特許第6091885号(P6091885)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6091885
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20170227BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20170227BHJP
   B60C 11/01 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   B60C11/00 E
   B60C11/03 300A
   B60C11/00 B
   B60C11/00 C
   B60C11/00 D
   B60C11/01 A
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-279162(P2012-279162)
(22)【出願日】2012年12月21日
(65)【公開番号】特開2014-121949(P2014-121949A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2015年10月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100124707
【弁理士】
【氏名又は名称】夫 世進
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(72)【発明者】
【氏名】和田 親寿
【審査官】 松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−158911(JP,A)
【文献】 特開2005−272720(JP,A)
【文献】 特開2010−126103(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/072234(WO,A1)
【文献】 特開平06−191221(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0294001(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00
B60C 11/01
B60C 11/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤトレッドの幅方向最外側に周方向に配され、タイヤ幅方向のラグ溝を有する2列のショルダー部を有する空気入りタイヤであって、
タイヤトレッドの凹凸を含む表面にトレッドゴム層より低モジュラスである300%モジュラスが9.0MPa以下の第1薄ゴム層及び第2薄ゴム層を部分的に又は全面的に形成してなり、
第1薄ゴム層は第2薄ゴム層より厚みがあり、
第1薄ゴム層の厚みが1.0mm〜2.0mmであり、
ショルダー部におけるラグ溝は第1薄ゴム層で被覆されていることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
ラグ溝を含むショルダー部の全周面が第1薄ゴム層で被覆されていることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
ショルダー部がタイヤ周方向のショルダー溝によって区画されており、該ショルダー溝が第1薄ゴム層で被覆されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤ、特に重荷重用の空気タイヤに関し、ラグ溝での亀裂の発生を防止し、その延命化を図る空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空気入りタイヤにおいて、長期にわたる繰り返しの使用により、その外表面に亀裂等の損傷が発生するおそれがあり、その原因の1つとしては、大気中の酸素やオゾン等に起因するタイヤゴム表面の酸化及び劣化が挙げられる。下記の特許文献に示されるように種々の目的にしたがってタイヤ表面を薄膜にて被覆したタイヤが提案されている。
【0003】
下記特許文献1には、トレッド部の表面には、トレッド溝が形成されており、このトレッド表面輪郭に沿って0.1mm〜1mmの均一の厚さの薄膜が形成されており、薄膜はトレッド部のゴムと異質のゴムでしかも耐亀裂性に優れた比較的軟質のゴムであって、JIS硬度45度〜55度でサイドウォールと実質的に同質のゴムであり、慣らし走行終了後においては、トレッド溝表面の薄膜のみが残ることとなるが、この薄膜は耐亀裂性に優れているため、走行時の繰り返し変形に伴うトレッド溝底の亀裂発生を効果的に抑制し得る空気入りタイヤが示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の空気入りタイヤは、薄膜の厚さが0.1mm〜1mmの均一の厚さであるから、タイヤトレッドの最外側であるショルダー部におけるタイヤ幅方向のラグ溝での薄膜の厚みが不十分であるため、ラグ溝においてグルーブクラック(溝底に歪が集中して発生するひび割れ)が発生するおそれがある。
【0005】
下記特許文献2には、タイヤの周方向に連続してトレッド表面に厚さ0.5mm以下の導電性薄膜が配設された空気入りタイヤであって、導電性薄膜がトレッドの両側部に配設されていて、その一方の片側に配設されている前記導電性薄膜の幅(w)がトレッド総幅(W)の10%〜30%であり、トレッドの接地面に配設された薄膜は一定距離走行後に摩耗などにより消失し、トレッドの溝部分に配設された薄膜は残存しており、トレッドを転がり抵抗の小さいゴムで構成し、これに導電性薄膜を配設することにより、低燃費で導電性がよいという相反する特性を得ることができ、トレッドのショルダー部に近い両側部分にだけ導電性薄膜を配設した空気入りタイヤでは、導電性改善効果とともに、初期走行時からトレッドが本来有する特性である小さい転がり抵抗を発揮できる空気入りタイヤが示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の空気入りタイヤは、導電性確保が目的であるため、ラグ溝におけるグルーブクラックを解消するものではない。また、薄膜の厚さが0.5mm以下であり、ラグ溝での薄膜の厚みが不十分であるため、ラグ溝においてグルーブクラックが発生するおそれがある。
【0007】
下記特許文献3には、ラグおよび溝形状からなる周辺ゴムトレッドを有する空気入りタイヤにおいて、トレッド面の一部の上で前記トレッドとトレッドウイングとの間の境界に延長して配置されている薄層ストリップから構成されるトレッドを有し、薄層外部トレッドストリップがタイヤトレッド面の50%未満を覆い、トレッドストリップの厚さが約0.005cm〜約0.08cmであるタイヤが示されている。
【0008】
しかしながら、特許文献3に記載のタイヤは、導電性確保が目的であるため、タイヤトレッドの最外側であるショルダー部におけるタイヤ幅方向のラグ溝におけるグルーブクラックを解消するものではない。また、薄膜の厚さが約0.05mm〜約0.8mmの厚さであるが、ラグ溝での薄膜の厚みが不十分であるため、ラグ溝においてグルーブクラックが発生するおそれがある。
【0009】
下記特許文献4には、キャップ・ベース構造を有するトレッド部を備えた重荷重用空気入りタイヤにおいて、2つ以上の主溝のうちタイヤ幅方向における両外側に位置する主溝間にて、キャップゴムの厚さが2.4mm以下のキャップ薄肉部をトレッドの全幅の15%〜90%に設けたものであり、偏摩耗を主に生じる箇所に耐偏摩耗性のゴムを配し、低転がり抵抗性のゴム量をできるだけ多く、しかも、ゴム変形量が多いセンター表層部に配することにしたことにより、効率的に、偏摩耗を防止しつつ、低燃費性を達成することができる重荷重用空気入りタイヤが示されている。
【0010】
しかしながら、特許文献4に記載の重荷重用空気入りタイヤは、低燃費、低tanδ化が目的であり、タイヤトレッドの最外側であるショルダー部におけるタイヤ幅方向のラグ溝におけるグルーブクラックを解消するものではない。また、キャップ薄肉部は溝底に配置されていないためラグ溝においてグルーブクラックが発生するおそれがある。
【0011】
下記特許文献5には、タイヤ本体の溝壁、溝底を含むトレッドの外表面をEPT又はハロゲン化ブチルを含有するゴムからなる薄層により被覆してなり、薄層は、その厚さが0.1mm〜2.0mmであり、タイヤの諸動性能を低下させることなく外表面の亀裂発生を防止でき、その延命化を図るタイヤが示されている。
【0012】
しかしながら、特許文献5に記載のタイヤは、EPT又はハロゲン化ブチルを含有するものであるが、グルーブクラックに有効とはいいがたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】実開昭61−39604号公報
【特許文献2】特開平8−244409号公報
【特許文献3】特開平10−203114号公報
【特許文献4】特開2000−52713号公報
【特許文献3】特開平2−45202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記のように、タイヤトレッドの最外側のショルダー部におけるラグ溝及びショルダー溝における亀裂の発生については十分な効果が達成し得る提案がなされていないのが現状である。
【0015】
そこで、本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、空気入りタイヤにおいて、タイヤトレッドに、特殊組成の薄ゴム層ではなく、トレッドゴム層より低モジュラスの薄ゴム層を形成し、かつ、ラグ溝における薄ゴム層の厚みを他の薄ゴム層より厚くすることにより、ラグ溝での亀裂の発生を防止し、その延命化を図る空気入りタイヤを案出した。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る請求項1に記載の空気入りタイヤは、タイヤトレッドの幅方向最外側に周方向に配され、タイヤ幅方向のラグ溝を有する2列のショルダー部を有する空気入りタイヤであって、タイヤトレッドの凹凸を含む表面にトレッドゴム層より低モジュラスである300%モジュラスが9.0MPa以下の第1薄ゴム層及び第2薄ゴム層を部分的に又は全面的に形成してなり、第1薄ゴム層は前記第2薄ゴム層より厚みがあり、第1薄ゴム層の厚みが1.0mm〜2.0mmであり、ショルダー部におけるラグ溝は第1薄ゴム層で被覆されていることを特徴とするものである。
【0017】
なお、300%モジュラス(MPa)は、試験方法はJIS K 6251に準ずる。低い数値の方が元に戻る力が少ない為歪みを緩和できる。
【0018】
本発明に係る請求項2に記載の空気入りタイヤは、上記の請求項1において、ラグ溝を含むショルダー部の全周面が第1薄ゴム層で被覆されていることを特徴とするものである。
【0019】
本発明に係る請求項3に記載の空気入りタイヤは、上記の請求項1又は2において、ショルダー部がタイヤ周方向のショルダー溝によって区画されており、該ショルダー溝が第1薄ゴム層で被覆されていることを特徴とするものである。
【0020】
上記請求項1〜のように構成したことにより、タイヤ接地面は走行により摩耗するので薄ゴム層が消滅するが、溝壁及び溝底は摩耗しないため薄ゴム層が残り、薄ゴム層は低モジュラスのものを配置したことにより歪みが緩和されるので、歪みの緩和によりラグ溝のグルーブクラックの改善につながり、グルーブクラックの発生を抑制する。また、グルーブクラックは、通常、ショルダー部におけるタイヤ幅方向のラグ溝、タイヤ周方向のショルダー溝、タイヤ周方向のセンター主溝の順に発生するが、ラグ溝の薄ゴム層の厚みを厚くすることによりラグ溝におけるグルーブクラックの発生を抑制する効果を高めている。センター溝はグルーブクラックが発生しにくいので、バリエーションとして薄ゴム層の厚みなしからショルダー溝の厚みと同等とすることで、市場や使用環境などでの必要性に対応可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の空気入りタイヤは、上記のように構成したことにより、タイヤトレッドの最外側のショルダー部におけるラグ溝及びショルダー溝における亀裂発生の抑制に十分な効果が発揮し得るものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の空気入りタイヤの概略断面図である。
図2】本発明の空気入りタイヤの概略部分平面図である。
図3】本発明の実施例1に係るタイヤトレッドの要部斜視図である。
図4】本発明の実施例1の変更例1に係るタイヤトレッドの要部斜視図である。
図5】本発明の実施例1の変更例2に係るタイヤトレッドの要部斜視図である。
図6】本発明の実施例1の変更例3に係るタイヤトレッドの要部斜視図である。
図7】本発明の実施例2に係るタイヤトレッドの要部斜視図である。
図8】本発明の実施例2の変更例1に係るタイヤトレッドの要部斜視図である。
図9】本発明の実施例2の変更例2に係るタイヤトレッドの要部斜視図である。
図10】本発明の実施例2の変更例3に係るタイヤトレッドの要部斜視図である。
図11】本発明の実施例2の変更例4に係るタイヤトレッドの要部斜視図である。
図12】比較例1に係るタイヤトレッドの要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る好適な実施例について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、各実施例を説明するに当たり、まず、図1及び図2を使用して空気入りタイヤの概要を説明する。
【0024】
図1において、Tは空気入りタイヤであり、空気入りタイヤTは、ビードコア1の両端を折り返して係止されるカーカス2と、カーカス2のクラウン部外側に配されるベルト層3と、凹凸を形成したタイヤトレッド4を備えている。タイヤトレッド4の幅方向最外側における周方向の凸状はショルダー部5であり、ショルダー部5には、図2に示すように、タイヤ幅方向に凹状のラグ溝6が形成されており、ショルダー部5は凸状のラグ7とラグ溝6とにより構成される。ショルダー部5の内方側には、ショルダー部5を区画する凹状のショルダー溝8が形成されている。また、ショルダー溝8の内方側には凸状のメディエイト部9が形成され、メディエイト部9の内方側には凹状のセンター副溝10を介して凸状のセンター部11が形成され、両センター部11の間にはセンター主溝12が形成されている。なお、図1及び図2に示す空気入りタイヤTは例示であり、本発明において必須の構成は、実施例1及び2に関してはラグ溝6を有するショルダー部5を備えた空気入りタイヤであればよい。
【実施例1】
【0025】
図3は実施例1を示し、図4〜図は実施例1の変更例であって、ショルダー部におけるラグ溝を第1薄ゴム層により被覆するこを必須とする実施例1のラグ溝以外の薄ゴム層の配置に関するバリエーションの例示である。なお、タイヤは赤道(タイヤ幅中心を通る周方向線)を中心として左右対称を前提とし、図3〜図は、いずれもタイヤの半断面を示している。また、各溝は、溝壁及び溝底を含むものとする。さらに、薄ゴム層が形成されていない部分も一部に存在する
【0026】
図3に示す実施例1の空気入りタイヤは、タイヤトレッド4においてショルダー部5のラグ溝6を含む周方向全面に第1薄ゴム層20が形成されており、ショルダー溝8にもその表面に第1薄ゴム層20が形成されている。それ以外のメディエイト部9、センター副溝10、センター部11及びセンター主溝の表面には第2薄ゴム層21が形成されている。
【0027】
第1薄ゴム層20及び第2薄ゴム層21は、いずれも300%モジュラスが9.0MPaのゴム性物質から構成されている。なお、第1薄ゴム層及び第2薄ゴム層は、300%モジュラスが9.0MPaのゴム性物質に限るものではなく、300%モジュラスが9.0MPa以下のゴム性物質であればよい。また、第1薄ゴム層20の厚みと第2薄ゴム層21の厚みとの比率は2対1であり、本実施例では第1薄ゴム層20の厚みは2.0mmに構成されている。なお、第1薄ゴム層は第2薄ゴム層より厚みが大であればよい。また、第1薄ゴム層の厚みは1.0mm〜2.0mmの範囲が好ましい。
【0028】
図4に示す実施例1の変更例1の空気入りタイヤは、タイヤトレッド4においてショルダー部5のラグ溝6を含む周方向全面及びショルダー溝8の表面に厚み2.0mmの第1薄ゴム層20が形成されている点は、実施例1と同様である。変更例1においては、メディエイト部9、センター副溝10の表面には厚み1.0mmの第2薄ゴム層21が形成されているが、センター部11及びセンター主溝にはいずれの薄ゴム層も形成されていない
【0029】
図5に示す実施例1の変更例2の空気入りタイヤは、タイヤトレッド4においてショルダー部5のラグ溝6を含む周方向全面及びショルダー溝8の表面に厚み2.0mmの第1薄ゴム層20が形成されている点は、実施例1と同様である。変更例2においては、メディエイト部9はいずれの薄ゴム層も形成されておらず、センター副溝10、センター部11及びセンター主溝の表面には厚み1.0mmの第2薄ゴム層21が形成されている。
【0030】
図6に示す実施例1の変更例3の空気入りタイヤは、タイヤトレッド4においてショルダー部5のラグ溝6を含む周方向全面及びショルダー溝8の表面に厚み2.0mmの第1薄ゴム層20が形成されている点は、実施例1と同様である。変更例3においては、メディエイト部9、センター部11及びセンター主溝にはいずれの薄ゴム層も形成されておらず、センター副溝10の表面には厚み1.0mmの第2薄ゴム層21が形成されている。
【実施例2】
【0031】
は実施例2を示し、図図1は実施例2の変更例であって、ショルダー部におけるラグ溝を第1薄ゴム層により被覆するこを必須とする実施例2のラグ溝以外の薄ゴム層の配置に関するバリエーションの例示である。なお、タイヤは赤道(タイヤ幅中心を通る周方向線)を中心として左右対称を前提とし、図8図1は、いずれもタイヤの半断面を示している。また、各溝は、溝壁及び溝底を含むものとする。さらに、薄ゴム層が形成されていない部分も一部に存在する
【0032】
に示す実施例2の空気入りタイヤは、タイヤトレッド4においてショルダー部5のラグ溝6を含む周方向全面に第1薄ゴム層20が形成され、ショルダー溝8の表面に厚み1.0mmの第2薄ゴム層21が形成されており、それ以外のメディエイト部9、センター副溝10、センター部11及びセンター主溝の表面には第2薄ゴム層21が形成されている。
【0033】
第1薄ゴム層20及び第2薄ゴム層21は、いずれも300%モジュラスが9.0MPaのゴム性物質から構成されている。なお、第1薄ゴム層及び第2薄ゴム層は、300%モジュラスが9.0MPaのゴム性物質に限るものではなく、300%モジュラスが9.0MPa以下のゴム性物質であればよい。また、第1薄ゴム層20の厚みと第2薄ゴム層21の厚みとの比率は2対1であり、本実施例では第1薄ゴム層20の厚みは2.0mmに構成されている。なお、第1薄ゴム層は第2薄ゴム層より厚みが大であればよい。また、第1薄ゴム層の厚みは1.0mm〜2.0mmの範囲が好ましい。
【0034】
に示す実施例2の変更例1の空気入りタイヤは、タイヤトレッド4においてショルダー部5のラグ溝6を含む周方向全面に厚み2.0mmの第1薄ゴム層20が形成され、ショルダー溝8の表面に厚み1.0mmの第2薄ゴム層21が形成されている点は、実施例2と同様である。変更例1においては、メディエイト部9、センター副溝10の表面には厚み1.0mmの第2薄ゴム層21が形成されているが、センター部11及びセンター主溝にはいずれの薄ゴム層も形成されていない
【0035】
に示す実施例2の変更例2の空気入りタイヤは、タイヤトレッド4においてショルダー部5のラグ溝6を含む周方向全面に厚み2.0mmの第1薄ゴム層20が形成され、ショルダー溝8の表面に厚み1.0mmの第2薄ゴム層21が形成されている点は、実施例2と同様である。変更例2においては、メディエイト部9はいずれの薄ゴム層も形成されておらず、センター副溝10、センター部11及びセンター主溝の表面には厚み1.0mmの第2薄ゴム層21が形成されている。
【0036】
図1に示す実施例2の変更例3の空気入りタイヤは、タイヤトレッド4においてショルダー部5のラグ溝6を含む周方向全面に厚み2.0mmの第1薄ゴム層20が形成され、ショルダー溝8の表面に厚み1.0mmの第2薄ゴム層21が形成されている点は、実施例2と同様である。変更例3においては、メディエイト部9、センター部11及びセンター主溝にはいずれの薄ゴム層も形成されておらず、センター副溝10の表面には厚み1.0mmの第2薄ゴム層21が形成されている。
【0037】
図1に示す実施例2の変更例4の空気入りタイヤは、タイヤトレッド4においてショルダー部5の周方向全面に厚み2.0mmの第1薄ゴム層20が形成され、ショルダー溝8の表面に厚み1.0mmの第2薄ゴム層21が形成されている点は、実施例2と同様である。変更例4においては、メディエイト部9、センター副溝10、センター部11及びセンター主溝の表面にはいずれの薄ゴム層形成されていない。
【0038】
[実施例2−1]
実施例2−1の空気入りタイヤは、図示を省略するが、実施例2における第1薄ゴム層20の厚みと第2薄ゴム層21の厚みとを変化させた以外は、実施例2と同様である。すなわち、第1薄ゴム層20の厚みは1.0mmであり、第2薄ゴム層21の厚みは第1薄ゴム層20の厚みの2分の1である0.5mmである。
【0039】
[比較試験]
次に本発明に係る空気入りタイヤについて、以下の条件の下に、上記の実施例1、2及び2−1、下記の比較例1〜4及び従来例について比較試験を行った。試験方法はグルーブクラック試験、摩耗試験である。
【0040】
グルーブクラック試験とは熱劣化させたタイヤにオゾンを照射しながら所定の内圧、所定の荷重を与え、回転ドラムに押し付けて繰り返し歪を続けさせることにより市場で発生するトレッドグルーブ及びフレックスラインのクラック現象を再現し評価するものである。表中の耐グルーブクラック性はグルーブクラック試験の成績であり、比較例1の指数を100とし、指数が高いほうが耐グルーブクラック性に優れている。
【0041】
摩耗試験とは実車にタイヤを装着してアライメントを調整し、規定のコースを走行後、試験前との摩耗量を比較評価する。表中の摩耗性とは、摩耗試験の成績であり、比較例1の摩耗指数を100として表したものである。指数が高い方が摩耗性に優れる。
【0042】
[比較例1の構成]
図1に示す比較例1の空気入りタイヤは、タイヤトレッド4においてショルダー部5のラグ溝6を含む周方向全面、ショルダー溝8、メディエイト部9、センター副溝10、センター部11及びセンター主溝の表面に第2薄ゴム層21のみを形成し、厚みが異なる第1薄ゴム層は形成されていないものである。
【0043】
第2薄ゴム層21は300%モジュラスが9.0MPaのゴム性物質から構成されている。また、第2薄ゴム層21の厚みは1.0mmに構成されている。
【0044】
[比較例2の構成]
比較例2の空気入りタイヤは、図示を省略するが、タイヤトレッドにおいてショルダー部のラグ溝を含む周方向全面に第1薄ゴム層を形成し、ショルダー溝の表面に第2薄ゴム層を形成したものである。
【0045】
第1薄ゴム層及び第2薄ゴム層は300%モジュラスが10.0MPaのゴム性物質から構成されている。また、第1薄ゴム層の厚みは2.0mm、第2薄ゴム層の厚みは1.0mmに構成されている。
【0046】
[比較例3の構成]
比較例3の空気入りタイヤは、図示を省略するが、タイヤトレッドにおいてショルダー部のラグ溝を含む周方向全面に第1薄ゴム層を形成し、ショルダー溝の表面に第2薄ゴム層を形成したものである。
【0047】
第1薄ゴム層及び第2薄ゴム層は300%モジュラスが9.0MPaのゴム性物質から構成されている。また、第1薄ゴム層の厚みは0.5mm、第2薄ゴム層の厚みは0.25mmに構成されている。
【0048】
[比較例4の構成]
比較例4の空気入りタイヤは、図示を省略するが、タイヤトレッドにおいてショルダー部のラグ溝を含む周方向全面に第1薄ゴム層を形成し、ショルダー溝の表面に第2薄ゴム層を形成したものである。
【0049】
第1薄ゴム層及び第2薄ゴム層は300%モジュラスが9.0MPaのゴム性物質から構成されている。また、第1薄ゴム層の厚みは2.5mm、第2薄ゴム層の厚みは1.25mmに構成されている。
【0050】
[従来例の構成]
従来例の空気入りタイヤは、図示は省略するが、薄ゴム層の厚みが0.0mm、すなわち、タイヤトレッドの表面に薄ゴム層が形成されていない空気入りタイヤである。
【0051】
【表1】
【0052】
[比較試験の結果]
上記実施例1については、ラグ溝の薄ゴム層を、比較例1の1.0mmに比べ、2.0mmにしたことにより、比較例1に比べてラグ溝における耐グルーブクラック性が向上している。また、ショルダー溝の薄ゴム層を、比較例1の1.0mmに比べ、2.0mmにしたことにより、比較例1に比べ、ショルダー溝における耐グルーブクラック性が向上している。
【0053】
上記実施例2については、ラグ溝の薄ゴム層を、比較例1の1.0mmに比べ、2.0mmにしたことにより、比較例1に比べてラグ溝における耐グルーブクラック性が向上している。
【0054】
上記実施例2−1については、ショルダー溝の薄ゴム層を、比較例1の1.0mmに比べ、0.5mmにしたことにより、ショルダー部の摩耗性が向上している。
【0055】
上記比較例2については、第1薄ゴム層及び第2薄ゴム層の300%モジュラスが9.0MPa以上の10.0MPaとしたことにより、実施例2に比べ、ラグ溝における耐グルーブクラック性及びショルダー溝における耐グルーブクラック性がいずれも低下している。しかし、耐摩耗性は向上している。
【0056】
上記比較例3については、ラグ溝の第1薄ゴム層の厚みを、1.0mm未満の0.5mmとしたことにより、実施例2−1に比べ、ラグ溝における耐グルーブクラック性及びショルダー溝における耐グルーブクラック性がいずれも低下している。しかし、耐摩耗性は向上している。
【0057】
上記比較例4については、ラグ溝の第1薄ゴム層の厚みを、2.0mmを超える2.5mmとしたことにより、実施例2に比べ、ラグ溝における耐グルーブクラック性及びショルダー溝における耐グルーブクラック性がいずれも向上しているが、耐摩耗性は大きく低下している。
【0058】
上記従来例については、ラグ溝及びショルダー溝に薄ゴム層を設けていないので、ラグ溝における耐グルーブクラック性及びショルダー溝における耐グルーブクラック性がいずれも低下している。しかし、耐摩耗性は向上している。
【0059】
以上の結果から、ラグ溝及びショルダー溝の薄ゴム層は、300%モジュラスが9.0MPa以下であることが好結果を生むことが判明した。また、ラグ溝びショルダー溝の薄ゴム層の厚みは1.0mm〜2.0mmの範囲が好適であり、1.0mm未満であると、耐摩耗性は向上するが、ラグ溝における耐グルーブクラック性が低下し、2.0mmを超えるとラグ溝における耐グルーブクラック性は向上するが、耐摩耗性が大きく低下することが判明した。したがって、本発明の範囲に含まれる実施例1、2及び2−1の構成については良好な結果が出たが、本発明の範囲に含まれない比較例1〜4及び従来例については、結果は芳しくなかった。
【0060】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0061】
T……空気入りタイヤ
1……ビードコア
2……カーカス
3……ベルト層
4……タイヤトレッド
5……ショルダー部
6……ラグ溝
7……ラグ
8……ショルダー溝
9……メディエイト部
10…センター副溝
11…センター部
12…センター主溝
20…第1薄ゴム層
21…第2薄ゴム層
図1
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