(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
更に、基板と、前記基板の一方の面に形成された回路パターンとを有し、前記回路パターンと前記導体とがバンプ、共晶金属、ハンダのいずれかによって電気的に接続されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体発光装置。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の半導体発光装置としては、例えば、
図12にあるような構造のものが特許文献1に開示されている。
【0003】
それは、リード電極81と、リード電極81を有する台座底部82と、台座底部82に設けられた台座柱部83とによって台座80が構成され、台座柱部83の側面には、接着部材を介して半導体レーザ素子84が載置されている。台座底部82の上面には、台座柱部83及び該台座柱部83に載置された半導体レーザ素子84を覆うように、台座底部82の上面の縁周近傍から垂直方向に延びる有底円筒状のキャップ(金属製)85が接着固定されている。
【0004】
キャップ上部86には貫通孔87が設けられていると共に、該貫通孔87を覆うように該貫通孔87の上面に波長変換部材88が共晶接合によって或いは接着材を介して載置されており、貫通孔87はその中心軸が半導体レーザ素子84の出射光軸とほぼ重なるように位置している。
【0005】
これにより、半導体レーザ素子84から放射されたレーザ光は、キャップ85の貫通孔87を通過して波長変換部材88に照射され、波長変換部材88で波長変換された光と波長変換されない光(レーザ光)が波長変換部材88から出射してその混色光が外部に向けて照射される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献1の半導体発光装置は、例えば、外的な強い振動や衝撃を受ける環境下において波長変換部材88がキャップ上部86から離脱した場合、半導体レーザ素子84から放射されたレーザ光が貫通孔87を通過してそのまま外部に向けて照射されることになる。その結果、半導体発光装置を照明装置や表示装置の光源として用いた場合、観視者の目に対する安全性(アイセーフティ)を損なう恐れがある。
【0008】
そこで、本発明は上記問題に鑑みて創案なされたもので、その目的とするところは、半導体レーザ素子からのレーザ光を波長変換部材を通して外部に向けて照射する光学系を備えた半導体発光装置において、万一何らかの理由によって波長変換部材が光学系から離脱した場合においても、観視者に対するアイセーフティを確実に確保することができる構成を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載された発明は、一対の電極を有する半導体レーザ素子と、
前記半導体レーザ素子を覆い、前記半導体レーザ素子からの光が通り抜けるための第一の貫通孔と前記第一の貫通孔を塞ぐように形成された透光性窓を備える保護キャップと、前記保護キャップ上に配置され、前記半導体レーザ素子からの光が通り抜けるための第二の貫通孔が形成された回路パターン形成基板と、前記半導体レーザ素子から放射されるレーザ光の放射方向
であって前記回路パターン形成基板の前記第二の貫通孔を塞ぐように配置され、前記レーザ光で励起されて蛍光を放出する
ガラスあるいは光透過性セラミックに蛍光体粒子を混入してなる蛍光体プレートと、を備え、前記蛍光体プレートには前記半導体レーザ素子が照射される部分以外のいずれかの場所に導体が形成されており、
前記は、前記回路パターン形成基板上に形成された回路パターンと電気的に接続されており、前記半導体レーザ素子は、電源から前記導体
及び前記回路パターン形成基板上の回路パターンを介して前記一対の電極に電力が供給されることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の請求項2に記載された発明は、請求項1において、前記導体は、Ag、Ag合金、Al、Al合金、Rh、Rh合金のいずれかから形成される金属膜を含むことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の請求項3に記載された発明は、請求項1又は請求項2において、更に、基板と、前記基板の一方の面に形成された回路パターンとを有し、前記回路パターンと前記導体とがバンプ、共晶金属、ハンダのいずれかによって電気的に接続されていることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の請求項4に記載された発明は、請求項3において、前記基板は、AlN、アルミナ、SiC、SiNのいずれかによって形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の半導体発光装置は、半導体レーザ素子を有する第1の回路と、半導体レーザ素子のレーザ光放射方向に位置し、導体パターンを備えると共に半導体レーザ素子からのレーザ光を波長変換して外部に向けて照射する蛍光体プレートを有する第2の回路とを接続して半導体レーザ素子に対する通電経路を形成し、万一、蛍光体プレートが離脱した場合は半導体レーザ素子に対する通電経路が切断されて半導体レーザ素子の発振が停止してレーザ光の放射が停止する。
【0014】
その結果、レーザ光が直接観視者の目に入ることが防止される。それにより、観視者に対するアイセーフティを確実に確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の好適な実施形態を
図1〜
図11を参照しながら、詳細に説明する(同一部分については同じ符号を付す)。尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施形態に限られるものではない。
【0017】
図1は本実施形態の半導体発光装置の平面図、
図2は
図1のA−A断面図である。
【0018】
本実施形態の半導体発光装置30は、
図1及び
図2に示すように、金属製で円盤状の台座1に一対の貫通孔1a、1bが設けられ、貫通孔1a、1bの夫々に一対の金属製のリード電極2、3が電気的に絶縁された状態で挿通固定されている。
【0019】
台座1の上面1cには、金属製で柱状のヒートシンク4が載設され、ヒートシンク4の側面には熱伝導性絶縁接着剤(図示せず)を介して半導体レーザ素子5が貼着固定されている。半導体レーザ素子5は一対の素子電極(図示せず)を有しており、夫々の素子電極は金属ワイヤ等の導電性接続部材(図示せず)によって各リード電極2、3の、台座1の上面1cから突出した突出部2a、3aに電気的に接続されている。
【0020】
台座1の上面1cには更に、ヒートシンク4、ヒートシンク4に貼着固定された半導体レーザ素子5及び一対のリード電極2、3の夫々の突出部2a、3aを覆うように、上部中央に貫通孔6aを設けた金属製で円筒状の保護キャップ6が取り付けられている。
【0021】
保護キャップ6の上部内面6cには、保護キャップ6の貫通孔6aを塞ぐようにガラス窓7が取り付けられている。ガラス窓7は、半導体レーザ素子5から放射されたレーザ光を透過すると同時に水分、塵埃及びガス等の外部の異物が貫通孔6aを通って保護キャップ6内に侵入するのを阻止する働きを有している。
【0022】
以上、上記の台座1、一対のリード電極2、3、ヒートシンク4、半導体レーザ素子5、保護キャップ6及びガラス窓7により、半導体レーザ8が構成されている。
【0023】
半導体レーザ8を構成する保護キャップ6の上部上面6bには、中央に貫通孔10aを設けた円盤状の回路パターン形成基板10が載設されている。回路パターン形成基板10は、基材部10dがAlN(窒化アルミニウム)で形成され、一方の面の、貫通孔10aを挟んだ両側に互いに電気的に分離された一対の回路パターン10b、10cが形成されており(
図3(回路パターン形成基板の説明図)参照)、貫通孔10aの中心軸X
1を保護キャップ6の貫通孔6aの中心軸X
2に一致させると共に回路パターン10b、10cが形成された面を上にした状態で載設されている。
【0024】
回路パターン形成基板10の、回路パターン10b、10cが形成された側の面上には、保護キャップ6の貫通孔6a及び回路パターン形成基板10の貫通孔10aを塞ぐように反射電極付蛍光体プレート11が実装されている。
【0025】
反射電極付蛍光体プレート11は、
図4(平面図)及び
図5(
図4のB−B断面図)に示すように、ガラスあるいは光透過性セラミックに蛍光体粒子を混入してなる蛍光体基板11aの一方の面の中央以外の略全面に、光反射率が高く且つ電気伝導率が高いAg、Ag合金、Al、Al合金、Rh、Rh合金からなる光反射電極11bが形成され、中央には光反射電極11bが形成されていない円状の開口部11cを有すると共に開口部11cには蛍光体基板11aが露出している。
【0026】
反射電極付蛍光体プレート11を回路パターン形成基板10に実装するに際しては、
図6(反射電極付蛍光体プレートの実装方法の断面説明図)に示すように、反射電極付蛍光体プレート11の開口部11cの中心軸X
3を回路パターン形成基板10の貫通孔10aの中心軸X
1に一致させた状態で、反射電極付蛍光体プレート11の光反射電極11b側と回路パターン形成基板10の回路パターン10b、10c側とを対向させ、光反射電極11bと回路パターン10b、10cの夫々をAuバンプ12によって機械的且つ電気的に接合することにより実装が施されている。
【0027】
従って、回路パターン形成基板10の貫通孔10aの中心軸X
1、保護キャップ6の貫通孔6aの中心軸X
2及び反射電極付蛍光体プレート11の開口部11cの中心軸X
3はいずれも一致して同一線上に位置すると共に、図示していない半導体レーザ素子の光軸とも一致している。
【0028】
更に、
図1及び
図2に戻って、回路パターン形成基板10には、一端部を回路パターン形成基板10の回路パターン10b、10cの夫々に電気的に接続された一対の外部接続電極13、14が延設されている。
【0029】
上記構成からなる半導体発光装置30は、照明灯具あるいは表示灯具等の灯具の光源として用いる場合は、周辺回路との回路構成を
図7(半導体レーザ素子の駆動回路図)に示すような構成とすることにより、半導体レーザ素子5に電力を供給して駆動させることができる。
【0030】
具体的には、一対のリード電極2、3のうちいずれか一方のリード電極(例えば、リード電極2)と一対の外部接続電極13、14のうちいずれか一方の外部接続電極(例えば、外部接続電極13)とを電気的に接続し、他方のリード電極3と他方の外部接続電極14との間に半導体レーザ素子5の駆動電圧を印加する。
【0031】
この場合、リード電極3が半導体レーザ素子5のアノード電極に接続(リード電極2はカソード電極に接続)されているときは、リード電極3に(+)側の電圧を印加し、外部接続電極14に(−)側の電圧を印加する。反対に、リード電極3が半導体レーザ素子5のカソード電極に接続(リード電極2はアノード電極に接続)されているときは、リード電極3に(−)側の電圧を印加し、外部接続電極14に(+)側の電圧を印加する。
【0032】
本実施形態においては、リード電極3が半導体レーザ素子5のアノード電極に接続され、リード電極2が半導体レーザ素子5のカソード電極に接続されているものとし、リード電極3に(+)側の電圧を印加し、外部接続電極14に(−)側の電圧を印加する。
【0033】
すると、電源20の(+)出力端子から順次、リード電極3、半導体レーザ素子5、リード電極2、リード電極2と外部接続電極13とを電気的に接続するショートバー21、外部接続電極13、回路パターン形成基板10の回路パターン10b、Auバンプ12、反射電極付蛍光体プレート11の光反射電極11b、Auバンプ12、回路パターン形成基板10の回路パターン10c及び外部接続電極14を経て電源20の(−)出力端子に至る通電経路が形成され、この通電経路を半導体レーザ素子5の駆動電流が流れて該半導体レーザ素子5が発振状態となりレーザ光を放射する。
【0034】
半導体レーザ素子5から放射されたレーザ光(例えば、波長が450nmの青色光)L
1は、
図8(レーザ光の光線追跡図)に示すように、ガラス窓7を透過した後に、保護キャップ6の貫通孔6a、回路パターン形成基板10の貫通孔10a及び反射電極付蛍光体プレート11の開口部11cを順次通過して開口部11cに露出した蛍光体基板11aの光入射面11aaに至り、光入射面11aaから蛍光体基板11a内に入射する。
【0035】
蛍光体基板11a内に入射した青色レーザ光は、その一部が蛍光体基板11a内に混入された蛍光体粒子を励起し、光出射面11abからは蛍光体基板11a内をそのまま透過した青色レーザ光と蛍光体粒子の励起によって波長変換された波長変換光との混色光が出射される。
【0036】
この場合、例えば、蛍光体基板11aに混入される蛍光体粒子を、青色光に励起されて青色光の補色となる黄色光に波長変換する黄色蛍光体粒子とすると、青色レーザ光の一部と青色レーザ光の一部が黄色蛍光体粒子を励起することにより波長変換された黄色光との加法混色で白色光に近い色相の光を得ることができる。
【0037】
また、黄色蛍光体粒子の代わりに、青色光に励起されて緑色光に波長変換する緑色蛍光体粒子と赤色光に波長変換する赤色蛍光体粒子との混合蛍光体粒子とし、青色レーザ光の一部と青色レーザ光の一部が緑色蛍光体粒子を励起することにより波長変換された緑色光と青色レーザ光の一部が赤色蛍光体粒子を励起することにより波長変換された赤色光との加法混色で白色光を得ることもできる。
【0038】
さらに、レーザ光の波長と蛍光体粒子の種類とを適宜に組み合わせることにより、白色光以外の種々な色相の光を得ることができる。
【0039】
なお、反射電極付蛍光体プレート11の蛍光体基板11a内におけるレーザ光及び蛍光体粒子による波長変換光は、直接光出射面11abから外部に向けて出射されるものと、内部反射や散乱によって光出射面11ab以外の方向に向かうものとが存在する。
【0040】
そのうち、内部反射や散乱によって光反射電極11bに向かう光は、該光反射電極11bで反射されてその反射光が光出射面11abから外部に出射される。換言すると、反射電極付蛍光体プレート11に光反射機能と電極機能とを兼ねた光反射電極11bを設けたことにより光出射面11abからの出射光L
2の光量が増大し、光の利用効率の向上を図ることができる。
【0041】
ところで、上記構成の半導体発光装置30において、外的な強い振動や衝撃等の何らかの理由によって反射電極付蛍光体プレート11が回路パターン形成基板10から離脱した場合、半導体レーザ素子5に電力を供給するための通電経路の一部を構成する反射電極付蛍光体プレート11が通電経路から除去されることになり、それによって、通電経路が遮断されて半導体レーザ素子5に対する通電が停止されて電力の供給が断たれ、半導体レーザ素子5の発振が停止してレーザ光の放射が停止する(
図9(反射電極付蛍光体プレートの離脱状態の説明図)参照)。
【0042】
また、反射電極付蛍光体プレート11が離脱までしなくとも、フラックが入ることによって光反射電極11bが破断する場合がある。この場合も、クラックを介してレーザ光が外部に直接漏出することを通電経路の切断によって未然に防ぐ点では同様である。
【0043】
つまり、半導体レーザ素子5から放射されたレーザ光が外部に向けて照射されるまでの光学系の一部を構成する反射電極付蛍光体プレート11が回路パターン形成基板10から光学的に離脱したと同時に電気回路的な切断状態が形成されて半導体レーザ素子5からのレーザ光の放射が停止し、レーザ光が直接観視者の目に入ることが防止される。それにより、観視者に対するアイセーフティを確実に確保することができる。
【0044】
なお、反射電極付蛍光体プレート11は、上記構成以外に、
図10(断面図)のように、透明又は散乱プレート25を挟んで一方の側にガラスあるいは光透過性セラミックに蛍光体粒子を混入してなる蛍光体基板11aを設け、他方の側に中央の開口部11cを除いて光反射電極11bを形成した構成としてもよい。
【0045】
これにより、光反射電極11bの開口部11cを通過して透明又は散乱プレート25に入射したレーザ光は、透明又は散乱プレート25で拡散、散乱して蛍光体基板11aに入射する。そのため、蛍光体基板11aからは輝度ムラの少ない光が外部に向けて出射される。
【0046】
あるいは、
図11(断面図)のように、蛍光体基板11aを挟んで一方の側に透明又は散乱プレート25を設け、他方の側に中央の開口部11cを除いて光反射電極11bを形成した構成としてもよい。
【0047】
これにより、光反射電極11bの開口部11cを通過して蛍光体基板11aに入射し、蛍光体基板11a内を導光されて出射した光は、透明又は散乱プレート25で拡散、散乱して輝度ムラの少ない光が外部に向けて出射される。それと同時に、透明又は散乱プレート25は、レーザ光が照射されて加熱された蛍光体基板11aの放熱に寄与するものとなる。そのため、蛍光体粒子の蛍光特性の低下が抑制され、出射光の光量低下が抑制される。
【0048】
なお、反射電極付蛍光体プレート11の光反射電極11bと回路パターン形成基板10の回路パターン10b、10cの夫々との電気的な接続は、上述のAuバンプ12に限られるものではなく、例えば、AuSn共晶やハンダによる接合でもよい。
【0049】
また、回路パターン形成基板11の基材部は、AlN(窒化アルミニウム)に限られるものではなく、例えば、熱伝導性の良好なアルミナセラミックやSiC(炭化珪素)、SiN(窒化珪素)で形成することも可能である。
【0050】
更に、反射電極付蛍光体プレート11の光反射電極11bは、回路パターン形成基板10の回路パターン10b、10cの夫々とを接続する接合部材の接合性を向上させるために、多層構造にすることも可能である。その場合は、例えば、Ag/TiW/Auの三層構造とし、反射機能を持たせる側をAgとし、接合部材の接合側をAuとする。
【0051】
また、反射電極付蛍光体プレート11の、光反射電極11bが形成されていない開口部11cは、上記円状に限られるものではなく、三角形、四角形あるいはその他の多角形であっても構わない。