(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の如く、容器に潜熱蓄熱材を封入した蓄熱ボードは、潜熱蓄熱材が蓄熱ボードから滲み出すことを抑えることができるが、容器とこれを収容したボードの凹部壁面との間に隙間が生じるため、熱伝導性が良いものとはいえない。
【0007】
このような点を鑑みると、特許文献2の如く、蓄熱性繊維ボードの内部に、マイクロカプセル化した潜熱蓄熱材を混入させることが考えられるが、この場合には、製造上マイクロカプセルを混入できる量が限られて、単位重量あたりの蓄熱量も減少する。マイクロカプセル化した潜熱蓄熱材同士は、蓄熱性繊維ボード内において分散して配置されることになるので、潜熱蓄熱材同士の直接的な熱伝導を期待することができず、潜熱蓄熱材による蓄熱の応答性は高いものであるとはいえない。さらに、特に、パラフィン系の潜熱蓄熱材を用いた場合には、成形時にマイクロカプセルがパンクするおそれがある。
【0008】
そこで、特許文献3の如く、木質系材料を潜熱蓄熱材に含浸されたものを、ボード状に加圧成形することも考えられるが、木質系材料同士の接着性を確保するためには、マトリクスとなるセメントなどの無機質硬化体を介在させねばならない。この結果、潜熱蓄熱材の蓄熱量は十分なものであるといえず、蓄熱の応答性を高めることができないことがある。この点を鑑みて、木質系材料同士を接するように成形した場合には、木質系材料同士はほとんど接合しないため、木質ボードの強度が低下してしまうことがあった。
【0009】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、木質ボードの強度を向上させるとともに、これまでのものに比べて蓄熱性を高めることができる木質ボードおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような点を鑑みて、発明者らが鋭意検討を重ねた結果、木質成形体に、直接的に潜熱蓄熱材を含浸させることにより、木質ボードの強度を保持しつつより多くの潜熱蓄熱材を木質ボード内に含有させることができると考えた。この際に、木質成形体に好適に潜熱蓄熱材を含浸させ、含浸させた潜熱蓄熱材を木質成形体内に保持するには、木質成形体の密度が重要であるとの知見を得た。
【0011】
本発明は発明者らのこの新たな知見に基づくものであり、本発明に係る木質ボードの製造方法は、木質系材料を集積して加圧成形したボード状の木質成形体に、潜熱蓄熱材を含浸する工程を含み、前記潜熱蓄熱材を含浸する工程において、前記木質成形体として、密度が0.3〜0.5g/cm
3の範囲にある木質成形体を用いることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、上述した密度範囲となるように予め木質系材料を集積してボード状に加圧成形された木質成形体に対して、潜熱蓄熱材を含浸させるので、強度低下を招くことなく、木質ボードに対して単位重量あたりの潜熱蓄熱材の含有量をこれまでのものに比べて高めた木質ボードを得ることができる。さらに、含浸後の潜熱蓄熱材は、放冷などにより冷却されるので、木質ボード内に潜熱蓄熱材を保持することができる。
【0013】
ここで、0.3g/cm
3未満の木質成形体を、加圧成形により成形することが難しい場合があり、たとえ成形されたとしても、含浸の際に木質ボードの強度が不足するおそれがある。一方、木質成形体の密度が0.5g/cm
3を超えた場合には、潜熱蓄熱材が十分に木質成形体に含浸され難いばかりでなく、含浸した潜熱蓄熱材が溶出する(滲み出す)ことがある。
【0014】
より好ましい態様としては、前記潜熱蓄熱材を含浸する工程において、前記木質ボードに潜熱蓄熱材が0.20〜0.33g/cm
3含有するように、該木質成形体を構成する木質系材料の内部および木質系材料同士の間に前記潜熱蓄熱材を含浸させる。
【0015】
この態様によれば、上述した密度範囲の木質成形体に対して、潜熱蓄熱材を0.20〜0.33g/cm
3含有するので、木質ボードからの潜熱蓄熱材の溶出を抑えるとともに、木質ボードの蓄熱性を高めることができる。また、木質系材料の表面には潜熱蓄熱材が連続して層状に覆われ、木質ボード内において層状の潜熱蓄熱材がネットワーク状(網目状)に形成されることになる。この結果、含浸後の木質ボードの機械的強度を大幅に向上させることができる。
【0016】
上述した密度範囲の木質成形体に対して、潜熱蓄熱材の含有量が0.2g/cm
3未満の場合には、潜熱蓄熱材による蓄熱性を十分に期待することができないばかりでなく、潜熱蓄熱材を含浸しても木質ボードの機械的強度の大幅な向上が望めないこともある。一方、上述した密度範囲の木質成形体に対して、潜熱蓄熱材の含有量が0.33g/cm
3を越える場合には、木質ボードから潜熱蓄熱材が溶出するおそれがある。
【0017】
さらに好ましい態様としては、前記木質系材料に、木質片を用いる。この態様によれば、木質片から木質成形体が加圧成形されているので、木質成形体の空隙率は、その他の材料を集積してボード状に加圧成形されたものに比べて高く、木質成形体内に潜熱蓄熱材をより多く含浸させることができる。
【0018】
本発明として、上述した課題を解決するための木質ボードをも開示する。本発明に係る木質ボードは、木質系材料を集積してボード状に加圧成形した木質成形体と、潜熱蓄熱材とを少なくとも備えた木質ボードであって、前記木質成形体の密度は、0.3〜0.5g/cm
3の範囲にあり、該木質成形体を構成する木質系材料の内部および木質系材料同士の間に、前記潜熱蓄熱材が0.20〜0.33g/cm
3含有していることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、上述した範囲の木質成形体の密度の範囲において、上述した含有量の範囲の潜熱蓄熱材が、木質成形体を構成する木質系材料の内部および木質系材料同士の間の双方に含有しているので、木質ボードは、これまでのものよりも機械的強度および蓄熱性が高いものとなる。特に、このような範囲を満たした場合には、木質系材料の表面に潜熱蓄熱材が層状に覆われ、木質ボード内においてネットワーク状(網目状)に形成されることになる。この結果、木質成形体内には、ネットワーク状の蓄熱層が連続して形成されているので、潜熱蓄熱材の熱伝導性を高めるとともに、木質ボードの機械的強度をも高めることができる。
【0020】
ここで、木質成形体の密度が0.3g/cm
3未満の場合には、木質成形体が強度不足となる。一方、木質成形体の密度が0.5g/cm
3を超えた場合には、木質ボードの機械的強度を高めることは難しく、潜熱蓄熱材が溶出する(滲み出す)ことがある。
【0021】
さらに、上述した密度範囲の木質成形体に対して、潜熱蓄熱材の含有量が0.2g/cm
3未満の場合、潜熱蓄熱材が木質成形体に十分に含有してないので、木質ボードの蓄熱性が十分なものとはいえず、さらには潜熱蓄熱材による木質ボードの機械的強度の大幅な向上を望めないことがある。一方、上述した密度範囲の木質成形体に対して、潜熱蓄熱材の含有量が0.33g/cm
3を越える場合には、木質ボードから潜熱蓄熱材が溶出するおそれもある。
【0022】
さらに好ましい態様としては、前記木質系材料は、木質片からなる。この態様によれば、木質片から木質成形体が加圧成形されているので、木質成形体の空隙率は、その他の材料を集積してボード状に加圧成形されたものに比べて高く、木質成形体内に、潜熱蓄熱材をより多く含有させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、潜熱蓄熱材を含浸させることにより木質ボードの強度を向上させるとともに、これまでのものに比べてより高い蓄熱性を期待することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本実施形態に基づき本発明を説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る木質ボードの製造方法を説明する模式的概念図であり、
図2は、
図1に示す製造方法で製造された木質ボードの模式的部分断面図である。
【0027】
本実施形態に係る木質ボード1を製造する際に、まず、
図1に示すように、木質系材料を集積してボード状に加圧成形された木質成形体1aを準備する。木質成形体としては、パーティクルボード、MDF、インシュレーションボード、OSB等を挙げることができる。木質系材料としては、南洋材であるラワンや針葉樹のマツやスギ等から得られるチップ状の木質片または木質繊維などを挙げることができる。
【0028】
本実施形態では、より好ましい態様として、木質系材料に木質片を用い、木質成形体として木質片を集積させたパーティクルボードを準備する。木質系材料に木質片から得られるパーティクルボードは、木質繊維で成形したものに比べて、木質成形体の空隙率は高くなるため、後述するように、木質成形体内に潜熱蓄熱材をより多く含浸させることができる。
【0029】
木質成形体は、これらの木質系材料を必要に応じてイソシアネート接着剤、フェノールホルムアルデヒド系接着剤、尿素ホルムアルデヒド系接着剤、メラミンホルムアルデヒド系接着剤と混合し、集積してボード状に加圧成形することにより得られる。木質成形体を成形する際には、加圧加熱成形を行ってもよい。
【0030】
ここで、木質成形体の密度は、0.3〜0.5g/cm
3の範囲にあり、ボード状に加圧成形する際の圧力条件、加熱条件等を調整することにより、このような密度範囲とすることができる。木質成形体1aの密度が0.3g/cm
3未満の場合、加圧成形により木質ボードを成形することが難しい場合がある。
【0031】
次に、このようにして得られたボード状の木質成形体1aに、溶融状態の潜熱蓄熱材5aを含浸させる(含浸工程)。潜熱蓄熱材5aは、加熱装置の設置されたバット9内において融点以上(通常は融点+20〜30℃程度)に加熱されており、溶融した状態となっている。このバット9内の潜熱蓄熱材5aに木質成形体1aを浸漬し、所定時間放置することにより、木質片の表面に潜熱蓄熱材5aからなる蓄熱層5が形成されるとともに、木質片の内部に潜熱蓄熱材が浸透するように、溶融状態の潜熱蓄熱材5aを木質ボード内に含浸させる。
【0032】
具体的には、本実施形態では、得られる木質ボード1に対して潜熱蓄熱材が0.20〜0.33g/cm
3含有するように、木質成形体1aを構成する木質系材料の内部および木質片3、3同士の間に潜熱蓄熱材5aを含浸させる。この結果、密度0.6〜0.7g/cm
3となる木質ボード1を得ることができる。
【0033】
ここで、バット9内に含浸される潜熱蓄熱材は、日射光により付与される日射熱、または、室内の暖房による熱などで固体から液体に相変化する潜熱蓄熱材であり、好ましくは、住宅用蓄熱建材を考慮すると、潜熱蓄熱材の相変化温度(融点)は5℃〜60℃の範囲にあり、より好ましくは、20℃〜60℃の範囲にある。室内の壁用に用いる場合には、融点が20℃〜30℃の範囲にあることが望ましく、室内の床用に用いる場合には、30℃〜60℃の範囲にあることが望ましい。
【0034】
潜熱蓄熱材としては、n−ヘキサデカン、n−ヘプタデカン、n−オクタデカン、n−ナノデカン等及びこれらの混合物で構成されるn−パラフィンやパラフィンワックス等の脂肪族炭化水素、オクタン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸等及びこれらの混合物で構成される長鎖脂肪酸、または、上記脂肪酸のエステルやポリエチレングリコール等のポリエーテル化合物等を挙げることができる。たとえば28℃で融解するものであれば、n−オクタデカンを選択し、18℃で融解するものであれば、n−ヘキサデカン選択する。さらに、上述した融点の異なる潜熱蓄熱材を混合して用いてもよい。
【0035】
本実施形態では、バット9内の潜熱蓄熱材5aに木質成形体1aを浸漬させることにより、潜熱蓄熱材を木質成形体に含浸させたが、たとえば、木質成形体1aの表面に潜熱蓄熱材を流すまたは塗布することにより、潜熱蓄熱材を木質成形体1aに含浸させてもよい。
【0036】
そして、
図1に示すように、潜熱蓄熱材5aが含浸された木質ボード1を立て、表面に付着した潜熱蓄熱材5aおよび内部に含浸された溶融した潜熱蓄熱材5aの一部の液きりを行い、その後、放冷などにより冷却して、潜熱蓄熱材5aを固化させる。
【0037】
本実施形態では、上述した密度範囲となる木質成形体1aに対して、潜熱蓄熱材5aを含浸させるので、木質ボードに対して単位重量あたりの潜熱蓄熱材5aの含有量をこれまでのものに比べて高めた木質ボードを得ることができる。なお、木質成形体1aの密度が0.5g/cm
3を超えた場合には、潜熱蓄熱材5aが十分に木質成形体1aに含浸され難いばかりでなく、含浸した潜熱蓄熱材が溶出する(滲み出す)ことがある。
【0038】
そして、潜熱蓄熱材の含浸、潜熱蓄熱材の液きり、木質ボードの冷却の一連の工程を経て、木質ボード1には、潜熱蓄熱材が0.20〜0.33g/cm
3含有しているので、木質ボード1からの潜熱蓄熱材1aの溶出を抑えるとともに、木質ボードの蓄熱性を高めることができる。
【0039】
具体的には、
図2に示すように、得られた木質ボード1には、木質片3の表面に、潜熱蓄熱材からなる蓄熱層5が、木質ボード内の全体に(木質ボードの表面から裏面まで)ネットワーク状(網目状)に形成されるとともに、蓄熱層5が形成された木質片の内部には潜熱蓄熱材が浸透している。さらに、木質ボード1の内部には、空隙が形成されることになる。
【0040】
このような結果、木質片3の表面には、潜熱蓄熱材からなる蓄熱層5が連続して形成されているとともに、蓄熱層5が形成された木質片3の内部には潜熱蓄熱材が浸透しているので、これまでのものに比べてより多くの潜熱蓄熱材を木質ボード1に含有させることができる。
【0041】
また、木質ボード1は、潜熱蓄熱材からなる蓄熱層5がボード表面から裏面まで、その内部においてネットワーク状に連続して形成されているので、木質ボード1の機械的強度も高めつつも、蓄熱層5から入熱された熱を潜熱蓄熱材を介して木質ボードの内部に迅速に伝えることができる。さらに、蓄熱層5が形成された木質片3の内部にも潜熱蓄熱材が浸透されているので、この浸透された潜熱蓄熱材により木質ボード1の表面からの入熱された熱を効率良く蓄熱することができる。
【0042】
また、木質片3の表面には、連続して蓄熱層5が形成されているので、木質ボード1の吸湿性および吸水性を抑えることができ、さらには、接着剤のホルムアルデヒドの放散をも抑制することができる。
【0043】
また、
図2に示すように、木質ボード1の内部には、空隙8が形成されているので、蓄熱時において溶融した蓄熱材の滲み出しを抑制することができるとともに、木質ボード1の断熱効果を高めることもできる。
【0044】
なお、上述した密度範囲の木質成形体1aに対して、潜熱蓄熱材の含有量が0.2g/cm
3未満の場合には、潜熱蓄熱材による蓄熱性を十分に期待することができないばかりでなく、潜熱蓄熱材による木質ボード1の機械的強度の向上が望めないこともある。一方、上述した密度範囲の木質成形体1aに対して、潜熱蓄熱材の含有量が0.33g/cm
3を越える場合には、木質ボード1から潜熱蓄熱材の溶出するおそれがある。
【実施例】
【0045】
以下に本発明を実施例により説明する。
【0046】
<実施例1>
スギチップからなる木質片に、尿素メラミンホルムアルデヒド接着剤を10質量%添加して、プレス温度180℃、プレス時間6分、350mm×350mm×厚さ12mmのパーティクルボード(ボード状の木質成形体)を密度0.31g/cm
3となるように加圧加熱成形した。得られたパーティクルボードを200mm×200mmにカットして、パラフィンワックス(日本精蝋(株)製PW−115:融点48℃、融解蓄熱量200kJ/kg)〔以下パラフィンという〕からなる潜熱蓄熱材を80℃まで加熱してバット内でこれを溶融し、融解した潜熱蓄熱材にカットしたパーティクルボードを5分間浸漬し、パーティクルボード内に潜熱蓄熱材を含浸させ、潜熱蓄熱材を液きり後放冷し、木質ボードを作製した。
【0047】
<実施例2>
実施例1と同じように、木質ボードを作製した。実施例1と相違する点は、密度0.40g/cm
3となるように、350mm×350mm×厚さ12mmのパーティクルボードを加圧加熱成形した点である。
【0048】
<実施例3>
実施例1と同じように、木質ボードを作製した。実施例1と相違する点は、密度0.49g/cm
3となるように、350mm×350mm×厚さ12mmのパーティクルボードを加圧加熱成形した点である。
【0049】
<比較例1>
実施例1と同じように、木質ボードを作製しようとした。実施例1と相違するように、密度0.25g/cm
3となるように、350mm×350mm×厚さ12mmのパーティクルボードを加圧加熱成形しようとしたが、成形時(解圧時)にパーティクルボードがパンクし成形不能となった。
【0050】
<比較例2>
実施例1と同じように、木質ボードを作製した。実施例1と相違する点は、密度0.6g/cm
3となるように、350mm×350mm×厚さ12mmのパーティクルボードを加圧加熱成形した点である。
【0051】
[木質ボードの密度の測定]
実施例1〜3および比較例2の含浸前のパーティクルボードの重量と、含浸後の木質ボードの重量から、潜熱蓄熱材の含有量を算出し、含有量からパーティクルボードに対する含浸率を算出した。さらに、含浸後の木質ボードの体積と重量から木質ボードの密度を算出した。これらの結果を表1に示す。
図4は、実施例1〜3および比較例1に係る木質ボードのボード密度と、パラフィンの含有量との関係を示した図である。
【0052】
[木質ボードの曲げ強さの測定]
実施例1〜3および比較例2の潜熱蓄熱材を含浸する前後の木質ボードの曲げ強さをJIS A5908に準じて測定し、この結果からボード曲げ強さ向上率を算出した。この結果を表1に示す。
図5は、実施例1〜3および比較例1に係る木質ボードのボード密度と、ボード曲げ強さ向上率との関係を示した図である。
【0053】
[木質ボードの蓄熱量の測定]
実施例1〜3および比較例2の木質ボードの蓄熱量を測定した。具体的には、
図3に示すように、各木質ボード1を加熱板1に載置し、木質ボードの側面を断熱材で囲い、側面からボード表面およびボード裏面に、熱流計14、16、熱電対15、17を配置した。加熱板を55℃(環境試験室温40℃)となるように加熱板を加熱し、加熱板から木質ボードに流入した熱量Q1から流出した熱量Q2を差し引いた熱量から算出した。この結果を表1に示す。
図6は、実施例1〜3および比較例1に係る木質ボードのボード密度と、蓄熱量との関係を示した図である。
【0054】
[潜熱蓄熱材の溶出評価]
実施例1〜3および比較例2の木質ボードを100mm×100mmに切り出して、65%R.H.に1週間以上放置した後、60℃のドライヤーで3時間加熱後、指触によりパラフィンの表面への溶出状況を評価した。この結果を表1に示す。
【0055】
◎:まったくべたつきを感じない
○:少しべたつきを感じる
×:相当べたつきを感じる
【0056】
【表1】
【0057】
<結果1>
表1に示すように、実施例1〜3および比較例2に示すように、パーティクルボードの密度(ボード密度)が、0.31g/cm
3以上の場合には、パーティクルボードに潜熱蓄熱材を含浸することができる。
【0058】
図4に示すように、ボード密度が増加するに従って、パラフィン含有量が減少し、これに伴い、
図6に示すように木質ボードの蓄熱量も減少したと考えられる。
【0059】
また、
図5に示すように、実施例1〜3に係る木質ボードのボード曲げ強さは、潜熱蓄熱材を含浸させることにより向上したが、比較例2の場合には、潜熱蓄熱材を含浸しても、木質ボードの曲げ強さはほとんど向上しなかった。これは、比較例2の場合には、潜熱蓄熱材がパーティクルボード内に十分含浸されていないからであると考えられる。一方、実施例1〜3の木質ボードの場合には、潜熱蓄熱材がパーティクルボード内に十分に含浸されており、木質片の表面にパラフィンが層状に連続して形成され、これが木質ボード内においてネットワーク状(網目状)に形成されることにより、木質ボードの機械的強度が高まったと考えられる。
【0060】
さらに、表1に示すように、実施例1〜3に係る木質ボードの溶出評価は良好であったが、比較例2に係る木質ボードの場合には、潜熱蓄熱材の溶出が見られた。これは、比較例2の場合には、実施例1〜3に比べてボード密度が高いため、潜熱蓄熱材をボード内に十分に保持することができなかったものと考えられる。
【0061】
以上のことから、実施例1〜3に示すように、木質片を集積して加圧成形した木質成形体に潜熱蓄熱材を含浸する場合、密度が0.3〜0.5g/cm
3の範囲にある木質成形体であれば、上述した効果を期待することができることは明らかである。さらに、この密度範囲の木質ボードに潜熱蓄熱材が0.20〜0.33g/cm
3含有するように、木質成形体を構成する木質系材料の内部および木質系材料同士の間に潜熱蓄熱材を含浸させることがより好ましいといえる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【0063】
本実施形態の木質ボードに化粧材を設けてもよい。また、木質ボード自体に切削、穴あけ等の加工をさらに施してもよい。これにより、高い防音性を発揮することができる。さらに木質ボードを断熱材と組み合わせることにより、高い蓄熱性と断熱性の効果を期待することができる。