特許第6091915号(P6091915)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6091915
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】ステアリングメンバ
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20170227BHJP
【FI】
   B62D25/08 J
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-20917(P2013-20917)
(22)【出願日】2013年2月5日
(65)【公開番号】特開2014-151684(P2014-151684A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2015年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000178804
【氏名又は名称】ユニプレス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】永野 勉
【審査官】 田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−253368(JP,A)
【文献】 特開2001−341669(JP,A)
【文献】 特開2000−185603(JP,A)
【文献】 特開2005−306083(JP,A)
【文献】 特開2010−126140(JP,A)
【文献】 特開2008−051237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太管で構成されたドライバ側パイプと、細管で構成されたアシスト側パイプとを両パイプの中間側端部同士を連結することによりステアリングメンバを構成する場合、前記ドライバ側パイプの中間側端部と前記アシスト側パイプの中間側端部同士を連結具を介して連結し、該連結具が、前記ドライバ側パイプの中間側端部と互いに嵌合し合うドライバ側パイプ嵌合用筒状体部と前記アシスト側パイプの中間側端部と互いに嵌合し合うアシスト側パイプ嵌合用筒状体部とを一体形成することにより構成されていて、しかも、前記アシスト側パイプ嵌合用筒状体部が、前記ドライバ側パイプ嵌合用筒状体部における嵌合孔部の一端部側に引き込まれた状態で形成されていることを特徴とするステアリングメンバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車の操舵制御を司るステアリング機構を支持するステアリングメンバに関する。
【背景技術】
【0002】
従来におけるステアリングメンバaは、例えば、図に示すように、車幅方向両外側端部に取付けられたサイドブラケットb、bを介して車体に車幅方向に延在するように配設されており、両サイドブラケットb、bを挟む中間部において、ステアリングコラムブラケットc、ポストブラケットd或いはインストルメントパネル(不図示)に取付けるためのインストステイe、e等が取着され、ステアリングコラムブラケットc及びポストブラケットdによって、不図示のステアリング機構を支持するステアリングコラムシャフトが装着されるようになっている。
【0003】
このように構成する従来のステアリングメンバaは、通常、太管で構成されるドライバ側パイプa−1と細管で構成されるアシスト側パイプa−2とを互いに溶接等を行うことにより連結構成されているものが知られている。
【0004】
このように太管構成のドライバ側パイプa−1と細管構成のアシスト側パイプa−2とを互いに連結することによりステアリングメンバaを構成することは、車体に対してステアリング機構を支えるドライバ側パイプa−1を太管構成にして高い剛性および強度を付与すべくなすとともに、それほど高い剛性および強度を必要としないアシスト側パイプa−2を細管構成とすることにより、車体の軽量化を図るとともに車体におけるアシスト側パイプa−2周辺に配置されるケーブル類等の設置スペースを確保すべく意図したものである。
【0005】
そして、上記したドライバ側パイプa−1とアシスト側パイプa−2との連結構造は、互いに外径寸法が異なる同士を連結するには、図に明示するように、アシスト側パイプa−2の中間側端部a−2aを拡管加工することにより、その外径をドライバ側パイプa−1の内径に相当するように拡管しておき、拡管された中間側端部a−2aをドライバ側パイプa−1の中間側端部a−1aに嵌合した上で溶接等を施すことにより連結して構成していた(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−112078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のステアリングメンバaは、アシスト側パイプa−2の中間側端部a−2aを拡管することによりドライバ側パイプa−1に連結するものであることから、かかる拡管によりアシスト側パイプa−2が薄肉部を有することになって剛性を低下させることになって、厚肉対策などによる車体重量の増加と共にコスト高を招いてしまう。
【0008】
また、ドライバ側パイプa−1及びアシスト側パイプa−2は、共に、部品調達コスト低減などのコスト上の理由から、市販パイプを使用するのが通常であるが、かかる市販パイプは、外径寸法が所定寸法になるように高い精度の規格により管理されている反面、肉厚寸法や内径寸法にはばらつきがあるのが常である。
【0009】
かかることから、アシスト側パイプa−2の外径寸法を拡管された中間側端部a−2aを形成する拡管加工は、所定外径寸法を有する加工用具(不図示)をアシスト側パイプa−2の中間側端部a−2aに嵌合圧入しながら、中間側端部a−2aの内径を広げることにより、行うことになる。この結果、所定外径寸法の加工用具で中間側端部の内径を拡径したとしても、アシスト側パイプa−2の肉厚寸法や内径寸法のばらつきにより、所定の外径寸法の中間側端部a−2aを得ることができない場合が出てくる。この結果、市販品であるアシスト側パイプa−2の肉厚寸法や内径寸法のバラツキ幅を見込んで対応しようとすると、加工工具は複数種用意しなければならず、共用化/統一化の妨げとなっていた。
【0010】
更に、アシスト側パイプa−2の拡管された中間側端部a−2aは、肉厚寸法並びに内径寸法のばらつきにより外径寸法もばらつくことになり、かかるドライバ側パイプa−1の肉厚寸法や内径寸法のばらつきによっては、ドライバ側パイプa−1の中間側端部a−1aに嵌合できない場合や嵌合できたとしても、嵌合隙間が生じてしまうことになりかねず、後処理工程におけるメンテナンス作業を必要とすることになる。
【0011】
更にまた、通常、この種のパイプは、板材をプレス加工することにより管状に形成して当該プレートの両端部をシーム溶接により接合することにより製作しているが、かかるシーム溶接により形成された溶接ビード部が一般部位より焼入れ硬化されていることから、上記した拡管加工の際に、一般部位に対して溶接ビード部における伸び率が変化して、中間側端部a−2aを真円に形成するのが非常に困難であった。
【0012】
そこで、この発明は、かかる従来の技術における未解決課題に鑑み、太管で構成されたドライバ側パイプと細管で構成されたアシスト側パイプとを当該アシスト側パイプの拡管加工を必要とせず連結できるように構成したステアリングメンバを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明に係るステアリングメンバは、太管で構成されたドライバ側パイプと、細管で構成されたアシスト側パイプとを両パイプの中間側端部同士を連結することによりステアリングメンバを構成する場合、前記ドライバ側パイプの中間側端部と前記アシスト側パイプの中間側端部同士を連結具を介して連結し、該連結具が、前記ドライバ側パイプの中間側端部と互いに嵌合し合うドライバ側パイプ嵌合用筒状体部と前記アシスト側パイプの中間側端部と互いに嵌合し合うアシスト側パイプ嵌合用筒状体部とを一体形成することにより構成されていて、しかも、前記アシスト側パイプ嵌合用筒状体部が、前記ドライバ側パイプ嵌合用筒状体部における嵌合孔部の一端部側に引き込まれた状態で形成されていることを特徴とする。
【0014】
かかる構成により、この発明は、ドライバ側パイプの中間側端部とアシスト側パイプの中間側端部同士が、ドライバ側パイプの中間側端部と互いに嵌合し合うドライバ側パイプ嵌合用筒状体部とアシスト側パイプの中間側端部と互いに嵌合し合うアシスト側パイプ嵌合用筒状体部とを一体形成した連結具を介して連結されていることから、従来のように、アシスト側パイプの拡管加工を要しないことになり、アシスト側パイプの薄肉部形成による板厚減少部が無く剛性の向上を図ることができるとともに、連結具の長さ寸法分、ドライバ側パイプ或いはアシスト側パイプの軸方向長さを短縮できて、コスト低減を果たすことができる。
【0015】
た、かかる構成を有するこの発明は、ドライバ側パイプ及びアシスト側パイプの各中間側端部を連結具におけるドライバ側パイプ嵌合用筒状体部及びアシスト側パイプ嵌合用筒状体部の各外径側に嵌合するか又は内径側に嵌合するかにより、径を異にするドライバ側パイプ及びアシスト側パイプを適宜選択適用することができると共に、連結具の共用化を図ることができる。
【0016】
さらに、かかる構成により、この発明におけるドライバ側パイプの中間側端部及びアシスト側パイプの中間側端部同士を連結する別体構成の連結具は、板材をプレス成形等により簡単に形成することができてコスト的に有利であり、しかも、たとえば連結具の両嵌合孔部の内径寸法を、高い精度の規格により管理された両パイプの外径寸法に適合するように常に真円形状に形成することができ、従来のような、両パイプの嵌合不可や嵌合隙間の発生による後工程で行うメンテナンス作業をなくすことができる。
【0017】
加えて、かかる構成を有するこの発明は連結具自体の長さ寸法を短縮することができ、同一の長さ寸法のドライバ側パイプ及びアシスト側パイプを使用したとしても、より小型の自動車におけるステアリングメンバとしても適用できることになり、ドライバ側パイプ及びアシスト側パイプの共用化による製造コストの低減を図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明は、ドライバ側パイプの中間側端部とアシスト側パイプの中間側端部同士が、ドライバ側パイプの中間側端部と互いに嵌合し合うドライバ側パイプ嵌合用筒状体部とアシスト側パイプの中間側端部と互いに嵌合し合うアシスト側パイプ嵌合用筒状体部とを一体形成した連結具を介して連結されていることから、従来のように、アシスト側パイプの拡管加工を要しないことになり、アシスト側パイプの薄肉部形成による板厚減少部を無くして、剛性の向上を図ることができるとともに、連結具の長さ寸法分、ドライバ側パイプ或いはアシスト側パイプの軸方向長さを短縮できて、コスト低減を果たすことができる。
【0019】
また、かかる構成により、この発明におけるドライバ側パイプの中間側端部及びアシスト側パイプの中間側端部同士を連結する別体構成の連結具は、板材をプレス成形等により簡単に形成することができてコスト的に有利であり、しかも、たとえば、連結具の両嵌合孔部の内径寸法を、高い精度の規格により管理された両パイプの外径寸法に適合するように常に真円形状に形成することができ、従来のような、両パイプの嵌合不可や嵌合隙間の発生による後工程で行うメンテナンス作業をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】この発明の施例に係るステアリングメンバを概略的に描画した斜視図である。
図2】この発明の施例に係るステアリングメンバの要部構成を拡大して描画した正面図である。
図3】図のC−C断面図である。
図4】図における連結具を描画した斜視図である。
図5】従来におけるステアリングメンバを概略的に描画した斜視図である。
図6】図におけるT円内を拡大して描画した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この発明の実施例に係るステアリングメンバは、太管で構成されたドライバ側パイプと細管で構成されたアシスト側パイプとを当該アシスト側パイプの拡管加工を必要とせず連結できるように構成すべくなしたものである。
【0022】
次に、図を用いて、この発明を採用した実施例に係るステアリングメンバについて説明する。
【0023】
先ず、図1乃至図4を用いて、この発明の施例に係るステアリングメンバを説明する。
【0024】
先ず、図1において、ステアリングメンバ1は、車幅方向両外端部に取付けられたサイドブラケット2、2を介して不図示の車体側部に車幅方向に延在するように配設されている。
【0025】
そして、ステアリングメンバ1は、両サイドブラケット2、2を挟む中間部において、ステアリングコラムブラケット3、ポストブラケット4、或いはインストルメントパネル(不図示)に取付けるためのインストステイ5、5等が取着されており、ステアリングコラムブラケット3及びポストブラケット4を介して、不図示のステアリング機構を支持するステアリングコラムシャフト(不図示)を装着している。
【0026】
次に、図乃至図を用いて、この発明の施例に係るステアリングメンバについて説明する。
【0027】
かかるステアリングメンバ1は、図及び図に示すように、管で構成されるドライバ側パイプ11と細管で構成されるアシスト側パイプ12とを有して構成されており、ドライバ側パイプ11の中間側端部11a及びアシスト側パイプ12の中間側端部12a同士を連結具6によって連結することにより、一体的に構成している。
【0028】
連結具6は、図及び図に明示するように、ドライバ側パイプ11の中間側端部11aを嵌合する内径が太径の嵌合孔部61aを有するドライバ側パイプ嵌合用筒状体部61とアシスト側パイプ12の中間側端部12aを嵌合する内径が細径の嵌合孔部62aを有するアシスト側パイプ嵌合用筒状体部62とを有して構成されている。そして、連結具6は、シスト側パイプ嵌合用筒状体部62が嵌合孔部61aの一端部側に引き込まれた状態で形成されることによって、軸方向長さを短縮した形で一体形成されている。
【0029】
このように構成する連結具6は、ドライバ側パイプ嵌合用筒状体部61及びアシスト側パイプ嵌合用筒状体部62を平板状に展開した状態の形状を板材によるプレス成形により形成し、しかる後、かかるプレス成形品をパイプ状に更にプレス成形して、両端面6a、6b同士を溶接等により接合することにより、形成している。
【0030】
かかるこの発明の施例において、ドライバ側パイプ11の中間側端部11a及びアシスト側パイプ12の中間側端部12aが連結具6を用いて連結されてステアリングメンバ1を構成する場合、ドライバ側パイプ11の中間側端部11aを、連結具6におけるドライバ側パイプ嵌合用筒状体部61の太径の嵌合孔部61aに嵌合するとともに、アシスト側パイプ12の中間側端部12aを、連結具6におけるアシスト側パイプ嵌合用筒状体部62の細径の嵌合孔部62aに嵌合し、当該両嵌合部を溶接などすることにより固定することになる。
【0031】
上記のように構成するこの発明の施例に係るステアリングメンバ1は、ドライバ側パイプ11及びアシスト側パイプ12同士を連結具6によって連結することにより構成していることから、従来のように、アシスト側パイプの拡管加工を要しないことになり、アシスト側パイプ12の薄肉部形成による板厚減少部を無くして剛性の向上を図ることができるとともに、連結具6の長さ寸法の分ドライバ側パイプ11或いはアシスト側パイプ12の軸方向長さを短縮できて、コスト低減を果たすことができる。
【0032】
また、上記のように構成するこの発明に係る第の実施例は、ドライバ側パイプ11の中間側端部11aとアシスト側パイプの中間側端部12a同士を連結する別体構成の連結具6を、板材をプレス成形等により簡単に形成することができてコスト的に有利であり、しかも、連結具6の両嵌合孔部61a、62aの内径寸法を、高い精度の規格により管理された両パイプ11、12の外径寸法に適合するように常に真円形状に形成することができ、従来のような、両パイプの嵌合不可や嵌合隙間の発生などを生起することがなくなる。
【0033】
加えて、かかる構成を有するこの発明に係る実施例は、連結具6自体の長さ寸法を短縮することができ、同一の長さ寸法のドライバ側パイプ11及びアシスト側パイプ12を使用したとしても、より小型の自動車におけるステアリングメンバ1としても適用できることになり、ドライバ側パイプ11及びアシスト側パイプ12の共用化による製造コストの低減を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上説明したこの発明は、太管で構成されたドライバ側パイプと細管で構成されたアシスト側パイプとを当該アシスト側パイプの拡管加工を必要とせず連結できるように構成したことから、自動車の操舵制御を司るステアリング機構を支持するステアリングメンバ等に好適であるといえる。
【符号の説明】
【0035】
1 ステアリングメンバ
11 ドライバ側パイプ部
11a 中間側端部
12 アシスト側パイプ
12a 中間側端部
6 連結具
6a、6b 端面
61 ドライバ側パイプ嵌合用筒状体部
61a 嵌合孔部
62 アシスト側パイプ嵌合用筒状体部
62a 嵌合孔部
63 連結筒状体部
図1
図2
図3
図4
図5
図6