【文献】
Curr. Biol.,1993年,vol.3, no.10,pp.658-667
【文献】
Nat. Biotechnol.,2005年,vol.23, no.9,pp.1126-1136
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第一および第二のポリペプチドがそれぞれ、VH、CH1、ヒンジ、CH2およびCH3ドメインを、N末端からC末端の方向で互いに関連してVH−CH1−ヒンジ−CH2−CH3に配して含む、請求項1に記載の抗体。
第一ポリペプチドのVHドメインがテザーによって第三ポリペプチドのVLドメインに連結され、第二ポリペプチドのVHドメインがテザーによって第四ポリペプチドのVLドメインに連結される、請求項5に記載の抗体。
第三ポリペプチドがさらに第一CLドメインを含み、該第一のVLおよびCLドメインがN末端からC末端方向にVL−CLで第三ポリペプチド内に互いに関連して配置されており、第四ポリペプチドがさらに第二CLドメインを含み、該第二のVLおよびCLドメインがN末端からC末端方向にVL−CLで第四ポリペプチド内に互いに関連して配置されている、請求項5に記載の抗体。
第一ポリペプチドが、VH、CH1、ヒンジ、CH2およびCH3ドメインを、N末端からC末端の方向で互いに関連してVH−CH1−ヒンジ−CH2−CH3に配して含む、請求項10に記載の抗体。
前記定常ドメインがCH3ドメインであり、第一CCが第一ポリペプチドのCH3ドメインにC末端で連結し、第二CCが第二ポリペプチドのCH3ドメインにC末端で連結している、請求項1から22のいずれか一項に記載の抗体。
前記テザー又は前記リンカーは、以下のエンドペプチダーゼ:フューリン、トロンビン、Genenase、Lys−C、Arg−C、Asp−N、Glu−C、第Xa因子、タバコエッチ病ウイルスプロテアーゼ(TEV)、エンテロキナーゼ、ヒトライノウイルスC3プロテアーゼ(HRV C3)およびキニノゲナーゼの一又は複数によって切断可能である、請求項1から23および33のいずれか一項に記載の抗体。
前記カオトロピック剤又は中性界面活性剤が、アルギニン、グアニジン-HCl、尿素、過塩素酸リチウム、ヒスチジン、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ツイーン、トリトンまたはNP−40である、請求項47に記載の方法。
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、新規の改変タンパク質、多特異性タンパク質複合体、例えば多特異性抗体、それらの構築及び製造方法に関する。本発明はまた、多特異性タンパク質複合体を得る際に有用な技術の新規な適用法に関する。
【背景技術】
【0002】
商業的及び治療的目的のために有用で計測可能である多特異性抗体を構築する技術を発見することは困難であった。多くの方法が試されたが、ほとんど全ては、いつかの問題の中でも特に、可溶性が低い、哺乳動物細胞内で発現しない、ヘテロ二量体形成の収率低下を示す、製造に対する高度な技術、免疫原性、生体内での短い半減期、安定性低下などの顕著な欠点がある(例えば、Hollinger et al., (1993) PNAS 90:6444-6448;米国特許第5932448号;米国特許第6833441号;米国特許第5591828号;米国特許第7129330号;米国特許第7507796号;Fischer et al., (2007) Pathobiology 74:3-14;Booy (2006) Arch. Immunol. Ther. Exp. 54: 85-101;Cao et al (2003) 55:171-197;及びMarvin et al., (2006) Current Opinion in Drug Discovery & Development 9(2): 184-193)。ゆえに、多特異性抗体を製造するための技術および方法の改善が必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、新規なタンパク質複合体およびタンパク質複合体の作製及び製造のための方法を提供する。一態様では、本発明は、Fc CH成分に連結されるコイルドコイルドメインを包含し、このコイルドコイルドメインは必要に応じてFc含有タンパク質から切断可能であっても切断可能でなくてもよい。他の態様では、本発明は、テザーおよびFc CH成分複合体を含むタンパク質を包含し、このテザーはタンパク質から切断可能であっても切断可能でなくてもよい。他の態様では、本発明は、好ましくはタンパク質複合体を形成することが可能な、コイルドコイル、テザーおよびFc CH成分を含むタンパク質を包含し、このテザーおよび/またはコイルドコイルは所望の効果に応じてタンパク質から切断可能であっても切断可能でなくてもよい。他の態様では、本発明は、テザーを含むタンパク質を調製する方法を提供し、このテザーは宿主細胞によって切断されるかまたはインビトロで化学的に又は酵素反応によって切断される。他の態様では、本発明は、好ましくはタンパク質複合体を形成することが可能な、コイルドコイル、テザーおよびFc CH成分を含むタンパク質を包含し、このテザーおよび/またはコイルドコイルは、該タンパク質を発現し、該タンパク質からテザーおよび/またはコイルドコイルを切断することが可能な酵素を過剰に発現する宿主細胞によってタンパク質から切断可能である。
【0004】
他の態様では、本発明は、コイルドコイルとテザーとを含むタンパク質又はタンパク質複合体の製造方法を提供し、このテザーおよび/またはコイルドコイルは宿主細胞によって切断されるかまたはインビトロで化学的に又は酵素反応によって切断される。ある特定の実施態様では、タンパク質複合体はさらにFc CH成分を含む。他の態様では、本発明は、ヘテロマーのタンパク質複合体の製造方法であって、同じまたは異なる組換え核酸配列から2つの異なるタンパク質を発現する条件下で宿主細胞を培養する工程を含み、このとき各タンパク質がコイルドコイルドメインとテザーとを含む方法を包含する。更なる態様では、宿主細胞は、テザーおよび/またはコイルドコイルを切断することが可能な酵素をコードする組換え核酸配列を含む。一実施態様では、製造方法はさらに、宿主細胞によって作られるタンパク質を単離する工程を含む。他の実施態様では、製造方法はさらに、宿主細胞によって製造されたタンパク質からテザーおよび/またはコイルドコイルを切断する工程を含む。
【0005】
他の態様では、本発明は、テザーおよび/またはコイルドコイルの有無にかかわらず本明細書において記述されるタンパク質複合体を包含する。本明細書において提供される多くの進歩および利点に加えて、本発明は、実質的に同種のヘテロ多量体複合体を製造するための、単一の、効率的な、収率の高い生産方法を提供する。
【0006】
ある好適な実施態様では、本発明は、2以上のポリペプチドを含んでなるタンパク質複合体であって、このとき、
第一ポリペプチドが第一コイルドコイルドメイン(CC)と第一Fc CH成分(FcCH)とを含み、そして、
第二ポリペプチドが、(1)第二コイルドコイルドメイン(CC)と第二FcCHを含み、
このとき、第一CCと第二CCが互いに複合体化し、そして、第一FcCHと第二FcCHが互いに複合体化している、タンパク質複合体を提供する。
一実施態様では、第一CCは本明細書中の式Iの配列を含み、第二CCは本明細書中の式IIの配列を含む。
第二の態様では、本発明は、(a)式Iの7アミノ酸繰り返しを含む第一コイルドコイルドメイン(CC)を含む第一ポリペプチドと、(b)Fc CH成分と、式IIの7アミノ酸繰り返しを含む第二コイルドコイル(CC)とを含む第二ポリペプチド、とを含んでなるタンパク質複合体を特徴とし、このとき式IおよびIIのnは2以上であり、各々の7アミノ酸繰り返しにおいて、第一CCは第二CC内のX'7残基に対して電荷が逆であるX5残基を含み、第一CCは第二CC内のX'5残基に対して電荷が逆であるX7残基を含む。
【0007】
一実施態様では、第一ポリペプチドはさらにVHドメインとVLドメインとを含み、第二ポリペプチドはさらにVHとVLドメインとを含み、このとき各々のポリペプチドのVHおよびVLドメインは、N末端からC末端の方向でVL−CL−テザー−VHと互いに連結する。
更なる態様では、各々のポリペプチドのVHドメインは互いに異なる。他の実施態様では、各々のポリペプチドのVLドメインは互いに異なる。
一実施態様では、本発明のタンパク質複合体はヒンジ領域を含み、このときヒンジ領域はそのヒンジ領域にK222A突然変異を、そのヒンジ領域にC220A突然変異を、そのヒンジ領域にK222AおよびC220A突然変異を含む。
一実施態様では、タンパク質複合体は、抗体、イムノアドヘシン、ペプチボディ又はアフィボディからなる群から選択される。ゆえに、更なる実施態様によると、第一および/または第二ポリペプチドはさらに、抗体の標的結合配列(例えばVH又はVLドメイン)、ペプチボディ(例えばペプチド)、イムノアドヘシン(例えば細胞外ドメイン)又は標的を結合する配列を含む骨格タンパク質を含む。
一実施態様によると、タンパク質複合体は一アーム抗体である。
【0008】
一態様では、本発明は、(a)式Iの7アミノ酸繰り返しを含む第一コイルドコイルドメイン(CC)を含む第一ポリペプチドであって、
(X
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7)
n (式I)(配列番号:29)
X
1は疎水性アミノ酸残基又はアスパラギンであり、
X
2、X
3およびX
6は各々任意のアミノ酸残基であり、
X
4は疎水性アミノ酸残基であり、
X
5およびX
7は各々荷電アミノ酸残基である、第一ポリペプチドと、
(b)式IIの7アミノ酸繰り返しを含む第二コイルドコイルドメイン(CC)を含む第二ポリペプチドであって、
(X'
1 X'
2 X'
3 X'
4 X'
5 X'
6 X'
7)
n (式II)(配列番号:30)
X'
1は疎水性アミノ酸残基又はアスパラギンであり、
X'
2、X'
3およびX'
6は各々任意のアミノ酸残基であり、
X'
4は疎水性アミノ酸残基であり、
X'
5およびX'
7は各々荷電アミノ酸残基である、第二ポリペプチドと、
を含むコイルドコイルを含んでなるタンパク質複合体であって、
このとき式IおよびIIのnが2以上であり、そして、各々の7アミノ酸繰り返しにおいて、第一CCは第二CC内のX'
7残基に対して電荷が逆であるX
5残基を含み、第一CCは第二CC内のX'
5残基に対して電荷が逆であるX
7残基を含む、タンパク質複合体を提供する。
一実施態様では、第一および第二のポリペプチドはそれぞれVHおよびCH1ドメインを含み、それぞれさらにヒンジドメインを含んでよい。他の実施態様では、第一および第二のポリペプチドはそれぞれさらに、CH2およびCH3ドメインを含む。さらに他の実施態様では、第一および第二のポリペプチドはそれぞれ、VH、CH1、ヒンジ、CH2およびCH3ドメインを、N末端からC末端の方向で互いに関連してVH−CH1−ヒンジ−CH2−CH3に配して含む。
【0009】
一態様では、本発明は、(a)式Iの7アミノ酸繰り返しを含む第一コイルドコイルドメイン(CC)とVHドメインとを含む第一ポリペプチドであって、
(X
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7)
n (式I)
X
1は疎水性アミノ酸残基又はアスパラギンであり、
X
2、X
3およびX
6は各々任意のアミノ酸残基であり、
X
4は疎水性アミノ酸残基であり、
X
5およびX
7は各々荷電アミノ酸残基である、第一ポリペプチドと、
(b)式IIの7アミノ酸繰り返しを含む第二コイルドコイルドメイン(CC)とVHドメインとを含む第二ポリペプチドであって、
(X'
1 X'
2 X'
3 X'
4 X'
5 X'
6 X'
7)
n (式II)
X'
1は疎水性アミノ酸残基又はアスパラギンであり、
X'
2、X'
3およびX'
6は各々任意のアミノ酸残基であり、
X'
4は疎水性アミノ酸残基であり、
X'
5およびX'
7は各々荷電アミノ酸残基である、第二ポリペプチドと、
を含んでなる抗体であって、
このとき式IおよびIIのnが2以上であり、そして、各々の7アミノ酸繰り返しにおいて、第一CCは第二CC内のX'
7残基に対して電荷が逆であるX
5残基を含み、第一CCは第二CC内のX'
5残基に対して電荷が逆であるX
7残基を含む、抗体を提供する。
ある実施態様では、第一および第二のポリペプチドはそれぞれVHおよびCH1ドメインを含み、それぞれさらにヒンジドメインを含んでよい。他の実施態様では、第一および第二のポリペプチドはそれぞれさらに、CH2およびCH3ドメインを含む。さらに他の実施態様では、第一および第二のポリペプチドはそれぞれ、VH、CH1、ヒンジ、CH2およびCH3ドメインを、N末端からC末端の方向で互いに関連してVH−CH1−ヒンジ−CH2−CH3に配して含む。
【0010】
具体的な実施態様では、抗体はさらに第三および第四のポリペプチドを含み、この第三ポリペプチドは第一VLドメインを含み、第四ポリペプチドは第二VLドメインを含む。ある実施態様では、第一ポリペプチドのVHドメインはテザーによって第三ポリペプチドのVLドメインに連結され、第二ポリペプチドのVHドメインはテザーによって第四ポリペプチドのVLドメインに連結される。他の実施態様では、第三ポリペプチドはさらに第一CLドメインを含み、このとき第一VLおよびCLドメインがN末端からC末端方向にVL−CLで第三ポリペプチド内に互いに関連して配置されており、第四ポリペプチドはさらに第二CLドメインを含み、このとき第二VLおよびCLドメインがN末端からC末端方向にVL−CLで第四ポリペプチド内に互いに関連して配置されている。
更なる実施態様では、第一VLドメインおよび第二VLドメインの配列は同じである。更なる実施態様では、第一および第二ポリペプチドのうちの少なくとも1のVHのN末端は、テザーによりCLのC末端に連結される。
【0011】
第二の態様では、本発明は、(a)式Iの7アミノ酸繰り返しを含む第一コイルドコイルドメイン(CC)とVHドメインとを含む第一ポリペプチドと、(b)CH2およびCH3ドメインと、式IIの7アミノ酸繰り返しを含む第二コイルドコイル(CC)とを含む第二ポリペプチド、とを含んでなる抗体を特徴とし、このとき式IおよびIIのnは2以上であり、各々の7アミノ酸繰り返しにおいて、第一CCは第二CC内のX'
7残基に対して電荷が逆であるX
5残基を含み、第一CCは第二CC内のX'
5残基に対して電荷が逆であるX
7残基を含む。
本発明の第二の態様の一実施態様では、第一ポリペプチドはVHおよびCH1ドメインを含み、さらにヒンジドメインを含んでよい。他の実施態様では、第一ポリペプチドはさらにCH2およびCH3ドメインを含む。本発明の第二の態様の更なる実施態様では、第一ポリペプチドは、VH、CH1、ヒンジ、CH2およびCH3ドメインを、N末端からC末端の方向で互いに関連してVH−CH1−ヒンジ−CH2−CH3に配して含む。本発明の第二の態様の更に他の実施態様では、抗体はさらに、VLドメインを含む第三ポリペプチドを含む。ある例では、第三ポリペプチドはさらにCLドメインを含み、VLおよびCLドメインはN末端からC末端の方向で互いに関連してVL−CLに配置される。本発明の第二の態様の更なる他の実施態様では、第一ポリペプチドのVHのN末端はテザーによりCLのC末端に連結される。
【0012】
一実施態様では、本発明の二アーム抗体は2ではなく1のテザーを含んでいるため、抗体が、(1)コイルドコイルドメインと本発明に係る軽鎖に繋がれた重鎖を含むポリペプチド、(2)コイルドコイルドメインと重鎖を含むポリペプチド、および(3)軽鎖を含むポリペプチドを含む。他の実施態様では、このような二アーム抗体を発現する宿主細胞が考えられる。
他の実施態様では、X
1、X'
1、X
4およびX'
4の何れかの疎水性アミノ酸残基は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、フェニルアラニンおよびメチオニンからなる群から選択される。他の実施態様では、X
5、X'
5、X
7およびX'
7の何れかの荷電アミノ酸残基は、リジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸およびグルタミン酸からなる群から選択される。更なる実施態様では、第一CCの少なくとも一の7アミノ酸繰り返しにおいて、X
1はアスパラギンであり、それぞれのX'
1は第二CCの少なくとも一の7アミノ酸繰り返しにおいてアスパラギンである。
更に他の実施態様では、第一CCは7アミノ酸繰り返しを含み、このときX
1はロイシン又はアスパラギンであり、X
2はアラニン又はグルタミンであり、X
3はアラニン又はグルタミンであり、X
4はロイシンであり、X
5はグルタミン酸であり、X
6はリジン又はトリプトファンであり、X
7はグルタミン酸であり、そして、第二CCは7アミノ酸繰り返しを含み、このときX'
1はロイシン又はアスパラギンであり、X'
2はアラニン又はグルタミンであり、X'
3はアラニン又はグルタミンであり、X'
4はロイシンであり、X'
5はリジンであり、X'
6はリジン又はトリプトファンであり、X'
7はリジンである。
【0013】
更なる実施態様では、式IおよびIIのnは3以上、例えば4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90又は100以上である。
更なる実施態様では、第一または第二のCCのうちの少なくとも1は、タンパク質の定常ドメインにC末端で連結されている。例えば、定常ドメインはCH3ドメインであり、第一CCは第一ポリペプチドのCH3ドメインにC末端で連結され、第二CCは第二ポリペプチドのCH3ドメインにC末端で連結されている。連結は、例えば切断可能なリンカー配列によるものである。他の実施態様では、Lys−Cエンドペプチダーゼ切断部位は、第一または第二のCCのうちの少なくとも1にN末端で位置する。
他の態様では、本発明は、VL、CL、テザー、VH、CH1、CH2およびCH3ドメインを、N末端からC末端の方向で互いに関連してVL−CL−テザー−VH−CH1−CH2−CH3(式III)に配して含む第一ポリペプチドを含む抗体を特徴とする。一実施態様では、抗体はさらに式IIIの第二ポリペプチドを含む。
特定の実施態様では、本発明の抗体は多特異性である。例えば、抗体は少なくとも2の抗原を結合することができるか、または同じ抗原上の少なくとも2のエピトープを結合することができる。他の実施態様では、抗体は二重特異性である。
【0014】
更なる実施態様では、本発明のタンパク質は、グリシン(G)およびセリン(S)残基を含むテザーを含む。一実施態様では、テザーは、例えば15から50のアミノ酸長である。特定の実施態様では、テザーは、20から32のアミノ酸長、例えば20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32のアミノ酸長である。一実施態様では、テザーはGGSリピートを含む。他の実施態様では、テザーは切断可能である。ある好適な実施態様では、テザーは、同じ酵素によってテザーのNおよびC末端の2つの部位で又はその近くで切断可能である。一実施態様では、テザーはフューリンのための切断部位を含む。更なる実施態様では、フューリン切断部位はRXRXRR(配列番号:25)であり、Xは任意のアミノ酸である。
更なる実施態様では、本発明の抗体は、Lys−Cエンドペプチダーゼ切断部位を取り除く突然変異を含む。ある例では、Lys−Cエンドペプチダーゼ切断部位を取り除く突然変異はヒンジドメインにある。例えば、抗体はK222A置換(EU番号付けシステム)を有する。
他の実施態様では、テザー又はリンカーは、以下のエンドペプチダーゼ:フューリン、トロンビン、Genenase、Lys−C、Arg−C、Asp−N、Glu−C、第Xa因子、タバコエッチ病ウイルスプロテアーゼ(TEV)、エンテロキナーゼ、ヒトライノウイルスC3プロテアーゼ(HRV C3)又はキニノゲナーゼの一又は複数によって切断可能である。特定の実施態様では、テザー又はリンカーは、アスパラギン−グリシンペプチド結合、例えばヒドロキシルアミンによって切断可能なアスパラギン−グリシンペプチド結合を含む。
一実施態様では、本発明の抗体はさらに、KnH技術を使用してCL/CH1におよび又はVH/VL界面に突然変異を含む。一実施態様では、本発明の多特異性抗体は、本発明のコイルドコイルとCL/CH1界面のノブ(knob)およびホール(hole)を使用して構築した。
【0015】
更なる実施態様では、本発明の抗体は、細胞障害性剤にコンジュゲートした定常領域を含む。
更に他の実施態様では、本発明の抗体は、真核細胞、例えばCHO細胞などの哺乳動物の細胞によって発現される。代替的実施態様では、抗体は、原核細胞、例えば大腸菌細胞によって発現される。
更なる態様では、本発明は、抗体などのタンパク質複合体の製造方法を特徴とする。したがって、本発明はいくつかの新規な態様を提供する。一実施態様では、この方法は、本発明のタンパク質をコードするベクターを含む細胞を培養培地内で培養する工程を含む。一実施態様では、方法はさらに、細胞又は培養培地からタンパク質を回収することを含む。他の実施態様では、方法はさらに、(a)プロテインAを含むカラム上に抗体を捕捉し、(b)カラムから抗体を溶出し、そして(b)カオトロピック剤又は中性(mild)界面活性剤を含有する溶液に溶出された抗体を希釈する工程を含む。
更に他の態様では、本発明は、溶液中にコイルドコイルを含有する抗体を維持する方法を特徴とする。本方法は、カオトロピック剤又は中性(mild)界面活性剤の存在下で抗体を維持することを含む。本方法で使われうるカオトロピック剤又は中性(mild)界面活性剤の例には、アルギニン、グアニジン-HCl、尿素、過塩素酸リチウム、ヒスチジン、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ツイーン、トリトンおよびNP−40が含まれる。
【0016】
一実施態様では、本発明のヘテロ多量体複合体は2以上の標的分子に結合する。他の実施態様では、ヘテロ多量体複合体中の各ポリペプチドは異なる標的分子に結合する。更に他の実施態様では、ヘテロ多量体複合体は、結合する標的分子(一又は複数)の生物学的活性を阻害する。一実施態様では、所望の生物学的効果が、エフェクター細胞(例えばTリンパ球、ナチュラルキラー細胞(NK)、マクロファージ又は他の単核細胞)の非常に近くに枯渇されたか不活性化された細胞を運ぶことである場合、標的分子のうちの1つはCD3、CD16又はCD64であってよい。
一実施態様によると、本発明のヘテロ多量体複合体は、IL-1αおよびIL-1β、IL-12およびIL-18;IL-13およびIL-9;IL-13およびIL-4;IL-13およびIL-5;IL-5およびIL-4;IL-13およびIL-1β;IL-13およびIL−25;IL-13およびTARC;IL-13およびMDC;IL-13およびMEF;IL-13およびTGF-β;IL-13およびLHRアゴニスト;IL-12およびTWEAK、IL-13およびCL25;IL-13およびSPRR2a;IL-13およびSPRR2b;IL−13およびADAM8、IL-13およびPED2、IL17AおよびIL17F、CD3およびCD19、CD138およびCD20;CD138およびCD40;CD19およびCD20;CD20およびCD3;CD38およびCD138;CD38およびCD20;CD38およびCD40;CD40およびCD20;CD-8およびIL-6;CD20およびBR3、TNFαおよびTGF-β、TNFαおよびIL−1β;TNFαおよびIL−2、TNFαおよびIL-3、TNFαおよびIL-4、TNFαおよびIL-5、TNFαおよびIL6、TNFαおよびIL8、TNFαおよびIL-9、TNFαおよびIL-10、TNFαおよびIL-11、TNFαおよびIL-12、TNFαおよびIL-13、TNFαおよびIL-14、TNFαおよびIL-15、TNFαおよびIL-16、TNFαおよびIL-17、TNFαおよびIL-18、TNFαおよびIL-19、TNFαおよびIL-20、TNFαおよびIL-23、TNFαおよびIFNα、TNFαおよびCD4、TNFαおよびVEGF、TNFαおよびMIF、TNFαおよびICAM-1、TNFαおよびPGE4、TNFαおよびPEG2、TNFαおよびRANKリガンド、TNFαおよびTe38;TNFαおよびBAFF;TNFαおよびCD22;TNFαおよびCTLA-4;TNFαおよびGP130;TNFαおよびIL-12p40;VEGFおよびHER2、VEGF−AおよびHER2、VEGF−AおよびPDGF、HER1およびHER2、VEGF−AおよびVEGF−C、VEGF−CおよびVEGF−D、HER2およびDR5、VEGFおよびIL-8、VEGFおよびMET、VEGFRおよびMETレセプター、VEGFRおよびEGFR、HER2およびCD64、HER2およびCD3、HER2およびCD16、HER2およびHER3;EGFRおよびHER2、EGFRおよびHER3、EGFRおよびHER4、IL−13およびCD40L、IL4およびCD40L、TNFR1およびIL−1R、TNFR1およびIL−6RおよびTNFR1およびIL−18R、EpCAMおよびCD3、MAPGおよびCD28、EGFRおよびCD64、CSPGsおよびRGM A;CTLA-4およびBTNO2;IGF1およびIGF2;IGF1/2およびErb2B;MAGおよびRGM A;NgRおよびRGM A;NogoAおよびRGM A;OMGpおよびRGM A;PDL−IおよびCTLA-4;およびRGM AおよびRGM Bからなる群から選択される少なくとも2つの標的分子に結合する。
【0017】
更なる実施態様では、本発明は、配列番号:1の配列を含む第一重鎖と、配列番号:2の配列を含む第二重鎖と、配列番号:3の配列を含む軽鎖とを含む単離された抗体であって、FcεR1およびFcγR2bを特異的に結合する単離された抗体を特徴とする。
他の実施態様では、本発明は、配列番号:4の配列を含む第一重鎖と、配列番号:5の配列を含む第二重鎖と、配列番号:6の配列を含む軽鎖とを含む単離された抗体であって、HER2を特異的に結合する単離された抗体を特徴とする。
更に他の実施態様では、本発明は、配列番号:7の配列を含む第一重鎖と、配列番号:5の配列を含む第二重鎖と、配列番号:8の配列を含む軽鎖とを含む単離された抗体であって、EGFRを特異的に結合する単離された抗体を特徴とする。
更なる実施態様では、本発明は、配列番号:9の配列を含む第一軽鎖配列及び第一重鎖配列と、配列番号:10の配列を含む第二軽鎖配列及び第二重鎖配列とを含む単離された抗体であって、HER2およびEGFRを特異的に結合する単離された抗体を特徴とする。
更なる実施態様では、本発明は、配列番号:11の配列を含む第一軽鎖配列及び第一重鎖配列と、配列番号:10の配列を含む第二軽鎖配列及び第二重鎖配列とを含む単離された抗体であって、HER2およびEGFRを特異的に結合する単離された抗体を特徴とする。
【0018】
また、本発明は、治療の方法における本明細書中に記載の方法によって作製された抗体の使用を特徴とする。一実施態様では、本発明は、被検体のアレルギー性または炎症性の応答(例えば自己免疫性疾患)を治療する方法における、FcεR1およびFcγR2bを特異的に結合する抗体の使用を特徴とする。本方法は、被検体のアレルギー性または炎症性の応答を治療するために十分な時間と量で、被検体に抗体又は抗体断片を投与することを含む。他の実施態様では、本発明は、被検体の腫瘍を治療する方法におけるHER2又はEGFR(またはHER2およびEGFRの両方)を特異的に結合する抗体の使用を特徴とする。この方法は、被検体の腫瘍を治療するために十分な時間と量で、被検体に抗体又は抗体断片を投与することを含む。
特定の実施態様では、本明細書に記載する治療の方法は、コイルドコイルおよび/またはテザーを欠く抗体断片の使用を包含する。この実施態様では、コイルドコイルおよび/またはテザー配列は、製造後の抗体、及び治療的投与に使用される操作された後の抗体から切断される。更なる実施態様では、治療の方法は、被検体に有効量の第二薬剤を投与することを包含する。第二薬剤は、他の抗体ないし抗体断片、化学療法剤、細胞障害性剤、抗血管形成剤、免疫抑制剤、プロドラッグ、サイトカイン、サイトカインアンタゴニスト、細胞障害性放射線療法、副腎皮質ステロイド、制吐剤、癌ワクチン、鎮痛剤又は増殖阻害性剤を含有してよい。第二薬剤は、第一薬剤(例えば抗体ないし抗体断片)の投与の前またはその投与の後に投与されうる。他の実施態様では、第二薬剤は第一薬剤と同時に投与される。
【0019】
更なる実施態様では、本発明は、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、17−18、26、31−32及び35−36のいずれか一又はこれらの組合せの配列をコードする単離されたポリヌクレオチド、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、17−18、26、31−32及び35−36のいずれか一又はこれらの組合せの配列を含有するポリヌクレオチドを含むベクター、及び該ベクターを含む宿主細胞を特徴とする。宿主細胞は、真核細胞、例えば酵母、昆虫又は哺乳動物の細胞であってよい。一実施態様では、哺乳動物細胞はチャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)である。また、宿主細胞は、原核細胞、例えば大腸菌細胞であってよい。他の実施態様では、本発明は、配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、17−18、26、31−32及び35−36の配列のいずれか一又はこれらの組合せを含む単離されたポリペプチドを特徴とする。
更なる実施態様
実施態様1.
(a)式Iの7アミノ酸繰り返しを含む第一コイルドコイルドメイン(CC)とVHドメインとを含む第一ポリペプチドであって、
(X1X2X3X4X5X6X7)n (式I)
X1は疎水性アミノ酸残基又はアスパラギンであり、
X2、X3およびX6は各々任意のアミノ酸残基であり、
X4は疎水性アミノ酸残基であり、
X5およびX7は各々荷電アミノ酸残基である、第一ポリペプチドと、
(b)式IIの7アミノ酸繰り返しを含む第二コイルドコイルドメイン(CC)とVHドメインとを含む第二ポリペプチドであって、
(X'1X'2X'3X'4X'5X'6X'7)n (式II)
X'1は疎水性アミノ酸残基又はアスパラギンであり、
X'2、X'3およびX'6は各々任意のアミノ酸残基であり、
X'4は疎水性アミノ酸残基であり、
X'5およびX'7は各々荷電アミノ酸残基である、第二ポリペプチドと、
を含む抗体であって、
このとき式IおよびIIのnが2以上であり、そして、
各々の7アミノ酸繰り返しにおいて、第一CCは第二CC内のX'7残基に対して電荷が逆であるX5残基を含み、第一CCは第二CC内のX'5残基に対して電荷が逆であるX7残基を含む、抗体。
実施態様2.
第一および第二のポリペプチドがそれぞれVHおよびCH1ドメインを含む、実施態様1に記載の抗体。
実施態様3.
第一および第二のポリペプチドがそれぞれさらにヒンジドメインを含む、実施態様2に記載の抗体。
実施態様4.
第一および第二のポリペプチドがそれぞれさらにCH2およびCH3ドメインを含む、実施態様1から3のいずれか一に記載の抗体。
実施態様5.
第一および第二のポリペプチドがそれぞれ、VH、CH1、ヒンジ、CH2およびCH3ドメインを、N末端からC末端の方向で互いに関連してVH−CH1−ヒンジ−CH2−CH3に配して含む、実施態様1に記載の抗体。
実施態様6.
抗体がさらに第三および第四のポリペプチドを含み、このとき該第三ポリペプチドが第一VLドメインを含み、該第四ポリペプチドが第二VLドメインを含む、実施態様1から5のいずれか一に記載の抗体。
実施態様7.
第一ポリペプチドのVHドメインがテザーによって第三ポリペプチドのVLドメインに連結され、第二ポリペプチドのVHドメインがテザーによって第四ポリペプチドのVLドメインに連結される、実施態様6に記載の抗体。
実施態様8.
第三ポリペプチドがさらに第一CLドメインを含み、このとき該第一のVLおよびCLドメインがN末端からC末端方向にVL−CLで第三ポリペプチド内に互いに関連して配置されており、第四ポリペプチドがさらに第二CLドメインを含み、このとき該第二のVLおよびCLドメインがN末端からC末端方向にVL−CLで第四ポリペプチド内に互いに関連して配置されている、実施態様6に記載の抗体。
実施態様9.
前記第一VLドメインおよび前記第二VLドメインの配列が同じである、実施態様6から8のいずれか一に記載の抗体。
実施態様10.
前記第一または前記第二のポリペプチドのうちの少なくとも1のVHのN末端が、テザーによりCLのC末端に連結している、実施態様1から9のいずれか一に記載の抗体。
実施態様11.
(a)式Iの7アミノ酸繰り返しを含む第一コイルドコイルドメイン(CC)とVHドメインとを含む第一ポリペプチドであって、
(X1X2X3X4X5X6X7)n (式I)
X1は疎水性アミノ酸残基又はアスパラギンであり、
X2、X3およびX6は各々任意のアミノ酸残基であり、
X4は疎水性アミノ酸残基であり、
X5およびX7は各々荷電アミノ酸残基である、第一ポリペプチドと、
(b)式IIの7アミノ酸繰り返しを含む第二コイルドコイル(CC)とCH2およびCH3ドメインとを含む第二ポリペプチドであって、
(X'1X'2X'3X'4X'5X'6X'7)n (式II)
X'1は疎水性アミノ酸残基又はアスパラギンであり、
X'2、X'3およびX'6は各々任意のアミノ酸残基であり、
X'4は疎水性アミノ酸残基であり、
X'5およびX'7は各々荷電アミノ酸残基である、第二ポリペプチドと、
を含んでなる抗体であって、
このとき式IおよびIIのnは2以上であり、
各々の7アミノ酸繰り返しにおいて、第一CCは第二CC内のX'7残基に対して電荷が逆であるX5残基を含み、第一CCは第二CC内のX'5残基に対して電荷が逆であるX7残基を含む、抗体。
実施態様12.
第一ポリペプチドがVHおよびCH1ドメインを含む、実施態様11に記載の抗体。
実施態様13.
第一ポリペプチドがさらにヒンジドメインを含む、実施態様12に記載の抗体。
実施態様14.
第一ポリペプチドがさらにCH2およびCH3ドメインを含む、実施態様12または13に記載の抗体。
実施態様15.
第一ポリペプチドが、VH、CH1、ヒンジ、CH2およびCH3ドメインを、N末端からC末端の方向で互いに関連してVH−CH1−ヒンジ−CH2−CH3に配して含む、実施態様11に記載の抗体。
実施態様16.
抗体がさらに第三ポリペプチドを含み、このときこの第三ポリペプチドがVLドメインを含む、実施態様11から15のいずれか一に記載の抗体。
実施態様17.
前記第三ポリペプチドがさらにCLドメインを含み、VLおよびCLドメインがN末端からC末端の方向で互いに関連してVL−CLに配置されている、実施態様16に記載の抗体。
実施態様18.
前記第一ポリペプチドのVHのN末端がテザーによりCLのC末端に連結している、実施態様11から17のいずれか一に記載の抗体。
実施態様19.
X1、X'1、X4およびX'4の何れかの疎水性アミノ酸残基が、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、フェニルアラニンおよびメチオニンからなる群から選択される、実施態様1から18のいずれか一に記載の抗体。
実施態様20.
X5、X'5、X7およびX'7の何れかの荷電アミノ酸残基が、リジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸およびグルタミン酸からなる群から選択される、実施態様1から19のいずれか一に記載の抗体。
実施態様21.
前記第一CCの少なくとも一の7アミノ酸繰り返しにおいて、X1がアスパラギンであり、それぞれのX'1が前記第二CCの少なくとも一の7アミノ酸繰り返しにおいてアスパラギンである、実施態様1から20のいずれか一に記載の抗体。
実施態様22.
(a)第一CCが7アミノ酸繰り返しを含み、このとき
X1がロイシン又はアスパラギンであり、
X2がアラニン又はグルタミンであり、
X3がアラニン又はグルタミンであり、
X4がロイシンであり、
X5がグルタミン酸であり、
X6がリジン又はトリプトファンであり、そして
X7がグルタミン酸であり、そして、
(b)第二CCが7アミノ酸繰り返しを含み、このとき
X'1がロイシン又はアスパラギンであり、
X'2がアラニン又はグルタミンであり、
X'3がアラニン又はグルタミンであり、
X'4がロイシンであり、
X'5がリジンであり、
X'6がリジン又はトリプトファンであり、そして
X'7がリジンである
、実施態様1から21のいずれか一に記載に記載の抗体。
実施態様23.
nが3以上である、実施態様1から22のいずれか一に記載の抗体。
実施態様24.
nが4以上である、実施態様23に記載の抗体。
実施態様25.
前記第一または前記第二のCCのうちの少なくとも1が、抗体の定常ドメインにC末端で連結している、実施態様1から24のいずれか一に記載の抗体。
実施態様26.
前記定常ドメインがCH3ドメインであり、第一CCが第一ポリペプチドのCH3ドメインにC末端で連結し、第二CCが第二ポリペプチドのCH3ドメインにC末端で連結している、実施態様25に記載の抗体。
実施態様27.
連結が、切断可能なリンカー配列によるものである、実施態様25または26の抗体。
実施態様28.
Lys−Cエンドペプチダーゼ切断部位が、前記第一または前記第二のCCのうちの少なくとも1にN末端で位置する、実施態様1から27のいずれか一に記載の抗体。
実施態様29.
VL、CL、テザー、VH、CH1、CH2およびCH3ドメインを、N末端からC末端の方向で互いに関連してVL−CL−テザー−VH−CH1−CH2−CH3(式III)に配して含む第一ポリペプチドを含んでなる抗体。
実施態様30.
抗体がさらに式IIIの第二ポリペプチドを含む、実施態様29に記載の抗体。
実施態様31.
抗体が多特異性である、実施態様1から9および30のいずれか一に記載の抗体。
実施態様32.
抗体が少なくとも2の抗原を結合することができる、実施態様31に記載の抗体。
実施態様33.
抗体が同じ抗原上の少なくとも2のエピトープを結合することができる、実施態様31に記載の抗体。
実施態様34.
前記抗体が二重特異性である、実施態様1から9および30のいずれか一に記載の抗体。 実施態様35.
前記テザーが、グリシン(G)およびセリン(S)残基を含む、実施態様7、10、18、29または30に記載の抗体。
実施態様36.
前記テザーが、15から50のアミノ酸長である、実施態様7、10、18、29、30または35に記載の抗体。
実施態様37.
前記テザーが、20から26のアミノ酸長である、実施態様36に記載の抗体。
実施態様38.
前記テザーがGGSリピートを含む、実施態様7、10、18、29、30および35から37のいずれか一に記載の抗体。
実施態様39.
前記テザーが切断可能である、実施態様7、10、18、29、30および35から38のいずれか一に記載の抗体。
実施態様40.
前記抗体が、Lys−Cエンドペプチダーゼ切断部位を取り除く突然変異を含む、実施態様28から39のいずれか一に記載の抗体。
実施態様41.
前記のLys−Cエンドペプチダーゼ切断部位を取り除く突然変異がヒンジドメインにある、実施態様40に記載の抗体。
実施態様42.
前記抗体がK222A置換(EU番号付けシステム)を有する、実施態様41に記載の抗体。 実施態様43.
前記テザー又は前記リンカーは、以下のエンドペプチダーゼ:フューリン、トロンビン、Genenase、Lys−C、Arg−C、Asp−N、Glu−C、第Xa因子、タバコエッチ病ウイルスプロテアーゼ(TEV)、エンテロキナーゼ、ヒトライノウイルスC3プロテアーゼ(HRV C3)およびキニノゲナーゼの一又は複数によって切断可能である、実施態様27または39に記載の抗体。
実施態様44.
前記テザー又は前記リンカーは、アスパラギン−グリシンペプチド結合を含む、実施態様27または39に記載の抗体。
実施態様45.
前記アスパラギン−グリシンペプチド結合がヒドロキシルアミンによって切断可能である、実施態様44に記載の抗体。
実施態様46.
前記抗体が、細胞障害性剤にコンジュゲートした定常領域を含む、実施態様1から45のいずれか一に記載の抗体。
実施態様47.
前記抗体が哺乳動物の細胞によって発現される、実施態様1から45のいずれか一に記載の抗体。
実施態様48.
前記哺乳動物の細胞がCHO細胞である、実施態様47に記載の抗体。
実施態様49.
前記抗体が、原核細胞によって発現される、実施態様1から45のいずれか一に記載の抗体。
実施態様50.
前記原核細胞が大腸菌である、実施態様49に記載の抗体。
実施態様51.
実施態様1から45のいずれか一に記載の抗体をコードするベクターを含む細胞を培養培地内で培養する工程を含む、抗体の製造方法。
実施態様52.
さらに、前記細胞又は前記培養培地から抗体を回収することを含む、実施態様51に記載の方法。
実施態様53.
さらに、
(a)プロテインAを含むカラム上に前記抗体を捕捉し、
(b)該カラムから抗体を溶出し、そして
(c)カオトロピック剤又は中性界面活性剤を含有する溶液に溶出された抗体を希釈する
工程を含む、実施態様52に記載の方法。
実施態様54.
カオトロピック剤又は中性界面活性剤の存在下でコイルドコイル含有抗体を維持することを含む、溶液中でコイルドコイル含有抗体を維持する方法。
実施態様55.
前記のカオトロピック剤又は中性界面活性剤が、アルギニン、グアニジン-HCl、尿素、過塩素酸リチウム、ヒスチジン、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ツイーン、トリトンまたはNP−40である、実施態様53または54に記載の方法。
【0020】
本発明の他の特徴および効果は、以下の詳細な説明、図面および特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】例示的なコイルドコイル(CC)構造のアミノ酸間のイオン性及び疎水性の相互作用を示す略図である。第一CCの残基はX1からX7と表示し、第二CCの残基はX'1からX'7と表示する。第一CCのX5残基と第二CCのX'7残基の間、第一CCのX7残基と第二CCのX'5残基の間のイオン相互作用を示す。加えて、X4とX'4およびX1とX'1の残基間の疎水的相互作用を示す。
【
図2A】例示的なACID.p1(配列番号:12)およびBASE.p1(配列番号:13)コイルドコイルヘテロ二量体化ドメインのアミノ酸配列とそれらをコードするDNA配列(それぞれ配列番号:21および配列番号:22)を示す。
【
図2B】例示的なACID.p1およびBASE.p1コイルドコイルヘテロ二量体化ドメイン間の相互作用と、それぞれのDNA配列、配列番号:21および配列番号:22を示す略図である。
【
図3】共通の軽鎖(共通のLC)、ヘテロ二量体コイルドコイル、および第一および第二の重鎖(HC1およびHC2)のヒンジ領域に突然変異(K222A;カバット番号付けシステム)を含む例示的な二重特異性抗体の構造を示す略図である。この突然変異によりLys−Cエンドペプチダーゼ切断部位が取り除かれる。
【
図4A】完全長重鎖(HC1)、VH及びCH1ドメインを欠く部分的な重鎖(HC2)、軽鎖(共通のLC)、ヘテロ二量体コイルドコイル、およびHC1のヒンジ領域に突然変異(K222A)を含有する例示的な一アーム抗体の構造を示す略図である。この突然変異によりLys−Cエンドペプチダーゼ切断部位が取り除かれる。
【
図4B】2つの完全長重鎖、一般的な軽鎖、コイルドコイル、及び重鎖定常領域の一つにコンジュゲートした細胞障害性剤を含有する例示的なコンジュゲート抗体の構造を示す略図である。細胞障害性剤は星で示す。
【
図5】例示的なテザー二重特異性抗体の構造を示す略図である。抗体は、2つの重鎖(HC1およびHC2)と2つの軽鎖(LC1およびLC2)を含有する。テザーは、HC1の可変重鎖のN末端をLC1の定常軽鎖のC末端に連結し、第二テザーは、HC2の可変重鎖のN末端をLC2の定常軽鎖のC末端に連結する。この例において、テザーは、グリシン グリシン セリン(GGS)リピートを含む。この図において、軽鎖(LC1およびLC2)は異なるが、テザー抗体はまた共通の軽鎖も含有しうる。例示的なテザー抗体はさらに、ヘテロ二量体コイルドコイルと、Lys−Cエンドペプチダーゼ切断部位を取り除くHC1およびHC2のヒンジ領域内の突然変異(K222A)とを含有する。
【
図6】例示的な重鎖(HC)および軽鎖(LC)、並びに可変重鎖のN末端を定常軽鎖のC末端に連結する例示的なテザーの構造を示す略図である。この例において、テザーによって繋がれる距離はおよそ92Å又はおよそ22アミノ酸長である。20、23及び26のアミノ酸長のテザーを試験した。
【
図7A】切断可能なテザーおよびヘテロ二量体コイルドコイルを含有する例示的な抗体の構造を示す略図である。図に示すように、例示的なテザーは、軽鎖(LC)のC末端を重鎖(HC)のN末端に連結する。テザーは、例えばLys−Cエンドペプチダーゼ、フューリン(PC1)又はNH
2OH(ヒドロキシルアミン)を使用して切断部位(X)で、抗体から切断されてよい。例示的な切断部位はテザーのN-およびC-末端に位置する。また、
図7Aに示す例示的な抗体はヘテロ二量体コイルドコイルを含有し、このコイルドコイルは、例えばLys−Cエンドペプチダーゼ、フューリン(PC1)又はNH
2OHを使用してコイルドコイルドメインのN末端の切断部位(X)で抗体から切断されうる。
【
図7B】例示的な切断可能なテザーを示す一連の略図である。一番上の線図は、フューリンによって切断され得、軽鎖(LC)のN末端と重鎖(HC)のC末端を連結する、配列番号:31内の例示的な26アミノ酸テザー配列(配列番号:17)を示す。フューリンは、テザーのN-およびC-末端の二塩基性部位(アルギニン-アルギニン)でテザー配列を切断することができる。下の線図は、テザー配列のN-およびC-末端のリジン残基でLys−Cエンドペプチダーゼによって切断されうる、配列番号:32内の例示的な26アミノ酸テザー配列(配列番号:18)を示す。
【
図8】重鎖(HC;抗FcγR2b-BASE.p1配列および抗FcεR1-ACID.p1配列)と、FcεR1およびFcγR2bの両方に結合する二重特異性抗体の共通の軽鎖(4d5 LC)の配列を示す。抗FcγR2b-BASE.p1配列(配列番号:1)は、BASE.p1コイルドコイルヘテロ二量体化ドメイン配列とヒンジ領域のK222A突然変異とを有する抗ヒトFcγR2bの重鎖配列を含有する。抗FcεR1-ACID.p1配列(配列番号:2)は、ACID.p1コイルドコイルヘテロ二量体化ドメイン配列とヒンジ領域のK222A突然変異とを有する抗ヒトFcεR1の重鎖配列を含有する。4d5抗体軽鎖(配列番号:3)は、この二重特異性抗体のFcγR2bおよびFcεR1 HCに共通している。
【
図9】例示的な一アーム抗体を生成するために用いた配列である。ある例示的な一アーム抗体は、HER2を特異的に結合し、抗HER2抗体1.ACID.p1配列(ACID.p1コイルドコイルヘテロ二量体化ドメイン配列とK222A突然変異を有する抗HER2抗体1 HC;配列番号:4)と、truncFC.BASE.p1配列(BASE.p1コイルドコイルヘテロ二量体化ドメイン配列を有するVHおよびCH1ドメインを欠いている重鎖;配列番号:5)と、抗HER2抗体1 LC配列(配列番号:6)とを含有する。他の例示的な一アーム抗体は、EGFRを特異的に結合し、抗EGFR(D1.5).ACID.p1配列(ACID.p1コイルドコイルヘテロ二量体化ドメイン配列とヒンジ領域のK222A突然変異を有する抗EGFR(D1.5)HC;配列番号:7)と、truncFC.BASE.p1配列(BASE.p1コイルドコイルヘテロ二量体化ドメイン配列を有するVHおよびCH1ドメインを欠いている重鎖;配列番号:5)と、抗EGFR(D1.5)抗体LC配列(配列番号:8)とを含有する。
【
図10】HER2およびEGFR/HER1の両方を結合する二重特異性抗体のテザーHCおよびLC(抗HER2(抗体1)26.ACID.p1およびD1.5.26.BASE.p1)の配列を示す。抗HER2(抗体1)26.ACID.p1配列は、ACID.p1コイルドコイルヘテロ二量体化ドメインとK222A突然変異を有し、26アミノ酸グリシン グリシン セリン(GGS)テザーによって抗HER2抗体1 HC配列に繋がれた抗HER2抗体1 LC配列(配列番号:9)を含有する。D1.5.26.BASE.p1配列は、BASE.p1コイルドコイルヘテロ二量体化ドメインとK222A突然変異を有し、26アミノ酸GGSテザーによってD1.5抗EGFR抗体HC配列に繋がれたD1.5抗EGFR抗体LC配列(配列番号:10)を含有する。
【
図11】HER2およびEGFR/HER1の両方を結合する他の例示的な抗体のテザーHCおよびLC(抗HER2(抗体2).26.ACID.p1およびD1.5.26.BASE.p1)の配列を示す。抗HER2(抗体2).26.ACID.p1配列は、ACID.p1コイルドコイルヘテロ二量体化ドメインとK222A突然変異を有し、26アミノ酸GGSテザーにより抗HER2抗体2 HC配列に繋がれた抗HER2抗体2 LC配列(配列番号:11)を含有する。D1.5.26.BASE.p1配列は、BASE.p1コイルドコイルヘテロ二量体化ドメインとK222A突然変異を有し、26アミノ酸GGSテザーによってD1.5抗EGFR抗体HC配列に繋がれたD1.5抗EGFR抗体LC配列(配列番号:10)を含有する。
【
図12】
図12A-1および12A-2および12B-1、12B-2および12B-3は、コイルドコイルヘテロ二量体化ドメイン含有抗体を構築するために用いた抗HER2抗体1の部分的なHC(配列番号:15)およびLC(配列番号:16)のアミノ酸配列と、それぞれのDNA配列である配列番号:23および配列番号:24である。抗HER2抗体1 HC配列の始まりは
図12Aに示し、該配列内のK222A突然変異の位置を示す。抗HER2抗体1可変軽鎖(VL)の始まり、抗HER2抗体1 LCの終わり、抗HER2抗体1可変重鎖(VH)の始まり、抗HER2抗体1 VHの終わり、そして、KからAの突然変異の位置を
図12Bに示す。これらの配列を含有するベクターを構築する際に有用なClaI/Bsp106、BamH1およびApaI制限部位の位置も
図12A及び12Bに示す。
【
図13】ヘテロ二量体コイルドコイルがLys−Cエンドペプチダーゼを使用して例示的なα-FcεR1/α-FcγR2b二重特異性抗体から切断されうることを示す、質量分析結果の一連のグラフと略図である。コイルドコイル(左の線図)を有する抗体およびコイルドコイル(右側の線図)のない抗体の理論上の塊は示されて、それぞれの線図より上に質量分析結果のグラフに示す実験的に観察された塊の誤差の縁辺の中にある。そして、コイルドコイルが抗体から隔離されたことを示す。
【
図14】Lys−Cエンドペプチダーゼ(右パネル)が例示的なα-FcεR1/α-FcγR2b二重特異性抗体のLC又はHC内で切断せず、HCからコイルドコイルを切断する(左の2つの下パネルおよび右の2つの下パネルの比較)ことを示す、質量分析結果の一連のグラフと略図である。軽鎖(MW=26263)、コイルドコイルドメインを有する重鎖(MW=54917又は55164)、およびコイルドコイルドメインを持たない重鎖(MW=50528および50767)の理論上の質量は、それぞれのコンストラクトについての質量分析結果のグラフに示す実験で観察された質量の誤差の範囲内である。
【
図15】例示的なα-FcεR1/α-FcγR2b二重特異性抗体がその抗原の両方を特異的かつ同時に結合することを示す、一連のグラフである。
【
図16】例示的な共通のLC α-FcεR1/α-FcγR2b二重特異性抗体を用いたヒスタミン放出アッセイについての結果を示す、グラフである。アッセイに用いた抗体の濃度(μg/ml)はx軸に沿って示し、ヒスタミン放出の量(ng/ml)はy軸に沿って示す。
【
図17】コイルドコイルがLys−Cエンドペプチダーゼを使用して例示的な一アーム型α-EGFR抗体から切断されうることを示す、質量分析結果の一連のグラフと略図である。コイルドコイルを有する一アーム形抗体(MW=109112)およびコイルドコイルを持たない一アーム形抗体の理論上の質量(MW=100419)は、それぞれのコンストラクトについての質量分析結果のグラフに示す実験で観察された質量の誤差の範囲内である。
【
図18】Lys−Cエンドペプチダーゼが、例示的なα-EGFR抗体の、LC(一アーム形軽鎖;左パネル)、完全長HC(一アーム形重鎖;中央パネル)又はVHおよびCH1ドメインを欠くHC(一アーム形Fc;右パネル)を切断せず、HC及びVH及びCH1ドメインを欠いているHCからコイルドコイルドメインを切断することを示す、質量分析結果の一連のグラフと線図である。それぞれのコンストラクトについての理論上の分子量は、質量分析結果を示すグラフの下に表し、いずれの場合も、実験で観察された分子量の誤差の範囲内である。
【
図19】コイルドコイルがLys−Cエンドペプチダーゼを使用して例示的なテザーα-EGFR/α-HER2二重特異性抗体から切断されうることを示す、質量分析結果の一連のグラフと略図である。切断された抗体及び切断されなかった抗体の理論上の分子量を図に表し、質量分析結果に示すそれぞれの実験で観察された分子量の誤差の範囲内である。
【
図20】抗体はLys−Cエンドペプチダーゼにて初めに処理され、次いで試料が質量分析された場合に、コイルドコイルがLys−Cエンドペプチダーゼを使用して例示的なテザーα-EGFR/α-HER2二重特異性抗体から切断されうることを示す、質量分析結果の一連のグラフと線図である。切断されたHC/LC複合体及び切断されなかったHC/LC複合体の理論上の分子量を図に表し、各コンストラクトについての理論上の分子量は質量分析結果に示す実験で観察された分子量の誤差の範囲内である。
【
図21】野生型抗HER2抗体1および野生型α-EGFR抗体が互いの抗原とは交差反応せず、それぞれの抗原を結合することを示す、Octet分析の結果を示すグラフである。
【
図22】一アーム抗HER2抗体1および一アームα-EGFR抗体が互いの抗原とは交差反応せず、それぞれの抗原を結合することを示す、Octet分析の結果を示すグラフである。
【
図23A】例示的なテザー二重特異性抗HER2抗体1/α−EGFR抗体(8323)が同時にHER2およびEGFRを結合することを示す、Octet分析の結果を示すグラフである。上図では、抗体は初めにEGFR細胞外ドメイン(ECD)と、次いでHER2レセプターECDと共にインキュベートし、下図では、抗体は初めにHER2レセプターECDと、次いでEGFR ECDと共にインキュベートした。
【
図23B】HER2(上)およびEGFR1(下)に対する例示的な二重特異性抗HER2抗体1/α−EGFR抗体の結合親和性を示す一連のグラフである。
【
図24】例示的な二重特異性抗HER2抗体1/α−EGFR(D1.5)抗体が、EGFR発現NR6細胞(左側)において用量に依存して、トランスフォーミング増殖因子α(TGFα)媒介性EGFR(上皮性増殖因子レセプター)リン酸化を阻害することを示す、免疫ブロットの画像である。D1.5抗EGFR抗体をコントロール(右側)として用いる。リン酸化レベルは抗ホスホチロシン(α-pTyr)抗体を使用して決定され、抗チューブリン抗体(α-チューブリン)を負荷コントロールとして用いる。
【
図25】二重特異性抗HER2抗体1/α−EGFR(D1.5)抗体が、3日の期間にわたって、EGFRを発現するように安定して形質移入したNR6細胞においてTGFα誘導性増加を阻害することを示す、一連のグラフである。
【
図26】例示的な二重特異性抗HER2抗体1/α−EGFR(D1.5)抗体が抗HER2抗体1コントロールと同様に、5日の期間にわたってHER2増幅BT474細胞の増殖を阻害することを示す、グラフである。
【
図27】SCIDベージュマウスを使用したD1.5ヒトIgG1コントロール抗体(抗EGFR)の10日間の薬物動態(PK)分析のFc-Fcアッセイ及びFc-Fc ELISAアッセイの結果を示す、一連のグラフである。
【
図28】SCIDベージュマウスを使用した例示的な二重特異性抗HER2抗体1/α−EGFR(D1.5)抗体の10日間のPK分析のEGFR-HER2 ELISA及びFc-Fc ELISAアッセイを示す、一連のグラフである。
【
図29】マウスにおけるコントロールD1.5(抗EGFR)およびコントロール(抗HER2抗体2)抗体に対する、例示的な二重特異性抗HER2抗体1/α−EGFR(D1.5)抗体の曝露の比較を示すグラフである。例示的な二重特異性抗HER2抗体1/α−EGFR(D1.5)抗体は、コントロール抗体と同様に試験した時間にわたってマウス内で曝露する。
【
図30】フューリンを同時に発現する細胞によってフューリンにより切断された抗体の重鎖および軽鎖の切断産物を示す、質量分析グラフである。
【
図31】フューリンを同時発現したCHO細胞においてフューリン切断可能テザーコイルドコイル抗体を発現させ、抗体をカルボキシペプチダーゼ消化にさらすことによって作製される二重特異性抗体を示す、非還元型質量分析グラフである。
【
図32】フューリンを同時発現したCHO細胞においてフューリン切断可能テザーコイルドコイル抗体を発現させ、抗体をカルボキシペプチダーゼ消化にさらすことによって作製される二重特異性抗体を示す、還元型質量分析グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(詳細な説明)
理論に拘束されるものではないが、出願人は、本明細書中に記述されるコイルドコイル二量体化ドメインが、驚くべきことにイムノグロブリンのFc領域の存在下であっても、高い正確性と効率を持って2以上の分子の結合を共に作動する最初のトリガーとなると考える。またこのFc領域は細胞培養条件下で自然に互いに作用しあう。
重鎖のホモ二量体化を低減することによって、本明細書中に記述されるコイルドコイルヘテロ二量体化ドメインの使用は、Fc CH成分を含むタンパク質複合体(例えば多特異性または一アーム形抗体など)の均質な集団を生産する能力における突破口となる。例えば、多特異性複合体が標的(例えば腫瘍細胞)と標的に対する薬剤(例えばT細胞)の共局在性を導きうるか、または併用治療の必要性および被検体に対する2以上の治療法を提供する際のリスクを取り除きうるので、多特異性複合体は治療上の適用に有利である。さらに、多特異性抗体を含む抗体の構築を容易にするために、本発明によるテザーは、抗体の軽鎖と重鎖を連結し、それによってその同族重鎖への各軽鎖の適切な連結を促すために用いられ得る。
【0023】
I.定義
本明細書中の「抗体」なる用語は、最も広義の意味で用いられ、所望の生物学的活性(例えばエピトープ結合活性)を表す限り、2の重鎖と2の軽鎖、およびこれらの任意の断片、突然変異体、変異体または誘導体を含む任意のイムノグロブリン(Ig)分子を指す。抗体の例には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異性抗体および抗体断片が含まれる。
カバット番号付けシステムは一般に、可変ドメイン内の残基を指す場合に用いられる(軽鎖のおよそ残基1−107及び重鎖の残基1−113)(例えばKabat et al., Sequences of Immunological Interest. 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))。「EU番号付けシステム」又は「EUインデックス」は一般に、イムノグロブリン重鎖定常領域を指す場合に用いられる(例えば上掲のKabat et al.において報告されたEUインデックス)。「カバットにおけるEUインデックス」はヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを指す。本明細書中で特に明記しない限り、抗体の可変ドメイン内の残基番号の参照は、カバット番号付けシステムによって番号付けする残基を意味する。本明細書中で特に明記しない限り、抗体の重鎖定常ドメイン内の残基番号の参照は、EU番号付けシステムによる残基番号付けを意味する。
【0024】
「多重特異性抗体」なる用語は最も広義に用いられ、
ポリエピトープ性特異性を有する抗体を特別に包含する。このような多重特異性抗体には、
VHVLユニットがポリエピトープ性特異性を有する重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体、2以上のVLおよびVHドメインを有し、各VHVLユニットが異なるエピトープに結合する抗体、2以上の単一可変ドメインを有し、各単一可変ドメインが異なるエピトープに結合する抗体、完全長抗体、Fab、Fv、dsFv、scFv、ダイアボディ、二重特異性ダイアボディおよびトリアボディのような抗体断片、共有結合又は非共有結合して連結されている抗体断片を含むが、これらに限定されない。「ポリエピトープ性特異性」は、同じ又は異なる標的(一又は複数)上の2以上の異なるエピトープに特異的に結合する能力を指す。「単一特異性」は、1つのエピトープにのみ結合する能力を指す。ある実施態様によると、多重特異性抗体は、5μMから0.001pM、3μMから0.001pM、1μMから0.001pM、0.5μMから0.001pM、又は0.1μMから0.001pMの親和性で、各々のエピトープに結合するIgG
抗体である。
【0025】
天然に生じる基本的な4-鎖抗体ユニットは2つの同一の軽(L)鎖と2つの同一の重(H)鎖から構成されるヘテロ四量体の糖タンパクである(IgM抗体は、基本的なヘテロ四量体ユニットとそれに付随するJ鎖と称される付加的なポリペプチドの5つからなり、よって10の抗原結合部位を有するが、分泌されたIgA抗体は重合して、基本的4-鎖ユニットとそれ付随するJ鎖のうち2-5つを含む多価集合を形成可能である)。IgGの場合、4-鎖ユニットは一般的に約150000ダルトンである。それぞれのL鎖は1つの共有ジスルフィド結合によってH鎖に結合するが、2つのH鎖はH鎖のアイソタイプに応じて一又は複数のジスルフィド結合により互いに結合している。それぞれのH及びL鎖はまた規則的な間隔を持った鎖内ジスルフィド結合を持つ。それぞれのH鎖は、α及びγ鎖の各々に対しては3つの定常ドメイン(C
H)が、μ及びεアイソタイプに対しては4つのC
Hドメインが続く可変ドメイン(V
H)をN末端に有する。それぞれのL鎖は、その他端に定常ドメイン(C
L)が続く可変ドメイン(V
L)をN末端に有する。V
LはV
Hと整列し、C
Lは重鎖の第一定常ドメイン(C
H1)と整列している。特定のアミノ酸残基が、軽鎖及び重鎖可変ドメイン間の界面を形成すると考えられている。V
LとV
Hは共同して対になって、単一の抗原結合部位を形成する。異なるクラスの抗体の構造及び特性は、例えばBasic and Clinical Immunology, 8版, Daniel P. Stites, Abba I. Terr and Tristram G. Parslow(編), Appleton & Lange, Norwalk, CT, 1994, 71頁及び6章を参照のこと。
任意の脊椎動物種からのL鎖には、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ及びラムダと呼ばれる2つの明確に区別される型の一つを割り当てることができる。また、その重鎖の定常ドメイン(C
H)のアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンには異なったクラス又はアイソタイプを割り当てることができる。IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMという免疫グロブリンの5つの主要なクラスがあり、それぞれα、δ、ε、γ及びμと呼ばれる重鎖を有する。さらにγ及びαのクラスは、C
H配列及び機能等の比較的小さな差異に基づいてサブクラスに分割され、例えば、ヒトにおいては次のサブクラス:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2が発現する。
【0026】
「可変」という用語は、可変ドメインのある部分が抗体の間で配列が広範囲に異なることを意味する。Vドメインは抗原結合性を媒介し、その特定の抗原に対する特定の抗体の特異性を定める。しかし、可変性は可変ドメインの110-アミノ酸スパンを通して均等には分布されていない。代わりに、V領域は、それぞれ9−12アミノ酸長である「高頻度可変領域」と称される極度の可変性を有するより短い領域によって分離された15−30アミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的不変の伸展からなる。天然重鎖及び軽鎖の可変ドメイン各々は、大きなβ-シート配置をとり、3つの高頻度可変領域により接続された4つのFR領域を含み、それはループ状の接続を形成し、β-シート構造の一部を形成することもある。各鎖の高頻度可変領域はFRにより他の鎖からの高頻度可変領域とともに極近傍に保持され、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ED. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))。定常ドメインは抗体の抗原への結合に直接は関係ないが、種々のエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞障害(ADCC)における抗体の寄与を示す。
【0027】
ここで使用される「高頻度可変領域」、「HVR」又は「HV」なる用語は、配列において高頻度可変であり、及び/又は構造的に定まったループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。一般に、抗体は6つのHVRを含み;VHに3つ(H1、H2、H3)、VLに3つ(L1、L2、L3)である。天然の抗体では、H3及びL3は6つのHVRのうちで最も高い多様性を示す、特にH3は抗体に良好な特異性を与える際に特有の役割を果たすように思われる。例として、Xu等 (2000) Immunity 13:37-45;Methods in Molecular Biology 248:1-25 (Lo, ed., Human Press, Totowa, NJ)のJohnson and Wu (2003)を参照。実際、重鎖のみからなる天然に生じるラクダ科の抗体は機能的であり、軽鎖が無い状態で安定である。Hamers-Casterman等 (1993) Nature 363:446-448;Sheriff等 (1996) Nature Struct. Biol. 3:733-736。
多数のHVRの描写が使用され、ここに含まれる。カバット相補性決定領域(CDR)は配列変化に基づいており、最も一般的に使用されている(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))。Chothiaは、代わりに構造的ループの位置に言及している(Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))。AbM HVRは、カバットHVRとChothia構造的ループの間の妥協を表し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアにより使用される。「接触」HVRは、利用できる複合体結晶構造の分析に基づく。これらHVRのそれぞれからの残基を以下に示す。
ループ カバット AbM Chothia 接触
L1 L24-L34 L24-L34 L26-L32 L30-L36
L2 L50-L56 L50-L56 L50-L52 L46-L55
L3 L89-L97 L89-L97 L91-L96 L89-L96
H1 H31-H35B H26-H35B H26-H32 H30-H35B (カバット番号付け)
H1 H31-H35 H26-H35 H26-H32 H30-H35 (Chothia番号付け)
H2 H50-H65 H50-H58 H53-H55 H47-H58
H3 H95-H102 H95-H102 H96-H101 H93-H101
【0028】
HVRは、次のような「拡大HVR」を含むことができる、即ち、VLの24−36又は24−34(L1)、46−56又は50−56(L2)及び89−97又は89−96(L3)と、VHの26−35(H1)、50−65又は49−65(H2)及び93−102、94−102、又は95−102(H3)である。可変ドメイン残基には、これら各々を規定するために、上掲のKabat等に従って番号を付した。
【0029】
「フレームワーク領域」(FR)は、CDR残基以外の可変ドメイン残基である。各可変ドメインは、一般的にFR1、FR2、FR3およびFR4と同定される4つのFRを持つ。CDRがカバットの定義に従うならば、軽鎖FR残基は残基およそ1−23(LCFR1)、35−49(LCFR2)、57−88(LCFR3)および98−107(LCFR4)に位置し、重鎖FR残基は重鎖残基の残基1−30(HCFR1)、36−49(HCFR2)、66−94(HCFR3)および103−113(HCFR4)に位置する。CDRが高頻度可変ループからのアミノ酸残基を含むならば、軽鎖FR残基は軽鎖の残基1−25(LCFR1)、33−49(LCFR2)、53−90(LCFR3)および97−107(LCFR4)に位置し、重鎖FR残基は重鎖残基の残基1−25(HCFR1)、33−52(HCFR2)、56−95(HCFR3)および102−113(HCFR4)に位置する。場合によって、CDRがカバットの定義によるCDRと高頻度可変ループのものの両方からのアミノ酸を含む場合、FR残基はそれに応じて調節されるであろう。例えば、CDRH1がアミノ酸H26−H35を含む場合、重鎖FR1残基は位置1−25にあり、FR2残基は位置36−49にある。
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVL又はVHフレームワーク配列の選別において最も共通して生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVL又はVH配列の選別は、可変ドメイン配列のサブグループから行う。一般に、配列のサブグループはカバットによるサブグループである。一実施態様では、VLについて、サブグループはカバットによるサブグループκIである。一実施態様では、VHについて、サブグループはカバットによるサブグループIIIである。
【0030】
「インタクト」抗体の一例は、抗原-結合部位、並びにC
L及び少なくとも重鎖定常ドメイン、C
H1、C
H2及びC
H3を含むものである。定常ドメインは天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)又はそれらのアミノ酸配列変異体であってよい。
「抗体断片」は、無傷の抗体の一部、好ましくは無傷の抗体の抗原結合又は可変領域を含む。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab')
2、及びFv断片;ダイアボディ(diabodies)(Db);
タンデムダイアボディ(taDb);直鎖状抗体(米国特許第5641870号、実施例2;Zapata等, Protein Eng. 8(10): 1057-1062 [1995]);
一アーム抗体、単一可変ドメイン抗体、ミニボディ;単鎖抗体分子;及び抗体断片から形成された多重特異性抗体
(例えば、Db−Fc、taDb−Fc、taDb−CH3および(scFV)4−Fcが含まれるがこれらに限定されない)を含む。
「単一ドメイン抗体」(sdAb)または「単一可変ドメイン(SVD)抗体」という表現は、単一可変ドメイン(VHまたはVL)が抗原結合を付与することができる抗体を一般に指す。言い換えると、単一可変ドメインは、標的抗原を認識するために別の可変ドメインと相互作用する必要がない。単一ドメイン抗体の例には、ラクダ科(ラマおよびラクダ)および軟骨魚(例えばテンジクザメ)に由来するものならびにヒトおよびマウス抗体からの組換え法から得られるものが含まれる(Nature(1989)341:544-546;Dev Comp Immunol(2006)30:43-56;Trend Biochem Sci(2001)26:230-235;Trends Biotechnol(2003):21:484-490;国際公開第2005/035572号;同第03/035694号;Febs Lett(1994)339:285-290;国際公開第00/29004号;同第02/051870号)
。
「線形抗体」という表現は、Zapata等, Protein Eng. 8(10):1057-1062 (1995)に記載された抗体を意味する。簡単に言えば、これら抗体は、相補的な軽鎖ポリペプチドと共に抗原結合領域の対を形成する一対の直列のFdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む。直鎖状抗体は二重特異性であっても単一特異性であってもよい。
【0031】
本明細書において言及する「ノブ・イントゥー・ホール(knob−into−hole)」または「KnH」技術という用語は、インビトロまたはインビボで2つのポリペプチドの相互的な対合を導く技術であって、それらが相互作用する界面において一方のポリペプチドに突起(pertuberance)(ノブ)をおよび他方のポリペプチドに空洞(ホール)を導入することによる技術を指す。例えば、KnHは、抗体のFc:Fc結合界面、CL:CH1界面またはVH/VL界面において導入されている(例えば、米国特許出願公開第2007/0178552号、国際公開第96/027011号、同第98/050431号およびZhu et al.(1997)Protein Science 6:781-788)。これは、多重特異性抗体の製造中に2つの異なる重鎖の相互的な対合を駆動するのに特に有用である。例えば、Fc領域にKnHを有する多重特異性抗体は、各Fc領域に連結された単一可変ドメインをさらに含むことができ、または類似したもしくは異なる軽鎖可変領域と対合する異なる重鎖可変ドメインをさらに含むことができる。KnH技術を用いて、2つの異なるレセプター細胞外ドメインを互いに対合させることまたは(例えばアフィボディ、ペプチボディおよび他のFc融合体を含む)異なる標的認識配列を含む任意の他のポリペプチド配列を対合させることもできる
。抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗体結合断片と、容易に結晶化する能力を反映して命名された残りの「Fc」断片を産生する。Fab断片は全長L鎖とH鎖の可変領域ドメイン(V
H)、及び一つの重鎖の第一定常ドメイン(C
H1)からなる。抗体のペプシン処理により、単一の大きなF(ab')
2断片が生じ、これは2価の抗原結合部位を持つ2つのジスルフィド結合されたFab断片にほぼ対応し、抗原を交差結合させることができるものである。Fab'断片は、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステインを含むC
H1ドメインのカルボキシ末端に幾つかの残基が付加されていることによりFab断片と相違する。Fab'-SHは、ここでは定常ドメインのシステイン残基(類)が遊離のチオール基を持つFab'を表す。F(ab')
2抗体断片は、通常はFab'断片の対として生成され、それらの間にヒンジシステインを有する。抗体断片の他の化学的結合も知られている。
Fc断片はジスルフィドにより一緒に保持されている双方のH鎖のカルボキシ末端部位を含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域の配列により決定され、その領域は、所定の型の細胞に見出されるFcレセプター(FcR)によって認識される部位である。
【0032】
「Fv」は、完全な抗原-認識及び-結合部位を含む最小の抗体断片である。この断片は、密接に非共有結合した1本の重鎖と1本の軽鎖の可変領域の二量体からなる。これら2つのドメインの折り畳みから、抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与し、抗体に対する抗原結合特異性を付与する6つの高頻度可変ループ(H及びL鎖から、それぞれ3つのループ)が生じる。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つのCDRのみを含んでなるFvの半分)でさえ、結合部位全体よりは低い親和性であるが、抗原を認識し結合する能力を持つ。
「sFv」又は「scFv」とも略称される「単鎖Fv」は、単一のポリペプチド鎖内に結合したV
H及びV
L抗体ドメインを含む抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドはV
H及びV
Lドメイン間にポリペプチドリンカーをさらに含み、それはsFVが抗原結合に望まれる構造を形成するのを可能にする。sFvの概説については、Pluckthun, The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg及びMoore編, Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994);
Malmborg et al., J. Immunol. Methods 183: 7-13, 1995を参照のこと。
「ダイアボディ(diabodies)」という用語は、鎖間ではなく鎖内でVドメインを対形成させ、結果として二価の断片、すなわち2つの抗原-結合部位を有する断片が得られるように、V
HとV
Lドメインとの間に、短いリンカー(約5−10残基)を持つsFv断片(前の段落を参照)を構築することにより調製される小型の抗体断片を意味する。二重特異性ダイアボディは2つの「交差」sFv断片のヘテロダイマーであり、そこでは2つの抗体のV
H及びV
Lドメインが異なるポリペプチド鎖上に存在する。ダイアボディは、例えば、欧州特許第404097号;国際公開93/11161号;及びHollinger等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 6444-6448 (1993)により十分に記載されている。
【0033】
「一アーム抗体」という用語は、(1)CH2ドメイン、CH3ドメインまたはCH2−CH3ドメインを含むポリペプチドに結合したペプチドによって連結された可変ドメインと(2)第二CH2、CH3またはCH2−CH3ドメインとを含む抗体であって、該可変ドメインが、該第二CH2、CH3またはCH2−CH3ドメインを含むポリペプチドに結合したペプチドによって連結されていない抗体を指す。一実施態様において、一アーム抗体は、(1)可変ドメイン(例えばVH)、CH1、CH2およびCH3を含む第一ポリペプチドと(2)可変ドメイン(例えばVL)およびCLドメインを含む第二ポリペプチドと(3)CH2およびCH3ドメインを含む第三ポリペプチドの3つのペプチドとを含む。ある実施態様では、第三ポリペプチドは可変ドメインを含まない。別の実施態様では、一アーム抗体は、定常重鎖を連結するジスルフィド結合を形成する2つのシステイン残基を含有する部分的ヒンジ領域を有する。一実施態様では、一アーム抗体の可変ドメインは抗原結合領域を形成する。別の実施態様では、一アーム抗体の可変ドメインは単一可変ドメインであり、各単一可変ドメインが抗原結合領域である。
本発明の抗体は、重および/または軽鎖の一部分は特定の種に由来するまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同であるが、その(それらの)鎖の残部は別の種に由来するまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同である「キメラ」抗体、ならびにそのような抗体の断片(但し、それらが所望の生物学的活性を示すことを条件とする)であり得る(米国特許第4816567号;およびMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855(1984))。本明細書における対象のキメラ抗体には、非ヒト霊長類(例えば旧世界ザル、類人猿など)およびヒト定常領域配列に由来する可変ドメイン抗原結合配列を含む霊長類化抗体が含まれる
。
非ヒト(例えば齧歯類)抗体の「ヒト化」形とは、非ヒト抗体から得られた最小配列を含むキメラ抗体である。大部分において、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域の残基が、マウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類のような所望の抗体特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)の高頻度可変領域の残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。ある場合には、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の特性をさらに洗練するために行われる。一般的に、ヒト化抗体は、全て又はほとんど全ての高頻度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに一致し、全て又はほとんど全てのFRがヒト免疫グロブリン配列である、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は、状況に応じて免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含む。さらなる詳細は、Jones等, Nature 321, 522-525(1986);Riechmann等, Nature 332, 323-329(1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2, 593-596(1992)を参照のこと。
【0034】
本明細書で用いられる「複合体」または「複合体化した」は、ペプチド結合でない結合および/または力(例えば、ファンデルワールス、疎水性、親水性力)によって互いに相互作用する2つ以上の分子の会合を指す。一実施態様では、複合体はヘテロ多量体である。本明細書で用いられる「タンパク質複合体」または「ポリペプチド複合体」という用語が、タンパク質複合体中のタンパク質にコンジュゲートした非タンパク質エンティティー(例えば、限定するものではないが、化学分子、例えば毒素または検出剤を含む)を有する複合体を含むことは理解されるはずである。
本明細書で用いられる「ヘテロ多量体」または「ヘテロ多量体の」という用語は、非ペプチド性共有結合(例えばジスルフィド結合)および/または非共有結合性相互作用(例えば水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力および疎水性相互作用)によって互いに相互作用する2つ以上のポリペプチドを記述するものであり、この場合、それらの分子の少なくとも2つは互いに異なる配列を有する。
本明細書において用いる場合、「イムノアドヘシン」という用語は、異種タンパク質(「アドヘシン」)の結合特異性と免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能を兼備する分子を示す。構造的には、イムノアドヘシンは、アミノ酸配列が抗体の抗原認識および結合部位以外である(すなわち、抗体の定常領域と比較して「異種」である)、所望の結合特異性を有するアミノ酸配列と、免疫グロブリン定常ドメイン配列(例えばIgGのCH2および/またはCH3配列)との融合体を含む。例示的なアドヘシン配列には、対象のタンパク質に結合するレセプターまたはリガンドの一部分を含む隣接アミノ酸配列が含まれる。アデノシン配列は、対象のタンパク質を結合するがレセプターおよびリガンド配列ではない配列(例えばペプチボディ中のアドヘシン配列)でもあり得る。そのようなポリペプチド配列を、ファージディスプレイ技術および高スループット選別法をはじめとする様々な方法によって、選択または同定することができる。前記イムノアドヘシンにおける免疫グロブリン定常ドメイン配列は、任意の免疫グロブリン、例えば、IgG−1、IgG−2、IgG−3もしくはIgG−4サブタイプ、IgA(IgA−1およびIgA−2を含む)、IgE、IgD、またはIgMから得ることができる
。
対象の抗原を「結合する」本発明の抗体は、抗体が抗原を発現するタンパク質、細胞ないし組織を標的とした治療薬及び/又は診断剤として有用となるように十分な親和性を有して抗原を結合するものである。このような実施態様では、「非標的」タンパク質に対する抗体の結合範囲は、蛍光活性化細胞分類(FACS)分析又は放射性免疫沈降法(RIA)又はELISAにより決定した場合、その特定の標的タンパク質に対する抗体の結合の約10%未満である。標的分子への抗体の結合に関して、特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド標的上のエピトープに対する「特異的結合」又は「に特異的に結合する」又は「に特異的な」といった用語は、非特異的な相互作用とは測定可能な差異を有する結合を意味する(例えば、非特異的な相互作用は
ウシ血清アルブミンまたはカゼインへの結合であってよい)。特異的結合は、例えば、コントロール分子の結合と比較して分子の結合を決定することにより測定することができる。例えば、特異的結合は、標的、例えば標識していない過剰な量の標的に類似したコントロール分子との競合により決定することができる。この場合、プローブに対する標識した標的の結合が、標識していない過剰な量の標的により競合的に阻害された場合、特異的結合が示される。ここで用いる特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド標的上のエピトープに対する「特異的結合」又は「に特異的に結合する」又は「に特異的である」といった用語は、例えば、少なくともおよそ200nM、あるいは少なくともおよそ150nM、あるいは少なくともおよそ100nM、あるいは少なくともおよそ60nM、あるいは少なくともおよそ50nM、あるいは少なくともおよそ40nM、あるいは少なくともおよそ30nM、あるいは少なくともおよそ20nM、あるいは少なくともおよそ10nM、あるいは少なくともおよそ8nM、あるいは少なくともおよそ6nM、あるいは少なくともおよそ4nM、あるいは少なくともおよそ2nM、あるいは少なくともおよそ1nM又はそれ以上の対標的Kdを有する分子によって提示されうる。一実施態様では、「特異的な結合」なる用語は、分子が他のいかなるポリペプチド又はポリペプチドエピトープに実質的に結合しないで特定のポリペプチド又は特定のポリペプチド上のエピトープに結合する結合を指す。
【0035】
一般的に「結合親和性」は、分子(例えば抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば抗原)との間の非共有結合的な相互作用の総合的な強度を意味する。特に明記しない限り、「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば抗体と抗原)間の1:1相互作用を反映する内因性結合親和性を意味する。一般的に、分子XのそのパートナーYに対する親和性は、解離定数(Kd)として表される。
例えば、Kdは、200nM、150nM、100nM、60nM、50nM、40nM、30nM、20nM、10nM、8nM、6nM、4nM、2nM、1nM又はそれ以上の強さでありうる。およそ親和性は、本明細書中に記載のものを含む当業者に公知の共通した方法によって測定することができる。低親和性抗体は抗原にゆっくり結合して素早く解離する傾向があるのに対し、高親和性抗体は抗原により密接により長く結合したままとなる。結合親和性の様々な測定方法が当分野で公知であり、それらの何れかを本発明のために用いることができる。
【0036】
一実施態様では、本発明の「Kd」又は「Kd値」は、およそ10反応単位(RU)の固定した抗原CM5チップを用いて25℃のBIAcore
TM-2000又はBIAcore
TM-3000(BIAcore, Inc., Piscataway, NJ)にて表面プラズモン共鳴アッセイを行ってKd又はKd値を測定する。簡単に言うと、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5, BIAcore Inc.)を、提供者の指示書に従ってN-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN-ヒドロキシスクシニミド(NHS)で活性化した。抗原を10mM 酢酸ナトリウム(pH4.8)で5μg/ml(〜0.2μM)に希釈し、結合したタンパク質の反応単位(RU)がおよそ10になるように5μl/分の流速で注入した。抗原の注入後、反応しない群をブロックするために1Mのエタノールアミンを注入した。動力学的な測定のために、2倍の段階希釈したFab(0.78nMから500nM)を25℃、およそ25μl/分の流速で0.05%Tween20(PBST)を含むPBSに注入した。会合及び解離のセンサーグラムを同時にフィットさせることによる単純一対一ラングミュア結合モデル(simple one-to-one Langmuir binding model) (BIAcore Evaluationソフトウェアバージョン3.2)を用いて、会合速度(K
on)と解離速度(K
off)を算出した。平衡解離定数(Kd)をK
off/K
on比として算出した。例として、Chen, Y.,ら, (1999) J. Mol Biol 293:865-881を参照。上記の表面プラスモン共鳴アッセイによる結合速度が10
6M
−1S
−1を上回る場合、分光計、例えば、流動停止を備えた分光光度計(stop-flow equipped spectrophometer)(Aviv Instruments)又は撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM-Aminco分光光度計(ThermoSpectronic)で測定される、漸増濃度の抗原の存在下にて、PBS(pH7.2)、25℃の、20nMの抗抗原抗体(Fab型)の蛍光放出強度(励起=295nm;放出=340nm、帯域通過=16nm)における増加又は減少を測定する蛍光消光技術を用いて結合速度を測定することができる。
【0037】
また、本発明の「結合速度」又は「会合の速度」又は「会合速度」又は「k
on」は、〜10反応単位(RU)の固定した抗原CM5チップを用いて25℃のBIAcore
TM-2000又はBIAcore
TM-3000(BIAcore, Inc., Piscataway, NJ)を用いた前述と同じ表面プラズモン共鳴アッセイにて測定される。簡単に言うと、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5, BIAcore Inc.)を、提供者の指示書に従ってN-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN-ヒドロキシスクシニミド(NHS)で活性化した。抗原を10mM 酢酸ナトリウム(pH4.8)で5μg/ml(およそ0.2μM)に希釈し、結合したタンパク質の反応単位(RU)がおよそ10になるように5μl/分の流速で注入した。その後、反応しない群をブロックするために1Mのエタノールアミンを注入した。抗原の注入後、反応しない群をブロックするために1Mのエタノールアミンを注入した。動力学的な測定のために、2倍の段階希釈したFab(0.78nMから500nM)を25℃、およそ25μl/分の流速で0.05%Tween20(PBST)を含むPBSに注入した。会合及び解離のセンサーグラムを同時にフィットさせることによる単純一対一ラングミュア結合モデル(simple one-to-one Langmuir binding model) (BIAcore Evaluationソフトウェアバージョン3.2)を用いて、会合速度(K
on)と解離速度(K
off)を算出した。平衡解離定数(Kd)をK
off/K
on比として算出した。例として、Chen, Y.,ら, (1999) J. Mol Biol 293:865-881を参照。しかし、上記の表面プラスモン共鳴アッセイによる結合速度が10
6M
−1S
−1を上回る場合、分光計、例えば、流動停止を備えた分光光度計(stop-flow equipped spectrophometer)(Aviv Instruments)又は撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM-Aminco分光光度計(ThermoSpectronic)で測定される、漸増濃度の抗原の存在下にて、PBS(pH7.2)、25℃の、20nMの抗抗原抗体(Fab型)の蛍光放出強度(励起=295nm;放出=340nm、帯域通過=16nm)における増加又は減少を測定する蛍光消光技術を用いて結合速度を測定するのが好ましい。
【0038】
抗体、断片またはこれらの誘導体といった本発明のポリペプチドに関して「生物学的に活性な」および「生物学的活性」および「生物学的特徴」は、特段の記載がない限り、生物学的な分子に結合する能力を有することを意味する。
「ペプチボディ」は、ランダムに生成されたペプチドとFcドメインの融合体を指す。2003年12月9日にFeigeらに発行された(出典明記によりその全体が組み込まれる)米国特許第6,660,843号を参照のこと。それらは、N末端、C末端、アミノ酸側鎖にまたはこれらの部位の1つより多くに連結された1つ以上のペプチドを含む。ペプチボディ技術は、1つ以上のリガンドまたはレセプターを標的にするペプチド、腫瘍ホーミングペプチド、膜輸送ペプチド等を組み込む治療薬の設計を可能にする。ペプチボディ技術は、ジスルフィドによって拘束された線状ペプチド、「直列ペプチド多量体」(すなわち、Fcドメインの単鎖上の1つより多くのペプチド)を含めて、多数のそのような分子の設計において有用であることが証明された。例えば、米国特許第6,660,843号;2003年10月16日に公開された米国特許出願公開第2003/0195156号(2002年11月21日に公開された国際公開第02/092620号に対応する);2003年9月18日に公開された米国特許出願公開第2003/0176352号(2003年4月17日に公開された国際公開第03/031589号に対応する);1999年10月22日に出願された米国特許出願第09/422,838号(2000年5月4日に公開された国際公開第00/24770号に対応する);2003年12月11日に公開された米国特許出願公開第2003/0229023号;2003年7月17日に公開された国際公開第03/057134号;2003年12月25日に公開された米国特許出願公開第2003/0236193号(2004年4月8日に出願されたPCT/US04/010989号に対応する);2003年9月18日に出願された米国特許出願第10/666,480号(2004年4月1日に公開された国際公開第04/026329号に対応する)を参照のこと。これらの各々は出典明記によりその全体が本明細書に組み込まれる。
「アフィボディ」は、標的分子のための結合表面を生じさせるためにタンパク質を足場として使用する、ペプチド結合によりFc領域に連結されたタンパク質の使用を指す。前記タンパク質は、多くの場合、天然に生じるタンパク質、例えばブドウ球菌プロテインAもしくはIgG結合Bドメイン、またはそれらに由来するZタンパク質(Nilsson et al(1987),Prot Eng 1,107-133、および米国特許第5,143,844号を参照)またはそれらの断片もしくは誘導体である。例えば、標的分子を結合できる変異体のライブラリを生じさせるようにランダム突然変異誘発によってZタンパク質のセグメントを突然変異させたものである、標的分子への結合親和性が改変されたZタンパク質変異体から、アフィボディを作ることができる。アフィボディの例には、米国特許第6,534,628号、Nord K et al,Prot Eng 8:601-608(1995)およびNord K et al,Nat Biotech 15:772-777(1997).Biotechnol Appl Biochem.2008 Jun;50(Pt 2):97-112が含まれる。
「単離された」ヘテロ多量体または複合体は、その自然細胞培養環境の成分から分離されおよび/または回収されたヘテロ多量体または複合体を意味する。その自然環境の混入成分は、ヘテロ多量体の診断または治療への使用を妨害する物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質様または非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様において、ヘテロ多量体は、(1)ローリー法により判定してタンパク質95重量%超、および最も好ましくは99重量%超まで、(2)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、N末端もしくは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、または(3)クーマシーブルーもしくは好ましくは銀染色を用いる還元もしくは非還元条件下でSDS−PAGEにより均一になるまで精製される。
本発明のヘテロ多量体は、実質的に均一になるまで一般には精製される。「実質的に均一な」、「実質的に均一な形態」および「実質的均一」という句は、その産物に、望ましくないポリペプチドの組み合わせ(例えばホモ多量体)起源の副産物が実質的にないことを示すために用いられる。
純度に関して表現される、実質的に均一は、副産物の量が、10重量%、9重量%、8重量%、7重量%、6重量%、4重量%、3重量%、2重量%もしくは1重量%を超えない、または1重量%未満であることを意味する。一実施態様では、副産物は5%未満である
。
「生物学的分子」は、核酸、タンパク質、糖質、脂質およびこれらの組合せを指す。一実施態様では、生物学的分子は天然に存在する。
【0039】
「単離された」とは、ここで開示された種々の抗体を記述するために使用するときは、発現した細胞又は細胞培養物から同定され分離され及び/又は回収された抗体を意味する。その自然環境の混入成分とは、ポリペプチドの診断又は治療への使用を典型的には妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。好ましい実施態様において、抗体は、(1)スピニングカップシークエネーターを使用することにより、N末端あるいは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分なほど、あるいは、(2)クーマシーブルーあるいは好ましくは銀染色を用いた非還元あるいは還元条件下でのSDS-PAGEによる均一性が得られるように十分なほど精製される。ポリペプチドの自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、単離された抗体には、組換え細胞内のインサイツの抗体が含まれる。しかしながら、通常は、単離されたポリペプチドは少なくとも1つの精製工程により調製される。
【0040】
本明細書で用いられる「連結された」または「連結する」とは、第一アミノ酸配列と第二アミノ酸配列の間の直接的なペプチド結合による結合、または第一および第二アミノ酸配列に結合した、該配列間のペプチドである、第三アミノ酸配列を伴う結合のいずれかを意味する。例えば、あるアミノ酸配列のC末端におよび他のアミノ酸配列のN末端に結合したリンカーペプチド。
本明細書で用いられる「リンカー」とは、2以上のアミノ酸長のアミノ酸配列を意味する。リンカーは、天然極性または非極性アミノ酸から成り得る。リンカーは、例えば、2から100アミノ酸長、例えば2アミノ酸長と50アミノ酸長の間、例えば、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45または50アミノ酸長であり得る。リンカーは、例えば自己切断または酵素的もしくは化学的切断により、「切断可能」であり得る。アミノ酸配列内の切断部位ならびにそのような部で切断する酵素および化学物質は、当該技術分野において周知であり、本明細書にも記載する。
本明細書で用いられる「テザー」とは、2つの別のアミノ酸配列を連結するアミノ酸リンカーを意味する。本明細書に記載するテザーは、免疫グロブリン重鎖可変ドメインのN末端と免疫グロブリン軽鎖定常領域のC末端を連結することができる。特定の実施態様において、テザーは、約15アミノ酸長と50アミノ酸長の間、例えば、20アミノ酸長と26アミノ酸長の間(例えば、20、21、22、23、24、25または26アミノ酸長)である。テザーは、例えば、当該技術分野において標準的な方法および試薬を用いる自己切断または酵素的もしくは化学的切断により、「切断可能」であり得る。
「リンカー」または「テザー」の酵素的切断は、例えばLys−C、Asp−N、Arg−C、V8、Glu−C、キモトリプシン、トリプシン、ペプシン、パパイン、トロンビン、ゲネナーゼ、第Xa因子、TEV(タバコエッチウイルスシステインプロテアーゼ)、エンテロキナーゼ、HRV C3(ヒトライノウイルスC3プロテアーゼ)、キニノゲナーゼ、ならびにスブチリシン様プロプロテイン転換酵素(例えば、フリン(PC1)、PC2もしくはPC3)またはN−アルギニン二塩基性転換酵素などの、エンドペプチダーゼの使用を必要とし得る。化学的切断は、例えば、ヒドロキシルアミン、N−クロロスクシンイミド、N−ブロモスクシンイミド、または臭化シアンの使用を必要とし得る。
本明細書で用いられる「Lys−Cエンドペプチダーゼ切断部位」は、Lys−CエンドペプチダーゼによってC末端側で切断され得るアミノ酸配列内のリシン残基である。Lys−Cエンドペプチダーゼは、リシン残基のC末端側で切断する。
本明細書で用いられる「7アミノ酸繰り返し」とは、アミノ酸配列内で少なくとも1回は繰り返される7連続アミノ酸の配列を意味する。7アミノ酸繰り返しは、第一の繰り返しのC末端が第二の繰り返しのN末端に直ぐ隣接して、アミノ酸配列内で連続的に配列され得る。一実施態様において、7アミノ酸繰り返しは、本明細書中で定義する式Iまたは式IIの配列を有する。
本明細書で用いられる「コイルドコイルドメイン」、「コイルドコイルヘテロ二量体化ドメイン」、「コイル」または「コイルヘテロ二量体化ドメイン」とは、第二アルファらせん構造(第二「コイルドコイルドメイン」)と相互作用して「コイルドコイル」または「ヘテロ二量体コイルドコイル」を形成することができるアルファらせん構造を形成するアミノ酸配列を意味する。アルファらせん構造は、右巻きのアルファらせんであり得る。一実施態様において、アルファらせん構造は、7アミノ酸繰り返しで構成される。1つの特定の例では、コイルコイルドメインは、第一および第二アルファらせん構造の「X
1」および「X
1’」位置の残基が互いとの疎水性相互作用を形成し、第一および第二アルファらせん構造の「X
4」および「X
4’」位置の残基が互いとの疎水性相互作用を形成し、第一アルファらせん構造の「X
5」位置の残基が第二アルファらせん構造の「X
7’」位置の残基とイオン性相互作用を形成し、ならびに第一アルファらせん構造の「X
7」位置の残基が第二アルファらせん構造の「X
5’」位置の残基とイオン性相互作用を形成する、
図1に示すような構造を有する。コイルドコイルドメインは、本明細書中で定義する式Iまたは式IIの7アミノ酸繰り返し2つ以上で構成されることもある。
「疎水性残基」とは、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、フェニルアラニン、プロリンまたはメチオニンを意味する。特定の実施態様において、疎水性残基はプロリンではない。
「荷電残基」とは、酸性または塩基性アミノ酸を意味する。リシン、アルギニンおよびヒスチジンは塩基性アミノ酸であり、アスパラギン酸およびグルタミン酸は酸性アミノ酸である。
「カオトロピック剤」とは、分子内相互作用(例えば水素結合、ファンデルワールス力または疎水性作用)の安定化を妨害することによりタンパク質(例えば抗体)の三次元構造を破壊する水溶性物質を意味する。例示的なカオトロピック剤には、限定するものではないが、尿素、グアニジン−HCl、過塩素酸リチウム、ヒスチジンおよびアルギニンが含まれる。
「中性(mild)界面活性剤」とは、分子内相互作用(例えば水素結合、ファンデルワールス力または疎水性作用)の安定化を妨害することによりタンパク質(例えば抗体)の三次元構造を破壊するが、生物学的活性を喪失させるようにタンパク質構造を永久破壊しない(すなわち、タンパク質を変性しない)、水溶性物質を意味する。例示的な中性界面活性剤には、限定するものではないが、Tween(例えばTween−20)、Triton(例えばTriton X−100)、NP−40(ノニルフェノキシポリエトキシエタノール)、Nonidet P−40(オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)、およびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)が含まれる。
「ヒンジ領域」は、一般に、ヒトIgG1のGlu216からPro230の伸展と定義される(Burton,Molec.Immunol.22:161-206(1985))。重鎖間S−S結合を形成する最初および最後のシステイン残基を同じ位置に置くことにより、他のIgGアイソタイプのヒンジ領域をIgG1配列と整列させることができる
Fc領域の「下方ヒンジ領域」は、ヒンジ領域の直ぐC末端側の残基、すなわちFc領域の残基233から239の伸展と通常は定義される。本発明より以前は、FcガンマR結合は、一般に、IgG Fc領域の下方ヒンジ領域におけるアミノ酸残基によるものとされていた。
ヒトIgG Fc領域の「CH2ドメイン」は、通常、IgGの残基231あたりから340あたりに伸展する。CH2ドメインは、別のドメインと厳密に対合しない点でユニークである。それどころか、2つのN連結分岐炭水化物鎖がインタクト天然IgG分子の2つのCH2ドメイン間に介在している。炭水化物がドメイン−ドメイン対合の代わりになり、CH2ドメインの安定化を助長し得ると推測されている。Burton,Molec.Immunol.22:161-206(1985)。
「CH3」ドメインは、Fc領域中のCH2ドメインのC末端側の残基(すなわち、IgGのアミノ酸残基341あたりからアミノ酸残基447あたり)の伸展を含む。
用語「Fc領域」は、本明細書では免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために用いられ、天然配列Fc領域および変異体Fc領域を含む。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は様々であり得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、位置Cys226のアミノ酸残基から、またはPro230から、そのカルボキシル末端の伸展と定義される。Fc領域のC末端リシン(EU番号付けシステムによると残基447)は、例えば、抗体の生産もしくは精製中に、または抗体の重鎖をコードする核酸を組換えにより改変することによって、取り除かれることがある。従って、インタクト抗体の組成物は、すべてのK447残基が取り除かれた抗体集団、K447残基がまったく取り除かれていない抗体集団、およびK447残基を有する抗体とK447残基のない抗体の混合物を有する抗体集団を含み得る。
「機能性Fc領域」は、天然配列Fc領域の「エフェクター機能」を保有する。例示的な「エフェクター機能」には、C1q結合;CDC;Fcレセプター結合;ADCC;貪食作用;細胞表面レセプター(例えば、B細胞レセプター;BCR)のダウンレギュレーションなどが含まれる。そのようなエフェクター機能は、結合ドメイン(例えば抗体可変ドメイン)と組み合わせるためにFc領域を一般に必要とするので、例えば本明細書における定義に開示するような、様々なアッセイを用いて該エフェクター機能を評価することができる。
「天然配列Fc領域」は、天然に見出されるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。天然配列ヒトFc領域には、天然配列ヒトIgG1 Fc領域(非AおよびAアロタイプ);天然配列ヒトIG2 Fc領域;天然配列ヒトIG3 Fc領域;および天然配列ヒトIG4 Fc領域;ならびにこれらの天然に生じる変異体が含まれる。
「変異体Fc領域」は、少なくとも1のアミノ酸修飾、好ましくは1以上のアミノ酸置換によって天然配列Fc領域のものとは異なるアミノ酸配列を含む。好ましくは、変異体Fc領域は、天然配列Fc領域とまたは親ポリペプチドのFc領域と比較して少なくとも1のアミノ酸置換、例えば、天然配列Fc領域にまたは親ポリペプチドのFc領域に約1から約10のアミノ酸置換、および好ましくは約1から約5のアミノ酸置換を有する。本明細書での変異体Fc領域は、好ましくは、天然配列Fc領域とのおよび/または親ポリペプチドのFc領域との少なくとも約80%の相同性、ならびに最も好ましくはそれらとの少なくとも約90%の相同性、さらに好ましくはそれらとの少なくとも約95%の相同性を有する。
本明細書で用いる「Fc複合体」は、互いに相互作用するFc領域の2つのCH2ドメインおよび/または互いに相互作用するFc領域の2つのCH3ドメインを指し、この場合、該CH2ドメインおよび/または該CH3ドメインは、ペプチド結合ではない結合および/または力(例えばファンデルワールス、疎水性、親水性力)によって相互作用する。
本明細書で用いる「Fc成分」は、Fc領域のヒンジ領域、CH2ドメインまたはCH3ドメインを指す。
本明細書で用いる「Fc CH成分」または「FcCH」は、Fc領域のCH2ドメイン、CH3ドメイン、またはCH2およびCH3ドメインを含むポリペプチドを指す
。
抗体の「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域(天然配列Fc領域又はアミノ酸配列変異体Fc領域)に帰する生物学的活性を意味し、抗体のアイソタイプにより変わる。抗体のエフェクター機能の例には、C1q結合及び補体依存性細胞障害;Fcレセプター結合性;抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC);貪食作用;細胞表面レセプター(例えば、B細胞レセプター)のダウンレギュレーション;及びB細胞活性化が含まれる。
「抗体依存性細胞媒介性細胞障害」又は「ADCC」とは、ある種の細胞障害細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球及びマクロファージ)上に存在するFcレセプター(FcRs)と結合した分泌Igにより、これらの細胞障害エフェクター細胞が抗原-担持標的細胞に特異的に結合し、続いて細胞毒により標的細胞を死滅させることを可能にする細胞障害性の形態を意味する。抗体は細胞障害細胞を「備えて」おり、これはこのような死滅には絶対に必要なものである。ADCCを媒介する主要な細胞NK細胞はFcγRIIIのみを発現するのに対し、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcRの発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9:457-92 (1991) の464頁の表3に要約されている。対象の分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5500362号又は同第5821337号に記載されているようなインビトロADCCアッセイを実施することができる。このようなアッセイにおいて有用なエフェクター細胞には、末梢血液単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー細胞(NK細胞)が含まれる。代わりとして、もしくは付加的に、対象の分子のADCC活性は、例えば、Clynes等, PNAS (USA) 95:652-656 (1998)において開示されているような動物モデルにおいて、インビボで評価することが可能である。
【0041】
「Fcレセプター」又は「FcR」は、抗体のFc領域に結合するレセプターを記載するものである。好適なFcRは天然配列ヒトFcRである。さらに好適なFcRは、IgG抗体(ガンマレセプター)と結合するもので、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIサブクラスのレセプターを含み、これらのレセプターの対立遺伝子変異体、選択的にスプライシングされた形態のものも含まれる。FcγRIIレセプターには、FcγRIIA(「活性型レセプター」)及びFcγRIIB(「阻害型レセプター」)が含まれ、主としてその細胞質ドメインは異なるが、類似のアミノ酸配列を有するものである。活性型レセプターFcγRIIAは、細胞質ドメインにチロシン依存性免疫レセプター活性化モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based activation motif ;ITAM)を含んでいる。阻害型レセプターFcγRIIBは、細胞質ドメインにチロシン依存性免疫レセプター阻害性モチーフ(immunoreceptor tyrosine-based inhibition motif ;ITIM)を含んでいる(Daeron, Annu. Rev. immunol. 15:203-234 (1997)を参照)。FcRsに関しては、 Ravetch and Kinet, Annu.Rev. Immunol. 9:457-492 (1991); Capel等, Immunomethods 4:25-34 (1994); 及びde Haas等, J.Lab. Clin. Med. 126:330-41 (1995) に概説されている。将来的に同定されるものも含む他のFcRsはここでの「FcR」という言葉によって包含される。また、該用語には、母性IgGの胎児への移送を担い(Guyer等, J. Immunol. 117:587 (1976)及びKim等, J. Immunol.24:249 (1994))、免疫グロブリンのホメオスタシスを調節する新生児性レセプターFcRnも含まれる。
【0042】
「ヒトエフェクター細胞」とは、一又は複数のFcRsを発現し、エフェクター機能を実行する白血球のことである。その細胞が少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実行することが望ましい。ADCCを媒介するヒト白血球の例として、末梢血液単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞障害性T細胞及び好中球が含まれるが、PBMCとNK細胞が好適である。エフェクター細胞は天然源、例えば血液から単離してもよい。
「補体依存性細胞障害」もしくは「CDC」は、補体の存在下で標的を溶解することを意味する。典型的な補体経路の活性化は補体系(Clq)の第1補体が、同族抗原と結合した(適切なサブクラスの)抗体に結合することにより開始される。補体の活性化を評価するために、CDCアッセイを、例えばGazzano-Santoro等, J. Immunol. Methods 202:163 (1996)に記載されているように実施することができる。
【0043】
「治療的有効量」なる用語は、対象の疾患又は疾病を治療するための
抗体、抗体断片または誘導体の量を指す。腫瘍(例えば癌性腫瘍)の場合は、治療的有効量の抗体ないし抗体断片(例えば
多重特異性抗体ないし抗体断片)は、癌細胞の数を減少させる、腫瘍の大きさを小さくする、癌細胞の周辺器官への浸潤を阻害する(すなわち、ある程度に遅く、好ましくは止める)、腫瘍の転移を阻害する(すなわち、ある程度遅く、好ましくは止める)、腫瘍の成長をある程度阻害する、及び/又は疾患に関連する一又は複数の症状をある程度和らげうる。ある程度、抗体ないし抗体断片は、成長を妨げ及び/又は現存の癌細胞を殺し得、細胞分裂停止性及び/又は細胞障害性である。癌治療に対しては、インビボにおける効力は、例えば生存期間、病状の進行時間(TTP)、応答速度(RR)、応答期間、及び/又は生活の質の測定により測定される。
「低減する又は阻害する」とは、概して好ましくは20%以上、より好ましくは50%以上、最も好ましくは75%、85%、90%、95%又はそれ以上の減少を引き起こす能力を指す。低減する又は阻害するとは、治療する疾患の症状、転移の存在又は大きさ、原発腫瘍のサイズ、又は血管形成性疾患の血管の大きさ又は数を指しうる。
【0044】
「癌」及び「癌性」なる用語は、典型的には調節されない細胞の成長/増殖を特徴とする、哺乳動物における生理学的状態を指すか記述する。良性及び悪性の癌は、この定義に含まれる。癌の例には、これらに限定するものではないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫及び白血病が含まれる。このような癌のより具体的な例には、扁平細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、肺の扁平上皮癌、腹膜の癌、肝細胞性癌、胃腸癌を含む胃(gastric及びstomach)癌、膵癌、神経膠芽腫、膠腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、肝腫瘍、乳癌、大腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜又は子宮癌腫、唾液腺癌腫、腎臓癌(例えば、腎臓細胞癌腫)、肝癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、肛門部の癌腫、陰茎癌腫、メラノーマ、及び様々な種類の頭頸部癌が含まれる。「初期段階の癌」は、浸潤性でも転移性でもなく、又はステージ0、I又はIIの癌として分類される癌を意味する。「前癌性」なる用語は、典型的に癌に進行する又は癌に発達する症状ないし成長を指す。「非転移性」とは、良性である癌、又は原発部位に止まり、リンパ管や血管系ないしは原発部位以外の組織に浸透しない癌を意味する。一般的に、非転移性癌は、ステージ0、I又はIIの癌、場合によってステージIIIの癌のいずれかの癌である。
【0045】
「HER2の異常な活性化を伴う非悪性疾患又は障害」は、疾患ないし障害を有するか又はその素因がある被検体の細胞又は組織においてHER2の異常な活性化が生じている癌を伴っていない症状である。このような疾患又は障害の例には、自己免疫性疾患(例えば乾癬)(下記の定義を参照);子宮内膜症;強皮症;再狭窄;大腸ポリープ、鼻ポリープ又は胃腸ポリープといったポリープ;線維腺腫;呼吸器疾患(例として、慢性気管支炎、急性の喘息およびアレルギー性喘息を含む喘息、嚢胞性線維症、気管支拡張症、アレルギー性又は他の鼻炎又は副鼻腔炎、α1-抗トリプシン欠乏症、咳、肺気腫、肺線維症又は過剰反応性の気道、慢性閉塞性肺性疾患、及び慢性閉塞性肺疾患);胆嚢炎;神経線維腫症;多発性嚢胞腎;炎症性疾患;乾癬および皮膚炎を含む皮膚疾患;血管系疾患;血管性上皮細胞の異常な増殖を伴う状態;胃腸潰瘍;メネトリエ病、分泌腺腫又はタンパク質喪失症候群;腎臓疾患;血管形成性疾患;眼性疾患、例えば加齢性黄斑変性症、推定眼ヒストプラスマ症候群、増殖性糖尿病性網膜症由来の網膜血管新生、網膜脈管形成、糖尿病性網膜症又は加齢性黄斑変性;骨関連症、例えば骨関節炎、くる病および骨粗鬆症;大脳虚血発症後の損傷;線維性又は浮腫性疾患、例えば熱傷、外傷、放射線、脳卒中、低酸素又は乏血後の肝硬変、肺線維症、サルコイドーシス、甲状腺炎、全身過粘稠度症候群、 オスラー・ランデュ・ウェーバー病、慢性閉塞性肺疾患又は浮腫;皮膚の過敏性反応;糖尿病性網膜症および糖尿病性ネフロパシ;ギラン‐バレー症候群;移植片対宿主病又は移植拒絶反応;パジェット病;骨又は関節の炎症;光老化(例えば、ヒトの皮膚のUV照射によって生じる);良性前立腺肥大;アデノウイルス、ハンタウイルス、ボレリア・ブルグドルフェリ、エルシニア菌種およびボルデテラペルツッシスから選択される微生物病原体を含む特定の微生物感染;血小板凝集によって生じる血栓;生殖系状態、例えば子宮内膜症、卵巣の過刺激症候群、子癇前症、機能障害性子宮出血又は機能性子宮出血;関節滑膜炎;アテローム;急性及び慢性のネフロパシ(増殖性糸球体腎炎および糖尿病性腎疾患を含む);湿疹;肥大性瘢痕形成;エンドトキシンショックおよび真菌感染;家族性腺腫性ポリープ症;神経変性疾患(例えばアルツハイマー病、AIDS関連痴呆、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、色素性網膜炎、脊髄筋萎縮および小脳変性);骨髄形成異常症候群;無形成性貧血;虚血性傷害;肺、腎臓又は肝臓の線維形成;T細胞が媒介する過敏性症候群;乳幼児肥大性先天性幽門閉塞;泌尿器閉塞性症候群;乾癬の関節炎;及び橋本甲状腺炎が含まれる。
本明細書において「アレルギー性又は炎症性の疾患」は、個体の免疫系の過剰活性化から生じる疾患又は疾病である。例示的なアレルギー性又は炎症性の疾患には、喘息、乾癬、関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、多発性硬化症、全身狼瘡、エリテマトーデス、湿疹、臓器移植、年齢性黄斑変性、クローン病、潰瘍性大腸炎、好酸性食道炎および炎症に関連する自己免疫性疾患が含まれるが、これに限定されない
。
【0046】
本明細書中の「自己免疫疾患」は、個体の自己組織又は同時分離又はその徴候又は結果として生じるその症状に対する及びそれらから生じる疾患又は症状である。自己免疫疾患又は症状の例として、限定するものではないが、関節炎(関節リウマチ(例えば急性の関節炎、慢性の関節リウマチ、痛風性関節炎、急性の痛風性関節炎、慢性炎症性関節炎、変形性関節症、感染性関節炎、ライム関節炎、増殖性関節炎、乾癬の関節炎、椎骨関節炎及び若年性発症関節リウマチ、骨関節炎、関節炎慢性化、関節炎変形、関節炎慢性原発、反応性関節炎、及び強直性脊椎炎)、炎症性過剰増殖性皮膚病、乾癬、例えばプラーク乾癬、滴状乾癬、膿疱性乾癬及び爪乾癬)、皮膚炎、例として接触皮膚炎、慢性接触皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、ヘルペス状の皮膚炎、貨幣状皮膚炎、脂漏性皮膚炎、非特異的皮膚炎、一次刺激物接触皮膚炎及び過敏性皮膚炎、X連鎖性過剰IgM症候群、蕁麻疹、例えば慢性アレルギー性蕁麻疹及び慢性特発性蕁麻疹、例として慢性自己免疫蕁麻疹、多発性筋炎/皮膚筋炎、若年性皮膚筋炎、中毒性上皮性表皮壊死症、強皮症(全身強皮症を含む)、硬化症、例えば全身性硬化症、多発性硬化症(MS)、例えば脊椎-眼(spino-optical) MS)、一次進行性MS(PPMS)及び再発性寛解MS(RRMS)、進行性全身性硬化症、アテローム性動脈硬化、動脈硬化症、硬化症汎発、失調性硬化症、炎症性腸疾患(IBD)(例えばクローン病、自己免疫性胃腸疾患、大腸炎、例えば潰瘍性大腸炎、大腸性潰瘍、微細な大腸炎、膠原性大腸炎、大腸ポリープ、壊死性全腸炎及び経壁の大腸炎、及び自己免疫炎症性腸疾患)、膿皮症壊疽、結節性紅斑、原発性硬化性胆管炎、上強膜炎、呼吸窮迫症候群、例として成人性又は急性の呼吸窮迫症候群(ARDS)、髄膜炎、葡萄膜の全部又は一部の炎症、虹彩炎、脈絡膜炎、自己免疫血液疾患、リウマチ様脊椎炎、リウマチ様関節滑膜炎、突発性聴力障害、IgE媒介性疾患、例えばアナフィラキシー及びアレルギー性鼻炎及びアトピー性鼻炎、脳炎、例えばラスマッセンの脳炎及び辺縁及び/又は脳幹脳炎、ブドウ膜炎、例として、前部ブドウ膜炎、急性前ブドウ膜炎、肉芽腫ブドウ膜炎、非顆粒性ブドウ膜炎、水晶体抗原性ブドウ膜炎、後部ブドウ膜炎又は自己免疫ブドウ膜炎、ネフローゼ症候群を有する又は有さない糸球体腎炎(GN)、例として、慢性又は急性の糸球体腎炎、例として原発性GN、免疫性GN、膜性GN(膜性ネフロパシ)、特発性膜性GN又は特発性膜性ネフロパシ、膜又は膜性増殖性GN(MPGN)(タイプI及びタイプIIを含む)、急速進行性GN、アレルギー性症状、アレルギー性反応、湿疹、例としてアレルギー性又はアトピー性湿疹、喘息、例えば喘息気管支炎、気管支喘息及び自己免疫喘息、T細胞の浸潤を伴う症状及び慢性炎症反応、慢性肺炎症性疾患、自己免疫心筋炎、白血球粘着力欠損、全身性エリテマトーデス(SLE)又は全身性ループスエリテマトーデス、例えば皮膚SLE、亜急性の皮膚SLE、新生児期ループス症候群(NLE)、紅班性狼瘡汎発、ループス(例としてループス腎炎、ループス脳炎、小児ループス、非腎性ループス、腎外ループス、円板状ループス、脱毛症ループス)、若年性開始型(I型)真正糖尿病、例として小児インシュリン依存性真正糖尿病(IDDM)、成人発症型真正糖尿病(II型糖尿病)、自己免疫性糖尿病、特発性の尿崩症、サイトカイン及びTリンパ球によって媒介される急性及び遅発性過敏症と関係する免疫応答、結核、サルコイドーシス、肉芽腫症、例としてリンパ腫肉芽腫症、ヴェゲナーの肉芽腫症、無顆粒球症、脈管炎、例として血管炎、大血管性血管炎(例えば大脈管脈管炎(リウマチ性多発性筋痛及び巨細胞(高安)動脈炎を含む)、中脈管脈管炎(川崎病及び結節性多発動脈炎を含む)、微小多発動脈炎、CNS脈管炎、壊死性血管炎、皮膚性血管炎又は過敏性血管炎、全身性壊死性血管炎、及びANCA関連の脈管炎、例としてチャーグ-ストラウス脈管炎又は症候群(CSS))、側頭動脈炎、無形成性貧血、自己免疫無形成性貧血、クームズ陽性貧血症、ダイアモンドブラックファン貧血症、溶血性貧血又は免疫溶血性貧血、例として自己免疫溶血性貧血(AIHA)、悪性貧血(貧血症悪性熱)、アジソン病、純粋な赤血球貧血症又は形成不全(PRCA)、第VIII因子欠損症、血友病A、自己免疫好中球減少症、汎血球減少症、白血球減少症、白血球血管外遊出を伴う疾患、CNS炎症性疾患、多器官損傷症候群、例えば敗血症、外傷又は出血の二次症状、抗原-抗体複合体関連疾患、抗糸球体基底膜疾患、抗リン脂質抗体症候群、アレルギー性神経炎、ベーチェット又はベーチェット病、カールスマン症候群、グッドパスチャー症候群、レイノー症候群、シェーグレン症候群、スティーブンスジョンソン症候群、類天疱瘡、例えば水疱性類天ぽうそう及び類天疱瘡皮膚、天疱瘡(尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、ペンフィグス粘液膜類天疱瘡及び天疱瘡エリテマトーデスを含む)、自己免疫多腺性内分泌障害、ライター病又は症候群、免疫複合体腎炎、抗体媒介性腎炎、視神経脊髄炎、多発性神経炎、慢性神経障害、例えばIgM多発性神経炎又はIgM媒介性神経障害、血小板減少(例えば心筋梗塞患者によるもの)、例えば血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、及び自己免疫性又は免疫媒介性血小板減少、例えば慢性及び急性のITPを含む特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、自己免疫性精巣炎及び卵巣炎を含む精巣及び卵巣の自己免疫性疾患、一次甲状腺機能低下症、副甲状腺機能低下症、自己免疫内分泌性疾患、例えば甲状腺炎、例えば自己免疫性甲状腺炎、橋本病、慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)又は亜急性の甲状腺炎、自己免疫甲状腺性疾患、特発性甲状腺機能低下症、グレーブ病、自己免疫多腺性症候群、例として多腺性症候群(又は、多腺性内分泌障害症候群)、腫瘍随伴症候群、例として神経系新生物関連症候群、例えばランバート-イートン筋無力症症候群又はイートン―ランバート症候群、スティッフマン又はスティッフマン症候群、脳脊髄炎、例として、アレルギー性脳脊髄炎又は脳脊髄炎性アレルギー及び実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、重症筋無力症、例えば胸腺腫関連の重症筋無力症、小脳性退化、神経ミオトニ、眼球クローヌス又は眼球クローヌス筋硬直症候群(OMS)及び感覚系神経障害、多病巣性運動神経障害、シーハン症候群、自己免疫肝炎、慢性肝炎、類狼瘡肝炎、巨細胞肝炎、慢性活動性肝炎又は自己免疫慢性活動性肝炎、リンパ系間隙間質性肺炎(LIP)、閉塞性細気管支炎(非移植)対NSIP、ギラン‐バレー症候群、ベルガー病(IgAネフロパシ)、特発性IgAネフロパシ、線状IgA皮膚病、原発性胆管萎縮症、肺線維症、自己免疫腸疾患症候群、セリアック病、コエリアック病、脂肪便症(グルテン腸疾患)、抵抗性スプルー、特発性スプルー、クリオグロブリン血症、アミロトロフィック側索硬化症(ALS;筋萎縮性側索硬化症(Lou Gehrig's disease))、冠状動脈疾患、自己免疫性耳疾患、例として、自己免疫内耳疾患(AIED)、自己免疫聴力障害、眼球クローヌス筋硬直徴候(OMS)、多発性軟骨炎、例として、抵抗性又は再発性多発性軟骨炎、肺胞状蛋白症、アミロイドーシス、強膜炎、非癌性リンパ球増多症、一次リンパ球増多症、これにはモノクローナルB細胞リンパ球増多症(例えば良性モノクローナル免疫グロブリン症及び未同定の有意なモノクローナル免疫グロブリン血症(monoclonal gammopathy of undetermined significance)、MGUS)が含まれる、末梢性神経障害、腫瘍随伴症候群、チャネル病、例として、癲癇、片頭痛、不整脈、筋疾患、難聴、盲目、周期性麻痺及びCNSのチャネル病、自閉症、炎症性ミオパシ、局所性分節性糸球体硬化症(FSGS)、内分泌性眼障害、ブドウ膜網膜炎、脈絡網膜炎、自己免疫性肝臓病、線維症、多内分泌性不全、シュミット症候群、副腎炎、胃萎縮、初老期痴呆、脱髄性疾患、例として自己免疫脱髄性病、糖尿病性ネフロパシ、ドレスラー症候群、円形脱毛症、CREST症候群(石灰沈着、レイノー現象、食道運動障害、強指症及び毛細管拡張症)、雌雄自己免疫性不妊性、混合性結合組織病、シャーガス病、リウマチ熱、再発性中絶、農夫肺、多形性紅斑、心切開術後症候群、クッシング症候群、愛鳥家肺、アレルギー性肉芽腫性脈管炎、良性リンパ球血管炎、アルポート症候群、肺胞炎、例えばアレルギー性肺胞炎及び繊維化肺胞炎、間隙肺疾患、輸血反応、ハンセン病、マラリア、リーシュマニア症、キパノソミアシス(kypanosomiasis)、住血吸虫症、蛔虫症、アスペルギルス症、サンプター症候群、カプラン症候群、デング熱、心内膜炎、心内膜心筋線維形成、広汎性間質性肺線維形成、間質性肺線維形成、特発性の肺線維形成、嚢胞性線維症、眼内炎、持久性隆起性紅斑、胎児赤芽球症、好酸性筋膜炎(eosinophilic faciitis)、シャルマン症候群、フェルティー症候群、フィラリア(flariasis)、毛様体炎、例えば慢性毛様体炎、ヘテロ慢性毛様体炎、虹彩毛様体炎、又はFuchの毛様体炎)、ヘーノホ-シェーンライン紫斑病、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染、エコーウィルス感染、心筋症、アルツハイマー病、パルボウィルス感染、風疹ウィルス感染、種痘後症候群、先天性風疹感染、エプスタインバーウイルス感染、耳下腺炎、エヴァンの症候群、自己免疫性腺機能不全、シドナム舞踏病、連鎖球菌感染後腎炎、閉塞性血栓性血管炎(thromboangitis ubiterans)、甲状腺中毒症、脊髄癆、脈絡膜炎、巨細胞多発性筋痛、内分泌性眼障害、慢性過敏性肺炎、乾性角結膜炎、流行性角結膜炎、特発性腎臓症候群、微小変化ネフロパシ、良性家族性及び乏血-再灌流障害、網膜自己免疫、関節炎症、気管支炎、慢性閉塞性気道疾患、珪肺症、アフタ、アフタ性口内炎、動脈硬化症疾患、アスペルミオジェネース(aspermiogenese)、自己免疫性溶血、ベック病、クリオグロブリン血症、デュピュイトラン拘縮、水晶体過敏性眼内炎、腸炎アレルギー、結節性紅斑、leprosum、特発性顔麻痺、慢性疲労症候群、リウマチ性熱、ハンマンリッチ病、感覚器性(sensoneural)聴力障害、血色素尿症発作(haemoglobinuria paroxysmatica)、性機能低下、回腸炎領域、白血球減少症、単核細胞増加症感染、横移動脊髄炎、一次特発性の粘液水腫、ネフローゼ、眼炎symphatica、精巣炎肉芽腫症、膵炎、多発性神経根炎急性、膿皮症壊疽、Quervain甲状腺炎、後天性脾臓萎縮、抗精子抗体による不妊性、非悪性胸腺腫、白斑、SCID及びエプスタインバーウイルス関連疾患、後天性免疫不全症候群(エイズ)、寄生虫病、例えばLesihmania、毒性ショック症候群、食中毒、T細胞の浸潤を伴う症状、白血球-粘着力欠損、サイトカイン及びTリンパ球に媒介される急性及び遅発性過敏症関連免疫応答、白血球血管外遊出を伴う疾患、多器官損傷症候群、抗原-抗体複合体媒介性疾患、抗糸球体基底膜疾患、アレルギー性神経炎、自己免疫多腺性内分泌障害、卵巣炎、原発性粘液水腫、自己免疫萎縮性胃炎、交感性眼炎、リウマチ性疾患、混合性結合組織病、ネフローゼ症候群、膵島炎、多内分泌性不全、末梢性神経障害、自己免疫多腺性症候群I型、成人発症型特発性副甲状腺機能低下症(AOIH)、完全脱毛症、拡張型心筋症、後天性表皮水疱症(EBA)、ヘモクロマトーシス、心筋炎、ネフローゼ症候群、原発性硬化性胆管炎、化膿性又は非化膿性副鼻腔炎、急性又は慢性副鼻腔炎、篩骨、正面、上顎骨又は蝶形骨副鼻腔炎、好酸球性関連疾患、例えば好酸球増加症、肺浸潤好酸球増加症、好酸球増加症-筋肉痛症候群、レフラー症候群、慢性好酸性肺炎、熱帯肺好酸球増加症、気管支肺炎アスペルギルス症、アスペルギローム又は好酸球性を含有する肉芽腫、アナフィラキシー、血清陰性脊椎関節炎疹、多内分泌性自己免疫性疾患、硬化性胆管炎、強膜、上強膜、慢性皮膚粘膜カンジダ症、ブラットン症候群、乳児期の一過性低ガンマグロブリン血症、ウィスコット‐アルドリッチ症候群、毛細血管拡張性運動失調症候群、膠原病と関係する自己免疫疾患、リウマチ、神経病学的疾患、虚血性再灌流障害、血圧応答の減退、血管機能不全、antgiectasis、組織損傷、心血管乏血、痛覚過敏、脳虚血、及び脈管化を伴う疾患、アレルギー性過敏症疾患、糸球体腎炎、再灌流障害、心
筋又は他の組織の再灌流損傷、急性炎症性成分を有する皮膚病、急性化膿性髄膜炎又は他の中枢神経系炎症性疾患、眼性及び眼窩の炎症性疾患、顆粒球輸血関連症候群、サイトカイン誘発性毒性、急性重症炎症、慢性難治性炎症、腎盂炎、肺線維症、糖尿病性網膜症、糖尿病性大動脈疾患、動脈内過形成、消化性潰瘍、弁膜炎、及び子宮内膜症などがある。
【0047】
ここで用いられる「細胞障害性剤」という用語は、細胞の機能を阻害又は阻止し及び/又は細胞破壊を生ずる物質を指す。この用語は、放射性同位体(例えば、At
211、I
131、I
125、Y
90、Re
186、Re
188、Sm
153、Bi
212、Ra
223、P
32及びLuの放射性同位体)、化学治療薬、例としてメトトレキセート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロランブシル、ダウノルビシン又は他の挿入剤、酵素及びその断片、例えば核溶解性酵素、抗生物質、及び毒素、例えばその断片及び/又は変異体を含む小分子毒素又は細菌、糸状菌、植物又は動物起源の酵素的に活性な毒素、そしてここに開示する種々の抗腫瘍剤、抗癌剤
および化学療法剤を含むように意図されている。他の細胞障害性薬が下記に記載されている。殺腫瘍性剤は、腫瘍細胞の破壊を引き起こす。
【0048】
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化学的化合物である。化学療法剤の例には、チオテパ及びシクロスホスファミド(CYTOXAN(登録商標))のようなアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンのようなスルホン酸アルキル類;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)のようなアジリジン類;アルトレートアミン(altretamine)、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethiylenethiophosphoramide)及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;アセトゲニン(acetogenins)(特にブラタシン(bullatacin)及びブラタシノン(bullatacinone));δ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));β-ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトセシン(合成類似体トポテカン(topotecan)(HYCAMTIN(登録商標))、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン(acetylcamptothecin)、スコポレクチン(scopolectin)、及び9-アミノカンプトテシン(9-aminocamptothecin)を含む);ブリオスタチン;カリスタチン(callystatin);CC-1065(そのアドゼレシン(adozelesin)、カルゼレシン(carzelesin)及びバイゼレシン(bizelesin)合成類似体を含む);ポドフィリン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(cryptophycin)(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン(dolastatin);デュオカルマイシン(duocarmycin )(合成類似体、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エレトロビン(eleutherobin);パンクラチスタチン(pancratistatin);サルコディクチン(sarcodictyin);スポンジスタチン(spongistatin);クロランブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、チョロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタード等のナイトロジェンマスタード;ニトロスレアス(nitrosureas)、例えばカルムスチン(carmustine)、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン(lomustine)、ニムスチン、ラニムスチン;エネジイン(enediyne) 抗生物質等の抗生物質(例えば、カリケアマイシン(calicheamicin)、特にカリケアマイシンガンマ1I、例えば、Agnew Chem Intl. Ed. Engl., 33:183-186(1994)を参照のこと;ダイネミシンA(dynemicinA)を含むダイネミシン(dynemicin);エスペラマイシン(esperamicin);同様にネオカルチノスタチン発光団及び関連色素蛋白エネジイン(enediyne) 抗生物質発光団)、アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン(bleomycins)、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン(carminomycin)、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン (モルフォリノ−ドキソルビシン、シアノモルフォリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシンCなどのマイトマイシン(mitomycins)、マイコフェノール酸(mycophenolic acid)、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin);メトトレキセート及び5-フルオロウラシル(5-FU)などの抗-代謝産物;デノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate)のような葉酸類似体;フルダラビン(fludarabine)、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンのようなプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6-アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine)のようなピリミジン類似体;カルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone)のようなアンドロゲン類;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンのような抗副腎剤;フロリン酸(frolinic acid)のような葉酸リプレニッシャー(replenisher);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル(eniluracil);アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate);エポチロン(epothilone);エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);メイタンシン(maytansine)及びアンサマイトシン(ansamitocin)のようなメイタンシノイド(maytansinoid);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン(losoxantrone);2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖類複合体(JHS Natural Products, Eugene, OR);ラゾキサン(razoxane);リゾキシン(rhizoxin);シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2',2''-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(trichothecenes)(特に、T-2トキシン、ベラキュリンA(verracurin A)、ロリデンA(roridin A)及びアングイデン(anguidine));ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);チオテパ;タキソイド、例えばタキソール(登録商標)パクリタキセル、(Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, NJ)、ABRAXANE
TM クレモフォール(Cremophor)を含まない、アルブミン設計のナノ粒子形状のパクリタキセル(American Pharmaceutical Partners, Schaumberg, Illinois)及びタキソテア(登録商標)ドキセタキセル、(Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロランブシル;GEMZAR(登録商標)ゲンシタビン(gemcitabine);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;シスプラチン及びカルボプラチンのようなプラチナ類似体;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標));プラチナ;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標));オキサリプラチン;ロイコボリン;NAVELBINE(登録商標)ビノレルビン;ノバントロン(novantrone);エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロナート(ibandronate);トポイソメラーゼインヒビターRFS2000;ジフルオロメチロールニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド類;カペシタビン(capecitabine)(XELODA(登録商標));上述したものの製薬的に許容可能な塩類、酸類又は誘導体;並びに、上記のうちの2以上の組合せ、例えば、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン及びプレドニソロンの併用治療の略記号であるCHOP、及び5-FUとロイコボリン(leucovovin)と組み合わされるオキサリプラチン(ELOXATINTM)による治療投薬計画の略記号であるFOLFOXが含まれる。
【0049】
また、癌の成長を促進しうるホルモンの影響を調節、低減、阻止(ブロック)又は阻害するように作用し、たびたび全身性、又は全身治療の形態にある抗ホルモン剤もこの定義に含まれる。これらはホルモン類自体でもよい。例として、抗卵胞ホルモン類及び、選択的なエストロゲンレセプターモジュレータ類(SERM)、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェン)、EVISTA(登録商標)ラロキシフェン、ドロロキシフェン(droloxifene)、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストン及びFARESTON(登録商標)トレミフェン、抗プロゲステロン類、エストロゲンレセプター下方制御因子(ERD)、卵巣を抑制するか又は一時停止させるように機能する薬剤、例えば、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト、例えば、LUPRON(登録商標)及びELIGARD(登録商標)酢酸ロイプロリド、ゴセレリンアセテート、ブセレリンアセテート及びトリプトレリン(tripterelin)、他の抗アンドロゲン類、例えばフルタミド、ニルタミド及びビカルタミド、及び、副腎のエストロゲン産生を制御する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害薬、例として、例えば4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)メゲストロールアセテート、AROMASIN(登録商標) エキセメスタン、ホルメスタン、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標) ボロゾール、FEMARA(登録商標) レトロゾール及びARIMIDEX(登録商標) アナストロゾールなどがある。加えて、化学療法剤のこのような定義には、ビスホスホネート、例えばクロドロン酸(例えば、BONEFOS(登録商標)又はOSTAC(登録商標))、DIDROCAL(登録商標)エチドロン酸、NE-58095、ZOMETA(登録商標) ゾレドロン酸/ゾレドロネート、FOSAMAX(登録商標)アレンドロネート、AREDIA(登録商標)パミドロン酸、SKELID(登録商標) チルドロン酸又はACTONEL(登録商標)、リセドロン酸、並びにトロキサチタビン(troxacitabine)(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に異常な細胞増殖に関係するシグナル伝達経路の遺伝子の発現を阻害するもの、例として、例えばPKC-α、Raf、H-Ras及び上皮性成長因子レセプター(EGF-R)、ワクチン、例えばTHERATOPE(登録商標)ワクチン及び遺伝子治療ワクチン、例えばALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン及びVAXID(登録商標)ワクチン、LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1インヒビター、ABARELIX(登録商標) rmRH、ラパチニブジトシラート(ErbB-2及びEGFR二重チロシンキナーゼ小分子インヒビター、GW572016とも称される)、及び、上記の何れかの薬学的に受容可能な塩類、酸又は誘導体が含まれる。
【0050】
ここで用いられる際の「増殖阻害剤」は、細胞の増殖をインビトロ又はインビボの何れかで阻害する化合物又は組成物を意味する。よって、増殖阻害剤は、S期でHip発現細胞の割合を有意に減少させるものである。増殖阻害剤の例は、細胞周期の進行を(S期以外の位置で)阻害する薬剤、例えばG1停止又はM期停止を誘発する薬剤を含む。古典的なM期ブロッカーは、ビンカス(例えばビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキサン類、及びトポイソメラーゼII阻害剤、例えばドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンを含む。またG1停止させるこれらの薬剤は、S期停止にも波及し、例えば、DNAアルキル化剤、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、及びアラ-Cである。更なる情報は、The Molecular Basis of Cancer, Mendelsohn及びIsrael, 編, Chapter 1, 表題「Cell cycle regulation, oncogene, and antineoplastic drugs」, Murakami等, (WB Saunders: Philadelphia, 1995)、特に13頁に見出すことができる。タキサン類(パクリタキセル及びドセタキセル)は、共にイチイに由来する抗癌剤である。ヨーロッパイチイに由来するドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、ローン・プーラン ローラー)は、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、ブリストル-マイヤー スクウィブ)の半合成類似体である。パクリタキセル及びドセタキセルは、チューブリン二量体から微小管の集合を促進し、細胞の有糸分裂を阻害する結果となる脱重合を防ぐことによって微小管を安定化にする。
【0051】
ここで用いる「抗癌療法」は、被検体の癌を低減するか又は阻害する処置を指す。抗癌療法の例には、細胞障害性放射線療法、並びに細胞障害性剤、化学療法剤、増殖阻害性剤、癌ワクチン、脈管形成インヒビター、プロドラッグ、サイトカイン、サイトカインアンタゴニスト、副腎皮質ステロイド、免疫抑制因子、制吐剤、抗体ないし抗体断片又は鎮痛剤の治療上の有効量の被検体への投与が含まれる。
この出願で用いられる用語「プロドラッグ」なる用語は、親薬剤と比較して腫瘍細胞に対する細胞障害性が低く、酵素的に活性化又はより活性な親形態に変換されうる薬学的に活性な物質の前駆体又は誘導体の形態を指す。例として、Wilman, "Prodrugs in Cancer Chemotherapy" Biochemical Society Transactions, 14, pp. 375-382, 615th Meeting Belfast (1986)およびStella et al., "Prodrugs: A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery," Directed Drug Delivery, Borchardt et al., (ed.), pp. 247-267, Humana Press (1985)を参照のこと。プロドラッグには、限定するものではないが、ホスファート含有プロドラッグ、チオホスファート含有プロドラッグ、スルファート含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D-アミノ酸修飾プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、β-ラクタム含有プロドラッグ、任意に置換されたフェノキシアセトアミド含有プロドラッグ、又は任意に置換されたフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、より活性のある細胞毒のない薬剤に転換可能な5-フルオロシトシン及び他の5-フルオロウリジンプロドラッグを含む。限定はしないが、本発明で使用されるプロドラッグ形態に誘導体化可能な細胞障害性剤の例には、前記の化学療法剤が含まれる。
【0052】
「サイトカイン」なる用語は、一つの細胞集団から放出され、他の細胞に細胞間メディエータとして作用するタンパク質の一般用語である。このようなサイトカインの例は、リンホカイン、モノカイン、及び伝統的なポリペプチドホルモンである。サイトカインに含まれるのは、成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン(HGH)、N-メチオニルヒト成長ホルモン、及びウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インシュリン;プロインシュリン;レラキシン;プロレラキシン;糖タンパク質ホルモン、例えば濾胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、及び黄体化ホルモン(LH);上皮性増殖因子(EGF);肝臓成長因子;線維芽成長因子(FGF);プロラクチン;胎盤ラクトゲン;腫瘍壊死因子-α及び-β;ミューラー阻害因子;マウス生殖腺刺激ホルモン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGF-β等の神経成長因子;血小板成長因子;TGF-α及びTGF-β等のトランスフォーミング成長因子(TGFs);インシュリン様成長因子-I及びII;エリスロポエチン(EPO);骨誘発因子;インターフェロン-α、-β、及び-γ等のインターフェロン;コロニー刺激因子(CSFs)、例えばマクロファージ-CSF(M-CSF);顆粒球-マクロファージ-CSF(GM-CSF);及び顆粒球-CSF(G-CSF);インターロイキン(ILs)、例えばIL-1、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-18;腫瘍壊死因子、例えばTNF-α及びTNF-β;及びLIF及びキットリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子である。ここで用いられる際、用語サイトカインには、天然供給源から、又は組換え細胞培養からのタンパク質、及び天然配列サイトカインの生物学的に活性な等価物が含まれる。
【0053】
「サイトカインアンタゴニスト」とは、少なくとも一のサイトカインの生物学的活性を一部又は完全に遮断、阻害、又は中和する分子を意味する。例えば、サイトカインアンタゴニストは、サイトカイン発現および/または分泌を阻害することによって、または、サイトカイン又はサイトカインレセプターに結合することによってサイトカイン活性を阻害してよい。サイトカインアンタゴニストには、抗体、合成又は天然の配列ペプチド、イムノアドヘシン、及びサイトカイン又はサイトカインレセプターに結合する小分子アンタゴニストが含まれる。サイトカインアンタゴニストは場合によって、細胞障害性剤とコンジュゲートされるか又は融合される。例示的なTNFアンタゴニストは、エタネルセプト(ENBREL(登録商標))、インフリキシマブ(REMICADE(登録商標))およびアダリムマブ(HUMIRA
TM)である。
【0054】
本明細書中で用いる「免疫抑制剤」なる用語は、治療される被検体の免疫系を抑制するか又は隠すために作用する物質を指す。これには、サイトカイン産生を抑制する物質、自己抗原発現を下方制御は又は抑制する物質、又は、MHC抗原をマスキングする物質が含まれる。免疫抑制剤の例には、2-アミノ-6-アリル-5-置換ピリミジン(米国特許第4665077号を参照);ミコフェノール酸モフェチル、例えばCELLCEPT(登録商標);アザチオプリン(IMURAN(登録商標)、AZASAN(登録商標)/6‐メルカプトプリン;ブロモクリプチン;ダナゾール;ダプソン;グルタールアルデヒド(米国特許第4120649号に記載のように、MHC抗原をマスキングするもの);MHC抗原およびMHC断片のための抗イディオタイプ抗体;サイクロスポリンA;副腎皮質ステロイドおよび糖質コルチコイドといったステロイド、例えばプレドニゾン、プレドニソロン、例えばPEDIAPRED(登録商標)(プレドニソロンリン酸ナトリウム)又はORAPRED(登録商標)(プレドニソロンリン酸ナトリウム経口溶液)、メチルプレドニゾロンおよびデキサメサゾン;メトトレキセート(経口又は皮下)(RHEUMATREX(登録商標)、TREXALL
TM);ヒドロキシクロロキン/クロロキン;スルファサラジン;レフルノミド;サイトカイン又はサイトカインレセプターアンタゴニスト、例として抗インターフェロン-γ、-β、又は-α抗体、抗腫瘍壊死因子-α抗体(インフリキシマブ又はアダリムマブ)、抗TNFαイムノアドヘシン(ENBREL(登録商標)、エタネルセプト)、抗腫瘍壊死因子-β抗体、抗インターロイキン2抗体、及び抗IL−2レセプター抗体;抗CD11aおよび抗CD18抗体を含む抗LFA-1抗体;抗L3T4抗体;異種性抗リンパ球グロブリン;ポリクローナル又はパンT抗体、又はモノクローナル抗CD3又は抗CD4/CD4a抗体;LFA-3結合ドメインを含む可溶性ペプチド(1990年7月26日公開の国際公開1990/08187);ストレプトキナーゼ;TGF-β;ストレプトドルナーゼ;宿主のRNA又はDNA;FK506;RS-61443;デオキシスペルグアリン;ラパマイシン;T細胞レセプター(Cohen et al.、米国特許第5114721号);T細胞レセプター断片(Offner et al. Science, 251: 430-432 (1991);国際公開1990/11294;Ianeway, Nature, 341: 482 (1989);及び国際公開1991/01133);T10B9といったT細胞レセプター抗体(欧州特許第340109号);シクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標));ダプソン;ペニシラミン(CUPRIMINE(登録商標));血漿交換;または、静脈免疫グロブリン(IVIG)が含まれる。これらは単独で用いられても、互いに、特にステロイド及び他の免疫抑制剤との組合せ、又はこの組合せの後にステロイドの必要性を低減するために維持用量の非ステロイド剤を組み合わせて用いられてもよい。
【0055】
「鎮痛剤」は、被検体の痛みを阻害するかまたは抑制するために作用する薬剤を指す。例示的な鎮痛剤には、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、例えばイブプロフェン(MOTRIN(登録商標))、ナプロキセン(NAPROSYN(登録商標))、アセチルサリチル酸、インドメタシン、スリンダクおよびトルメチン、これらの塩類及び誘導体、並びに、生じうる鋭い痛みを低減するために用いられる様々な他の医薬、例えば抗痙攣剤(ガバペンチン、phenyloin、カルバマゼピン)又は三環系抗鬱薬が含まれる。具体例には、アセトアミノフェン、アスピリン、アミトリプチリン(ELAVIL(登録商標))、カルバマゼピン(TEGRETOL(登録商標))、phenyltoin(DILANTIN(登録商標))、ガバペンチン(NEURONTIN(登録商標))、(E)-N−バニリル−8−メチル−6−ノネアミド(CAPSAICIN(登録商標))又は神経遮断薬が含まれる。
「副腎皮質ステロイド」は、天然に生じる副腎皮質ステロイドの効果を模倣するかあるいは増大するステロイドの一般的な化学構造を有するいくつかの合成又は天然に生じる物質の何れか一つを指す。合成副腎皮質ステロイドの例として、プレドニゾン、プレドニゾロン(メチルプレドニゾロンを含む)、デキサメサゾン、トリアムシノロン及びベタメサゾンが含まれる。
【0056】
ここで用いる「癌ワクチン」は、癌に対して被検体において免疫応答を刺激する組成物である。癌ワクチンは典型的に、抗原に対して免疫応答を更に刺激してブーストする他の構成成分(例えばアジュバント)とともに、被検体に対して自己由来性(自己から)又は同種異系性(他から)である癌関連の物質又は細胞(抗原)の供与源からなる。癌ワクチンにより望ましくは、被検体の免疫系が刺激され、1又はいくつかの特異的抗原に対して抗体が産生され、および/またはそれらの抗原を有する癌細胞を攻撃するためにキラーT細胞が産生される。
ここで用いる「細胞障害性放射線療法」は、細胞の機能を阻害又は予防し、および/または細胞の破壊を引き起こす放射線療法を指す。放射線療法には、例えば、外的光線照射又は抗体などの放射性標識した薬剤による療法が含まれうる。この用語は、放射性同位体(例えばAt
211、I
131、I
125、Y
90、Re
186、Re
188、Sm
153、Bi
212、Ra
223、P
32およびLuの放射性同位体)の使用を含むことを目的とする。
「標的分子」は、(好ましくはスキャッチャード分析によるところの1uM Kdより高い親和性で)本発明のタンパク質複合体に結合することができる分子を指す。標的分子の例には、血清可溶性タンパク質およびそれらのレセプター、例えばサイトカインおよびサイトカインレセプター、アドヘシン、増殖因子およびそれらのレセプター、ホルモン類、ウイルス粒子(例えばRSV Fタンパク質、CMV、StaphA、インフルエンザ、C型肝炎ウイルス)、微生物(例えば細菌細胞タンパク質、真菌細胞)、アドヘシン、CDタンパク質およびそれらのレセプターが含まれるが、これらに限定されない
。
【0057】
「制吐剤」は、被検体における嘔気を軽減又は予防する化合物である。制吐化合物には、例えば、ニューロキニン-1レセプターアンタゴニスト、5HT3レセプターアンタゴニスト(例えばオンダンセトロン、グラニセトロン、トロピセトロンおよびザチセトロン)、GABABレセプターアゴニスト、例としてバクロフェン、デキサメサゾン、KENALOG(登録商標)、ARISTOCORT(登録商標)又はNASALIDE(登録商標)のような副腎皮質ステロイド、抗ドーパミン作動剤、フェノサイアジン(例えばプロクロルペラジン、フルフェナジン、チオリダジンおよびメソリダジン)、ドロナビノール、metroclopramide、ドンペリドン、ハロペリドール、シクリジン、ロラゼパム、プロクロルペラジンおよびレボメプロマジンが含まれる。
「被検体」は、脊椎動物、例として哺乳動物、例えばヒトである。哺乳動物には、家畜(例えばウシ)、スポーツ用動物、愛玩動物(例えばネコ、イヌおよびウマ)、霊長類、マウスおよびラットが含まれるが、これらに限定されない。
【0058】
実施例において示す市販の試薬は、特に明記しない限り製造業者の指示に従って使用した。以下の実施例及び明細書全体にわたってATCC受託番号によって識別される細胞の供与源は、American Type Culture Collection, Manassas, VAである。特に明記しない限り、本発明は、組換えDNA技術の標準的な手順を用いる。これらは本明細書中及び以下のテキストに記載される。上掲のSambrook et al.;Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology (Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y., 1989);Innis et al., PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications (Academic Press, Inc.: N.Y., 1990);Harlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Press: Cold Spring Harbor, 1988);Gait, Oligonucleotide Synthesis (IRL Press: Oxford, 1984);Freshney, Animal Cell Culture, 1987;Coligan et al., Current Protocols in Immunology, 1991。
本明細書及び特許請求の範囲全体を通して、「含む」なる語彙、又は「含む」ないし「含んでいる」の変形型は、定めた完全体又は完全体の群を包含するもので、任意の他の完全体又は完全体の群を除外するものではない。
【0059】
II.コイルドコイル含有およびテザー抗体の構築
本明細書に記載するタンパク質複合体は、ヘテロ二量体化ドメイン(例えばコイルドコイルドメイン)および/またはテザーを使用することにより構築することができる。
ヘテロ二量体化ドメインの使用は、単一抗体内に異なる重鎖を有する比較的純粋な抗体集団の構築を可能にする。特に、上に記載したように、抗体は、それぞれが同一の軽鎖と対合している2つの同一の重鎖を概して含む。本発明のコイルドコイルヘテロ二量体化ドメイン技術の使用は、単一抗体形成の際に異なる抗体重鎖が優先的に互いに二量体化することを可能にする。このようにして得られる抗体は、それぞれが同一の軽鎖と(対合している必要はないが)概して対合している2つの異なる重鎖を含む。そのような抗体におけるそれぞれの重−軽鎖対は、異なる重鎖の存在のため、異なる結合特異性を有するので、該抗体を多重特異性抗体と見なすことができる。テザーを、単独でまたはコイルドコイル技術と併用で、本発明の抗体の改変に活用することもできる。テザーは、定常軽鎖のC末端を可変重鎖のN末端に接続することができ、それ故、適切な軽鎖と重鎖の会合を可能にし、単一の抗体コードプラスミドを使用する組換え抗体生産も可能にする。コイルドコイルおよび/またはテザーを含む抗体を下でさらに説明する。
A.コイルドコイルドメイン
本明細書に記載するタンパク質複合体を生成するために使用されるヘテロ二量体化ドメインは、電荷が逆の残基を含有する第二アルファらせんとの会合によりコイルドコイルを形成することができるアルファらせん(例えば、右巻きのアルファらせん)であり得る。ヘテロ二量体分子の均一なまたはほぼ均一な集団を生成するには、ヘテロ二量体化ドメインが、ホモ二量体に優先してヘテロ二量体を形成する強い優先性を有さなければならない。この点で、本明細書に記載するヘテロ二量体ドメインは、Fos/Junロイシンジッパードメインを超える有意な利点を提供する。Junは、容易にホモ二量体を形成するからである。例示的なアルファらせん二量体化ドメインを
図1、2Aおよび2Bに図解する。特定の実施態様において、第一コイルドコイルドメインは、式Iの7アミノ酸繰り返し:
(X
1X
2X
3X
4X
5X
6X
7)
n (式I)
(式中、
X
1は、疎水性アミノ酸残基またはアスパラギンであり、
X
2、X
3およびX
6は、各々任意のアミノ酸残基であり、
X
4は、疎水性アミノ酸残基であり、ならびに
X
5およびX
7は、各々荷電アミノ酸残基である)
を含有し、および第二コイルドコイルドメインは、式IIの7アミノ酸繰り返し:
(X’
1X’
2X’
3X’
4X’
5X’
6X’
7)
n (式II)
(式中、
X’
1は、疎水性アミノ酸残基またはアスパラギンであり、
X’
2、X’
3およびX’
6は、各々任意のアミノ酸残基であり、
X’
4は、疎水性アミノ酸残基であり、ならびに
X’
5およびX’
7は、各々荷電アミノ酸残基である)
を含有する。式Iおよび式II両方において、nは2以上(例えば、3または4以上)、かつ100以下である。一実施態様において、nは、2と20の間である。
第一コイルドコイルドメインのX
5およびX
7残基ならびに第二コイルドコイルドメインのX’
5およびX’
7残基は、同じ電荷を(有する必要はないが)有することができる。従って、一例では、第一コイルドコイルドメインのX
5およびX
7残基は塩基性残基であり、第二コイルドコイルドメインのX’
5およびX’
7残基は酸性残基である。別の例では、第一コイルドコイルドメインのX
5は塩基性残基であり、第一コイルドコイルドメインのX
7は酸性残基である。この例では、第二コイルドコイルドメインは、X’
5位置に塩基性残基を有し、X’
7位置に酸性残基を有する。
図1に示すように、第一コイルドコイルドメインのX
5残基と第二コイルドコイルドメインのX’
7残基の間ならびに第一コイルドコイルドメインのX
7残基と第二コイルドコイルドメインのX’
5残基の間にイオン性相互作用が生ずる。関連した例では、第一コイルドコイルドメインのX
5は酸性残基であり、第一コイルドコイルドメインのX
7は塩基性残基であり、第二コイルドコイルドメインのX’
5は酸性残基であり、および第二コイルドコイルドメインのX’
7は塩基性残基である。加えて、第一および第二コイルドコイルドメイン両方のX
1/X’
1位置にアスパラギンとともに少なくとも1つの7アミノ酸繰り返しを含めることを用いて、第一および第二コイルドコイルドメインの平行配向を確実にすることができる。
7アミノ酸繰り返しの中の疎水性残基は、好ましくは、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、トリプトファン、フェニルアラニンおよびメチオニンから選択される。プロリンは、疎水性だが、一実施態様では式Iまたは式IIのコイルドコイルドメインに含まれない。アミノ酸配列中のプロリンの存在が、アルファらせん構造を形成するその能力を制限し得るからである。加えて、他の実施態様では、式Iまたは式IIのコイルドコイルドメインは、グリシン残基を含有しない。グリシン残基は、その配座柔軟性のため、拘束アルファらせん構造を容易にとらないからである。式Iまたは式IIのコイルドコイルドメインに含めることができる荷電残基には、リシン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれ、ここでリシン、アルギニンおよびヒスチジンは塩基性残基であり、アスパラギン酸およびグルタミン酸は酸性残基である。
本明細書に記載する抗体の構築は、式Iのコイルドコイルドメインおよび式IIのコイルドコイルドメイン(第一および第二コイルドコイルドメイン)を使用することがあり、この場合、前記第一コイルドコイルドメインを前記抗体の第一定常ドメイン(例えば第一重鎖のCH3)に連結し、第二コイルドコイルドメインを該抗体の第二定常ドメイン(例えば第二重鎖のCH3)に連結する。この結合は、ペプチド結合による直接的な結合である場合があり、またはリンカー配列による場合がある。リンカーは、あるアミノ酸配列(例えば定常領域)のC末端および他のアミノ酸配列(例えばコイルドコイルドメイン)のN末端に結合されたペプチドであり得る。前記リンカーは、本明細書の他の箇所でさらに説明するようなその抗体定常領域からのコイルドコイルドメインの切断を可能にするほどに長いが、2つの抗体定常領域(例えば2つの重鎖定常領域)のヘテロ二量体性会合をもたらすほどに短いものであり得る。従って、リンカーは、2から100アミノ酸長のアミノ酸配列であり得る。特定の実施態様において、前記リンカーは、2アミノ酸長と50アミノ酸長の間、例えば、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45または50アミノ酸長である。前記リンカーは、例えば中性極性または非極性アミノ酸から成り得る。
B.多重特異性抗体
そのような抗体の可変ドメインを幾つかの方法から得ることができることは理解されるはずである。例えば、本発明の抗体の可変ドメインは、当該技術分野において公知の既存の抗体と同じであり得る。
コイルドコイルドメインを用いて多重特異性抗体(少なくとも2つの抗原にまたは同じ抗原上の少なくとも2つのエピトープに結合する抗体)を生成することができる。一例では、多重特異性抗体は二重特異性抗体である。典型的に、自然に生ずるIgG抗体では、抗体のそれぞれの重−軽鎖対の可変領域は同一である。本発明によるコイルドコイルドメインの使用は、抗体内の2つの重鎖が異なることを可能にし、その結果、異なる結合特異性を有する抗原結合ドメインを有する抗体が得られる。特に、各重鎖上の(例えばCH3のC末端側の)コイルドコイルヘテロ二量体化ドメインは、異なる重鎖間の結合を促進する。場合により、コイルドコイルドメインは、組み立て後に抗体からコイルドコイルを取り除くことができるように、切断することができるリンカーによって重鎖定常領域に連結される。
2つの異なる重鎖(HC1およびHC2)および2つの同一のまたは共通の軽鎖を含む、例示的な二重特異性抗体の略図を
図3に示す。
図3における例示的な二重特異性抗体は、ヘテロ二量体コイルドコイルも含有する。この抗体は、各コイルドコイルヘテロ二量体化ドメインのN末端側にLys−Cエンドペプチダーゼ切断部位も含むことができ、抗体が組み立てられるとこの部位によって抗体からコイルドコイルを取り除くことが可能になる。この例示的な二重特異性抗体における両方の重鎖も、ヒンジ領域にLys−Cエンドペプチダーゼ切断部位を取り除くK222A突然変異を含むため、Lys−Cエンドペプチダーゼ処理は、結果として、コイルドコイルを取り除くだけで重鎖定常領域内での切断を生じさせない。
例示的な抗体は、ヒンジ領域にLys−Cエンドペプチダーゼ切断部位を取り除く突然変異を含むが、Lys−Cエンドペプチダーゼ切断部位の位置は使用される抗体配列に依存して様々であり得る。当業者は、抗体の配列を容易にスキャンして、コイルドコイルまたはテザー配列を取り除くことよる抗体自体の切断を回避するために取り除く必要がある何らかの切断部位(例えば、Lys−Cエンドペプチダーゼ切断部位)が重または軽鎖配列内にあるかどうかを判定することができる。
さらに、重鎖がCH1ドメインを欠く(VHがヒンジ−CH2ドメインに直接接続されている)および対応する軽鎖がCLドメインを欠く多重特異性抗体を、本明細書に記載する方法を用いて構築することができる。そのような抗体を使用して、異なる抗原を一緒にすることまたはBおよびT細胞を会合させることができる。
C.一アーム抗体
ヘテロ二量体化コイルドコイルドメインを使用して、一アーム抗体を生成することもできる。一アーム抗体の一例を図解する略図を
図4Aに示す。
図4Aに示す例示的な抗体は、軽鎖(LC);1つの完全長重鎖(HC1);およびVHとCH1ドメインとヒンジ領域の一部とを欠く第二重鎖(HC2)を含む。HC1およびHC2両方がC末端にコイルドコイルヘテロ二量体化ドメインを含む。この例におけるHC1配列は、ヒンジ領域にLys−Cエンドペプチダーゼ切断部位を取り除くK222A突然変異を含有するため、Lys−C切断は、結果として、コイルドコイルを取り除くだけで重鎖内での切断を生じさせない。
D.コンジュゲートタンパク質複合体
コイルドコイルヘテロ二量体化ドメインを使用して、定常領域が細胞障害剤へのコンジュゲーションにより修飾されているタンパク質複合体、例えば抗体(例えば単一特異性、二重特異性、一アームまたはテザー抗体)を生成することもできる。例えば、コイルドコイルヘテロ二量体化ドメインは、重鎖定常領域の1つ(HC1またはHC2)は細胞障害剤へのコンジュゲーションを可能にする修飾を含むがその他の重鎖定常領域は含まない抗体の構築を可能にする。一例では、HC1を細胞障害剤にコンジュゲートさせるが、HC2はさせない。コンジュゲート抗体の一例を図解する略図を
図4Bに示す。この例示的な抗体は、2つの完全長重鎖および2つの同一の軽鎖(共通の軽鎖)、ならびにコイルドコイルを含む。星によって示すように、重鎖の一方が細胞障害剤(例えば、毒素)にコンジュゲートされている。同様に、代替抗体構築物では、軽鎖定常領域の1つを細胞障害剤にコンジュゲートすることができるが、その他の軽鎖定常領域はさせない(例えば、LC1を細胞障害剤にコンジュゲートさせるが、LC2はさせない)。
1つの特定の例では、細胞障害剤を抗体にコンジュゲートさせるために使用されるリンカー試薬のまたは細胞障害剤自体の求核性置換基と反応することができる求電子性部分を導入するように抗体の定常領域を修飾することができる。グリコシル化抗体の糖を例えば過ヨウ素酸塩酸化試薬で酸化させてアルデヒドまたはケトン基を形成することができ、これらの基がリンカー試薬または細胞障害剤のアミン基と反応し得る。結果として生じるイミンシッフ塩基は安定した結合を形成することができ、または例えば水素化ホウ素試薬によってその基を還元して、安定したアミン結合を形成することができる。細胞障害剤の求核性基には、(i)活性エステル、例えばNHSエステル、HOBtエステル、ハロホルマートおよび酸ハロゲン化物;(ii)アルキルおよびベンジルハライド、例えばハロアセトアミド;ならびに(iii)アルデヒド、ケトン、カルボキシルおよびマレイミド基を含む、抗体領域およびリンカー試薬の求電子性基と反応して共有結合を形成できるアミン、チオール、ヒドロキシル、ヒドラジド、オキシム、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボキシレートおよびアリールヒドラジド基が含まれるが、これらに限定されない。
E.テザータンパク質複合体
本発明は、テザーを使用して構築されたタンパク質複合体も提供し、例えば、ある抗体は、定常軽鎖のC末端を可変重鎖のN末端に連結させるテザーを有し得る。テザーは、軽鎖と重鎖の適切な会合(すなわち、軽鎖とそれが繋がれる重鎖との会合)を促す。そのようなテザー抗体を、上で説明したようなヘテロ二量体化ドメインを用いてまたは用いずに構築することができる。コイルドコイルを含有する例示的なテザー抗体の略図を
図5に示す。
図5に示す例示的抗体は、2つの異なる重鎖(HC1およびHC2)、ならびに2つの異なる軽鎖(LC1およびLC2)を含有する。テザー抗体を共通の軽鎖および/または共通の重鎖を含有するように構築することもできる。この例示的な抗体では、HC1およびHC2が、上で説明したように、Lys−Cエンドペプチダーゼ切断部位を取り除くK222A突然変異をヒンジ領域に含み、それらのC末端にコイルドコイルヘテロ二量体化ドメインも含む。
テザー抗体へのヘテロ二量体化ドメインの付加は、重鎖/軽鎖複合体を一緒にすることを促し、それによってそのような複合体のホモ二量体化を減少させるまたは無くす。特定の実施態様において、テザーは、適切な軽鎖/重鎖会合を可能にするために、組み立てられた抗体(
図6)における可変重鎖のN末端と定常軽鎖のC末端の間の距離にわたるほどに長いが、鎖間会合(すなわち、軽鎖とそれが繋がれない重鎖との会合)を防止するほどに短いものであり得る。
図6に示す例において、可変重鎖のN末端と定常軽鎖のC末端の間の距離はおおよそ92Åである。ペプチド結合は、約4.3Åにわたる。この例では、テザーは、可変重鎖のN末端と定常軽鎖のC末端の間の距離にわたるために約22アミノ酸長でなければならない。定常軽鎖のC末端と可変重鎖のN末端の間の距離は、抗体間で異なり得、従って、テザーの長さも抗体間で変わるはずである。20、23および26アミノ酸長のテザーを試験した。一般に、15−50アミノ酸のテザーが有効である。テザーは、柔軟性を維持することができ二次構造を形成してはならない。このために、グリシン(G)およびセリン(S)残基を含有するテザーが使用され得る。テザーは、GおよびS残基のみから成ってもよいが、抗体の軽鎖と重鎖の組み立てを可能ならしめる柔軟性をそのテザーが維持する限り、他の残基を含んでもよい。特定の実施態様において、テザーはGGSリピートを含有する(
図5)。15−30アミノ酸長のテザーの場合、テザーは、一実施態様では、少なくとも5つのGGSリピートを含有する。本明細書に記載され、配列番号:14の配列を有する例示的なテザーは、8つのGGSリピートを含有し、ならびにNおよびC末端両方に追加のグリシン残基を含有する。他の例示的なテザー配列を
図7Bに示す。該配列は、それらのNおよびC末端にフリンまたはLys−Cエンドペプチダーゼ切断部位のいずれかを含有する。
F.テザーおよびリンカー配列の切断
タンパク質複合体を組み立てたら、テザーをもはや必要としないことがあり、必要に応じて抗体から切断することができる。テザーに見出されるが抗体配列には見出されない切断部位を用いて、テザーを取り除くことができる。同様に、抗体を組み立ててしまったらコイルドコイルももはや必要でなく、同じく必要に応じて抗体から切断することができる。
図7Aは、テザーにおけるおよびコイルドコイルを抗体に連結させるリンカー配列における例示的な切断部位の位置を図解するものである。一般に、テザーにおける切断部位は、テザー配列のCおよびN末端にもしくは該部位付近に位置し、または抗体配列内の該抗体とテザーが連結される部位もしくは該部位付近に位置する。リンカーについての切断部位は、一般に、該リンカー配列(またはコイルドコイル)のN末端に位置するか、抗体配列内の該抗体と該リンカー(またはコイルドコイル)が連結される部位または該部位付近に位置する。リンカーが、Lys−Cエンドペプチダーゼを使用して(例えば、定常重鎖のC末端のリシン残基で)切断される場合、その抗体の配列を、Lys−Cエンドペプチダーゼ切断部位を取り除くように修飾する必要があり得る。そのような修飾の一例は、ヒンジ領域内のリシンのアラニンへの突然変異(例えば、K222A、カバット番号付けシステム;本明細書に記載する例示的な抗体におけるK222A、EU番号付けシステム)である。他の切断部位の修飾が必要とされることがあり、様々な切断剤を本発明での使用のために選択して同様の手法でそのような修飾を行うことができる。
特定部位でのアミノ酸配列の切断は当該技術分野において標準的であり、酵素的切断、化学的切断または自己プロセシングを含み得る。例えば、エンドペプチダーゼを使用してテザーまたはリンカーをタンパク質から切断することができる。例示的なエンドペプチダーゼには、限定ではないが、Lys−C、Asp−N、Arg−C、V8、Glu−C、トロンビン、ゲネナーゼ(スブチリシンBPN’プロテアーゼの変異体)、第Xa因子、TEV(タバコエッチウイルスシステインプロテアーゼ)、エンテロキナーゼ、HRV C3(ヒトライノウイルスC3プロテアーゼ)、キニノゲナーゼ、キモトリプシン、トリプシン、ペプシンおよびパパインが含まれ、これらのすべてが(例えば、Boehringer Mannheim、Thermo Scientific、またはNew England Biolabsから)市販されている。Lys−Cは、リシン残基のカルボキシル側で切断し、V8およびGlu−Cは、グルタメート残基のカルボキシル側で切断し、Arg−Cは、アルギニン残基のカルボキシル側で切断し、Asp−Nは、アスパルテート残基のアミノ側で切断し、キモトリプシンは、トリプシン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびロイシン残基のカルボキシル側で切断し、ならびにトリプシンは、アルギニンおよびリシン残基のカルボキシル側で切断する。TEVは、「Gln」残基と「Gly」残基の間のアミノ酸配列GluAsnLeuTyrPheGlnGly(配列番号:19)を切断した。そのような酵素の使用は、当該技術分野において標準的であり、プロトコルは製造業者から入手可能である。
あるいは、ヒドロキシルアミンなどの化学物質を使用してテザーまたはリンカーをタンパク質から切断することができる。ヒドロキシルアミンは、アスパラギン−グリシンペプチド結合を切断する。ヒドロキシルアミンを使用して、テザーおよびリンカーをタンパク質から切断する場合、タンパク質の断片化を回避するために該タンパク質中の幾つかのグリシンまたはアスパラギン残基を突然変異させる必要があり得る。
ペプチド結合を切断する非常に多くの他の化学物質が当該技術分野において公知である。例えば、N−クロロスクシンイミドは、トリプトファン残基のC末端側で切断する(Shechter et al.,Biochemistry 15:5071-5075(1976))。N−ブロモスクシンイミドおよび臭化シアンもトリプトファン残基のC末端側で切断する。加えて、2−ニトロチオシアノ安息香酸または有機ホスフィンを使用して、システイン残基のN末端側でタンパク質を切断することができる(例えば、欧州特許第0339217号を参照)。
リンカーまたはテザーを二塩基性部位(例えば、アルギニン−アルギニン、リシン−アルギニン、またはリシン−リシン部位)で切断することもできる。二塩基性部位で切断する酵素は当該技術分野において公知であり、例えば、N−アルギニン二塩基性転換酵素(Chow et al.,JBC 275:19545-19551(2000))ならびにスブチリシン様プロプロテイン転換酵素、例えばフリン(PC1)、PC2およびPC3(Steiner(1991)in Peptide Biosynthesis and Processing(Fricker ed.)pp.1-16,CRC Press,Boca Raton,FL;Muller et al.,JBC 275:39213-39222,(2000))を含む。
タンパク質が自己プロセシングすることも公知である。例えば、ヘッジホッグタンパク質は、該タンパク質内のタンパク質分解活性によってGly.AspTrpAsnAlaArgTrp.CysPhe切断部位(配列番号:20)でプロセッシングされる。自己タンパク質分解切断部位をリンカーまたはテザー配列に含めることもできる。
G.他のタンパク質の特徴
本発明によるタンパク質は、ヒトもしくはマウス源またはそれらの組み合わせを含む任意の供給源からの配列を含み得る。これらのタンパク質の一定の部分(例えば高頻度可変領域)の配列は、人工配列、例えばランダム配列を含むライブラリ(例えばファージディスプレイライブラリ)のスクリーニングにより同定された配列である場合もある。
異なる供給源からの配列を含む抗体の場合、それらの抗体は、重および/または軽鎖の一部分は特定の種に由来するまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同であるが、該鎖の残部は別の種に由来するまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同である「キメラ」抗体、ならびにそのような抗体の断片(但し、それらが所望の生物学的活性を示すことを条件とする)であり得る(米国特許第4,816,567号;およびMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855(1984))。そのようなキメラ抗体は、例えば、マウス可変領域(またはそれらの一部分)およびヒト定常領域を含むことがある。
場合により、キメラ抗体は、非ヒト抗体に由来する最小限の配列を含有する「ヒト化」抗体であることもある。典型的に、ヒト化抗体は、レシピエントの高頻度可変領域からの残基が、所望の抗体特異性、親和性および能力を有するマウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の高頻度可変領域からの残基によって置換されている、ヒト抗体(レシピエント抗体)である。ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換されていることがある。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体におよびドナー抗体に見出されない残基を含み得る。これらの修飾は、抗体性能をより洗練させるために行われる。一般に、ヒト化抗体は、高頻度可変ループのすべてまたは実質的にすべてが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、かつ、FRのすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリン配列のものである、少なくとも1つ、および典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含む。ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的にはヒト免疫グロブリンのものも場合により含む。さらなる詳細は、Jones et al.,Nature 321:522-525(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988);およびPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596(1992)を参照のこと。
より詳細には、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源から導入された1つ以上のアミノ酸残基を有し得る。これらの非ヒトアミノ酸残基は、多くの場合、「インポート」残基と呼ばれ、典型的には「インポート」可変ドメインから取られる。ヒト化は、齧歯類CDRまたはCDR配列でヒト抗体の対応する配列を置換することにより、本質的にはWinterおよび共同研究者の方法(Jones et al.,Nature 321:522-525(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323-327(1988);Verhoeyen et al.,Science 239:1534-1536(1988))に従って行うことができる。従って、そのような「ヒト化」抗体は、インタクトヒト可変ドメインより実質的に少ないヒト可変領域が非ヒト種からの対応する配列によって置換されているキメラ抗体である(米国特許第4,816,567号)。実際には、典型的に、ヒト化抗体は、多少のCDR残基およびことによると多少のFR残基が齧歯類抗体の類似部位からの残基によって置換されているヒト抗体である。
ヒト化抗体の作製に使用される、軽および重両方の、ヒト可変ドメインの選択は、抗原性を低下させるために非常に重要である。いわゆる「最良適合」法によると、齧歯類抗体の可変ドメインの配列が公知ヒト可変ドメイン配列のライブラリ全体に対してスクリーニングされる。このとき、齧歯類のものに最も近いヒト配列がそのヒト化抗体についてのヒトフレームワーク(FR)と解釈される(Sims et al.,J.Immunol.151:2296(1993);Chothia et al.,J.Mol.Biol.196:901(1987))。もう1つの方法は、軽または重鎖の特定のサブグループのすべてのヒト抗体のコンセンサス配列から誘導される特定のフレームワークを使用する。この同じフレームワークを幾つかの異なるヒト化抗体に使用することができる(Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:4285(1992);Presta et al.,J.Immnol.151:2623(1993))。
抗原に対する高い親和性および他の好適な生物学的特性を保持して抗体をヒト化することがさらに重要である。この目標を達成するために、1つの例示的な方法によると、親およびヒト化配列の三次元モデルを使用する親配列および様々な概念的ヒト化産物の分析プロセスによってヒト化抗体が調製される。三次元免疫グロブリンモデルを一般に利用でき、それらは当業者によく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の有望な三次元高次構造を図解および表示するコンピュータプログラムを利用できる。これらの表示の精査は、候補免疫グロブリン配列の機能化における残基についての可能性のある役割の分析、すなわち候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響を及ぼす残基の分析を可能にする。このようにして、所望の抗体特性、例えば標的抗原に対する親和性増加が達成されるようにレシピエントおよびインポート配列からFR残基を選択して組み合わせることができる。一般に、CDR残基は、抗原結合に影響を及ぼすことに直接的におよび最も実質的に関与する
。
III.ベクター、宿主細胞及び組換え方法
本発明の抗体の組み換え生成のために、コードする核酸を単離して、更なるクローニング(DNAの増幅)又は発現のために複製ベクターに挿入する。抗体をコードするDNAは従来の手順で簡単に単離し、配列決定される(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いて)。多くのベクターが利用可能である。用いる宿主細胞にある程度依存してベクターを選択する。一般的に、好適な宿主細胞は原核生物又は真核生物(一般的に哺乳動物であるが、菌類(例えば酵母)、昆虫、植物、および他の多細胞微生物の有核細胞)由来の細胞である。IgG、IgM、IgA、IgD及びIgE定常領域を含め、任意のアイソタイプの定常領域がこの目的のために使われてもよく、このような定常領域はヒト又は動物種の何れかから得られうることは理解されるであろう。
【0060】
a. 原核生物の宿主細胞を用いた抗体生成
i. ベクターの構築
本発明の抗体のポリペプチド成分をコードしているポリヌクレオチド配列は標準的な組換え技術を使用して得ることができる。所望のポリヌクレオチド配列はハイブリドーマ細胞のような抗体産生細胞から単離し配列決定することができる。あるいは、ポリヌクレオチドはヌクレオチド合成機又はPCR法を使用して合成することができる。ひとたび得られると、ポリペプチドをコードしている配列は原核生物宿主中で異種ポリヌクレオチドを複製し、発現することが可能な組換えベクター中に挿入される。当該分野において入手でき知られている多くのベクターを本発明の目的のために使用することができる。適切なベクターの選択は、主として、ベクターに挿入される核酸のサイズとベクターで形質転換される特定の宿主に依存する。各ベクターは、機能(異種性ポリヌクレオチドの増幅又は発現ないしその両方)及び属する特定の宿主細胞への適合性に応じて、様々な成分を含む。一般的に、限定するものではないが、ベクター成分には複製起源、選択マーカー遺伝子、プロモータ、リボゾーム結合部位(RBS)、シグナル配列、異種性核酸挿入及び転写終末配列が含まれる。
【0061】
一般には、レプリコン及び宿主細胞と適合性のある種に由来するコントロール配列を含んでいるプラスミドベクターが、宿主細胞と関連して使用される。そのベクターは、通常、複製開始点並びに形質転換細胞において表現型の選択を提供可能なマーキング配列を有する。例えば、一般的に大腸菌は、大腸菌種由来のプラスミドであるpBR322を用いて形質転換する。pBR322はアンピシリン(Amp)及びテトラサイクリン(Tet)耐性のコード遺伝子を含んでいるため、形質転換細胞を容易に同定することができる。pBR322、その誘導体又は他の微生物プラスミド又はバクテリオファージも外来性タンパク質を発現する微生物によって使用可能なプロモータを含むか、含むように変更される。特定の抗体の発現に使用されるpBR322誘導体の例はCarter等の米国特許第5648237号に詳細に記載されている。
【0062】
また、レプリコン及び宿主微生物と適合性のあるコントロール配列を含んでいるファージベクターを、これらの宿主との関連でトランスフォーミングベクターとして使用することができる。例えば、λGEM.TM.-11のようなバクテリオファージを、大腸菌LE392のような感受性の宿主細胞を形質転換するために使用できる組換えベクターを作製する際に利用することができる。
【0063】
本発明の発現ベクターは各ポリペプチド成分をコードする2又はそれ以上のプロモータ−シストロン(翻訳単位)対を含みうる。プロモーターはその発現を調節するシストロンの上流(5')に位置している非翻訳配列である。原核生物のプロモーターは典型的には誘導性と構成的との二つのクラスのものがある。誘導性プロモーターは、例えば栄養分の有無又は温度の変化のような、培養条件の変化に応答してその調節下でシストロンの転写レベルを増大させるように誘導するプロモーターである。
【0064】
様々な潜在的宿主細胞によって認識されるプロモータが非常にたくさん公知となっている。選択したプロモーターを、制限酵素消化によって供給源DNAからプロモータを除去し、本発明のベクター内に単離したプロモータを挿入することによって軽鎖又は重鎖をコードするシストロンDNAに作用可能に連結することができる。天然プロモーター配列と多くの異種プロモーターの双方を、標的遺伝子の増幅及び/又は発現を生じさせるために使用することができる。ある実施態様では、天然の標的ポリペプチドプロモーターと比較して、一般的に発現する標的遺伝子をより多く転写させ、効率をよくするので、異種プロモーターが有用である。
【0065】
原核生物宿主での使用に好適なプロモーターには、PhoAプロモーター、βガラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系及びハイブリッドプロモーター、例えばtac又はtrcプロモーターが含まれる。しかし、細菌中で機能性である他のプロモーター(例えば他の既知の細菌又はファージプロモーター)も好適である。そのヌクレオチド配列は発表されており、よって当業者は、任意の必要とされる制限部位を供給するリンカー又はアダプターを使用して標的軽鎖及び重鎖をコードするシストロンにそれらを結合させることができる(Siebenlist等 (1980) Cell 20:269)。
【0066】
本発明の一態様では、組換えベクター内の各シストロンは、膜を貫通して発現されるポリペプチドの転写を誘導する分泌シグナル配列成分を含む。一般に、シグナル配列はベクターの成分でありうるか、ベクター中に挿入される標的ポリペプチドDNAの一部でありうる。この発明の目的のために選択されるシグナル配列は宿主細胞によって認識されプロセシングされる(つまりシグナルペプチダーゼにより切断される)ものでなければならない。異種ポリペプチドに天然のシグナル配列を認識せずプロセシングする原核生物宿主細胞に対しては、シグナル配列は、例えばアルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ippあるいは熱安定性エンテロトキシンII(STII)リーダー、LamB、PhoE、PelB、OmpA及びMBPからなる群から選択される原核生物シグナル配列によって置換される。一実施態様では、発現系の双方のシストロンに使用されるシグナル配列はSTIIシグナル配列又はその変異体である。
【0067】
他の態様では、本発明による免疫グロブリンは宿主細胞の細胞質内で産生されるので、各シストロン内に分泌シグナル配列の存在は必要でない。この点において、免疫グロブリン軽鎖及び重鎖は発現され、折り畳まれ、集合して細胞質内に機能的免疫グロブリンを形成する。ジスルフィド結合形成に好適な細胞質条件を示し、発現したタンパク質サブユニットを好適に折り畳み、集合することができる宿主系が存在する(例として大腸菌trxB
−系)。Proba及びPluckthun Gene, 159:203 (1995)。
【0068】
本発明の抗体を発現するのに適した原核生物宿主細胞には、古細菌及び真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物が含まれる。有用な細菌の例には、エシェリキア属(例えば大腸菌)、バシラス属(例えば枯草菌)、エンテロバクター属、シュードモナス種(例えば緑膿菌)、ネズミチフス菌、霊菌(Serratia marcescans)、クレブシエラ属、プロテウス属、赤痢菌、根粒菌、ビトレオシラ(Vitreoscilla)又はパラコッカス(Paracoccus)が含まれる。一実施態様では、グラム陰性菌が使用される。一実施態様では、大腸菌細胞が本発明の宿主として使用される。大腸菌株の例として、遺伝子型W3110 ΔfhuA (ΔtonA) ptr3 lac Iq lacL8 ΔompTΔ(nmpc-fepE) degP41 kan
R を有する33D3株(米国特許第5,639,635号)を含むW3110株 (Bachmann, Cellular and Molecular Biology, vol. 2 (Washington, D.C.: American Society for Microbiology, 1987), 1190-1219頁;ATCC寄託番号27,325)及びその誘導体が含まれる。また、大腸菌294 (ATCC 31,446), 大腸菌B, 大腸菌
λ 1776 (ATCC 31,537)及び大腸菌RV308(ATCC 31,608) など、他の株及びその誘導体も好適である。この例は限定的なものでなく例示的なものである。定義した遺伝子型を有する上記の何れかの細菌の誘導体の構築方法は当業者に公知であり、例として, Bass等, Proteins, 8:309-314 (1990)に記載されている。一般的に、細菌細胞中でのレプリコンの複製能を考慮して適した細菌を選択することが必要である。pBR322、pBR325、pACYC177、又はpKN410のようなよく知られたプラスミドを使用してレプリコンを供給する場合、例えば、大腸菌、セラシア属、又はサルモネラ種を宿主として好適に用いることができる。典型的に、宿主細胞は最小量のタンパク質分解酵素を分泌しなければならず、望ましくは更なるプロテアーゼインヒビターを細胞培養中に導入することができる。
【0069】
ii. 抗体産生
上述した発現ベクターで宿主細胞を形質転換又は形質移入し、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するのに適するように修飾された通常の栄養培地中で培養する。
形質転換とは、DNAを原核生物宿主中に導入し、そのDNAを染色体外要素として、又は染色体組込みによって複製可能にすることを意味する。使用される宿主細胞に応じて、形質転換はそのような細胞に適した標準的技術を使用してなされる。塩化カルシウムを用いるカルシウム処理は実質的な細胞壁障害を含む細菌細胞のために一般に使用される。形質転換のための他の方法はポリエチレングリコール/DMSOを用いる。さらに別の方法はエレクトロポレーションである。
【0070】
本発明のポリペプチドを生産するために使用される原核生物細胞は当該分野で知られ、選択された宿主細胞の培養に適した培地中で増殖させられる。好適な培地の例には、ルリア培地(LB)プラス必須栄養分サプリメントが含まれる。ある実施態様では、培地は発現ベクターを含む原核生物細胞の増殖を選択的に可能にするために、発現ベクターの構成に基づいて選択される選択剤をまた含む。例えば、アンピシリンがアンピシリン耐性遺伝子を発現する細胞の増殖用培地に加えられる。
【0071】
炭素、窒素及び無機リン酸源の他に任意の必要なサプリメントを、単独で、又は複合窒素源のような他のサプリメント又は培地との混合物として導入される適切な濃度で含有させられうる。場合によっては、培養培地はグルタチオン、システイン、シスタミン、チオグリコレート、ジチオエリトリトール及びジチオトレイトールからなる群から選択される一又は複数の還元剤を含みうる。
【0072】
原核生物宿主細胞は適切な温度で培養される。例えば、大腸菌の増殖に対しては、好適な温度は約20℃から約39℃、より好ましくは約25℃から約37℃の範囲、更により好ましくは約30℃である。培地のpHは、主として宿主生物に応じて、約5から約9の範囲の任意のpHでありうる。大腸菌に対しては、pHは好ましくは約6.8から約7.4、より好ましくは約7.0である。
【0073】
本発明の発現ベクターに誘導性プロモータが用いられる場合、プロモータの活性に適する条件下でタンパク質発現を誘導する。本発明の一態様では、ポリペプチドの転写制御のためにPhoAプロモータが用いられる。したがって、形質転換した宿主細胞を誘導のためにリン酸限定培地で培養する。好ましくは、リン酸限定培地はC.R.A.P培地である(例として、Simmons等, J. Immunol. Methods (2002), 263:133-147を参照)。様々な他の誘導因子は用いるベクターコンストラクトに応じて当業者に知りうるように用いてよい。
【0074】
一実施態様では、発現された本発明のポリペプチドは宿主細胞の細胞膜周辺中に分泌され、そこから回収される。タンパク質の回収は、一般的には浸透圧ショック、超音波処理又は溶解のような手段によって典型的には微生物を破壊することを含む。ひとたび細胞が破壊されると、細胞片又は全細胞を遠心分離又は濾過によって除去することができる。タンパク質は、例えばアフィニティー樹脂クロマトグラフィーによって更に精製することができる。あるいは、タンパク質は培養培地に輸送しそこで分離することができる。細胞を培養物から除去することができ、培養上清は濾過され、生成したタンパク質の更なる精製のために濃縮される。発現されたポリペプチドを更に単離し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(PAGE)及びウェスタンブロットアッセイ法のような一般的に知られている方法を使用して同定することができる。
【0075】
本発明の一側面では、抗体産生は発酵法によって多量に受け継がれる。組換えタンパク質の生産には様々な大規模流加発酵法を利用することができる。大規模発酵は少なくとも1000リットルの容量、好ましくは約1000から100000リットルの容量である。これらの発酵槽は、酸素と栄養分、特にグルコース(好ましい炭素/エネルギー源)を分散させる撹拌翼を使用する。小規模発酵とは一般におよそ100リットル以下の容積で、約1リットルから約100リットルの範囲でありうる発酵槽での発酵を意味する。
【0076】
発酵法では、タンパク質の発現の誘導は、典型的には、細胞が適切な条件下にて、初期定常期に細胞があるステージで、所望の密度、例えば約180−220のOD
550まで増殖したところで開始される。当該分野で知られ上述されているように、用いられるベクターコンストラクトに応じて、様々なインデューサーを用いることができる。細胞を誘導前の短い時間の間、増殖させてもよい。細胞は通常約12−50時間の間、誘導されるが、更に長い又は短い誘導時間としてもよい。
【0077】
本発明のポリペプチドの生産収量と品質を改善するために、様々な発酵条件を変更することができる。例えば、分泌される抗体ポリペプチドの正しい組み立てとフォールディングを改善するために、例えばDsbタンパク質(DsbA、DsbB、DsbC、DsbD及び/又はDsbG)又はFkpA(シャペロン活性を持つペプチジルプロピルシス、トランス-イソメラーゼ)のようなシャペロンタンパク質を過剰発現する更なるベクターを用いて宿主原核細胞を同時形質転換させることができる。シャペロンタンパク質は細菌宿主細胞中で生産される異種性タンパク質の適切な折り畳みと溶解性を容易にすることが実証されている。Chen等 (1999) J Bio Chem 274:19601-19605;Georgiou等, 米国特許第6083715号;Georgiou等, 米国特許第6027888号;Bothmann及びPluckthun (2000) J. Biol. Chem. 275:17100-17105;Ramm及びPluckthun (2000) J. Biol. Chem. 275:17106-17113;Arie等 (2001) Mol. Microbiol. 39:199-210。
【0078】
発現された異種タンパク質(特にタンパク分解を受けやすいもの)のタンパク質分解を最小にするために、タンパク質分解酵素を欠くある種の宿主株を本発明に用いることができる。例えば、原核生物宿主細胞株を改変して、プロテアーゼIII、OmpT、DegP、Tsp、プロテアーゼI、プロテアーゼMi、プロテアーゼV、プロテアーゼVI及びその組合せのような既知の細菌プロテアーゼをコードしている遺伝子に遺伝子突然変異を生じさせることができる。幾つかの大腸菌プロテアーゼ欠損株が利用でき、例えば、上掲のJoly等 (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:2773-2777;Georgiou等, 米国特許第5264365号;Georgiou等, 米国特許第5508192号;Hara等 (1996) Microbial Drug Resistance 2:63-72に記載されている。
ある実施態様では、タンパク質溶解性酵素を欠損した、一以上のシャペロンタンパク質を過剰発現するプラスミドで形質転換した大腸菌株を本発明の発現系の宿主細胞として用いる。
【0079】
iii. 抗体精製
当分野で公知の標準的なタンパク質精製方法を用いることができる。以下の方法は好適な精製手順の例である:免疫親和性又はイオン交換カラムによる分画化、エタノール沈降法、逆相HPLC、シリカ又はDEAEなどの陽性交換樹脂によるクロマトグラフィ、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE、硫酸アンモニウム沈降法及び、例えばSephadex G-75を用いたゲル濾過法。
【0080】
一態様では、固形層に固定したプロテインAを本発明の完全長抗体産物の免疫親和性精製法に用いる。プロテインAは抗体のFc領域に高い親和性で結合する黄色ブドウ球菌から単離した41kDの細胞壁タンパク質である。Lindmark等 (1983) J. Immunol. Meth. 62:1-13。プロテインAを固定した固形層は、ガラス又はシリカ表面、より好ましくは孔を調節したガラスカラム又はケイ酸カラムを含むカラムが好ましい。ある方法では、カラムは非特異的な混入物の接着を防ぐためにグリセロールなどの試薬でコートされている。
【0081】
精製の初めの工程では、上記に記載のように細胞培養物からの調製物をプロテインA固定固形層にアプライし、プロテインAに対象とする抗体を特異的に結合させる。ついで、固形層を洗浄して、固形層に非特異的に結合した混入物を除去する。対象の抗体は、カオトロピック剤又は中性(mild)界面活性剤を含有する溶液への溶出によって固相から回収されてよい。例示的なカオトロピック剤および中性(mild)界面活性剤には、限定するものではないが、グアニジン-HCl、尿素、過塩素酸リチウム、アルギニン、ヒスチジン、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、ツイーン、トリトンおよびNP−40が含まれ、これらすべては市販されている。カラム(例えばmAbSureカラム)からの溶出の後にカオトロピック剤又は中性(mild)界面活性剤を含有する溶液への抗体の希釈は、溶出後の抗体の安定性を維持し、Lys−Cエンドペプチダーゼによるコイルドコイルの効率的な除去を可能にする。
【0082】
b. 真核生物の宿主細胞を用いた抗体の生成
一般的に、ベクターは、限定するものではないが、以下の一以上を含む:シグナル配列、複製起点、一以上のマーカ遺伝子、エンハンサー因子、プロモータ及び転写終末因子。
【0083】
i.シグナル配列成分
真核生物の宿主細胞に用いるベクターは、シグナル配列あるいは成熟タンパク質あるいは対象とするポリペプチドのN末端に特異的切断部位を有する他のポリペプチドを含んでいてもよい。好ましく選択された異種シグナル配列は宿主細胞によって認識され加工される(すなわち、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。哺乳動物細胞での発現においては、哺乳動物のシグナル配列並びにウイルス分泌リーダー、例えば単純ヘルペスgDシグナルが利用できる。このような前駆体領域のDNAは、多価抗体をコードするDNAに読み取り枠を一致させて結合される。
【0084】
ii.複製開始点
一般には、哺乳動物の発現ベクターには複製開始点成分は不要である。例えば、SV40開始点は典型的にはただ初期プロモーターを有しているために用いられる。
【0085】
iii.選択遺伝子成分
発現及びクローニングベクターは、選択可能マーカーとも称される選択遺伝子を含む。典型的な選択遺伝子は、(a)アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートあるいはテトラサイクリンのような抗生物質あるいは他の毒素に耐性を与え、(b)必要があれば栄養要求性欠陥を補い、又は(c)複合培地から得られない重要な栄養素を供給するタンパク質をコードする。
選択方法の一例では、宿主細胞の成長を抑止する薬物が用いられる。異種性遺伝子で首尾よく形質転換した細胞は、薬物耐性を付与するタンパク質を生産し、よって選択工程を生存する。このような優性選択の例は、薬剤ネオマイシン、ミコフェノール酸及びハイグロマイシンを使用する。
【0086】
哺乳動物細胞に適切な選択可能なマーカーの他の例は、抗体核酸を捕捉することのできる細胞成分を同定することを可能にするもの、例えばDHFR、チミジンキナーゼ、メタロチオネインI及びII、好ましくは、霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ等々である。
例えば、DHFR選択遺伝子によって形質転換された細胞は、先ず、DHFRの競合的アンタゴニストであるメトトリキセート(Mtx)を含む培地において形質転換物の全てを培養することで同定される。野生型DHFRを用いた場合の好適な宿主細胞は、DHFR活性に欠陥のあるチャイニーズハムスター卵巣(CHO)株化細胞である(例として、ATCC CRL-9096)。
あるいは、抗体をコードするDNA配列、野生型DHFRタンパク質、及びアミノグリコシド3'-ホスホトランスフェラーゼ(APH)のような他の選択可能マーカーで形質転換あるいは同時形質転換した宿主細胞(特に、内在性DHFRを含む野生型宿主)は、カナマイシン、ネオマイシンあるいはG418のようなアミノグリコシド抗生物質のような選択可能マーカーの選択剤を含む培地中での細胞増殖により選択することができる。例として米国特許第4965199号を参照のこと。
【0087】
iv.プロモーター成分
発現及びクローニングベクターは通常は宿主生物体によって認識され抗体ポリペプチド核酸に作用可能に結合しているプロモーターを含む。真核生物のプロモーター配列が知られている。実質的に全ての真核生物の遺伝子が、転写開始部位からおよそ25ないし30塩基上流に見出されるATリッチ領域を有している。多数の遺伝子の転写開始位置から70ないし80塩基上流に見出される他の配列は、Nが任意のヌクレオチドであるCNCAAT領域である。大部分の真核生物遺伝子の3'末端には、コード配列の3'末端へのポリA尾部の付加に対するシグナルであるAATAAA配列がある。これらの配列は全て真核生物の発現ベクターに適切に挿入される。
【0088】
哺乳動物の宿主細胞におけるベクターからの抗体ポリペプチドの転写は、例えば、ポリオーマウィルス、伝染性上皮腫ウィルス、アデノウィルス(例えばアデノウィルス2)、ウシ乳頭腫ウィルス、トリ肉腫ウィルス、サイトメガロウィルス、レトロウィルス、B型肝炎ウィルス及びサルウィルス40(SV40)のようなウィルスのゲノムから得られるプロモーター、異種性哺乳動物プロモーター、例えばアクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーター、または熱ショックプロモーターによって、このようなプロモーターが宿主細胞系に適合し得る限り、調節される。
SV40ウィルスの初期及び後期プロモーターは、SV40ウイルスの複製起点を更に含むSV40制限断片として簡便に得られる。ヒトサイトメガロウィルスの最初期プロモーターは、HindIIIE制限断片として簡便に得られる。ベクターとしてウシ乳頭腫ウィルスを用いて哺乳動物宿主中でDNAを発現させる系が、米国特許第4419446号に開示されている。この系の変形例は米国特許第4601978号に開示されている。あるいは、ラウス肉腫ウィルス長末端反復をプロモーターとして使用することができる。
【0089】
v.エンハンサーエレメント成分
より高等の真核生物による抗体ポリペプチドをコードしているDNAの転写は、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによってしばしば増強されうる。哺乳動物遺伝子由来の多くのエンハンサー配列が現在知られている(例えばグロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン及びインスリン遺伝子)。また、真核細胞ウィルス由来のエンハンサーが用いられてよい。例としては、複製起点の後期側のSV40エンハンサー(100−270塩基対)、サイトメガロウィルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー及びアデノウィルスエンハンサーが含まれる。真核生物プロモーターの活性化を亢進するのための因子の記載については、Yaniv, Nature, 297:17-18 (1982)もまた参照のこと。エンハンサーは、抗体ポリペプチドコード配列の5'又は3'位でベクター中にスプライシングされうるが、亢進されるのであれば、一般にプロモーターから5'位に位置している。
【0090】
vi.転写終末成分
また、真核生物宿主細胞に用いられる発現ベクターは、典型的には、転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列を含む。このような配列は、真核生物又はウィルスのDNA又はcDNAの5'、時には3'の非翻訳領域から一般に取得できる。これらの領域は、抗体をコードしているmRNAの非翻訳部分にポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。一つの有用な転写終結成分はウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。国際公開第94/11026号とそこに開示された発現ベクターを参照のこと。
【0091】
vii.宿主細胞の選択及び形質転換
ここに記載のベクター中のDNAをクローニングあるいは発現させるために適切な宿主細胞は、脊椎動物の宿主細胞を含む本明細書中に記載の高等真核生物細胞を含む。培養(組織培養)中での脊椎動物細胞の増殖は常套的な手順になっている。有用な哺乳動物宿主株化細胞の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株 (COS-7, ATCC CRL1651);ヒト胚腎臓株(293又は懸濁培養での増殖のためにサブクローン化された293細胞、Graham等, J. Gen Virol., 36:59 (1977));ハムスター乳児腎細胞(BHK, ATCC CCL10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO, Urlaub等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980));マウスのセルトリ細胞(TM4, Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980));サルの腎細胞 (CV1 ATCC CCL70); アフリカミドリザルの腎細胞(VERO-76, ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞 (HELA, ATCC CCL2);イヌ腎細胞 (MDCK, ATCC CCL34);バッファローラット肝細胞 (BRL3A, ATCC CRL1442);ヒト肺細胞 (W138, ATCC CCL75);ヒト肝細胞 (Hep G2, HB8065);マウス乳房腫瘍細胞 (MMT060562, ATCC CCL51);TRI細胞(Mather等, Annals N.Y. Acad. Sci., 383:44-68 (1982));MRC5細胞;FS4細胞;及びヒト肝癌株(HepG2)である。
宿主細胞は、抗体生産のために上述の発現又はクローニングベクターで形質転換され、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、又は所望の配列をコードしている遺伝子を増幅するために適切に修飾された常套的栄養培地で培養される。
【0092】
viii.宿主細胞の培養
本発明の抗体を産生するために用いられる宿主細胞は種々の培地において培養することができる。市販培地の例としては、ハム(Ham)のF10(シグマ)、最小必須培地((MEM),(シグマ)、RPMI-1640(シグマ)及びダルベッコの改良イーグル培地((DMEM),シグマ)が宿主細胞の培養に好適である。また、Ham等, Meth. Enz. 58:44 (1979), Barnes等, Anal. Biochem. 102:255 (1980), 米国特許第4767704号;同4657866号;同4927762号;同4560655号;又は同5122469号;国際公開第90/03430号;国際公開第87/00195号;又は米国再発行特許第30985号に記載された何れの培地も宿主細胞に対する培地として使用できる。これらの培地には何れもホルモン及び/又は他の成長因子(例えばインシュリン、トランスフェリン、又は表皮成長因子)、塩類(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びリン酸塩)、バッファー(例えばHEPES)、ヌクレオチド(例えばアデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えば、GENTAMYCIN
TM薬)、微量元素(最終濃度がマイクロモル範囲で通常存在する無機化合物として定義される)及びグルコース又は等価なエネルギー源を必要に応じて補充することができる。任意の他の必要な補充物質もまた当業者に知られている適当な濃度で含むことができる。培養条件、例えば温度、pH等々は、発現のために選ばれた宿主細胞について過去に用いられているものであり、当業者には明らかであろう。
【0093】
ix.抗体の精製
組換え技術を用いる場合、抗体は細胞内で生成され、又は培地内に直接分泌される。抗体が細胞内に生成された場合、第1の工程として、宿主細胞か溶解された断片の何れにしても、粒子状の細片が、例えば遠心分離又は限外濾過によって除去される。抗体が培地に分泌された場合は、そのような発現系からの上清を、一般的には先ず市販のタンパク質濃縮フィルター、例えばAmicon又はPelliconの限外濾過装置を用いて濃縮する。PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤を上記の任意の工程に含めて、タンパク質分解を阻害してもよく、また抗生物質を含めて外来性の汚染物の成長を防止してもよい。
【0094】
細胞から調製した抗体組成物は、例えば、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、及びアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製でき、アフィニティクロマトグラフィーが好ましい精製技術である。アフィニティーリガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体中に存在する免疫グロブリンFc領域の種及びアイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトγ1、γ2、又はγ4重鎖に基づく抗体の精製に用いることができる(Lindmark等, J. immunol. Meth. 62: 1-13 (1983))。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプ及びヒトγ3に推奨されている(Guss等, EMBO J. 5: 16571575 (1986))。アフィニティーリガンドが結合されるマトリクスはアガロースであることが最も多いが、他の材料も使用可能である。孔制御ガラスやポリ(スチレンジビニル)ベンゼン等の機械的に安定なマトリクスは、アガロースで達成できるものより早い流速及び短い処理時間を可能にする。抗体がC
H3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX
TM樹脂(J.T. Baker, Phillipsburg, NJ)が精製に有用である。イオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、ヘパリンでのクロマトグラフィー、アニオン又はカチオン交換樹脂上でのSEPHAROSE
TMクロマトグラフィー(ポリアスパラギン酸カラム)、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿法も、回収される多価抗体に応じて利用可能である。
ある実施態様では、対象の抗体は、カオトロピック剤又は中性(mild)界面活性剤を含有する溶液への溶出によってカラムの固相から回収される。例示的なカオトロピック剤および中性(mild)界面活性剤には、限定するものではないが、グアニジン-HCl、尿素、過塩素酸リチウム、アルギニン、ヒスチジン、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、ツイーン、トリトンおよびNP−40が含まれ、これらすべては市販されている。
予備的精製工程に続いて、目的の抗体及び混入物を含む混合液をpH約2.5−4.5、好ましくは低塩濃度(例として、約0−0.25M塩)の溶出緩衝液を用いて低pH疎水性作用クロマトグラフィを行う。
【0095】
x.バキュロウイルスを使用した抗体産生
組み換えバキュロウイルスは、スポドプテラ・フルギペルダ細胞(例えばSf9細胞;ATCC CRL1711)またはキイロショウジョウバエS2細胞のような昆虫細胞に抗体ないし抗体断片とBaculoGold
TMウイルスDNA(Pharmingen)をコードするプラスミドを、例えばリポフェクチン(GIBCO-BRLから市販されている)を使用して同時形質移入することによって作製されうる。具体的な例では、抗体配列は、バキュロウイルス発現ベクター内に含有されるエピトープ標識の上流で融合する。このようなエピトープ標識はポリ-Hisタグを含む。pVL1393(Novagen)又はpAcGP67B(Pharmingen)といった市販のプラスミド由来のプラスミドを含め、様々なプラスミドが使用されてよい。簡単に言うと、抗体ないしその断片をコードする配列は、5'および3'領域に相補的なプライマーによるPCRによって増幅されうる。5'プライマーは、隣接(選択した)制限酵素部位を組み込んでよい。次いで、生成物を選択した制限酵素にて消化し、発現ベクターにサブクローニングしてよい。
発現ベクターにて形質移入した後、宿主細胞(例えばSf9細胞)を28℃で4−5日間インキュベートし、放出されたウイルスを回収し、更なる増幅に用いる。ウイルス感染およびタンパク質発現は、例えばO'Reilley et al. (Baculovirus expression vectors: A Laboratory Manual. Oxford: Oxford University Press (1994))に記述されるように実行されてよい。
【0096】
次いで、発現されたポリ-Hisタグ付加抗体を以下の通りに例えばNi
2+-キレート親和性クロマトグラフィにて精製されうる。抽出物は、Rupert et al. (Nature 362:175-179 (1993))に記述されるように組み換えウイルス感染Sf9細胞から調製されうる。簡単に言うと、Sf9細胞を洗浄し、超音波処理バッファ(25mL HEPES pH7.9;12.5mM MgCl
2;0.1mM EDTA;10%グリセロール;0.1%NP−40;0.4M KCl)に再懸濁し、氷上で20秒間、2度超音波処理する。超音波処理物は遠心分離をかけ、上清をローディングバッファ(50mM リン酸塩;300mM NaCl;10%グリセロールpH7.8)にて50倍に希釈し、0.45μmフィルタにて濾過する。Ni
2+-NTAアガロースカラム(Qiagenから市販)は、5mLの総容積にて調製し、25mLの水にて洗浄し、25mLのローディングバッファにて平衡化する。フィルタ処理細胞抽出物は毎分0.5mLでカラムに流す。カラムはローディングバッファにて基準値A
280に洗浄し、ここで分画回収を始める。次に、カラムは、二次洗浄バッファ(50mM リン酸塩;300mM NaCl;10%グリセロールpH6.0)にて洗浄し、非特異的に結合したタンパク質を溶出する。再びA
280基準値に達した後に、カラムは、0〜500mMのイミダゾール勾配を含む二次洗浄バッファにて反応させる。1mLの分画を回収し、SDS-PAGEおよび銀染色またはアルカリホスファターゼ(Qiagen)にコンジュゲートしたNi
2+−NTAによるウエスタンブロットにより分析する。溶出されたHis10タグ付加抗体を含有する分画をプールし、ローディングバッファに対して透析する。
あるいは、抗体の精製は、例えばプロテインA又はプロテインGカラムクロマトグラフィなどの公知のクロマトグラフィ技術を使用して実行されうる。対象の抗体は、カオトロピック剤又は中性(mild)界面活性剤を含有する溶液への溶出によってカラムの固相から回収してもよい。例示的なカオトロピック剤および中性(mild)界面活性剤には、限定するものではないが、グアニジン-HCl、尿素、過塩素酸リチウム、アルギニン、ヒスチジン、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、ツイーン、トリトンおよびNP−40が含まれ、これらすべては市販されている。
【0097】
c.最適化された精製技術
コイルドコイル含有抗体のために使われうるある特定の精製手法を以下に示す。
コイルドコイル含有抗体を4℃のプロテインA(例えばmAbSure)カラムに流す
↓
KPO
4、次いでPBS+0.1%トリトンX114にてカラムを洗浄
↓
試料をトリスpH8.0(200mM)とアルギニン(100mM)に溶出させる
↓
試料のpHを8.0に調整し、37℃、1:500wt:wt LysCで1時間切断
↓
1ml mAbSure樹脂/10mg タンパク質を使用して試料を濃縮し、トリス/アルギニンバッファに溶出
↓
試料をPBS+0.3M NaCl+100mM アルギニン中のS200ゲル濾過カラムに流す
↓
分画を回収し、プールし、PBSに透析する
アルギニンに加え、最初のプロテインAカラム工程の後に上記の精製プロトコールに用いられうる他のカオトロピック剤又は中性(mild)界面活性剤には、限定するものではないが、グアニジン-HCl、尿素、過塩素酸リチウム、ヒスチジン、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、ツイーン、トリトンおよびNP−40が含まれ、これらすべては市販されている。最初のプロテインA含有カラム(例えばmAbSureカラム)からの溶出の後にカオトロピック剤又は中性(mild)界面活性剤を含有する溶液への抗体の希釈は、溶出後の抗体の安定性を維持し、Lys−Cエンドペプチダーゼによりコイルドコイルを効率よく除去することができる。
【0098】
IV.コンジュゲートタンパク質
また、本発明は、本明細書中に記載の抗体(例えば本明細書において記述される方法に従って作製されるコイルドコイル含有抗体、テザー抗体又は抗体)の何れかを含む、コンジュゲート抗体又はイムノコンジュゲート(例えば「抗体-薬剤コンジュゲート」又は「ADC)といったコンジュゲートされたタンパク質であって、このとき軽鎖または重鎖の定常領域のうちの一つが、色素又は細胞障害性剤、例えば化学療法剤、薬剤、増殖阻害性剤、毒素(例えば細菌、真菌、植物又は動物の起源の酵素的に活性な毒素ないしその断片)又は放射性同位体(すなわち放射性コンジュゲート)のような化学的分子にコンジュゲートしている、コンジュゲートされたタンパク質を提供する。特に、本明細書に記述されるように、コイルドコイルドメインの使用により2の異なる重鎖(HC1およびHC2)並びに2の異なる軽鎖(LC1およびLC2)を含有する抗体の構築が可能となる。本明細書に記述される方法を用いて構築されるイムノコンジュゲートは、重鎖のうちの一つ(HC1又はHC2)又は軽鎖のうちの一つ(LC1又はLC2)の定常領域にコンジュゲートした細胞障害性剤を含有してよい。また、イムノコンジュゲートがただ一つの重鎖または軽鎖に接着した細胞障害性剤を有しうるので、被検体に投与される細胞障害性剤の量は、重鎖と軽鎖の両方に接着した細胞障害性剤を有する抗体の投与と比較して低い。被検体に投与される細胞障害性剤の量を減らすことは、細胞障害性剤と関係する副作用を制限する。
【0099】
細胞障害性又は細胞分裂停止性の薬剤、すなわち癌治療における腫瘍細胞を殺す又は阻害するための薬剤の局部運搬に抗体−薬剤コンジュゲートを用いると(Syrigos及びEpenetos (1999) Anticancer Research 19:605-614; Niculescu-Duvaz and Springer (1997) Adv. Drg Del. Rev. 26:151-172;米国特許第4,975,278号)、腫瘍への薬剤成分の標的とする運搬とそこでの細胞内集積が可能となるものであり、この非コンジュゲート薬物作用剤の全身性投与により正常細胞並びに除去しようとする腫瘍細胞への毒性が容認できないレベルとなりうる(Baldwin等, (1986) Lancet pp. (Mar. 15, 1986):603-05; Thorpe, (1985) 「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review,」 in Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications, A. Pincheraら. (ed.s), pp. 475-506)。これによって、最小限の毒性で最大限の効果を求める。ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体はこの方策に有用であるとして報告されている(Rowland等, (1986) Cancer Immunol. Immunother., 21:183-87)。この方法に用いる薬物には、ダウノマイシン、ドキソルビジン、メトトレキサート及びビンデジンが含まれる(Rowland等, (1986)、上掲)。抗体−毒素コンジュゲートに用いる毒素には、ジフテリア毒素などの細菌性毒素、ゲルダナマイシン(Mandlerら(2000) Jour. of the Nat. Cancer Inst. 92(19):1573-1581;Mandlerら(2000) Bioorganic & Med. Chem. Letters 10:1025-1028;Mandlerら(2002) Bioconjugate Chem. 13:786-791)、メイタンシノイド(EP 1391213;Liu等, (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:8618-8623)、及びカリケアマイシン(Lode等, (1998) Cancer Res. 58:2928;Hinman等, (1993) Cancer Res. 53:3336-3342)などのリシン、小分子毒素などの植物毒が含まれる。該毒素は、チューブリン結合、DNA結合又はトポイソメラーゼ阻害を含む機能によりその細胞障害性及び細胞分裂停止性の効果に影響しうる。ある種の細胞障害性剤は、大きな抗体又はタンパク質レセプターリガンドにコンジュゲートした場合に、不活性又は活性が低減する傾向がある。
【0100】
免疫複合体(イムノコンジュゲート)の生成に有用な化学治療薬を本明細書中(例えば、上記)に記載した。用いることのできる酵素活性毒素及びその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、(緑膿菌からの)外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン、アレウリテス・フォーディ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、フィトラカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、モモルディカ・チャランチア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、サパオナリア・オフィシナリス(sapaonaria officinalis)インヒビター、ゲロニン(gelonin)、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)及びトリコテセン(tricothecene)が含まれる。例として1993年10月28日に公開の国際公開公報93/21232を参照のこと。放射性コンジュゲート抗体の生成には、様々な放射性ヌクレオチドが利用可能である。例としては、
212Bi、
131I、
131In、
90Y及び
186Reが含まれる。抗体及び細胞障害性薬の複合体は、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオナート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(ジメチルアジピミデートHCL等)、活性エステル(ジスクシンイミジルスベレート等)、アルデヒド(グルタルアルデヒド等)、ビス-アジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン等)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン等)、ジイソシアネート(トリエン2,6-ジイソシアネート等)、及びビス-活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン等)を用いて作成できる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta等, Science 238: 1098 (1987)に記載されているように調製することができる。カーボン-14-標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体への抱合のためのキレート剤の例である。国際公開94/11026参照。
抗体のコンジュゲートと一又は複数の小分子毒素、例えばカリケアマイシン、メイタンシノイド、ドラスタチン、アウロスタチン、トリコセン(trichothene)及びCC1065、及び毒性活性を有するこれらの毒素の誘導体が、ここで考察される。
【0101】
i. メイタンシン及びメイタンシノイド
いくつかの実施態様では、イムノコンジュゲートは一又は複数のメイタンシノイド分子と結合している本発明の抗体(完全長又は断片)を含んでなる。
メイタンシノイドは、チューブリン重合を阻害するように作用する分裂阻害剤である。メイタンシンは、最初、東アフリカシラブMaytenus serrataから単離されたものである(米国特許第3896111号)。その後、ある種の微生物がメイタンシノイド類、例えばメイタンシノール及びC-3メイタンシノールエステルを生成することが発見された(米国特許第4151042号)。合成メイタンシノール及びその誘導体及び類似体は、例えば米国特許第4,137,230号;同4,248,870号;同4,256,746号;同4,260,608号;同4,265,814号;同4,294,757号;同4,307,016号;同4,308,268号;同4,308,269号;同4,309,428号;同4,313,946号;同4,315,929号;同4,317,821号;同4,322,348号;同4,331,598号;同4,361,650号;同4,364,866号;同4,424,219号;同4,450,254号;同4,362,663号;及び同4,371,533号に開示されている。
メイタンシノイド薬剤成分は、(i) 発酵又は化学修飾、発酵産物の誘導体化によって調製するために相対的に利用可能である(ii) 抗体に対する非ジスルフィドリンカーによる共役に好適な官能基による誘導体化に従う、(iii) 血漿中で安定、そして(iv) 様々な腫瘍細胞株に対して有効であるため、抗体薬剤コンジュゲートの魅力的な薬剤成分である。
【0102】
メイタンシノイドを含有するイムノコンジュゲート、その作製方法及びそれらの治療用途は、例えば米国特許第5,208,020号、同5,416,064号、欧州特許第0425235 B1号に開示されており、その開示は出典を明示してここに取り込まれる。Liu等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:8618-8623(1996)には、ヒト結腸直腸癌に対するモノクローナル抗体C242に結合するDM1と命名されたメイタンシノイドを含有するイムノコンジュゲートが記載されている。前記コンジュゲートは培養された結腸癌細胞に対して高い細胞障害性を有することが見出されており、インビボ腫瘍成長アッセイにおいて抗腫瘍活性を示す。Chari等, Cancer Research, 52:127-131(1992)には、メイタンシノイドが、ジスルフィド結合を介して、ヒト結腸癌株化細胞の抗原に結合するマウス抗体A7、又はHER-2/neuオンコジーンに結合する他のマウスモノクローナル抗体TA.1に結合しているイムノコンジュゲートが記載されている。TA.1-メイタンシノイドコンジュゲートの細胞障害性はヒト乳癌株化細胞SK-BR-3におけるインビトロで試験され、細胞当たり3×10
5HER-2表面抗原が発現した。薬剤コンジュゲートにより、遊離のメイタンシノイド剤に類似した細胞障害度が達成され、該細胞障害度は、抗体分子当たりのメイタンシノイド分子の数を増加させることにより増加する。A7-メイタンシノイドコンジュゲートはマウスにおいては低い全身性細胞障害性を示した。
【0103】
抗体-メイタンシノイドコンジュゲートは、抗体又はメイタンシノイド分子のいずれの生物学的活性もほとんど低減することなく、メイタンシノイド分子に抗体を化学的に結合させることにより調製される。例えば、米国特許第5,208,020号(この開示内容は出典明記により特別に組み込まれる)を参照。1分子の毒素/抗体は、裸抗体の使用において細胞障害性を高めることが予期されているが、抗体分子当たり、平均3−4のメイタンシノイド分子が結合したものは、抗体の機能又は溶解性に悪影響を与えることなく、標的細胞に対する細胞障害性を向上させるといった効力を示す。メイタンシノイドは当該技術分野でよく知られており、公知の技術で合成することも、天然源から単離することもできる。適切なメイタンシノイドは、例えば米国特許第5,208,020号、及び他の特許、及び上述した特許ではない刊行物に開示されている。好ましいメイタンシノイドは、メイタンシノール、及び種々のメイタンシノールエステル等の、メイタンシノール分子の芳香環又は他の位置が修飾されたメイタンシノール類似体である。
【0104】
例えば、米国特許第5,208,020号又は欧州特許第0425235 B1号、Chari等, Cancer Research, 52:127-131(1992)、及び米国特許出願公開2005/0169933(これらの開示内容は出典明記により特別に組み込まれる)に開示されているもの等を含め、抗体-メイタンシノイドコンジュゲートを作製するために、当該技術で公知の多くの結合基がある。リンカー成分SMCCを含んでなる抗体-メイタンシノイドコンジュゲートは、米国特許出願公開2005/0169933に開示されるように調製されうる。結合基には、上述した特許に開示されているようなジスルフィド基、チオエーテル基、酸不安定性基、光不安定性基、ペプチターゼ不安定性基、又はエステラーゼ不安定性基が含まれるが、ジスルフィド及びチオエーテル基が好ましい。更なる結合基を本願明細書中に記載し、例示する。
【0105】
抗体とメイタンシノイドとのコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCL)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン-2,6-ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製することができる。特に好ましいカップリング剤には、ジスルフィド結合により提供されるN-スクシンイミジル-4-(2-ピリジルチオ)ペンタノアート(SPP)及びN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)(Carlsson等, Biochem. J. 173:723-737[1978])が含まれる。
リンカーは結合の種類に応じて、種々の位置でメイタンシノイド分子に結合し得る。例えば、従来からのカップリング技術を使用してヒドロキシル基と反応させることによりエステル結合を形成することができる。反応はヒドロキシル基を有するC-3位、ヒドロキシメチルで修飾されたC-14位、ヒドロキシル基で修飾されたC-15位、及びヒドロキシル基を有するC-20位で生じる。好ましい実施形態において、結合はメイタンシノール又はメイタンシノールの類似体のC-3位で形成される。
【0106】
ii. アウリスタチン類及びドラスタチン類
いくつかの実施態様では、イムノコンジュゲートは、ドラスタチン又はドロスタチンペプチジル類似体及び誘導体、アウリスタチン(auristatin) (米国特許第5635483号;同第5780588号)にコンジュゲートした本発明の抗体を含んでなる。ドラスタチン及びアウリスタチンは、微小管動態、GTP加水分解及び核と細胞の分割を妨げ(Woyke 等 (2001) Antimicrob. Agents and Chemother. 45(12): 3580-3584)、抗癌活性(米国特許第5663149号)及び抗真菌性活性(Pettit 等 (1998) Antimicrob. Agents Chemother. 42:2961-2965)を有することが示されている。ドラスタチン又はアウリスタチン薬剤成分は、ペプチジル薬剤分子のN(アミノ)末端又はC(カルボキシル)末端により抗体に接着しうる(国際公開公報02/088172)。
例示的なアウリスタチンの実施態様は、N末端連結モノメチルアウリスタチン薬剤成分DE及びDFを含み、"Monomethylvaline Compounds Capable of Conjugation to Ligands", 米国出願公開2005/0238649に開示される。この開示内容は出典明記によってその全体が特別に組み込まれる。
【0107】
一般的に、ペプチドベースの薬剤成分は、2以上のアミノ酸及び/又はペプチド断片間でペプチド結合を形成することによって調製されうる。このようなペプチド結合は、例えば、ペプチド化学の分野において周知の液相合成方法に従って調製することができる(E. Schroder and K. Lubke, "The Peptides", volume 1, pp 76-136, 1965, Academic Pressを参照)。アウリスタチン/ドラスタチン薬剤成分は、米国特許第5635483号;同第5780588号;Pettit et al., J. Nat. Prod. 44:482-485 (1981);Pettit et al., Anti-Cancer Drug Design 13:47-66 (1998);Poncet, Curr. Pharm. Des. 5:139-162 (1999);およびPettit, Fortschr. Chem. Org. Naturst. 70:1-79 (1997)の方法に従って調製されうる。また、Doronina (2003) Nat Biotechnol 21(7): 778-784;および"Monomethylvaline Compounds Capable of Conjugation to Ligands" 米国出願公開20050238649も参照のこと。これらは出典明記によってその全体が本願明細書中に組み込まれる(例えば、リンカー及びモノメチルバリン化合物、例えばMMAE及びリンカーにコンジュゲートしたMMAFの調整方法を開示している)。
【0108】
iii. カリケアマイシン
他の実施態様では、イムノコンジュゲートは、一又は複数のカリケアマイシン分子と結合した本発明の抗体を含んでなる。抗生物質のカリケアマイシンファミリーはサブ-ピコモルの濃度で二重鎖DNA破壊を生じることができる。カリケアマイシンファミリーのコンジュゲートの調製については、米国特許第5712374号、同5714586号、同5739116号、同5767285号、同5770701号、同5770710号、同5773001号、同5877296号(全て、American Cyanamid Company)を参照のこと。使用可能なカリケアマイシンの構造類似体には、限定するものではないが、γ
1I、α
2I、α
3I、N-アセチル-γ
1I、PSAG及びθ
I1(Hinman等, Cancer Research, 53:3336-3342(1993)、Lode等 Cancer Research, 58:2925-2928(1998)及び上述したAmerican Cyanamidの米国特許)が含まれる。抗体が結合可能な他の抗腫瘍剤は、葉酸代謝拮抗薬であるQFAである。カリケアマイシン及びQFAは双方共、細胞内に作用部位を有し、原形質膜を容易に通過しない。よって抗体媒介性インターナリゼーションによるこれらの薬剤の細胞への取込により、細胞障害効果が大きく向上する。
【0109】
iv. 他の細胞障害剤
本発明の抗体またはここに記載の方法に従って作製された抗体と結合可能な他の抗腫瘍剤には、BCNU、ストレプトゾイシン、ビンクリスチン及び5-フルオロウラシル、米国特許第5053394号、同5770710号に記載されており、集合的にLL-E33288複合体として公知の薬剤のファミリー、並びにエスペラマイシン(esperamicine)(米国特許第5877296号)が含まれる。
使用可能な酵素活性毒及びその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性断片、外毒素A鎖(シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa))、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシン(modeccin)A鎖、アルファ-サルシン(sarcin)、アレウライツ・フォルディイ(Aleurites fordii)プロテイン、ジアンシン(dianthin)プロテイン、フィトラッカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)プロテイン(PAPI、PAPII及びPAP-S)、モモルディカ・キャランティア(momordica charantia)インヒビター、クルシン(curcin)、クロチン、サパオナリア(sapaonaria)オフィシナリスインヒビター、ゲロニン(gelonin)、マイトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン及びトリコセセンス(tricothecenes)が含まれる。例えば、1993年10月28日公開の国際公開第93/21232号を参照のこと。
本発明は、抗体と核酸分解活性を有する化合物(例えばリボヌクレアーゼ又はDNAエンドヌクレアーゼ、例えばデオキシリボヌクレアーゼ;DNアーゼ)との間に形成されるイムノコンジュゲートをさらに考察する。
【0110】
腫瘍を選択的に破壊するため、抗体は高い放射性を有する原子を含有してよい。放射性コンジュゲートした抗体を生成するために、種々の放射性同位体が利用される。例には、At
211、I
131、I
125、Y
90、Re
186、Re
188、Sm
153、Bi
212、P
32、Pb
212及びLuの放射性同位体が含まれる。コンジュゲートが検出に使用される場合、それはシンチグラフィー研究用の放射性原子、例えばtc
99m又はI
123、又は核磁気共鳴(NMR)映像(磁気共鳴映像、mriとしても公知)用のスピン標識、例えばヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン又は鉄を含有し得る。
放射-又は他の標識が、公知の方法でコンジュゲートに導入される。例えば、ペプチドは生物合成されるか、又は水素の代わりにフッ素-19を含む適切なアミノ酸前駆体を使用する化学的なアミノ酸合成により合成される。標識、例えばtc
99m又はI
123、Re
186、Re
188及びIn
111は、ペプチドのシステイン残基を介して結合可能である。イットリウム-90はリジン残基を介して結合可能である。IODOGEN法(Fraker等(1978) Biochem. Biophys. Res. Commun. 80:49-57)は、ヨウ素-123の導入に使用することができる。他の方法の詳細は、「Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy」(Chatal, CRC Press 1989)に記載されている。
【0111】
抗体と細胞障害剤のコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCL)、活性エステル類(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド類(例えば、グルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン-2,6-ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製することができる。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta等, Science 238:1098(1987)に記載されているようにして調製することができる。炭素-14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレン-トリアミン五酢酸(MX-DTPA)が抗体に放射性ヌクレオチドをコンジュゲートするためのキレート剤の例である。例として国際公開第94/11026号を参照されたい。リンカーは細胞中の細胞障害剤の放出を容易にするための「切断可能リンカー」であってよい。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ過敏性リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカー又はジスルフィド含有リンカーが使用され得る(Chari等, Cancer Research, 52:127-131(1992);米国特許第5208020号)。
本発明の化合物は、限定するものではないが、架橋剤:市販されている(例えば、Pierce Biotechnology, Inc., Rockford, IL., U.S.Aより)BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、及びスルホ-SMPB、及びSVSB (succinimidyl-(4-ビニルスルホン)安息香酸塩)にて調製したADCが特に考えられる。2003-2004 Applications Handbook and Catalogの467-498頁を参照。
【0112】
v. コンジュゲート抗体の調製
本発明のコンジュゲート抗体において、抗体を、場合によってリンカーを介して、一つ以上の薬剤部分(例えば薬剤部分)、例えば抗体につき約1〜約20の部分にコンジュゲートする。コンジュゲート抗体はいくつかの手段、当業者に公知の有機化学反応、状態及び試薬を用いて調製されうる:(1) 共有結合による二価のリンカー試薬と抗体の求核基との反応の後に対象の部分と反応;及び(2) 共有結合による二価のリンカー試薬と部分の求核基との反応の後に抗体の求核基との反応、が含まれる。コンジュゲート抗体を調製するための更なる方法は本願明細書中に記載される。
リンカー試薬は、一つ以上のリンカー成分から成ってもよい。例示的なリンカー成分は、6-マレイミドカプロイル(「MC」)、マレイミドプロパノイル(「MP」)、バリン-シトルリン(「val-cit」)、アラニン-フェニルアラニン(「ala-phe」)、p-アミノベンジルオキシカルボンイル(「PAB」)、N-スクシンイミジル4(2-ピリジルチオ)ペンタノエート(「SPP」)、N-スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1カルボキシレート(「SMCC」)、及びN-スクシンイミジル(4-イオド-アセチル)アミノ安息香酸エステル(「SIAB」)を含む。更なるリンカー成分は当分野で公知であり、そのいくつかは本願明細書において、記述される。また、"Monomethylvaline Compounds Capable of Conjugation to Ligands"、米国出願公開2005/0238649を参照。その内容は出典明記により本願明細書に組み込まれる。
【0113】
いくつかの実施態様では、リンカーはアミノ酸残基を含みうる。例示的なアミノ酸リンカー成分には、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド又はペンタペプチドなどがある。例示的なジペプチドは、バリン-シトルリン(vc又はval-cit)、アラニン-フェニルアラニン(af又はala-phe)を含む。例示的なトリペプチドは、グリシン-バリン-シトルリン(gly-val-cit)及びグリシン-グリシン-グリシン(gly-gly-gly)を含む。アミノ酸リンカー成分を含んでなるアミノ酸残基は、天然に生じるもの、並びに微量のアミノ酸及び非天然に生じるアミノ酸類似体、例えばシトルリンを含む。アミノ酸リンカー成分は設定され、特に酵素、例えば腫瘍関連プロテアーゼ、カテプシンB、C及びD又はプラスミンプロテアーゼによる酵素的切断の選択性に最適化できる。
【0114】
抗体上の求核基には、限定するものでなく、以下のものを含む:(i) N末端アミン基、(ii) 側鎖アミン基、例えばリシン、(iii) 側鎖チオール基、例えばシステイン、及び(iv) 抗体がグリコシル化される糖水酸基又はアミノ基。アミン、チオール及び水酸基は、求核であり、反応して、リンカー部分上の求電子性の群及びリンカー試薬により共有結合を形成することができる:(i) 活性エステル、例えばNHSエステル、HOBtエステル、ハロギ酸及び酸ハロゲン化物;(ii) アルキル及びベンジルハライド、例えばハロアセトアミド;(iii) アルデヒド、ケトン、カルボキシル及びマレイミド群、が含まれる。特定の抗体は、還元しうる鎖間ジスルフィド、すなわちシステイン架橋を有する。抗体は、還元剤、例えばDTT(ジチオトレイトール)による処置によって、リンカー試薬を用いたコンジュゲート反応を行ってもよい。ゆえに、各々のシステイン架橋は、理論的には、2の反応性のチオール求核基を形成する。チオールにアミンを転換させる2-イミノチオラン(トラウトの試薬)を用いてリシンを反応させることによって抗体に付加的な求核基を導入することができる。反応性のチオール基は、1、2、3、4又はそれ以上のシステイン残基を導入する(例えば、一又は複数の非天然のシステインアミノ酸残基を含んでなる変異体抗体を調製する)ことによって抗体(又は、その断片)に導入されてもよい。
【0115】
また、本発明のコンジュゲート抗体は、抗体を修飾して求電子性の部分を導入する(リンカー試薬又は薬剤又は抗体部分上の求核置換基と反応させることができる)ことによって生成してもよい。グリコシル化された抗体の糖質を、例えば過ヨウ素酸塩酸化剤を用いて酸化して、リンカー試薬又は薬剤又は他の部分のアミン基と反応するアルデヒド又はケトン基を形成させてもよい。生じたイミンシッフ塩基群が安定結合を形成するか、又は例えば安定アミン結合を形成させるホウ化水素試薬によって、還元してもよい。一実施態様では、ガラクトースオキシダーゼ又はナトリウムメタ過ヨウ素酸塩の何れかによるグリコシル化抗体の炭水化物部分の反応により、薬剤又は他の部分(Hermanson, Bioconjugate Techniques)上の適当な基と反応することができるタンパク質のカルボニル(アルデヒド及びケトン)基が生じうる。他の実施態様では、N末端セリン又はスレオニン残基を含んでいるタンパク質はナトリウムメタ過ヨウ素酸塩と反応して、第一のアミノ酸の代わりにアルデヒドを生成する(Geoghegan & Stroh, (1992) Bioconjugate Chem. 3:138-146;米国特許第5362852号)。このようなアルデヒドは、薬剤部分又はリンカー求核基と反応することができる。
【0116】
同様に、部分(例えば薬剤部分)上の求核基には、限定するものではないが、以下のものを含む:反応して、リンカー部分及びリンカー試薬上の求電子性の基と共有結合することができるアミン、チオール、ヒドロキシル、ヒドラジド、オキシム、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボン酸エステル及びアリールヒドラジド基:(i) 活性エステル(例えばNHSエステル、HOBtエステル、ハロギ酸及び酸ハロゲン化物);(ii) アルキル及びベンジルハライド、例えばハロアセトアミド;および(iii) アルデヒド、ケトン、カルボキシル及びマレイミド基、が含まれる。
別法として、抗体及び細胞障害剤を含有する融合タンパク質は、例えば組換え技術又はペプチド合成により作製される。DNAの長さは、コンジュゲートの所望する特性を破壊しないリンカーペプチドをコードする領域により離間しているか、又は互いに隣接しているコンジュゲートの2つの部分をコードする領域をそれぞれ含有する。他の実施態様において、腫瘍の事前ターゲティングに利用するために、「レセプター」(例えばストレプトアビジン)に抗体をコンジュゲートし、ここで抗体-レセプターコンジュゲートを個体に投与し、続いて清澄剤を使用し、循環から非結合コンジュゲートを除去し、細胞障害剤(例えば放射性ヌクレオチド)にコンジュゲートする「リガンド」(例えばアビジン)を投与する。
【0117】
V.治療上の使用
本明細書に記載の抗体および抗体断片などのタンパク質複合体(例えば本明細書に記述される方法に従って作製されるコイルドコイル含有抗体、テザー抗体又は抗体)は、治療上の適用のために使われてよい。例えば、このような抗体および抗体断片は、前癌性、非転移性、転移性および癌性の腫瘍(例えば初期癌)を含む腫瘍の治療のため、アレルギー性または炎症性の疾患の治療のため、または自己免疫性疾患の治療のため、または、癌(例えば乳癌、結腸直腸癌、肺癌、腎臓細胞カルチノーマ、膠腫又は卵巣癌)、アレルギー性または炎症性の疾患又は自己免疫性疾患を発症するリスクがある被検体の治療のために使われてよい。
癌なる用語は、前癌性の増殖、良性腫瘍及び悪性腫瘍を含むがこれに限らず、一まとまりの増殖性疾患を包含する。良性腫瘍は、起源の部位に限局化されたままであり、遠位部位に浸潤、侵入又は転移する能力を有していない。悪性腫瘍は、周辺の他の組織に侵入して、障害を与える。また、それらは、起源の部位から切り離れる能力を獲得し、通常はリンパ節が配置されるリンパ系や血流を介して身体の他の部位に拡がりうる(転移する)。 原発性腫瘍は、それらが生じる組織の種類によって分類され、転移性腫瘍は、癌細胞が由来する組織の種類によって分類される。時間とともに、悪性腫瘍の細胞は、より異常になり、正常細胞のようではなくなる。癌細胞にみられるこの変化は、腫瘍グレードと呼ばれており、癌細胞は、十分に分化されている、中程度に分化されている、ほとんど分化されていない、又は、未分化であると表される。十分に分化した細胞はで全く正常な見かけであり、起源の正常細胞のようである。未分化な細胞は、細胞の起源を決定することがもはや不可能であるほど異常となっている細胞である。
【0118】
腫瘍は固形腫瘍であるか、或いは非固形腫瘍又は軟組織腫瘍でありうる。軟組織腫瘍の例には、白血病(例えば、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、成人急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、成熟B細胞急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、前リンパ球性白血病、又はヘアリーセル白血病)、或いはリンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、又はホジキン病)が含まれる。固形腫瘍には、血液、骨髄、又はリンパ系以外の身体組織のあらゆる癌が含まれる。固形腫瘍は更に、上皮細胞を起源とするものと、非上皮細胞を起源とするものとに分けられる。上皮細胞固形腫瘍の例には、胃腸管、結腸、胸部、前立腺、肺、腎臓、肝臓、膵臓、卵巣、頭頸部、口腔、胃、十二指腸、小腸、大腸、肛門、胆嚢、下唇、鼻いん頭、皮膚、子宮、男性生殖器、泌尿器、膀胱、及び皮膚の腫瘍が含まれる。非上皮起源の固形腫瘍には、肉腫、脳腫瘍、及び骨腫瘍が含まれる。
上皮性癌は一般に、良性腫瘍から侵襲前段階(例えばインサイツでの癌腫)、基底膜を透過して、上皮下間質に侵入した悪性癌に発達する。
【0119】
また、多特異性タンパク質複合体は治療上の適用にも用いることができ、HER2を結合する抗体は、特に、乳癌、結腸直腸癌、肺癌、腎臓細胞癌腫、膠腫又は卵巣癌を治療するために用いることができる。
【0120】
本発明の組成物が投与される候補にある他の患者は、血管結合組織の異常増殖、赤瘡、後天性免疫不全症候群、動脈閉塞、アトピー性角膜炎、細菌性潰瘍、ベーチェット疾患、血液が媒介する腫瘍、頸動脈閉塞性疾患、脈絡叢血管新生、慢性炎症、慢性網膜剥離、慢性ブドウ膜炎、慢性 硝子体炎、コンタクトレンズ疲労、角膜移植片拒絶、角膜血管新生、角膜移植片血管新生、クローン病、イールズ病、流行性角結膜炎、真菌潰瘍、単純ヘルペス感染、帯状ヘルペス感染、過粘稠度症候群、カポシ肉腫、白血病、脂質変性、ライム病、周縁表皮剥離、モーレン潰瘍、ハンセン病以外のマイコバクテリア感染、近視、眼性新生血管疾患、視神経窩、オスラー-ウェーバー症候群(オスラー-ウェーバー-ランデュ)、骨関節炎、パジェット病、毛様体扁平部炎、類天疱瘡、phylectenulosis、多発動脈炎、レーザー後合併症、原生動物の感染、弾性線維性偽性黄色腫、翼状片角膜炎乾燥、放射状角膜切開、網膜血管新生、未熟児の網膜症、水晶体後繊維増殖、類肉腫、強膜炎、鎌状赤血球貧血、シェーグレン症候群、固形腫瘍、シュタルガルト病、スティーブンジョンソン病、上辺縁角膜炎、梅毒、全身狼瘡、テリアン周縁変性、トキソプラズマ症、ユーイング肉腫の腫瘍、神経芽細胞腫の腫瘍、骨肉腫の腫瘍、網膜芽細胞腫の腫瘍、横紋筋肉腫の腫瘍、潰瘍性大腸炎、静脈閉塞、ビタミンA欠乏、ヴェゲナー肉芽腫、糖尿病と関係している望ましくない脈管形成、寄生虫病、異常な創傷治癒、手術、損傷又は外傷後の肥大(例えば急性の肺損傷/ARDS)、体毛成長の阻害、排卵および黄体形成の阻害、移植の阻害および子宮における胚発達の阻害を有するか、又は発症するリスクにある。
【0121】
本明細書中に記載の方法に従って作製されるコイルドコイル含有抗体、テザー抗体又は抗体を用いて治療されうるアレルギー性ないし炎症性疾患または自己免疫性疾患の例には、限定するものではないが、関節炎(関節リウマチ(例えば急性の関節炎、慢性の関節リウマチ、痛風性関節炎、急性の痛風性関節炎、慢性炎症性関節炎、変形性関節症、感染性関節炎、ライム関節炎、増殖性関節炎、乾癬の関節炎、椎骨関節炎及び若年性発症関節リウマチ、骨関節炎、関節炎慢性化、関節炎変形、関節炎慢性原発、反応性関節炎、及び強直性脊椎炎)、炎症性過剰増殖性皮膚病、乾癬、例えばプラーク乾癬、滴状乾癬、膿疱性乾癬及び爪乾癬)、皮膚炎、例として接触皮膚炎、慢性接触皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、ヘルペス状の皮膚炎、貨幣状皮膚炎、脂漏性皮膚炎、非特異的皮膚炎、一次刺激物接触皮膚炎及び過敏性皮膚炎、X連鎖性過剰IgM症候群、蕁麻疹、例えば慢性アレルギー性蕁麻疹及び慢性特発性蕁麻疹、例として慢性自己免疫蕁麻疹、多発性筋炎/皮膚筋炎、若年性皮膚筋炎、中毒性上皮性表皮壊死症、強皮症(全身強皮症を含む)、硬化症、例えば全身性硬化症、多発性硬化症(MS)、例えば脊椎-眼(spino-optical) MS)、一次進行性MS(PPMS)及び再発性寛解MS(RRMS)、進行性全身性硬化症、アテローム性動脈硬化、動脈硬化症、硬化症汎発、失調性硬化症、炎症性腸疾患(IBD)(例えばクローン病、自己免疫性胃腸疾患、大腸炎、例えば潰瘍性大腸炎、大腸性潰瘍、微細な大腸炎、膠原性大腸炎、大腸ポリープ、壊死性全腸炎及び経壁の大腸炎、及び自己免疫炎症性腸疾患)、膿皮症壊疽、結節性紅斑、原発性硬化性胆管炎、上強膜炎、呼吸窮迫症候群、例として成人性又は急性の呼吸窮迫症候群(ARDS)、髄膜炎、葡萄膜の全部又は一部の炎症、虹彩炎、脈絡膜炎、自己免疫血液疾患、リウマチ様脊椎炎、リウマチ様関節滑膜炎、突発性聴力障害、IgE媒介性疾患、例えばアナフィラキシー及びアレルギー性鼻炎及びアトピー性鼻炎、脳炎、例えばラスマッセンの脳炎及び辺縁及び/又は脳幹脳炎、ブドウ膜炎、例として、前部ブドウ膜炎、急性前ブドウ膜炎、肉芽腫ブドウ膜炎、非顆粒性ブドウ膜炎、水晶体抗原性ブドウ膜炎、後部ブドウ膜炎又は自己免疫ブドウ膜炎、ネフローゼ症候群を有する又は有さない糸球体腎炎(GN)、例として、慢性又は急性の糸球体腎炎、例として原発性GN、免疫性GN、膜性GN(膜性ネフロパシ)、特発性膜性GN又は特発性膜性ネフロパシ、膜又は膜性増殖性GN(MPGN)(タイプI及びタイプIIを含む)、急速進行性GN、アレルギー性症状、アレルギー性反応、湿疹、例としてアレルギー性又はアトピー性湿疹、喘息、例えば喘息気管支炎、気管支喘息及び自己免疫喘息、T細胞の浸潤を伴う症状及び慢性炎症反応、慢性肺炎症性疾患、自己免疫心筋炎、白血球粘着力欠損、全身性エリテマトーデス(SLE)又は全身性ループスエリテマトーデス、例えば皮膚SLE、亜急性の皮膚SLE、新生児期ループス症候群(NLE)、紅班性狼瘡汎発、ループス(例としてループス腎炎、ループス脳炎、小児ループス、非腎性ループス、腎外ループス、円板状ループス、脱毛症ループス)、若年性開始型(I型)真正糖尿病、例として小児インシュリン依存性真正糖尿病(IDDM)、成人発症型真正糖尿病(II型糖尿病)、自己免疫性糖尿病、特発性の尿崩症、サイトカイン及びTリンパ球によって媒介される急性及び遅発性過敏症と関係する免疫応答、結核、サルコイドーシス、肉芽腫症、例としてリンパ腫肉芽腫症、ヴェゲナーの肉芽腫症、無顆粒球症、脈管炎、例として血管炎、大血管性血管炎(例えば大脈管脈管炎(リウマチ性多発性筋痛及び巨細胞(高安)動脈炎を含む)、中脈管脈管炎(川崎病及び結節性多発動脈炎を含む)、微小多発動脈炎、CNS脈管炎、壊死性血管炎、皮膚性血管炎又は過敏性血管炎、全身性壊死性血管炎、及びANCA関連の脈管炎、例としてチャーグ-ストラウス脈管炎又は症候群(CSS))、側頭動脈炎、無形成性貧血、自己免疫無形成性貧血、クームズ陽性貧血症、ダイアモンドブラックファン貧血症、溶血性貧血又は免疫溶血性貧血、例として自己免疫溶血性貧血(AIHA)、悪性貧血(貧血症悪性熱)、アジソン病、純粋な赤血球貧血症又は形成不全(PRCA)、第VIII因子欠損症、血友病A、自己免疫好中球減少症、汎血球減少症、白血球減少症、白血球血管外遊出を伴う疾患、CNS炎症性疾患、多器官損傷症候群、例えば敗血症、外傷又は出血の二次症状、抗原-抗体複合体関連疾患、抗糸球体基底膜疾患、抗リン脂質抗体症候群、アレルギー性神経炎、ベーチェット又はベーチェット病、カールスマン症候群、グッドパスチャー症候群、レイノー症候群、シェーグレン症候群、スティーブンスジョンソン症候群、類天疱瘡、例えば水疱性類天ぽうそう及び類天疱瘡皮膚、天疱瘡(尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、ペンフィグス粘液膜類天疱瘡及び天疱瘡エリテマトーデスを含む)、自己免疫多腺性内分泌障害、ライター病又は症候群、免疫複合体腎炎、抗体媒介性腎炎、視神経脊髄炎、多発性神経炎、慢性神経障害、例えばIgM多発性神経炎又はIgM媒介性神経障害、血小板減少(例えば心筋梗塞患者によるもの)、例えば血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、及び自己免疫性又は免疫媒介性血小板減少、例えば慢性及び急性のITPを含む特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、自己免疫性精巣炎及び卵巣炎を含む精巣及び卵巣の自己免疫性疾患、一次甲状腺機能低下症、副甲状腺機能低下症、自己免疫内分泌性疾患、例えば甲状腺炎、例えば自己免疫性甲状腺炎、橋本病、慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)又は亜急性の甲状腺炎、自己免疫甲状腺性疾患、特発性甲状腺機能低下症、グレーブ病、自己免疫多腺性症候群、例として多腺性症候群(又は、多腺性内分泌障害症候群)、腫瘍随伴症候群、例として神経系新生物関連症候群、例えばランバート-イートン筋無力症症候群又はイートン―ランバート症候群、スティッフマン又はスティッフマン症候群、脳脊髄炎、例として、アレルギー性脳脊髄炎又は脳脊髄炎性アレルギー及び実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、重症筋無力症、例えば胸腺腫関連の重症筋無力症、小脳性退化、神経ミオトニ、眼球クローヌス又は眼球クローヌス筋硬直症候群(OMS)及び感覚系神経障害、多病巣性運動神経障害、シーハン症候群、自己免疫肝炎、慢性肝炎、類狼瘡肝炎、巨細胞肝炎、慢性活動性肝炎又は自己免疫慢性活動性肝炎、リンパ系間隙間質性肺炎(LIP)、閉塞性細気管支炎(非移植)対NSIP、ギラン‐バレー症候群、ベルガー病(IgAネフロパシ)、特発性IgAネフロパシ、線状IgA皮膚病、原発性胆管萎縮症、肺線維症、自己免疫腸疾患症候群、セリアック病、コエリアック病、脂肪便症(グルテン腸疾患)、抵抗性スプルー、特発性スプルー、クリオグロブリン血症、アミロトロフィック側索硬化症(ALS;筋萎縮性側索硬化症(Lou Gehrig's disease))、冠状動脈疾患、自己免疫性耳疾患、例として、自己免疫内耳疾患(AIED)、自己免疫聴力障害、眼球クローヌス筋硬直徴候(OMS)、多発性軟骨炎、例として、抵抗性又は再発性多発性軟骨炎、肺胞状蛋白症、アミロイドーシス、強膜炎、非癌性リンパ球増多症、一次リンパ球増多症、これにはモノクローナルB細胞リンパ球増多症(例えば良性モノクローナル免疫グロブリン症及び未同定の有意なモノクローナル免疫グロブリン血症(monoclonal gammopathy of undetermined significance)、MGUS)が含まれる、末梢性神経障害、腫瘍随伴症候群、チャネル病、例として、癲癇、片頭痛、不整脈、筋疾患、難聴、盲目、周期性麻痺及びCNSのチャネル病、自閉症、炎症性ミオパシ、局所性分節性糸球体硬化症(FSGS)、内分泌性眼障害、ブドウ膜網膜炎、脈絡網膜炎、自己免疫性肝臓病、線維症、多内分泌性不全、シュミット症候群、副腎炎、胃萎縮、初老期痴呆、脱髄性疾患、例として自己免疫脱髄性病、糖尿病性ネフロパシ、ドレスラー症候群、円形脱毛症、CREST症候群(石灰沈着、レイノー現象、食道運動障害、強指症及び毛細管拡張症)、雌雄自己免疫性不妊性、混合性結合組織病、シャーガス病、リウマチ熱、再発性中絶、農夫肺、多形性紅斑、心切開術後症候群、クッシング症候群、愛鳥家肺、アレルギー性肉芽腫性脈管炎、良性リンパ球血管炎、アルポート症候群、肺胞炎、例えばアレルギー性肺胞炎及び繊維化肺胞炎、間隙肺疾患、輸血反応、ハンセン病、マラリア、リーシュマニア症、キパノソミアシス(kypanosomiasis)、住血吸虫症、蛔虫症、アスペルギルス症、サンプター症候群、カプラン症候群、デング熱、心内膜炎、心内膜心筋線維形成、広汎性間質性肺線維形成、間質性肺線維形成、特発性の肺線維形成、嚢胞性線維症、眼内炎、持久性隆起性紅斑、胎児赤芽球症、好酸性筋膜炎(eosinophilic faciitis)、シャルマン症候群、フェルティー症候群、フィラリア(flariasis)、毛様体炎、例えば慢性毛様体炎、ヘテロ慢性毛様体炎、虹彩毛様体炎、又はFuchの毛様体炎)、ヘーノホ-シェーンライン紫斑病、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染、エコーウィルス感染、心筋症、アルツハイマー病、パルボウィルス感染、風疹ウィルス感染、種痘後症候群、先天性風疹感染、エプスタインバーウイルス感染、耳下腺炎、エヴァンの症候群、自己免疫性腺機能不全、シドナム舞踏病、連鎖球菌感染後腎炎、閉塞性血栓性血管炎(thromboangitis ubiterans)、甲状腺中毒症、脊髄癆、脈絡膜炎、巨細胞多発性筋痛、内分泌性眼障害、慢性過敏性肺炎、乾性角結膜炎、流行性角結膜炎、特発性腎臓症候群、微小変化ネフロパシ、良性家族性及び乏血-再灌流障害、網膜自己免疫、関節炎症、気管支炎、慢性閉塞性気道疾患、珪肺症、アフタ、アフタ性口内炎、動脈硬化症疾患、アスペルミオジェネース(aspermiogenese)、自己免疫性溶血、ベック病、クリオグロブリン血症、デュピュイトラン拘縮、水晶体過敏性眼内炎、腸炎アレルギー、結節性紅斑、leprosum、特発性顔麻痺、慢性疲労症候群、リウマチ性熱、ハンマンリッチ病、感覚器性(sensoneural)聴力障害、血色素尿症発作(haemoglobinuria paroxysmatica)、性機能低下、回腸炎領域、白血球減少症、単核細胞増加症感染、横移動脊髄炎、一次特発性の粘液水腫、ネフローゼ、眼炎symphatica、精巣炎肉芽腫症、膵炎、多発性神経根炎急性、膿皮症壊疽、Quervain甲状腺炎、後天性脾臓萎縮、抗精子抗体による不妊性、非悪性胸腺腫、白斑、SCID及びエプスタインバーウイルス関連疾患、後天性免疫不全症候群(エイズ)、寄生虫病、例えばLesihmania、毒性ショック症候群、食中毒、T細胞の浸潤を伴う症状、白血球-粘着力欠損、サイトカイン及びTリンパ球に媒介される急性及び遅発性過敏症関連免疫応答、白血球血管外遊出を伴う疾患、多器官損傷症候群、抗原-抗体複合体媒介性疾患、抗糸球体基底膜疾患、アレルギー性神経炎、自己免疫多腺性内分泌障害、卵巣炎、原発性粘液水腫、自己免疫萎縮性胃炎、交感性眼炎、リウマチ性疾患、混合性結合組織病、ネフローゼ症候群、膵島炎、多内分泌性不全、末梢性神経障害、自己免疫多腺性症候群I型、成人発症型特発性副甲状腺機能低下症(AOIH)、完全脱毛症、拡張型心筋症、後天性表皮水疱症(EBA)、ヘモクロマトーシス、心筋炎、ネフローゼ症候群、原発性硬化性胆管炎、化膿性又は非化膿性副鼻腔炎、急性又は慢性副鼻腔炎、篩骨、正面、上顎骨又は蝶形骨副鼻腔炎、好酸球性関連疾患、例えば好酸球増加症、肺浸潤好酸球増加症、好酸球増加症-筋肉痛症候群、レフラー症候群、慢性好酸性肺炎、熱帯肺好酸球増加症、気管支肺炎アスペルギルス症、アスペルギローム又は好酸球性を含有する肉芽腫、アナフィラキシー、血清陰性脊椎関節炎疹、多内分泌性自己免疫性疾患、硬化性胆管炎、強膜、上強膜、慢性皮膚粘膜カンジダ症、ブラットン症候群、乳児期の一過性低ガンマグロブリン血症、ウィスコット‐アルドリッチ症候群、毛細血管拡張性運動失調症候群、膠原病と関係する自己免疫疾患、リウマチ、神経病学的疾患、虚血性再灌流障害、血圧応答の減退、血管機能不全、antgiectasis、組織損傷、心血管乏血、痛覚過敏、脳虚血、及び脈管化を伴う疾患、アレルギー性過敏症疾患、糸球体腎炎、再灌流障害、心筋又は他の組織の再
灌流損傷、急性炎症性成分を有する皮膚病、急性化膿性髄膜炎又は他の中枢神経系炎症性疾患、眼性及び眼窩の炎症性疾患、顆粒球輸血関連症候群、サイトカイン誘発性毒性、急性重症炎症、慢性難治性炎症、腎盂炎、肺線維症、糖尿病性網膜症、糖尿病性大動脈疾患、動脈内過形成、消化性潰瘍、弁膜炎、及び子宮内膜症などがある。
治療的な使用に加えて、本発明の抗体は、本明細書中に記載の疾患および症状についての診断的方法といった診断方法を含む他の目的のために用いられうる。
【0122】
VI.用量、製剤および持続時間
本発明のタンパク質は、良好な医療行為に一致した形で処方され、投与量が決められ、投与される。この場合に考慮される因子には、治療されている特定の疾患、治療されている特定の哺乳動物、個々の被検体の臨床症状、疾患の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、及び医師に知られている他のファクターが含まれる。投与されるタンパク質の「治療上有効量」は、このような考慮によって調整され、特定の疾患(例えば癌、アレルギーないし炎症性疾患または自己免疫性疾患)を予防するか、改善するかまたは治療するために必要な最小限量である。タンパク質は、必ずしもそうする必要はないが、場合によっては、疾患の予防又は治療のために現在使用されている一又は複数の薬剤と共に処方される。かかる他の薬剤の有効量は、製剤中に存在するタンパク質の量、疾患又は治療のタイプ、及び上で検討した他の因子に依存する。これらは、一般に、これまで使用されたものと同じ用量及び投与経路で、あるいはこれまで用いられた投薬量の約1から99%で使用される。一般に、癌の寛解又は治療は、癌と関係する一又は複数の症状又は医学的な問題を少なくすることを伴う。治療上有効な量の薬剤によって、以下の何れか又はいくつかが達成される。癌細胞数の(少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%以上の)減少;腫瘍サイズ又は腫瘍負担の低減又は阻害;周辺臓器への癌細胞の浸潤の阻害(すなわちある程度の減少及び/又は停止);腺腫の場合のホルモン分泌の低減;血管密度の低減;腫瘍転移の阻害;腫瘍増殖の低減又は阻害;及び/又は、癌関連の一又は複数の症状のある程度の軽減。ある実施態様では、タンパク質を用いて、被検体の癌又は自己免疫性疾患の発症又は再発を防ぐ。
【0123】
一実施態様では、本発明は、癌又は自己免疫性疾患に罹りやすいか又はそうと診断されたヒト被検体の生存期間を増すために用いられうる。生存期間は、薬剤の最初の投与から死亡の時と定める。また、生存期間は治療中の被検体の死亡のリスクを表す、コントロール群に対する治療群の危険率(HR)を層別化することによって測定することもできる。
更に他の実施態様では、本発明の治療法は、様々な抗癌療法にて治療される癌であると疑われるか診断された一群のヒト被検体において奏効率を有意に増加させる。奏効率は治療に反応した治療された患者の割合と定義される。一態様では、本発明のタンパク質と、手術、放射線療法又は一又は複数の化学療法剤を使用する本発明の併用治療法は、手術、放射線療法又は化学療法単独で治療された群と比較して治療被検体群において奏効率を有意に増大させ、該奏効率は0.005未満のχ二乗p値を有する。癌の治療における治療上の有効性の他の測定値は米国特許出願公開20050186208に記載される。
【0124】
治療用製剤は、所望の純度を有する活性成分を、任意の生理的に許容される担体、賦形剤又は安定剤と混合することによって、当分野で公知の標準的な方法を用いて調製される(Remington's Pharmaceutical Sciences (20th edition), ed. A. Gennaro, 2000, Lippincott, Williams & Wilkins, Philadelphia, PA)。許容可能な担体には、生理食塩水、又はリン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸などのバッファ;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(およそ10未満の残基)のポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン、アミノ酸、例として、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリジン;単糖、二糖および他の炭水化物、例としてグルコース、マンノース又はデキストリン;キレート剤、例えばEDTA;糖アルコール、例えばマンニトール又はソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;および/又は非イオン性界面活性剤、例えばTWEEN
TM、PLURONICS
TM又はPEGが含まれる。
場合によって、しかし、好ましくは、製剤は、薬学的に許容可能な塩、好ましくは塩化ナトリウムを、好ましくは生理的濃度で含有する。場合によって、本発明の製剤は、薬学的に許容可能な防腐剤を含有してもよい。いくつかの実施態様では、保存の濃度は、0.1から2.0%、一般的にv/vの範囲である。好適な防腐剤には製薬の分野で知られているものが含まれる。ベンジルアルコール、フェノール、m−クレゾール、メチルパラベンおよびプロピルパラベンは、好適な防腐剤である。場合によって、本発明の製剤は、0.005〜0.02%の濃度で、薬学的に許容可能な界面活性剤を含んでもよい。
【0125】
また、本明細書中の製剤は、治療される特定の徴候の必要に応じて、一よりも多い活性な化合物、好ましくは互いに悪影響を与えない相補的活性を有するものを含有してもよい。このような分子は、意図する目的のために有効である量で組み合わされて適切に存在する。
活性成分はまた、コロイド性薬物デリバリーシステム(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロカプセル、ミクロエマルション、ナノ−粒子、およびナノカプセルなど)又はマクロエマルション中、例えば、それぞれ、コアセルベーション法又は界面重合法によって製造された、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン−マイクロカプセルおよびポリ−(メチルメタシラート)(poly-(methylmethacylate) マイクロカプセルに取込むことができる。このような技術は、上掲のRemington's Pharmaceutical Sciencesにおいて開示される。
徐放性製剤も調製できる。徐放性製剤の適切な例には、抗体を含有する固形疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが含まれ、このマトリックスはフィルムやマイクロカプセル等の成形品の形である。徐放性マトリックスの例として、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリアクチド(米国特許第3773919号)、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタマートの共重合体、非−分解性エチレン−ビニルアセテート、LUPRON DEPOT
TM(乳酸−グリコール酸共重合体および酢酸ロイプロリド(leuprolide acetate)から構成される注射用ミクロスフェア)のような分解性乳酸−グリコール酸共重合体、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレン−ビニルアセテートおよび乳酸−グルコール酸のようなポリマーは分子を100日間にわたって放出することができるが、ある種のヒドロゲルはタンパクをより短時間の間放出する。被包された抗体が体内に長時間維持された場合、37℃で水分に暴露されて変性するか凝集し、結果として生物学的活性を失い免疫原性が変化するかもしれない。関与する機構に応じて安定化のための合理的な戦略を考案することができる。例えば、凝集機構がチオ−ジスルフィド交換を介する分子間S−S結合の形成であることが分かれば、安定化は、スルフヒドリル残基の修飾、酸性溶液からの凍結乾燥、水分含量のコントロール、適当な添加物の使用、および特異的なポリマーマトリックス組成物の使用によって達成することができる。
【0126】
ここに記載のタンパク質(例えばコイルドコイル含有抗体、テザー抗体、またはここに記載の方法に従って作製された抗体)は、ボーラスとして又はある期間の連続注入による静脈内投与、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液内、包膜内、経口、局所などの投与経路又は吸入経路などの既知の方法でヒト患者に投与される。広範囲な副作用又は毒性がタンパク質が認識する標的分子に対する拮抗作用と関係している場合、局所投与が特に望ましい。また、エクスビボ方策が医療適用のために用いられてもよい。エクスビボ方策は、本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを被検体から得られる細胞に形質移入させるか又は形質導入させることを伴う。形質移入させるか又は形質導入させた細胞は、次いで被検体に戻される。細胞は、造血性細胞(例えば骨髄細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞、T細胞又はB細胞)、線維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、ケラチン合成細胞又は筋細胞を含むが、これらに限定されるものではない様々な範囲のいずれかでありうる。
一例では、タンパク質(例えばコイルドコイル含有抗体、テザー抗体、またはここに記載の方法に従って作製された抗体)は、疾患又は腫瘍の位置が許す限り、例えば直接注射によって局所的に投与され、この注射は周期的に繰り返されうる。また、タンパク質複合体は、局所の再発又は転移を予防するかまたは低減するために、被検体に全身的に、又は腫瘍細胞、例えば腫瘍の外科的切除後の腫瘍又は腫瘍巣に直接、送達されてよい。
【0127】
VII.製造品
本発明の他の実施態様は、本明細書中に記載の一又は複数のタンパク質複合体と疾患(例えば自己免疫性疾患または癌)の治療または診断に有用な材料を具備する製造品である。製造品は、容器と容器上ないしは容器に付随するラベルないしはパッケージ挿入物を具備する。適切な容器には、例えば瓶、バイアル、注射器などが含まれる。容器は、ガラス又はプラスチックのような様々な材料から形成されてよい。容器は、症状の治療に有効である組成物を収容し、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は皮下注射針により貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであってよい)。組成物中の少なくとも一つの活性薬剤は本発明の抗体ないしその抗体断片である。ラベル又はパッケージ挿入物は、組成物が特定の疾患の治療に用いられることを示す。ラベル又はパッケージ挿入物は更に、抗体組成物を被検体に投与するための指示を含む。また、本明細書中に記載の併用用治療を含む製造品及びキットも考慮される。
パッケージ挿入物は、慣習的に治療用製品の市販パッケージに含まれる指示書を指し、効能、使用、用量、投与、禁忌及び/又はこのような治療用製品の使用に関する警告についての情報を含むものである。他の実施態様では、パッケージ挿入物は、組成物が、乳癌、結腸直腸癌、肺癌、腎臓細胞癌腫、膠腫又は卵巣癌の治療のために用いられることを示す。
さらに、製造品は、製薬的に許容可能なバッファー、例えば注射用の静菌水(BWFI)、リン酸緩衝塩水、リンガー液及びデキストロース溶液を含む第2の容器を具備してもよい。さらに、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針及びシリンジを含む商業的及び使用者の見地から望ましい他の材料を含んでもよい。
【0128】
また、様々な目的、例えば抗原(例えばHER2またはEGFR)を細胞から精製する又は免疫沈降するために有用なキットが提供される。抗原(例えばHER2またはEGFR)の単離又は精製のために、キットは、ビーズ(例えばセファロースビーズ)に結合した抗体(例えばEGFR/HER2抗体)を含みうる。例えば、ELISA又はウエスタンブロットにおいて、抗原をインビトロで検出及び定量するための抗体を具備するキットが提供されうる。製造品と同様に、キットは、容器と容器上ないしは容器に付随するラベルないしはパッケージ挿入物を具備する。容器は、本発明の少なくとも一の多重特異性抗体ないし抗体断片を含む組成物を収容する。例えば希釈剤及びバッファ又はコントロール抗体を具備する他の容器が具備されてよい。ラベル又はパッケージ挿入物は、組成物の説明並びにインビトロでの使用又は診断上の使用についての指示を提供してよい。
【0129】
前述の記載は当業者が本発明を実施するために十分であるとみなされる。以下の実施例は、事例のためだけであって、本発明の権利範囲が制限されるものでは決してない。事実、本明細書に示したもの及び記載内容に本発明の様々な変更が加わることは、前述の記載から当業者に明らかであり、添付の特許請求の範囲内のものである。
【0130】
VII.標的分子
本発明の複合体によって標的化されうる分子の例には、限定するものではないが、可溶性血清タンパク質およびそのレセプターおよび他の膜結合タンパク質(例えばアドヘシン)が含まれる。
他の実施態様では、本発明の結合タンパク質は、BMPl、BMP2、BMP3B (GDFlO)、BMP4、BMP6、BMP8、CSFl (M-CSF)、CSF2 (GM-CSF)、CSF3 (G-CSF)、EPO、FGFl (aFGF)、FGF2 (bFGF)、FGF3 (int-2)、FGF4 (HST)、FGF5、FGF6 (HST-2)、FGF7 (KGF)、FGF9、FGF10、FGF11、FGF12、FGF12B、FGF14、FGF16、FGF17、FGF19、FGF20、FGF21、FGF23、IGF1、IGF2、IFNAl、IFNA2、IFNA4、IFNA5、IFNA6、IFNA7、IFNBl、IFNG、IFNWl、FELl、FELl (EPSELON)、FELl (ZETA)、ILlA、ILlB、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、IL10、ILIl、IL12A、IL12B、IL13、IL14、IL15、IL16、IL17、IL17B、IL18、IL19、IL20、IL22、IL23、IL24、IL25、IL26、IL27、IL28A、IL28B、IL29、IL30、PDGFA、PDGFB、TGFA、TGFB1、TGFB2、TGFB3、LTA (TNF-b)、LTB、TNF (TNF-a )、TNFSF4 (OX40リガンド)、TNFSF5 (CD40リガンド)、TNFSF6 (FasL)、TNFSF7 (CD27リガンド)、TNFSF8 (CD30リガンド)、TNFSF9 (4-1BB リガンド)、TNFSFl0 (TRAIL)、TNFSF1l (TRANCE)、TNFSF12 (APO3L)、TNFSF13(April)、TNFSF13B、TNFSF14 (HVEM-L)、TNFSF15 (VEGI)、TNFSF18、HGF (VEGFD)、VEGF、VEGFB、VEGFC、ILlR1、IL1R2、IL1RL1、LL1RL2、IL2RA、IL2RB、IL2RG、IL3RA、IL4R、IL5RA、IL6R、IL7R、IL8RA、IL8RB、IL9R、ILl0RA、ILl0RB、IL1lRA、IL12RB1、IL12RB2、IL13RA1、IL13RA2、IL15RA、IL17R、IL18R1、IL20RA、IL21R、IL22R、IL1HY1、ILlRAP、IL1RAPL1、IL1RAPL2、ILlRN、IL6ST、IL18BP、IL18RAP、IL22RA2、AIFl、HGF、LEP (レプチン)、PTN、およびTHPOからなる群から選択される1、2またはそれ以上のサイトカイン、サイトカイン関連タンパク質およびサイトカインレセプターを結合することができる。
【0131】
他の実施態様では、標的分子は、CCLl (I- 309)、CCL2 (MCP -1 / MCAF)、CCL3 (MIP-Ia)、CCL4 (MIP-Ib)、CCL5 (RANTES)、CCL7 (MCP- 3)、CCL8 (mcp-2)、CCLH (eotaxin)、CCL13 (MCP-4)、CCL15 (MIP-Id)、CCL16 (HCC-4)、CCL17 (TARC)、CCL18 (PARC)、CCL19 (MDP-3b)、CCL20 (MIP-3a)、CCL21 (SLC / exodus-2)、CCL22 (MDC / STC-I)、CCL23 (MPIF-I)、CCL24 (MPIF-2 /エオタキシン-2)、CCL25 (TECK)、CCL26 (エオタキシン- 3)、CCL27 (CTACK / ILC)、CCL28、CXCLl (GROl)、CXCL2 (GRO2)、CXCL3 (GR03)、CXCL5 (ENA-78)、CXCL6 (GCP-2)、CXCL9 (MIG)、CXCLlO (IP 10)、CXCLIl (I-TAC)、CXCL12 (SDFl)、CXCL13、CXCL14、CXCL16、PF4 (CXCL4)、PPBP (CXCL7)、CX3CL1 (SCYDl)、SCYEl、XCLl (リンホタクチン)、XCL2 (SCM-Ib)、BLRl (MDR15)、CCBP2 (D6 / JAB61)、CCRl (CKRl / HM145)、CCR2 (mcp-lRB / RA)、CCR3 (CKR3 / CMKBR3)、CCR4、CCR5 (CMKBR5 / ChemR13)、CCR6 (CMKBR6 / CKR-L3 / STRL22 / DRY6)、CCR7 (CKR7 / EBIl)、CCR8 (CMKBR8 / TERl / CKR- Ll)、CCR9 (GPR-9-6)、CCRLl (VSHKl)、CCRL2(L-CCR)、XCRl(GPR5/CCXCRl)、CMKLRl、CMKORl(RDCl)、CX3CR1(V28)、CXCR4、GPR2(CCRlO)、GPR31、GPR81(FKSG80)、CXCR3(GPR9/CKR-L2)、CXCR6(TYMSTR/STRL33/ボンゾー)、HM74、IL8RA(IL8Ra)、IL8RB(IL8Rb)、LTB4R(GPR16)、TCPlO、CKLFSF2、CKLFSF3、CKLFSF4、CKLFSF5、CKLFSF6、CKLFSF7、CKLFSF8、BDNF、C5R1、CSF3、GRCClO(ClO)、EPO、FY(DARC)、GDF5、HDFlA、DL8、プロラクチン、RGS3、RGS13、SDF2、SLIT2、TLR2、TLR4、TREMl、TREM2およびVHLからなる群から選択される、ケモカイン、ケモカインレセプターまたはケモカイン関連タンパク質である。
【0132】
他の実施態様では、本発明の結合タンパク質は、ABCFl;ACVRl;ACVRlB;ACVR2;ACVR2B;ACVRLl;AD0RA2A;アグリカン;AGR2;AICDA;AIFl;AIGl;AKAPl;AKAP2;AMH;AMHR2;ANGPTl;ANGPT2;ANGPTL3;ANGPTL4;ANPEP;APC;APOCl;AR;AZGPl(亜鉛-a-糖タンパク質);B7.1;B7.2;BAD;BAFF(BLys);BAGl;BAIl;BCL2;BCL6;BDNF;BLNK;BLRl(MDR15);BMPl;BMP2;BMP3B(GDFlO);BMP4;BMP6;BMP8;BMPRlA;BMPRlB;BMPR2;BPAGl(プレクチン);BRCAl;C19orflO(IL27w);C3;C4A;C5;C5R1;CANTl;CASP1;CASP4;CAVl;CCBP2(D6/JAB61);CCLl(1-309);CCLIl(エオタキシン);CCL13(MCP-4);CCL15(MIP-Id);CCL16(HCC-4);CCL17(TARC);CCL18(PARC);CCL19(MIP-3b);CCL2(MCP-1);MCAF;CCL20(MIP-3a);CCL21(MTP-2);SLC;exodus-2;CCL22(MDC/STC−I);CCL23(MPIF−1);CCL24(MPIF-2/エオタキシン-2);CCL25(TECK);CCL26(エオタキシン-3);CCL27(CTACK/ILC);CCL28;CCL3(MTP-Ia);CCL4(MDP-Ib);CCL5(RANTES);CCL7(MCP-3);CCL8(mcp-2);CCNAl;CCNA2;CCNDl;CCNEl;CCNE2;CCRl(CKRl/HM145);CCR2(mcp-lRB/RA);CCR3(CKR3/CMKBR3);CCR4;CCR5(CMKBR5/ChemR13);CCR6(CMKBR6/CKR-L3/STRL22/DRY6);CCR7(CKR7/EBIl);CCR8(CMKBR8/TERl/CKR-Ll);CCR9(GPR-9-6);CCRLl(VSHKl);CCRL2(L-CCR);CD164;CD19;CDlC;CD20;CD200;CD22;CD24;CD28;CD3;CD37;CD38;CD3E;CD3G;CD3Z;CD4;CD40;CD40L;CD44;CD45RB;CD52;CD69;CD72;CD74;CD79A;CD79B;CD8;CD80;CD81;CD83;CD86;CDHl(Eカドヘリン);CDH10;CDH12;CDH13;CDH18;CDH19;CDH20;CDH5;CDH7;CDH8;CDH9;CDK2;CDK3;CDK4;CDK5;CDK6;CDK7;CDK9;CDKNlA(p21Wapl/Cipl);CDKNlB(p27Kipl);CDKNlC;CDKN2A(P16INK4a);CDKN2B;CDKN2C;CDKN3;CEBPB;CERl;CHGA;CHGB;キチナーゼ;CHST10;CKLFSF2;CKLFSF3;CKLFSF4;CKLFSF5;CKLFSF6;CKLFSF7;CKLFSF8;CLDN3;CLDN7(クローディン-7);CLN3;CLU(クラステリン);CMKLRl;CMKORl(RDCl);CNRl;COL18A1;COLlAl;COL4A3;COL6A1;CR2;CRP;CSFl(M-CSF);CSF2(GM-CSF);CSF3(GCSF);CTLA4;CTNNBl(b-カテニン);CTSB(カテプシンB);CX3CL1(SCYDl);CX3CR1(V28);CXCLl(GROl);CXCL10(IP-10);CXCLIl(I−TAC/IP-9);CXCL12(SDFl);CXCL13;CXCL14;CXCL16;CXCL2(GRO2);CXCL3(GRO3);CXCL5(ENA-78/LIX);CXCL6(GCP-2);CXCL9(MIG);CXCR3(GPR9/CKR-L2);CXCR4;CXCR6(TYMSTR/STRL33/Bonzo);CYB5;CYCl;CYSLTRl;DAB2IP;DES;DKFZp451J0118;DNCLl;DPP4;E2F1;ECGFl;EDGl;EFNAl;EFNA3;EFNB2;EGF;EGFR;ELAC2;ENG;ENO1;ENO2;ENO3;EPHB4;EPO;ERBB2(Her−2);EREG;ERK8;ESRl;ESR2;F3(TF);FADD;FasL;FASN;FCERlA;FCER2;FCGR3A;FGF;FGFl(aFGF);FGF10;FGF11;FGF12;FGF12B;FGF13;FGF14;FGF16;FGF17;FGF18;FGF19;FGF2(bFGF);FGF20;FGF21;FGF22;FGF23;FGF3(int-2);FGF4(HST);FGF5;FGF6(HST-2);FGF7(KGF);FGF8;FGF9;FGFR3;FIGF(VEGFD);FELl(EPSILON);FILl(ZETA);FLJ12584;FLJ25530;FLRTl(フィブロネクチン);FLTl;FOS;FOSLl(FRA−I);FY(DARC);GABRP(GABAa);GAGEBl;GAGECl;GALNAC4S-6ST;GATA3;GDF5;GFI1;GGT1;GM-CSF;GNASl;GNRHl;GPR2(CCRlO);GPR31;GPR44;GPR81(FKSG80);GRCClO(ClO);GRP;GSN(ゲルソリン);GSTPl;HAVCR2;HDAC4;HDAC5;HDAC7A;HDAC9;HGF;HIFlA;HDPl;ヒスタミンおよびヒスタミンレセプター;HLA−A;HLA-DRA;HM74;HMOXl;HUMCYT2A;ICEBERG;ICOSL;ID2;IFN−a;IFNA1;IFNA2;IFNA4;IFNA5;IFNA6;IFNA7;IFNB1;IFNガンマ;DFNWl;IGBPl;IGFl;IGFlR;IGF2;IGFBP2;IGFBP3;IGFBP6;IL−I;IL10;IL10RA;IL10RB;IL11;IL11RA;IL-12;IL12A;IL12B;IL12RB1;IL12RB2;IL13;IL13RA1;IL13RA2;IL14;IL15;IL15RA;IL16;IL17;IL17B;IL17C;IL17R;IL18;IL18BP;IL18R1;IL18RAP;IL19;IL1A;IL1B;ILlF10;IL1F5;IL1F6;IL1F7;IL1F8;IL1F9;IL1HYl;IL1Rl;IL1R2;IL1RAP;IL1RAPL1;IL1RAPL2;IL1RL1;IL1RL2(ILlRN);IL2;IL20;IL20RA;IL21R;IL22;IL22R;IL22RA2;IL23;IL24;IL25;IL26;IL27;IL28A;IL28B;IL29;IL2RA;IL2RB;IL2RG;IL3;IL30;IL3RA;IL4;IL4R;IL5;IL5RA;IL6;IL6R;IL6ST(糖タンパク質130);EL7;EL7R;EL8;IL8RA;DL8RB;IL8RB;DL9;DL9R;DLK;INHA;INHBA;INSL3;INSL4;IRAKI;ERAK2;ITGAl;ITGA2;ITGA3;ITGA6(a6インテグリン);ITGAV;ITGB3;ITGB4(b4インテグリン);JAGl;JAKl;JAK3;JUN;K6HF;KAIl;KDR;KITLG;KLF5(GCボックスBP);KLF6;KLKlO;KLK12;KLK13;KLK14;KLK15;KLK3;KLK4;KLK5;KLK6;KLK9;KRT1;KRT19(ケラチン19);KRT2A;KHTHB6(毛特異的タイプHケラチン);LAMAS;LEP(レプチン);Lingo-p75;Lingo-Troy;LPS;LTA(TNF-b);LTB;LTB4R(GPR16);LTB4R2;LTBR;MACMARCKS;MAG又はOmgp;MAP2K7(c−Jun);MDK;MIBl;ミッドカイン;MEF;MIP-2;MKI67;(Ki-67);MMP2;MMP9;MS4A1;MSMB;MT3(メタロチオネクチン-III);MTSSl;MUCl(ムチン);MYC;MYD88;NCK2;ニューロカン;NFKBl;NFKB2;NGFB(NGF);NGFR;NgR-Lingo;NgR−Nogo66(Nogo);NgR-p75;NgR-トロイ;NMEl(NM23A);N0X5;NPPB;NROBl;NR0B2;NRlDl;NR1D2;NR1H2;NR1H3;NR1H4;NR1I2;NR1I3;NR2C1;NR2C2;NR2E1;NR2E3;NR2F1;NR2F2;NR2F6;NR3C1;NR3C2;NR4A1;NR4A2;NR4A3;NR5A1;NR5A2;NR6A1;NRPl;NRP2;NT5E;NTN4;ODZl;OPRDl;P2RX7;PAP;PARTl;PATE;PAWR;PCA3;PCNA;PDGFA;PDGFB;PECAMl;PF4(CXCL4);PGF;PGR;ホスファカン;PIAS2;PIK3CG;PLAU(uPA);PLG;PLXDCl;PPBP(CXCL7);PPID;PRl;PRKCQ;PRKDl;PRL;PROC;PROK2;PSAP;PSCA;PTAFR;PTEN;PTGS2(COX-2);PTN;RAC2(p21Rac2);RARB;RGSl;RGS13;RGS3;RNFIlO(ZNF144);ROBO2;S100A2;SCGB1D2(リポフィリンB);SCGB2A1(マンマグロビン2);SCGB2A2(マンマグロビン1);SCYEl(内皮性単球活性化サイトカイン);SDF2;SERPINAl;SERPINA3;SERP1NB5(マスピン);SERPINEl(PAI−I);SERPDMF1;SHBG;SLA2;SLC2A2;SLC33A1;SLC43A1;SLIT2;SPPl;SPRRlB(Sprl);ST6GAL1;STABl;STAT6;STEAP;STEAP2;TB4R2;TBX21;TCPlO;TDGFl;TEK;TGFA;TGFBl;TGFBlIl;TGFB2;TGFB3;TGFBI;TGFBRl;TGFBR2;TGFBR3;THlL;THBSl(トロンボスポンジン-1);THBS2;THBS4;THPO;TIE(Tie-1);TMP3;組織因子;TLRlO;TLR2;TLR3;TLR4;TLR5;TLR6;TLR7;TLR8;TLR9;TNF;TNF−a;TNFAEP2(B94);TNFAIP3;TNFRSFIlA;TNFRSFlA;TNFRSFlB;TNFRSF21;TNFRSF5;TNFRSF6(Fas);TNFRSF7;TNFRSF8;TNFRSF9;TNFSFlO(TRAIL);TNFSFl 1(TRANCE);TNFSF12(APO3L);TNFSF13(April);TNFSF13B;TNFSF14(HVEM-L);TNFSF15(VEGI);TNFSF18;TNFSF4(OX40リガンド);TNFSF5(CD40リガンド);TNFSF6(FasL);TNFSF7(CD27リガンド);TNFSF8(CD30リガンド);TNFSF9(4-1BBリガンド);TOLLIP;Toll様レセプター;TOP2A(トポイソメラーゼEa);TP53;TPMl;TPM2;TRADD;TRAFl;TRAF2;TRAF3;TRAF4;TRAF5;TRAF6;TREMl;TREM2;TRPC6;TSLP;TWEAK;VEGF;VEGFB;VEGFC;バーシカン;VHL C5;VLA-4;XCLl(リンホタクチン);XCL2(SCM-Ib);XCRl(GPR5/CCXCRl);YYl;およびZFPM2からなる群から選択される一又は複数の標的を結合することができる。
【0133】
本発明に包含される抗体に対する好適な分子標的分子には、CDタンパク質、例えばCD3、CD4、CD8、CD16、CD19、CD20、CD34;CD64、EGFレセプター、HER2、HER3又はHER4レセプターのようなErbBレセプターファミリのCD200メンバー;細胞接着分子、例えばLFA-1、Mac1、p150.95、VLA−4、ICAM−1、VCAM、α4/β7インテグリン、およびそのαまたはβサブユニットを含むαv/β3インテグリン(例えば抗CD11a、抗CD18又は抗CD11b抗体);増殖因子、例えばVEGF−A、VEGF-C;組織因子(TF);αインターフェロン(αIFN);TNFα、インターロイキン、例としてIL−1β、IL−3、IL−4、IL−5、IL−8、IL−9、IL−13、IL17A/F、IL−18、IL−13Rα1、IL13Rα2、IL−4R、IL−5R、IL−9R、IgE;血液群抗原;flk2/flt3レセプター;肥満(OB)レセプター;mplレセプター;CTLA-4;RANKL、RANK、RSV Fタンパク質、プロテインCなどが含まれる。
【0134】
ある実施態様では、本発明のヘテロ多量体複合体は、IL-lαおよびIL-lβ、IL-12およびIL-18;IL-13およびIL-9;IL-13およびIL-4;IL-13およびIL-5;IL-5およびIL-4;IL-13およびIL-1β;IL-13およびIL−25;IL-13およびTARC;IL-13およびMDC;IL-13およびMEF;IL-13およびTGF-β;IL-13およびLHRアゴニスト;IL-12およびTWEAK、IL-13およびCL25;IL-13およびSPRR2a;IL-13およびSPRR2b;IL−13およびADAM8、IL-13およびPED2、IL17AおよびIL17F、CD3およびCD19、CD138およびCD20;CD138およびCD40;CD19およびCD20;CD20およびCD3;CD38およびCD138;CD38およびCD20;CD38およびCD40;CD40およびCD20;CD-8およびIL-6;CD20およびBR3、TNFαおよびTGF-β、TNFαおよびIL−1β;TNFαおよびIL−2、TNFαおよびIL-3、TNFαおよびIL-4、TNFαおよびIL-5、TNFαおよびIL6、TNFαおよびIL8、TNFαおよびIL-9、TNFαおよびIL-10、TNFαおよびIL-11、TNFαおよびIL-12、TNFαおよびIL-13、TNFαおよびIL-14、TNFαおよびIL-15、TNFαおよびIL-16、TNFαおよびIL-17、TNFαおよびIL-18、TNFαおよびIL-19、TNFαおよびIL-20、TNFαおよびIL-23、TNFαおよびIFNα、TNFαおよびCD4、TNFαおよびVEGF、TNFαおよびMIF、TNFαおよびICAM-1、TNFαおよびPGE4、TNFαおよびPEG2、TNFαおよびRANKリガンド、TNFαおよびTe38;TNFαおよびBAFF;TNFαおよびCD22;TNFαおよびCTLA-4;TNFαおよびGP130;TNFαおよびIL-12p40;VEGFおよびHER2、VEGF−AおよびHER2、VEGF−AおよびPDGF、HER1およびHER2、VEGF−AおよびVEGF−C、VEGF−CおよびVEGF−D、HER2およびDR5、VEGFおよびIL-8、VEGFおよびMET、VEGFRおよびMETレセプター、VEGFRおよびEGFR、HER2およびCD64、HER2およびCD3、HER2およびCD16、HER2およびHER3;EGFR(HER1)およびHER2、EGFRおよびHER3、EGFRおよびHER4、IL−13およびCD40L、IL4およびCD40L、TNFR1およびIL−1R、TNFR1およびIL−6RおよびTNFR1およびIL−18R、EpCAMおよびCD3、MAPGおよびCD28、EGFRおよびCD64、CSPGsおよびRGM A;CTLA-4およびBTNO2;IGF1およびIGF2;IGF1/2およびErb2B;MAGおよびRGM A;NgRおよびRGM A;NogoAおよびRGM A;OMGpおよびRGM A;PDL−IおよびCTLA-4;そして、RGM AおよびRGM Bからなる群から選択される少なくとも2の標的分子に結合する。
【0135】
場合によって他の分子にコンジュゲートした可溶性抗原ないしその断片は、抗原を生成するための免疫原として用いられうる。膜貫通分子、例えばレセプター、これらの断片(例えばレセプターの細胞外ドメイン)が免疫原として使われてよい。あるいは、膜貫通分子を発現する細胞が免疫原として使われてよい。このような細胞は、天然の供与源(例えば癌細胞株)から得られてもよいし、膜貫通分子を発現するように組換え技術によって形質移入された細胞であってもよい。抗体を調製するために有用な他の抗原および様式は、従来技術において明らかであろう。
【0136】
本明細書中で引用または参照するすべての特許、特許出願、特許公開公報および他の出版物は、それぞれの特許、特許出願、特許公開公報または出版物が出典明記によって援用されるように具体的かつ個別に示されるのと同程度に、出典明記によって本明細書中に援用される。このような特許出願には、本出願が優先権を主張する2009年9月16日に出願の米国特許仮出願第61/243105号および2009年12月4日に出願の同第61/266992号が含まれる。
【実施例】
【0137】
実施例1.コイルドコイル含有抗体の発現のためのベクターの構築
本明細書に記載のコイルドコイルヘテロ二量体化ドメインは、任意の抗体の定常鎖(例えばHCのC末端)に連結されてよい。コイルドコイル含有抗体を構築するために用いられうる多数の抗体配列は当分野で知られており、DNA配列を操作するために必要とされる技術も当分野でよく知られている。コイルドコイル含有抗体を構築する例示的な方法を以下に記載する。
コイルドコイルを含有する抗体の生成のためのHC主鎖を以下のように構築した。センスおよびアンチセンスオリゴヌクレオチドを設定し、5' AscIおよび3' XbaIオーバーハングを有するACID.p1(GGSAQLEKELQALEKENAQLEWELQALEKELAQGAT;配列番号:33)又はBASE.p1(GGSAQLKKKLQALKKKNAQLKWKLQALKKKLAQGAT;配列番号:34)のコイルドコイルドメイン配列をコードするように合成した。オリゴヌクレオチドをアニーリングし、リン酸化し、消化して脱リン酸化したpRKプラスミド(Genentech Inc.;Eaton et al., Biochemistry 25:8343-8347 (1986))にライゲートした。hIgG1のCH1からCH3ドメインは、5'マルチクローニング部位(MCS)(ClaI-BamHI-KpnI-ApaI)と3'AscI部位を含むようにPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)を使用して調製し、ClaIおよびAscIを用いて事前に調製したpRK-ACID.p1又はpRK-BASE.p1ベクターにクローニングした。最後に、位置H222(カバット番号付け枠)のリジン残基を、ストラタジーンのQuikchange II XL部位特異的突然変異キットを使用してアラニン残基に変異させ、Lys−C切断時のFab放出を妨げた。
【0138】
コイルドコイルドメインを含有する抗体は以下のように構築した。共通のLCおよび一アーム抗体のために、所望の抗体のVHドメインを、5'ClaIおよび3'ApaI制限部位を含むようにPCRを用いて調製した。PCR断片を消化し、同様に調製した主鎖ベクターにクローニングした。これら抗体のために既に有用なLCコンストラクトに変化はなかった。
テザー抗体のために、所望の抗体のVHドメイン(シグナル配列を欠く)をまず、5'プライマーがGGSテザーの3'側の半分を含み、5'BamHI部位で終わり、3'プライマーが3'ApaI部位で終わるPCRを用いて調製した。断片を消化し、同様に調製した主鎖ベクターにクローニングした。次いで、所望の抗体の同族LCを、5'プライマーが5'ClaI部位で終わり、3'プライマーがGGSテザーの5'側部分を含み、3'BamHIで終わるPCRを用いて調製した。LC断片は、ClaIおよびBamHIを用いてVHの前に該断片をクローニングすることによって、(主鎖ベクター内の)その同族のHCに連結した。LCをVHに連結する完全なテザー配列は、GGGSGGSGGSGGSGGSGGSGGSGGSG(配列番号:14)とした。ベクターは、標準的な形質移入技術を使用して哺乳動物細胞(CHO又は293細胞)に形質移入した。
FcεR1およびFcγR2bの両方を特異的に結合し、共通のLCを有する二重特異性抗体は、本明細書中に記述される方法を使用して調製した。この抗体は、BASE.p1コイルドコイルドメイン配列とK222A突然変異を有する抗ヒトFcγR2b HC配列を含有する「BASE.p1」配列(配列番号:1)、ACID.p1コイルドコイルドメイン配列とK222A突然変異を有する抗ヒトFcεR1 HC配列を含有する「ACID.p1」配列(配列番号:2)、および共通のLC配列(配列番号:3)(
図8)を有する。
HER2又はEGFRを特異的に結合する一アーム抗体も調製した。HER2を特異的に結合する抗体は、ACID.p1コイルドコイルドメイン配列とK222A突然変異を有する抗HER2抗体1 HC配列(配列番号:4)、BASE.p1コイルドコイルドメイン配列を有するVHおよびCH1ドメインを欠いているHC領域(配列番号:5)、そして抗HER2抗体1 LC配列(配列番号:6)を含有する。EGFRを特異的に結合する抗体は、ACID.p1コイルドコイルドメイン配列とK222A突然変異を有する抗EGFR HC配列(配列番号:7)、BASE.p1コイルドコイルドメイン配列を有するVHおよびCH1ドメインを欠いているHC領域(配列番号:5)、および抗EGFR(D1.5) LC配列(配列番号:8)を含有する(
図9-1および9-2)。
【0139】
HER2およびEGFR/HER1を特異的に結合するテザー抗体も調製した(
図10および11)。HER2およびEGFRを特異的に結合するある抗体は、(1)26アミノ酸GGSテザーにより抗HER2抗体1 HC配列に繋がった抗HER2抗体1 LC配列、ACID.p1コイルドコイルドメイン配列およびK222A突然変異(配列番号:9)、および(2)26アミノ酸GGSテザーにより抗EGFR抗体HC配列に繋がった抗EGFR抗体LC配列、BASE.p1コイルドコイルドメイン配列およびK222A突然変異(配列番号:10)を含有する(
図10)。HER2およびEGFRを特異的に結合する二次抗体は、(1)26アミノ酸GGSテザーにより抗HER2抗体2 HC配列に繋がった抗HER2抗体2 LC配列、ACID.p1コイルドコイルドメイン配列およびK222A突然変異(配列番号:11)、および(2)26アミノ酸GGSテザーにより抗EGFR抗体HC配列に繋がった抗EGFR抗体LC配列、BASE.p1コイルドコイルドメイン配列およびK222A突然変異(配列番号:10)を含有する(
図11)。コイルドコイル含有抗体の構築において使用する抗HER2抗体1LCおよびHC配列を
図12Aおよび12Bに示す(配列番号:15および16)。これらの抗体をコードするベクターを構築する際に使用する様々な制限部位の位置も
図12B1−3に示す。
【0140】
実施例2.コイルドコイル含有抗体の精製
コイルドコイル含有抗体を精製するために用いられうる例示的な計画を以下に示す。
コイルドコイル含有抗体を4℃のプロテインA(例えばmAbSure)カラムに流す
↓
KPO
4、次いでPBS+0.1%トリトンX114にてカラムを洗浄
↓
試料をトリスpH8.0(200mM)とアルギニン(100mM)に溶出させる
↓
試料のpHを8.0に調整し、37℃、1:500wt:wt LysCで1時間切断
↓
1ml mAbSure樹脂/10mg タンパク質を使用して試料を濃縮し、トリス/アルギニンバッファに溶出
↓
試料をPBS+0.3M NaCl+100mM アルギニン中のS200ゲル濾過カラムに流す
↓
分画を回収し、プールし、PBSに透析する
【0141】
特に、抗体は、GE Healthcare (Sweden)のmAbSure選別樹脂を用いて4℃で終夜をかけて条件培地から精製した。カラムは、2カラム容量(CV)のPBS(リン酸緩衝生理食塩水)、その後10CVのPBS+0.1%トリトンX114界面活性剤、その後10CVのリン酸カリウムバッファにて洗浄した。カラムは、10mM 酢酸(pH2.9)にて溶出し、直ちにアルギニン(100mM 終濃度)およびトリス(200mM 終濃度)、pH8.0にて希釈した。コイルドコイルは、1:500(重量:重量)比のLys−Cエンドペプチダーゼ(Wako Pure Chemical Laboratories)にて37℃で1〜5時間かけて処理することにより抗体から取り除いた。切断された試料は、mAbSure樹脂カラムに流し戻し、切断したコイルドコイルを抗体から分離し、上記のように溶出した。抗体濃度を10mg/mlに調整し、PBS、150mM NaCl、100mM アルギニンおよび1mM NaN3にて実行するセファクリルS200カラムを使用したサイズ排除クロマトグラフィにて分離した。ピーク分画をプールし、質量分析の前に終夜をかけてPBSに対して透析し、識別および純度を確認した。
アルギニンに加えて、最初のmAbSure樹脂カラム工程後の上記精製プロトコールにおいて使われうる他のカオトロピック剤又は中性(mild)界面活性剤には、限定するものではないが、グアニジン-HCl、尿素、過塩素酸リチウム、ヒスチジン、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、ツイーン、トリトンおよびNP−40が含まれ、これらすべては市販されている。最初のプロテインA含有カラム(例えばmAbSureカラム)から溶出後のカオトロピック剤又は中性(mild)界面活性剤を含有する溶液への抗体の希釈は、溶出後の抗体の安定性を維持し、Lys−Cエンドペプチダーゼによるコイルドコイルの効率的な除去を可能にする。
表1は、抗HER2抗体1/α−EGFR(D1.5)抗体についての精製結果の概要を示す。
【表1】
コイルドコイルは、精製工程の間にLys−Cエンドペプチダーゼによって抗体から取り除かれた。
コイルドコイルヘテロ二量体化ドメインを使用して構築されたが、もはやコイルドコイルを含有していない抗体は、以降の実施例では「改変抗体」と称する。
【0142】
実施例3 コイルドコイル含有抗体の切断
コイルドコイル(ある場合には、およびテザー)が抗体配列を完全にしたままで抗体配列から切断されうることを示すために、様々なコイルドコイル含有抗体に対して切断実験を行った。特に、
図13AおよびBは、コイルドコイルがLys−Cエンドペプチダーゼを使用して例示的なα-FcεR1/α-FcγR2b抗体から切断されたこと、そして抗体が完全なままであったことを示す。コイルドコイルを有する抗体の理論上の質量は、質量分析によって実験的に観察される質量の誤差の範囲内である。同様に、コイルドコイルのない改変抗体の理論上の質量は、質量分析によって実験的に観察される質量の誤差の範囲内であり、これは、Lys−Cがコイルドコイルを抗体から切断したことを示す。
また、質量分析結果は、Lys−Cエンドペプチダーゼが例示的なα-FcεR1/α-FcγR2b抗体のLC又はHCを切断しなかったことを示した(
図14AおよびB)。特に、分子質量は、質量分析を用いて、LC(上2つのパネル)およびα-FcεR1およびα-FcγR2b HC(下4つのパネル)について、Lys−Cエンドペプチダーゼ処置前(左パネル)およびLys−Cエンドペプチダーゼ処置後(右パネル)の両方について決定した。実験的に観察された分子質量は、様々なコンストラクトについての理論上の質量の誤差の範囲内であり、これは、Lys−CエンドペプチダーゼがコイルドコイルドメインをHCから切断したが、LCまたはHCそれ自体を切断しなかったことを示す。
同様に、質量分析結果は、コイルドコイルがLys−Cエンドペプチダーゼを使用して例示的な一アーム形α-EGFR抗体から切断されたことを示した(
図17AおよびB)。特に、実験的に観察された分子質量は、コイルドコイルを有する一アーム形抗体およびコイルドコイルのない一アーム形抗体両方についての理論上の質量の誤差の範囲内であった。
図18A−Cに示すように、理論上の分子質量は各々のコンストラクトについて実験的に観察された分子質量の誤差の範囲内であったことから、Lys−Cエンドペプチダーゼが例示的なα-EGFR抗体のLC、HC又はVHおよびCH1ドメイン(一アーム形Fc)を欠いているHCを切断せず、HCおよびVHおよびCH1ドメインを欠いているHCからコイルドコイルドメインを切断したことを示した。
【0143】
加えて、質量分析結果は、コイルドコイルがLys−Cエンドペプチダーゼを使用して例示的なテザーα-HER2/α-EGFR抗体から切断されたことを示した(
図19AおよびB)。
図19Bに示すように、理論上および実験的に観察された分子質量は、各々のコンストラクトについて誤差の範囲内である。また、抗体が最初にLys−Cエンドペプチダーゼにて処理され、次いで試料が質量分析される場合に、コイルドコイルは、Lys−Cエンドペプチダーゼを使用して例示的なテザーα-HER2/α-EGFR抗体から切断された(
図20A−B)。各々のコンストラクトについての理論上の分子質量は実験的に観察された分子質量の誤差の範囲内であることから、コイルドコイルは実際には抗体配列から切断されること、抗体配列自体が切断されないことが示される。例示的なコイルドコイル含有抗体について、分子質量(MS)を含む質量分析結果を表2にまとめる。
【表2】
【0144】
実施例4 改変抗体の特徴づけ
コイルドコイルヘテロ二量体化ドメインを使用して作製された例示的な改変抗体がそれらの配列が由来する抗体の結合特性を有するか否かを決定するために、結合アッセイを行った。これらの結合アッセイは、ForteBio Octetシステム上の動態ウィザードプログラムを使用して実行した。試験するすべての試料は、繰り返し実験および様々な試料において抗ヒトIgGプローブの飽和を示す濃度である25μg/mlの濃度とした。プローブは、15分間の第一試料と共に流し、PBSで30秒間洗浄した。第二および第三の試料についてのすべての会合は、10分間行い、会合間に30秒のPBS洗浄を行った。
特に、共通LC抗Fc R1/抗Fc R2b二重特異性改変抗体は、25μg/mlの抗体と共にプローブを15分間インキュベートし、その後PBS洗浄工程を行うことによって、抗ヒトIgGプローブ(Octet)にロードした。結合を評価するために、ロードしたプローブは、25μg/mlのFc R1、その後25μg/mlのFc R2bと共にインキュベートした。2つの結合インキュベートの間にPBS洗浄工程を行った。
図15に示されるデータは、二重特異性、改変抗体が同時にその抗原の両方を結合したことを示す。
【0145】
改変抗体の機能性を試験するために、ヒトFc RIaおよびヒトFcγR2b1を発現するように作製されたラット好塩基球性白血病(RBL)細胞株を、1μg/mlのNP-特異的ヒトIgE(JW8.5.13)と共に、完全増殖培地(アール塩を有するMEM Gibco Cat# 11090、1mM グルタミン(Genentech Inc.)、1mM ピルビン酸ナトリウム(Gibco Cat# 11360-070)、0.1mM 非必須アミノ酸(Gibco Cat# 11140-050)、1.5g/L 炭酸水素ナトリウム(Gibco Cat# 25080-094)、15% 胎仔ウシ血清(Hyclone Cat# SH30071.03))中で、37℃で72時間培養した。細胞をトリプシン処理し、96ウェル平底組織培養プレートに、1μg/mlのNP-特異的ヒトIgEを含有する200μlの完全増殖培地中に3.5×10
5細胞/mlで播いた。次に、細胞を新鮮培地にて3回洗浄し、結合していないNP-特異的ヒトIgEを取り除いた。細胞は、0〜10μg/mlの二重特異性抗体にて処理し、抗原にて活性化する前に37℃で1時間インキュベートした。細胞は、0.1μg/mlのNP-コンジュゲート卵白アルブミン(Biosearch Technologies, Inc. Cat. N-5051-10)と共に又は37℃で45分インキュベートすることによって活性化した。インキュベート後、細胞上清(細胞培養培地)中のヒスタミンレベルは、ヒスタミンELISAキット(KMI Diagnostics, Minneapolis, MN)を使用してELISA(酵素結合免疫測定法)にて測定した。バックグラウンドヒスタミンレベルは、活性化していないNP-特異的ヒトIgEのみにて処理した細胞から得た(
図16)。
また、Octet結合試験を、例示的な一アーム形抗体およびテザー改変抗体について行った。コントロールとして、Octet分析を用いて、野生型抗HER2抗体1および野生型α-EGFR抗体が互いの抗原と交差反応せず、それぞれの抗原を結合したことを示した(
図21)。例示的なコイルドコイル含有抗体を試験するために、一アーム形抗HER2抗体1を、25μg/mlで抗ヒトIgG抗体プローブに15分間かけてロードし、その後プローブをPBSにて30秒間洗浄した。次いで、ロードしたプローブを25μg/mlでEGFR ECD(細胞外ドメイン)と共にインキュベートしたところ、結合シグナルは見られなかった。次いでプローブをPBS中で30秒間洗浄し、25μg/mlでHER2レセプターECDと共にインキュベートしたところ、強い結合シグナルが見られた(
図22;上図)。
【0146】
一アーム形EGFR改変抗体は、25μg/mlで抗ヒトIgG抗体プローブ上へ15分かけてロードし、その後30秒間PBSにて洗浄した。次いで、プローブを25μg/mlでHER2 ECDと共にインキュベートしたところ、結合シグナルは見られなかった。プローブは、PBS中で30秒間洗浄し、25μg/mlでEGFR ECDと共にインキュベートしたところ、強い結合シグナルが見られた(
図22;下図)。
テザー二重特異性抗EGFR(D1.5)/抗HER2改変抗体は、25μg/mlで抗ヒトIgG抗体プローブと共に15分間インキュベートし、その後PBSにて30秒間洗浄した。このインキュベートはプローブに二重特異性抗体をロードした。次いで、プローブを、25μg/mlでEGFR ECDと共に3分間インキュベートした後、30秒間のPBS洗浄を行い、その後25μg/mlでHER2レセプターECDと共に3分間インキュベートした(
図23A;上図)。
図23Aの下図に示す結果について、二重特異性ロードプローブは、始めにHER2レセプターECDと、次いでEGFR ECDとインキュベートした。データは、二重特異性改変抗体が同時にEGFおよびHER2レセプターの両方を結合したことを示す。
図23Bに示すように、二重特異性抗EGFR(D1.5)/抗HER2抗体は、およそ0.06nMのKdでHER2を結合し、およそ0.660nMのKdでEGFレセプターを結合した。
【0147】
改変抗体の結合特性を更に分析するために、EGFRまたはHER2を発現するNR6、又はEGFRとHER2を同時に発現するHCA7細胞の2つの細胞株上で、細胞ベースのアッセイを行った。結合アッセイを実行する前に、細胞を回収し、結合バッファ(1%ウシ胎児血清(FBS)、10mM HEPESおよび0.2%NaN3を有するRPMI培地)中で氷上で30分かけて冷やした。非標識抗体は所望の開始濃度で調製し、複数のデータポイントが得られるように1:1に結合バッファで希釈した。標識抗体は一つの濃度で調製し、アッセイ全体にわたって用いた。平衡結合試験は、様々な濃度の非標識抗体と競合する放射性標識抗体を用いて実行した。非標識抗体を96ウェルプレートに播き、その後材料を標識し、次いで細胞を混合物に添加した。プレートは室温で2時間インキュベートした。インキュベートの後、プレートは、ミリポアメンブランマルチスクリーンプレートを使用して回収し、細胞から溶液を分離した。次いで、細胞が結合した放射性標識抗体をパーキンエルマガンマ計測器にてカウントし、データはNew Ligandソフトウェアを使用して分析した。一アーム形およびテザー改変抗体コンストラクトについての親和性結合試験の結果を表3にまとめる。
【表3】
【0148】
また、例示的な改変抗体の機能特性を生化学的に特徴付けした。EGFR発現NR6細胞を12-ウェルプレートに播いた。血清枯渇後、細胞は様々な濃度の抗体と共に37℃で2時間プレインキュベートした。その後、細胞はTGFαにて12分かけて刺激した。全細胞溶解物はSDS-PAGE分析を行い、イムノブロットは抗ホスホチロシン、抗ホスホAkt又はロードコントロールとしての抗チューブリンにてプロービングした(
図24)。これらの結果は、例示的なα-EGFR(D1.5)/抗HER2(抗体1)改変抗体が、D1.5 IgG1コントロール抗体と同じく、用量依存的に、EGFR発現NR6細胞のTGFα誘導性リン酸化を阻害したことを示す。
細胞増殖アッセイのために、細胞は、96ウェルプレート(EGFR-NR6:2000細胞/ウェル)(BT474:10000の細胞/ウェル)に播き、37℃で終夜インキュベートした。その翌日、培地を取り除き、細胞を1%血清含有培地中で処理した。EGFR-NR6細胞における、α-EGFR(D1.5)/抗HER2(抗体1)改変抗体の細胞増殖に対する影響をD1.5抗体と比較するために、3nMのTGFαを培地に添加し、様々な濃度の抗体にて細胞を処理した。3日後に、アラマーブルーをウェルに添加し、530nmの励起および590nmの発光で96ウェル蛍光光度計を使用して蛍光を読み取った。結果は、相対的な蛍光単位(RFU)で表す(
図25)。α-EGFR(D1.5)/抗HER2(抗体1)改変抗体の細胞増殖に対する影響を抗HER2抗体1と比較するために、BT474細胞を、様々な濃度の抗体にて1%血清含有培地中で処理した(
図26)。5日後に、アラマーブルーアッセイを上記の通りに実行した。これらの結果は、例示的なα-EGFR(D1.5)/抗HER2(抗体1)改変抗体は、D1.5 IgG1コントロール抗体と同様に、用量依存的に、EGFR発現NR6細胞のTGFα誘導性リン酸化を阻害し、抗HER2抗体1と同様に、BT474細胞の増殖を阻害したことを示す。
【0149】
実施例5 改変抗体の薬物動態分析
薬物動態学的試験は、二重特異性改変抗体の薬物動態学(PK)を代表的なヒトIgG(hIgG)抗体と比較し、有効性実験のための用量を決定するために行った。D1.5 hIgG1コントロール抗体と同様に、HER1/HER2(D1.5/抗HER2抗体1)改変抗体もまた、マウスとの交差反応性を示した。抗HER2抗体2 hIgG1コントロール抗体は、マウスとの交差反応性を示さなかった。
D1.5 hIgG1ポジティブコントロール抗体のPKは、SCIDベージュマウスを使用して10日の期間にわたって決定した。特に、経時的な抗体の血清中濃度は、様々な用量(0.5mg/kg、5mg/kgおよび50mg/kg)の抗体の投与後に、Fc-Fcアッセイを使用して決定した。加えて、用量と関連する血清中濃度は、Fc-Fc ELISAアッセイを使用して10日間モニターした(
図27)。用量にて正規化した曲線下面積(AUC)も決定して、表4にまとめる。D1.5 hIgG1抗体は、試験した用量範囲においてマウスでの非線形PKを示した。
【表4】
【0150】
加えて、抗HER2抗体2 hIgG1ポジティブコントロール抗体のPKもまた、SCIDベージュマウスを使用して10日の期間にわたって測定した。抗体の時間に対する血清中濃度は、10mg/kgで抗体を投与した後に、Fc-Fc ELISA又はHER2-ECD(細胞外ドメイン) ELISAを使用して測定した。また、用量によって正規化したAUCを決定し、表5にまとめる。
【表5】
【0151】
同様に、HER1(EGFR)/HER2(D1.5/抗HER2抗体1)改変抗体のPKは、SCIDベージュマウスにおいて10日の期間にわたって測定した。抗体の時間に対する血清中濃度は、様々な用量(0.5mg/kg、5mg/kgおよび20mg/kg)で抗体を投与した後に、Fc-Fc ELISA又はEGFR-HER2 ELISAを使用して測定した。加えて、用量と関連する血清中濃度は、Fc-Fc ELISA又はEGFR-HER2 ELISAを使用して10日間モニターした(
図28)。また、用量によって正規化したAUCを決定し、表6にまとめる。HER1(EGFR)/HER2(D1.5/抗HER2抗体1)改変抗体は、試験した用量範囲においてマウスでは非線形PKを示した。
【表6】
【0152】
PKアッセイの結果によると、HER1(EGFR)/HER2(D1.5/抗HER2抗体1)改変抗体は、D1.5 hIgG1コントロール抗体と比較して試験した時間の期間(10日目まで)にわたってマウスにおいて同程度以上の曝露を有することが明らかとなった(
図29)。
【0153】
実施例6−テザーを切断する酵素を発現するように操作した哺乳動物細胞株におけるテザー抗体の作製
26AAフューリン切断可能テザーコイルドコイル抗体の構築のために(
図30A)、所望の抗体のVHドメイン(シグナル配列を欠く)をまず、5'プライマーがGGS-フューリンテザーの3'側の半分を含み、5'BamHI部位で終わり、3'プライマーが3'ApaI部位で終わるPCRを用いて調製した。断片を消化し、同様に調製した主鎖ベクターにクローニングした。次いで、所望の抗体の同族LCを、5'プライマーが5'ClaI部位で終わり、3'プライマーがフューリン-GGSテザーの5'側部分を含み、3'BamHIで終わるPCRを用いて調製した。LC断片は、ClaIおよびBamHIによりVHの前に該断片をクローニングすることによって、(抗体コイルドコイル主鎖内の)その同族のHCに連結した。CLをVHに連結する完全テザー配列は、RCRRGSGGSGGSGGSGGSGGSGRSRKRR(配列番号:35)とした26AAフューリン切断可能テザー(-C)の構築のために(
図30B)、2つの突然変異を上記のコンストラクトに導入した。LCのc末端のCys残基を、ストラタジーンのQuikchange II XL部位特異的突然変異キットを使用してAla残基に変異させた。カバット番号付けシステムによる、CLのCys末端残基は位置214にある。また、HCのC220をAに変異して、この新たに非ジスルフィド結合したCysによって、起こりうるミスフォールディングを除いた。
【0154】
32AAフューリン切断可能テザーを構築する際に使用する方法(
図30C)は、完結したテザー配列がRKRKRRGSGGSGGSGGSGGSGGSGRSRKRR(配列番号:36)であったことを除いては26AAフューリン切断可能テザーの構築と同じとした。フューリン過剰発現のために、ヒトまたはマウスのフューリンを、pRKベクター系にクローニングし、抗体鎖プラスミドにて同時形質移入した。
カルボキシペプチダーゼB消化(
図30D)は、50mM ホウ酸ナトリウム pH8.0中で1:20wt:wtのCpBと共に37℃で1時間行った。
図30A1−2は線図であり、26アミノ酸フューリン切断可能テザーについての還元型質量分析(MS)結果である。重鎖MSトレースまたはグラフは、完全な天然のn-およびc-末端並びに少ない量の「完全長抗体」を有する(すなわち、これらの試験では、いずれのフューリン部位(FL)でも切断されなかった)重鎖(1)を示す。軽鎖MSトレースは、LCおよび全長のテザーに相当するピーク(1)と、おそらくCHO培地中のカルボキシペプチダーゼB活性によるテザーの3'末端の侵食に相当する3つの他のピーク(2−4)を示す。紫の楕円によって示される下図の領域内のMSピークの欠失に裏付けられるように、n-末端フューリン部位に切断はない。結果として生じた抗体の図から、非天然残基(下線を付した「R」)並びにLCのc末端に依然として接着した23−26アミノ酸テザーが示される。
図30B1−2は線図であり、26アミノ酸フューリン切断可能テザー(「-C」)についての還元型質量分析(MS)結果である。このコンストラクトにおいて、C残基が取り除かれ、置換された。重鎖MSトレースは、完全に天然のn-およびc-末端を有し、残りの「完全長抗体」(FL)を有さない重鎖(1)を示す。軽鎖MSトレースは、おそらくCHO培地中のカルボキシペプチダーゼB活性による、LCと2つの付加R残基(ピーク2)と1つの付加R残基(ピーク3)とその天然c末端を有するもの(ピーク4)に相当するピークを示す。結果として生じた抗体の図から、非天然残基(黄色)並びにLCのc末端に依然として接着した0,1又は2のR残基が示される。
【0155】
図30C1−5は線図であり、32アミノ酸フューリン切断可能テザーについての還元型質量分析(MS)結果である。
図30C3は、完全な天然のn-およびc-末端並びに、いずれのフューリン部位(FL)でも切断されなかった少ない量の「完全長抗体」(FL)を有する重鎖(ピーク1)を示す。
図30C2および30C3は天然レベルのフューリンを発現するCHO細胞から得た結果として生じた物質を示すのに対して、
図30C4および30C5はフューリンを過剰発現するCHO細胞から得た結果として生じた材料を示す。
図30C2は、LCおよび全長のテザーに相当するピーク(1)と、おそらくCHO培地中のカルボキシペプチダーゼB活性による、テザーの3'末端の侵食に相当する5つの他のピーク(2−6)、並びに接着したフューリン認識配列のみを有するLCを示す他のピーク(ピーク7)およびc末端基本残基の侵食に相当する5つの他のピーク(ピーク8−12)を示す。
図30C5は、完全に天然のn-およびc-末端を有し、残りの完全長抗体(FL)を有さない重鎖(1)を示すのに対して、
図30C4は、n末端フューリン部位で完全に切断されたLC(7)と、c末端基本残基の侵食に相当する4つの他のピーク(8−11)を示す。
図30D2は
図30C4と同じである。1:20wt:wtのCpBと共に37℃で1時間インキュベートした後に、残りの残基(ピーク7−11に相当する)は完全に取り除かれ、天然のc末端を有するLCが生じた(
図30D3)。図から、各HCにK222A突然変異となる非天然残基と、その他の(親と比較して)完全に天然の二重特異性抗体が示される。
【0156】
実施例7−真核細胞における酵素切断可能なテザーコイルドコイル多特異性抗体の発現とテザー又はコイルドコイルを持たない多特異性抗体の産生
異なる標的を認識する各アームである2つの異なるVHおよびVLを含むテザーコイルドコイル二重特異性抗体は、上記の通りにヒトフューリンを過剰発現するCHO細胞において産生させた。K222A突然変異も含有する抗体をLys−Cエンドペプチダーゼにて処理し、カルボキシペプチダーゼBにてコイルドコイルを取り除いた。最終産物を達成するために、抗体のヒンジおよび定常領域をこれ以上変異させることは必ずしも必要ではない。
図31は最終産物の非還元型質量分析トレースを示す。少量のホモ二量体が非還元型MSにおいて観察されたが、これは、2つのAb鎖の発現レベルが不均衡であるためによるものであり、相対的な発現レベルを調節することによって容易に補正される。
図32は最終産物の還元型質量分析トレースを示す。LCおよびHCの観察されたトレースにより、Ab鎖がすべて天然のn-およびc-末端を有することが確認される。
これらの結果は、この基本骨格が、哺乳動物細胞において様々なタイプの一アーム形および二重特異性抗体の産生に用いることができることを示す。我々の手において、我々は、各HCのヒンジ領域内の単一のLys−Ala突然変異のみがそれらの親のwt抗体と異なっている成熟した二重特異性抗体を生成することができた。これらの抗体はそれらの特異性を保持し、二重特異性変異体は両抗原を同時に結合することが可能である。これらの抗体はそれらの抗原を高い親和性で結合する。
【手続補正1】
【補正対象書類名】 図面
【補正対象項目名】
図2A
【補正方法】 変更
【補正の内容】
【
図2A】
【手続補正2】
【補正対象書類名】 図面
【補正対象項目名】
図12A−1
【補正方法】 変更
【補正の内容】
【
図12A−1】