(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施形態を以下に図面を参照して説明する。図面において、同一部分には同一の参照符号を付す。また、重複する説明は、必要に応じて行う。
【0009】
<実施形態>
図1乃至
図8を用いて、本実施形態について説明する。本実施形態では、半導体装置の製造方法におけるCMP法において、研磨布11の表面をRsk値が負になるようにコンディショニングした後、回転する研磨布11に被研磨膜を当接(摺動)させる。これにより、CMP後の被研磨膜表面のスクラッチを低減することができる。以下に、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について詳説する。
【0010】
[CMP装置]
以下に、
図1および
図2を用いて、本実施形態に係るCMP装置について説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係るCMP装置を示す構成図である。
図2は、本実施形態に係るCMP装置を示す上面図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係るCMP装置は、ターンテーブル10、研磨布11、トップリング12、スラリー供給ノズル13、ドレッシング液供給ノズル14、ドレッサー15、および入口温度測定器16を備える。
【0013】
半導体基板20が保持されたトップリング12は、ターンテーブル10上に貼付された研磨布11上に当接される。半導体基板20上には、被処理膜としての例えばシリコン酸化膜が形成されている。ターンテーブル10は1〜200rpmで回転可能であり、トップリング12は1〜200rpmで回転可能である。これらターンテーブル10およびトップリング12は、それぞれ同じ方向に回転し、例えば反時計回りに回転する。また、CMP中、ターンテーブル10およびトップリング12は、一定方向に回転する。これらの研磨荷重は、通常50〜500hPa程度である。
【0014】
また、研磨布11上には、スラリー供給ノズル13が配置されている。このスラリー供給ノズル13からは、スラリーとして所定の薬液を50〜1000cc/minの流量で供給することができる。なお、スラリー供給ノズル13は、ターンテーブル10の中心付近に設けられているが、これに限らず、スラリーが研磨布11の全面に供給されるように適宜設けられてもよい。
【0015】
ドレッサー15は、研磨布11に当接されることにより、研磨布11の表面のコンディショニングを行なう。ドレッサー15は1〜200rpmで回転可能である。これらドレッサー15は、例えば反時計回りに回転する。また、コンディショニング中、ターンテーブル10およびドレッサー15は、一定方向に回転する。これらのドレッシング荷重は、通常50〜500hPa程度である。また、ドレッサー15に接続される柱部分(ドレッサー駆動軸)には、赤外放射温度計である入口温度測定器16が設置されている。この入口温度測定器16の詳細については、後述する。
【0016】
さらに、研磨布11上には、ドレッシング液供給ノズル14が配置されている。このドレッシング液供給ノズル14からは、ドレッシング液として所定の薬液を50〜1000cc/minの流量で供給することができる。なお、ドレッシング液供給ノズル14は、ターンテーブル10の中心付近に設けられているが、これに限らず、ドレッシング液が研磨布11の全面に供給されるように適宜設けられてもよい。
【0017】
ドレッシング液は、例えば純水であり、その供給温度は適宜設定される。このドレッシング液の供給温度を制御することで、入口温度測定器16により測定される入口温度を調整することができる。
【0018】
図2に示すように、入口温度測定器16は、ドレッサー15に対して、ターンテーブル10の回転方向の上流側に配置されている。このため、入口温度測定器16は、ドレッサー15に対して、ターンテーブル10の回転方向の上流側の研磨布11の表面温度(入口温度)を測定する。
【0019】
また、入口温度測定器16は、ドレッサー15の中心O’を通り、ターンテーブル10の中心Oを中心とした一定距離を有する円軌道X上において、研磨布11の温度を測定する。これは、円軌道X上において、ドレッサー15と研磨布11とが接触している時間が長く、最高温度を測定することができるためである。
【0020】
また、ドレッサー15の端部付近において、ドレッシング液は、ドレッサー15にぶつかって盛り上がる。このため、ドレッサー15の端部付近で温度測定を行った場合、入口温度測定器16は、研磨布11の表面温度ではなく、誤ってドレッシング液の温度を測定する可能性がある。研磨布11の表面温度を測定するために、入口温度測定器16は、円軌道X上でかつドレッシング液から距離d(例えば10mm)離れた入口温度測定点Aにおける温度を測定することが望ましい。
【0021】
なお、ドレッシング液が研磨布11の全面に供給されている場合、研磨布11の表面温度としての入口温度測定点Aに限らず、研磨布11の表面のいずれを測定してもよい。すなわち、入口温度測定器16は研磨布11の表面のいずれかを測定できれば、いずれの位置に設置されてもよい。
【0022】
[製造方法]
以下に、
図3を用いて、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。
【0023】
図3は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
【0024】
図3に示すように、まず、ステップS1において、半導体基板20上に被研磨膜が形成される。この被研磨膜は、例えば、STI構造やPMD構造を形成する際のシリコン酸化膜であるが、これに限らない。
【0025】
次に、ステップS2において、被研磨膜に対してCMP法が行われる。ここで、本実施形態におけるCMP法は、以下の条件で行われる。
【0026】
まず、ステップS21において、研磨布11のコンディショニングが行われる。より具体的には、ドレッサー15が研磨布11の表面に当接され、ドレッサー15と研磨布11とを摺動させる。また、ドレッシング液供給ノズル14により、ドレッシング液、例えば純水が研磨布11の表面に供給される。
【0027】
ここで、例えば、研磨布11として、ポリウレタンを主材料とし、ShoreD硬度が50以上80以下、弾性率が200MPa以上700MPa以下であるものをターンテーブル10に貼付する。また、例えば、ターンテーブル10の回転数を10rpm以上110rpm以下とする。また、例えば、ドレッサー15として、ダイヤモンド粗さ♯100以上♯200以下(旭ダイヤモンド社製)であるものを用いる。また、例えば、ドレッサー15の回転数を10rpm以上110rpm以下とし、ドレッシング荷重を50hPa以上300hPa以下とする。また、例えば、コンディショニング時間は60秒とする。
【0028】
このとき、純水を供給する場合、研磨布11の表面温度(入口温度測定器16による入口温度測定点Aの温度)が23℃以上になるように、純水の供給温度および供給流量を制御する。これにより、研磨布11のRsk値を−0.5以下にすることができる。
【0029】
次に、ステップS22において、被研磨膜が研磨される。より具体的には、トップリング12に保持された被研磨膜がコンディショニングされた研磨布11に当接され、被研磨膜と研磨布11とを摺動させる。ここで、例えば、トップリング12の回転数を120rpmとし、研磨荷重を300gf/cm
2とする。また、スラリー供給ノズル12から100cc/minの流量でスラリーが供給される。スラリーは、例えば、砥粒として酸化セリウム(日立化成工業株式会社製DLS2)とポリカルボン酸アンモニウム(花王株式会社製TK75)とを含有している。
【0030】
このように、被研磨膜の表面を−0.5以下のRsk値を有して回転する研磨布11の表面に当接させて研磨することで、研磨後の被研磨膜の表面のスクラッチ数を減少させることができる。この根拠については後述する。
【0031】
なお、研磨布11表面におけるRsk値は、−0.5以下であることが望ましく、また−1.0以下であることがより望ましい。しかし、これに限らず、研磨布11表面におけるRsk値は、少なくとも負であればよい。後述するように、コンディショニングにおいて、研磨布11の表面温度を高くすると、研磨布11のRsk値が小さくなる(絶対値の大きな負になる)。すなわち、コンディショニングにおいて、研磨布11の表面温度を高くすることでRsk値を小さくすることが望ましいが、研磨布11の表面温度が23℃以下であっても研磨布11のRsk値を負にできればよい。
【0032】
図4は、Rsk値について説明するための図である。
【0033】
Rsk値(粗さ曲線スキューネス値)とは、表面粗さプロファイルの平均線に対する確率密度分布の相対性を示すものである。
【0034】
図4(a)に示すように、確率密度分布が表面粗さプロファイルの平均線より下に偏った場合、Rsk値は正であるという。このとき、凸に突き出した部分が多く、平坦な部分が少なくなる。
【0035】
一方、
図4(b)に示すように、確率密度分布が表面粗さプロファイルの平均線より上に偏った場合、Rsk値は負であるという。このとき、凸に突き出した部分が少なく、平坦な部分が多くなる。
【0036】
すなわち、Rsk値が負であるということは、Rsk値が正であることよりも、その表面が滑らかであることを意味する。
【0037】
[CMP条件の根拠]
以下に、
図5および
図6を用いて、本実施形態におけるCMP条件の根拠について説明する。
【0038】
まず、研磨布11表面のRsk値と被研磨膜表面のスクラッチ数との関係を調べる研磨実験を行った。
【0039】
図5は、研磨実験による研磨布11表面のRsk値と被研磨膜表面のスクラッチ数との関係を示すグラフである。ここで、Rsk値は、高視野のレーザー顕微鏡、例えばHD100D(レーザーテック社製)で測定した粗さから計算したものである。スクラッチ数は、CMP後に一旦、被研磨膜表面を希フッ酸でライトエッチングした後に、KLA2815(KLAテンコール社製、SEM Review)でカウントしたものである。
【0040】
図5に示すように、被研磨膜表面を研磨布11表面に当接させて研磨する場合、研磨時における研磨布11表面のRsk値と、その結果生じる被研磨膜表面のスクラッチ数との間に正の相関関係(相関係数0.71)がある。言い換えると、研磨布11のRsk値が大きくなると被研磨膜表面のスクラッチ数が多くなり、小さくなると少なくなる。
【0041】
また、研磨布11表面のRsk値が負側に大きくなる(絶対値の大きな負になる)ほど被研磨膜表面のスクラッチ数が少なくなるとともに、そのばらつきが小さくなる。特に、研磨布11表面のRsk値が−0.5以下、より望ましくは−1.0以下になると、さらに被研磨膜表面のスクラッチ数が少なくなり、かつ、そのばらつきが小さくなる。
【0042】
以上のように、研磨布11表面のRsk値をより絶対値が大きな負の状態にして被研磨膜の研磨を行うことで、被研磨膜表面のスクラッチ数を少なくすることができる。このため、コンディショニングによって研磨布11表面のRsk値をより絶対値が大きな負にすることが望まれる。
【0043】
次に、研磨布11の表面温度と研磨布11のRsk値との関係を調べるコンディショニング実験を行った。ここでは、上述したCMP装置におけるドレッシング液供給ノズル14から供給されるドレッシング液を制御することで、入口温度測定器16によって測定される研磨布11の表面温度を調整している。また、コンディショニング実験は、以下の条件によって行われた。
【0044】
研磨布:ポリウレタン(ShoreD硬度が60、弾性率が400MPa)
ターンテーブル回転数:20rpm
ドレッサー:ダイヤモンド粗さ#100(旭ダイヤモンド社製)
ドレッサー荷重:200hPa
ドレッサー回転数:20rpm
ここで、ドレッシング液を純水とし、その供給温度を5℃、23℃(室温)、65℃として、それぞれ60秒間のコンディショニング実験を行った。それぞれのコンディショニング実験において、入口温度測定器16で計測された研磨布11の表面温度は、9℃、23℃、41℃であった。
【0045】
図6は、コンディショニング実験による研磨布11の表面温度と研磨布11のRsk値との関係を示すグラフである。
【0046】
図6に示すように、ドレッサー15により研磨布11表面をコンディショニングする場合、コンディショニング時における研磨布11の表面温度と、その結果生じる研磨布11のRsk値との間に負の相関関係がある。言い換えると、研磨布11の表面温度が高くなると研磨布11のRsk値が小さくなり、低くなると大きくなる。より具体的には、研磨布11の表面温度が9℃、23℃、41℃のそれぞれの場合において、研磨布11のRsk値は−0.43、−0.56、−0.78である。
【0047】
上述したように、コンディショニングによって研磨布11表面のRsk値をより絶対値が大きな負にすることが望ましい。コンディショニングにおける研磨布11の表面温度をより大きくすることで、研磨布11表面のRsk値をより絶対値が大きな負にすることができる。例えば、コンディショニングにおいて純水を供給する場合、研磨布11の表面温度を23℃以上にすることで、研磨布11表面のRsk値を十分に−0.5以下にすることができる。
【0048】
一方、コンディショニングにおける研磨布11の研削速度は、研磨布11の表面温度に依存する。研磨布11の表面温度が高くなると研削速度が小さくなり、低くなると大きくなる。より具体的には、研磨布11の表面温度が9℃、23℃、41℃のそれぞれの場合において、コンディショニングにおける研磨布11の研削速度は0.9μm/min、0.5μm/min、0.05μm/minである。これは、研磨布11の表面温度が高くなることで研磨布11が柔らかくなり(弾性率が低下し)、研削しにくくなったためであると考えられる。すなわち、研磨布11の表面温度を高くすることにより、研磨布11の使用寿命を延ばすことができる。
【0049】
以上のように、研磨布11の表面温度をより高くしてコンディショニングを行うことで、研磨布11のRsk値をより絶対値が大きな負にすることができ、かつ、研磨布11の研削速度を小さくすることができる。
【0050】
なお、研磨布11の表面温度は入口温度測定器16で計測された研磨布11の入口温度であるが、ドレッシング液が研磨布11の全面に供給されている場合、研磨布11の表面のいずれを測定してもよい。
【0051】
[効果]
上記実施形態によれば、半導体装置の製造方法におけるCMP法において、研磨布11の表面をより高い温度でコンディショニングした後、その研磨布11の表面に被研磨膜の表面を当接させて被研磨膜を研磨する。これにより、以下の効果を得ることができる。
【0052】
研磨布11表面をより高い温度でコンディショニングすることにより、研磨布11表面のRsk値をより絶対値の大きな負の値にすることができる。例えば、コンディショニングにおいて純水を供給する場合、研磨布11の表面温度を23℃以上にすることで、研磨布11表面のRsk値を−0.5以下にすることができる。この負のRsk値を有する研磨布11の表面に被研磨膜の表面を当接させて被研磨膜を研磨することで、CMP後の被研磨膜表面のスクラッチ数を低減することができる。その結果、デバイスの歩留まりや信頼性の低下を抑制することができる。
【0053】
また、研磨布11表面をより高い温度でコンディショニングすることにより、研磨布11の研削速度を小さくすることができる。これにより、研磨布11の使用寿命を延ばすことができ、CMP工程におけるコストの低減が可能になる。
【0054】
[適用例]
以下に、
図7および
図8を用いて、本実施形態に係る半導体装置の製造方法の適用例について説明する。ここでは、半導体装置におけるSTI構造の製造方法について説明する。
【0055】
図7および
図8は、本実施形態に係る半導体装置におけるSTIの製造工程を示す断面図である。
【0056】
まず、
図7に示すように、半導体基板20上に、ストッパー膜となるシリコン窒化膜21が形成される。その後、シリコン酸化膜等をエッチングマスクとして、半導体基板20に、STIパターン22が形成される。なお、半導体基板20とシリコン窒化膜21との間に、例えばシリコン酸化膜等を設けてもよい。
【0057】
次に、全面に、例えば高密度プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法等によりシリコン酸化膜23が形成される。このとき、シリコン酸化膜23は、STIパターン22外にも形成される。
【0058】
次に、
図8に示すように、シリコン酸化膜23を被処理膜としてCMPが行われ、表面が研磨される。このCMP工程において、本実施形態が適用される。すなわち、研磨布11の表面のRsk値を負になるようにコンディショニングした後、その研磨布11の表面にシリコン酸化膜23の表面を当接させてシリコン酸化膜23を研磨する。これにより、STIパターン22外のシリコン酸化膜23が除去されSTI構造が形成される。
【0059】
しかし、これに限らず、本実施形態におけるCMP法は、種々の金属材料、絶縁材料を被処理膜として行うCMPに対して適用可能である。
【0060】
その他、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で、種々に変形することが可能である。さらに、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。