【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、熱膨張性マイクロカプセル、キャリア樹脂及び滑剤を含有するマスターバッチであって、前記キャリア樹脂は、
オレフィン成分を30〜55重量%含有するエチレン−酢酸ビニル共重合体及び低密度ポリエチレンの混合樹脂を含有し、
前記エチレン−酢酸ビニル共重合体の前記キャリア樹脂に対する配合量は1〜75重量%であ
り、前記
エチレン−酢酸ビニル共重合体は、メルトフローレートが100g/10min以上であるマスターバッチである。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明のマスターバッチは、オレフィン共重合体を含有するキャリア樹脂を含有する。
上記オレフィン共重合体は、熱膨張性マイクロカプセルの分散性を向上できるという利点がある。
【0010】
上記オレフィン共重合体は、オレフィン成分を30〜55重量%含有する。
これにより、発泡成形を行う際に、マスターバッチの分散性が向上し、発泡成形体の表面に色むらが発生することを防止することができる。
上記オレフィン共重合体におけるオレフィン成分の含有量が30重量%未満であったり、55重量%を超えたりすると、発泡成形を行う際に発泡成形体の表面に色むらが発生する。
好ましい下限は40重量%、好ましい上限は50重量%である。
なお、上記オレフィン成分の含有量は、例えば、JIS K6924−2等のような方法によって測定することができる。
【0011】
上記オレフィン共重合体は、メルトフローレートが50g/10min以上であることが好ましい。上記メルトフローレートが50g/10min未満であると、混練時に剪断発熱を起こしやすくなるため、成形温度のコントロールが難しくなり、熱膨張マイクロカプセルが早期に膨張してしまうことがある。より好ましくは100g/10min以上である。
なお、上記メルトフローレートは、JIS K 7210(1999)「190℃、2.1kg荷重」に準じた方法で測定することができる。
【0012】
上記オレフィン共重合体としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリレート共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル−不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−アミノアルキルメタクリレート共重合体、エチレン−ビニルシラン共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。
また、上記オレフィン共重合体は、オレフィン成分を有するものであればよく、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよく、グラフト共重合体であってもよい。
【0013】
本発明のマスターバッチにおける上記オレフィン共重合体の配合量は特に限定されないが、好ましい下限が3重量%、好ましい上限が90重量%である。上記オレフィン共重合体の配合量が3重量%未満であると、マイクロカプセルの分散を向上させる効果が弱くなり、表面平滑性に優れ、色むらの少ない発泡成形体を作製することが困難になる。
上記オレフィン共重合体の配合量が90重量%を超えると、十分な発泡倍率を得られにくいことがある。上記オレフィン共重合体の配合量のより好ましい下限は55重量%、より好ましい上限が75重量%である。
【0014】
また、上記オレフィン共重合体の上記キャリア樹脂に対す
る配合量は、上記キャリア樹脂に対して好ましい下限が1重量%、好ましい上限が100重量%である。上記オレフィン共重合体のキャリア樹脂に対する配合量が1重量%未満であると、マイクロカプセルの分散を向上させる効果が弱くなり、表面平滑性に優れ、色むらの少ない発泡成形体を作製することが困難になることがある。上記オレフィン共重合体のキャリア樹脂に対する配合量のより好ましい下限は10重量%である。オレフィン共重合体の割合が多いと、十分な発泡倍率を得られにくいことがあるため、より好ましい上限は75重量%である。
【0015】
上記キャリア樹脂には、上記オレフィン共重合体以外に他の熱可塑性樹脂を添加してもよい。
このような熱可塑性樹脂は特に限定されず、通常の発泡成形に用いられる熱可塑性樹脂を用いることができる。上記熱可塑性樹脂として、具体的には、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、塩化ビニル、ポリスチレン、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
これらのなかでは、融点が低く加工しやすいことから、LDPEが好ましい。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0016】
本発明のマスターバッチにおける上記キャリア樹脂全体の配合量は特に限定されないが、好ましい下限が10重量%、好ましい上限が90重量%である。上記キャリア樹脂全体の配合量が10重量%未満であると、混練時に剪断発熱を起こしやすくなるため、成形温度のコントロールが難しくなり、熱膨張マイクロカプセルが早期に膨張してしまうことがある。上記キャリア樹脂全体の配合量が90重量%を超えると、十分な発泡倍率を得られにくいことがある。上記キャリア樹脂全体の配合量のより好ましい下限は20重量%、より好ましい上限が50重量%である。
【0017】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、滑剤を含有する。
上記滑剤は、混練時に剪断発熱を起こしにくくすることで、成形温度のコントロールを容易にして、熱膨張マイクロカプセルが早期に膨張するのを防ぐという役割を有する。
【0018】
上記滑剤としては、炭素原子数が20〜70程度のパラフィンワックス類;分子量が1000〜5000程度のポリエチレンワックス類等の炭化水素系滑剤;ミリスチン酸、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、パルチミン酸、アラギニン酸、ベヘニン酸等の脂肪酸系滑剤;ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸等の脂肪酸の低級および高級アルコールエステル類、高級脂肪酸とグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等とのエステル類、モンタン酸高級アルコールステル類等のエステル系滑剤;ステアリルアミド、パルチミルアミド、オレイルアミド、ベヘンアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド、エチレンビスオレイルアミド、エチレンビスラウリルアミド等の脂肪酸アミド系滑剤;ステアリルアルコール、ココナッツアルコール、セシルアルコール、メリシルアルコール等の高級アルコール系滑剤;ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベヘニン酸等の脂肪酸と、マグネシウム、カルシウムバリウム、亜鉛、アルミニウム等金属の金属セッケン等が例示される。上記滑剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
上記滑剤の融点はマスターバッチの成形温度以下であれば特に限定されないが、成形時に発泡剤に負荷をかけないためには、熱膨張マイクロカプセルの発泡開始温度以下であることが好ましい。より好ましくは60〜100℃である。上記滑剤の融点が60℃未満であると、成形後にブリードアウトする可能性があり表面が白化する可能性がある。
なお、上記融点は、JIS K 7121に準拠した方法で測定することができる。
【0020】
本発明のマスターバッチにおける上記滑剤の配合量は特に限定されないが、好ましい下限が3重量%、好ましい上限が15重量%である。上記滑剤の配合量が3重量%未満であると、混練時に剪断発熱を起こしやすくなるため、成形温度のコントロールが難しくなり、熱膨張マイクロカプセルが早期に膨張してしまうことがある。上記滑剤の配合量が15重量%を超えると、混練時の溶融粘度が低下してマスターバッチの成型が困難になることがある。上記滑剤の配合量のより好ましい下限は4.5重量%、より好ましい上限が8重量%である。
【0021】
本発明のマスターバッチは、熱膨張性マイクロカプセルを含有する。
上記熱膨張性マイクロカプセルは、重合体からなるシェルに、コア剤として揮発性膨張剤が内包されている構造である。上記重合体は、重合性モノマーを重合させることで得られる。
【0022】
上記重合性モノマーは、ニトリル系モノマーを含有することが好ましい。
上記重合性モノマーが上記ニトリル系モノマーを含有することで、上記熱膨張性マイクロカプセルの耐熱性及びガスバリア性が向上し、得られる発泡性熱可塑性樹脂マスターバッチは、高い成形温度でも高発泡倍率で発泡成形を行うことができる。
【0023】
上記ニトリル系モノマーは特に限定されず、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、フマルニトリル等が挙げられる。これらのなかでは、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが特に好ましい。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0024】
上記ニトリル系モノマーの含有量は特に限定されないが、上記重合性モノマー全体100重量部に占める好ましい下限が60重量部、好ましい上限が99重量部である。上記ニトリル系モノマーの含有量が60重量部未満であると、得られる熱膨張性マイクロカプセルのガスバリア性が低下することがある。上記ニトリル系モノマーの含有量が99重量部を超えると、上記重合性モノマー全体に占める後述するカルボキシル基含有モノマーの含有量が相対的に低下して、上記熱膨張性マイクロカプセルの耐熱性が低下し、得られる発泡性熱可塑性樹脂マスターバッチは、高い成形温度では高発泡倍率で発泡成形を行えないことがある。
【0025】
上記重合性モノマーは、アミド基、アミノ基、ヒドロキシル基及びカルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含有するモノマー(以下、官能基含有モノマーともいう)を含有することが好ましい。
このようなモノマーは、コロイダルシリカとシェルを構成する他のモノマーとの連結コモノマーとしての役割を果たす。例えば、アミド基は水素結合によりコロイダルシリカとの吸着性が高く、その結果、コロイダルシリカが強固にシェルに吸着する。また、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基も同様の役割を果たす。
【0026】
上記アミド基、アミノ基、ヒドロキシル基及びカルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含有するモノマーとしては、例えば、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、ジエチルアミノエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート、N−ビニルカプロラクタム等が挙げられる。なかでも、N−ビニルカプロラクタムが好適に使われる。
また、上記カルボキシル基を含有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等の不飽和モノカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸等が挙げられる。これらのなかでは、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸が好ましく、得られる熱膨張性マイクロカプセルの耐熱性がより向上することから、メタクリル酸が特に好ましい。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0027】
上記アミド基、アミノ基、ヒドロキシル基及びカルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含有するモノマーの含有量は特に限定されないが、上記重合性モノマー全体100重量部に占める好ましい下限が1重量部、好ましい上限が40重量部である。上記官能基含有モノマーの含有量が1重量部未満であると、上記熱膨張性マイクロカプセルの耐熱性が低下し、得られる発泡性熱可塑性樹脂マスターバッチは、高い成形温度では高発泡倍率で発泡成形を行えないことがある。上記官能基含有モノマーの含有量が40重量部を超えると、得られる熱膨張性マイクロカプセルのガスバリア性を確保することができず、熱膨張しなくなることがある上記官能基含有モノマーの含有量は、上記重合性モノマー全体100重量部に占めるより好ましい下限が3重量部、より好ましい上限が30重量部である。
【0028】
上記重合性モノマーは、上記ニトリル系モノマー、上記アミド基、アミノ基、ヒドロキシル基及びカルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を含有するモノマー等と共重合することのできる他のモノマー(以下、単に、他のモノマーともいう)を含有してもよい。
上記他のモノマーは特に限定されず、目的とする熱膨張性マイクロカプセルに必要とされる特性に応じて適宜選択することができる。上記他のモノマーとして、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、ジシクロペンテニルアクリレート等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、イソボルニルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、スチレン等のビニルモノマー等も挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0029】
上記重合性モノマーが上記他のモノマーを含有する場合、上記他のモノマーの含有量は特に限定されないが、上記重合性モノマー全体100重量部に占める好ましい上限が50重量部である。上記他のモノマーの含有量が50重量部を超えると、上記重合性モノマー全体に占める上記モノマーの含有量が相対的に低下して、上記熱膨張性マイクロカプセルの耐熱性、ガスバリア性等が低下し、得られるマスターバッチは、高い成形温度では高発泡倍率で発泡成形を行えないことがある。
【0030】
上記重合性モノマーには、金属カチオン塩を添加してもよい。
上記重合性モノマーに上記金属カチオン塩を添加することで、上記カルボキシル基含有モノマーのカルボキシル基と、上記金属カチオン塩を形成する金属カチオンとがイオン架橋を形成することができ、上記熱膨張性マイクロカプセルのシェルの架橋効率が上がって耐熱性が向上し、得られる発泡性熱可塑性樹脂マスターバッチは、高い成形温度でも高発泡倍率で発泡成形を行うことができる。また、上記イオン架橋の形成により、上記熱膨張性マイクロカプセルは高温でもシェルの弾性率が低下しにくいことから、得られる発泡性熱可塑性樹脂マスターバッチは、強い剪断力が加えられる混練成形、カレンダー成形、押出成形、射出成形等の成形方法を用いた発泡成形においても上記熱膨張性マイクロカプセルの破裂又は収縮が生じにくく、高発泡倍率で発泡成形を行うことができる。
【0031】
上記金属カチオン塩を形成する金属カチオンは、上記カルボキシル基含有モノマーのカルボキシル基とイオン架橋を形成することのできる金属カチオンであれば特に限定されず、例えば、Na、K、Li、Zn、Mg、Ca、Ba、Sr、Mn、Al、Ti、Ru、Fe、Ni、Cu、Cs、Sn、Cr、Pb等のイオンが挙げられる。これらのなかでは、2〜3価の金属カチオンであるCa、Zn、Alのイオンが好ましく、Znのイオンが特に好ましい。また、上記金属カチオン塩は、上記金属カチオンの水酸化物であることが好ましい。これらの金属カチオン塩は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0032】
上記金属カチオン塩を2種以上併用する場合、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のイオンからなる塩と、上記アルカリ金属又はアルカリ土類金属以外の金属カチオンからなる塩とを組み合わせて用いることが好ましい。上記アルカリ金属又はアルカリ土類金属のイオンは、カルボキシル基等の官能基を活性化して、該カルボキシル基等の官能基と、上記アルカリ金属又はアルカリ土類金属以外の金属カチオンとのイオン架橋の形成を促進することができる。
上記アルカリ金属又はアルカリ土類金属は特に限定されず、例えば、Na、K、Li、Ca、Ba、Sr等が挙げられる。これらのなかでは、塩基性の強いNa、K等が好ましい。
【0033】
上記重合性モノマーに上記金属カチオン塩を添加する場合、上記金属カチオン塩の添加量は特に限定されないが、上記重合性モノマー全体100重量部に対する好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が5.0重量部である。上記金属カチオン塩の添加量が0.1重量部未満であると、上記熱膨張性マイクロカプセルの耐熱性を向上させる効果が充分に得られないことがある。上記金属カチオン塩の添加量が5.0重量部を超えると、得られる熱膨張性マイクロカプセルが高発泡倍率で発泡できないことがある。
【0034】
上記重合性モノマーには、上記モノマーを重合させるため、重合開始剤を含有させる。
上記重合開始剤としては、例えば、過酸化ジアルキル、過酸化ジアシル、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、アゾ化合物等が好適に用いられる。
具体例には、例えば、メチルエチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等の過酸化ジアルキル、イソブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド等の過酸化ジアシル、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、(α、α−ビス−ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン等のパーオキシエステル、ジ−2−ブチルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピル−オキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルエチルパーオキシ)ジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネート等のパーオキシジカーボネート、2、2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物等が挙げられる。
本発明では、特に高温時の「へたり」を抑制する目的で、ジ−2−ブチルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネートを比較的高濃度で使用することが好ましい。
【0035】
上記シェルは、モノマーとして架橋剤を含有していてもよい。上記架橋剤を含有することにより、シェルの強度を強化することができ、熱膨張時にセル壁が破泡し難くなる。
上記架橋剤としては特に限定はされず、一般的にはラジカル重合性二重結合を2以上有するモノマーが好適に用いられる。具体例には例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、分子量が200〜600のポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリアリルホルマールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのなかでは、200℃を超える高温領域でも熱膨張したマイクロカプセルが収縮しにくく、膨張した状態を維持しやすいので、ポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート等の2官能性架橋剤が好ましく、トリメチロールプロパンのトリ(メタ)アクリレート等の3官能性架橋剤がより好ましい。
【0036】
上記シェルにおける上記架橋剤の含有量の好ましい下限は0.1重量%、好ましい上限は3重量%である。より好ましい下限は0.1重量%、より好ましい上限は1重量%である。
【0037】
上記シェルを構成する重合体の重量平均分子量の好ましい下限は10万、好ましい上限は200万である。重量平均分子量が10万未満であると、シェルの強度が低下することがあり、重量平均分子量が200万を超えると、シェルの強度が高くなりすぎ、発泡倍率が低下することがある。
【0038】
上記熱膨張性マイクロカプセルにおいて、上記シェルの架橋度の好ましい下限は75重量%である。75重量%未満であると、最大発泡温度が低くなることがある。
上記架橋度は、架橋剤による共有結合性架橋と、上記共重合体の有する遊離カルボキシル基と上記金属カチオンとによってイオン架橋された架橋の双方を含む。
なお、上記熱膨張性マイクロカプセルでは、上記共重合体の有する遊離カルボキシル基の一部又は全部がイオン化して、カルボキシルアニオンとなり、上記金属カチオンをカウンターカチオンとしてイオン結合を形成することから、上記金属カチオンの含有量によって架橋度を容易に調節することができる。
また、上記イオン架橋は、例えば、赤外吸収スペクトル測定を行った場合に、1500〜1600cm
−1付近にCOO
−の非対称伸縮運動による吸収が存在することにより確認することができる。
【0039】
上記熱膨張性マイクロカプセルにおいて、上記シェルの中和度の好ましい下限は5%である。5%未満であると、最大発泡温度が低くなることがある。
なお、上記中和度は、上記共重合体の有する遊離カルボキシル基のうち、上記金属カチオンが結合したカルボキシル基の割合を表す。
【0040】
上記シェルは、更に必要に応じて、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、シランカップリング剤、色剤等を含有していてもよい。
【0041】
上記熱膨張性マイクロカプセルは、上記シェルにコア剤として揮発性膨張剤が内包されている。
上記揮発性膨張剤は、シェルを構成するポリマーの軟化点以下の温度でガス状になる物質であることが好ましい。
【0042】
上記揮発性膨張剤は、200℃における蒸気圧が2〜3MPaであることが好ましい。200℃における蒸気圧が2〜3MPaの範囲内であることで、200℃以上の高温における歪み回復率を低下させることができる。
【0043】
上記重量変化率の規定を満たすため、揮発性膨張剤としては、例えば、エタン、エチレン、プロパン、プロペン、n−ブタン、イソブタン、ブテン、イソブテン、イソペンタン、ネオペンタン等の低分子量炭化水素が挙げられる。なかでも、イソブタン、n−ブタン、イソペンタン、及び、これらの混合物が好ましい。これらの揮発性膨張剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、上記揮発性膨張剤として、加熱により熱分解してガス状になる熱分解型化合物を添加してもよい。
【0044】
上記熱膨張性マイクロカプセルにおいて、コア剤として用いる揮発性膨張剤の含有量の好ましい下限は10重量%、好ましい上限は25重量%である。
上記シェルの厚みはコア剤の含有量によって変化するが、コア剤の含有量を減らして、シェルが厚くなり過ぎると発泡性能が低下し、コア剤の含有量を多くすると、シェルの強度が低下する。上記コア剤の含有量を10〜25重量%とした場合、熱膨張性マイクロカプセルのへたり防止と発泡性能向上とを両立させることが可能となる。
【0045】
上記熱膨張性マイクロカプセルは、熱機械分析で測定した最大変位量(Dmax)の好ましい下限が300μmである。300μm未満であると、発泡倍率が低下し、所望の発泡性能が得られない。より好ましい下限は400μmである。
なお、上記最大変位量は、所定量の熱膨張性マイクロカプセルを常温から加熱しながらその径を測定したときに、所定量全体の熱膨張性マイクロカプセルの径が最大となるときの値をいう。
【0046】
また、発泡開始温度(Ts)の好ましい上限は180℃である。180℃を超えると特に射出成形の場合、金型に樹脂材料をフル充填した後に金型を発泡させたいところまで開くコアバック発泡成形においては、コアバック発泡過程で樹脂温度が冷えてしまい発泡倍率が上がらないことがある。好ましい下限は130℃、より好ましい上限は160℃である。
なお、本明細書において、最大発泡温度は、熱膨張性マイクロカプセルを常温から加熱しながらその径を測定したときに、熱膨張性マイクロカプセルが最大変位量となったときにおける温度を意味する。
【0047】
上記熱膨張性マイクロカプセルは、最大発泡温度(Tmax)の好ましい下限が170℃である。170℃未満であると、耐熱性が低くなることから、高温領域や成形加工時において、熱膨張性マイクロカプセルが破裂、収縮することがある。また、マスターバッチペレット等として使用する場合、ペレット製造時に剪断により発泡していまい、未発泡のマスターバッチペレットを安定して製造することができない。より好ましい下限は210℃である。
【0048】
上記熱膨張性マイクロカプセルの体積平均粒子径の好ましい下限は5μm、好ましい上限は50μmである。5μm未満であると、得られる成形体の気泡が小さすぎるため、成形体の軽量化が不充分となることがあり、50μmを超えると、得られる成形体の気泡が大きくなりすぎるため、強度等の面で問題となることがある。より好ましい下限は10μm、より好ましい上限は40μmである。
【0049】
本発明のマスターバッチにおける上記熱膨張性マイクロカプセルの配合量は特に限定されないが、上記キャリア樹脂100重量部に対する好ましい下限が10重量部、好ましい上限が90重量部である。上記熱膨張性マイクロカプセルの配合量が10重量部未満であると、得られるマスターバッチを用いると、成形体の気泡が少なくなりすぎ、軽量化が不充分となることがある。上記熱膨張性マイクロカプセルの配合量が90重量部を超えると、得られるマスターバッチを用いると、成形体の気泡が多くなりすぎ、強度等の面で問題となることがある。上記熱膨張性マイクロカプセルの配合量は、上記キャリア樹脂100重量部に対するより好ましい下限が20重量部、より好ましい上限が80重量部である。
【0050】
上記熱膨張性マイクロカプセルを製造する方法として、例えば、水性媒体を調製する工程、ニトリル系モノマー、官能基含有モノマー、その他のモノマー等と、揮発性膨張剤とを含有する油性混合液を水性媒体中に分散させる工程、及び、上記モノマーを重合させる工程を行うことにより製造することができる。
【0051】
上記熱膨張性マイクロカプセルを製造する場合、最初に水性媒体を調製する工程を行う。具体例には例えば、重合反応容器に、水と分散安定剤、必要に応じて補助安定剤を加えることにより、分散安定剤を含有する水性分散媒体を調製する。また、必要に応じて、亜硝酸アルカリ金属塩、塩化第一スズ、塩化第二スズ、重クロム酸カリウム等を添加してもよい。
【0052】
上記分散安定剤としては、例えば、コロイダルシリカ、リン酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化第二鉄、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、シュウ酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。
【0053】
上記補助安定剤としては、例えば、ジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸との縮合生成物、尿素とホルムアルデヒドとの縮合生成物、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンイミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ゼラチン、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ジオクチルスルホサクシネート、ソルビタンエステル、各種乳化剤等が挙げられる。
【0054】
また、上記分散安定剤と補助安定剤との組み合わせとしては特に限定されず、例えば、コロイダルシリカと縮合生成物との組み合わせ、コロイダルシリカと水溶性窒素含有化合物との組み合わせ、水酸化マグネシウム又はリン酸カルシウムと乳化剤との組み合わせ等が挙げられる。これらの中では、コロイダルシリカと縮合生成物との組み合わせが好ましい。
更に、上記縮合生成物としては、ジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸との縮合生成物が好ましく、特にジエタノールアミンとアジピン酸との縮合物やジエタノールアミンとイタコン酸との縮合生成物が好ましい。
【0055】
上記水溶性窒素含有化合物としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリジメチルアミノエチルメタクリレートやポリジメチルアミノエチルアクリレートに代表されるポリジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ポリジメチルアミノプロピルアクリルアミドやポリジメチルアミノプロピルメタクリルアミドに代表されるポリジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ポリアクリルアミド、ポリカチオン性アクリルアミド、ポリアミンサルフォン、ポリアリルアミン等が挙げられる。これらのなかでは、ポリビニルピロリドンが好適に用いられる。
【0056】
上記コロイダルシリカの添加量は、熱膨張性マイクロカプセルの粒子径により適宜決定されるが、ビニル系モノマー100重量部に対して、好ましい下限が1重量部、好ましい上限が20重量部である。より好ましい下限は2重量部、より好ましい上限は10重量部である。また、上記縮合生成物又は水溶性窒素含有化合物の量についても熱膨張性マイクロカプセルの粒子径により適宜決定されるが、モノマー100重量部に対して、好ましい下限が0.05重量部、好ましい上限が2重量部である。
【0057】
上記分散安定剤及び補助安定剤に加えて、更に塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を添加してもよい。無機塩を添加することで、より均一な粒子形状を有する熱膨張性マイクロカプセルが得ることができる。上記無機塩の添加量は、通常、モノマー100重量部に対して0〜100重量部が好ましい。
【0058】
上記分散安定剤を含有する水性分散媒体は、分散安定剤や補助安定剤を脱イオン水に配合して調製され、この際の水相のpHは、使用する分散安定剤や補助安定剤の種類によって適宜決められる。例えば、分散安定剤としてコロイダルシリカ等のシリカを使用する場合は、酸性媒体で重合がおこなわれ、水性媒体を酸性にするには、必要に応じて塩酸等の酸を加えて系のpHが3〜4に調製される。一方、水酸化マグネシウム又はリン酸カルシウムを使用する場合は、アルカリ性媒体の中で重合させる。
【0059】
次いで、熱膨張性マイクロカプセルを製造する方法では、ニトリル系モノマー、官能基含有モノマー、その他のモノマー等と、揮発性膨張剤とを含有する油性混合液を水性媒体中に分散させる工程を行う。この工程では、モノマー及び揮発性膨張剤を別々に水性分散媒体に添加して、水性分散媒体中で油性混合液を調製してもよいが、通常は、予め両者を混合し油性混合液としてから、水性分散媒体に添加する。この際、油性混合液と水性分散媒体とを予め別々の容器で調製しておき、別の容器で攪拌しながら混合することにより油性混合液を水性分散媒体に分散させた後、重合反応容器に添加しても良い。
なお、上記モノマーを重合するために、重合開始剤が使用されるが、上記重合開始剤は、予め上記油性混合液に添加してもよく、水性分散媒体と油性混合液とを重合反応容器内で攪拌混合した後に添加してもよい。
【0060】
上記油性混合液を水性分散媒体中に所定の粒子径で乳化分散させる方法としては、ホモミキサー(例えば、特殊機化工業社製)等により攪拌する方法や、ラインミキサーやエレメント式静止型分散器等の静止型分散装置を通過させる方法等が挙げられる。
なお、上記静止型分散装置には水系分散媒体と重合性混合物を別々に供給してもよいし、予め混合、攪拌した分散液を供給してもよい。
【0061】
上記マスターバッチを製造する方法としては、特に限定されないが、例えば、キャリア樹脂、滑剤、各種添加剤等の原材料を、同方向2軸押出機等を用いて予め混練する。次いで、所定温度まで加熱し、熱膨張マイクロカプセルを添加した後、更に混練することにより得られる混練物を、ペレタイザーにて所望の大きさに切断することによりペレット形状にしてマスターバッチとする方法等が挙げられる。また、キャリア樹脂、熱膨張性マイクロカプセル、滑剤等の原材料をバッチ式の混練機で混練した後、造粒機で造粒することによりペレット形状のマスターバッチを製造してもよい。
上記混練機としては、熱膨張性マイクロカプセルを破壊することなく混練できるものであれば特に限定されず、例えば、加圧ニーダー、バンバリーミキサー等が挙げられる。
【0062】
上記混練における温度条件としては、熱膨張性マイクロカプセルの発泡開始温度より50度以下とすることが好ましい。上記温度を超えると、熱膨張性マイクロカプセルが発泡して安定生産ができない場合がある。
【0063】
また、本発明のマスターバッチを用いて得られる発泡成形体もまた本発明の1つである。特に本発明のマスターバッチは、高温での後加工が必要な用途にも好適に使用可能であることから、凹凸形状等の高外観品質を有する発泡シートが得られ、住宅用壁紙等の用途に好適に用いることができる。
具体的には、本発明のマスターバッチと、マトリックス樹脂とを混練し、成形することで発泡成形体が得られる。
【0064】
上記マトリックス樹脂の種類により、得られる発泡成形体が軟質発泡体となるか、硬質発泡体となるかが決定される。即ち、上記マトリックス樹脂として軟質樹脂を用いた場合は、得られる発泡成形体は軟質発泡体となり、上記マトリックス樹脂として硬質樹脂を用いた場合は、得られる発泡成形体は硬質発泡体となる。
【0065】
軟質発泡体が得られるマトリックス樹脂としては、オレフィン系、ウレタン系、あるいはスチレン系の熱可塑性エラストマーが挙げられる。上記オレフィン系熱可塑性エラストマーのうち、市販品としては、例えば、「エンゲージ」シリーズ(デュポン・ダウエラストマージャパン社製)、「ミラストマー」シリーズ(三井化学社製)、「住友TPEサントプレーン」シリーズ(住友化学社製)、「サントプレーン」シリーズ(エイイーエス社製)等が挙げられる。また、スチレン系エラストマーとしては、三菱化学社製の「ラバロン」シリーズ等が挙げられる。また、ポリエステル系では「ハイトレル」シリーズ(デュポン社製)やウレタン系では「ログラン」(BASF INOACポリウレタン株式会社製)等が挙げられる。更に、これらの樹脂を所望の加工性や硬さに合わせて混合して使用してもよい。
【0066】
硬質発泡体が得られるマトリックス樹脂としては、ポリプロピレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(ABS)、ポリスチレン、アクリル樹脂、アクリロニトリル系樹脂等が挙げられる。また、市販品としては、例えば、ホモポリプロピレン樹脂「PF814」(モンテルポリオレフィンズカンパニー社製)、ランダムポリプロピレン樹脂「B230」、「J704」(グランドポリマー社製)、高密度ポリエチレン「3300F」(三井化学社製)等が挙げられる。また、これらの樹脂は混合して使用してもよい。
【0067】
また、上記マトリックス樹脂は生分解性樹脂であってもよく、例えば、酢酸セルロース(P−CA)系樹脂やポリカプロラクトン(P−H、P−HB)系樹脂である「セルグリーン」シリーズ(ダイセル化学工業社製)、ポリ乳酸「LACEA」(三井化学社製)等が挙げられる。本発明においては、熱特性に応じて、生分解性樹脂1種類を単独又は2種以上混合して用いてもよく、また、上記生分解性樹脂を単独又は上記生分解性樹脂以外の他のマトリックス樹脂と併用してもよい。
【0068】
本発明に用いられる熱膨張性マイクロカプセルの含有量は、上記マトリックス樹脂100重量部に対して0.5重量部〜20重量部である。0.5重量部未満であると、得られる成形体の気泡が少なくなって、軽量化性能を発揮することができず、20重量部を超えると、得られる成形体の強度が得られにくくなる。
【0069】
上記発泡成形体の成形方法としては、特に限定されず、例えば、混練成形、カレンダー成形、押出成形、射出成形等が挙げられる。射出成形の場合、工法は特に限定されず、金型に樹脂材料を一部入れて発泡させるショートショート法や金型に樹脂材料をフル充填した後に金型を発泡させたいところまで開くコアバック法等が挙げられる。