【実施例1】
【0025】
図3は実施例1を示し、
図4〜図
6は実施例1の変更例であって、
ショルダー部におけるラグ溝を第1薄ゴム層により被覆するこを必須とする実施例1の
ラグ溝以外の薄ゴム層の配置に関するバリエーションの例示である。なお、タイヤは赤道(タイヤ幅中心を通る周方向線)を中心として左右対称を前提とし、
図3〜図
6は、いずれもタイヤの半断面を示している。また、各溝は、溝壁及び溝底を含むものとする。さらに、薄ゴム層が形成されていない部分
も一部に存在する。
【0026】
図3に示す実施例1の空気入りタイヤは、タイヤトレッド4においてショルダー部5のラグ溝6を含む周方向全面に第1薄ゴム層20が形成されており、ショルダー溝8にもその表面に第1薄ゴム層20が形成されている。それ以外のメディエイト部9、センター副溝10、センター部11及びセンター主溝の表面には第2薄ゴム層21が形成されている。
【0027】
第1薄ゴム層20及び第2薄ゴム層21は、いずれも300%モジュラスが9.0MPaのゴム性物質から構成されている。なお、第1薄ゴム層及び第2薄ゴム層は、300%モジュラスが9.0MPaのゴム性物質に限るものではなく、300%モジュラスが9.0MPa以下のゴム性物質であればよい。また、第1薄ゴム層20の厚みと第2薄ゴム層21の厚みとの比率は2対1であり、本実施例では第1薄ゴム層20の厚みは2.0mmに構成されている。なお、第1薄ゴム層は第2薄ゴム層より厚みが大であればよい。また、第1薄ゴム層の厚みは1.0mm〜2.0mmの範囲が好ましい。
【0028】
図4に示す実施例1の変更例1の空気入りタイヤは、タイヤトレッド4においてショルダー部5の
ラグ溝6を含む周方向全面及びショルダー溝8の表面に厚み2.0mmの第1薄ゴム層20が形成されている点は、実施例1と同様である。変更例1においては、メディエイト部9、センター副溝10の表面には厚み1.0mmの第2薄ゴム層21が形成されているが、センター部11及びセンター主溝に
はいずれの薄ゴム層も形成されていない。
【0029】
図5に示す実施例1の変更例2の空気入りタイヤは、タイヤトレッド4においてショルダー部5の
ラグ溝6を含む周方向全面及びショルダー溝8の表面に厚み2.0mmの第1薄ゴム層20が形成されている点は、実施例1と同様である。変更例2においては、メディエイト部9
はいずれの薄ゴム層も形成されておらず、センター副溝10、センター部11及びセンター主溝の表面には厚み1.0mmの第2薄ゴム層21が形成されている。
【0030】
図6に示す実施例1の変更例3の空気入りタイヤは、タイヤトレッド4においてショルダー部5の
ラグ溝6を含む周方向全面及びショルダー溝8の表面に厚み2.0mmの第1薄ゴム層20が形成されている点は、実施例1と同様である。変更例3においては、メディエイト部9、センター部11及びセンター主溝に
はいずれの薄ゴム層も形成されておらず、センター副溝10の表面には厚み1.0mmの第2薄ゴム層21が形成されている。
【実施例2】
【0031】
図
7は実施例2を示し、図
8〜
図11は実施例2の変更例であって、
ショルダー部におけるラグ溝を第1薄ゴム層により被覆するこを必須とする実施例2の
ラグ溝以外の薄ゴム層の配置に関するバリエーションの例示である。なお、タイヤは赤道(タイヤ幅中心を通る周方向線)を中心として左右対称を前提とし、
図8〜
図11は、いずれもタイヤの半断面を示している。また、各溝は、溝壁及び溝底を含むものとする。さらに、薄ゴム層が形成されていない部分
も一部に存在する。
【0032】
図
7に示す実施例2の空気入りタイヤは、タイヤトレッド4においてショルダー部5のラグ溝6を含む周方向全面に第1薄ゴム層20が形成され、ショルダー溝8の表面に厚み1.0mmの第2薄ゴム層21が形成されており、それ以外のメディエイト部9、センター副溝10、センター部11及びセンター主溝の表面には第2薄ゴム層21が形成されている。
【0033】
第1薄ゴム層20及び第2薄ゴム層21は、いずれも300%モジュラスが9.0MPaのゴム性物質から構成されている。なお、第1薄ゴム層及び第2薄ゴム層は、300%モジュラスが9.0MPaのゴム性物質に限るものではなく、300%モジュラスが9.0MPa以下のゴム性物質であればよい。また、第1薄ゴム層20の厚みと第2薄ゴム層21の厚みとの比率は2対1であり、本実施例では第1薄ゴム層20の厚みは2.0mmに構成されている。なお、第1薄ゴム層は第2薄ゴム層より厚みが大であればよい。また、第1薄ゴム層の厚みは1.0mm〜2.0mmの範囲が好ましい。
【0034】
図
8に示す実施例2の変更例1の空気入りタイヤは、タイヤトレッド4においてショルダー部5の
ラグ溝6を含む周方向全面に厚み2.0mmの第1薄ゴム層20が形成され、ショルダー溝8の表面に厚み1.0mmの第2薄ゴム層21が形成されている点は、実施例2と同様である。変更例1においては、メディエイト部9、センター副溝10の表面には厚み1.0mmの第2薄ゴム層21が形成されているが、センター部11及びセンター主溝に
はいずれの薄ゴム層も形成されていない。
【0035】
図
9に示す実施例2の変更例2の空気入りタイヤは、タイヤトレッド4においてショルダー部5の
ラグ溝6を含む周方向全面に厚み2.0mmの第1薄ゴム層20が形成され、ショルダー溝8の表面に厚み1.0mmの第2薄ゴム層21が形成されている点は、実施例2と同様である。変更例2においては、メディエイト部9
はいずれの薄ゴム層も形成されておらず、センター副溝10、センター部11及びセンター主溝の表面には厚み1.0mmの第2薄ゴム層21が形成されている。
【0036】
図10に示す実施例2の変更例3の空気入りタイヤは、タイヤトレッド4においてショルダー部5の
ラグ溝6を含む周方向全面に厚み2.0mmの第1薄ゴム層20が形成され、ショルダー溝8の表面に厚み1.0mmの第2薄ゴム層21が形成されている点は、実施例2と同様である。変更例3においては、メディエイト部9、センター部11及びセンター主溝
にはいずれの薄ゴム層も形成されておらず、センター副溝10の表面には厚み1.0mmの第2薄ゴム層21が形成されている。
【0037】
図11に示す実施例2の変更例4の空気入りタイヤは、タイヤトレッド4においてショルダー部5の周方向全面に厚み2.0mmの第1薄ゴム層20が形成され、ショルダー溝8の表面に厚み1.0mmの第2薄ゴム層21が形成されている点は、実施例2と同様である。変更例4においては、メディエイト部9、センター副溝10、センター部11及びセンター主溝の表面に
はいずれの薄ゴム層
も形成されていない。
【0038】
[実施例2−1]
実施例2−1の空気入りタイヤは、図示を省略するが、実施例2における第1薄ゴム層20の厚みと第2薄ゴム層21の厚みとを変化させた以外は、実施例2と同様である。すなわち、第1薄ゴム層20の厚みは1.0mmであり、第2薄ゴム層21の厚みは第1薄ゴム層20の厚みの2分の1である0.5mmである。
【0039】
[比較試験]
次に本発明に係る空気入りタイヤについて、以下の条件の下に、上記の実施例1、2及び2−1、下記の比較例1〜4及び従来例について比較試験を行った。試験方法はグルーブクラック試験、摩耗試験である。
【0040】
グルーブクラック試験とは熱劣化させたタイヤにオゾンを照射しながら所定の内圧、所定の荷重を与え、回転ドラムに押し付けて繰り返し歪を続けさせることにより市場で発生するトレッドグルーブ及びフレックスラインのクラック現象を再現し評価するものである。表中の耐グルーブクラック性はグルーブクラック試験の成績であり、比較例1の指数を100とし、指数が高いほうが耐グルーブクラック性に優れている。
【0041】
摩耗試験とは実車にタイヤを装着してアライメントを調整し、規定のコースを走行後、試験前との摩耗量を比較評価する。表中の摩耗性とは、摩耗試験の成績であり、比較例1の摩耗指数を100として表したものである。指数が高い方が摩耗性に優れる。
【0042】
[比較例1の構成]
図12に示す比較例1の空気入りタイヤは、タイヤトレッド4においてショルダー部5のラグ溝6を含む周方向全面、ショルダー溝8、メディエイト部9、センター副溝10、センター部11及びセンター主溝の表面に第2薄ゴム層21
のみを形成し
、厚みが異なる第1薄ゴム層は形成されていないものである。
【0043】
第2薄ゴム層21は300%モジュラスが9.0MPaのゴム性物質から構成されている。また、第2薄ゴム層21の厚みは1.0mmに構成されている。
【0044】
[比較例2の構成]
比較例2の空気入りタイヤは、図示を省略するが、タイヤトレッドにおいてショルダー部のラグ溝を含む周方向全面に第1薄ゴム層を形成し、ショルダー溝の表面に第2薄ゴム層を形成したものである。
【0045】
第1薄ゴム層及び第2薄ゴム層は300%モジュラスが10.0MPaのゴム性物質から構成されている。また、第1薄ゴム層の厚みは2.0mm、第2薄ゴム層の厚みは1.0mmに構成されている。
【0046】
[比較例3の構成]
比較例3の空気入りタイヤは、図示を省略するが、タイヤトレッドにおいてショルダー部のラグ溝を含む周方向全面に第1薄ゴム層を形成し、ショルダー溝の表面に第2薄ゴム層を形成したものである。
【0047】
第1薄ゴム層及び第2薄ゴム層は300%モジュラスが9.0MPaのゴム性物質から構成されている。また、第1薄ゴム層の厚みは0.5mm、第2薄ゴム層の厚みは0.25mmに構成されている。
【0048】
[比較例4の構成]
比較例4の空気入りタイヤは、図示を省略するが、タイヤトレッドにおいてショルダー部のラグ溝を含む周方向全面に第1薄ゴム層を形成し、ショルダー溝の表面に第2薄ゴム層を形成したものである。
【0049】
第1薄ゴム層及び第2薄ゴム層は300%モジュラスが9.0MPaのゴム性物質から構成されている。また、第1薄ゴム層の厚みは2.5mm、第2薄ゴム層の厚みは1.25mmに構成されている。
【0050】
[従来例の構成]
従来例の空気入りタイヤは、図示は省略するが、薄ゴム層の厚みが0.0mm、すなわち、タイヤトレッドの表面に薄ゴム層が形成されていない空気入りタイヤである。
【0051】
【表1】
【0052】
[比較試験の結果]
上記実施例1については、ラグ溝の薄ゴム層を、比較例1の1.0mmに比べ、2.0mmにしたことにより、比較例1に比べてラグ溝における耐グルーブクラック性が向上している。また、ショルダー溝の薄ゴム層を、比較例1の1.0mmに比べ、2.0mmにしたことにより、比較例1に比べ、ショルダー溝における耐グルーブクラック性が向上している。
【0053】
上記実施例2については、ラグ溝の薄ゴム層を、比較例1の1.0mmに比べ、2.0mmにしたことにより、比較例1に比べてラグ溝における耐グルーブクラック性が向上している。
【0054】
上記実施例2−1については、ショルダー溝の薄ゴム層を、比較例1の1.0mmに比べ、0.5mmにしたことにより、ショルダー部の摩耗性が向上している。
【0055】
上記比較例2については、第1薄ゴム層及び第2薄ゴム層の300%モジュラスが9.0MPa以上の10.0MPaとしたことにより、実施例2に比べ、ラグ溝における耐グルーブクラック性及びショルダー溝における耐グルーブクラック性がいずれも低下している。しかし、耐摩耗性は向上している。
【0056】
上記比較例3については、ラグ溝の
第1薄ゴム層の厚みを、1.0mm未満の0.5mmとしたことにより、実施例2−1に比べ、ラグ溝における耐グルーブクラック性及びショルダー溝における耐グルーブクラック性がいずれも低下している。しかし、耐摩耗性は向上している。
【0057】
上記比較例4については、ラグ溝の
第1薄ゴム層の厚みを、2.0mmを超える2.5mmとしたことにより、実施例2に比べ、ラグ溝における耐グルーブクラック性及びショルダー溝における耐グルーブクラック性がいずれも向上しているが、耐摩耗性は大きく低下している。
【0058】
上記従来例については、ラグ溝及びショルダー溝に薄ゴム層を設けていないので、ラグ溝における耐グルーブクラック性及びショルダー溝における耐グルーブクラック性がいずれも低下している。しかし、耐摩耗性は向上している。
【0059】
以上の結果から、ラグ溝及びショルダー溝の薄ゴム層は、300%モジュラスが9.0MPa以下であることが好結果を生むことが判明した。また、ラグ溝びショルダー溝の薄ゴム層の厚みは1.0mm〜2.0mmの範囲が好適であり、1.0mm未満であると、耐摩耗性は向上するが、ラグ溝における耐グルーブクラック性が低下し、2.0mmを超えるとラグ溝における耐グルーブクラック性は向上するが、耐摩耗性が大きく低下することが判明した。したがって、本発明の範囲に含まれる実施例1、2及び2−1の構成については良好な結果が出たが、本発明の範囲に含まれない比較例1〜4及び従来例については、結果は芳しくなかった。
【0060】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。