特許第6091760号(P6091760)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6091760
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】積層セラミックコンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/12 20060101AFI20170227BHJP
   C04B 35/468 20060101ALI20170227BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   H01G4/12 358
   C04B35/468
   H01G4/30 301E
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-41939(P2012-41939)
(22)【出願日】2012年2月28日
(65)【公開番号】特開2013-179160(P2013-179160A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2014年12月25日
【審判番号】不服2016-5770(P2016-5770/J1)
【審判請求日】2016年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(72)【発明者】
【氏名】芝原 豪
(72)【発明者】
【氏名】日高 優貴
(72)【発明者】
【氏名】岩永 大介
(72)【発明者】
【氏名】藤川 佳則
【合議体】
【審判長】 森川 幸俊
【審判官】 國分 直樹
【審判官】 井上 信一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/018928(WO,A1)
【文献】 特開2008−207972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G4/12
H01G4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層と内部電極層とが交互に積層された積層セラミックコンデンサであって、前記誘電体層は、平均粒径0.3μm以上0.6μm以下の複数の誘電体結晶粒子を有し、前記誘電体結晶粒子は、(Ba1−xCa(Ti1−yZr)O(ここで、xは0.01≦x≦0.1、yが0.05<y≦0.1、zが0.990<z≦1.010)からなるペロブスカイト構造を有する固溶体で形成される主成分を有し、前記複数の誘電体粒子のうち、粒内にZrの濃度差を有する誘電体結晶粒子が、個数比率にして20%〜40%であることを特徴とする積層セラミックコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体層と内部電極層とが交互に積層された積層セラミックコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の一例である積層セラミックコンデンサは、たとえば、所定の誘電体磁器組成物からなるセラミックグリーンシートと、所定パターンの内部電極層とを交互に重ね、その後一体化して得られるグリーンチップを、同時焼成して製造される。
【0003】
一方、電子回路の高密度化に伴う電子部品の小型化に対する要求は高く、積層セラミックコンデンサにおいても小型・大容量化が急速に進んでいる。
【0004】
積層セラミックコンデンサの小型・大容量化という課題に対しては、1層あたりの比誘電率を増大させる、積層数を増やすといった手法が解決手法として用いられてきた。(例えば特許文献1、2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005―187296号公報
【特許文献2】特開2006―206362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
誘電体層1層あたりの比誘電率を増大させる方法として、たとえば特許文献1のように、誘電体結晶粒子を粒成長させることにより比誘電率の増大を実現する方法がある。この場合、小さい粒径で緻密な焼結体を得ることは難しく、通常1μm〜数μm程度まで粒成長させた誘電体結晶粒子を用いるため、粒子1個あたりの粒子径で誘電体層の厚みが決まってしまい、更なる薄層化への対応は困難になる。
【0007】
一方、積層数を増やす場合には、誘電体層一層あたりの厚みを薄くすることで大容量化に対応する。一般的に信頼性を保証するためには1層あたりの厚み方向に複数の焼結体粒子が存在しているような構造とする必要があるため、誘電体層を構成する誘電体粒子の粒径は薄層化に伴い小さくなる。特許文献2の技術によれば、平均粒径を0.1〜0.5μmに小さくすることができるが、サイズ効果により、誘電体の比誘電率も2500〜3000程度と低くなることから、更なる小型化、大容量化への対応が困難になってきた。
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、誘電体層を薄層化した場合であっても、高い比誘電率を持ち、十分な信頼性を有する積層セラミックコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、Ba、Ca、Ti、Zrが相互に固溶した(Ba1−xCa(Ti1−yZr)Oを主成分とし、少なくとも一部の誘電体結晶粒子において粒子内部に固溶したZrに濃度差を持たせることで、薄層化に対応可能で、高い比誘電率と信頼性を有する積層セラミックコンデンサが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係る積層セラミックコンデンサは、誘電体層と内部電極層とが交互に積層された積層セラミックコンデンサであって、前記誘電体層は、平均粒径0.3μm以上0.6μm以下の複数の誘電体結晶粒子を有し、前記誘電体結晶粒子は、(Ba1−xCa(Ti1−yZr)O(ここで、xは0.01≦x≦0.1、yが0.01≦y≦0.1、zが0.990<z≦1.010)からなるペロブスカイト構造を有する固溶体で形成される主成分を有し、前記複数の誘電体粒子のうち、粒内にZrの濃度差を有する誘電体結晶粒子が、個数比率にして20%以上であることを特徴とする。
【0011】
このような構成とすることによって、薄層化に対応でき、高い比誘電率と十分な信頼性を有する積層セラミックコンデンサとすることができる。
【0012】
すなわち、本発明に係る積層セラミックコンデンサは、誘電体層と内部電極層とが交互に積層された積層セラミックコンデンサであって、前記誘電体層は、平均粒径0.3μm以上0.6μm以下の複数の誘電体結晶粒子を有し、前記誘電体結晶粒子は、(Ba1−xCa(Ti1−yZr)O(ここで、xは0.01≦x≦0.1、yが0.01≦y≦0.1、zが0.990<z≦1.010)からなるペロブスカイト構造を有する固溶体で形成される主成分を有し、前記複数の誘電体粒子のうち、粒内にZrの濃度差を有する誘電体結晶粒子が、個数比率にして20%〜50%であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高い比誘電率をもち薄層化しても十分な信頼性を有する積層セラミックコンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る誘電体結晶粒子の断面模式図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係るZrの濃度差を有する誘電体結晶粒子断面を、走査透過型電子顕微鏡(STEM)にて撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明するが、本発明は以下に説明する実施形態のみに限定されない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0016】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層2と内部電極層3とが交互に積層された構成のコンデンサ素子本体10を有する。このコンデンサ素子本体10の両端部には、素子本体10の内部で交互に配置された内部電極層3と各々導通する一対の外部電極4が形成してある。コンデンサ素子本体10の形状に特に制限はないが、通常、直方体状とされる。また、その寸法にも特に制限はなく、用途に応じて適当な寸法とすればよい。
【0017】
内部電極層3は、各端面がコンデンサ素子本体10の対向する2端部の表面に交互に露出するように積層してある。また、一対の外部電極4は、コンデンサ素子本体10の両端部に形成され、交互に配置された内部電極層3の露出端面に接続されて、コンデンサ回路を構成する。
【0018】
誘電体層2は、(Ba1−xCa(Ti1−yZr)O(以下、BCTZとする)を主成分として含む、複数の誘電体粒子結晶で構成されている。このほか、副成分として、希土類(Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択される少なくとも1種)、アルカリ土類金属(MgおよびMn)、遷移金属(V、W、及びMoから選択される少なくとも1種)の酸化物やその混合物、複合酸化物およびガラスとしてSiOを含んだ焼結助剤等が含まれていてもよい。その場合、先記副成分の一部は粒内に固溶しており、残りは粒界近傍に偏析することがある。なお、ここでいう主成分とは、誘電体層2を構成する全成分のうちBCTZ成分が90%以上を占めていることを指す。
【0019】
主成分としてのBCTZは、組成式(Ba1−xCa(Ti1−yZr)Oと表記したときxが0.01≦x≦0.1、yが0.01≦y≦0.1、zが0.990<z≦1.010である。
【0020】
主成分であるBCTZはBa、Ca、Ti、Zrが相互に固溶したペロブスカイト構造を有する。従来これらの元素は結晶粒子内に均一に固溶しているものであった。
【0021】
しかしながら、本発明においては、前記主成分の構成元素のうち、Zrに誘電体結晶粒子内部の固溶濃度に意図的に差を持たせたものである。
【0022】
<誘電体結晶粒子の構造>
本実施形態においては、上記の誘電体層2に含有される誘電体結晶粒子のうち、少なくとも一部の誘電体結晶粒子は、図2および図3に示すようなZrの濃度差を有する誘電体結晶粒子となっている。図2は、本実施形態に係る誘電体層2の断面の一部について、誘電体結晶粒子の様子を模式的に示した図である。誘電体結晶粒子20はZrの濃度差を含まない誘電体結晶粒子である。一方、誘電体結晶粒子21は粒子内にZrの薄い領域21aと濃い領域21bを有している、すなわちZrの濃度差を有している。図3は、粒子内にZrの濃度差を有している誘電体結晶粒子21について、その断面を走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて撮影した写真である。図3からわかるように、Zrの薄い領域21aと濃い領域21bとが粒子内に観察される。
【0023】
誘電体結晶粒子が、上記の濃度差を有しているか否かは、たとえば、走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて分析することにより判断することができる。具体的には、まず、誘電体層2の任意の断面について、10万倍で複数の視野で断面観察を行い、得られた100個以上の誘電体結晶粒子に対して、STEMに付属のエネルギー分散型X線分光装置(EDS)を用いて、線分析を実施する。このとき、各粒子に対して、半径が最小となるような円を外接させたときに、先記外接円の中心を通る任意の方向の直線状に20nm間隔で線分析を行い、Zrの濃度分布を得る。次いで、直線を90度回転させて、同一の粒子に対して再度線分析を行なう。そして得られた濃度分布の平均と標準偏差から変動係数を算出し、15%以上の場合にはZr濃度差を有する粒子と判断する。濃度差を有する粒子が100粒子中いくつ存在しているかを数えることで濃度差を有する粒子の個数比率を算出することができる。
【0024】
誘電体結晶粒子内にあえてZrを偏在させることで、Zrの拡散を防ぐことができ、Zrの拡散を防ぐことで粒成長に必要な成分の拡散経路を少なくすることができ、粒成長を抑制することができると考えられる。Zrの濃度差を含む結晶粒子が少なすぎると、粒成長の過程で粒子の拡散経路が多く生じることになり、異常粒成長を生じてしまい、薄層化が困難になる。一方、Zr濃度差を含んだ誘電体結晶粒子が多過ぎると、誘電体結晶粒子内で十分に結晶組織が形成されないため、信頼性が低下する傾向にある。
【0025】
上記のようなZrの濃度差を有する粒子21の個数比率は誘電体層2を構成する全粒子の個数を100%とした場合に、断面観察における個数割合で、好ましくは20%〜50%、より好ましくは20%以上40%以下である。
【0026】
本発明では、上記の誘電体結晶粒子のうち、少なくとも一部の粒子に対して、Zrの濃度差を意図的に導入している。
【0027】
この濃度差は、例えば後述する焼成時に、保持時間を変更することで特定の範囲にすることができる。その他、主成分の原料粉体や組成の選択、アニール時の雰囲気や保持時間等を組み合わせることによっても、濃度差を持たせることができる。
【0028】
内部電極層3に含有される導電材は特に限定されないが、誘電体層2の構成材料が耐還元性を有するため、比較的安価な卑金属を用いることができる。導電材として用いる卑金属としては、NiまたはNi合金が好ましい。Ni合金としては、Mn,Cr,CoおよびAlから選択される1種以上の元素とNiとの合金が好ましく、合金中のNi含有量は95重量%以上であることが好ましい。なお、NiまたはNi合金中には、P等の各種微量成分が0.1重量%程度以下含まれていてもよい。また、内部電極層3は、市販の電極用ペーストを使用して形成してもよい。内部電極層3の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよい。
【0029】
外部電極4に含有される導電材は特に限定されないが、本発明では安価なNi,Cuや、これらの合金を用いることができる。外部電極4の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよい。
【0030】
<積層セラミックコンデンサ1の製造方法>
本実施形態の積層セラミックコンデンサ1は、従来の積層セラミックコンデンサと同様に、ペーストを用いた通常の印刷法やシート法によりグリーンチップを作製し、これを焼成した後、外部電極を印刷または転写して焼成することにより製造される。以下、製造方法について具体的に説明する。
【0031】
まず、誘電体層用ペーストに含まれる誘電体原料(誘電体磁器組成物粉末)を準備し、これを塗料化して、誘電体層用ペーストを調製する。
【0032】
誘電体層用ペーストは、誘電体原料と有機ビヒクルとを混練した有機系の塗料であってもよく、水系の塗料であってもよい。
【0033】
誘電体原料としては、上記した主成分に加え、副成分として、希土類(Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuから選択される少なくとも1種)、アルカリ土類金属(MgおよびMn)、遷移金属(V、W、及びMoから選択される少なくとも1種)の酸化物やその混合物、複合酸化物およびガラスとしてSiOを含んだ焼結助剤等を用いることができるが、その他、焼成により上記した酸化物や複合酸化物となる各種化合物、たとえば、炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等から適宜選択し、混合して用いることもできる。誘電体原料中の各化合物の含有量は、焼成後に上記した誘電体磁器組成物の組成となるように決定すればよい。塗料化する前の状態で、誘電体原料の粒径は、通常、平均粒径0.05〜0.3μm程度である。
【0034】
主成分原料としてのBCTZ粉末は、いわゆる固相法の他、各種液相法(たとえば、シュウ酸塩法、水熱合成法、アルコキシド法、ゾルゲル法など)により製造されたものなど、種々の方法で製造されたものを用いることができる。なお、誘電体原料を準備する際には、主成分の原料に、副成分の原料を添加して予め仮焼きした原料を用いても良いし、あるいは、主成分の原料に、副成分の原料を添加したものを、仮焼きすることなく、用いても良い。
【0035】
有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いるバインダは特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。用いる有機溶剤も特に限定されず、印刷法やシート法など、利用する方法に応じて、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン、トルエン等の各種有機溶剤から適宜選択すればよい。
【0036】
また、誘電体層用ペーストを水系の塗料とする場合には、水溶性のバインダや分散剤などを水に溶解させた水系ビヒクルと、誘電体原料とを混練すればよい。水系ビヒクルに用いる水溶性バインダは特に限定されず、たとえば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性アクリル樹脂などを用いればよい。
【0037】
内部電極層用ペーストは、上記した各種導電性金属や合金からなる導電材、あるいは焼成後に上記した導電材となる各種酸化物、有機金属化合物、レジネート等と、上記した有機ビヒクルとを混練して調製する。
【0038】
外部電極用ペーストは、上記した内部電極層用ペーストと同様にして調製すればよい。
【0039】
上記した各ペースト中の有機ビヒクルの含有量に特に制限はなく、通常の含有量、たとえば、バインダは1〜5重量%程度、溶剤は10〜50重量%程度とすればよい。また、各ペースト中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体、絶縁体等から選択される添加物が含有されていてもよい。これらの総含有量は、10重量%以下とすることが好ましい。
【0040】
印刷法を用いる場合、誘電体層用ペーストおよび内部電極層用ペーストを、PET等の基板上に印刷、積層し、所定形状に切断した後、基板から剥離してグリーンチップとする。
【0041】
また、シート法を用いる場合、誘電体層用ペーストを用いてグリーンシートを形成し、この上に内部電極層用ペーストを印刷した後、これらを積層してグリーンチップとする。
【0042】
焼成前に、グリーンチップに脱バインダ処理を施す。脱バインダ条件としては、昇温速度を好ましくは5〜300℃/時間、保持温度を好ましくは180〜400℃、温度保持時間を好ましくは0.1〜24時間とする。また、焼成雰囲気は、空気もしくは還元性雰囲気とする。
【0043】
グリーンチップの焼成は、還元性雰囲気とすることが好ましく、雰囲気ガスとしてはたとえば、NとHとの混合ガスを加湿して用いることができる。その他の条件は、
以下のようにするのが好ましい。
【0044】
まず、昇温速度は、好ましくは50〜7200℃/時間、より好ましくは600〜7200℃/時間である。また、焼成時の保持温度に達するまで、同じ昇温速度としてもよいし、昇温速度を変化させてもよい。
【0045】
焼成時の保持温度は、好ましくは1000〜1300℃、より好ましくは1140〜1200℃であり、その保持時間は、好ましくは0.5〜90時間、より好ましくは0.5〜50時間である。保持温度が上記範囲未満であると緻密化が不十分となる場合があり、前記範囲を超えると、誘電体粒子の異常粒成長を招くほか、内部電極層の異常焼結による電極の途切れや、内部電極層構成材料の拡散による容量温度特性の悪化、誘電体磁器組成物の還元が生じやすくなる。焼成時の酸素分圧は、内部電極層用ペースト中の導電材の種類に応じて適宜決定されればよいが、導電材としてNiやNi合金等の卑金属を用いる場合、焼成雰囲気中の酸素分圧は、10−10〜10−3Paとすることが好ましい。酸素分圧が上記範囲未満であると、内部電極層の導電材が異常焼結を起こし、途切れてしまうことがある。また、酸素分圧が前記範囲を超えると、内部電極層が酸化する傾向にある。
【0046】
降温速度は、好ましくは50〜7200℃/時間、より好ましくは600〜7200℃/時間である。降温速度も、昇温速度と同様に、同じ降温速度としてもよいし、降温速度を変化させてもよい。
【0047】
還元性雰囲気中で焼成した後、コンデンサ素子本体にはアニールを施すことが好ましい。アニールは、誘電体層を再酸化するための処理であり、これにより絶縁抵抗の寿命を著しく長くすることができるので、信頼性が向上する。
【0048】
アニール雰囲気中の酸素分圧は、10−5〜100Paとすることが好ましい。酸素分圧が前記範囲未満であると誘電体層の再酸化が困難であり、前記範囲を超えると内部電極層の酸化が進行する傾向にある。
【0049】
アニールの際の保持温度は、1100℃以下、特に500〜1100℃とすることが好ましい。保持温度が上記範囲未満であると誘電体層の酸化が不十分となるので、絶縁抵抗が低く、また、高温負荷寿命が短くなりやすい。一方、保持温度が前記範囲を超えると、内部電極層が酸化して容量が低下するだけでなく、内部電極層が誘電体素地と反応してしまい、容量温度特性の悪化、絶縁抵抗の低下、高温負荷寿命の低下が生じやすくなる。
【0050】
これ以外のアニール条件としては、温度保持時間を好ましくは0〜50時間、より好ましくは2〜30時間、降温速度を好ましくは50〜500℃/時間、より好ましくは100〜300℃/時間とする。また、アニールの雰囲気ガスとしては、焼成と同様に、たとえば加湿したNとHの混合ガスを用いて還元雰囲気とする方法や、加湿したNガス等を用いて不活性ガス雰囲気とする方法が好ましい。
【0051】
上記した脱バインダ処理、焼成およびアニールにおいて、Nガスや混合ガス等を加湿するには、たとえばウェッター等を使用すればよい。この場合、水温は5〜75℃程度が好ましい。
【0052】
脱バインダ処理、焼成およびアニールは、連続して行なっても、独立に行なってもよい。
【0053】
上記のようにして得られたコンデンサ素子本体10に、例えばバレル研磨やサンドブラストなどにより端面研磨を施し、外部電極用ペーストを塗布して焼成し、外部電極4を形成する。そして、必要に応じ、外部電極4表面に、めっき等により被覆層を形成する。
【0054】
このようにして製造された本実施形態の積層セラミックコンデンサ1は、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
【0056】
また、上述の実施形態では、Zrに濃度差を持たせるにあたり、焼成時の保持時間を変更する方法を一例として挙げたが、この他にもたとえば、製造方法の異なる(すなわち反応性が異なる)主成分を選択したり、主成分の組成比や原料粉末の粒径、アニール条件等を変更したりすることでもZrの濃度差を所定の比率に制御することができる。また、上記複数の条件を組み合わせることにより制御してもよい。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0058】
(実施例1)
<コンデンサ試料の作製>
まず、主成分として(Ba0.99Ca0.011.005(Ti0.94Zr0.06)Oの組成比に調整したBCTZ粉末100モルに対し、副成分としてYを0.5モル、MgOを0.3モル、MnOを0.1モル、Vを0.1モル、SiOを1.5モルを混合し、混合物(誘電体原料)を得た。この混合物100重量部に対して、ポリビニルブチラール樹脂:10重量部と、可塑剤としてのジブチルフタレート(DOP):5重量部と、溶媒としてのアルコール:100重量部とをボールミルで混合してペースト化し、誘電体層用ペーストを得た。
【0059】
また、上記とは別に、Ni粒子:44.6重量部と、テルピネオール:52重量部と、エチルセルロース:3重量部と、ベンゾトリアゾール:0.4重量部とを、3本ロールにより混練し、スラリー化して内部電極層用ペーストを作製した。
【0060】
そして、上記にて作製した誘電体層用ペーストを用いて、PETフィルム上に、乾燥後の厚みが3μmとなるようにグリーンシートを形成した。次いで、この上に内部電極層用ペーストを用いて、電極層を所定パターンで印刷した後、PETフィルムからシートを
剥離し、電極層を有するグリーンシートを作製した。次いで、電極層を有するグリーンシートを複数枚積層し、加圧接着することによりグリーン積層体とし、このグリーン積層体を所定サイズに切断することにより、グリーンチップを得た。
【0061】
次いで、得られたグリーンチップについて、脱バインダ処理、焼成およびアニールを下記条件にて行って、積層セラミック焼成体を得た。脱バインダ処理条件は、昇温速度:25℃/時間、保持温度:260℃、温度保持時間:8時間、雰囲気:空気中とした。焼成条件は、焼成温度(保持温度):1140℃、温度保持時間:30時間、雰囲気ガス:加湿したN+0.5%H混合ガス(酸素分圧が10−6〜10−8Paとなるようにした)とした。アニール条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:950℃、温度保持時間:2時間、降温速度:200℃/時間、雰囲気ガス:加湿したNガス(酸素分圧:1Pa)とした。なお、焼成およびアニールの際の雰囲気ガスの加湿には、ウェッターを用いた。
【0062】
次いで、得られた積層セラミック焼成体の端面をサンドブラストにて研磨した後、外部電極としてIn−Gaを塗布し、図1に示す積層セラミックコンデンサの試料を得た。得られたコンデンサ試料のサイズは、3.2mm×1.6mm×3.2mmであり、誘電体層の厚み2μm、内部電極層の厚み1.5μm、内部電極層に挟まれた誘電体層の数は10とした。
【0063】
得られたコンデンサ試料について、誘電体結晶粒子径と粒径ばらつきを測定し、Zrの濃淡のある粒子の個数比率、比誘電率、平均故障時間をそれぞれ下記に示す方法で測定した。
【0064】
<Zr濃度差を有する粒子割合>
得られたコンデンサ試料を積層方向に垂直な面で切断し、その切断面を研磨した。断面の任意の150粒子を選択し、走査透過型電子顕微鏡(STEM)により前記各粒子の外接円の中心を通る任意の方向の直線を引き、粒子内を直線に沿って20nm間隔で線分析を行い、Zrの濃度分布を取得した。次いで、直線を90度回転させ、同一の粒子に対して再度線分析を行なった。そして得られた濃度分布の平均と標準偏差から変動係数を算出し、15%以上の場合にはZr濃度差を有する粒子と判断した。濃度差を有する粒子が何%存在しているかを算出した。結果を表1に示す。
【0065】
<誘電体結晶粒径>
得られたコンデンサ試料を積層方向に垂直な面で切断し、その切断面を研磨した。そして、その研磨面にケミカルエッチングを施し、その後、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察を行い、観察された粒子の面積から円相当径を算出し、300粒子の平均を求め平均値を誘電体結晶粒径とした。結果を表1に示す。
【0066】
<粒径ばらつき>
上記300粒子の円相当径の標準偏差に対する、上記誘電体結晶粒径の比率を粒径ばらつきとして算出した。粒径ばらつきは、異常粒成長が生じた場合、0.50以上となる。粒径ばらつきの大きい誘電体結晶粒子は、薄層化に対応できないため、0.50以下の試料を良好とした。結果を表1に示す。
【0067】
<比誘電率>
コンデンサ試料に対して、25℃において、デジタルLCRメータ(YHP社製4284A)にて周波数1kHz、入力信号レベル0.5Vrmsの信号を入力し、静電容量を測定した。そして、比誘電率を誘電体層の厚みと有効電極面積と、静電容量に基づき算出した。本実施例では、10個のコンデンサ試料を用いて算出した値の平均値を比誘電率とし、3500以上を良好と判断した。結果を表1に示す。
【0068】
<平均故障時間>
信頼性評価として、コンデンサ試料に対し、160℃にて、12.6V/μmの直流電界に保持し、寿命時間を測定することにより、高温加速寿命を評価した。本実施例においては、20個のコンデンサ試料について印加開始から絶縁抵抗が一桁落ちるまでの時間を故障時間とし、これをワイブル解析することにより平均故障時間(MTTF)を算出した。本実施例では高温加速寿命の平均故障時間が20時間以上であった試料を良好であると判断した。結果を表1に示す。
【0069】
(実施例2〜7、比較例1〜6)
主成分BCTZの組成比を様々に変えた他は実施例1と同様にして、コンデンサ試料を作成および測定した。結果を表1に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
(実施例8〜16、比較例7〜8)
コンデンサ試料の作製において、主成分として(Ba0.96Ca0.041.005(Ti0.94Zr0.06)Oの組成比に調整したBCTZ粉末100モルに対し、副成分としてYを0.6モル、MgOを0.1モル、MnOを0.2モル、Vを0.1モル、SiOを1.5モル混合し、混合物(誘電体原料)を得、実施例1同様にグリーンチップを得た。グリーンチップの焼成およびアニールを様々に変更し、得られた各コンデンサ試料について実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
【0072】
【表2】
【0073】
表1において、(Ba1−xCa(Ti1−yZr)Oの組成比x、y、zが本発明の範囲外となり、粒子内にZrの濃度差を有する誘電体粒子の比率が少ない比較例1、2、5、6に示した試料は、実施例に示した試料と比較して、粒径ばらつきが大きいことが確認された。この場合、誘電体層の薄層化が困難になる。また、比較例3は比誘電率と信頼性が、比較例4は信頼性が劣ることが確認された。BCTZの組成比x、y、zが本発明の範囲内であり、粒子内にZrの濃度差を有する誘電体粒子の比率が20%以上である実施例1〜7は、誘電体結晶粒径が0.3μm以上0.6μm以下となり、比誘電率、信頼性ともに優れることが確認できた。
【0074】
表2において、所定のBCTZ組成比において、粒子内にZrの濃度差を有する誘電体粒子の比率が本発明の範囲外となる比較例7、8は、粒径ばらつきが大きく、誘電体層の薄層化が困難になることが考えられ、信頼性も劣ることが確認された。粒子内にZrの濃度差を有する誘電体粒子の比率が20%以上である実施例8〜16は、誘電体結晶粒径が0.3μm以上0.6μm以下となり、比誘電率、信頼性ともに優れることが確認できた。実施例の中では、粒子内にZrの濃度差を有する誘電体粒子の比率が50%となる実施例16は、その他の実施例と比較すると、比誘電率および信頼性の両方がやや低下する傾向がみられた。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上のように、本発明に係る、誘電体層の誘電体結晶粒子の粒径ばらつきが小さく、比誘電率と信頼性の高い積層セラミックコンデンサは、PC、小型携帯機器などに用いられる小型の電子部品素子として利用できる。
【符号の説明】
【0076】
1… 積層セラミックコンデンサ
2… 誘電体層
3… 内部電極層
4… 外部電極
10… コンデンサ素子本体
20… 誘電体結晶粒子
21… 誘電体結晶粒子(Zr濃度差あり)
21a… Zr濃度が薄い領域
21b… Zr濃度が濃い領域
図1
図2
図3