特許第6091930号(P6091930)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6091930
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】回転陽極型X線管
(51)【国際特許分類】
   H01J 35/10 20060101AFI20170227BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   H01J35/10 N
   F16C17/02 A
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-42010(P2013-42010)
(22)【出願日】2013年3月4日
(65)【公開番号】特開2014-170677(P2014-170677A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2015年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】503382542
【氏名又は名称】東芝電子管デバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100095441
【弁理士】
【氏名又は名称】白根 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100119976
【弁理士】
【氏名又は名称】幸長 保次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100172580
【弁理士】
【氏名又は名称】赤穂 隆雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(74)【代理人】
【識別番号】100134290
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 将訓
(72)【発明者】
【氏名】植木 雅敬
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 安孝
【審査官】 杉田 翠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−075260(JP,A)
【文献】 特開2002−075259(JP,A)
【文献】 特開2003−051279(JP,A)
【文献】 特開2005−069375(JP,A)
【文献】 特開2003−068239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 35/10
F16C 17/00−17/26
H05G 1/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状に形成され、第1掻き込み面を含んだ第1ラジアル軸受面を有した径小部と、前記径小部より外径の大きい円柱状に形成され、前記径小部と同軸的に設けられ、第2掻き込み面を含んだ第2ラジアル軸受面を有した径大部と、を備えた固定軸と、
前記固定軸と同軸的に延出して筒状に形成され、前記固定軸の外周を囲み、前記第1ラジアル軸受面及び第2ラジアル軸受面に対向した第3ラジアル軸受面を有した回転体と、
前記固定軸と、前記回転体との間の隙間に充填され、前記第1掻き込み面及び第2掻き込み面により掻き込まれる潤滑剤と、
前記固定軸の軸方向において、前記径小部より前記径大部側に位置したターゲットと、
前記ターゲットと、前記回転体の前記径小部に対向した領域と、に接合された支持部材と、を備え、
前記第1ラジアル軸受面の軸方向の長さは、前記第2ラジアル軸受面の軸方向の長さより長いことを特徴とする回転陽極型X線管。
【請求項2】
前記径大部の半径をrとすると、
前記径小部の外径は、前記径大部の外径より、1/3×r×1/1000乃至r×1/1000小さいことを特徴とする請求項1に記載の回転陽極型X線管。
【請求項3】
前記第1掻き込み面の面積をS1a、
前記第1掻き込み面から外れた前記第1ラジアル軸受面の面積をS1b、
前記第2掻き込み面の面積をS2a、
前記第2掻き込み面から外れた前記第2ラジアル軸受面の面積をS2b、とすると、
1/2<S1b/S1a、
S2b/S2a<1/2、であることを特徴とする請求項1に記載の回転陽極型X線管。
【請求項4】
1/2<S1b/S1a≦5/1、
0/1≦S2b/S2a<1/2、であることを特徴とする請求項3に記載の回転陽極型X線管。
【請求項5】
前記回転体、ターゲット及び支持部材で形成される回転ユニットの重心位置から前記第1ラジアル軸受面の中心位置までの前記軸方向に沿った距離をD1、
前記第1ラジアル軸受面の面積をS1、
前記重心位置から前記第2ラジアル軸受面の中心位置までの前記軸方向に沿った距離をD2、
前記第2ラジアル軸受面の面積をS2、とすると、
D2×S2<D1×S1、であることを特徴とする請求項1に記載の回転陽極型X線管。
【請求項6】
1.2×D2×S2<D1×S1、であることを特徴とする請求項5に記載の回転陽極型X線管。
【請求項7】
前記第1ラジアル軸受面は、滑らかな外周面を有し、前記第1掻き込み面から外れた第1プレーン面をさらに有し、
前記第2ラジアル軸受面は、滑らかな外周面を有し、前記第2掻き込み面から外れた第2プレーン部をさらに有していることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の回転陽極型X線管。
【請求項8】
前記第1掻き込み面は、前記軸方向に前記第1プレーン面の両側に位置し、滑らかな外周面に複数の第1パターン部が形成された凹凸面であり、
前記複数の第1パターン部は、前記外周面の全周にわたって並べられ、前記外周面を窪めて形成され、
前記第2掻き込み部は、前記軸方向に前記第2プレーン面の両側に位置し、滑らかな外周面に複数の第2パターン部が形成された凹凸面であり、
前記複数の第2パターン部は、前記外周面の全周にわたって並べられ、前記外周面を窪めて形成されていることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の回転陽極型X線管。
【請求項9】
前記固定軸は、内部に冷却媒体が循環する空間を有していることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の回転陽極型X線管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転陽極型X線管に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、X線管装置として、回転陽極型のX線管装置が使用されている。回転陽極型のX線管装置は、X線を放射する回転陽極型X線管と、ステータコイルと、これら回転陽極型X線管及びステータコイルを収容した筐体と、を備えている。回転陽極型X線管は、陽極ターゲットと、陰極と、真空外囲器と、を備え、動圧式のすべり軸受を使っている。
【0003】
すべり軸受は、筒状の回転体と、この回転体の内部に嵌合され、回転体を回転可能に支持する固定軸と、回転体と固定軸との間の隙間に充填された液体金属とを有している。例えば、固定軸は、それぞれらせん溝が形成されている第1軸受面及び第2軸受面を有している。回転体は、第3軸受面を有している。第1乃至第3軸受面は、それぞれラジアルすべり軸受面である。第1軸受面と第3軸受面と液体金属は、第1軸受(ラジアルすべり軸受)を形成している。第2軸受面と第3軸受面と液体金属は、第2軸受(ラジアルすべり軸受)を形成している。
【0004】
上記回転陽極型X線管装置の動作状態において、ステータコイルは回転体に与える磁界を発生するため、回転体及び陽極ターゲットは回転する。また、陰極は陽極ターゲットに対して電子ビームを照射する。これにより、陽極ターゲットは、電子と衝突するときにX線を放出する。陽極ターゲットに衝突する電子の運動エネルギのうち、X線に変換される割合はわずかであり、ほとんどのエネルギは熱に変換される。
【0005】
陽極ターゲットは高温となるため、陽極ターゲットは支持部材を介して回転体に接続されている。これにより、支持部材を使用しない場合に比べ、陽極ターゲットから回転体へ伝達する熱量を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−69375号公報
【特許文献2】特開2009−283421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記支持部材を使用する場合、支持部材は、陽極ターゲットから第2軸受面と対向した位置を越えて第1軸受面と対向した位置まで延出している。支持部材は、第1軸受面と対向した領域において回転体に接合されている。これにより、第1軸受面と対向した領域を利用して陽極ターゲットの熱を固定軸に伝達させ、陽極ターゲットを冷却することができる。
【0008】
ところで、軸受の負荷能力が必要以上に高くなると種々の問題が生じる恐れがある。例えば、軸受の回転損失が増大してしまう。これは、軸受の摩擦損失の増大に起因している。軸受の摩擦損失は、液体金属の粘性抵抗によって生じるものである。軸受の摩擦損失としては、固定軸(第1及び第2軸受面)と液体金属との間の摩擦損失や、回転体(第3軸受面)と液体金属との間の摩擦損失を挙げることができる。
【0009】
そこで、第1軸受面及び第2軸受面のそれぞれの面積を小さくすることにより、軸受の負荷能力が必要以上に高くなる問題を解消することができる。しかし、第2軸受面の面積を小さくすることは可能であるが、第1軸受面の面積を小さくすることは困難である。なぜなら、回転体から固定軸への主な熱伝達経路が第1軸受のためである。軸受面は、面積が小さくなるほど温度が上昇してしまう。そして、軸受面を形成している素材と液体金属との反応が促進され次第に軸受面に反応物が堆積することによる軸受性能の低下を招いてしまう。
【0010】
また、第1軸受面及び第2軸受面のそれぞれの面積が異なると、軸受面が損傷を受け、軸受性能の低下を招く恐れがある。この原因としては、第1軸受のバネ定数と第2軸受のバネ定数とが不均衡状態となり、回転体の回転動作が不安定になる(回転動作にがたつきが生じる)こと、タッチダウンの開始速度がアンバランスになること、回転体が停止時に傾くこと(片当たりになること)などが挙げられる。
【0011】
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、軸受の負荷能力が必要以上に高くなること及び軸受性能の低下を抑制することができる回転陽極型X線管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施形態に係る回転陽極型X線管は、
円柱状に形成され、第1ラジアル軸受面及び前記第1ラジアル軸受面に形成された第1掻き込み部を有した径小部と、前記径小部より外径の大きい円柱状に形成され、前記径小部と同軸的に設けられ、第2ラジアル軸受面及び前記第2ラジアル軸受面に形成された第2掻き込み部を有した径大部と、を備えた固定軸と、
前記固定軸と同軸的に延出して筒状に形成され、前記固定軸の外周を囲み、前記第1ラジアル軸受面及び第2ラジアル軸受面に対向した第3ラジアル軸受面を有した回転体と、
前記固定軸と、前記回転体との間の隙間に充填され、前記第1掻き込み部及び第2掻き込み部により掻き込まれる潤滑剤と、
前記固定軸の軸方向において、前記径小部より前記径大部側に位置したターゲットと、
前記ターゲットと、前記回転体の前記径小部に対向した領域と、に接合された支持部材と、を備え、
前記第1ラジアル軸受面の軸方向の長さは、前記第2ラジアル軸受面の軸方向の長さより長いことを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、一実施形態に係る回転陽極型X線管の一部を示す断面図である。
図2図2は、図1に示した固定軸、回転体及び液体金属を拡大して示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら一実施形態に係る回転陽極型X線管について詳細に説明する。 図1は、本実施形態に係る回転陽極型X線管の一部を示す断面図である。
【0015】
図1に示すように、回転陽極型X線管は、固定軸1と、回転体2と、潤滑剤としての液体金属LMと、ターゲット(陽極ターゲット)5と、第1支持部材6と、第2支持部材7と、回転トルク発生用導体8と、シール部9と、を備えている。回転陽極型X線管は、すべり軸受を使っている。図示しないが、回転陽極型X線管は、陰極や、固定軸1、回転体2、ターゲット5、支持部材(第1支持部材6、第2支持部材7)、回転トルク発生用導体8、シール部9及び陰極を収容した真空外囲器も備えている。
【0016】
回転陽極型X線管は、図示しないステータコイル(回転駆動部)、筐体及び絶縁油(冷却液)などとともに回転陽極型X線管装置に利用されている。ステータコイルは、回転トルク発生用導体8に対向し、真空外囲器の外側を囲むように設けられている。ステータコイルは、所定の電流が供給されることにより磁界を発生し、回転ユニットを回転させる。回転ユニットは、回転体2、ターゲット5、支持部材、回転トルク発生用導体8及びシール部9で形成されている。筐体は、回転陽極型X線管及びステータコイルを収容している。絶縁油は、回転陽極型X線管と筐体との間の空間に充填されている。
【0017】
固定軸1は、円柱状に形成され、回転陽極型X線管の管軸方向に延出して形成されている。固定軸1は、径小部11と、径大部12と、第1接続部材13と、第2接続部材14とを備えている。径小部11、径大部12、第1接続部材13及び第2接続部材14は、同軸的に設けられ、一体に形成されている。固定軸1は、鉄(Fe)、鉄合金などの鉄系金属で形成されている。
【0018】
回転体2は、後述するすべり軸受により固定軸1の周囲に回転自在に支持されている。回転体2は、一端部が閉塞された筒状に形成され、固定軸1と同軸的に延出し、固定軸1の外周を囲んでいる。回転体2及び固定軸1は、対向領域で、互いに隙間(微小な隙間)を置いて設けられている。回転体2は、鉄系金属で形成されている。
【0019】
液体金属LMは、固定軸1と回転体2との間の隙間に充填されている。この実施形態において、液体金属LMは、ガリウム・インジウム・錫合金(GaInSn)である。
【0020】
シール部9は、回転体2の開口した他端部に設けられている。シール部9は、回転体2の他端部に固着されている。シール部9は、円環状に形成され、固定軸1の外周面に全周に亘って隙間を置いて設けられている。シール部9は、回転陽極型X線管の管軸方向に平行な固定軸1の軸方向dへの相対的なズレを規制するものである。
【0021】
シール部9と固定軸1との間の隙間(クリアランス)は、回転体2の回転を維持するとともに液体金属LMの漏洩を抑制できる値に設定されている。上記したことから、隙間はわずかである。このため、シール部9は、ラビリンスシールリング(labyrinth seal ring)として機能する。また、軸方向dにおいて、回転体2、固定軸1、シール部9及び液体金属LMは、スラストすべり軸受を形成している。
【0022】
ターゲット5は、支持部材により回転体2に接合され、回転体2とともに回転自在である。ターゲット5は、径小部11より径大部12側に位置している。この実施形態において、ターゲット5は、固定軸1及び回転体2に軸方向dに対向している。ターゲット5は、電子放出源(陰極)から放出された電子が衝突されることによりX線を放出する。ターゲット5は、形状が円板状であり、モリブデン又はモリブデン合金などの重金属等の材料で形成されている。図示しないが、ターゲット5は、電子が衝突されるターゲット層を有している。ターゲット層は、モリブデン、モリブデン合金、タングステン合金等の金属で形成されている。ターゲット5は、固定軸1及び回転体2と同軸的に設けられている。
【0023】
支持部材は、第1支持部材6及び第2支持部材7を有している。支持部材は、ターゲット5と、回転体2の径小部11に対向した領域と、に接合されている。第1支持部材6は、ターゲット5に接合されている。この実施形態において、第1支持部材6は、円柱状に形成され、固定軸1などと同軸的に設けられている。軸方向dにおいて、第1支持部材6は、ターゲット5と、回転体2との間に位置している。
【0024】
第2支持部材7は、回転体2の外側に位置し、第1支持部材6と、回転体2の径小部11に対向した領域と、に接合されている。この実施形態において、第2支持部材7は、円筒状に形成され、固定軸1などと同軸的に設けられている。
【0025】
ターゲット5と、回転体2との間の領域において、第2支持部材7は、第1支持部材6側に突出して形成され、第1支持部材6に接合されている。この実施形態において、第2支持部材7の一端部は、ターゲット5と回転体2との間の領域に位置し、閉塞して形成され、第1支持部材6に接合されている。
【0026】
第2支持部材7の他端部は、回転体2に向かう方向(軸方向dに垂直な方向)に突出して形成され、径小部11に対向した回転体2に接合されている。この実施形態において、第2支持部材7の他端部は、回転体2に全周にわたって接合されている。他端部を除く第2支持部材7は、回転体2に全周にわたって隙間を置いて位置している。
【0027】
回転トルク発生用導体8は、第2支持部材7の外側に位置し、筒状に形成され、固定軸1などと同軸的に設けられている。回転トルク発生用導体8の一端部は、第2支持部材7に向かう方向(軸方向dに垂直な方向)に突出して形成され、第2支持部材7の一端部の近傍に接合されている。回転トルク発生用導体(ロータ回転トルク発生部)8は、例えば銅で形成されている。
【0028】
なお、第1支持部材6はモリブデン又はモリブデン合金で形成され、第2支持部材7はニッケル合金で形成されている。
回転体2、ターゲット5、第1支持部材6、第2支持部材7及び回転トルク発生用導体8間の接合には、例えばロウ付けを利用している。
【0029】
次に、上記固定軸1及び回転体2について詳しく説明する。図2は、図1に示した固定軸、回転体及び液体金属を拡大して示す概略図である。固定軸は正面図で示し、回転体は断面図で示している。
【0030】
図1及び図2に示すように、径小部11は円柱状に形成されている。径小部11は、第1ラジアル軸受面S11a及び第1スラスト軸受面を有している。第1ラジアル軸受面S11aは、径小部11の外周面の全域に形成されている。第1スラスト軸受面は、第2接続部材14側の一側面に形成されている。
【0031】
第1ラジアル軸受面S11aは、第1プレーン面S11b及び第1掻き込み面S11cを有している。第1プレーン面S11bは、滑らかな外周面を有し、第1掻き込み面S11cから外れている。
【0032】
第1掻き込み面S11cは、軸方向dに第1プレーン面S11bの両側に位置し、滑らかな外周面に複数の第1パターン部P1が形成された凹凸面である。第1パターン部P1は、上記外周面の全周にわたって並べられ、上記外周面を窪めて形成されている。第1パターン部P1は、回転方向に対して斜線状に延出して配列されている。第1パターン部P1は、数十μmの深さを有した溝で形成されている。第1パターン部P1は、ヘリングボン・パターンを形作っている。このため、複数の第1パターン部P1は、回転体2が回転することにより、液体金属LMを掻き込むことができ、液体金属LMによる動圧を発生し易くすることができる。
【0033】
径大部12は、径小部11より外径の大きい円柱状に形成されている。径大部12は、第2ラジアル軸受面S12a及び第2スラスト軸受面を有している。
【0034】
第2ラジアル軸受面S12aは、径大部12の外周面の全域に形成されている。第2スラスト軸受面は、回転体2の一端部(閉塞端)に対向した一側面に形成されている。
【0035】
第2ラジアル軸受面S12aは、第2プレーン面S12b及び第2掻き込み面S12cを有している。第2プレーン面S12bは、滑らかな外周面を有し、第2掻き込み面S12cから外れている。
【0036】
第2掻き込み面S12cは、軸方向dに第2プレーン面S12bの両側に位置し、滑らかな外周面に複数の第2パターン部P2が形成された凹凸面である。第2パターン部P2は、上記外周面の全周にわたって並べられ、上記外周面を窪めて形成されている。第2パターン部P2は、回転方向に対して斜線状に延出して配列されている。第2パターン部P2は、数十μmの深さを有した溝で形成されている。第2パターン部P2は、ヘリングボン・パターンを形作っている。このため、複数の第2パターン部P2は、回転体2が回転することにより、液体金属LMを掻き込むことができ、液体金属LMによる動圧を発生し易くすることができる。
【0037】
回転体2の内径は、径大部12の直径よりわずかに大きい。回転体2は、内周面に第1ラジアル軸受面S11a及び第2ラジアル軸受面S12aに対向した第3ラジアル軸受面S21aを有している。
【0038】
第1ラジアル軸受面S11a、第3ラジアル軸受面S21a及びこれらの間の隙間を満たす液体金属LMは、第1ラジアルすべり軸受B1を形成している。第2ラジアル軸受面S12a、第3ラジアル軸受面S21a及びこれらの間の隙間を満たす液体金属LMは、第2ラジアルすべり軸受B2を形成している。
【0039】
第1接続部材13は、径小部11より外径の小さい円柱状に形成され、軸方向dにおいて径小部11と径大部12の間に位置している。第1接続部材13を設けることにより、固定軸1に円形枠状に窪めた凹部を形成することができ、液体金属LMのリザーバとして機能させることができる。第2接続部材14は、径小部11より外径の小さい円柱状に形成され、軸方向dにおいて径小部11に対して第1接続部材13の反対側に位置している。第2接続部材14は、回転体2の外側に延出している。
【0040】
固定軸1は、軸方向dに延在した穴部1aを有している。穴部1aは、第2接続部材14に開口し、第2接続部材14、径小部11及び第1接続部材13を貫通し、径大部12の内部まで延在している。
【0041】
穴部1aに、管部20が設けられている。管部20は、穴部1aとともに冷却媒体の流路を形成している。管部20の一端部は、穴部1aの開口を通って固定軸1の外部に延出している。
【0042】
上記のことから、固定軸1の内部に、冷却媒体を循環させる空間を形成することができる。冷却媒体を循環させる方向は、特に限定されるものではない。このため、固定軸1の外側に位置した管部20の開口は、穴部1aから冷却媒体を取り出す取り出し口、又は、穴部1aに冷却媒体を吐出す吐出し口である。冷却媒体としては、水や絶縁油などの冷却液を利用することができる。これにより、固定軸1に伝達された熱は、冷却媒体に伝達され、回転陽極型X線管の外部に放出される。
【0043】
次に、本実施形態に係るラジアルすべり軸受について説明する。
ここで、回転ユニット(回転体2、ターゲット5、支持部材、回転トルク発生用導体8及びシール部9)の重心位置をPA、第1ラジアル軸受面S11aの中心位置をPB、第2ラジアル軸受面S12aの中心位置をPCとする。重心位置PAから中心位置PBまでの軸方向dに沿った距離をD1、重心位置PAから中心位置PCまでの軸方向dに沿った距離をD2とする。径大部12の半径をrとする。
【0044】
第1ラジアル軸受面S11aと第3ラジアル軸受面S21aとの間の隙間をg1、第1プレーン面S11bの軸方向dに沿った長さをW1、第1掻き込み面S11cの軸方向dに沿った長さをL1、第1ラジアル軸受面S11aの面積をS1、第1掻き込み面S11cの面積をS1a、第1プレーン面S11bの総面積(第1掻き込み面S11cから外れた第1ラジアル軸受面S11aの面積)をS1b、とする。
【0045】
第2ラジアル軸受面S12aと第3ラジアル軸受面S21aとの間の隙間をg2、第2プレーン面S12bの軸方向dに沿った長さをW2、第2掻き込み面S12cの軸方向dに沿った長さをL2、第2ラジアル軸受面S12aの面積をS2、第2掻き込み面S12cの面積をS2a、第2プレーン面S12bの総面積(第2掻き込み面S12cから外れた第2ラジアル軸受面S12aの面積)をS2b、とする。なお、W2=0となる(第2ラジアル軸受面S12aが全て第2掻き込み面S12cとなる)こともあり得る。
【0046】
一般に、ターゲット5は、電子衝撃により1000℃以上の高温となる。ターゲット5で発生した熱は、ターゲット5の表面からの輻射によって散逸する。また、ターゲット5で発生した熱は、第1支持部材6、第2支持部材7、第3ラジアル軸受面S21a(回転体2)、及び隙間g1に存在する液体金属LMを介して固定軸1(第1ラジアル軸受面S11a)に伝達される。
【0047】
但し、本実施形態において、第1支持部材6及び第2支持部材7によりターゲット5から回転体2への熱伝達パスをより長くすることができ、また、熱伝達率の低い材料(例えばモリブデンやニッケル合金)で第1支持部材6及び第2支持部材7を形成することができ、これにより、ターゲット5から回転体2へ伝達する熱量を一層低減することができる。例えば、第2支持部材7の一端部(第1支持部材6に接合されている個所)の温度は800℃程度であるが、第2支持部材7の他端部(回転体2に接合されている個所)の温度は300程度となる。
【0048】
第2支持部材7において他端部は一端部より低温であるが、第2支持部材7の他端部は高温であり、軸受に悪影響を及ぼす恐れがある。軸受面は、面積が小さくなるほど温度が上昇してしまう。そして、軸受面を形成している素材と液体金属との反応が促進され短時間で隙間g1が反応物で埋まり軸受として機能しなくなる問題が発生することになる。
【0049】
そこで、第1ラジアル軸受面S11aの長さ(W1+2L1)を、第2ラジアル軸受面S12aの長さ(W2+2L2)より長くすること、すなわち、面積S1を面積S2より大きくすることにより、この問題の発生を回避することができる。これにより、軸受面と液体金属とが短時間で反応してしまう温度に達しないようにすることができる。
【0050】
また、軸受荷重のみの要求からすれば、軸受面積に対して単調増加となる軸受損失を最小限とするため、隙間g1、g2が同一であると仮定すると、次の式(1)を満たすように設計することが一般的である。
【0051】
D1×S1=D2×S2 …(1)
しかし、第1ラジアルすべり軸受B1の軸受面温度上昇による機能低下を抑制するため、面積S1を面積S2より大きくし、軸受B1の軸受面温度上昇を防止する本実施形態において、次の式(2)を満たすように固定軸1を形成している。
【0052】
D2×S2<D1×S1 …(2)
軸受の材質や穴部1aを循環する冷却媒体による固定軸1の冷却率によって軸受B1の軸受面温度上昇の度合いは異なるが、概ね次の式(3)を満たすように固定軸1を形成すると好ましい。
【0053】
1.2×D2×S2<D1×S1 …(3)
上記式(3)のように、固定軸1は、D1×S1がD2×S2より20%以上大きくなるように形成されていると好ましい。固定軸1を一般的な軸受設計から逸脱して形成することができる。これにより、固定軸1及び回転体2を形成する材料に、液体金属LMとの反応速度が遅いが高価であるMo(モリブデン)合金などの金属ではなく、液体金属LMとの反応速度が速いが安価である鉄系金属の材料を使用することができる。このため、軸受機能の低下を抑制することができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0054】
なお、径小部11の外径と、径大部12の外径との差は僅かであるため、上記式(1)をD1×(W1+2L1)=D2×(W2+2L2)に、上記式(2)をD2×(W2+2L2)<D1×(W1+2L1)に、上記式(3)を1.2×D2×(W2+2L2)<D1×(W1+2L1)に、それぞれ置き換えても、上記の効果を得ることができる。
【0055】
但し、単純に第1ラジアル軸受面S11aの面積を大きくした場合、次の2つの問題がある。
1つ目は、回転体2の回転数の上限が制約されてしまうことである。単純に第1ラジアル軸受面S11aの面積を大きくした場合、液体金属LMの粘性抵抗により、軸受損失が増大することになる。また、回転体2の回転数が高く、第1ラジアルすべり軸受B1の負荷能力が必要以上に高くなると、回転体2に残存する微少なアンバランスにより、負荷能力の低い第2ラジアルすべり軸受B2側で回転体2が振れ回ることになる。回転体2に振動が発生するなど、回転体2の回転動作が不安定となる。この場合、回転体2の回転動作が安定するよう、回転体2の回転数の上限が制約されてしまう。
【0056】
2つ目は、軸受面が損傷を受け、軸受性能の低下を招いてしまうことである。特に、第2ラジアルすべり軸受B2の軸受性能の低下を招き、第2ラジアル軸受面S12a及び第3ラジアル軸受面S21aが損傷を受けてしまう。これは、回転体2の回転を停止する際、第1ラジアルすべり軸受B1側では、回転ユニットの荷重を広い面積に分散することができ、回転体2の回転数が低くなってから境界潤滑領域に入るようになるが、第2ラジアルすべり軸受B2側では、回転ユニットの荷重が狭い面積に集中するため、回転体2の回転数が高い状態で境界潤滑領域に入ってしまうためである。ここで、境界潤滑領域に入るとは、軸受面間の隙間に液体金属LMが存在しなくなり、固定軸1と回転体2との接触が開始することである。
【0057】
このため、回転体2は、固定軸1に対して傾き、第2ラジアルすべり軸受B2側において固定軸1に片当たりしながら固定軸1への接触を開始し、その後固定軸1にタッチダウンすることになる。これにより、回転体2は停止となる。回転体2の起動(回転開始)及び停止(回転中止)の度に、軸受面、特に第2ラジアル軸受面S12a及び第3ラジアル軸受面S21aに片当たりが発生し、軸受面に傷が生じ、この傷が起点となって齧りなどが発生するため、軸受性能の低下を招いてしまう。
【0058】
そこで、上述したそれらの問題を解決するため、本実施形態において、隙間g1、g2、及び長さW1、W2、L1、L2を調整している。まず、面積S1の拡大により、第1ラジアルすべり軸受B1の負荷能力が必要以上に高くなることを抑制する対応策であり、第1ラジアルすべり軸受B1の回転損失(摩擦損失)の増大を抑制する対応策について説明する。
【0059】
上記回転損失は、面積S1に比例し、隙間g1に反比例する。すなわち、面積S1が拡大すると回転損失の増大を招き、隙間g1が大きくなると回転損失の低減を図ることができる。このため、本実施形態において、面積S1を拡大した分、径小部11の外径を径大部12の外径より小さくし、隙間g1を隙間g2より大きくしている(g2<g1)。例えば、隙間g1を隙間g2より3乃至20μmの範囲内で拡大している。これにより、第1ラジアルすべり軸受B1の回転損失を低減することができる。径小部11の外径は、径大部の外径より、1/3×r×1/1000乃至r×1/1000小さいと好ましく、上記範囲であれば上述した効果を得ることができる。
【0060】
また、第1ラジアルすべり軸受B1側の回転体2において、定常回転中の荷重に対する偏芯量が大きい方向に変化する。第1ラジアルすべり軸受B1側の回転体2の偏芯量を、第2ラジアルすべり軸受B2側の回転体2の偏芯量と同等量に近づける効果が得られるため、偏芯量の不平衡による振れ回りの発生や、回転体2に生じる振動を抑制することができ、回転体2の回転動作の安定化を図ることができる。
【0061】
次いで、第1ラジアルすべり軸受B1の負荷能力と、第2ラジアルすべり軸受B2の負荷能力とに差が生じることにより、回転体2の回転動作が不安定になることを抑制(振れ回りや振動を抑制)するため、及びタッチダウンの開始速度がアンバランスになることを抑制するための対応策について説明する。
ここで、第1ラジアルすべり軸受B1の軸受荷重−隙間g1より得られる軸受ばね定数を第1ばね定数とする。第2ラジアルすべり軸受B2の軸受荷重−隙間g2より得られる軸受ばね定数を第2ばね定数とする。
【0062】
面積S1と面積S2との比から、相対的に第2ばね定数より第1ばね定数が大きくなる。そこで、本実施形態において、第1ばね定数が小さくなり、第2ばね定数が大きくなるように長さW1、W2、L1、L2及び面積S1a、S1b、S2a、S2bを調整している。
【0063】
一般的な動圧すべり軸受設計の場合、固定軸1は、W1/L1=W2/L2=1/1、S1b/S1a=S2b/S2a=1/2、を満たすように形成されているが、本実施形態に係る固定軸1は、次の式(4)、式(5)を満たすように形成されている。
【0064】
1/2<S1b/S1a …(4)
S2b/S2a<1/2 …(5)
これにより、第1ばね定数と第2ばね定数とを荷重に見合うように同等とすることができる。
【0065】
また、固定軸1は、次の式(6)、式(7)を満たすように形成すると好ましい。
1/2<S1b/S1a≦5/1 …(6)
0/1≦S2b/S2a<1/2 …(7)
第1ラジアルすべり軸受B1において、1<W1/L1≦10を満たすように、面積S1bに対して面積S1aを相対的に小さくしている。面積S1a(第1掻き込み面S11c)を小さくすることで、第1ラジアル軸受面S11aと対向した空間に液体金属LMをかき込む力を低減することができるため、第1ばね定数を小さくすることができる。
【0066】
第2ラジアルすべり軸受B2において、0≦W2/L2<1を満たすように、面積S2bに対して面積S2aを相対的に大きくしている。面積S2a(第2掻き込み面S12c)を大きくすることで、第2ラジアル軸受面S12aと対向した空間に液体金属LMをかき込む力を増大することができるため、第2ばね定数を大きくすることができる。第2ラジアル軸受面S12aは、第2掻き込み面S12cのみ有する場合もあり得る(W2=0)。
【0067】
上述したように、第1ラジアル軸受面S11aの面積S1を熱拡散の目的で拡大する場合、隙間g1、g2と、長さW1、W2、L1、L2の比率と、面積S1a、S1b、S2a、S2bの比率とを調整することで、軸受の負荷能力が必要以上に高くなること及び軸受性能の低下を抑制することができる。
【0068】
以上のように構成された回転陽極型X線管によれば、回転陽極型X線管は、固定軸1と、回転体2と、液体金属LMと、ターゲット5と、支持部材(第1支持部材6、第2支持部材7)と、を備えている。固定軸1は、第1掻き込み面S11cを含んだ第1ラジアル軸受面S11aを有した径小部11と、第2掻き込み面S12cを含んだ第2ラジアル軸受面S12aを有し、径小部11より外径の大きい径大部12と、を備えている。回転体2は、第3ラジアル軸受面S21aを有している。
【0069】
液体金属LMは、固定軸1と、回転体2との間の隙間に充填され、固定軸1、回転体2及びシール部9とともに第1ラジアルすべり軸受B1、第2ラジアルすべり軸受B2及びスラストすべり軸受を形成している。ターゲット5は、軸方向dにおいて、径小部11より径大部12側に位置している。支持部材は、ターゲット5と、回転体2の径小部11に対向した領域と、に接合されている。
【0070】
径小部11は、径大部12より外径が小さいため(g2<g1)、第1ラジアルすべり軸受B1の回転損失を低減することができる。そして、上記回転損失を低減した分、第1ラジアル軸受面S11aの面積S1を拡大することができる。
【0071】
このため、回転体2(ターゲット5)から固定軸1への主な熱伝達経路を第1ラジアルすべり軸受B1が形成する場合であっても、熱は拡大された面積S1に拡散されるため、軸受面(第1ラジアル軸受面S11a、第3ラジアル軸受面S21a)と液体金属LMとが短時間で反応してしまう温度に達しないようにすることができ、軸受性能の低下を抑制することができる。
【0072】
さらに、上記のように面積S1を拡大することができる場合、固定軸1や回転体2を高価なモリブデンなどではなく、安価な鉄系金属を利用して形成することができる。これにより、回転陽極型X線管の製造コストの低減を図ることができる。
【0073】
また、上記のように、径小部11の外径を径大部12の外径より小さくし、面積S1を拡大しているため、第1ラジアルすべり軸受B1の第1ばね定数と、第2ラジアルすべり軸受B2の第2ばね定数と、を均衡状態とすることができ、回転体2の回転動作の安定化を図ることができる。
上記のことから、軸受の負荷能力が必要以上に高くなること及び軸受性能の低下を抑制することができる回転陽極型X線管を得ることができる。
【0074】
なお、この発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0075】
例えば、固定軸1は、第3ラジアル軸受面S21aに対向した3個以上のラジアル軸受面を有していてもよい。この場合も、上記実施形態とどうように、全てのラジアルすべり軸受の設計を調整することにより、軸受の負荷能力が必要以上に高くなること及び軸受性能の低下を抑制することができる。
本発明の実施形態は、上述した回転陽極型X線管に限定されるものではなく、各種の回転陽極型X線管に適用可能である
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]円柱状に形成され、第1掻き込み面を含んだ第1ラジアル軸受面を有した径小部と、前記径小部より外径の大きい円柱状に形成され、前記径小部と同軸的に設けられ、第2掻き込み面を含んだ第2ラジアル軸受面を有した径大部と、を備えた固定軸と、
前記固定軸と同軸的に延出して筒状に形成され、前記固定軸の外周を囲み、前記第1ラジアル軸受面及び第2ラジアル軸受面に対向した第3ラジアル軸受面を有した回転体と、
前記固定軸と、前記回転体との間の隙間に充填され、前記第1掻き込み面及び第2掻き込み面により掻き込まれる潤滑剤と、
前記固定軸の軸方向において、前記径小部より前記径大部側に位置したターゲットと、
前記ターゲットと、前記回転体の前記径小部に対向した領域と、に接合された支持部材と、を備えていることを特徴とする回転陽極型X線管。
[2]前記径大部の半径をrとすると、
前記径小部の外径は、前記径大部の外径より、1/3×r×1/1000乃至r×1/1000小さいことを特徴とする[1]に記載の回転陽極型X線管。
[3]前記第1掻き込み面の面積をS1a、
前記第1掻き込み面から外れた前記第1ラジアル軸受面の面積をS1b、
前記第2掻き込み面の面積をS2a、
前記第2掻き込み面から外れた前記第2ラジアル軸受面の面積をS2b、とすると、
1/2<S1b/S1a、
S2b/S2a<1/2、であることを特徴とする[1]に記載の回転陽極型X線管。
[4] 1/2<S1b/S1a≦5/1、
0/1≦S2b/S2a<1/2、であることを特徴とする[3]に記載の回転陽極型X線管。
[5]前記回転体、ターゲット及び支持部材で形成される回転ユニットの重心位置から前記第1ラジアル軸受面の中心位置までの前記軸方向に沿った距離をD1、
前記第1ラジアル軸受面の面積をS1、
前記重心位置から前記第2ラジアル軸受面の中心位置までの前記軸方向に沿った距離をD2、
前記第2ラジアル軸受面の面積をS2、とすると、
D2×S2<D1×S1、であることを特徴とする[1]に記載の回転陽極型X線管。
[6] 1.2×D2×S2<D1×S1、であることを特徴とする[5]に記載の回転陽極型X線管。
[7]前記第1ラジアル軸受面は、滑らかな外周面を有し、前記第1掻き込み面から外れた第1プレーン面をさらに有し、
前記第2ラジアル軸受面は、滑らかな外周面を有し、前記第2掻き込み面から外れた第2プレーン部をさらに有していることを特徴とする[1]乃至[6]の何れか1に記載の回転陽極型X線管。
[8]前記第1掻き込み面は、前記軸方向に前記第1プレーン面の両側に位置し、滑らかな外周面に複数の第1パターン部が形成された凹凸面であり、
前記複数の第1パターン部は、前記外周面の全周にわたって並べられ、前記外周面を窪めて形成され、
前記第2掻き込み部は、前記軸方向に前記第2プレーン面の両側に位置し、滑らかな外周面に複数の第2パターン部が形成された凹凸面であり、
前記複数の第2パターン部は、前記外周面の全周にわたって並べられ、前記外周面を窪めて形成されていることを特徴とする[1]乃至[7]の何れか1に記載の回転陽極型X線管。
[9]前記固定軸は、内部に冷却媒体が循環する空間を有していることを特徴とする[1]乃至[8]の何れか1に記載の回転陽極型X線管。
【符号の説明】
【0076】
1…固定軸、1a…穴部、2…回転体、5…ターゲット、6…第1支持部材、7…第2支持部材、8…回転トルク発生用導体、9…シール部、11…径小部、12…径大部、20…管部、LM…液体金属、d…軸方向、S11a…第1ラジアル軸受面、S11b…第1プレーン面、S11c…第1掻き込み面、P1…第1パターン部、S12a…第2ラジアル軸受面、S12b…第2プレーン面、S12c…第2掻き込み面、P2…第2パターン部、S21a…第3ラジアル軸受面、B1…第1ラジアルすべり軸受、B2…第2ラジアルすべり軸受、PA…重心位置、PB,PC…中心位置、g1,g2…隙間、S1,S1a,S1b,S2,S2a,S2b…面積、r…半径。
図1
図2