【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、正極とセパレータと負極とが積層された積層型電極体と、この積層型電極体を収容する外装体と、を備える非水電解質二次電池において、積層型電極体の外周には、ポリオレフィンからなる基材層を備える多孔質シートが1周以上巻きつけられ、かつ積層型電極体の積層方向に垂直な両側面は多孔質シートに面しており、110℃で1時間加熱したときの前記多孔質シートの巻きつけ方向における熱収縮率が5%以下であることを特徴とする。
【0017】
積層型電極体に巻きつけられた多孔質シートは、非水電解質を保持し、電極体に非水電解質を供給できるため、電極体における非水電解質不足を防止できる。
【0018】
また、上記多孔質シートは、ポリオレフィンからなる基材層を備えているため、適度な柔軟性を有する。そして、積層型電極体の外周には、前記多孔質シートが1周以上巻きつけられ、積層型電極体の積層方向に垂直な両側面は多孔質シートに面している。このため、積層型電極体の積層構造を維持できる。さらに、非水電解質が含浸して電極体が膨化した場合でも、その膨張分を吸収できるとともに、積層型電極体の積層方向において適度な拘束力を発揮することができる。
【0019】
さらには、上記多孔質シートは、110℃で1時間加熱したときの熱収縮率が5%以下と小さい。このため、上記のような高温環境に曝されたときに積層型電極体に応力がかかり変形することを抑制できる。
【0020】
これらの効果が相乗的に作用して、高温環境に曝された場合でも、積層型電極体への非水電解質の分配が適正化され、充放電サイクルを繰り返したときの電池反応を電極体全体にわたって均質に進行させることができる。この結果、積層型非水電解質二次電池のサイクル特性を高めることができる。
【0021】
なお、多孔質シートを積層型電極体に巻きつける場合、強いテンションをかける必要はないが、多孔質シートにシワが発生しないように均質に巻きつけることが好ましい。
【0022】
また、多孔質シートによる拘束力を発揮し易いように、多孔質シートの巻き終わり端を、例えばテープ、接着剤などによって、多孔質シートの内周部分に固定してもよい。あるいは、多孔質シートの巻き始め端及び巻き終わり端をそれぞれ、積層型電極体の最外層及び多孔質シートの内周部分に固定してもよい。
【0023】
ポリオレフィンからなる基材層は、安価であり、多孔膜への加工性に富むため、前記基材層を備える多孔質シートを用いれば、電池コストを大きく増加させることがない。しかしながら、多孔質シートを積層型電極体に巻きつける周回数が多いと、材料使用量が増えてコストアップとなるとともに、体積エネルギー密度が低下する。このため、多孔質シートを積層型電極体に巻きつける周回は、5周以下であることが好ましい。
【0024】
また、多孔質シートの巻きつけ方向に垂直な方向の幅は、積層型電極体の前記巻きつけ方向に垂直な幅よりも小さくてもよいし、前記電極体の巻きつけ方向に垂直な幅以上としてもよい。多孔質シートの巻きつけ方向に垂直な方向の幅は、積層型電極体の前記巻きつけ方向に垂直な幅の50%以上、さらには100%以上とすることが好ましい。
【0025】
多孔質シートが、ポリオレフィンからなる基材層のみから構成される場合、前記基材層の厚さは、13〜30μmとすることが好ましい。ポリオレフィンからなる基材層は、充放電に寄与しないため、この基材層の厚みが厚くなりすぎると、放電容量やレート性能を低下させるおそれがある。一方、前記基材層の厚さが薄すぎると、多孔質シートの強度が低下するおそれがある。
【0026】
また、ポリオレフィンからなる基材層のみから構成される多孔質シートの空孔率は、熱収縮率の制御や非水電解質の保持性などの観点から、20〜70%であることが好ましい。
【0027】
ポリオレフィンからなる基材層の例としては、ポリエチレン微多孔膜、ポリプロピレン微多孔膜、これらの積層膜、あるいはポリエチレンとポリプロピレンとの混合膜などが挙げられる。
【0028】
上記非水電解質二次電池において、前記熱収縮率は3%以下である構成とすることができる。この構成により、高温環境下において、多孔質シートがさらに収縮しにくい。このため、多孔質シートが熱収縮して、積層型電極体に応力がかかり変形することを防止する効果を高めることができる。
【0029】
上記非水電解質二次電池において、多孔質シートは、ポリオレフィンからなる基材層と、この基材層上に形成された無機粒子を含有する層(以下「無機粒子層」とする)と、を有する構成とすることができる。無機粒子層は、ポリオレフィンからなる基材層と比較して、熱収縮しにくいので、ポリオレフィンからなる基材層上に無機粒子層を形成することにより、多孔質シートの熱収縮率を小さく制御しやすい。
【0030】
この場合にも、ポリオレフィンからなる基材層の厚みは、13〜30μmであることが好ましい。
【0031】
無機粒子層の厚みは、2〜7μmであることが好ましい。無機粒子層は充放電に寄与しないため、その厚みが厚くなりすぎると、放電容量やレート性能を低下させるおそれがある。一方、無機粒子層の厚みが薄すぎると、作製することが困難となる。
【0032】
無機粒子層は、ポリオレフィンからなる基材層の両面に形成してもよいが、放電容量やレート性能のような電池特性の低下を抑制する観点から、基材層の片面に形成することが好ましい。
【0033】
また、ポリオレフィンからなる基材層と無機粒子層とからなる多孔質シートの空孔率は、ポリオレフィンからなる基材層のみから多孔質シートの場合と同様に、20〜70%であることが好ましい。
【0034】
無機粒子層は、無機粒子と、無機粒子同士及び無機粒子と基材層を結着する結着剤とから構成することができる。
無機粒子層に構成する無機粒子としては、耐熱性が高く絶縁性の粒子を用いることができ、例えばアルミナ粒子、チタニア粒子、シリカ粒子、酸化カルシウム粒子などを用いることができる。
無機粒子層に用いられる結着剤としては、ポリビニルアルコール、スチレンブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレンなどを用いることができる。
【0035】
無機粒子層は、例えば、無機粒子と結着剤と分散媒とを混合して、無機粒子層用スラリーを得、このスラリーを、基材層の片面又は両面に塗布し、乾燥することにより形成することができる。
【0036】
なお、多孔質シートが、ポリオレフィンからなる基材層と、基材層上に形成された無機粒子層とからなる場合、多孔質シートの無機粒子層側が積層型電極体に対向するように、多孔質シートを積層型電極体に巻きつけることが好ましい。無機粒子層は耐熱性が高いため、電極体が発熱した場合でも、多孔質シートが破損すること、ひいては外装体、特にラミネートフィルムからなる外装体が破損することを防止することができる。さらには、電池が異常発熱したときに、外装缶と電極体との絶縁を維持することができる。
【0037】
多孔質シートの空孔率は、例えば、多孔質シートの見かけ密度と、多孔質シートの真密度とを用いて求めることができる。あるいは、水銀ポロシメータを用いて、空孔率を測定することもできる。
【0038】
上記非水電解質二次電池において、前記積層型電極体には、積層ずれを防止するための積層ずれ防止テープが貼り付けられている構成とすることができる。この構成により、積層型電極体の変形をより効果的に防止することができる。
【0039】
前記積層ずれ防止テープとしては、ポリフェニレンサルファイドテープ、ポリイミドテープ、ポリプロピレンテープなどを用いることができる。
【0040】
上記非水電解質二次電池において、外装体は、アルミラミネートフィルムからなる構成とすることができる。さらに、前記アルミラミネートフィルムからなる外装体は、減圧状態で封口されていることが好ましい。尚、減圧は−50〜−100KPaであることが好ましい。
【0041】
アルミラミネートフィルムからなる外装体は、軽量かつ柔軟であり、電極体の形状に合わせて変形できる。このため、電池の重量エネルギー密度及び体積エネルギー密度を高めることができる。さらに、減圧状態で外装体の封口を行うことにより、外装体によって積層型電極体がその積層方向に挟み込まれるような拘束力が生じる。これにより、充放電反応が電極体全体にわたって均質に進行させることができる。
【0042】
なお、上記のように、電極体の周囲には、多孔質シートが巻きつけられており、この多孔質シートに非水電解質が含浸され、保持される。よって、減圧状態で外装体の封口を行った場合でも、非水電解質の外部への逆流を抑制できる。
【0043】
アルミラミネートフィルムとしては、アルミニウム層の両面に、接着剤層を介して樹脂層が接着される構造のものだけでなく、アルミニウム層の片面(電池内部側)にのみ、接着剤層を介して樹脂層が接着される構造のものを用いることができる。また、樹脂層としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系高分子、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系高分子、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン等のポリビニリデン系高分子、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン7等のポリアミド系高分子等を用いることができる。
【0044】
本発明において、熱収縮率は、以下のようにして測定されたものをいう。具体的には、多孔質シートから15cm角の試験片を切り取り、この試験片を110℃で1時間加熱し、室温(25℃)となるまで放置し、この後試験片の所定方向における長さを測定する。熱収縮率は、その所定方向における加熱前後の試験片の長さ変化から求める。具体的には、以下の式から求める。
熱収縮率=[(加熱保存前のセパレータの長さ−加熱保存後のセパレータの長さ)/加熱保存前のセパレータの長さ]×100
【0045】
多孔質シートの熱収縮率は、例えば、基材層を構成するポリオレフィン膜を作製するときの延伸の有無や延伸の条件によって調節できる。また、ポリオレフィンからなる基材層上に上記のような無機粒子層を形成することによっても、多孔質シートの熱収縮率を調節することができる。
【0046】
ここで、上記「110℃で1時間の加熱」という条件は、積層型電極体の乾燥処理を想定した条件である。