(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至
図15は本発明の第1の実施形態を示すもので、建設工事等の作業現場において使用される現場作業者管理システムに関するものである。
【0012】
同図に示す安全帯1は、作業者に装着される胴ベルト2と、胴ベルト2から延びるロープ3と、ロープ3の先端に取り付けられたフック4と、ロープ3を巻き取るロープ巻取器5とから構成されている。
【0013】
ロープ3は所定長さ(例えば、1.7m)の平帯状に形成され、例えば高強度のアラミド繊維からなる。
【0014】
フック4は、作業現場の親綱に連結可能な周知の構成からなり、親綱から外しているときは胴ベルト2に設けた収納袋2aに収納されるようになっている。フック4は、略U字状に湾曲したフック本体4aと、フック本体4aの開放部分を開閉する可動部4bとを有し、可動部4bは図示しないロック機構によってロックされ、可動部4bの操作部4cを操作すると、可動部4bのロックが解除されるようになっている。
【0015】
ロープ巻取器5は、巻取器本体5a内に設けられたリール5bにロープ3を巻き取る周知の構造からなり、巻取器本体5aは胴ベルト2の所定位置に取り付けられている。ロープ巻取器5は、支軸5cに回動自在に支持されたリール5bを巻き取り方向に付勢するバネ(図示せず)を備え、ロープ3を巻取器本体5aから引き出すと、図示しないストッパ機構によりロープ3を引き出し位置で保持するようになっている。また、巻取器本体5aに設けた操作部(図示せず)を操作すると、前記ストッパ機構が解除されてリール5bがバネにより巻き取り方向に回転し、ロープ3が巻取器本体5a内に巻き取られるようになっている。
【0016】
本実施形態の現場作業者管理システムは、安全帯1を着用した作業者側に配置される作業者側端末機10と、管理者側に配置される管理者側端末機20とを備え、例えば建設現場において一人の管理者Aが複数の作業者Bの安全管理を行うようになっている。
【0017】
作業者側端末機10は、安全帯1のロープ巻取器5に設けられ、巻取器本体5aの下端側に設けられた端末機本体10aを備えている。作業者側端末機10は、管理者側端末機20に無線により信号を送信する送信機11と、ロープ巻取器5に対してロープ3の引き出し操作が行われたことを検知する操作検知手段としてのロープ引出センサ12と、安全帯1を着用した作業者Aが任意に操作可能な緊急通報スイッチ13と、安全帯1の周囲の温度を検出する温度センサ14と、使用者Aに対して高温障害予防のためのメッセージを警報として出力する警報手段としての音声出力部15と、作業者側端末機10の動作を制御する第1の制御部16とを備え、作業者側端末機10は充電式の電池(図示せず)によって駆動されるようになっている。尚、送信機11及び第1の制御部16は、操作検知信号送信手段、緊急通報信号送信手段及び温度警報信号送信手段を構成している。
【0018】
ロープ引出センサ12は、ロープ巻取器5のリール5bに巻き取られたロープ3の外周面から所定位置までの距離の変化を検出する非接触式の距離センサからなり、例えば反射型の周知の距離センサが用いられる。ロープ引出センサ12は、ロープ3の外周面に所定距離をおいて対向する発光部12a及び受光部12bを備え、発光部12aから照射した光がロープ3の外周面で反射して受光部12bに入力されることにより、ロープ3の外周面までの距離Lを検出するようになっている。即ち、
図4(a) に示すようにリール5bに巻き取られているロープ3の外径Dはロープ3の引き出し長さに応じて変化するので、ロープ引出センサ12の検出距離Lはロープ3の外径Dが大きくなると小さくなり、ロープ3の外径Dが小さくなると大きくなる。
【0019】
緊急通報スイッチ13は、周知の押ボタンスイッチからなり、端末機本体10aの前面に設けられている。
【0020】
温度センサ14は、サーミスタ等の周知の機器からなり、端末機本体10aの下面に設けられている。
【0021】
音声出力部15は、音声メッセージが記憶された音声記憶部15aと、音声記憶部15aの音声メッセージを出力するスピーカ15bとを備え、音声記憶部15aの音声信号を増幅器5cで増幅してスピーカ15bから出力するようになっている。音声記憶部15aは音声合成IC等の記憶装置からなり、高温下の作業現場における高温障害(熱中症や日射病)を予防するための音声メッセージとして、例えば「熱中症対策は十分か確認して下さい」等の音声メッセージが記憶されている。また、スピーカ15bは、端末機本体10aの前面に設けた貫通孔10bを介して外部に音声を出力するようになっている。
【0022】
第1の制御部16は、送信機11、ロープ引出センサ12、緊急通報スイッチ13、温度センサ14及び音声出力部15に接続されたマイクロコンピュータからなり、ロープ引出センサ12による引き出し操作を検知すると、安全帯1が使用されているものとして使用検知信号を送信機11から送信するようになっている。また、第1の制御部16は、緊急通報スイッチ13が操作されたことによる緊急通報信号を送信機11から送信するようになっている。更に、第1の制御部16は、温度センサ14の検出温度に基づいて音声出力部15を制御するとともに、温度センサ14の検出温度に応じた温度警報信号を送信機11から送信するようになっている。
【0023】
管理者側端末機20は、薄型の四角形状の端末機本体20aを備え、管理者Bが携帯するようになっている。管理者側端末機20は、作業者側端末機10からの無線信号を受信する受信機21と、作業者Aの安全帯使用状況、緊急通報表示、温度警報表示等を表示する表示部22と、緊急通報に応じた警報音を出力するブザー23と、表示部22の緊急通報表示とブザー23の作動を解除するための解除スイッチ24と、管理者側端末機20の動作を制御する第2の制御部25とを備え、管理者側端末機20は充電式の電池(図示せず)によって駆動されるようになっている。尚、受信機21及び第2の制御部25は、操作検知信号受信手段、緊急通報信号受信手段及び温度警報信号受信手段を構成している。
【0024】
表示部22は、液晶ディスプレイ等の周知の表示機器からなり、端末機本体20aの前面に設けられている。表示部22の画面には、
図13に示すように、作業者Aが使用する安全帯1の番号表示22aと、安全帯1が使用されている状態を示す「○」及び使用されていない状態を示す「×」の何れかを表示する使用状態表示22bと、安全帯1の使用回数を示す使用回数表示22cと、作業者側端末機10の電池残量を示す電池残量表示22dと、作業者側端末機10の電波強度を示す電波強度表示22eと、緊急通報を受信した場合に表示される緊急通報表示22fと、温度警報信号を受信した場合に表示される温度警報表示22gとを表示するようになっている。尚、表示部22は、使用状況情報表示手段及び温度警報情報表示手段を構成している。
【0025】
ブザー23は、電子音等の所定の音を発する周知の機器からなり、緊急通報を知らせる警告音を出力するようになっている。尚、表示部22及びブザー23は、緊急通報情報出力手段を構成している。
【0026】
解除スイッチ24は、周知の押ボタンスイッチからなり、端末機本体20aの前面に設けられている。
【0027】
第2の制御部25は、受信機21、表示部22、ブザー23及び解除スイッチ24に接続されたマイクロコンピュータからなり、受信機21によって受信した作業者側端末機10からの信号または解除スイッチ24の操作に応じ、表示部22及びブザー23を制御するようになっている。
【0028】
以上のように構成された現場作業者管理システムにおいては、
図6に示すように、例えば建築工事中のビルの各階Fに安全帯1を着装した複数の作業者Aが配置され、各作業者Aに対して管理者Bが安全管理を行う。その際、各作業者Aの作業者側端末機10から送信される信号が管理者Bの管理者側端末機20によって受信され、管理者側端末機20によって各作業者Aの安全帯使用状況等の安全管理が行われる。尚、作業現場には、電波を中継する少なくとも1台の中継器30が設置され、作業者側端末機10と管理者側端末機20との間が遠距離の場合や、間に電波を遮る障害物がある場合でも、中継器30を介して作業者側端末機10から管理者側端末機20に電波が届くようになっている。
【0029】
ここで、
図7乃至
図9を参照し、第1の制御部16の動作を説明する。
【0030】
まず、作業者Aが安全帯1を着装し、
図4(b) に示すようにロープ巻取器5からロープ3が引き出されることにより、ロープ引出センサ12の検出値Lが、所定のロープ引き出し長さ(例えば50cm)に達したときのロープ3の外径D1 に対応する距離L1 以上になると(S1)、作業者Aが安全帯1を使用しているものとして、使用検知信号を送信機11から送信する(S2)。その際、電池残量及び電波強度に関する情報も使用検知信号と共に送信する。次に、作業者Aが安全帯1のフック4を親綱から外したときなど、ロープ巻取器5にロープ3が巻き取られることにより、ロープ引出センサ12の検出値Lが距離L1 よりも小さくなると(S3)、作業者Aが安全帯1を使用していないものとして、使用検知解除信号を送信機11から送信する(S4)。また、作業現場において、作業者Aの怪我や体調不良などの緊急事態が発生し、作業者Aによって緊急通報スイッチ13が操作されると(S5)、緊急通報信号を送信機11から送信する(S6)。更に、作業現場の気温が高く、温度センサ14の検出温度Tが所定温度T1 (例えば27℃)以上になった場合は(S7)、温度警報信号を送信機11から送信するとともに(S8)、音声出力部15によって音声メッセージを出力する(S9)。ここで、所定の待ち時間(例えば30分)が経過した後においても(S10)、温度センサ14の検出温度Tが温度T1 よりも低くならない場合は(S11)、ステップS9に戻り、再び音声メッセージを出力する。また、ステップS11において、温度センサ14の検出温度Tが温度T1 よりも低くなった場合は、温度警報信号を送信機11から送信し(S12)、ステップS7に戻る。
【0031】
次に、
図10乃至
図12を参照し、第2の制御部16の動作を説明する。
【0032】
まず、最初に全ての安全帯1の使用回数Nを初期値「0」とし(S20)、表示部22の全ての安全帯1の使用回数表示22cを「00」にするとともに(S21)、全ての安全帯1の使用状態表示22bを「×」にする(S22)。
【0033】
ここで、何れかの作業者側端末機10から使用検知信号を受信すると(S23)、安全帯1の番号を判別し(S24)、その安全帯1の使用状態表示22bを「○」にする(S25)。また、その安全帯1の使用回数Nに「1」を加算するとともに(S26)、使用回数Nを記憶し(S27)、使用回数表示22cを「N+1」(例えば、「01」)に更新する(S28)。更に、使用検知信号と共に受信した電池残量情報及び電波強度情報に基づいて、電池残量表示22d及び電波強度表示22eを更新する(S29,S30)。この後、その安全帯1の作業者側端末機10から使用検知解除信号を受信すると(S31)、ステップS22に戻り、その安全帯1の使用状態表示22bを「×」にする。尚、前記動作は各安全帯1ごとに行われる。
【0034】
また、何れかの作業者側端末機10から緊急通報信号を受信すると(S32)、安全帯1の番号を判別し(S33)、
図14に示すように、その安全帯1の緊急通報表示22fを表示するとともに(S34)、ブザー23から警告音を出力する(S35)。ここで、管理者Bによって解除スイッチ24が操作されると(S36)、緊急通報表示22fの表示を解除するとともに(S37)、ブザー23による警告音の出力を停止した後(S38)、ステップS32に戻る。
【0035】
更に、何れかの作業者側端末機10から温度警報信号を受信すると(S39)、安全帯1の番号を判別し(S40)、
図15に示すように、その安全帯1の温度警報表示22gを表示する(S41)。この後、作業者側端末機10から温度警報解除信号を受信すると(S42)、温度警報表示22gの表示を解除した後(S43)、ステップS39に戻る。
【0036】
このように、本実施形態によれば、安全帯1を使用する作業者A側に配置された作業者側端末機10と、作業者Aの安全を管理する管理者B側に配置された管理者側端末機20とを備え、安全帯1のロープ巻取器5に対してロープ3の引き出し操作が行われたことを検知すると、作業者Aが安全帯1を使用しているものとして、作業者側端末機10から管理者側端末機20に使用検知信号を送信し、その安全帯1の使用状態表示22bと使用回数表示22cを管理者側端末機20の表示部22に表示するようにしたので、各作業者Aの安全帯1の使用状況を管理者Bによって常時監視することができる。例えば、使用状態表示22bに長時間「×」が表示されている作業者Aに対し、安全帯1を使用するように促したり、或いは使用回数表示22cの回数が少ない作業者Aに対し、作業終了後に注意を喚起するなど、安全帯未使用による墜落事故の防止対策を図ることができる。
【0037】
また、作業者Aが任意に操作可能な緊急通報スイッチ13を備え、作業現場において作業者Aの怪我や体調不良などの緊急事態が発生した場合に、作業者Aが緊急通報スイッチ13を操作すると、作業者側端末機10から管理者側端末機20に緊急通報信号を送信し、その安全帯1の緊急通報表示22fを管理者側端末機20の表示部22に表示するとともに、ブザー23によって警告音を出力するようにしたので、作業者Aにおける緊急事態の発生を管理者Bが速やかに把握することができ、緊急事態の発生した作業者Aに対して適切な処置をとることができる。
【0038】
更に、安全帯1の周囲の温度を検出する温度センサ14を備え、温度センサ14の検出温度Tが所定温度T1 以上になると、高温下の作業現場における高温障害予防のための音声メッセージを作業者側端末機10から出力するようにしたので、例えば夏場等に作業現場の気温が高くなった場合でも、作業者Aに熱中症や日射病を予防するための注意を与えることができ、作業現場における暑さ対策に効果的である。尚、音声メッセージに代えて、ブザー等による警報を出力するようにしてもよい。
【0039】
また、温度センサ14の検出温度Tが所定温度T1 以上になると、作業者側端末機10から管理者側端末機20に温度警報信号を送信し、その安全帯1の温度警報表示22gを管理者側端末機20の表示部22に表示するようにしたので、管理者B側においても作業者Aの高温障害予防のための安全管理を行うことができ、暑さ対策をより強化することができる。
【0040】
更に、ロープ巻取器5に巻き取られているロープ3の外径Dの大きさを非接触式の距離センサからなるロープ引出センサ12によって検出し、ロープ巻取器5からロープ3が引き出されることによってロープ3の外径D所定の外径D1 以下になったことを検知すると、作業者側端末機10から使用検知信号を送信するようにしたので、ロープ巻取器5の加工や構造の変更を行うことなく安全帯1の使用を検知することができ、安全帯1の使用検知手段を既存のロープ巻取器5に容易に追加することができる。また、従来例のようにロープの所定位置に取り付けたバーコードラベルをバーコードリーダによって読み取るようにしたものでは、現場での作業中にバーコードラベルの損傷を生じやすいが、本実施形態ではロープ3の外径Dの大きさをロープ引出センサ12によって検出するようにしているので、バーコードラベルのような被検知体をロープに取り付ける必要がなく、被検知体の破損によってロープの引き出し操作が検知不能になることがないという利点がある。
【0041】
尚、前記実施形態では、安全帯1の使用をロープ巻取器5のロープ引き出し操作によって検知するようにしたものを示したが、安全帯1に対する所定の操作として、例えばフック4の動作を検知するなど、他の操作を検知するようにしてもよい。
【0042】
また、前記実施形態では、温度センサ14によって安全帯1の周囲の温度を検出すると、高温障害予防のための音声メッセージを出力し、温度警報表示22gを管理者側端末機20の表示部22に表示するようにしたものを示したが、例えば寒冷地で使用する場合など、このような暑さ対策機能を必要としない場合には、温度センサ14及びこれに関連する構成を省略するようにしてもよい。
【0043】
図16乃至
図32は本発明の第2の実施形態を示すもので、前記実施形態と同等の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0044】
本実施形態の現場作業者管理システムは、安全帯1の使用者側に配置される作業者側端末機10と、管理者側に配置される管理者側端末機20と、作業者側端末機10と管理者側端末機20との間で電波を中継する中継器30と、作業現場の所定位置に設置された画面表示器40と、現場事務所Jに配置される事務所側端末機50と、作業者の入退場を検知する入退場検知手段としての入退場検知部60とを備えている。
【0045】
作業者側端末機10は、第1の実施形態の構成に加え、作業者の転倒を検知する転倒検知手段としての転倒検知センサ17を備えている。転倒検知センサ17は、加速度センサ17a、角速度センサ17b、記憶部17c及びセンサ制御部17dとから構成され、センサ制御部17dは第1の制御部16に接続されている。尚、送信機11及び第1の制御部16は、第1の実施形態の構成に加え、転倒検知信号送信手段を構成している。
【0046】
作業者側端末機10の表示部22は、
図30乃至
図32に示すように、第1の実施形態と同様の安全帯1の番号表示22a、使用状態表示22b、使用回数表示22c、電池残量表示22d、電波強度表示22e、緊急通報表示22f及び温度警報表示22gに加え、安全帯1が使用されていた合計時間を示す使用時間表示22hと、作業者Aが作業現場に入場していることを示す入場検知表示22iと、作業者Aの転倒を検知したことを示す転倒検知表示22jとを表示するようになっている。尚、表示部22は、第1の実施形態の構成に加え、入退場情報出力手段及び転倒検知情報出力手段を構成している。
【0047】
管理者側端末機20は、前記実施形態の構成に加え、作業者Aの安全帯使用状況、緊急通報表示、温度警報表示等、表示部22に表示する情報と同じ情報を画面表示器40及び事務所側端末機50に無線により送信する送信機26を備えている。
【0048】
画面表示器40は、例えば屋外に設置可能な周知の大画面モニタからなり、作業現場の人員が任意に目視可能な場所に設けられている。画面表示器40は、管理者側端末機20からの信号を受信する受信機41と、管理者側端末機20から送信される安全帯使用状況情報を表示する表示部42とを備えている。
【0049】
事務所側端末機50は、管理者側端末機20からの信号を受信する受信機51と、管理者側端末機20に接続されたパーソナルコンピュータ52とからなり、管理者側端末機20から送信される安全帯使用状況情報をパーソナルコンピュータ52のディスプレイに表示するようになっている。
【0050】
入退場検知部60は、管理者側端末機20に設けられた周知のRFIDタグ61と、RFIDタグ61の記憶情報を読み取る周知のタグリーダ62と、タグリーダ62で読み取った情報に基づく入退場検知信号を管理者側端末機20に送信する入退場検知信号送信手段としての送信機63とを備え、タグリーダ62は作業現場の入退場口に設置された門柱Gに設けられている。尚、管理者側端末機20の受信機21、表示器22及び第2の制御部25は、入退場検知信号受信手段及び入退場情報出力手段を構成している。
【0051】
以上のように構成された現場作業者管理システムにおいては、第1の実施形態と同様、
図29に示すように、例えば建築工事中のビルの各階Fに安全帯1を着装した複数の作業者Aが配置され、各作業者Aに対して管理者Bが安全管理を行う。その際、各作業者Aの作業者側端末機10から送信される信号が管理者Bの管理者側端末機20によって受信され、管理者側端末機20によって各作業者Aの安全帯使用状況等の安全管理が行われる。同時に画面表示器40及び事務所側端末機50にも管理者側端末機20から安全帯使用状況情報が送信され、画面表示器40及び事務所側端末機50によっても安全管理が行われる。尚、第1の実施形態と同様、作業現場には、電波を中継する少なくとも1台の中継器30が設置され、作業者側端末機10と管理者側端末機20との間が遠距離の場合や、間に電波を遮る障害物がある場合でも、中継器30を介して作業者側端末機10から管理者側端末機20に電波が届くようになっている。また、作業現場における入退場は、入退場検知部60及び管理者側端末機20によって管理される。
【0052】
以下、本実施形態の現場作業者管理システムにおける制御系の動作について、
図18乃至
図21を参照して説明する。
【0053】
まず、安全帯1を着装した作業者Aが作業現場の外部から入退場口の門柱Gを通過して作業現場内に入場すると、作業者AのRFIDタグ61が門柱Gのタグリーダ62によって検知され、送信機63から入退場検知信号が送信される。管理者側端末機20の第2の制御部16は、入退場検知部60から送信された入退場検知信号を受信すると(S50)、安全帯1の番号を判別し(S51)、その安全帯1の入場検知表示22iを「非表示」から「表示」に切り替える(S52)。また、前記作業者Aが作業現場から退場すると、作業者AのRFIDタグ61がタグリーダ62によって検知され、再び送信機63から入退場検知信号が送信される。これにより、管理者側端末機20の第2の制御部16は、入退場検知部60から送信された入退場検知信号を受信すると(S50)、安全帯1の番号を判別し(S51)、その安全帯1の入場検知表示22iを「表示」から「非表示」に切り替える(S52)。
【0054】
次に、管理者側端末機20の第2の制御部16は、最初に全ての安全帯1の使用回数N及び使用時間Mをそれぞれ初期値「0」とし(S60,S61)、表示部22の全ての安全帯1の使用回数表示22cを「00」にする(S62)。次に、図示しないタイマをリセットして全ての安全帯1の使用時間(分)を「000」とし(S63)、タイマの計時を開始するとともに(S64)、全ての安全帯1の使用状態表示22bを「×」にする(S65)。
【0055】
ここで、何れかの作業者側端末機10から使用検知信号を受信すると(S66)、安全帯1の番号を判別し(S67)、その安全帯1の使用状態表示22bを「○」にする(S68)。また、その安全帯1の使用回数Nに「1」を加算するとともに(S69)、使用回数Nを記憶し(S70)、使用回数表示22cを「N+1」(例えば、「01」)に更新する(S71)。次に、タイマの計時時間を使用開始時間Maとして記憶する(S72)。更に、使用検知信号と共に受信した電池残量情報及び電波強度情報に基づいて、電池残量表示22d及び電波強度表示22eを更新する(S73,S74)。この後、その安全帯1の作業者側端末機10から使用検知解除信号を受信すると(S75)、タイマの計時時間を使用終了時間Mbとし、ステップS72において記憶した使用開始時間Maと使用終了時間Mbとの差を使用経過時間M1 として算出する(S76)。続いて、その安全帯1の使用時間Mに使用経過時間M1 を加算し(S77)、例えば使用時間Mが12分間であれば、使用時間表示22hを「012」に更新する(S78)。この場合、使用時間Mには、次回以降の使用経過時間M1 が加算されるので、使用時間表示22hには安全帯1を使用した合計時間が表示される。この後、ステップS65に戻り、その安全帯1の使用状態表示22bを「×」にする。尚、前記動作は各安全帯1ごとに行われる。
【0056】
また、作業者側端末機10から緊急通報信号または温度警報信号を受信した場合には、
図31に示すように緊急通報表示22fまたは温度警報表示22gを表示部22に表示する。尚、緊急通報表示22f及び温度警報表示22gの表示に関する動作ついては、第1の実施形態と同様であるため省略する。
【0057】
一方、作業中の事故等により作業者Aが転倒した場合など、何れかの作業者側端末機10から転倒検知信号を受信すると(S80)、安全帯1の番号を判別し(S81)、
図33に示すように、その安全帯1の転倒検知表示22jを表示するとともに(S82)、ブザー23から警告音を出力する(S83)。ここで、管理者Bによって解除スイッチ24が操作されると(S84)、転倒検知表示22jの表示を解除するとともに(S85)、ブザー23による警告音の出力を停止した後(S86)、ステップS80に戻る。
【0058】
次に、
図21のフローチャートを参照し、転倒検知センサ17のセンサ制御部17dの動作について説明する。
【0059】
まず、加速度センサ4によって加速度Gx ,Gy ,Gz を検出するとともに(S90)、角速度センサ5によって角速度Ωx ,Ωy ,Ωz を検出し(S91)、角速度Ωx ,Ωy ,Ωz を記憶部17cに記憶する(S92)。その際、最新の角速度値を記憶部17cに記憶すると、最も古い角速度値を記憶部17cから消去する。次に、加速度Gx ,Gy ,Gz の全ての絶対値|Gxyz |が所定の基準値Gi よりも小さくなった場合は(S93)、所定時間(例えば0.01秒)だけ時間待ちした後(S94)、カウンタ値C(初期値=0)に「1」を加える(S95)。ここで、カウンタ値Cが所定の設定値C1 に達しておらず(S96)、角速度Ωx ,Ωy ,Ωz の何れかの絶対値|Ωxyz |が所定の基準値Ωa よりも大きくなった場合は(S97)、記憶部17cに記憶されている角速度値を最新の角速度検出時から所定時間Tだけ前まで積分した積分値ΣΩx ,ΣΩy ,ΣΩz を算出し、その何れかの絶対値|ΣΩxyz |が所定の基準値Ωi よりも大きく(S98)、且つその角速度が増加傾向にある場合は(S99)、人体が転倒したものと判定し、転倒検知信号を作業者側端末機10の第1の制御部16に出力する(S100)。
【0060】
また、ステップS97において角速度Ωx ,Ωy ,Ωz の何れの絶対値|Ωxyz |も基準値Ωa 以下の場合、またはステップS98において角速度の積分値ΣΩx ,ΣΩy ,ΣΩz の何れの絶対値|ΣΩxyz |も基準値Ωi 以下の場合、或いはステップS99において角速度が増加傾向でない場合は、ステップS90に戻ってステップS90〜S99の動作を繰り返す。その際、ステップS93において絶対値|Gxyz |の少なくとも一つが所定の基準値Gi 以上になった場合は、カウンタ値Cを「0」にリセットし(S101)、ステップS90に戻る。また、ステップS96においてカウンタ値Cが設定値C1 に達した場合(|Gxyz |<Gi の状態が所定時間以上継続した場合)には、例えば人体が直立状態で落下した場合など、体の傾きを伴わずに墜落したものと判定し、転倒と同様、転倒検知信号を作業者側端末機10の第1の制御部16に出力する(S100)。
【0061】
前記加速度の基準値Gi は重力加速度以下の値に設定されており、作業者Aが転倒等により自由落下と同等の状態になると、全ての検出値の絶対値|Gxyz |が基準値Gi よりも小さくなる。これだけで転倒したと判定すると、飛び跳ねた場合や僅かな段差を飛び越えたときなど、転倒以外の動作によって加速度が基準値Gi よりも小さくなることもある。そこで、転倒時には何れかの方向に角速度が生ずるため、加速度の絶対値が基準値Gi よりも小さく、且つ角速度の絶対値が基準値Ωa よりも大きい場合のみ転倒したと判定することにより、転倒以外の動作による作動が少なくなる。
【0062】
また、このような場合でも、急激な姿勢の変化により瞬間的に前述の判定条件を満たす場合もあるため、角速度値を最新の角速度検出時から所定時間tだけ前まで積分して傾斜角度に相当する積分値を算出し、その絶対値|ΣΩxyz |が所定の基準値Ωi よりも大きい場合のみ転倒したと判定することにより、転倒以外の動作による作動がより少なくなる。即ち、実際に転倒した場合は、
図24に示すように角速度が基準値Ω1 よりも大きくなる前から角速度値が徐々に増加するが、転倒以外の急激な姿勢の変化では、
図25に示すように角速度値が基準値Ωa よりも大きくなる直前に瞬間的に増加するため、角速度値の積分値を判定条件に加えることにより、転倒と転倒以外の動作との判別精度が高まる。この場合、最新の角速度検出時から所定時間tだけ過去の角速度値を積分した積分値に基づいて作動条件が判定されることから、判定時間を意図的に遅らせる必要がなく、加速度及び角速度が判定条件を満たせば転倒検知信号が出力される。
【0063】
尚、角速度の積分によって角度を求める場合は、角速度センサ17bのオフセット成分が加算され、角度変化がないにも拘わらず積分値が大きくなる場合があるが、本実施形態では積分範囲を所定時間tのみとし、最新の角速度値を記憶するごとに最も古い角速度値を消去していくため、角速度センサ17bのオフセット成分は一定の値となり、静止状態でも積分値が増大することがない。
【0064】
更に、本実施形態では、前述のように加速度及び角速度の大きさに基づく判定条件を満たす場合でも、角速度が増加傾向にある場合のみ転倒と判定される。例えば、後ろ向きに転倒した場合は、後方への角速度が大きくなるとともに、後方へ倒れようとする動作が継続しているため、判定時の角速度は増加傾向になる。即ち、
図26に示すように、P時点において加速度が基準値Gi よりも小さくなった後、角速度が基準値Ω1 に達したときにも角速度は増加傾向であるため、転倒と判定される。一方、転倒以外の動作として、例えば前屈みの状態から勢いよく起き上がった場合にも後方への角速度が大きくなるが、立ち上がった後は後方へ倒れようとする動作は継続しないため、判定時の角速度は減少傾向となる。即ち、
図27に示すように、加速度が基準値Gi よりも小さくなる前に角速度が基準値Ω1 に達した後、角速度が増加傾向から減少傾向に変わり、P時点において加速度が基準値Gi よりも小さくなるとともに、その時点での角速度が基準値Ω1 よりも大きい場合には、角速度は減少傾向にあるため、転倒とは判定されない。
【0065】
また、角速度が増加傾向にあるか否かの判定は、
図28に示すように、角速度値を最新の検出時mから所定の第1の範囲R1 だけ前の第1の検出時aまで積分した値と、角速度値を第1の検出時aから所定の第2の範囲R2 だけ前の第2の検出時bまで積分した値とを比較することにより行う。即ち、前後方向の角速度Ωy を検出する場合、角速度の保存データΩy(m)から過去の2区間の積分値、即ち第1の範囲R1 の積分値ΣΩy(m-a)と、第2の範囲R2 の積分値ΣΩy(a-b)との差を算出し、その差がプラスの値かマイナスの値かを判定する(例えば、aを0.1秒前の時刻とし、bを0.2秒前の時刻とする)。この場合、aとbの値を第1の範囲R1 と第2の範囲R2 が同じになるように設定すると、ΣΩy(m-a)とΣΩy(a-b)の差の符号とΣΩy(m)の値により、体の傾きの傾向が増加傾向であるのか、減少傾向であるのかを判別することが可能となる。例えば、ΣΩy(m)<−Ωiyの場合は体の変化が後方向に傾いていることがわかり、ΣΩy(m-a)−ΣΩy(a-b)<0の場合は、その傾く速度(Y軸周りの角速度)が増加傾向であることがわかる。一方、同じくΣΩy(m)<−Ωiyの場合に、ΣΩy(m-a)−ΣΩy(a-b)>0であった場合は、後方向の傾く速度(Y軸周りの角速度)が減少傾向であることがわかる。尚、X軸周りの角速度Ωx を検出する場合も前述と同様である。
【0066】
このように、本実施形態によれば、作業者Aの転倒を検知する転倒検知センサ17を備え、作業現場において作業者Aが転倒すると、作業者側端末機10から管理者側端末機20に転倒検知信号を送信し、その安全帯1の転倒検知表示22jを管理者側端末機20の表示部22に表示するとともに、ブザー23によって警告音を出力するようにしたので、作業者Aにおける転倒事故の発生を管理者Bが速やかに把握することができ、例えば転倒事故により重傷を負っていた場合や、重度の熱中症により意識不明に陥って場合など、作業者Aが自ら緊急通報スイッチ13を押すことができない場合に有効である。
【0067】
また、転倒検知センサ17は、人体の3軸方向の加速度を検出する加速度センサ17aと、人体の3軸周りの角速度を検出する角速度センサ17bとを備えているので、多方向への転倒を確実に検知することができる。
【0068】
この場合、加速度センサ17aによって検出される加速度の絶対値が所定の値よりも小さくなり、且つ角速度センサ17bによって検出される角速度の絶対値が所定の値よりも大きくなった場合に、記憶部17cに記憶されていた角速度値を最新の検出時から所定範囲だけ前(所定時間Tだけ前)の検出時まで積分し、その積分値の絶対値が所定の値よりも大きく、且つ角速度が増加傾向にある場合に転倒検知信号を出力するようにしたので、実際の転倒のように角速度が徐々に増加する場合と、転倒以外の急激な姿勢の変化のように角速度が瞬間的に増加する場合とを角速度の積分値に基づいて精度良く判別することができ、転倒以外の動作による作動を少なくする上で極めて効果的である。また、転倒以外の動作による作動を防止するために判定時間を意図的に遅らせる必要もないので、多様な転倒状況に的確に対応することができる。
【0069】
また、最新の角速度検出時から所定時間t前までに検出した角速度値のみを記憶部17cに記憶するようにしたので、記憶部17cの容量を小さくすることができ、構造の簡素化及び低コスト化を図ることができる。
【0070】
更に、加速度及び角速度の大きさに基づく判定条件を満たす場合でも、角速度が増加傾向にある場合のみ転倒と判定するようにしたので、例えば後ろ向きに転倒した場合のように角速度が増加傾向になる転倒動作と、例えば前屈みの状態から勢いよく起き上がった場合のように角速度が減少傾向になる非転倒動作とを的確に判別することができ、転倒以外の動作による作動をより少なくすることができる。
【0071】
この場合、角速度値を最新の検出時mから所定の第1の範囲R1 だけ前の第1の検出時aまで積分した値と、角速度値を第1の検出時aから所定の第2の範囲R2 だけ前の第2の検出時bまで積分した値とを比較することにより、角速度が増加傾向にあるか否かを判定するようにしたので、角速度の瞬間的な変化による判定精度の低下を防止することができるとともに、記憶部17cに記憶されていた角速度値のデータを角速度の増加傾向と減少傾向の判定に用いることができ、制御プログラムの簡素化を図ることもできる。
【0072】
また、作業現場の所定位置に設置された大画面モニタからなる画面表示器40に管理者側端末機20と同様の安全帯使用状況情報を表示するようにしたので、作業現場の人員が画面表示器40を目視することにより、各作業者Aの安全帯使用状況を容易に確認することができる。これにより、作業者Aの安全帯使用状況が管理者Bのみならず他の作業者Aにも公表されるので、安全帯の使用回数の少ない作業者Aに対する注意を喚起を効果的に促すことができる。
【0073】
この場合、安全帯1が使用されていた合計時間が表示されるので、使用回数のみならず使用時間によっても安全帯使用状況を把握することができ、作業者Aに対する注意喚起に効果的である。
【0074】
また、作業者Aの作業現場における入場及び退場を検知する入退場検知部60を備え、入退場検知部60によって作業者Aの入場または退場が検知されると、入退場検知部60から管理者側端末機20に転倒検知信号を送信し、管理者側端末機20の表示部22に入場検知表示22iを表示するようにしたので、作業者Aの入場及び退場を管理者側端末機20によって容易に管理することができる。これにより、作業開始時及び終了時の人員確認作業を効率的に行うことができるとともに、例えば不慮の事故等により作業開始終了時を過ぎても戻らない作業者の捜索を速やかに行うことができるなど、安全管理上も有効である。
【0075】
尚、前記第2の実施形態では、第2の実施形態特有の効果について説明したが、第2の実施形態においては第1の実施形態の効果も達成することができる。