特許第6091876号(P6091876)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6091876
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】自動車のサスペンションメンバ補強構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 21/00 20060101AFI20170227BHJP
【FI】
   B62D21/00 A
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-273037(P2012-273037)
(22)【出願日】2012年12月14日
(65)【公開番号】特開2014-117986(P2014-117986A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087619
【弁理士】
【氏名又は名称】下市 努
(72)【発明者】
【氏名】福田 保和
(72)【発明者】
【氏名】米谷 亮平
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−203331(JP,A)
【文献】 特開2007−253642(JP,A)
【文献】 特開2001−088736(JP,A)
【文献】 特開平11−115796(JP,A)
【文献】 特開2000−006833(JP,A)
【文献】 特開2011−093385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上,下の板部材が、中空状をなすように結合されると共に、前部が車両後方に凹むように湾曲形成され、車幅方向一方側の下面又は上面に車両部材を避ける凹部が車両前後方向に延びるように形成され、前記車幅方向一方側及び他方側の両端部に車体取付け部が形成されたサスペンションメンバの、前記上,下の板部材を補強部材で橋渡しするように結合する自動車のサスペンションメンバ補強構造において、
前記補強部材は、前記上,下の板部材の、前記凹部部分間に配設された第1補強部材と、
前記凹部の車幅方向他方側の端部と前記他方側の車体取付け部との間の略中央に配設された第2補強部材とを含み、
前記第1補強部材及び第2補強部材は、前,後一対の縦壁部、該縦壁部の上下方向一端同士を結合する横壁部及び前記縦壁部の他端に屈曲形成されたフランジ部を有する横断面略ハット形状をなし、かつ前記前,後の縦壁部及び横壁部により囲まれた開口が車幅方向に向くように配置されている
ことを特徴とする自動車のサスペンションメンバ補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操向輪をロアアームを介して懸架支持するサスペンションメンバを補強部材で補強するようにした自動車のサスペンションメンバ補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車のサスペンションメンバは、上,下の板部材を中空状をなすように結合すると共に、駆動ユニット等の配置スペースを確保するために前部を車両後方に向けて湾曲させた構造になっている。このようなサスペンションメンバでは、ロアアームからの荷重や操舵時の荷重により、車両平面視で車両前方部分が車両内側に変形すると共に、車両前後方向視で、前記上,下の板部材が近接するように変形するおそれがある。特に、特許文献1に開示されているように、前記サスペンションメンバに、エキゾーストパイプを回避するための凹部が形成されている場合は、該凹部の端部を起点にして前記変形が大きくなるおそれがある。
【0003】
このような変形を防止するために、特許文献2では、サスペンションメンバの車幅方向全長に渡って延びる補強部材を配設している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−93385号公報
【特許文献1】特開2007−253462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来の、サスペンションメンバの車幅方向全長に渡る補強部材を配設する構造では、補強部材が大掛かりとなり、車両重量及びコストが増大し、生産性が悪化するという問題がある。
【0006】
本発明は、前記従来の実情に鑑みてなされたもので、最低限の補強部材により効果的にサスペンションメンバの剛性を向上でき、車両重量及びコストの増大、生産性の悪化といった問題を回避できる自動車のサスペンションメンバ補強構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上,下の板部材が、中空状をなすように結合されると共に、前部が車両後方に凹むように湾曲形成され、車幅方向一方側の下面又は上面に車両部材を避ける凹部が車両前後方向に延びるように形成され、前記車幅方向一方側及び他方側の両端部に車体取付け部が形成されたサスペンションメンバの、前記上,下の板部材を補強部材で橋渡しするように結合する自動車のサスペンションメンバ補強構造において、
前記補強部材は、前記上,下の板部材の、前記凹部部分間に配設された第1補強部材と、前記凹部の車幅方向他方側の端部と前記他方側の車体取付け部との間の略中央に配設された第2補強部材とを含み、
前記第1補強部材及び第2補強部材は、前,後一対の縦壁部、該縦壁部の上下方向一端同士を結合する横壁部及び前記縦壁部の他端に屈曲形成されたフランジ部を有する横断面略ハット形状をなし、かつ前記前,後の縦壁部及び横壁部により囲まれた開口が車幅方向に向くように配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の自動車のサスペンションメンバ補強構造によれば、車幅方向の一方側においては、上,下の板部材の凹部部分間を第1補強部材で橋渡しして結合したので、断面積が小さいため剛性が低くなり易い凹部部分を効果的に補強でき、また他方側においては、剛性断点となり易い凹部の端部と剛性が確保されている車体取付け部との中間部分を第2補強部材で橋渡しして結合したので、上,下の板部材の上下方向の変形を抑えることができ、これにより、サスペンションメンバの湾曲部内への倒れ込みを防止することができる。このように、上,下の板部材の凹部と略中央部の2個所を橋渡し結合するだけの最低限の補強部材により車両重量,コストの増大、生産性の悪化を回避しつつサスペンションメンバの変形を抑えることができきる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例1による補強構造が採用された自動車のサスペンションメンバの、ロアアーム,操舵力伝達機構及びスタビライザーが配設された状態の平面図である。
図2】前記サスペンションメンバの車両上方から見た平面図である。
図3】前記サスペンションメンバの車両後方から見た背面図である。
図4】前記サスペンションメンバの車両側方から見た模式側面図である。
図5】前記サスペンションメンバの断面側面図(図2のV-V線断面図)である。
図6】前記サスペンションメンバの断面側面図(図2のVI-VI線断面図)である。
図7】前記サスペンションメンバの断面側面図(図2のVII-VII線断面図)である。
図8】前記サスペンションメンバの断面側面図(図2のVIII-VIII線断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
図1ないし図8は、本発明の実施例1による自動車のサスペンションメンバ補強構造を説明するための図である。図中、前,後、左,右とは車両進行方向に見た状態での前,後、左,右を意味する。
【0012】
図において、1は車体フレームであり、該車体フレーム1は左,右のサイドメンバ2,3を備えている。該左,右のサイドメンバ2,3は車両前後方向に延びる本体部2a,3aと、該本体部2a,3aから車幅方向外側に寸法Dだけ拡がり、かつ上方に位置するように屈曲形成された屈曲部2b,3bを有する。
【0013】
そして前記左,右のサイドメンバ2,3の前部下面にサスペンションメンバ4が取付けられている。該サスペンションメンバ4の左,右端部には左,右のロアアーム5,5が上下揺動可能に支持されており、該ロアアーム5,5及び図示しないナックルアームを介して左,右の操向輪が支持され、該ナックルアームと車体との間には懸架ばね及びダンパーが介在されている。
【0014】
前記サスペンションメンバ4は、アッパ,ロアプレート(上,下の板部材)8,9を中空状をなすように結合してなる最中構造を有し、アッパプレート8の上面にはステアリング装置の操舵力伝達機構6及び車体のロールを抑制するためのスタビライザー10が搭載されている。
【0015】
前記操舵力伝達機構6は、ステアリングホイールに接続されたステアリングシャフトの下端に連結されたピニオンギヤが収容されたステアリングギヤケース6aと、該ケース6a内に配設され、前記ピニオンギヤに噛合するラック歯を有する操向軸6bと、該操向軸6bの両端部に接続されたタイロッド6c,6cとを有する。該タイロッド6c,6cは前記ナックルアームを介して前記操向輪に連結されており、前記ステアリングホイールを回動させることで車両を所望方向に向けることができる。
【0016】
前記ステアリングギヤケース6aは、これの左,右端部に形成されたフランジ部6d,6dを前記サスペンションメンバ4のアッパプレート8に形成された取付け座8a,8aにボルト7aにより締め付け固定することにより該サスペンションメンバ4に固定されている。
【0017】
前記スタビライザー10は、丸棒を平面視略コ字形状に折り曲げたものであり、前記アッパプレート8の、前記取付け座8aの車幅方向外側に位置する取付け部座8bにボルト7bにより締め付け固定されている。
【0018】
前記サスペンションメンバ4のアッパ,ロアプレート8,9は、鋼板を大略ハット状にプレス成形したものであり、その周縁に一体形成されたフランジ8c,9cをスポット溶接等により結合することで前記中空状の最中構造をなしている。
【0019】
また前記サスペンションメンバ4の、前部には、エンジンユニット(図示せず)の配置スペースを確保するための湾曲部4aが車両後方に凹むように形成されている。この湾曲部4aの左,右前端部4b,4bに前記左,右のロアアーム5,5の基部5a,5aが支持されている。
【0020】
また前記サスペンションメンバ4の車幅方向右側の下面には、エキゾーストパイプ(車両部材)11との干渉を避けるための凹部4cが車両前後方向に延びるトンネル形状に形成されている。この凹部4cは、詳細には、前記ロアプレート9の車幅方向右側の一部を、車幅方向内側端部9e,外側端部9f及び頂部9dを有する上方凸形状をなすように屈曲させて形成されたものである。そのため前記頂部9dと前記アッパプレート8との間隔は他の部分より狭くなっている。
【0021】
さらにまた前記サスペンションメンバ4の、車幅方向左,右端部には左,右の車体取付け部12,12が形成されている。この車体取付け部12は、前記アッパプレート8の上面より上方に突出する脚形状の前取付け部12aと、平坦形状の後取付け部12bとで構成されている。前記左,右の前取付け部12a,12aは前記左,右のサイドメンバ2,3の屈曲部2b,3bの下面にボルト7cにより締め付け固定されており、また前記左,右の後取付け部12b,12bは前記左,右のサイドメンバ2,3の本体部2a,3aの下面にボルト7dで締め固定されている。従って前記前取付け部12aのボルト穴12cと後取付け部12bのボルト穴12dとは前記サイドメンバ2,3の拡がり形状に合わせて車幅方向に寸法Dだけ偏位している。
【0022】
そして前記サスペンションメンバ4は、前記アッパプレート8とロアプレート9とを第1補強材13及び第2補強部材14で橋渡しするように結合することで補強されている。前記第1補強部材13は、鋼板を、縦壁部13a,横壁部13b及びフランジ部13cを有する横断面略ハット形状をなすようにプレス成形したものである。
【0023】
前記第1補強部材13は、前記アッパ,ロアプレート8,9の前記凹部4c部分間に、車幅方向に開口するように配置され、そのフランジ部13cは前記アッパプレート8の内面にスポット溶接等で固定され、また横壁部13bは前記ロアプレート9の前記頂部9dにスポット溶接等で固定されている。
【0024】
前記第2補強部材14は、前記第1補強部材13と同様に、鋼板を、縦壁部14a,横壁部14b及びフランジ部14cを有する横断面略ハット形状をなすようにプレス成形したものである。
【0025】
前記第2補強部材14は、前記凹部4cの車幅方向内側端部9eと前記車体取付け部12との間の略中央における前記アッパ,ロアプレート8,9間に、車幅方向に開口するように配置されている。詳細には、前記第2補強部材14は、該補強部材14から前記前取付け部12aのボルト穴12cと後取付け部12bのボルト穴12dとの偏位寸法Dの中間までの距離L1と、前記第2補強部材14から前記凹部4cの車幅方向内側端部9eまでの距離L2とが略同じとなる位置に配置されている。
【0026】
前記第2補強部材14のフランジ部14cは前記アッパプレート8の内面にスポット溶接等で固定され、また横壁部14bは前記ロアプレート9の内面にスポット溶接等で固定されている。
【0027】
本実施例1に係る自動車のサスペンションメンバ補強構造では、車幅方向右側凹部4cを形成したので、該凹部4c部分の断面積が他の部分より小さくなる分剛性が低下する懸念があるが、アッパ,ロアプレート8,9の前記凹部4cに対応する部分間を第1補強部材13で橋渡しして結合したので、該凹部4c部分を効果的に補強でき、前記剛性低下を改善できる。
【0028】
また剛性断点となり易い凹部4cの車幅方向内側端部9eについては、剛性が確保されている車体取付け部12との略中央部分に第2補強部材14配置し、該補強部材14によりアッパ,ロアプレート8,9を橋渡しして結合したので、ロアアーム5からの荷重や操舵時の荷重によりアッパ,ロアプレート8,9が上下方向に変形するのを抑えることができ、ひいては前記湾曲部4aの左,右前端部4b,4bが湾曲部4aの内側に倒れ込むのを防止することができる。
【0029】
また、第1,第2補強部材13,14を、車幅方向に開口するように配置したので、前記アッパ,ロアプレート8,9の上下方向の変形により前記ハット形状が口開きするのを防止できる。
【0030】
このようにアッパ,ロアプレート8,9の前記凹部4c部分と、該凹部4cの内側端部9eと車体取付け部12との略中央部との2個所を橋渡し結合するだけの最低限の第1,第2補強部材13,14により車両重量,コストの増大、生産性の悪化を回避しつつサスペンションメンバ1の変形を抑えることができ、ロードノイズの低減,スポット溶接の剥がれを抑制できる。
【0031】
また、本実施例1では、前記アッパプレート8の、前記第1,第2補強部材13,14に隣接する部位に形成されたケース取付け座8a,8aにステアリングギヤケース6aのフランジ部6dを固定したので、このステアリングギヤケース6dが前記サスペンションメンバ4の左,右前端部4b,4bが内側に倒れ込むのを阻止する突っ張り部材として機能するので、この点からも前記内倒れを防止できる。また、前記第1,第2補強部材13,14により前記ステアリングギヤケース6aの取付け剛性を高めることができる。
【0032】
なお、前記実施例では、第1,第2補強部材13,14を、フランジ部13c,14cがアッパプレート8側に位置する倒立状態に配置したが、これらの補強部材を、フランジ部がロアプレート側に位置する正立状態に配置して良い。
【0033】
また前記実施例では、凹部4cをサスペンションメンバ4の下面側に形成し、該凹部4cにエキゾーストパイプ11を配置した場合を説明したが、本発明の凹部はサスペンションメンバ4の上面側に形成しても良く、またブレーキ配管や各種ケーブル等を凹部に配置しても良い。
【0034】
また前記実施例では、車両前部に配置されたフロントサスペンションメンバを説明したが、本発明は、車両後部に配置されたリヤサスペンションメンバにも適用可能である。
【符号の説明】
【0035】
4 サスペンションメンバ
4a 湾曲部
4c 凹部
8,9 アッパ,ロアプレート(上,下の板部材)
11 エキゾーストパイプ(車両部材)
12 車体取付け部
13 第1補強部材
14 第2補強部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8