特許第6091818号(P6091818)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6091818
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】マイクロニードルパッチ投与装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20170227BHJP
【FI】
   A61M37/00 500
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-200938(P2012-200938)
(22)【出願日】2012年8月28日
(65)【公開番号】特開2014-42788(P2014-42788A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2015年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】501296380
【氏名又は名称】コスメディ製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】権 英淑
(72)【発明者】
【氏名】神山 文男
【審査官】 久島 弘太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−510534(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/000871(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/054518(WO,A1)
【文献】 特表2007−509706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動ノブ、ピストン、押出バネ、ロックアーム及びロックピンが設けられた本体ケースと側面開口部を有する先端スライドにより構成されるマイクロニードルパッチ投与装置であって該可動ノブの移動により該押出バネを圧縮して、該ロックアームを該ロックピンに係止させて該ピストンを一時的に保持し、マイクロニードルパッチを装着したパッチホルダーを該側面開口部から挿入し、該先端スライドを皮膚に押しつけて該ロックアームと該ロックピンの係止を解除し、
該押出バネが該ピストンを一気に押出し、該ピストンが該マイクロニードルパッチ背面を衝撃してマイクロニードルを皮膚内に刺入させることを特徴とするマイクロニードルパッチ投与装置。
【請求項2】
前記先端スライドはロック解除ピンをさらに備えることを特徴とする請求項に記載のマイクロニードルパッチ投与装置。
【請求項3】
前記可動ノブはシャフトで結ばれた1対の取っ手を有し、該可動ノブを上方に移動させると該シャフトが前記ピストンを上方に移動させ、前記押出バネが圧縮されることを特徴とする請求項に記載のマイクロニードルパッチ投与装置。
【請求項4】
前記先端スライドと前記本体ケースの間に応力調整バネが設けられ、前記マイクロニードルパッチ背面を衝撃する応力を調整できることを特徴とする請求項に記載のマイクロニードルパッチ投与装置。
【請求項5】
前記本体ケースが可動ノブ押しバネをさらに有し、前記可動ノブから手を離すと該可動ノブが元の位置に戻ることを特徴とする請求項に記載のマイクロニードルパッチ投与装置。
【請求項6】
マイクロニードルを膚内に押し込むさいの前記ピストンの衝撃エネルギーは、0.4ジュールから2.0ジュールである請求項に記載のマイクロニードルパッチ投与装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚表層及び/又は皮膚角質層に修飾効果及び/又は機能効果を与えるためのマイクロニードルパッチを皮膚に投与する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物を人の体内に投与する手法として、経口的投与と経皮的投与がよく用いられている。注射は代表的な経皮的投与法であるが、煩わしく苦痛を伴い、更に感染もあり得る歓迎すべからざる手法である。これに対し、最近マイクロニードルアレイを利用した、苦痛を伴わない経皮的投与法が注目されてきた(特許文献1、非特許文献1)。
【0003】
薬物の経皮的投与のさい皮膚角質層は薬物透過のバリアとして働き、単に皮膚表面に薬物を塗布するだけでは透過性は必ずしも十分ではない。これに対し微小な針、すなわちマイクロニードルを用いて角質層を穿孔することにより、塗布法より薬物透過効率を格段に向上させることができる。このマイクロニードルを基板上に多数集積したものがマイクロニードルアレイである。また、マイクロニードルアレイを皮膚に付着させるための粘着シートや、粘着シートを保護しマイクロニードルアレイを皮膚に貼付するさいの支えとするための保護離型シートなどを付加して使用しやすい製品としたものをマイクロニードルパッチという。ここに粘着シートとは、フィルム、布又は紙に粘着剤を塗布したものをいう。
【0004】
糖質などの体内で代謝により消失する基材を用いてマイクロニードルを作成すれば、仮にニードルが折れ皮膚内に残存したとしても事故とはならない。そればかりか、糖質中に薬物を含ませておくならば刺入されたマイクロニードルが体内で溶解されることにより、容易に薬物を皮内や皮下に投与することができる(特許文献2)。
【0005】
しかし一般に皮膚は柔軟であり、マイクロニードルアレイを皮膚に投与するさい、マイクロニードルアレイを指で押さえるだけではマイクロニードルを皮膚内に容易に刺入することはできない。これは皮膚は元来外界からの各種刺激や衝撃などを防御する役割を担っている弾力性のある組織であるから、マイクロニードルのとがった先端を皮膚に押しつけても、皮膚がその衝撃を吸収し変形することによりマイクロニードルの皮膚内侵入を妨げるためである。
【0006】
衝撃吸収能のある皮膚にマイクロニードルアレイを投与するには、マイクロニードルアレイを皮膚に高速かつ衝撃的に投与することが必要である。この方法として、これまで、ばね(特許文献3−8)、空気圧(特許文献7)や磁力(特許文献9)などの利用が提案されてきた。ばねを女性や小児にも容易に使用できるようにするには、ばね圧縮方法とトリガー方法に工夫を要する。また、空気圧や磁力の利用も、必ずしも簡便とは言えない。従来のマイクロニードルアレイ投与装置は実用上の問題を残しており、利用者からはより簡便でかつ刺入が確実に実現できる装置が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2002−517300号公報
【特許文献2】特開2003−238347号公報
【特許文献3】特表2004−510530号公報(特許4198985号公報)
【特許文献4】特表2004−510534号公報(特許4104975号公報)
【特許文献5】特表2004−510535号公報(特許4659332号公報)
【特許文献6】特表2005−533625号公報
【特許文献7】特表2006−500973号公報
【特許文献8】特表2007−509706号公報(特許4682144号公報)
【特許文献9】特開2011−078711号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】権英淑、神山文男「マイクロニードル製品化への道程」、薬剤学、社団法人日本薬剤学会、平成21年9月、第69巻、第4号、p.272−276
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、衝撃吸収能を有する皮膚に確実にマイクロニードルパッチを投与できる簡便で使いやすいバネ式マイクロニードルパッチ投与装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた本発明に係わるマイクロニードルパッチ投与装置は、ピストン、押出バネ及び側面開口部を有し、該側面開口部よりマイクロニードルパッチを挿入することを特徴とする。
【0011】
本発明に係わるマイクロニードルパッチ投与装置は、本体ケースと先端スライドにより構成し、本体ケースには可動ノブ、ピストン、押出バネ、ロックアーム及びロックピンが設けられ、先端スライドには側面開口部が設けられ、可動ノブの移動により押出バネを圧縮して、ロックアームをロックピンに係止させてピストンを一時的に保持し、マイクロニードルパッチを装着したパッチホルダーを側面開口部から挿入し、先端スライドを皮膚に押しつけてロックアームとロックピンの係止を解除し、押出バネがピストンを一気に押出し、ピストンがマイクロニードルパッチ背面を衝撃してマイクロニードルを皮膚内に刺入させるよう構成することができる。
【0012】
可動ノブを本体ケース上方側に引くことにより、押出バネが圧縮され、ロックピンにロックアームが係止してピストンと押し出しバネの圧縮状態とが一時的に保持される。
ここに、マイクロニードルパッチ投与装置の下方とはマイクロニードル刺入方向を、上方とはその逆の方向をいう。
【0013】
押出バネの圧縮状態が保持されているとき、先端スライドの側面開口部よりマイクロニードルパッチを装着したパッチホルダーを挿入する。側面よりパッチホルダーを挿入する方法は、底面より挿入する従来技術の方法に比較し、使用者にとって操作が容易である。使用者は本マイクロニードルパッチ投与装置により、容易にマイクロニードルを希望する部位に刺入できる。
【0014】
パッチホルダーは、中央に穴と、穴の周辺縁と、ハンドルとを有する。穴の形状はマイクロニードルアレイとマイクロニードルパッチの形状に合わせるのが好都合である。穴の大きさは、マイクロニードルアレイを保持するためマイクロニードルアレイより小さくないことが好ましい。周縁縁の大きさは、マイクロニードルパッチを保持するためマイクロニードルパッチより大きいことが必要である。従って、1つのマイクロニードルパッチ投与装置に対し、使用するマイクロニードルパッチの形状と大きさごとに、いくつかのパッチホルダーを使い分けることができる。
【0015】
マイクロニードルパッチの保持のためには、パッチホルダーの周辺縁の下面を弱粘着性とすると好都合である。周辺縁の下面を弱粘着性とするには、粘着剤溶液を塗布し乾燥させればよく、ボールタック価が2〜5程度の粘着強度が望ましい。
なお、パッチホルダーの周辺縁の上面に、マイクロニードルパッチの粘着シートの粘着性を利用してマイクロニードルパッチを保持することもできる。
【0016】
パッチホルダーがマイクロニードルパッチを保持した状態で供給されるならば、使用者はマイクロニードルパッチをパッチホルダーに装着する手間を省くことができる。パッチホルダーとマイクロニードルパッチが別々に供給されるときは、マイクロニードルパッチは使用者が保護離型シートを除去した後パッチホルダーに装着する必要がある。
【0017】
マイクロニードルパッチ投与前に先端スライドを皮膚に押しつけると、先端スライドの円筒部分に取り囲まれた皮膚表面が一時的により高弾性となり、マイクロニードルの刺入が容易かつ確実となる。皮膚は元来は柔らかく衝撃を吸収し変形する組織であるが、このように硬い円筒によって圧迫されると内部の皮膚は外側に引っ張られてより硬く弾性を持つものとなる。このことはマイクロニードルアレイの皮膚挿入に極めて有利な条件となる。本発明のアプリケーターは、この原理を利用して、皮膚を強く圧迫して皮膚の弾性を大きくしてマイクロニードルの皮膚挿入を確実にすることに特徴がある。
【0018】
先端スライドの円筒部分が皮膚を圧迫するさいの圧迫圧力は、1〜4Nが適当である。これより弱くては皮膚の弾性が十分大きくならず、強くては皮膚圧迫痛が大きくなりすぎる。
【0019】
先端スライドが皮膚を軽く圧迫している状態でさらに先端スライドを皮膚に押しつけると、ロックアームとロックピンの係止が解除されるよう構成する。例えば、先端スライドが一定値以上上方に移動したとき、ロックアームとロックピンの係止を解除するロック解除ピンを備えておく。係止が解除されると押出バネがピストンを一気に押しだし、ピストンがマイクロニードルパッチ背面を衝撃し、マイイクロニードルが皮膚に刺入される。
【0020】
ピストンがマイクロニードルを皮膚に押し込む際の衝撃エネルギーは、0.4ジュールから2.0ジュールであることが好ましい。0.4ジュールより小さいとマイクロニードルの刺入が不安定となり、2.0ジュールより大きいと衝撃時の皮膚の痛みが増大し、またマイクロニードルアレイが破損するおそれがある。
【0021】
引用文献5は衝撃エネルギーは0.3ジュールで十分と記載している(引用文献5、請求項1)が、これはマイクロニードルが金属製であって先端が鋭利である上、マイクロニードル密度が疎なためと思われる。本発明が対象としている生体内溶解性材料(例:ヒアルロン酸)を用いるマイクロニードルの場合は、先端を金属ほど鋭利にすることは困難である。しかも、生体内溶解性材料を用いるマイクロニードルは、それ自身が有効物であるか、または薬物を内部に保持しているため、通常皮膚に穴を開けるための金属製マイクロニードルより高密度(例:240本/1cm)に設けられている。これらの理由により、生体内溶解性材料を用いたマイクロニードルの刺入には、金属製マイクロニードルの場合より、より大きな衝撃エネルギーが必要である。
【0022】
同じバネ強度で衝撃エネルギーを大きくするには、バネに蓄えられるエネルギーは変位の2乗に比例するので、ピストンの可動範囲を大きくする必要がある。そのため本マイクロニードルパッチ投入装置では、押出バネを圧縮しピストンと押出バネを一時的に保持してからパッチホルダーを挿入することとし、ピストンの可動範囲を広げ、バネの圧縮エネルギーを大きくした。あるいは必要なバネの圧縮エネルギーが同じ場合、バネ定数を小さくでき、腕力が十分でない女性でも容易にバネを圧縮できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のバネ式マイクロニードルパッチ投与装置によるマイクロニードル投与法は、マイクロニードルパッチを装着したパッチホルダーを先端スライド側面開口部より挿入することによりピストンの可動範囲を広くした結果、小さなバネ定数のバネを用いて必要十分な衝撃力を発生させることができる。その結果、非力な方でも容易に使用できる。
【0024】
マイクロニードルパッチを装着したパッチホルダーを先端スライド側面開口部より挿入する方法は、マイクロニードルパッチの挿入と保持が従来方法より容易である。
さらに本発明のマイクロニードルパッチ投与装置は刺入時に皮膚の弾性を一時的に高めることができるので、マイクロニードル投与がより確実になる。これによりマイクロニードルアレイの利用が一層容易かつ便利になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施例1のマイクロニードルアレイ投与装置の外観図。
図2】実施例1のマイクロニードルアレイ投与装置の初期状態(押出バネが緩んでいる状態)の内部説明図。
図3】実施例1のマイクロニードルアレイ投与装置の可動ノブを引いて押出ばねを圧縮した状態の内部説明図。
図4】実施例1のマイクロニードルアレイ投与装置の可動ノブを元の位置に戻し、パッチホルダーを挿入した状態の内部説明図。、
図5図4を90°回転した状態の内部説明図。
図6】実施例1のマイクロニードルアレイ投与装置を皮膚に押しつけ、先端スライドのピンがロックアームを押し、押出バネが一気に伸び、マイクロニードルが皮膚に刺入された状態の内部説明図。
図7】実施例3のマイクロニードルアレイ投与装置の外観図。
図8】実施例1パッチホルダーの斜視図。
図9】実施例1パッチホルダーの平面図。
図10】実施例1パッチホルダーにマイクロニードルパッチが装着されたときの斜視図。
図11】実施例2のパッチホルダーの平面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態はいくつか考えられる。以下に説明するのはその例であるが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0027】
本実施例のマイクロニードルパッチ投与装置は、大きさ1〜1.5cmのマイクロニードルアレイを皮膚角質層に刺入するために設計された。マイクロニードルアレイの背面(マイクロニードルのない側)には直径2〜2.5cmの粘着テープが付され、パッチホルダーに保持した形で供給される。
【0028】
本発明のマイクロニードルアレイ投与装置の外観を図1に示す。本装置は、本体ケース11と先端スライド12により構成される。
【0029】
マイクロニードルアレイ投与装置の初期状態の内部説明図を図2に示す。この図は本実施例のマイクロニードルパッチ投与装置の本体ケースと先端スライドを縦に切断したときの内部説明図に相当する。パッチホルダー31は未だ装着されていないので、側面開口部27は空孔状態である。押出バネ22が伸びた状態であるので、ピストン23は投与装置先端付近まで伸びている。このためこの状態ではマイクロニードルパッチホルダーを挿入することはできない。可動ノブ21は下の位置にある。ロックアーム25はロックピン26と離れている。
【0030】
可動ノブ21を上に引き上げると、図3に示されるように、それと共にピストン23も引き上げられ、押出バネ22が圧縮される。可動ノブが上端まで引き上げられると、ピストンに設けられたロックピン26が本体ケース内に設けられたロックアーム25に係止され、押出バネは圧縮された状態で一時的に保持される。なお、図3では可動ノブ押しバネ24の記載を省略している。
【0031】
ロックピンがロックアームに係止すると、図4に示されるように、可動ノブは手を離せば可動ノブ押しバネ24により元の位置に戻る。この状態で、先端スライドの側面開口部27にマイクロニードルパッチを装着したパッチホルダー31を挿入する。
【0032】
図5は、図4の位置から90°回した状態である。図5では、図の煩雑さを避けるため、可動ノブ押しバネ24と図2に記載した符号の一部の記載を省略している。
可動ノブ21の取っ手は一対あり、その間はピストンの内部のスリット42を通るシャフト41により連結されている。なお、この図は内部説明図であるので可動ノブの取っ手は現れていないが、取っ手はスリットに覆い被さっており、スリットは外部から見えない。シャフト41は、可動ノブを上方に移動して押出バネ22が十分に圧縮されたときスリット42の上端に位置し、ピストンを引き上げる。このスリット42は、可動ノブを引き上げたり、元に戻したりするのに十分な長さを有する。スリット42のシャフト41の反対側には、押出バネの支点が現れている。
【0033】
先端スライド12を皮膚に接触させさらに少し押すと、ロック解除ピン34がロックアーム25を押し、係止を解除する。すると押出バネ22が元の長さに戻る勢いでピストン23を押し、ピストンがマイクロニードルパッチの背面を叩き、マイクロニードルは皮膚内に刺入される。パッチホルダー31からマイクロニードルパッチがなくなり、この状態が図6である。マイクロニードルパッチ投与装置を皮膚から外し、パッチホルダーを取り出すと、一連の刺入動作が終了する。なお、応力調整バネ33は、先端スライドを下の位置に保持し、押出バネとのバランスによりマイクロニードルの刺入応力を調整する。
なお、図6において、図の煩雑さを避けるため、図2に記載した符号の一部と皮膚の記載を省略している。
【0034】
先端スライド12の円筒部分により皮膚を圧迫したときの皮膚の弾力変化を、皮膚粘弾性測定装置(株式会社インテグレ製、CUTOMETER MPA580)により測定した。標準測定法(モード1)による測定により、全体の圧力を表すR2の値は、皮膚を圧迫しないとき0.633、皮膚を圧迫したとき0.835であった。1.0に近づくほど高弾性であるので、圧迫により弾力性が向上していることが定量的に示された。
【0035】
本実施例のパッチホルダー31の斜視図を図8に、平面図を図9に示す。このパッチホルダーはポリエチレン製であり、直径12mm程度の円形マイクロニードルアレイに直径22mm程度の円形の粘着シートを付したマイクロニードルパッチを保持するためのもので、穴51の直径は16mm、周辺縁の幅は4mmとなっている。
周辺縁に弱微粘着性を持たせるために、HiPAS粘着剤(コスメディ製薬製)を厚さ10μm塗布した。この粘着性によりマイクロニードルパッチを粘着シート裏面を利用して保持した。このパッチホルダー31は、パッチホルダー31を先端スライドの側面開口部より投与装置に挿入する際にパッチホルダーを指で保持するため用いるハンドル37をも有する。
【0036】
パッチホルダー31の周辺縁52の下面にマイクロニードルパッチ50を装着したときの斜視図を図10に示す。マイクロニードルパッチの粘着テープ裏面が、周辺縁52の下面に保持されている。ピストン23が引き上げられた状態で、マイクロニードルパッチを保持したパッチホルダー31を包装袋より取り出し、先端スライドの側面開口部27より挿入する。
【実施例2】
【0037】
実施例2のマイクロニードルパッチ投与装置本体は、ロックアーム、ロックピン及びロック解除ピンが実施例1の投与装置の場合より90°ずれた平面内にあるほか、実施例1の投与装置と同様である。このように構造を修正してもマイクロニードルパッチ投与装置としての性能には変化がない。
【0038】
実施例2のパッチホルダー32は、図11に示されるように四角形の穴を有する。このパッチホルダーは一辺14mmの正方形のマイクロニードルアレイに直径22mmの円形の粘着シートを付したマイクロニードルパッチを保持するためのものである。穴38は一辺15mmの正方形であり、周辺縁39の外直径は24mmである。
このような修正を行ってもマイクロニードル投与装置の性能や使いやすさに変化はない。
【実施例3】
【0039】
実施例3のマイクロニードルパッチ投与装置本体は、図7に示すように、実施例1に比較し、本体ケース11の上部が細くなり、可動ノブ21が小型となっている。しかし、先端スライド12、側面開口部27は実施例1のものと同様であり、マイクロニードルパッチホルダー31は実施例1、2の投与装置と互換性を持たせると好都合である。
【符号の説明】
【0040】
11 本体ケース
12 先端スライド
21 可動ノブ
22 押出バネ
23 ピストン
24 可動ノブ押しバネ
25 ロックアーム
26 ロックピン
27 側面開口部
31、32 パッチホルダー
33 応力調整バネ
34 ロック解除ピン
41 可動ノブシャフト
42 可動ノブシャフトが本体ケース内を移動可能なように設けられた空孔
35、38 パッチホルダー空孔
36、39 パッチホルダー周辺縁
37 パッチホルダーハンドル
50 マイクロニードルパッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11