることによって改善することができる。例えば、10mMのクエン酸バッファーでは、本発明の組成物はおよそ8ヶ月の間、2−8℃で安定している。安定性はまた組成物を低い温度(例えば−20℃)に保存すると、改善されうる。
【0084】
また、ある種の極性非プロトン溶媒は、ある条件下で本発明の組成物を多相系に分離せしめうる。多相系が得られる条件は、異なった極性非プロトン溶媒に対して異なりうる。しかしながら、一般に、極性非プロトン溶媒の濃度が増加すると、相の数が増加する。例えば、低濃度のエチレンカーボネート(つまり、20%未満)を含む組成物は一相として存在しうるが、より高濃度のエチレンカーボネートを含有する幾つかの組成物は二、又は三相にさえ分離しうる。例えば、20%デキストラン硫酸、600mMのNaCl、及び10mMのクエン酸バッファー中に15%のエチレンカーボネートを含有する組成物は室温で単一相として存在するが、10%デキストラン硫酸、300mMのNaCl、及び5mMのリン酸バッファー中に40%のエチレンカーボネートを含有する組成物は室温で粘性のある下相(全容量のおよそ25%)と粘性の少ない上相(全容量のおよそ75%)からなる。しかしながら、例えば40%極性非プロトン溶媒(例えば、10mMのクエン酸バッファー中の40%EC)又は50%極性非プロトン溶媒(例えば、2×SSC中の50%EC)は一相系である。
【0085】
他方、ある種の極性非プロトン溶媒は低濃度においてさえ二相で存在しうる。例えば、スルホラン、γ−ブチロラクトン、エチレントリチオカーボネート、グリコールサルファイト、及びプロピレンカーボネートは、室温で10、15、20、又は25%(20%のデキストラン硫酸、600mMのNaCl、10mMのクエン酸バッファー)の濃度で二相として存在する。対照的に、デキストラン硫酸が低い割合であるか、又はデキストラン硫酸が無い極性非プロトン溶媒組成物は、室温で一相のままである(例えば、2×SSC中の20%GBL又は2×SSC中の20%SL)。
【0086】
本発明の組成物の温度を調節することにより相の数を変更することもまたできる場合がある。一般に、温度が上昇すると、相の数は減少する。例えば、2−8℃では、10%デキストラン硫酸、300mMのNaCl、及び5mMのリン酸バッファー中で40%のエチレンカーボネートを含有する組成物は三相系に分離しうる。
【0087】
組成物中のデキストラン硫酸及び/又は塩の濃度を調節することにより相の数を変更することもまたできる場合がある。一般に言えば、デキストラン硫酸濃度(伝統的な濃度が10%である)及び/又は塩濃度の低下は相の数を減少させうる。しかしながら、組成物中の特定の極性非プロトン溶媒及びその濃度に応じて、単一相をたとえ高濃度の塩及びデキストラン硫酸ででも製造できる。例えば、低量のEC(例えば15%、10%、又は5%)を含有する組成物は、デキストラン硫酸及び塩濃度を増加させることにより、一相系を尚維持しながら、良好に作用しうる。特定の実施態様では、HER2遺伝子DNAプローブ、CEN7 PNAプローブ、15%のEC、20%のデキストラン硫酸、600mMのNaCl、及び10mMのリン酸バッファーを含有する組成物は、−20℃で凍結されている。他の実施態様では、組成物は−20℃で液体である。
【0088】
ある極性非プロトン溶媒は、ある相又は他の相においてプローブに強いシグナルを生じさせうる。例えば、40%のグリコールサルファイトは下相に強いシグナルを生じ、上相にシグナルを生じない。同様に、あるタイプのプローブはある相又は他の相に強いシグナルを生じうる。例えば、PNAプローブは上相より下相に強いシグナルを示す傾向がある。
【0089】
従って、本発明の多相系は、試料の異なった側面を簡便に検査するために使用することができる。
【0090】
ハイブリダイゼーション用途は、本発明の一相組成物を用いて、本発明の多相組成物の個々の相を用いて、又は本発明の多相組成物中の相の何れか一又は複数の混合物で実施されうる。例えば、一相系では、ある容量の試料がハイブリダイゼーションにおいて使用するために抽出されうる。多相系では、ハイブリダイゼーションに使用するために関心のある相(例えば上、下、又は中間相)からある容量の試料を抽出することができる。あるいは、多相系中の相を、ハイブリダイゼーションでの使用に対して混合試料のある容量を抽出する前に混合することができる。しかしながら、多相系は、組成物に応じて、強く不均等な局所的バックグラウンド染色を生じうる。低量のホルムアミドの添加は一相系におけるバックグラウンドを低減させる一方、高濃度(例えば40%)の極性非プロトン溶媒を含む多相系には殆ど効果がない。
【0091】
ハイブリダイゼーション工程で使用される組成物は、別々の変性工程で使用される組成物とは異なりうるため、本発明の組成物のデキストラン硫酸及び塩の濃度は重要ではない。実際、デキストラン硫酸、塩、及びバッファーを欠いた本発明の組成物は、プローブ及び標的が共変性させられるハイブリダイゼーション用途に比して、プローブ及び標的が別々に変性させられるハイブリダイゼーション用途において、より低いバックグランド(例えば、1+1/2から2程度低いスコア)及びより均質なバックグランドを生じる。しかしながら、バッファー(例えば、40%ECと10mMのクエン酸バッファー)を含む組成物は、バッファリングされていない組成物よりも、僅かに高いバックグランド(例えば、1/2程度高いスコア)を生じる。一実施態様では、EC及びバッファー(例えば、15%ECと10mMのクエン酸バッファー)を含む組成物はデキストラン硫酸無しで機能した。
【0092】
本発明の組成物を使用して標的及びプローブが別々に変性させられるハイブリダイゼーション用途は、伝統的なバッファーを使用して標的及びプローブが共変性させられるハイブリダイゼーション用途よりも、より均質なシグナル強度及びより低く均質なバックグランド染色を生み出す。
【0093】
(3)特定の応用に対する最適化
本発明の組成物は、特定の応用に対して結果を最適化するために変更しうる。例えば、極性非プロトン溶媒、塩、促進剤、ブロッキング剤、及び/又は水素イオン(つまりpH)の濃度を、特定の応用に対する結果を改善するために変更しうる。
【0094】
例えば、極性非プロトン溶媒の濃度を、シグナル強度及びバックグラウンド染色を改善するために変更しうる。一般に、極性非プロトン溶媒の濃度が増加するにつれて、シグナル強度が増加し、バックグラウンド染色が減少する。例えば、15%のECを含有するプローブを変性させるための組成物は、5%のECを含有する組成物より強いシグナルと少ないバックグラウンドを示す傾向がある。しかしながら、シグナル強度は、塩及び/又はデキストラン硫酸の濃度が増加させられる場合、低濃度の極性非プロトン溶媒(例えば0%から20%)を有する組成物に対して改善されうる。例えば、塩濃度が伝統的な塩濃度(つまり、およそ1200mMのNaCl、20mMのリン酸バッファー)のおよそ3から4倍上昇させられると、5%から10%のECで強いシグナルが観察されうる。同様に、低濃度の極性非プロトン溶媒が使用されると、高濃度のデキストラン硫酸が良好なシグナル及びバックグラウンド強度を維持するために一般に必要とされる。
【0095】
従って、塩及びデキストラン硫酸の濃度を、シグナル強度及びバックグラウンド染色を改善するためにまた変更しうる。一般に、プローブを変性させるための組成物中の塩及びデキストラン硫酸の濃度が増加すると、シグナル強度が増加し、バックグラウンドが減少する。例えば、伝統的な濃度(つまり300mMのNaCl、5mMのリン酸バッファー)のおよそ2から4倍の塩濃度は、強いシグナルと低いバックグラウンドを生じる。しかしながら、驚いたことに本発明の組成物は、たとえ塩が完全に存在しない場合でも使用できる。シグナル強度は、促進剤及び/又は極性非プロトン溶媒の濃度を増加させることによって非塩条件下で改善することができる。
【0096】
同様に、プローブを変性させるための組成物は、デキストラン硫酸濃度が0%から20%まで増加するとシグナル強度の増加を示す。しかしながら、良好なシグナルは0%のデキストラン硫酸濃度においてさえ観察されうる。シグナル強度は、極性非プロトン溶媒及び/又は塩濃度を増加させることによって低デキストラン硫酸条件下で改善することができる。
【0097】
また、本発明の組成物において使用されるプローブのタイプを、結果を改善するために変更しうる。例えば、本発明のある態様では、DNA/DNAプローブの組合せが、本発明の組成物におけるDNA/PNAプローブの組合せより少ないバックグラウンドを示し得、又はその逆もしかりである。他方、PNAプローブは、低塩及び/又は低極性非プロトン溶媒濃度下でDNAプローブよりも強いシグナルを示す傾向がある。実際、PNAプローブは極性非プロトン溶媒が存在しない場合にもシグナルを示す一方、DNAプローブは、極性非プロトン溶媒がないと弱いシグナルを示すかシグナルを示さない。
【0098】
本発明の更なる最適化は、例えば、標的を変性するために標識されたプローブを含まない特異的な変性バッファーを使用するなどして、プローブ及び標的の変性をお互い別々にすることである。そうした別々な変性のための本発明の組成物の使用は、バックグランド染色を減少させ、バックグランド及びシグナル強度双方に関して染色をより均質にすることが見いだされた。更に本発明の組成物は、別々の変性が低温で起きることを可能にし、それは例えば、試料の形態及び核酸配列構造を保持するために都合が良い。上記で検討された通り、本発明の組成物はまた例えば伝統的なホルムアミド変性バッファーよりも毒性が少ない。当業者には明らかであるが、標的のためのそうした変性組成物は、極性非プロトン溶媒の代わりに、尿素、DMSO又はホルムアミドのようなより伝統的な変性剤で構成されるかもしれない一方、プローブのための変性組成物はより伝統的な変性剤の代わりに、極性非プロトン溶媒を含みうる。次にプローブ及び標的は、例えばPCT/IB09/005893に記載された速いハイブリダイゼーションバッファーと共にハイブリダイゼーション工程において組み合わされうる。
【0099】
D.応用、方法、及び使用
(1)分析試料
本発明の方法及び組成物は、細胞診、組織診断、又は分子生物学の分野における標的及びプローブの別々の変性を含む全てのタイプのハイブリダイゼーション用途において完全に又は部分的に使用されうる。一実施態様によれば、本発明の方法における第一又は第二の核酸配列が生物学的試料中に存在する。かかる試料の例は、組織試料、細胞調製物、細胞断片調製物、及び単離された又はリッチ化された細胞成分調製物を含む。試料は、様々な組織、例えば乳房、結腸直腸、前立腺、肺、頭頸部、胃、膵臓、食道、肝臓、及び膀胱、又は他の関連する組織及びその腫瘍、任意の細胞懸濁液、血液試料、細針生検、腹水、痰、腹膜洗浄液、尿、糞便、細胞掻爬、細胞スミア、サイトプシン又は細胞プレップ細胞から由来しうる。
【0100】
試料は標準的なプロトコルを使用して単離され、プロセシングされうる。細胞断片調製物は、例えば細胞ホモジナイズ、凍結融解処理又は細胞溶解により得ることができる。単離された試料は、試料を得る目的に応じてまた部位に常套的な手段に応じて、多くの異なった方法で処理されうる。しばしば、試料は後での試料分析のために組織を保存するために様々な試薬を用いて処理され、あるいは、試料は直接分析されうる。試料を保存するために広く使用されている方法の例は、ホルマリン固定とそれに続くパラフィン包埋及び凍結保存である。
【0101】
分裂中期スプレッドでは、細胞培養物を、一般に、コルセミド、又は他の適切な紡錘極破壊剤で処理して、分裂中期における細胞サイクルを停止させる。ついで、細胞を固定し、顕微鏡スライド上に染みつけ、ホルムアルデヒドで処理し、洗浄し、エタノールで脱水する。ついで、プローブを加え、以下に検討する技術の何れかによって試料を分析する。
【0102】
細胞診は生物学的試料からの個々の細胞及び/又は染色体スプレッドの検査を含む。試料の細胞診は、細胞の検体を得ることで始まり、これは、典型的には、頸部検体の場合におけるように、擦過し、拭き取り、又は領域をブラシでこすることにより、又は胸部腔、 膀胱、又は脊柱から得られるもののように、体液を集めることにより、又は内部の腫瘍の場合のように、穿刺吸引又は細針生検により、なすことができる。一般的な手作業での細胞調製では、試料は液体懸濁材料に移され、液体中の細胞がついで直接又は遠心分離ベースのプロセシング工程によってガラス顕微鏡スライド上へ検査のために移される。典型的な自動化された細胞調製では、フィルターアセンブリが液体懸濁液に配され、フィルターアセンブリが細胞を分散させると共にフィルター上の細胞を捕捉する。ついで、フィルターを除去し、顕微鏡スライドに接触させて位置させる。ついで、細胞を、以下で検討する技術の何れかによる分析前に顕微鏡スライドに固定する。
【0103】
細胞試料を使用する伝統的なDNAハイブリダイゼーション実験では、検体を含むスライドをホルムアルデヒドバッファー中に浸漬し、洗浄し、ついでエタノールで脱水する。ついで、プローブを加え、検体をカバーガラスで覆う。ついで、プローブ及び検体を、検体中の任意の二本鎖核酸を分離させるのに十分な温度で共変性させた後(例えば82℃で5分)、ハイブリダイゼーションを可能にするのに十分な温度でインキュベートする(例えば45℃で一晩)。ハイブリダイゼーション後、カバーガラスを取り除き、検体に高ストリンジェントな洗浄(例えば65℃で10分)と続く一連の低ストリンジェントな洗浄(例えば室温で2×3分)を施す。ついで、試料を脱水し、分析のためにマウントする。
【0104】
細胞試料を使用する伝統的なRNAハイブリダイゼーション実験では、細胞を40%ホルムアミド、1×SSC、及び10mMのリン酸ナトリウム中で5分間平衡化させ、37℃で、オリゴヌクレオチドプローブ20ng(例えば、標識化50bpオリゴの混合物)、1×SSC、40%ホルムアミド、10%デキストラン硫酸、0.4%のBSA、20mMのリボヌクレオチドバナジル複合体、サケ精巣DNA、大腸菌tRNA(10mg/ml)、及び10mMのリン酸ナトリウムを含むハイブリダイゼーション反応で一晩インキュベートする。次に、37℃で4×SSC/40%ホルムアミドで2回洗い、再び2×SSC/40%ホルムアミドで2回洗い、次に室温で2×SSC/40%ホルムアミドで3回洗う。次にジゴキシゲニン標識化プローブを、例えばCy3にコンジュゲートさせたジゴキシゲニンに対するモノクロナール抗体を用いて検出することができる。次にビオチン標識化プローブは、例えばストレプトアビジン−Cy5を使用することにより検出できる。検出は蛍光又はCISHによりできる。
【0105】
組織診断は組織の薄いスライス中の細胞の検査を含む。組織検査のための組織試料を調製するには、組織片を適切な固定液、典型的にはアルデヒド、例えばホルムアルデヒド又はグルタルアルデヒドで固定し、ついで、融解パラフィンロウに包埋する。ついで、組織試料を含むロウブロックをミクロトームで切断し、典型的には2から10ミクロン厚の組織を含む薄いパラフィンスライスを得る。ついで、検体スライスを顕微鏡スライドに適用し、空気乾燥させ、加熱して、検体をガラススライドに付着させる。ついで、残留パラフィンを適切な溶媒、典型的にはキシレン、トルエン又は他のもので溶解させる。ついで、これらのいわゆる脱パラフィン化溶媒を、以下に検討される技術の何れかによる試料の分析の前に、洗浄-脱水タイプの試薬を用いて除去する。別法では、スライスを凍結検体から調製し、10%ホルマリン又は他の適切な固定液に簡単に固定し、ついで試料の分析前に脱水試薬を注入する。
【0106】
組織試料を使用する伝統的なDNAハイブリダイゼーション実験では、ホルマリン固定パラフィン包埋組織検体を2−6μmの切片に切断しスライド上に集める。パラフィンを溶かし(例えば60℃で30−60分)、ついでキシレン(又はキシレン代替物)で、例えば2×5分洗浄することによって除去(脱パラフィン化)する。試料を再水和させ、洗浄し、ついで前処理する(例えば95−100℃で10分)。スライドを洗浄し、ついでペプシン又は他の適切な透過剤で、例えば37℃で3−15分、処理する。スライドを洗浄し(例えば2×3分)、脱水し、プローブを適用する。検体をカバーガラスで覆い、プローブ及び検体を、任意の二本鎖核酸を分離させるに十分な温度でスライドをインキュベートすることで共変性させ(例えば82℃で5分)、ハイブリダイゼーションを可能にするのに十分な温度でインキュベートする(例えば45℃で一晩)。ハイブリダイゼーション後、カバーガラスを取り除き、検体に高ストリンジェントな洗浄(例えば65℃で10分)と続く一連の低ストリンジェントな洗浄(例えば室温で2×3分)を施す。ついで、試料を脱水し、分析のためにマウントする。
【0107】
組織試料を使用する伝統的なRNAハイブリダイゼーション実験では、FFPE組織切片のスライドをキシレン中で2×5分脱パラフィン処理し、99%エタノール中に2×3分、96%エタノール中に2×3分、ついで純水に3分浸す。スライドを湿度チャンバーに配する。プロテイナーゼKを添加し、スライドを5分−15分間、室温でインキュベートする。スライドを純水中に2×3分浸し、96%エタノール中に10秒間浸し、5分間空気乾燥させる。プローブを組織切片に添加し、カバーガラスで覆う。スライドを湿度チャンバーで90分間インキュベートする。インキュベート後、スライドをストリンジェントな洗浄溶液中に55℃にて25分間浸し、ついでTBS中に10秒間浸す。スライドを湿度チャンバー中で抗体と共に30分間インキュベートする。スライドをTBS中に2×3分間、ついで純水中に2×1分間浸し、ついで湿度チャンバー中に配する。ついで、スライドを60分間基質と共にインキュベートし、5分間水道水に浸す。
【0108】
伝統的なノーザンブロット手順で、RNA標的試料を10分間、65℃でRNA負荷バッファー中で変性させ、直ちに氷上に置く。ゲルを負荷し、1×MOPSバッファー(10×MOPSは200mMのモルフォリノプロパンスルホン酸、50mMの酢酸ナトリウム、10mMのEDTA,pH7.0を含む)と共に25Vで一晩電気泳動させる。ついで、ゲルを20×SSCで10分間予め平衡化し、RNAをトランスファーバッファーとして無菌20×SSCを使用してナイロン膜へ移動させる。核酸を次いで例えば120mJにてUVクロスリンクを使用して、又は120℃で30分間ベーキングすることで膜上に固定する。膜をついで水で洗浄して空気乾燥させる。膜をシール可能なプラスチック袋に入れて、プローブ無しで30分間68℃にてプレハイブリダイズする。プローブを100℃で5分間変性させて、直ちに氷上に置く。ハイブリダイゼーションバッファー(予め68℃に温める)を添加し、プローブを68℃で一晩ハイブリダイズさせる。ついで膜を袋から取り除き、室温にて低ストリンジェンシーの洗浄バッファー(例えば、2×SSC、0.1%SDS)で震盪して毎回5分間2回洗浄する。膜をついで高ストリンジェンシーの洗浄バッファー(例えば、0.1×SSC、0.1%SDS)で68℃で毎回15分間2回洗浄する。膜をついで保管され、又は速やかに検出のために展開されうる。
【0109】
伝統的ハイブリダイゼーション技術の更なる例は、例えばSambrook等、 Molecular Cloning A Laboratory Manual, 第2版、 Cold Spring Harbor Laboratory Press, (1989) の章 1.90-1.104, 2.108-2.117, 4.40-4.41, 7.37-7.57, 8.46-10.38, 11.7-11.8, 11.12-11.19, 11.38及び 11.45-11.57;及びAusubel等, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc. (1998) の章 2.9.1-2.9.6, 2.10.4-2.10.5, 2.10.11-2.10.16, 4.6.5-4.6.9, 4.7.2-4.7.3, 4.9.7-4.9.15, 5.9.18, 6.2-6.5, 6.3, 6.4, 6.3.3-6.4.9, 5.9.12-5.9.13, 7.0.9, 8.1.3, 14.3.1-14.3.4, 14.9, 15.0.3-15.0.4, 15.1.1-15.1.8、及び20.1.24-20.1.25に見いだすことができる。
【0110】
(2)ハイブリダイゼーション技術
本発明の組成物及び方法は、細胞及び組織試料に対して標的及びプローブの別々な変性を含む全てのタイプの核酸ハイブリダイゼーション技術において完全に又は部分的に使用することができる。かかる技術は、例えばインサイツハイブリダイゼーション(ISH)、蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH;多色FISH、Fiber−FISH等を含む)、発色性インサイツハイブリダイゼーション(CISH)、銀インサイツハイブリダイゼーション(SISH)、比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)、染色体彩色、及びアレイインサイツを含む。
【0111】
本発明のハイブリダイゼーションに使用するのに適した分子プローブは、例えば出典明示によりここに援用される米国特許出願公開第2005/0266459号に記載されている。一般に、プローブは、プローブは、化学合成、PCRにより、又はクローニングにより特異的DNA配列を増幅させ、ベクター中にDNAを挿入し、ベクターを適切な宿主細胞中で増幅させることにより、調製することができる。一般的に使用されるベクターは細菌プラスミド、コスミド、細菌人工染色体(BACs)、PI転用人工染色体(PACs)、又は酵母人工染色体(YACs)を含む。ついで、増幅されたDNAは抽出され、プローブとしての使用のために精製される。プローブを調製し及び/又は合成するための方法は、例えばPCT/US02/30573に開示されているように、当該分野で知られている。
【0112】
一般に、プローブのタイプが、ハイブリダイゼーションアッセイにおいて検出しうる特徴のタイプを決定する。例えば、全核又はゲノムDNAを種特異的プローブとして使用することができる。染色体彩色は、単一の染色体タイプから誘導されたDNA配列の収集物であり、分裂中期及び静止期の核中のその特定の染色体を同定でき、ある種の染色体の数を計数し、転座を示し、又はクロマチンの染色体外断片を同定しうる。異なった染色体タイプは、また、特定の染色体を検出し計数するために、プローブハイブリダイゼーションの標的とされうる独特の反復配列を有する。独特の単一コピー配列を標的とするために大きな挿入プローブを使用することができる。これらの大きなプローブでは、ハイブリダイゼーション効率はプローブサイズに逆比例する。より小さいプローブをまた欠失、増幅、逆位、複製、及び異数性のような異常を検出するために使用することもできる。例えば、異なった色になった遺伝子座特異的プローブを使用して、スプリットシグナルインサイツハイブリダイゼーションを介して転座を検出することができる。
【0113】
一般に、密接に関連した配列を区別する能力は、プローブ長が増加するにつれて熱安定性の差が野生型と変異複合体間で減少するので、ハイブリダイゼーションプローブの長さに逆比例する。10bp長より大きいプローブが、一般に、関心ある独特の生物又は臨床状態を正しく同定するのに必要な配列多様性を得るのに必要とされる。他方、非常に短いオリゴマー(<10塩基対)における単一の塩基(点突然変異)のような微妙な配列差は、非標的配列と比較した相補的核酸標的配列へのハイブリダイゼーションの識別を可能にするのに十分であり得る。
【0114】
一実施態様では、インサイツハイブリダイゼーションプローブの少なくとも一セットは、出典明示によりここに援用される米国特許第7105294号に記載されているように、一又は複数のPNAプローブを含みうる。PNAプローブを合成する方法はPCT/US02/30573に記載されている。あるいは、又は加えて、上で検討された技術の何れかにおけるハイブリダイゼーションプローブの少なくとも一セットは、出典明示によりここに援用される国際公開第99/14226号に記載されているように、一又は複数のロックド核酸(LNA)プローブを含みうる。LNA骨格は、2’及び4’炭素間に更なる架橋結合があるため、ハイブリダイゼーションに対して事前組織化される。LNA/DNA及びLNA/RNA相互作用は、高融解温度によって示されるように、対応するDNA/DNA及びDNA/RNA相互作用より強い。よって、ハイブリダイゼーションに対して必要とされるエネルギーを減少させる本発明の組成物及び方法は、LNAプローブを用いたハイブリダイゼーションに対して特に有用である。
【0115】
一実施態様では、プローブは、出典明示によりここに援用される米国特許出願公開第2005/0266459号に記載されているように、検出可能な標識(プローブ・標的ハイブリッドの検出を可能にする分析によって同定可能なシグナルを与える分子)を含みうる。プローブは、例えば蛍光又は明視野顕微鏡/スキャナーを使用することによりプローブ−標的ハイブリッドを同定可能とするために標識されうる。幾つかの実施態様では、プローブは31P、33P、又は32Sのような放射標識、ジゴキシゲニン及びビオチン、又は蛍光標識のような非放射性標識を使用することで標識されうる。検出可能な標識は、プローブに直接的に結合されてもよいし、又は例えばリンカーを使用してプローブに間接的に結合されてもよい。酵素的及び化学的プロセスを含む当業者に知られている任意の標識法を使用して、本発明の方法及び組成物において使用されるプローブを標識することができる。他の実施態様では、プローブは標識されない。
【0116】
一般に、CGH、FISH、CISH、及びSISHのようなハイブリダイゼーション技術は、細胞の染色体中の遺伝子又は遺伝子断片に変動するストリンジェンシーでハイブリダイズする大きな主に特定されない核酸プローブを用いる。かかるプローブは、コズミッククローン、YACクローン、又は他のクローン化DNA断片から誘導されうる。大きなプローブの使用はインサイツハイブリダイゼーション技術を非常に高感度なものにする。しかしながら、伝統的なハイブリダイゼーションアッセイにおける大きなゲノムプローブの使用の成功は、ゲノム中に存在している例え名反復配列から誘導された望まれないバックグラウンド染色をブロックすることに依存している。非特異的プローブ結合を減らす伝統的な方法は、フィコール、ウシ血清アルブミン、ポリビニルピロリドン、及び核酸を含むプレハイブリダイゼーション溶液と共に組織をインキュベートすることで、タンパク質及び組織上の結合部位を飽和させることを含む。かかるブロッキング工程は時間を費やし高価である。有利なことに、本発明の方法及び組成物は、ブロッキング工程の必要性を減少させ及び/又は排除し、ブロッキング剤の必要性無しに、及びホルムアミド含有バッファー中で一晩ハイブリダイゼーションする必要無しに、著しく減少したバックグランドレベルを示す。しかしながら、一実施態様では、例えばPCT/US02/30573に開示されているように、当該分野で知られている方法によって反復配列を抑制することもできる。
【0117】
結合したプローブは、細胞及び組織試料中において直接的に又は蛍光色素(例えばFISH)、有機色素原(例えばCISH)、銀粒子(例えばSISH)、又は他の金属粒子(例えば金支援蛍光インサイツハイブリダイゼーション、GOLDFISH)で間接的に検出することができる。よって、検出方法に依存して、試験される試料から得られた細胞集団は蛍光顕微鏡又は一般的な明視野光学顕微鏡を介して可視化されうる。
【0118】
細胞及び組織試料でのハイブリダイゼーションアッセイは、特異的DNA配列の数、サイズ、及び/又は位置を決定するための重要なツールである。例えば、CGHでは、全ゲノムが染色され、異常なコピー数の領域の検出に対して、正常な参照ゲノムと比較される。典型的には、患者組織及び正常なコントロール組織からのDNAが異なった色のプローブで標識される。DNAのプールが混合され、正常な染色体の分裂中期スプレッドに(又はアレイ−又はマトリックス−CGHでは、マイクロアレイチップに)加えられる。ついで、異常なコピー数を持つ領域を同定するために色の比が比較される。
【0119】
FISHは、典型的には、複数のカラー画像処理が必要とされるとき、及び/又はプロトコルがシグナルの定量を求めるときに使用される。該技術は、一般に、細胞試料を調製し、プローブを標識し、標的染色体及びプローブを変性させ、プローブを標的配列にハイブリダイズさせ、及びシグナルを検出することを必要とする。典型的には、ハイブリダイゼーション反応は、標的にされた配列を蛍光的に染色する結果、その位置、サイズ、又は数を、蛍光顕微鏡、フローサイトメトリー、又は他の適切な機器を使用して決定することができる。全ゲノムから数キロベースの範囲のDNA配列を、FISHを使用して研究することができる。例えばデコンボリューションのような高度な蛍光顕微鏡技術により、単鎖mRNA分子でさえも検出可能である。FISHはまた分裂中期スプレッド及び静止期核について使用することもできる。
【0120】
FISHは、分裂中期染色体、静止期核、クロマチン線維、及びネイキッドDNA分子上の反復及び単一コピーDNAのマッピングに対して、また大きな反復ファミリー、典型的にはリボソームDNA及び主要なタンデムアレイファミリーの局在化を通しての染色体同定及び核型解析に対して成功裏に使用されている。FISHの最も重要な応用の一つは、単一コピーDNA配列、特にヒト及び他の真核生物モデル種における疾患関連遺伝子の検出、及び感染薬剤の検出にあった。FISHは、例えば出生前診断における染色体異数性、血液学的癌、及び固形腫瘍;遺伝子異常性、例えば癌遺伝子増幅、遺伝子欠失、又は遺伝子融合;染色体構造異常性、例えば転座、複製、挿入、又は逆位;近接遺伝子症候群、例えば微小欠失症候群;様々な治療法の遺伝子効果;体細胞におけるウイルス核酸及び染色体中のウイルス組込み部位等々を検出するために使用することができる。多色FISHでは、各染色体が別個の色で染色され、異常な染色体が誘導された正常な染色体を決定することが可能になる。かかる技術は、多重FISH(m−FISH)、スペクトル核型決定(SKY)、総合二値化標識(COBRA)、色変化核型決定、異種間色バンド形成、高分解能多色バンド形成、テロメア多重FISH(TM−FISH)、スプリットシグナルFISH(ssFISH)、及びヒュージョンシグナルFISHを含む。
【0121】
CISH及びSISHは、FISHと同じ用途の多くに使用することができ、例えば病理組織学的用途において、根底にある組織形態の分析を可能にするという更なる利点を有している。FISHが実施される場合は、出典明示によりここに援用される米国特許第6730474号に記載されているように、ハイブリダイゼーション混合物は、別個のバランスがとれた対のプローブのセットを含みうる。CISHでは、ハイブリダイゼーション混合物は、一又は複数の一般的な有機色素原での検出に対して構成された少なくとも一のセットのプローブを含み得、Powell RD等, "Metallographic in situ hybridization"に記載されたように、SISHに対しては、ハイブリダイゼーション混合物は、銀粒子での検出に対して構成された
【0122】
本発明の組成物はまたブロッティング及びプロービング(例、サザーン、ノーザーン等)を含むハイブリダイゼーションを含む分子生物学技術の全てのタイプにおいて完全に又は部分的に使用することができる。
【0123】
(3)ハイブリダイゼーション条件
本発明の方法は標的及びプローブの別々の変性を含むハイブリダイゼーション用途において極性非プロトン溶媒を使用することを含む。本発明の組成物は上記方法でプローブ及び試料を別々に変性させることに特に有用である。
本発明の組成物を使用するハイブリダイゼーション方法は、殆どは二本鎖の形態である標的核酸配列を含む試料に組成物を適用することを含みうる。通常、標的配列とハイブリダイズするプローブへのアクセスを確保するために、プローブ及び試料を一緒に加熱して任意の二本鎖核酸を変性させる。別々の変性は形態をより良く保つ一方、共変性は実際の工程数を減らすと議論されてきた。これらの理由により、別々の変性工程は分子細胞遺伝学の用途にほとんどの場合使用され、共変性は組織切片を分析する際にほとんどの場合使用される。
【0124】
変性は典型的には標的及びプローブを(一緒に又は別々に)、熱(例えば、約70℃から約90℃の温度で)及びホルムアミド及びテトラアルキルアンモニウムハロゲン化物又はその組み合わせのような有機溶媒の存在下でインキュベートすることで実施される。例えば、染色体DNAは70℃以上の温度(例えば、約73℃)及び70%ホルムアミド及び2×SSC(0.3M塩化ナトリウム及び0.03Mクエン酸ナトリウム)を含む変性バッファーの組み合わせにより変性させることができる。変性条件は典型的には細胞形態を保持するように樹立される(例えば、比較的低い温度及び高ホルムアミド濃度)。
【0125】
標的及びプローブの別々の変性を含む伝統的ハイブリダイゼーション用途において、標的は例えば70℃から85℃で5−30分間、50%から70%ホルムアミド及び2×SSCを含むバッファー中で変性されうるが、一方プローブは例えば75℃から95℃で5−10分間、50%から100%ホルムアミドを含むバッファー中で変性されうる。標識及びプローブを別々に変性させる他の伝統的なプロトコールは、標的を75℃で2分間、70%(v/v)ホルムアミド、10%(v/v)20×SSC、及び10% (v/v)リン酸バッファー中で、又は70%(v/v)ホルムアミド、2×SSC(pH7.0)、及び0.1mMのEDTA,pH7.0中でインキュベートする方法、及び75℃で5−10分間、2%(w/v)デキストラン硫酸、50%ホルムアミド、2×SSC、及び50mMリン酸バッファー中で標的をインキュベートする方法を含みうる。プローブ及び標的を別々に変性する更に他のプロトコールは、標的を室温で5分間、0.05MのNaOH及び2XSSC中でインキュベートすること、及び2×SSC、50%ホルムアミド、10%デキストラン硫酸、0.15%SDS中で10分間70−75℃でインキュベートすることを含みうる。
【0126】
標的及びプローブを共変性させることを含む伝統的なハイブリダイゼーション用途において、典型的プロトコールは標的及びプローブを一緒に2×SSC、50%ホルムアミド、10%デキストラン硫酸、0.15%SDS中で30秒から5分、80℃でインキュベートすることを含んでも良い。標的及びプローブを共変性させる他の伝統的なプロトコールは、標的及びプローブを一緒に75℃で、2−4分間、70%ホルムアミド及び2×SSC(pH7.2に調節)中でインキュベートすることを含みうる。更に、標的及びプローブを共変性させる他の伝統的なプロトコールは、標的及びプローブを一緒に65℃から70℃にて5分間、50%ホルムアミド、10%デキストラン硫酸、及び0.1%SDS中でインキュベートすることを含みうる。
【0127】
しかしながら、本発明の方法では、プローブ及び試料は別々のバッファー中で変性させられ、ついで、試料及びプローブはハイブリダイゼーション工程のために組み合わされる。試料変性バッファー及びプローブ変性バッファーは同じ成分を含有し得、又は異なる成分を含有しうる。例えば、両方のバッファーは少なくとも一つの極性非プロトン溶媒を含有し、又は2つのバッファーの一つのみが極性非プロトン溶媒を含有しうる。極性非プロトン溶媒は核酸と相互作用し、変性及び再アニーリング工程を容易にする。極性非プロトン溶媒は、また、より低い変性温度の使用を可能にし、ホルムアミドのような毒性化学薬品の必要性を回避する。その結果、本発明で特定される極性非プロトン溶媒は、より低いバックグランド及びより均質なバックグランドを生じ、試料形態を保持し、容易な自動化を可能にし、及びより安全な(より低毒性な)試薬を提供する。
【0128】
本発明の変性組成物を使用するハイブリダイゼーションは、伝統的な組成物により実施されるハイブリダイゼーションと同じアッセイ法を使用して実施されうる。例えば、熱の前処理、温浸、変性、ハイブリダイゼーション、洗浄、及びマウント工程は、容量、温度、試薬、インキュベーション時間において、伝統的な組成物と同じ条件を使用しうる。しかしながら、本発明の組成物は、プローブ及び試料の別々の変性を含むハイブリダイゼーション用途に対し改良された結果をもたらす。当該分野で知られた伝統的なハイブリダイゼーションプロトコールに大きな変法が存在する。本発明の組成物は、当該分野で知られた伝統的なハイブリダイゼーションプロトコールの何れにても使用されうる。例えば、組成物は、伝統的なホルムアミドハイブリダイゼーションバッファーを含むハイブリダイゼーション用途に使用されうるし、又はPCT/IB09/005893に開示された極性非プロトン溶媒ハイブリダイゼーションバッファーを含むハイブリダイゼーション用途で使用されうる。
【0129】
別法では、本発明の組成物を使用するアッセイは、例えば、標的及びプローブを別々に変性するために、温度及び/又は時間を増加又は減少させることによって、伝統的な方法から変化せしめられ得、最適化されうる。当業者には理解されるであろうが、ある場合には、例えばRNA検出で、変性工程は必要としない。
【0130】
例えば、ある実施態様では、標的及びプローブを別々に変性するために使用される変性温度は55℃から100℃に可変し得、ハイブリダイゼーション温度は20℃から55℃へ可変しうる。他の実施態様で、変性温度は55から70℃、70から80℃、80から90℃又は90から100℃へ、及びハイブリダイゼーション温度は20から30℃、30から40℃、40から50℃、又は50から55℃へ可変しうる。他の実施態様では、変性温度は、67、72、82、又は92℃、及びハイブリダイゼーション温度は37,40、45、又は50℃をとりうる。
【0131】
他の実施態様は、試料及びプローブを別々に変性するための時間は0から15分であり、ハイブリダイゼーション時間は0分から72時間に可変しうる。他の実施態様では、変性時間は0から5分に可変し得、ハイブリダイゼーション時間は0から8時間に可変しうる。他の実施態様では、変性時間は0、1、2、3、4、5、10、15、又は30分であり得、ハイブリダイゼーション時間は0分、5分、15分、30分、60分、180分、又は240分でありうる。
【0132】
従って、本発明の組成物を使用するハイブリダイゼーションは、8時間未満で実施することができる。他の実施態様では、ハイブリダイゼーション工程は、6時間未満で実施することができる。更に他の実施態様では、ハイブリダイゼーション工程は、4時間以内に実施することができる。他の実施態様では、ハイブリダイゼーション工程は、3時間以内に実施することができる。更に他の実施態様では、ハイブリダイゼーション工程は、2時間以内に実施することができる。他の実施態様では、ハイブリダイゼーション工程は、1時間以内に実施することができる。更に他の実施態様では、ハイブリダイゼーション工程は、30分以内に実施することができる。他の実施態様では、ハイブリダイゼーション工程は15分以内に生じうる。ハイブリダイゼーション工程は10分以内又は5分未満でさえ生じうる。
【0133】
ハイブリダイゼーション時間が変化すると、プローブの濃度はまた強いシグナルを生じさせ及び/又はバックグラウンドを減少させるために変更されうる。例えば、ハイブリダイゼーション時間が減少すると、シグナル強度を改善するためにプローブの量が増加させられうる。他方、ハイブリダイゼーション時間が減少すると、バックグラウンド染色を改善するためにプローブの量が減少させられうる。
【0134】
本発明の組成物はまた標的DNAに対する例えば反復配列の結合をブロックすることによってシグナル及びバックグラウンド強度を改善することにより、ハイブリダイゼーション用途中におけるブロッキング工程の必要性を除去する。よって、ブロッキング剤として全ヒトDNA、ブロッキング−PNA、COT−1 DNA、又は任意の起源由来のDNAを使用する必要性はない。加えて、驚くべきことに、本発明の組成物及び方法は、ホルムアミド含有バッファー中で一晩ハイブリダイゼーションする必要性無しに、著しく低減したバックグランドレベルを示す。
【0135】
本発明の水性組成物は、組成物に含められる核酸配列の濃度をかなり低減させる可能性を更にもたらす。一般に、プローブの濃度は、伝統的な濃度と比較して2から8倍、減少されうる。例えば、HER2 DNAプローブ及びCEN17 PNAプローブが本発明の組成物において使用される場合、その濃度は、伝統的なハイブリダイゼーション溶液中におけるその濃度と比較して、それぞれ1/4及び1/2減少されうる。この特徴は、ブロッキング−PNA又はCOT1のようにDNAブロッキングの必要性がない点と共に、伝統的な組成物系において使用される伝統的な10μL体積と比較して自動化機器システムにおいて増大されたプローブ体積を可能にし、これが、以下に更に詳細に検討されるように、蒸発による損失を低減させる。
【0136】
プローブ濃度の減少はまたバックグラウンドを減少させる。しかしながら、プローブ濃度の減少はハイブリダイゼーション時間に逆に相関する、つまり、濃度が低くなると、必要とされるハイブリダイゼーション時間が長くなる。にもかかわらず、極端に低濃度のプローブが本発明の水性組成物と共に使用されたときでさえ、ハイブリダイゼーション時間は伝統的な組成物の場合よりも尚短い。
【0137】
本発明の組成物はしばしば伝統的なハイブリダイゼーション組成物よりも良好なシグナル・ノイズ比を可能にする。例えば、ある種のプローブでは、本発明の組成物での一時間のハイブリダイゼーションは、伝統的な組成物の一晩のハイブリダイゼーションと同様の又はより低いバックグラウンドとより強いシグナルを生じる。バックグラウンドはプローブが添加されない場合は見られない。
【0138】
当業者は理解するであろうが、異なるタイプのハイブリダイゼーションアッセイ、異なるタイプの試料、異なるタイプのプローブ標的、異なる長さのプローブ、異なるタイプのプローブ、例えばDNA、/RNA/PNA/LNAオリゴ、短いDNA/RNAプローブ(0.5−3kb)、染色体染色プローブ、CGH、反復プローブ(例えば、アルファサテライト反復)、単一遺伝子座等は、例えば最も効果的なハイブリダイゼーションを得るために必要な塩及び極性非プロトン溶媒の濃度に影響を与えるであろう。ハイブリダイゼーション用途において温度及びインキュベーション時間もまた重要な変数である。ここで提供される指針に鑑みて、当業者であれば本発明の方法を最適化するためにこれらの因子を如何に変えるかは分かるであろう。
【0139】
伝統的なアッセイ法は、システムがマニュアルか、半自動か、又は全自動化されているかどうかに応じて、本発明の組成物を使用するときに、また変更され、最適化されうる。例えば、プローブ及び標的の変性を別々にすることによって、伝統的に温度勾配を必要とする共変性プロトコールに比べてより単純な自動化した方法により、より少ない量のハイブリダイゼーションバッファーを使用することが可能である。更に、半自動化又は全自動化システムは、本発明の組成物で得られる短いハイブリダイゼーション時間から恩恵を受けるであろう。短いハイブリダイゼーション時間はそのような系で伝統的な組成物が使用された場合に遭遇する困難を減らしうる。例えば、半自動化及び全自動化システムの一つの問題は、そのような系では少い試料量(例10−150μL)、温度上昇、及びハイブリダイゼーション時間の延長(例、14時間))を要するため、ハイブリダイゼーション中に試料のかなりの蒸発が起こりうることである。よって、伝統的ハイブリダイゼーション組成物中の構成成分の割合はかなり不変である。しかしながら、本発明の組成物は標的及びプローブを別々に変性させるため、蒸発は減少し、半自動化及び全自動化したシステムで使用されるハイブリダイゼーション組成物中の成分の割合における柔軟性を増大させている。
【0140】
例えば、二つの自動化機器が、伝統的な共変性工程(つまり、試料及びプローブを一緒に変性させた)を有するハイブリダイゼーション用途における本発明の組成物を使用したハイブリダイゼーションの実施に使用されてきた。40%エチレンカーボネート(v/v)を含有する組成物がPCT出願DK2008/000430で開示された装置で使用されており、15%エチレンカーボネート(v/v)を含有する組成物がHYBRIMASTER HS−300(Aloka CO. LTD,Japan)にて使用されている。本発明の組成物がHYBRIMASTER HS−300で使用される場合、該機器は、伝統的な毒性のあるホルムアミドミックスの代わりに水を用いて迅速なFISHハイブリダイゼーションを実施することができ、よって安全性を改善し、蒸発を減少させる。例えば出典明示によりここに援用される米国特許出願第11/031514号に記載されているように、水で湿らされたストリップがAloka機器の反応ユニット(ハイブリダイゼーションチャンバー)の内方部の蓋に付設される場合は、蒸発はまた更に減少させられる。有利なことに、標的及びプローブを別々に変性させることにより、上述した2つの機器の例において蒸発及び試料へのストレスを減少させる。
【0141】
自動化された画像解析に伴う他の問題は、必要とされる画像の数、必要とされる保存場所の莫大な量、及び画像を撮るのに必要とされる時間である。本発明の組成物は、伝統的な組成物と比較して非常に強いシグナルを生じせしめることによって課題に対処している。本発明の組成物によって生じせしめられる非常に強いシグナルのため、画像処理を、伝統的な組成物に必要なものよりも低い倍率でなすことができ、尚も検出し、例えばアルゴリズムによって解析できる。焦点面は低い倍率では広くなるので、本発明の組成物は連続試料切片を採取する必要性を低減又は解消する。本発明による別々の変性法により提供されるより均質なバックグランド染色及びシグナル強度はまたイメージング解析に有益である。その結果、本発明の組成物は連続切片が少ないか又は含まず、各画像が大きな面積をカバーするので、全体の画像処理が更に速い。加えて、分析のための全体の時間は、全画像ファイルが小さいので、より速い。
【0142】
よって、本発明の組成物及び方法は、伝統的なハイブリダイゼーション溶液及び方法に関連する問題の多くを解決する。
【0143】
本開示は、開示に従う組成物の好ましい実施態様を構成する以下の非限定的実施例を参照してより明確に理解されうる。
【0144】
広い範囲を定める数値範囲及びパラメータは近似値であるが、特定の実施例に記載した数値はできる限り正確に報告している。しかしながら、全ての数値は、その各試験測定に見出される標準偏差から必然的に生じるある程度の誤差を本来的に含んでいる。以下の実施例は本発明を例証するもので、本発明を限定するものと決して考えてはいけない。
【実施例】
【0145】
以下、本発明の特定の実施態様を詳細に参照する。本発明をこれら実施態様との関連で説明するが、それらは本発明をその実施態様に限定することを意図するものではないことが理解されるであろう。反対に、本発明は、添付の特許請求の範囲によって定まる本発明に含められうる代替物、変形例、及び均等物をカバーすることが意図される。
【0146】
次の実施例で使用される試薬は、Dakoの組織診FISHアクセサリーキット(K5599)及び細胞診FISHアクセサリーキット(K5499)(Dako Denmark A/S, Glostrup Denmark)からのものである。キットは、ホルマリン固定、パラフィン包埋組織片献体に対するFISH手順を完了させるのに必要なプローブを除く全ての重要な試薬を含んでいる。全ての試料は製造者の記述に従って調製した。Dakoハイブリダイザー(S2450, Dako)を消化、変性、及び及びハイブリダイゼーション工程に使用した。
【0147】
FISHスライドの評価は、DAPI、FITC、テキサスレッド単一フィルター及びFITC/テキサスレッド二重フィルターを備えたLeica DM6000B蛍光顕微鏡を使用して、10x、20x、40x、及び100xオイル対物下で、ハイブリダイゼーションから一週間以内に実施した。
CISHスライドの評価は、オリンパスBX51光学顕微鏡を使用して、4x、10x、20x、40x、及び60xの対物下で実施した。
【0148】
以下の実施例において、「デキストラン硫酸」は分子量M>500000のデキストラン硫酸のナトリウム塩(D8906,Sigma)を意味する。極性非プロトン溶媒の全ての濃度はv/vパーセントとして与えられる。ホスフェートバッファーは、NaHPO,2HO(リン酸ナトリウム二塩基二水和物)及びNaHPO,HO(リン酸ナトリウム一塩基一水和物)を含むリン酸緩衝溶液を意味する。シトレートバッファーは、クエン酸ナトリウム(Na7,2HO;1.06448,Merck)及びクエン酸一水和物(C,HO;1.00244,Merck)を含むクエン酸緩衝溶液を意味する。
【0149】
実施例1−20の一般的組織診断FISH/CISH手順
ヒト(扁桃腺、乳癌、腎臓及び結腸)由来の切断されたホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)複数組織アレイ片を有するスライドを、60℃で30−60分べークし、キシレン浴で脱パラフィンし、エタノール浴で再水和させ、ついで、洗浄バッファーに移した。ついで、試料を前処理溶液中で最小95℃で10分間前処理し、2×3分洗浄した。ついで、試料を37℃でペプシンRTUを用いて3分間、消化させ、2×3分洗浄し、一連のエタノール蒸発で脱水し、空気乾燥させた。ついで、試料を、個々の実験で記載されたようにして10μLのFISHプローブと共にインキュベートした。ついで、試料を65℃で10分ストリンジェントな洗浄によって洗浄した後、2×3分洗浄し、ついで一連のエタノール蒸発で脱水し、空気乾燥させた。最後に、スライドを15μLのアンチフェードマウント培地にマウントした。染色が完了したところで、染色スライドのシグナル強度、形態、及びバックグラウンドを評価するために訓練を受けた観察者がスコア付けを実施した。
【0150】
実施例21−22の一般的な細胞診FISH手順
分裂中期調製物のスライドを、3.7%のホルムアルデヒドに2分間固定し、2×5分洗浄し、一連のエタノール蒸発で脱水し、空気乾燥させた。ついで、試料を、個々の実験で記載されたようにして10μLのFISHプローブと共にインキュベートした。ついで、試料を65℃で10分ストリンジェントな洗浄によって洗浄した後、2×3分洗浄し、ついで一連のエタノール蒸発で脱水し、空気乾燥させた。最後に、スライドを15μLのアンチフェードマウント培地にマウントした。染色が完了したところで、染色スライドのシグナル強度及びバックグラウンドを評価するために訓練を受けた観察者が、組織片のスコア付けガイドラインに記載されたようにしてスコア付けを実施した。
【0151】
実施例23−30の一般的な組織診断FISH1/CISH手順
ヒト(扁桃腺、乳癌、腎臓及び結腸)由来の切断されたホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)複数組織アレイ片を有するスライドを、60℃で30−60分べークし、キシレン浴で脱パラフィンし、エタノール浴で再水和させ、ついで、洗浄バッファーに移した。ついで、試料を前処理溶液中で最小95℃で10分間前処理し、2×3分洗浄した。ついで、試料を37℃でペプシンRTUを用いて3分間、消化させ、2×3分洗浄し、一連のエタノール蒸発で脱水し、空気乾燥させた。ついで、試料を、個々の実験で記載されたようにして、10μLのFISHプローブで共変性させるか、又はFISHプローブ及び試料を最初に別々に変性させ、ついで一緒にインキュベートした。ついで、試料をストリンジェントな洗浄バッファー中で65℃で10分洗浄した後、2×3分洗浄バッファー中で洗浄し、ついで一連のエタノール蒸発で脱水し、空気乾燥させた。最後に、スライドを15μLのアンチフェードマウント培地にマウントした。染色が完了したところで、染色スライドのシグナル強度、形態、及びバックグランドを評価するために訓練を受けた観察者がスコア付けを実施した。
【0152】
組織切片のスコア付けガイドライン
シグナル強度は0−3のスケールで評価され、0はシグナルなし、3は強いシグナルとした。細胞/組織構造は0−3スケールで評価し、0は構造なしで核境界なしを意味し、3はインタクトな構造と明確な核境界とした。0と3の間には、観察者がシグナル強度、組織構造、及びバックグラウンドを評価できる0.5離れた更なるグレードがある。
【0153】
シグナル強度を等級システムに従って0−3スケールでスコア付けする。
0 シグナルは見られない。
1 シグナル強度は弱い。
2 シグナル強度は中程度である。
3 シグナル強度は強い。
スコア付けシステムは1/2グレードの使用を許容する。
【0154】
組織及び核構造を等級システムに従って0−3スケールでスコア付けする。
0 組織構造及び核境界は完全に破壊されている。
1 組織構造及び/又は核境界は乏しい。このグレードは、幾つかの領域が空の核である状況を含む。
2 組織構造及び/又は核境界が見られるが、核境界は不明瞭である。このグレードは数個の核が空である状況を含む。
3 組織構造及び核境界は無傷で明瞭である。
スコア付けシステムは1/2グレードの使用を許容する。
【0155】
バックグラウンドを等級システムに従って0−3スケールでスコア付けする。
0 見られるバックグラウンドは少しないしはない。
1 幾つかのバックグラウンド。
2 中程度のバックグラウンド。
3 高いバックグラウンド。
スコア付けシステムは1/2グレードの使用を許容する。
【0156】
実施例1
この実施例は、本発明の組成物又は伝統的なハイブリダイゼーション溶液で処理した試料からのシグナル強度及び細胞形態を変性温度の関数として比較する。
FISHプローブ組成物I:10%デキストラン硫酸、300mMのNaCl、5mMのリン酸バッファー、40%のホルムアミド(15515−026,Invitrogen),5μMのブロッキングPNAs(Kirsten Vang Nielsen等, PNA Suppression Method Combined with Fluorescence In Situ Hybridisation (FISH) Technique inPRINS and PNA Technologies in Chromosomal Investigation, Chapter 10 (Franck Pellestor ed.) (Nova Science Publishers, Inc. 2006)を参照)、10ng/μLのテキサスレッド標識CCND1遺伝子DNAプローブ(RP11−1143E20,サイズ192kb)。
FISHプローブ組成物II:10%デキストラン硫酸,300mMのNaCl,5mMのリン酸バッファー,40%のエチレンカーボネート(03519,Fluka),5μMのブロッキングPNAs,10ng/μLのテキサスレッド標識CCND1遺伝子DNAプローブ(RP11−1143E20,サイズ192kb)。
存在する場合、異なった粘度の相を使用前に混合した。FISHプローブを示したように5分間変性し、45℃で60分間ハイブリダイズした。
【0157】
実施例2
この実施例は、本発明の組成物又は伝統的なハイブリダイゼーション溶液で処理した試料からのシグナル強度及びバックグラウンド染色をハイブリダイゼーション時間の関数として比較する。
FISHプローブ組成物I:10%のデキストラン硫酸,300mMのNaCl,5mMのリン酸バッファー,40%のホルムアミド,5μMのブロッキングPNAs,10ng/μLのテキサスレッド標識CCND1遺伝子DNAプローブ。
FISHプローブ組成物II:10%のデキストラン硫酸,300mMのNaCl,5mMのリン酸バッファー,40%のエチレンカーボネート,5μMのブロッキングPNAs,10ng/μLのテキサスレッド標識CCND1遺伝子DNAプローブ。
存在する場合、異なった粘度の相を使用前に混合した。FISHプローブを82℃で5分間、ついで45℃で14時間、4時間、2時間、60分、30分、15分、0分、インキュベートした。
【0158】
実施例3
この実施例は、異なった極性非プロトン溶媒を有する本発明の組成物又は伝統的なハイブリダイゼーション溶液で処理した試料からのシグナル強度を比較する。
FISHプローブ組成物I:10%のデキストラン硫酸,300mMのNaCl,5mMのリン酸バッファー,40%のホルムアミド,5μMのブロッキングPNAs,10ng/μLのテキサスレッド標識CCND1遺伝子DNAプローブ。
FISHプローブ組成物II:10%のデキストラン硫酸,300mMのNaCl,5mMのリン酸バッファー,40%のエチレンカーボネート(EC),5μMのブロッキングPNAs,10ng/μLのテキサスレッド標識CCND1遺伝子DNAプローブ。
FISHプローブ組成物III:10%のデキストラン硫酸,300mMのNaCl,5mMのリン酸バッファー,40%のプロピレンカーボネート(PC)(540013,Aldrich),5μMのブロッキングPNAs,10ng/μLのテキサスレッド標識CCND1遺伝子DNAプローブ。
FISHプローブ組成物IV:10%のデキストラン硫酸,300mMのNaCl,5mMのリン酸バッファー,40%のスルホラン(SL)(T22209,Aldrich),5μMのブロッキングPNAs,10ng/μLのテキサスレッド標識CCND1遺伝子DNAプローブ。
FISHプローブ組成物V:10%のデキストラン硫酸,300mMのNaCl,5mMのリン酸バッファー,40%のアセトニトリル(AN)(C02CIIX,Lab−Scan),5μMのブロッキングPNAs,10ng/μLのテキサスレッド標識CCND1遺伝子DNAプローブ。
FISHプローブ組成物VI:10%のデキストラン硫酸,300mMのNaCl,5mMのリン酸バッファー,40%のγ−ブチロラクトン(GBL)(B103608,Aldrich),5μMのブロッキングPNAs,7.5ng/μLのテキサスレッド標識CCND1遺伝子DNAプローブ。
存在する場合、異なった粘度の相を使用前に混合した。FISHプローブを82℃で5分間、ついで45℃で60分間、インキュベートした。
【0159】
実施例4
この実施例は、異なった濃度の極性非プロトン溶媒を有する本発明の組成物で処理した試料からのシグナル強度を比較する。
FISHプローブ組成物:10%のデキストラン硫酸,300mMのNaCl,5mMのリン酸バッファー,10−60%のエチレンカーボネート(標示通り),5μMのブロッキングPNAs,7.5ng/μLのテキサスレッド標識IGK−定常DNA遺伝子プローブ((CTD−3050E15,RP11−1083E8;サイズ227kb)及び7.5ng/μLのFITC標識IGK−可変遺伝子DNAプローブ(CTD−2575M21,RP11−122B6,RP11−316G9;サイズ350及び429kb)。
存在する場合、異なった粘度の相を使用前に混合した。FISHプローブを82℃で5分間、ついで45℃で60分間、インキュベートした。
【0160】
実施例5
この実施例は、PNAブロッキングを伴う及び伴わない組成物で処理した試料からのシグナル強度及びバックグラウンド強度を比較する。
FISHプローブ組成物:10%のデキストラン硫酸,300mMのNaCl,5mMのリン酸バッファー,40%のエチレンカーボネート,7.5ng/μLのテキサスレッド標識CCND1遺伝子DNAプローブ。
存在する場合、異なった粘度の相を使用前に混合した。FISHプローブを82℃で5分間、ついで45℃で60分間、インキュベートした。
【0161】
実施例6
この実施例は本発明の組成物で処理された試料からのシグナル強度をプローブ濃度及びハイブリダイゼーション時間の関数として比較する。
FISHプローブ組成物:10%のデキストラン硫酸,300mMのNaCl,5mMのリン酸バッファー,40%のエチレンカーボネート,及び10、7.5、5又は2.5ng/μLのテキサスレッド標識CCND1遺伝子DNAプローブ(標記の通り)。
存在する場合、異なった粘度の相を使用前に混合した。FISHプローブを82℃で5分間、ついで45℃で3時間、2時間及び1時間、インキュベートした。
【0162】
実施例7
この実施例は、本発明の組成物で処理された試料からのシグナル強度を、塩、ホスフェート、及びバッファー濃度の関数として比較する。
FISHプローブ組成物:10%のデキストラン硫酸,([NaCl],[リン酸バッファー],[TRISバッファー]結果に示した通り),40%のエチレンカーボネート,7.5ng/μLのテキサスレッド標識CCND1遺伝子DNAプローブ。
存在する場合、異なった粘度の相を使用前に混合した。FISHプローブを82℃で5分間、ついで45℃で60分間、インキュベートした。
【0163】
実施例8
この実施例は、本発明の組成物で処理された試料からのシグナル強度をデキストラン硫酸濃度の関数として比較する。
FISHプローブ組成物:0、1、2、5、又は10%のデキストラン硫酸(標記の通り),300mMのNaCl,5mMのリン酸バッファー,40%のエチレンカーボネート,5ng/μLのテキサスレッド標識SIL−TAL1遺伝子DNAプローブ(RP1−278O13;サイズ67kb)及び6ng/μLのFITC SIL−TAL1(ICRFc112−112C1794,RP11−184J23,RP11−8J9,CTD−2007B18,133B9;サイズ560kb)。
存在する場合、異なった粘度の相を使用前に混合した。FISHプローブを82℃で5分間、ついで45℃で60分間、インキュベートした。ブロッキングなし。
【0164】
実施例9
この実施例は、本発明の組成物で処理された試料からのシグナル強度を、デキストラン硫酸、塩、ホスフェート、及び極性非プロトン溶媒濃度の関数として比較する。
FISHプローブ組成物Ia:34%のデキストラン硫酸,0mMのNaCl,0mMのリン酸バッファー,0%のエチレンカーボネート,10ng/μLのテキサスレッド標識HER2遺伝子DNAプローブ(サイズ218kb)及び50nMのFITC標識CEN−7 PNAプローブ。
FISHプローブ組成物Ib:34%のデキストラン硫酸,300mMのNaCl,5mMのリン酸バッファー,0%のエチレンカーボネート,10ng/μLのテキサスレッド標識HER2遺伝子DNAプローブ(サイズ218kb)及び50nMのFITC標識CEN−7 PNAプローブ。
FISHプローブ組成物Ic:34%のデキストラン硫酸,600mMのNaCl,10mMのリン酸バッファー,0%のエチレンカーボネート,10ng/μLのテキサスレッド標識HER2遺伝子DNAプローブ(サイズ218kb)及び50nMのFITC標識CEN−7 PNAプローブ。
FISHプローブ組成物IIa:32%のデキストラン硫酸,0mMのNaCl,0mMのリン酸バッファー,5%のエチレンカーボネート,10ng/μLのテキサスレッド標識HER2遺伝子DNAプローブ(サイズ218kb)及び50nMのFITC標識CEN−7 PNAプローブ。
FISHプローブ組成物IIb:32%のデキストラン硫酸,300mMのNaCl,5mMのリン酸バッファー,5%のエチレンカーボネート,10ng/μLのテキサスレッド標識HER2遺伝子DNAプローブ(サイズ218kb)及び50nMのFITC標識CEN−7 PNAプローブ.
FISHプローブ組成物IIc:32%のデキストラン硫酸,600mMのNaCl,10mMのリン酸バッファー,5%のエチレンカーボネート,10ng/μLのテキサスレッド標識HER2遺伝子DNAプローブ(サイズ218kb)及び50nMのFITC標識CEN−7 PNAプローブ.
FISHプローブ組成物IIIa:30%のデキストラン硫酸,0mMのNaCl,0mMのリン酸バッファー,10%のエチレンカーボネート,10ng/μLのテキサスレッド標識HER2遺伝子DNAプローブ(サイズ218kb)及び50nMのFITC標識CEN−7 PNAプローブ。
FISHプローブ組成物IIIb:30%のデキストラン硫酸,300mMのNaCl,5mMのリン酸バッファー,10%のエチレンカーボネート,10ng/μLのテキサスレッド標識HER2遺伝子DNAプローブ(サイズ218kb)及び50nMのFITC標識CEN−7 PNAプローブ。
FISHプローブ組成物IIIc:30%のデキストラン硫酸,600mMのNaCl,10mMのリン酸バッファー,10%のエチレンカーボネート,10ng/μLのテキサスレッド標識HER2遺伝子DNAプローブ(サイズ218kb)及び50nMのFITC標識CEN−7 PNAプローブ.
FISHプローブ組成物IVa:28%デキストラン硫酸,0mMのNaCl,0mMのリン酸バッファー,15%のエチレンカーボネート,10ng/μLのテキサスレッド標識HER2遺伝子DNAプローブ(サイズ218kb)及び50nMのFITC標識CEN−7 PNAプローブ。
FISHプローブ組成物IVb:28%のデキストラン硫酸,300mMのNaCl,5mMのリン酸バッファー,15%のエチレンカーボネート,10ng/μLのテキサスレッド標識HER2遺伝子DNAプローブ(サイズ218kb)及び50nMのFITC標識CEN−7 PNAプローブ。
FISHプローブ組成物IVc:28%のデキストラン硫酸,600mMのNaCl,10mMのリン酸バッファー,15%のエチレンカーボネート,10ng/μLのテキサスレッド標識HER2遺伝子DNAプローブ(サイズ218kb)及び50nMのFITC標識CEN−7 PNAプローブ。
FISHプローブ参照V:ブロッキングPNAを含むHER2 PharmDxプローブミックス(K5331,Dako)の標準販売バイアル。20時間の一晩のハイブリダイゼーション。
全組成物は単一相として存在していた。FISHプローブを82℃で5分間、ついで45℃で60分間、ブロッキングなしでインキュベートしたが、FISHプローブ参照Vは、PNAブロッキングし、20時間ハイブリダイズした。
【0165】
実施例10
この実施例は、本発明の組成物で処理された試料からのシグナル強度を、高塩(4×正常)条件下で極性非プロトン溶媒及びデキストラン硫酸濃度の関数として比較する。
FISHプローブ組成物I:0%のエチレンカーボネート,29%のデキストラン硫酸,1200mMのNaCl,20mMのリン酸バッファー,10ng/μLのテキサスレッド標識HER2遺伝子DNAプローブ及び50nMのFITC標識CEN−7 PNAプローブ。組成物は単一相であった。
FISHプローブ組成物II:5%のエチレンカーボネート,27%のデキストラン硫酸,1200mMのNaCl,20mMのリン酸バッファー,10ng/μLのテキサスレッド標識HER2遺伝子DNAプローブ及び50nMのFITC標識CEN−7 PNAプローブ。組成物は単一相であった。
FISHプローブ組成物III:10%のエチレンカーボネート,25%のデキストラン硫酸,1200mMのNaCl,20mMのリン酸バッファー,10ng/μLのテキサスレッド標識HER2遺伝子DNAプローブ及び50nMのFITC標識CEN−7 PNAプローブ。組成物は単一相であった。
FISHプローブ組成物IV(試験せず):20%のエチレンカーボネート,21%のデキストラン硫酸,1200mMのNaCl,20mMのリン酸バッファー,10ng/μLのテキサスレッド標識HER2遺伝子DNAプローブ及び50nMのFITC標識CEN−7 PNAプローブ。組成物は二つの相を有していた。
【0166】
実施例11
この実施例は、本発明の組成物の異なった相で処理した試料からのシグナル強度及びバックグラウンドを比較する。
FISHプローブ組成物:10%のデキストラン硫酸,300mMのNaCl,5mMのリン酸バッファー,40%のエチレンカーボネート,8ng/μLのテキサスレッド標識HER2遺伝子DNAプローブ及び600nMのFITC標識CEN−17 PNAプローブ。FISHプローブを82℃で5分間、ついで45℃で60分間、インキュベートした。ブロッキングなし。
【0167】
実施例12
この実施例は前の実施例と同様であるが、異なったDNAプローブ及びECの代わりにGBLを使用している。
FISHプローブ組成物:10%のデキストラン硫酸,300mMのNaCl,5mMのリン酸バッファー,40%のGBL,10ng/μLのテキサスレッド標識CCND1遺伝子DNAプローブ及び600nMのFITC標識CEN−17 PNAプローブ。
FISHプローブを82℃で5分間、ついで45℃で60分間、インキュベートした。ブロッキングなし。
【0168】
実施例13
この実施例は、本発明の組成物中の相の数を、極性非プロトン溶媒及びデキストラン硫酸濃度の関数として調べる。
FISHプローブ組成物:10又は20%のデキストラン硫酸;300mMのNaCl;5mMのリン酸バッファー;0、5、10、15、20、25、30%のEC;10ng/μLのプローブ.
【0169】
実施例14
この実施例は、本発明の異なった組成物で処理した試料からのシグナル強度及びバックグラウンドをプローブ濃度及びハイブリダイゼーション時間の関数として比較する。
FISHプローブ組成物I:10ng/μLのHER2 TxRed標識DNAプローブ(標準濃度)及び標準濃度のCEN7 FITC標識PNAプローブ(50nM);15%のEC;20%のデキストラン硫酸;600mMのNaCl;10mMのリン酸バッファー。
FISHプローブ組成物II:5ng/μLのHER2 TxRed標識DNAプローブ(標準濃度の1/2)及び標準濃度(50nM)のFITC標識CEN7 PNAプローブ;15%のEC;20%のデキストラン硫酸;600mMのNaCl;10mMのリン酸バッファー。
FISHプローブ組成物III:2.5ng/μLのHER2 TxRed標識DNAプローブ(標準濃度の1/4)及び1/2の標準濃度(25nM)のCEN7 PNAプローブ;15%のEC;20%のデキストラン硫酸;600mMのNaCl;10mMのリン酸バッファー。
組成物I−IIIは単一相として存在していた。FISHプローブを82℃で5分間、ついで45℃で3時間、2時間及び1時間、インキュベートした。
【0170】
実施例15
この実施例は、本発明の組成物で処理された試料からのシグナル強度及びバックグラウンドを、ブロッキング剤の関数として比較する。
FISHプローブ組成物:15%のEC;20%のデキストラン硫酸;600mMのNaCl;10mMのリン酸バッファー;2.5ng/μLのHER2 TxRed標識DNAプローブ(標準濃度の1/4)及び標準濃度の1/2の(300nM)FITC標識CEN17 PNAプローブ。試料は、本発明の組成物を使用するハイブリダイゼーション前に、(a)なし;(b)0.1μg/μLのCOT1(15279−011,Invitrogen);(c)0.3μg/μLのCOT1;又は(d)0.1μg/μLの全ヒトDNAでブロックした。
全ての試料は単一相として存在していた。FISHプローブを82℃で5分間、ついで45℃で60分、インキュベートした。
【0171】
実施例16
この実験は、本発明の組成物を使用してバックグラウンド染色を除去する異なった方法を比較する。
全ての組成物は、15%のEC、20%のデキストラン硫酸、600mMのNaCl、10mMのリン酸バッファー、2.5ng/μLのHER2 DNAプローブ(標準濃度の1/4)、300nMのCEN17 PNAプローブ(標準濃度の1/2)、及び次のバックグラウンド低減剤の一つを含んでいた:
A)5mMのブロッキング−PNA(Kisrsten Vang Nielsen等, PNA Suppression Method Combined with Fluorescence In Situ Hybridisation (FISH) Technique inPRINS and PNA Technologies in Chromosomal Investigation, Chapter 10 (Franck Pellestor編) (Nova Science Publishers, Inc. 2006)を参照)
B)0.1μg/μLのCOT−1 DNA
C)0.1μg/μLの全ヒトDNA(THD)(超音波処理未標識THD)
D)0.1μg/μLの剪断サケ精液 DNA(AM9680,Ambion)
E)0.1μg/μLのウシ胸腺 DNA(D8661,Sigma)
F)0.1μg/μLのニシン精液DNA(D7290,Sigma)
G)0.5%のホルムアミド
H)2%のホルムアミド
I)1%のエチレングリコール(1.09621,Merck)
J)1%のグリセロール(1.04095,Merck)
K)1%の1,3−プロパンジオール(533734,Aldrich)
L)1%のHO(コントロール)
全ての試料は単一相として存在していた。プローブを82℃で5分間、ついでFFPE組織片上で45℃で60分及び120分、インキュベートした。
【0172】
実施例17
この実験は、二つの異なった極性非プロトン溶媒を使用する上相及び下相からのシグナル強度を比較する。
FISHプローブ組成物I:10%のデキストラン硫酸,300mMのNaCl,5mMのリン酸バッファー,40%のエチレントリチオカーボネート(ET)(E27750,Aldrich),5μMのブロッキングPNAs,10ng/μLのテキサスレッド標識CCND1遺伝子DNAプローブ。
FISHプローブ組成物II:10%のデキストラン硫酸,300mMのNaCl,5mMのリン酸バッファー,40%のグリコールサルファイト(GS)(G7208,Aldrich),5μMのブロッキングPNAs,10ng/μLのテキサスレッド標識CCND1遺伝子DNAプローブ。
FISHプローブを82℃で5分間、ついで45℃で60分、インキュベートした。
【0173】
実施例18
この実験は一相系を形成する様々な極性非プロトン溶媒の能力を調べる。
全ての組成物は、20%のデキストラン硫酸、600mMのNaCl、10mMのリン酸バッファー、及び10、15、20、又は25%の次の極性非プロトン溶媒の一つを含んでいた:
スルホラン
γ−ブチロラクトン
エチレントリチオカーボネート
グリコールサルファイト
プロピレンカーボネート
結果: 調べた全ての濃度で極性非プロトン溶媒の全てが使用された組成物において少なくとも2相系をつくり出した。しかしながら、これは、これらの化合物が他の組成物条件下で一相系をつくることができることを排除しない。
【0174】
実施例19
この実験は、複数のFFPE組織切片に対する発色性インサイツハイブリダイゼーション(CISH)解析における本発明の組成物の使用を調べる。
FISHプローブ組成物I:4.5ng/μLのTCRAD FITC標識遺伝子DNAプローブ(標準濃度の1/4)(RP11−654A2,RP11−246A2,CTP−2355L21,RP11−158G6,RP11−780M2,RP11−481C14;サイズ1018kb);15%のEC;20%のデキストラン硫酸;600mMのNaCl;10mMのクエン酸バッファー,pH6.0。
FISHプローブ組成物II:4.5ng/μLのTCRAD FITC標識遺伝子DNAプローブ(標準濃度の1/4)(サイズ1018kb);15%のEC;20%のデキストラン硫酸;600mMのNaCl;10mMのクエン酸バッファー,pH6.0;0.1ug/uLの剪断サケDNA精子。
FISHプローブ組成物III:300nMの各個々のFITC標識PNA CEN17プローブ(標準濃度の1/2);15%のEC;20%のデキストラン硫酸;600mMのNaCl;10mMのクエン酸バッファー,pH6.0。
全ての試料は、Dako DuoCISHプロトコル(SK108)及びスプリットプローブの組成物を使用して分析したが、但し、ストリンジェントな洗浄を10分の代わりに20分間実施され、DuoCISHレッド色素原工程は使用しなかった。
【0175】
実施例20
この実施例は、二つのDNAプローブを持つ本発明の組成物で処理されたFFPE組織切片からのシグナル強度及びバックグラウンドを比較する。
FISHプローブ組成物I:9ng/μLのIGH FITC標識遺伝子DNAプローブ(RP11−151B17,RP11−112H5,RP11−101G24,RP11−12F16,RP11−47P23,CTP−3087C18;サイズ612kb);6.4ng/μLのMYC TxRed標識DNAプローブ(CTD−2106F24,CTD−2151C21,CTD−2267H22;サイズ418kb);15%のEC;20%のデキストラン硫酸;600mMのNaCl;10mMのクエン酸バッファー,pH6.0。
FISHプローブ組成物II:9ng/μLのIGH FITC標識遺伝子DNAプローブ;6.4ngのMYC TxRed標識DNAプローブ;15%のEC、20%のデキストラン硫酸;600mMのNaCl;10mMのクエン酸バッファー,pH6.0;0.1ug/uLの剪断サケ精液DNA。
【0176】
実施例21
この実験は細胞試料での本発明の組成物の使用を調べる。
FISHプローブ組成物:15%のEC;20%のデキストラン硫酸;600mMのNaCl;10mMのリン酸バッファー;5ng/μLのHER2 TxRed標識DNAプローブ(標準濃度の1/2)及び1/2の標準濃度のCEN7(25nM)。
FISHプローブを、全てブロッキングなしで、分裂中期染色体スプレッド上で82℃で5分間、ついで45℃で30分間、インキュベートした。
典型的にはRバンド形成を示す伝統的なISH溶液と比較して、本発明の組成物では、染色体バンド形成(Rバンド形成パターン)は観察されなかった。静止期核及び分裂中期の低い均質な赤いバックグラウンド染色が観察された。
【0177】
実施例22
この実施例は、細胞診試料、分裂中期スプレッド上での、ブロッキングを伴い、またブロッキングなしでの、DNAプローブからのシグナル強度及びバックグラウンドを比較する。
FISHプローブ組成物I:6ng/μLのTCRADテキサスレッド標識遺伝子DNAプローブ(標準濃度)(CTP−31666K20,CTP−2373N7;サイズ301kb)及び4.5ng/μLのFITC標識遺伝子DNAプローブ(標準濃度の1/4); 15%EC、20%デキストラン硫酸;600mMのNaCl;10mMのクエン酸バッファー,pH6.0。
FISHプローブ組成物II:6ng/μL TCRAD テキサスレッド標識遺伝子DNAプローブ(標準濃度)(サイズ301kb)及び4.5 ng/μL FITC標識遺伝子DNAプローブ(標準濃度の1/4);15%EC、20%デキストラン硫酸; 600mMのNaCl;10mMのクエン酸バッファー,pH6.0;0.1ug/uLの剪断サケ精液DNA。
FISHプローブを82℃で5分間、ついで45℃で60分、インキュベートした。
再び、染色体バンド(R−バンドパターン)は本発明の組成物では観察されなかった。加えて、静止期核又は分裂中期染色体のバックグラウンド染色は観察されなかった。
【0178】
実施例23
この実施例はハイブリダイゼーション前のプローブ及び試料の共変性を含む実験と、ハイブリダイゼーション前のプローブ及び検体の別々の変性を含む実験に対して、シグナル強度及びバックグランドを比較する。
FISHプローブ組成物:2.5ng/μLのHER2テキサスレッド標識DNAプローブ(標準濃度の1/4)及び標準濃度の1/2(300nM)のCEN17 PNAプローブ;15%EC,20%デキストラン硫酸;600mMのNaCl;10mMのクエン酸バッファー,pH6.0。
検体変性組成物:15%EC,20%デキストラン硫酸;600mMのNaCl;10mMのクエン酸バッファー,pH6.0。
変性は表に示した通りに5分実施した。ハイブリダイゼーションは45℃で60分実施した。参照試料では、FISHプローブ及び組織を一緒に変性させた。
これらの結果は、バックグランド染色は変性が検体及びプローブにおいて別々に実施された場合に、より低いことを示している。バックグランド染色はまた変性が試料及びプローブにおいて別々に実施された場合に、より一層均質であることを示している(データ示さず)。
【0179】
実施例24
この実施例はハイブリダイゼーション前のプローブ及び検体の共変性を含む実験と、ハイブリダイゼーション前のプローブ及び検体の別々の変性を含む実験に対して、シグナル強度及びバックグランドを比較する。
検体変性組成物I:15%EC,10mMのクエン酸バッファー,pH6.0
検体変性組成物II:20%EC,10mMのクエン酸バッファー,pH6.0
検体変性組成物III:25%EC,10mMのクエン酸バッファー,pH6.0
検体変性組成物IV:30%EC,10mMのクエン酸バッファー,pH6.0
検体変性組成物V:40%EC,10mMのクエン酸バッファー,pH6.0
検体変性組成物VI:40%EC
検体変性組成物VII:15%EC,20%デキストラン硫酸,600mMのNaCl,10mMのクエン酸バッファー,pH6.0
上記の6つ全てのバッファー組成物は室温で一相である。
FISHプローブ組成物:2.5ng/μLのHER2テキサスレッド標識DNAプローブ(標準濃度の1/4)及び1/2の濃度(300nM)のCEN17 PNAプローブ;15%EC,20%デキストラン硫酸;600mMのNaCl;10mMのクエン酸バッファー,pH6.0。
プローブバッファーは82℃で5分間変性させた。組織試料は異なる試料変性組成物により82℃で5分間変性させた。
スライドを、最初の脱水工程まで上記のように前処理した。試料がペプシンにより消化された後、スライドを2×3分洗浄し、検体変性組成物の一つを200μL加えた。ついで、スライドをカバーガラスで覆い、ハイブリダイザー(Dako)で82℃5分インキュベートした。ついでカバーガラスを外し、スライドを、2×SSCで洗浄した検体変性組成物I*のスライドを除いて、洗浄バッファーで2×3分間洗浄した。ついでスライドを96%エタノール中で2分間脱水し、空気乾燥した。
FISHプローブはヒートブロック上にて1.5mL遠心チューブ中で82℃で5分間変性させ、氷上に配した。10μLの変性FISHプローブを、変性した脱水検体に添加し、スライドをカバーガラスで覆い密封し、ついで45℃で60分間ハイブダイズした。ハイブリダイゼーションの後、検体を上記のように処理した。
参照試料中、FISHプローブ及び組織は一緒に変性させた。
【0180】
結果:
これらの結果は、試料及びプローブの別々の変性はプローブ及び検体の共変性に比しバックグランドを著しく減少させることを示している。バックグランド染色はまたプローブ及び検体を共変性させた時よりもより均質である(データ示さず)。
【0181】
実施例25
この実施例はハイブリダイゼーション前のプローブ及び検体の共変性を含む実験と、ハイブリダイゼーション前のプローブ及び検体の別々の変性を含む実験のシグナル強度及びバックグランドを比較する。
FISHプローブ組成物:2.5ng/μLのHER2テキサスレッド標識DNAプローブ(標準濃度の1/4)及び標準濃度の1/2(300nM)のCEN17 PNAプローブ;15%EC,20%デキストラン硫酸;600mMのNaCl;10mMのクエン酸バッファー,pH6.0。
検体変性組成物:15%EC,20%デキストラン硫酸;600mMのNaCl;10mMのクエン酸バッファー,pH6.0。
スライドを、最初の脱水工程まで上記のように前処理した。試料がペプシンにより消化された後、スライドを2×3分間洗浄し、検体変性組成物を200μL加えた。ついで、スライドをカバーガラスで覆い、ハイブリダイザー(Dako)で72℃10分間インキュベートした。ついでカバーガラスを外し、洗浄バッファーで2×3分間洗浄した。ついでスライドを96%エタノール中で2分間脱水し、空気乾燥した。
FISHプローブ(11μL分量)を、表に示した通りにヒートブロック上にて1.5mL遠心チューブ中で変性させ、ついて氷上に置いた。10μLの変性FISHプローブを変性した脱水検体に添加し、スライドをカバーガラスで覆い密封し、ついで45℃で60分間ハイブダイズした。ハイブリダイゼーションの後、検体を上記のように処理した。
【0182】
結果:
これらの結果は、シグナル強度又はバックグランドに負の影響を与えること無しに、FISHプローブの変性温度を、例えば62℃で1分間に下げることが可能であることを示している。
【0183】
実施例26
この実施例はハイブリダイゼーション前のプローブ及び検体の共変性を含む実験と、ハイブリダイゼーション前のプローブ及び検体の別々の変性を含む実験のシグナル強度及びバックグランドを比較する。
FISHプローブ組成物I:2.5ng/μLのHER2テキサスレッド標識DNAプローブ(標準濃度の1/4)及び標準濃度の1/2(300nM)のCEN17 PNAプローブ;15%EC,20%デキストラン硫酸;600mMのNaCl;10mMのクエン酸バッファー,pH6.2。
検体変性組成物II:15%EC,10mMのクエン酸バッファー,pH6.2。
検体変性組成物III: 15%EC,20%デキストラン硫酸;600mMのNaCl;10mMのクエン酸バッファー,pH6.0。
スライドを変性工程まで上記のように前処理した。試料を脱水した後、200μLの検体変性組成物を添加した。スライドをカバーガラスで覆い、ついで67℃で10分間、ハイブリダイザー(Dako)でインキュベートした。ついでカバーガラスを外し、スライドを2×3分間洗浄し、96%エタノール中で2分間脱水し、空気乾燥した。
FISHプローブをヒートブロック上にて1.5mL遠心チューブ中で67℃で3分間変性させた後、直ちに使用した。10μLの変性FISHプローブを、変性された脱水検体に添加した。スライドをカバーガラスで覆い密封し、45℃で60分間ハイブダイズした。ハイブリダイゼーションの後、検体は上記のように処理した。
比較試料では、FISHプローブ及び組織を67℃で10分間一緒に変性させ、45℃で60分間ハイブリダイズさせた。
【0184】
結果:
これらの結果は試料及びプローブの別々の変性はプローブ及び検体の共変性に比しバックグランドを著しく減少させることを示している。バックグランド染色はまたプローブ及び検体を共変性させた時よりもより均質である。バックグランド染色は変性バッファーがデキストラン硫酸又はNaClを含まないときよりもわずかに低い。
【0185】
実施例27
この実施例はハイブリダイゼーション前のプローブ及び検体の共変性を含む実験と、プローブ及び検体を、ハイブリダイゼーション前の各々異なる変性剤による別々の変性を含む実験に対して、シグナル強度及びバックグランドを比較する。
FISHプローブ組成物I:40%ホルムアミド,10%デキストラン硫酸,300mMのNaCl,5mMのリン酸バッファー,5μMのブロッキングPNA,10ng/μLのHER2テキサスレッド標識DNA遺伝子プローブ標準濃度(600mM)のCEN17 PNAプローブ。
検体変性組成物II:40%ホルムアミド,10%デキストラン硫酸,300mMのNaCl,5mMのリン酸バッファー,5μMのブロッキングPNA。
検体変性組成物III:15%EC,10mMクエン酸バッファー、pH6.2。
スライドを変性工程まで上記のように前処理した。試料を脱水した後、100μLの検体変性組成物を添加した。スライドをカバーガラスで覆いハイブリダイザー(Dako)で示した通りにインキュベートした。ついでカバーガラスを外し、スライドを2×3分間洗浄し、96%エタノール中で2×3分間脱水し、空気乾燥した。
FISHプローブはヒートブロック上にて1.5mL遠心チューブ中で82℃で5分間変性させた後、直ちに使用した。10μLの変性FISHプローブを、変性した脱水検体に添加した。スライドをカバーガラスで覆い密封し、ついで45℃で一晩(約20時間)ハイブダイズした。ハイブリダイゼーションの後、検体を上記のように処理された。
比較試料では、FISHプローブ及び組織を、示した通りに一緒に変性させ、45℃で一晩(約20時間)ハイブリダイズさせた。
【0186】
結果:
これらの結果は、ホルムアミドによるプローブ及び検体の共変性と比較したとき、ECによる試料の別々の変性は等価な染色バックグランド及びシグナル強度を提供することを示している。DNAシグナルは、しかし、より低い変性温度ではホルムアミド(II)よりもEC(III)の方が僅かに強い。バックグランド染色は検体組成物II(ホルミアミド)よりも検体組成物III(EC)による方が低い。別々の及び共変性の双方において67℃/10分間での変性に対して最良の結果が、参照と同等の結果を生み出した組成物III(EC)を使用する別々の変性において得られた。
【0187】
実施例28
この実施例はハイブリダイゼーション前にプローブ及び検体を別々に変性させることを含む実験において、シグナル強度及びバックグランドを比較する。
FISHプローブ組成物I:3.3ng/μLのHER2テキサスレッド標識DNAプローブ(標準濃度の1/3)及び標準濃度の1/2(300nM)のCEN17 PNAプローブ;15%EC(E26258,Aldrich−Sigma),20%デキストラン硫酸;600mMのNaCl;10mMのクエン酸バッファー,pH6.2。
FISHプローブ組成物II:3.3ng/μLのHER2テキサスレッド標識DNAプローブ(標準濃度の1/3)及び標準濃度の1/2(300nM)のCEN17 PNAプローブ;15%SL,20%デキストラン硫酸;600mMのNaCl;10mMのクエン酸バッファー,pH6.2。
FISHプローブ組成物III:3.3ng/μLのHER2テキサスレッド標識DNAプローブ(標準濃度の1/3)及び標準濃度の1/2(300nM)のCEN17 PNAプローブ;15%PC,20%デキストラン硫酸;600mMのNaCl;10mMのクエン酸バッファー,pH6.2。
FISHプローブ組成物IV:3.3ng/μLのHER2テキサスレッド標識DNAプローブ(標準濃度の1/3)及び標準濃度の1/2(300nM)のCEN17 PNAプローブ;15%GBL,20%デキストラン硫酸;600mMのNaCl;10mMのクエン酸バッファー,pH6.2。
FISHプローブ組成物V:3.3ng/μLのHER2テキサスレッド標識DNAプローブ(標準濃度の1/3)及び標準濃度の1/2(300nM)のCEN17 PNAプローブ;15%ホルムアミド,20%デキストラン硫酸;600mMのNaCl;10mMのクエン酸バッファー,pH6.2。
検体変性組成物VI:15%EC,10mMのクエン酸バッファー,pH6.2。
検体変性組成物VII:15%SL,10mMのクエン酸バッファー,pH6.2。
検体変性組成物VIII:15%PC,10mMのクエン酸バッファー,pH6.2。
検体変性組成物IX:15%GBL,10mMのクエン酸バッファー,pH6.2。
検体変性組成物X:15%ホルムアミド,10mMのクエン酸バッファー,pH6.2。
スライドを変性工程まで上記のように前処理した。試料を脱水した後、200μLの検体変性組成物を添加した。スライドをカバーガラスで覆い、ハイブリダイザー(Dako)で67℃で10分間インキュベートした。ついでカバーガラスを外し、スライドを2×3分間洗浄し、96%エタノール中で2分間脱水し、空気乾燥した。
FISHプローブはヒートブロック上にて1.5mL遠心チューブ中で67℃で5分間変性させた後、直ちに使用した。10μLの変性FISHプローブを、変性した脱水検体に添加した。スライドをカバーガラスで覆い密封し、ついで45℃で60分間ハイブダイズした。ハイブリダイゼーションの後、検体を上記のように処理した。
【0188】
これらの結果は、EC、SL、PC及びGBLによる変性は、短いハイブリダイゼーションインキュベーション時間(60分)を使用するときに、ホルムアミドによる別々の変性と比較して、DNAプローブのより強いシグナル強度を与えることを示している。
【0189】
実施例29
この実施例はハイブリダイゼーション前にプローブ及び検体を別々に変性させることを含む実験において、シグナル強度及びバックグランドを比較する。
FISHプローブ組成物I:3.3ng/μLのHER2テキサスレッド標識DNAプローブ(標準濃度の1/3)及び標準濃度の1/2(300nM)のCEN17 PNAプローブ;15%EC(E26258,Aldrich−Sigma),20%デキストラン硫酸;600mMのNaCl;10mMのクエン酸バッファー,pH6.2。
検体変性組成物II:15%EC,10mMのクエン酸バッファー,pH6.2。
検体変性組成物III:15%SL,10mMのクエン酸バッファー,pH6.2。
検体変性組成物IV:15%PC,10mMのクエン酸バッファー,pH6.2。
検体変性組成物V:15%GBL,10mMのクエン酸バッファー,pH6.2。
検体変性組成物VI:15%ホルムアミド,10mMのクエン酸バッファー,pH6.2。
スライドを変性工程まで上記のように前処理した。試料を脱水した後、200μLの検体変性組成物を添加した。スライドをカバーガラスで覆い、ハイブリダイザー(Dako)で67℃で10分間インキュベートした。ついでカバーガラスを外し、スライドを2×3分間洗浄し、96%エタノール中で2分間脱水し、空気乾燥した。
FISHプローブはヒートブロック上にてチューブ中で67℃で5分間変性させ、直ちに使用した。10μLの変性FISHプローブを、変性した脱水検体に添加した。スライドをカバーガラスで覆い密封し、ついで45℃で60分間ハイブダイズした。ハイブリダイゼーションの後、検体を上記のように処理した。
【0190】
これらの結果は、EC(II)、SL(III)、PC(IV)、GBL(V)及びホルムアミド(VI)による別々の組織変性は、極性非プロトンベースのプローブバッファー(I)及び短いハイブリダイゼーションインキュベーション時間(60分)を使用するときに、等価な染色バックグランド及びシグナル強度を与えることを示している。
【0191】
実施例30
この実施例はハイブリダイゼーション前にプローブ及び検体を別々に変性させることを含む実験において、シグナル強度及びバックグランドを比較する。
FISHプローブ組成物I(K5331,Dako):40%ホルムアミド,10%デキストラン硫酸,300mMのNaCl,5mMのリン酸バッファー,5μMのブロッキングPNA,10ng/μLのHER2テキサスレッド標識DNA遺伝子プローブ標準濃度(600mM)のCEN17 PNAプローブ。
検体変性組成物II:15%EC,10mMのクエン酸バッファー,pH6.2。
検体変性組成物III:15%SL,10mMのクエン酸バッファー,pH6.2。
検体変性組成物IV:15%PC,10mMのクエン酸バッファー,pH6.2。
検体変性組成物V:15%GBL,10mMのクエン酸バッファー,pH6.2。
検体変性組成物VI:15%ホルムアミド,10mMのクエン酸バッファー,pH6.2。
スライドを変性工程まで上記のように前処理した。試料を脱水した後、200μLの検体変性組成物を添加した。スライドをカバーガラスで覆いハイブリダイザー(Dako)で67℃で10分間インキュベートした。ついでカバーガラスを外し、スライドを2×3分間洗浄し、96%エタノール中で2分間脱水し、空気乾燥した。
FISHプローブはヒートブロック上にてチューブ中で82℃で5分間変性させ、直ちに使用した。10μLの変性FISHプローブを、変性した脱水検体に添加した。スライドをカバーガラスで覆い密封し、ついで45℃で一晩ハイブダイズした。ハイブリダイゼーションの後、検体を上記のように処理した。
【0192】
これらの結果は、EC(II)、SL(III)、PC(IV)及びGBL(V)による別々の組織変性は、ホルムアミド(VI)による別々の組織変性と比較して、等価又はより良いシグナル強度を与えることを示している。このことは、予め変性させた伝統的なホルミアミドを基にしたプローブ(I)及び長いハイブリダイゼーションインキュベーション時間(約20時間)を使用するときにも当てはまった。バックグランド染色も同等であった。
【0193】
更なる実施態様
実施態様1. 核酸配列をハイブリダイズさせる方法において、
− 第一の核酸配列を、二本鎖ヌクレオチド配列を変性させるのに有効な量の少なくとも一種の極性非プロトン溶媒を含有する第一の水性組成物と組み合わせ、
− 第二の核酸配列を、二本鎖ヌクレオチド配列を変性させるのに有効な量の少なくとも変性剤を含有する第二の水性組成物と組み合わせ、
− 第一及び第二の核酸配列を第一及び第二の核酸配列をハイブリダイズさせるのに少なくとも十分な時間の間組み合わせる
ことを含み、ここで極性非プロトン溶媒はジメチルスルホキシド(DMSO)では無い方法。
実施態様2. 核酸配列をハイブリダイズさせる方法において、
− 第一の核酸配列を、二本鎖ヌクレオチド配列を変性させるのに有効な量の少なくとも一種の極性非プロトン溶媒を含有する第一の水性組成物と組み合わせ、
− 上記第一の核酸配列を、第二の核酸配列と二本鎖ヌクレオチド配列を変性させるのに効果的な量の少なくとも一種の変性剤を含有する第二の水性組成物と、第一及び第二の核酸配列をハイブリダイズさせるのに少なくとも十分な時間の間、組み合わせる
ことを含み、ここで極性非プロトン溶媒はジメチルスルホキシド(DMSO)では無い方法。
実施態様3. 核酸配列をハイブリダイズさせる方法において、
− 第一の核酸配列を、二本鎖ヌクレオチド配列を変性させるのに有効な量で少なくとも一種の極性非プロトン溶媒を含有する第一の水性組成物と組み合わせ、
− 上記第一の核酸配列を、第一及び第二核酸配列をハイブリダイズさせるのに少なくとも十分な時間の間、第二の核酸配列と組み合わせる
ことを含み、ここで極性非プロトン溶媒はジメチルスルホキシド(DMSO)では無い方法。
実施態様4. 第二の水性組成物中の変性剤が極性非プロトン溶媒である実施態様1又は2に記載の方法。
実施態様5. 第一の核酸配列が生物学的試料中にある実施態様1から4のいずれか一つに記載の方法。
実施態様6. 生物学的試料は細胞学又は組織学の試料である実施態様5に記載の方法。
実施態様7. 第一の核酸配列が一本鎖配列であり及び第二の核酸配列が二本鎖配列である実施態様1−6のいずれかに記載の方法。
実施態様8. 第一の核酸配列が二本鎖配列であり及び第二の核酸配列が一本鎖配列である実施態様1−6のいずれかに記載の方法。
実施態様9. 第一及び第二の核酸配列が二本鎖配列である実施態様1−6のいずれかに記載の方法。
実施態様10. 第一及び第二の核酸配列が一本鎖配列である実施態様1−6のいずれかに記載の方法。
実施態様11. 第一及び第二の核酸配列を変性させるのに十分な量のエネルギーが提供される実施態様1−10のいずれかに記載の方法。
実施態様12. 第一の核酸配列を変性させるのに十分な量のエネルギーが提供される実施態様1−11のいずれかに記載の方法。
実施態様13. 第二の核酸配列を変性させるのに十分な量のエネルギーが提供される実施態様1−12のいずれかに記載の方法。
実施態様14. エネルギーが組成物を加熱することで提供される実施態様11−13に記載の方法。
実施態様15. 加熱工程が、マイクロ波、温浴、熱板、熱線、ペルチェ素子、誘導加熱又は加熱ランプの使用によって実施される実施態様14に記載の方法。
実施態様16. 第一の核酸を変性させる温度が70℃から85℃である実施態様12−15のいずれか一項に記載の方法。
実施態様17. 第二の核酸を変性させる温度が70℃から85℃である実施態様12−16のいずれか一項に記載の方法。
実施態様18. 第一の核酸を変性させる温度が60℃から75℃である実施態様12−15のいずれか一項に記載の方法。
実施態様19. 第二の核酸を変性させる温度が60℃から75℃である実施態様12−15又は18のいずれか一項に記載の方法。
実施態様20. 第一の核酸を変性させる温度が62℃、67℃、72℃又は82℃である実施態様12−15のいずれか一項に記載の方法。
実施態様21. 第二の核酸を変性させる温度が62℃、67℃、72℃又は82℃である実施態様12−15又は20のいずれか一項に記載の方法。
実施態様22. 第一の核酸を変性させるのに十分な時間が提供される実施態様1−21のいずれか一項に記載の方法。
実施態様23. 第二の核酸を変性させるのに十分な時間が提供される実施態様1−22のいずれか一項に記載の方法。
実施態様24. 時間は1分、2分、3分、4分、5分、10分、15分、又は30分である実施態様22又は23に記載の方法。
実施態様25. ハイブリダイジング工程が組成物を加熱し冷却する工程を含む実施態様1−24のいずれか一項に記載の方法。
実施態様26. ハイブリダイゼーション工程が8時間未満を要する実施態様1−25のいずれか一項に記載の方法。
実施態様27. ハイブリダイゼーション工程が1時間未満を要する実施態様26に記載の方法。
実施態様28. ハイブリダイゼーション工程が30分未満を要する実施態様27に記載の方法。
実施態様29. ハイブリダイゼーション工程が15分未満を要する実施態様28に記載の方法。
実施態様30. ハイブリダイゼーション工程が5分未満を要する実施態様29に記載の方法。
実施態様31. ブロッキング工程を更に含む実施態様1−30のいずれか一項に記載の方法。
実施態様32. 水性組成物中の極性非プロトン溶媒の濃度が約1%から95%(vv)である実施態様1−31の何れか一に記載の方法。
実施態様33. 極性非プロトン溶媒の濃度が5%から10%(vv)である実施態様32に記載の方法。
実施態様34. 極性非プロトン溶媒の濃度が10%から20%(vv)である実施態様32に記載の方法。
実施態様35. 極性非プロトン溶媒の濃度が20%から30%(vv)である実施態様32に記載の方法。
実施態様36. 水性組成物中の極性非プロトン溶媒が無毒性である実施態様1−35の何れか一に記載の方法。
実施態様37. 但し、水性組成物中の極性非プロトン溶媒はホルムアミドを含有しない実施態様1−36の何れか一に記載の方法。
実施態様38. 但し、水性組成物中の極性非プロトン溶媒は10%未満のホルムアミドを含有する実施態様1−36の何れか一に記載の方法。
実施態様39. 但し、水性組成物は2%未満のホルムアミドを含有する実施態様38に記載の方法。
実施態様40. 但し、水性組成物は1%未満のホルムアミドを含有する実施態様39に記載の方法。
実施態様41. 水性組成物中の極性非プロトン溶媒は、ラクトン、スルホン、ニトリル、サルファイト、及び/又はカーボネートの官能性を有する実施態様1−40の何れか一に記載の方法。
実施態様42. 水性組成物中の極性非プロトン溶媒が、17.7から22.0MPa1/2の範囲の分散溶解度パラメータ、13から23MPa1/2の範囲の極性溶解度パラメータ、及び3から13MPa1/2の範囲の水素結合溶解度パラメータを有する実施態様1−41の何れか一に記載の方法。
実施態様43. 水性組成物中の極性非プロトン溶媒が環状塩基構造を有する実施態様1−42の何れか一に記載の方法。
実施態様44. 水性組成物中の極性非プロトン溶媒が

(ここで、XがOであり、R1がアルキルジイルである)、及び

(ここで、Xは任意であり、存在する場合は、O又はSから選択され、
Zは任意であり、存在する場合は、O又はSから選択され、
A及びBは独立してO又はN又はS又はアルキルジイルの一部又は第1級アミンであり、
Rはアルキルジイルであり、
YはO又はS又はCである)
からなる群から選択される実施態様1−43の何れか一に記載の方法。
実施態様45. 水性組成物中の極性非プロトン溶媒が、アセトアニリド、アセトニトリル、N−アセチルピロリドン、4−アミノピリジン、ベンズアミド、ベンズイミダゾール、1,2,3−ベンゾトリアゾール、ブタジエンジオキシド、2,3−ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、カプロラクトン(イプシロン)、クロロ無水マレイン酸、2−クロロシクロヘキサノン、クロロエチレンカーボネート、クロロニトロメタン、無水シトラコン酸、クロトンラクトン、5−シアノ−2−チオウラシル、シクロプロピルニトリル、硫酸ジメチル、ジメチルスルホン、1,3−ジメチル−5−テトラゾール、1,5−ジメチルテトラゾール、1,2−ジニトロベンゼン、2,4−ジニトロトルエン、ジフェイニルスルホン、1,2−ジニトロベンゼン、2,4−ジニトロトルエン、ジフェイニルスルホン、イプシロン−カプロラクタム、エタンスルホニルクロリド、エチルエチルホスフィネート、N−エチルテトラゾール、エチレンカーボネート、エチレントリチオカーボネート、エチレングリコールサルフェート、グリコールサルファイト、フルフラール、2−フロニトリル、2−イミダゾール、イサチン、イソキサゾール、マロノニトリル、4−メトキシベンゾニトリル、1−メトキシ−2−ニトロベンゼン、メチルαブロモテトロネート、1−メチルイミダゾール、N−メチルイミダゾール、3−メチルイソキサゾール、N−メチルモルホリン−N−オキシド、メチルフェニルスルホン、N−メチルピロリジノン、メチルスルホラン、メチル−4−トルエンスルホネート、3−ニトロアニリン、ニトロベンズイミダゾール、2−ニトロフラン、1−ニトロソ−2−ピロリジノン、2−ニトロチオフェン、2−オキサゾリジノン、9,10−フェナントレンキノン、N−フェニルシドノン、無水フタル酸、ピコリノニトリル(2−シアノピリジン)、1,3−プロパンスルトン、β−プロピオラクトン、プロピレンカーボネート、4H−ピラン−4−チオン、4H−ピラン−4−オン(γ−ピロン)、ピリダジン、2−ピロリドン、サッカリン、スクシノニトリル、スルファニルアミド、スルホラン、2,2,6,6−テトラクロロシクロヘキサノン、テトラヒドロチアピランオキシド、テトラメチレンスルホン(スルホラン)、チアゾール、2−チオウラシル、3,3,3−トリクロロプロペン、1,1,2−トリクロロプロペン、1,2,3−トリクロロプロペン、トリメチレンスルフィド−ジオキシド、及びトリメチレンサルファイトからなる群から選択される実施態様1−44の何れか一に記載の方法。
実施態様46. 水性組成物中の極性非プロトン溶媒が、

からなる群から選択される実施態様1−44の何れか一に記載の方法。
実施態様47. 水性組成物中の極性非プロトン溶媒が、

である実施態様1−44の何れか一に記載の方法。
実施態様48. 水性組成物が、緩衝剤、塩、促進剤、キレート剤、洗浄剤、及びブロッキング剤からなる群から選択される少なくとも一種の更なる成分を更に含む実施態様1−47に記載の方法。
実施態様49. 促進剤がデキストラン硫酸であり、塩がNaCl及び/又はホスフェートバッファーである実施態様48に記載の方法。
実施態様50. デキストラン硫酸が5%から40%の濃度で存在し、NaClが0mMから1200mMの濃度で存在し、及び/又はホスフェートバッファーが0mMから50mMの濃度で存在する実施態様49に記載の方法。
実施態様51. デキストラン硫酸が10%から30%の濃度で存在し、NaClが300mMから600mMの濃度で存在し、及び/又はホスフェートバッファーが5mMから20mMの濃度で存在する実施態様50に記載の方法。
実施態様52. 促進剤が、ホルムアミド、DMSO、グリセロール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、ジエチレングリコール、エチレングリコール、グリコール、及び1,3プロパンジオールからなる群から選択され、緩衝剤がクエン酸バッファーである実施態様48に記載の方法。
実施態様53. ホルムアミドが0.1−5%の濃度で存在し、DMSOが0.01%〜10%の濃度で存在し、グリセロール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、ジエチレングリコール、エチレングリコール、グリコール、及び1,3プロパンジオールが0.1%から10%の濃度で存在し、クエン酸バッファーが1mMから50mMの濃度で存在する実施態様52に記載の方法。
実施態様54. ブロッキング剤が、全ヒトDNA、ニシン精液DNA、サケ精液DNA、及びウシ胸腺DNAからなる群から選択される実施態様48に記載の方法。
実施態様55. 全ヒトDNA、ニシン精液DNA、サケ精液DNA、及びウシ胸腺DNAが0.01から10μg/μLの濃度で存在する実施態様54に記載の方法。
実施態様56. 水性組成物が40%の少なくとも一種の極性非プロトン溶媒、10%のデキストラン硫酸、300mMのNaCl、及び/又は5mMのホスフェートバッファーを含有する実施態様48に記載の方法。
実施態様57. 水性組成物が15%の少なくとも一種の極性非プロトン溶媒、20%のデキストラン硫酸、600mMのNaCl、及び/又は10mMのホスフェートバッファー含有する実施態様48に記載の方法。
実施態様58. 水性組成物が15%の少なくとも一種の極性非プロトン溶媒、20%のデキストラン硫酸、600mMのNaCl、及び10mMのクエン酸バッファーpH6.2を含有する実施態様48に記載の方法。
実施態様59. 水性組成物が室温で一相を含む実施態様1−58の何れか一に記載の方法。
実施態様60. 水性組成物が室温で複数相を含む実施態様1−58の何れか一に記載の方法。
実施態様61. 水性組成物が室温で二相を含む実施態様60に記載の方法。
実施態様62. 水性組成物の相が混合される実施態様60又は61に記載の方法。
実施態様63. ハイブリダイゼーション用途における標的の別々の変性を実施するための水性組成物において、2本鎖ヌクレオチド配列を変性させるのに有効な量の少なくとも一種の極性非プロトン溶媒を含有し、該極性非プロトン溶媒がジメチルスルホキサイド(DMSO)ではない組成物。
実施態様64. 極性非プロトン溶媒の濃度が実施態様32から35の何れか一に記載の通りに定義される実施態様63の水性組成物。
実施態様65. 極性非プロトン溶媒が実施態様36、又は41から47の何れか一に記載の通りに定義される実施態様63又は64の水性組成物。
実施態様66. 水性組成物が実施態様37から40又は48から62の何れか一に記載の通りに定義される実施態様61から65の何れか一の水性組成物。
実施態様67. ハイブリダイゼーション用途における標的の別々の変性を実施するための、少なくとも一種の極性非プロトン溶媒を1%から95%(v/v)含有する組成物の使用。
実施態様68. 極性非プロトン溶媒の濃度が実施態様32から35の何れか一に記載の通りに定義される実施態様67に記載の組成物の使用。
実施態様69. 極性非プロトン溶媒が実施態様36又は41から47の何れか一に記載の通りに定義される実施態様67又は68に記載の組成物の使用。
実施態様70. 水性組成物が実施態様37から40又は48から62の何れか一に記載の通りに定義される実施態様67から69の何れか一に記載の組成物の使用。
実施態様71. ハイブリダイゼーションアッセイを実施するためのキットにおいて、
− 実施態様63−66の何れか一に記載の第一の水性組成物と、
− 少なくとも一の核酸配列を含んでなる第二の水性組成物
を含むキット。
実施態様72. 第二の水性組成物が、二本鎖ヌクレオチド配列を変性させるのに有効な量の少なくとも一種の変性剤を更に含有する実施態様71に記載のキット。
実施態様73. 第二の水性組成物中の変性剤が極性非プロトン溶媒である実施態様72のキット。
実施態様74. 第二の水性組成物中の極性非プロトン溶媒の濃度が実施態様32から35の何れか一に記載の通りに定義される実施態様73のキット。
実施態様75. 第二の水性組成物中の極性非プロトン溶媒が実施態様36又は41から47の何れか一に記載の通りに定義される実施態様73又は74のキット。
実施態様76. 第二の水性組成物が実施態様37から40又は48から62の何れか一に記載の通りに定義される実施態様71から75の何れか一のキット。
実施態様2−1.
核酸配列をハイブリダイズさせるインサイツの方法において、
− 二本鎖ヌクレオチド配列を変性させるのに有効な量の少なくとも一種の極性非プロトン溶媒を含有する第一の水性組成物中で第一の核酸配列を含む第一の二本鎖核酸配列を変性させ、
− 二本鎖ヌクレオチド配列を変性させるのに有効な量の少なくとも変性剤を含有する第二の水性組成物中で第二の核酸配列を含む第二の二本鎖核酸配列を変性させ、
− 第一及び第二の核酸配列を、第一及び第二の核酸配列をハイブリダイズさせるために8時間未満少なくとも一の極性非プロトン溶媒を含有する水性組成物中で組み合わせる
ことを含み、
ここで極性非プロトン溶媒はジメチルスルホキシド(DMSO)では無いインサイツの方法。
実施態様2−2.
第二の水性組成物中の変性剤が極性非プロトン溶媒である実施態様2−1に記載の方法。
実施態様2−3.
例えば前記第一及び/又は前記第二の核酸を変性させる時間が1分、2分、3分、4分、5分、10分、15分、又は30分である実施態様2−1及び実施態様2−2の何れか一に記載の方法。
実施態様2−4.
ハイブリダイジングの工程が、組成物を加熱及び/又は冷却する工程を含み、例えばハイブリダイゼーションの工程が1時間未満、例えば30分未満、例えば15分未満、例えば5分未満を要する実施態様1−2から2−3の何れか一に記載の方法。
実施態様2−5.
水性組成物中の極性非プロトン溶媒の濃度が約1%から95%(v/v)、例えば5%から10%(v/v)、例えば10%から20%(v/v)、例えば20%から30%(v/v)である実施態様2−1から2−4の何れか一に記載の方法。
実施態様2−6.
水性組成物中の極性非プロトン溶媒が無毒性である実施態様2−1から2−5の何れか一に記載の方法。
実施態様2−7.
水性組成物中の極性非プロトン溶媒が、ラクトン、スルホン、ニトリル、サルファイト、及び/又はカーボネートの官能性を有する実施態様2−1から2−6の何れか一に記載の方法。
実施態様2−8.
水性組成物中の極性非プロトン溶媒が、17.7から22.0MPa1/2の範囲の分散溶解度パラメータ、13から23MPa1/2の範囲の極性溶解度パラメータ、及び3から13MPa1/2の範囲の水素結合溶解度パラメータを有する実施態様2−1から2−7の何れか一に記載の方法。
実施態様2−9.
水性組成物中の極性非プロトン溶媒が

(ここで、XがOであり、R1がアルキルジイルである)、及び

(ここで、Xは任意であり、存在する場合は、O又はSから選択され、
Zは任意であり、存在する場合は、O又はSから選択され、
A及びBは独立してO又はN又はS又はアルキルジイルの一部又は第1級アミンであり、
Rはアルキルジイルであり、
YはO又はS又はCである)
からなる群から選択される実施態様2−1から2−8の何れか一に記載の方法。
実施態様2−10.
水性組成物中の極性非プロトン溶媒が、

からなる群から選択される実施態様2−1から2−9の何れか一に記載の方法。
実施態様2−11.
水性組成物が、緩衝剤、塩、促進剤、キレート剤、洗浄剤、及びブロッキング剤からなる群から選択される少なくとも一種の更なる成分を更に含む実施態様2−1から2−10の何れか一に記載の方法。
実施態様2−12.
促進剤がデキストラン硫酸であり、塩がNaCl及び/又はホスフェートバッファーである実施態様2−11に記載の方法。
実施態様2−13.
デキストラン硫酸が5%から40%の濃度で存在し、NaClが0mMから1200mMの濃度で存在し、及び/又はホスフェートバッファーが0mMから50mMの濃度で存在し、例えば、デキストラン硫酸が10%から30%の濃度で存在し、NaClが300mMから600mMの濃度で存在し、及び/又はホスフェートバッファーが5mMから20mMの濃度で存在する実施態様2−12に記載の方法。
実施態様2−14.
促進剤が、ホルムアミド、DMSO、グリセロール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、ジエチレングリコール、エチレングリコール、グリコール、及び1,3プロパンジオールからなる群から選択され、緩衝剤がクエン酸バッファーである実施態様2−11に記載の方法。
実施態様2−15.
ホルムアミドが0.1−5%の濃度で存在し、DMSOが0.01%から10%の濃度で存在し、グリセロール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、ジエチレングリコール、エチレングリコール、グリコール、及び1,3プロパンジオールが0.1%から10%の濃度で存在し、クエン酸バッファーが1mMから50mMの濃度で存在する実施態様2−14に記載の方法。
実施態様2−16.
水性組成物が40%の少なくとも一種の極性非プロトン溶媒、10%のデキストラン硫酸、300mMのNaCl、及び/又は5mMのホスフェートバッファーを含有する実施態様2−11に記載の方法。
実施態様2−17.
水性組成物が15%の少なくとも一種の極性非プロトン溶媒、20%のデキストラン硫酸、600mMのNaCl、及び10mMのクエン酸バッファーpH6.2を含有する実施態様2−11に記載の方法。
実施態様2−18.
インサイツハイブリダイゼーション用途における標的の別々の変性を実施するための、少なくとも一種の極性非プロトン溶媒を1%から95%(v/v)含有する組成物の使用。
実施態様2−19.
極性非プロトン溶媒の濃度が実施態様2−5又は2−6又は2−7から2−10に記載される、実施態様2−18に記載の組成物の使用。
図1
図2