特許第6091806号(P6091806)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6091806電縫溶接チューブ用アルミニウム合金ブレージングシート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6091806
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】電縫溶接チューブ用アルミニウム合金ブレージングシート
(51)【国際特許分類】
   C22C 21/00 20060101AFI20170227BHJP
   B23K 35/22 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   C22C21/00 E
   C22C21/00 D
   B23K35/22 310E
   C22C21/00 J
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-188390(P2012-188390)
(22)【出願日】2012年8月29日
(65)【公開番号】特開2014-47355(P2014-47355A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000176707
【氏名又は名称】三菱アルミニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091926
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 幸喜
(72)【発明者】
【氏名】石上 翔
(72)【発明者】
【氏名】吉野 路英
(72)【発明者】
【氏名】黒田 周
【審査官】 小川 武
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−082459(JP,A)
【文献】 特開2010−106345(JP,A)
【文献】 特開平07−286250(JP,A)
【文献】 特開2009−228010(JP,A)
【文献】 木内学,電縫管の製造技術の動向と課題,生産研究,1991年11月,Vol.43 no.11,P.36-45
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 21/00−21/18
B23K 35/22,35/28
C22F 1/00,1/04−1/057
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブ成形前の板厚をt、チューブ成形後の溶接径をDとしたとき、t/D×100(%)が2.0%以下となる電縫溶接チューブに供される電縫溶接チューブ用アルミニウム合金ブレージングシートであって、
前記電縫溶接チューブ用アルミニウム合金ブレージングシートの芯材が、不可避不純物以外にCu、Si、およびFeから選択される少なくとも1種の元素を含有し、その含有の際の含有量が、質量%で、Mn:1.0〜1.8%、Si:0.4〜1.2%、Fe:0.1〜0.4%、Cu:0.5〜1.5%の範囲内で、残部がAlと不可避不純物からなるAl−Mn系合金であり
前記板厚が0.20mm未満であり、0.2%耐力が190〜230MPaであり、
600℃×3分間とするろう付相当熱処理直後の引張強さが170MPa以上であることを特徴とする電縫溶接チューブ用アルミニウム合金ブレージングシート。
【請求項2】
芯材と、前記芯材の表面にクラッドされた犠牲材とを有し、
前記犠牲材が、質量%で、Zn:3.0%以上、Mg:1.0%以上を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする請求項1記載の電縫溶接チューブ用アルミニウム合金ブレージングシート。
【請求項3】
芯材と、前記芯材の表面にクラッドされた犠牲材とを有し、
前記芯材が、質量%で、Mn:1.0〜1.8%、Si:0.4〜1.2%、Fe:0.1〜0.4%、Cu:0.5〜1.5%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなる組成を有するAl−Mn系合金からなり、
前記犠牲材が、質量%で、Zn:4.1〜7.5%、Mg:1.2〜2.5%、Si:0.1〜0.4%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする請求項1または2に記載の電縫溶接チューブ用アルミニウム合金ブレージングシート。
【請求項4】
前記芯材の片面にAl−Si系またはAl−Si−Zn系ろう材がクラッドされていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の電縫溶接チューブ用アルミニウム合金ブレージングシート。
【請求項5】
80℃×7日時効後の引張強さが210MPa以上であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の電縫溶接チューブ用アルミニウム合金ブレージングシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器用チューブ材などに用いられる電縫溶接チューブ用アルミニウム合金ブレージングシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車のラジエータなどの熱交換器には、軽量化、小型化の要求が高まっている。このような要求に応えるには、チューブ材の薄肉化が有効な手段である。その一方で、チューブ材の薄肉化に当たっては、薄肉化に伴う素材の板厚減少分に見合うろう付後の高強度化が必要である。
ろう付後の高強度化を実現する方法としては、ブレージングシートの犠牲材にMgを添加する方法が提案されており、Mg−Si系化合物を形成することにより材料強度の向上を図っている。
また、犠牲材におけるFe含有量およびFe/Si重量比を限定することにより、アルカリ耐食性および酸耐食性を向上する方法も提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−13844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のブレージングシートでは、薄肉化およびろう付後の高強度化に伴い、チューブ加工前の強度が増加することにより、チューブ成形時のロールフォーミング工程で素材に座屈が発生し、造管性が低下してしまうことが問題になっている。
また、電縫溶接性に関し、電縫溶接の難易度を表す指標として、図1に示すようにチューブ成形前の板厚をt、チューブ成形後の溶接径をDとしたときのt/D×100(%)の数値が用いられる。この数値が高いほど電縫溶接が容易となり、1.0%以下では電縫溶接が不可能とされる。現在、広く使用されている電縫溶接チューブではt/D×100の値がおおよそ2.5〜4.0%の領域にあるが、今後のチューブ材の薄肉化に対し、この値が2.0%以下の領域になることが予想され、電縫溶接性の低下が懸念される。
【0005】
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、高いろう付後強度を有するとともに、t/D×100の値が2.0%以下の領域においても造管性に優れた電縫溶接チューブ用アルミニウム合金ブレージングシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明の電縫溶接チューブ用アルミニウム合金ブレージングシートのうち、第1の本発明は、チューブ成形前の板厚をt、チューブ成形後の溶接径をDとしたとき、t/D×100(%)が2.0%以下となる電縫溶接チューブに供される電縫溶接チューブ用アルミニウム合金ブレージングシートであって、
前記電縫溶接チューブ用アルミニウム合金ブレージングシートの芯材が、不可避不純物以外にCu、Si、およびFeから選択される少なくとも1種の元素を含有し、その含有の際の含有量が、質量%で、Mn:1.0〜1.8%、Si:0.4〜1.2%、Fe:0.1〜0.4%、Cu:0.5〜1.5%の範囲内で、残部がAlと不可避不純物からなるAl−Mn系合金であり
前記板厚が0.20mm未満であり、0.2%耐力が190〜230MPaであり、
600℃×3分間とするろう付相当熱処理直後の引張強さが170MPa以上であることを特徴とする。
【0008】
第2の本発明の電縫溶接チューブ用アルミニウム合金ブレージングシートは、前記第1の本発明において、芯材と、前記芯材の表面にクラッドされた犠牲材とを有し、
前記犠牲材が、質量%で、Zn:3.0%以上、Mg:1.0%以上を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする
【0009】
の本発明の電縫溶接チューブ用アルミニウム合金ブレージングシートは、第1または第2の本発明において、芯材と、前記芯材の表面にクラッドされた犠牲材とを有し、
前記芯材が、質量%で、Mn:1.0〜1.8%、Si:0.4〜1.2%、Fe:0.1〜0.4%、Cu:0.5〜1.5%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなる組成を有するAl−Mn系合金からなり、
前記犠牲材が、質量%で、Zn:4.1〜7.5%、Mg:1.2〜2.5%、Si:0.1〜0.4%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする
【0010】
の本発明のアルミニウム合金ブレージングシートは、前記第1〜第の本発明のいずれかにおいて、前記芯材の片面にAl−Si系またはAl−Si−Zn系ろう材がクラッドされていることを特徴とする。
の本発明のアルミニウム合金ブレージングシートは、前記第1〜第の本発明のいずれかにおいて、80℃×7日時効後の引張強さが210MPa以上であることを特徴とする。
【0011】
第6の本発明のアルミニウム合金ブレージングシートは、前記第4または第5の本発明において、前記芯材の片面にAl−Si系またはAl−Si−Zn系ろう材がクラッドされていることを特徴とする。
【0012】
以下、本発明で規定される各種特性および成分などの限定理由について説明する。なお、各成分量はいずれも質量%で示される。
【0013】
1.板厚:0.20mm未満
ブレージングシートのチューブ加工前の板厚が0.20mm以上では、薄肉化が不十分であり、熱交換器の軽量化および小型化に対する効果が少ない。このため、板厚を0.20mm未満に定める。なお、同様の理由により、板厚は、0.19mm以下に定めることが好ましい。また、電縫溶接チューブの強度を確保する観点から、板厚は、0.10mm以上に定めるのが望ましい。
【0014】
2.0.2%耐力:190〜230MPa
チューブ加工前のブレージングシートの0.2%耐力は、成形性を左右する因子であり、大きくなるほどスプリングバック量が増加し、また、座屈が発生しやすくなり、電縫溶接チューブの成形時に所定の形状を得ることが困難になる。0.2%耐力が230MPaを超えると、上記の理由から電縫溶接チューブを造管することが困難になる。0.2%耐力が190MPa未満では、早期に塑性変形することにより所定の形状を得ることが困難になる。このため、ブレージングシートの0.2%耐力を190〜230MPaに定める。なお、同様の理由により、ブレージングシートの0.2%耐力は、下限を195MPa、上限を225MPaに定めるのがさらに望ましい。
【0015】
3.ろう付後の引張強さ:170MPa以上
ブレージングシートの薄肉化に当たっては、薄肉化による肉厚減少分に見合うろう付後の材料の高強度化が必要である。しかしながら、ブレージングシートのろう付後の引張強さが170MPa未満であると、熱交換器に使用した際に充分な強度を得ることが困難であり、実用性に乏しい。したがって、ブレージングシートのろう付後の引張強さは、170MPa以上に定めるのが望ましく、180MPa以上に定めることが一層望ましい。ここで、ろう付温度は操業状態によって異なるが、標準的な条件(600℃×3分)において得られる特性として規定している。
【0016】
上記ブレージングシートは、芯材と、芯材の表面に犠牲材がクラッドされたものとすることができる。犠牲材は芯材の片面にクラッドし、芯材の他方の面に、ろう材をクラッドしたものにすることができる。以下、各材の成分などについて詳述する。
【0017】
4.芯材
芯材は、Cu、Si、およびFeから選択される少なくとも1種の元素を含有したAl−Mn系合金とすることができ、具体的には、以下の成分を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるものとすることができる。
【0018】
Mn:1.0〜1.8%
Mnは、マトリックス中にAl−Mn−Si系、Al−Mn−Fe系、Al−Mn−Fe−Si系化合物を微細に析出し、材料の強度を高める効果がある。しかし、その含有量が1.0%未満ではその効果が充分に発揮されず、1.8%を超えると鋳造時に巨大な金属間化合物を生成するため材料の成形性が低下してしまう。このため、Mn含有量は、1.0〜1.8%が望ましく、より望ましくは1.1〜1.8%であり、さらに望ましくは1.2〜1.7%である。
【0019】
Si:0.〜1.2%
Siは、ろう付時に犠牲材から拡散したMgと微細なMg−Si化合物を形成することで強度を高める効果や、時効硬化性を高める効果がある。また、マトリックス中にAl−Mn−Si系、Al−Mn−Fe−Si系化合物を微細に形成し、材料強度を高める効果がある。しかし、その含有量が0.%未満ではその効果が充分に発揮されず、1.2%を超えると材料の融点が低下してしまう。このため、Siの含有量は、0.〜1.2%が望ましく、より望ましくは0.5から1.1%であり、さらに望ましくは0.6〜1.1%である。
【0020】
Fe:0.1〜0.4%
Feは、マトリックス中に粗大なAl−Mn−Fe系、Al−Mn−Fe−Si系化合物を形成してろう付後の結晶粒径を小さくすることにより、ろう付時の犠牲材から芯材へのMg拡散を促進させることで強度を高める効果がある。しかし、その含有量が0.1%未満ではその効果が充分に発揮されず、0.4%を超えると耐食性が低下してしまう。このため、Feの含有量は、0.1〜0.4%が望ましく、より望ましくは0.15〜0.4%であり、さらに望ましくは0.2〜0.38%である。
【0021】
Cu:0.5〜1.5%
Cuは、マトリックス中に固溶し、材料の強度を高める効果や、芯材に添加した場合、芯材の電位を貴として犠牲材との電位差が大きくなるため、ブレージングシートの耐食性を向上させる効果がある。しかし、その含有量が0.5%未満ではその効果が充分に発揮されず、1.5%を超えると材料の融点が低下してしまう。このため、Cuの含有量は、0.5〜1.5%が望ましく、より望ましくは0.6〜1.2%であり、さらに望ましくは0.7〜1.1%である。
【0022】
5.犠牲材
犠牲材は、Zn:3.0%以上、Mg:1.0%以上を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるものとすることができ、より具体的には、以下の成分を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるものとすることができる。
【0023】
Zn:4.1〜7.5%、
Znは、ろう付熱処理後のごく短時間のうちにMgと微細なMg−Zn化合物を形成してろう付後の強度を高める効果がある。また、電位を卑にするため犠牲材に添加した場合、芯材との電位差が大きくなり、ブレージングシートの耐食性を向上させる効果(腐食深さを低減する効果)がある。しかし、その含有量が4.1%未満ではその効果が充分に発揮されず、7.5%を超えると融点が低下したり、また、腐食速度が増加し犠牲材層が早期に消失する結果、腐食深さが増加してしまう。このため、Znの含有量は、4.1〜7.5%が望ましく、より望ましくは4.5〜7.0%であり、さらに望ましくは4.8〜6.8%である。
【0024】
Mg:1.2〜2.5%
Mgは、ろう付熱処理時に芯材へ拡散して、MgとSiが共存する領域において、Siと微細なMg−Si化合物を形成して材料の強度を向上させる効果がある。しかし、その含有量が1.2%未満ではその効果が充分に発揮されず、2.5%を超えるとろう付性が低下してしまう。このため、Mgの含有量は、1.2〜2.5%が望ましく、より望ましくは1.2〜2.2%であり、さらに望ましくは1.3〜2.0%である。
【0025】
Si:0.1〜0.4%
Siは、Mgと微細なMg−Si化合物を形成することで材料の強度を向上させる効果がある。しかし、その含有量が0.1%未満ではその効果が充分に発揮されず、0.4%を超えると犠牲材の融点が低下してろう付時に犠牲材が溶融してしまう。このため、Siの含有量は、0.1〜0.4%が望ましく、より望ましくは0.13〜0.35%であり、さらに望ましくは0.15〜0.32%である。
【0026】
6.ろう材
ろう材の組成としては特に限定されるものではなく、Al−Si系合金、Al−Si−Zn系合金の一般的にろう材として使用されているものを適用することができる。例えば、JIS A4045合金、A4343合金、A4047合金などが挙げられる。また、これらJIS A4045合金、A4343合金、A4047合金などにZnを含有する合金、またMg、Cu、Liなどを含有する合金を用いることもできる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明によれば、高いろう付後強度を有するとともに、造管性に優れた電縫溶接チューブ用アルミニウム合金ブレージングシートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】アルミニウム合金ブレージングシートの電縫溶接時の断面模式図である。
図2】本発明の一実施形態の電縫溶接チューブ用アルミニウム合金ブレージングシートを示す概略断面図である。
図3】アルミニウム合金ブレージングシートにおけるろう浸食深さを示す光学顕微鏡による断面写真の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
本実施形態の電縫溶接チューブ用アルミニウム合金ブレージングシート1は、芯材3と、芯材3の一方の面にクラッドされた犠牲材4と、芯材3の他方の面にクラッドされたろう材5とを有している。電縫溶接チューブ用アルミニウム合金ブレージングシート1の板厚は、0.20mm未満である。また、電縫溶接チューブ用アルミニウム合金ブレージングシート1の0.2%耐力は、190〜230MPaである。
芯材3、犠牲材4、およびろう材5は、それぞれ上述した組成または材質からなるものとすることができる。
【0030】
電縫溶接チューブ用アルミニウム合金ブレージングシート1が供される電縫溶接チューブは、アルミニウム合金ブレージングシート1のチューブ成形前の板厚をt、電縫溶接チューブ成形後の溶接径をDとすると、t/D×100(%)が2.0%以下となるものである。t/D×100(%)が2.0%以下で成形性が良好なこと、板厚が0.20mm未満であることから、成形される電縫溶接チューブは、薄肉かつ成形性に優れるものといえる。
【0031】
上記アルミニウム合金ブレージングシート1は、以下のようにして製造することができる。
まず、それぞれ上述した組成または材質からなる芯材用アルミニウム合金、犠牲材用アルミニウム合金、およびろう材用合金を鋳造し、得られた芯材、犠牲材、およびろう材について所定温度で均質化処理を行う。なお、均質化処理は必ずしも行う必要はなく、例えば、芯材については均質化処理を行う一方、犠牲材およびろう材について均質化処理を行わないこともできる。
また、均質化処理の条件は、例えば、芯材については550〜600℃で8〜16時間、犠牲材については550〜600℃で8〜16時間、ろう材については400〜500℃で8〜16時間とすることができる。
【0032】
次いで、芯材の鋳塊の片面に犠牲材の鋳塊を、さらに反対面にろう材の鋳塊を組み合わせて熱間圧延し、クラッド材とする。さらに所定の厚さまで冷間圧延を行い、その後、中間焼鈍を行い、最終の冷間圧延により所望の厚さのクラッド材(ブレージングシート)を作製する。クラッド材の構成は、厚さの比で、犠牲材:芯材:ろう材=10〜20%:70〜85%:5〜10%とすることができ、例えば、犠牲材:芯材:ろう材=20%:70%:10%とすることができ、犠牲材のクラッド率を15%や17%に変更することもできる。
なお、熱間圧延の条件は、例えば、400〜500℃で負荷とすることができる。また、中間焼鈍の条件は、例えば、200〜400℃で3〜8時間とすることができる。
【0033】
上記製造工程において、最終圧延率などの条件の設定により、得られる電縫溶接チューブ用アルミニウム合金ブレージングシート1のチューブ加工前の0.2%耐力を190〜230MPaに設定し、さらに、ろう付相当熱処理後の引張強さを170MPa以上とすることができる。また、得られた電縫溶接チューブ用アルミニウム合金ブレージングシート1は、80℃雰囲気中で7日間保持する時効処理によって210MPa以上の引張強さを得ることができる。
上記により得られた電縫溶接チューブ用アルミニウム合金ブレージングシート1は、常法によりロールフォーミングして上記条件の溶接径Dを有するチューブ形状にし、さらに電縫溶接によって電縫溶接チューブを得ることができる。
【実施例】
【0034】
半連続鋳造により芯材用アルミニウム合金、犠牲材用アルミニウム合金、およびろう材用合金(4045合金)を鋳造した。なお、芯材用アルミニウム合金および犠牲材用アルミニウム合金の組成は、それぞれ表1および表2に示すものとした。表1および表2に示す組成において、残部はAlおよび不可避的不純物である。
得られた芯材は、585℃で8時間の均質化処理を行った。犠牲材およびろう材については均質化処理を行わなかった。
芯材鋳塊の一方の片面に犠牲材鋳塊を、さらに他方の片面にろう材鋳塊を組み合わせて熱間圧延し、クラッド材とした。さらに所定の厚さまで冷間圧延を行った。その後、中間焼鈍を350℃で6時間行い、最終の冷間圧延により厚さ0.18mmのH14調質のクラッド材を作製した。クラッド材の構成は、厚さの比で、犠牲材:芯材:ろう材=20%:70%:10%とした。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
上記のようにして得られたクラッド材について、ろう付前強度(チューブ加工前の素材強度)、ろう付後強度、80℃×7日時効後強度、成形性、耐ろう浸食性、および内部耐食性を以下のようにして評価した。各供試材の構成および圧延率、並びに評価結果を表3に示す。
【0038】
(ろう付前強度)
作製した材料から圧延方向と平行にサンプルを切り出し、JIS13号B試験片を作製し、引張試験を実施して0.2%耐力を測定し、測定結果を表3に示した。
【0039】
(ろう付後強度)
作製した材料を高純度窒素ガス雰囲気中でドロップ形式で600℃×3分のろう付相当熱処理(室温から600℃まで昇温時間は5〜7分)を施したのち、圧延方向と平行にサンプルを切り出し、JIS13号B試験片を作製し、引張試験を実施して引張強さを測定した。測定結果は、以下の基準に従って評価し、評価結果を表3に示した。
○○○:引張強さが180MPa以上のもの
○○:引張強さが170MPa以上、179MPa以下のもの
○:引張強さが160MPa以上、169MPa以下のもの
×:引張強さが159MPa以下のもの
【0040】
(80℃×7日時効後強度)
作製した材料を高純度窒素ガス雰囲気中でドロップ形式で600℃×3分のろう付相当熱処理(室温から600℃まで昇温時間は5〜7分)を施したのち、80℃の雰囲気中で7日間保持したサンプルを圧延方向と平行に切り出し、JIS13号B試験片を作製し、引張試験を実施して引張強さを測定した。測定結果は、以下の基準に従って評価し、評価結果を表3に示した。
○○○:引張強さが230MPa以上のもの
○○:引張強さが220MPa以上、229MPa以下のもの
○:引張強さが210MPa以上、219MPa以下のもの
×:引張強さが209MPa以下のもの
【0041】
(成形性)
作製した0.18mm厚の材料をチューブ造管機を用いて、溶接径:φ10.0mm(t/D=1.8%)の条件で円筒形状に加工し、端部に電縫溶接を実施した。加工後サンプルについて樹脂埋めし、圧延方向平行断面を鏡面研磨し、バーカー氏液で組織を現出後、光学顕微鏡で観察して、以下の基準に従って成形性を評価した。
○:チューブ成形時に座屈が発生せず、良好な溶接状態が得られたもの
×1:チューブ成形時に座屈が発生
×2:突き合わせ不良による溶接不良
【0042】
(耐ろう侵食性(ろう侵食深さ))
作製した材料を高純度窒素ガス雰囲気中でドロップ形式で600℃×3分のろう付相当熱処理(室温から600℃まで昇温時間は5〜7分)を施した。ろう付相当熱処理を実施したサンプルを樹脂埋めし、圧延方向平行断面を鏡面研磨し、バーカー氏液で組織を現出後、光学顕微鏡で観察してろう侵食深さ(エロージョン深さ)を測定した。図3は、ろう浸食深さを示す光学顕微鏡による断面写真の一例である。測定結果は、以下の基準に従って評価した。
○:ろう浸食深さが59μm以下のもの
×:ろう浸食深さが60μm以上のもの
【0043】
(内部耐食性(腐食深さ))
ろう付熱処理後のサンプルから30×40mmのサンプルを切り出し、犠牲材側について、Cl:195ppm、SO2−:60ppm、Cu2+:1ppm、Fe3+:30ppmを含む水溶液中で80℃×8時間→室温×16時間のサイクルで浸漬試験を8週間実施した。腐食試験後のサンプルを沸騰させたリン酸クロム酸混合溶液に浸漬して腐食生成物を除去した後、最大腐食部の断面観察を実施して腐食深さを測定した。測定結果は、以下の基準に従って評価した。
○:腐食深さが49μm以下のもの
×:腐食深さが50μm以上のもの
【0044】
(総合評価)
上述した各試験の結果に基づき、以下の基準に従って各供試材の総合評価を行った。
○○○:成形性の項目が○、ろう付後強度、および80℃×7日時効後強度の項目がそれぞれ○○○、ならびに耐ろう浸食性および内部耐食性の項目がそれぞれ○のもの
○○:成形性の項目が○、その他の全ての項目が○以上のもの(上記総合評価○○○のものを除く)
○:成形性の項目が○のもの(上記総合評価○○○および○○のものを除く)
×:成形性の項目が×のもの
【0045】
【表3】
【符号の説明】
【0046】
1 アルミニウム合金ブレージングシート
3 芯材
4 犠牲材
5 ろう材
図1
図2
図3