【実施例】
【0027】
図1から
図17には、本発明の好ましい一実施例のカレンダ機構としてのオートカレンダ機構1を備えた本発明の好ましい一実施例のムーブメント2を有する本発明の好ましい一実施例のカレンダ時計ないしカレンダ機構付時計3が示されている。
【0028】
カレンダ時計3は、
図1に示したような外観4を有する。すなわち、時計3は、時針11a、分針11b及び秒針11cからなる時刻表示針11を中心軸線Cのまわりで時計回りC1に回転可能に備える。時計3の文字板12は、正時の位置を表す植字12aを有すると共に、概ね3時の位置に月表示領域13a及び日表示領域13bを備えた月日表示窓13を有する。14は時計ケースである。
【0029】
図3の(a)及び(b)並びに
図4の(a)及び(b)の断面図に示した例では、時針11aが先端に取付けられた時車ないし筒車16a、分針11bが先端に取付けられた分車16b、秒針11cが先端に取付けられた秒車ないし四番車16cは、地板6や二番受(図示せず)で支持された中心パイプ7bを介して、中心軸線Cのまわりで回転自在に支持され、筒車16aの歯車部ないし筒歯車16d、分車16bの分歯車16eないし二番歯車及び四番車16cの歯車部ないし四番歯車(図示せず)を相互に繋ぐと共に時計用ぜんまいを備えた香箱の如き駆動源(図示せず)に繋ぐ他の輪列を含む運針用輪列によって回転される。
【0030】
ムーブメント2は、
図1に加えて、
図2、
図3の(a)及び(b)、並びに
図4の(a)及び(b)等からわかるように、カレンダ時計3の外装部品の中すなわち時計ケース14内において文字板12の背後で裏蓋(図示せず)の手前に収容され香箱やモータの如き回転駆動源によって運針輪列(図示せず)を介して回転される筒車16aや分車16bや秒車16cを含み、夫々の先端部に、時針11a、分針11b及び秒針11cが取付けられている。ムーブメント2の巻真15aの先端にはりゅうず15が取付けられている。
【0031】
時計3はケース14の内周近傍に沿って延在する概ね円環状の日車20を有する。日車20は、
図2、
図3の(a)及び(b)、並びに
図4の(a)及び(b)等からわかるように、大径の環状板状の日表示車部21と、該日表示車部21の内縁から軸線方向に平行に延びた大径円筒状部22aと、該大径円筒状部22aの下端から径方向内向きに延びた小幅の厚肉鍔状部22bと、該鍔状部22bの内縁から軸線方向に平行に延びた小径厚肉円筒状部22cと、該小径厚肉円筒状部22cの下端側の内周縁に形成された日歯車23と、厚肉鍔状部22bの周方向の特定部位Q1において該厚肉鍔状部22bの内周縁に形成された月末凹部24と、厚肉鍔状部22bの周方向の別の特定部位Q2において該厚肉鍔状部22bの文字板側表面22dに形成された突起としての月送りピン25とを有する。なお、この明細書のうち
図3の(a)及び(b)、並びに
図4の(a)及び(b)等においては、特に断らない限り、「上」とは、時刻表示針11のある側(文字板12側)をいう。
【0032】
日表示車部21の文字板側表面21aには、1〜31までの31個の日付を表す日表示文字LDが等間隔に表示されている。日歯車23は、31個の歯26を等間隔に備える。日車20のC2方向回転は、日躍制爪部27a、日躍制ばね部27bを備える日ジャンパ27によって規正される。
図3の(a)等からわかるように、日車20の厚さ方向の位置ズレは、日歯車23を覆うように地板6に取付けられた日車押さえ6aによって規制されている。日車押さえ6aには、筒車16aの大径筒状部16fを回転自在に取囲む状態で、月表示車案内パイプ6bが嵌着されている。
【0033】
月車30は、
図2、
図3の(a)及び(b)、並びに
図4の(a)及び(b)等からわかるように、中心軸線Cのまわりで摺動回転可能にハブ部31aにおいて月表示車案内パイプ6bに嵌合された月星車構造体31と、該月星車構造体31の文字板側表面に内周縁部で固定された板状の月板32とを有する。月板32の文字板側表面32aには、1月(JAN)から12月(DEC)までの12個の月を表す月表示文字LMが等間隔に表示されている。月星車構造体31は、外周に12個の歯33a及び谷33bを備えた月星車本体33と、該月星車33と一体的で多数の歯34aを備える月中間第一車34とを備える。月星車33のC1方向回転は、月躍制爪部及び月躍制ばね部を備えた月ジャンパ33cによって規正される。月車30は、月中間第一車34に噛合された月中間第二車35を介して月カム車36に噛合されている。中心軸線Dのまわりで回転可能な月カム車36は、月カム本体すなわち月カム37と月カム歯車36aとを備え、月カム37は、一ヶ月が31日の大月に対応する大径円弧状カム面37aと一ヶ月が30日以下の小月に対応する小径円弧状部ないし小月凹部37bとを備える。16gは月車押さえである。
【0034】
日車押さえ6aには、月送りレバー38が中心軸線KのまわりでK1,K2方向に回自在に支持されている。月送りレバー38の入力側腕部38aは先端部で月送りピン25に係合可能であり、月末になる毎に、該月送りピン25によってK1方向に回動される。月送りレバー38の出力側腕部38bの先端部には月送り爪38cが取付けられていて、月送りレバー38がK1方向に回動される毎に、月星車33の歯33aに係合して、該月星車33をC1方向に一歯分だけ回転させる。38dは月送りレバーばねであり、6eは裏物押さえである。月送り爪38cは、月送りレバー38に対して月送りレバーばね38dにより反時計回りに弾性的に偏倚され、
図2等に示した状態において、相互係止部(図示せず)によりそれ以上の相対回動が禁止されている。
【0035】
月表示車案内パイプ6bの大径部6cには、日車押さえ6aに重なる状態で、日送りレバー構造体40が回転自在に嵌合されている。日送りレバー構造体40は、該構造体40の本体をなす板状の日送りレバー41と、日送り爪42とを有する。円形開口41aにおいて月表示車案内パイプ6bに摺動回転自在に嵌合された日送りレバー41は、次に詳述する高速日送り機構50に係合する作動レバー係合部43と、月末検出レバー係合腕部44と、小月検出用カム従節45とを備える。日送り爪42は、日送りレバー41の小月検出用カム従節45側の腕部41bにおいて中心軸線EのまわりでE1,E2方向に回動可能に日送りレバー41に支持され、日送り爪ばね42aによってE1方向弾性偏倚力を受け、
図2等に示した状態においてそれ以上のE1方向相対回動は相互係止部(図示せず)により禁止されている。
【0036】
日送りレバー構造体40の日送りレバー41の作動レバー係合部43は、高速日送り機構50が一日に一回高速日送り指示動作を行う際に、該高速日送り機構50によって中心軸線Cの周りでC2方向に回転され、これにより、日送りレバー構造体40の日送り爪42が日歯車23の歯26に係合してこれをC2方向に押し、日車20の日送りを行う。
【0037】
日送りレバー41の月末検出レバー係合腕部44と日車20の厚肉鍔状部22bの月末凹部24との間には、中心軸線FのまわりでF1,F2方向に回動可能で月末検出レバーばね46fによりF1方向に弾性偏倚力を受けた月末検出レバー46が設けられている。各月の月末においては、月末検出レバー46の外側レバー部46aの端部46bが日車20の月末凹部24と対面する位置にくる。
【0038】
日送りレバー41の小月検出用カム従節45は、通常は(大月、又は小月のうち月末以外においては)、月カム37の小月凹部37bに嵌り込まない。すなわち、小月検出用カム従節45は、大月においては、月カム車36の月カム37の大径円弧状カム面37aに対面して該大径円弧状カム面37aに当接する。この状態で日送り前においては、日送りレバー構造体40の日送り爪42は、一日の日送りを行ない得るようにC1方向に通常量だけ揺動された通常揺動位置P0に達する。
【0039】
また、小月検出用カム従節45は、小月においては、月カム37の小月凹部37bに対面するけれども、該小月の月末以外においては、月末検出レバー46によって日送りレバー41の回転が規正されているので、小月検出用カム従節45は該月カム37の小月凹部37bに係合せず(すなわち、小月凹部37b内に嵌り込まず)小月凹部37bの開口部に臨む位置(大径円弧状カム面37aと同一円周上の位置)を採る。この状態でも日送り前においては、日送りレバー構造体40の日送り爪42は、一日の日送りを行ない得るようにC1方向に通常量だけ揺動された通常揺動位置P0に達する。
【0040】
一方、小月の月末においては、月末検出レバー46の端部46bがばね46fの作用下で月末凹部24に嵌り込んで月末検出レバー46がF1方向に回動され日送りレバー41のC2方向回動が許容されるので、小月検出用カム従節45は、小月凹部37b内に嵌り込んで該小月凹部37bと係合する。この状態で日送り前においては、日送りレバー構造体40の日送り爪42は、ストロークが大きくなって二日分の日送りを一気に行ない得るようにC1方向に通常よりも大きく揺動された事前揺動位置P1(後述の
図12)に達する。この事前揺動位置P1は、上記の通常揺動位置P0よりも大きくC1方向に揺動された位置になっている。
【0041】
高速日送り機構50は、地板6から突出した軸状突起部の中心軸線HのまわりでH1方向に回転可能な日回し車51及び日回しカム52と、中心軸線Jの周りでJ1,J2方向に回動可能に日車押さえ6aに支持された作動レバー53とを備える。
【0042】
24時間車の形態の日回し車51は、外周に形成され筒歯車16dに噛合した日回し歯車部51aと円弧状長孔51bとを備え、中心軸線Hのまわりで、H1方向に一日に一回転される。日回し車51と同心の日回しカム52は、回転方向H1に沿って回転される際にカム従節との係合部位の外径が徐々に増すエネルギ付与用カム面部54a及びおおむね直線状であって回転方向H1に沿って回転される際にカム従節との係合部位の外径が急激に減少するエネルギ放出用カム面部54bとからなるカム面54を備えると共に、日回し車51の円弧状長孔51に遊嵌される日回しピン55を備える。作動レバー53は、カム面54に係合するカム従節56を先端に備えた入力側レバー部53aと日送りレバー構造体40の日送りレバー41の作動レバー係合部43に係合する日送りレバー側係合部57を備えた出力側レバー部53bとを有する。作動レバー53は、作動レバーばね53cによりJ1方向弾性偏倚力を受けている。
【0043】
高速日送り機構50では、筒歯車16dのC1方向回転に伴って日回し車51がH1方向に回転されると、該回転の進行に伴って円弧状長孔51bに遊嵌された係合ピン55を日回し車51の長孔51のうち下流側端部51cでH1方向に押して日回しカム52をH1方向に回し始める。日回しカム52がH1方向に回転し始めると、カム面54のうちエネルギ付与用カム面部54aの最小径部領域54cに係合していたカム従節56が、カム面54のエネルギ付与用カム面部54aに沿ってH2方向に相対変位すると、作動レバー53のカム従節56がエネルギ付与用カム面部54aに沿って上って作動レバー53がJ2方向に回動される。
【0044】
このJ2方向回動変位は、作動レバー53のレバー部53aのカム従節56が最大径部54dに達する特定時点T1まで徐々に続く。該時点T1を越えて日回し車51がH1方向に回転されると、ばね53cによるJ1方向偏倚力を受けた作動レバー53のカム従節56が概ねエネルギ放出用カム面部54bに沿って自由落下をする如く急激に落ち込むようにJ1方向に回転する。それに伴い、作動レバー53は、日送りレバー側係合部57で日送りレバー構造体40を急激にC2方向に回転させる。
【0045】
その結果、日送りレバー構造体40の日送り爪42が高速にC2方向に揺動され、該高速揺動に伴って、最近接位置にある日車20の歯26をC1方向に高速に送る。この日送りは、作動レバー53のカム従節56がカム面54の最小径部54cに達するJ1方向回動位置を採り、該作動レバー53の回動位置に応じて日送りレバー構造体40が最大限C2方向に回転された回動位置を採るところで、完了する。この位置は、日送り爪42の日送りが完了する揺動完了位置P2(
図6や
図17)である。
【0046】
ここで、高速揺動範囲は、大月、又は小月の月末以外の通常のときでは、通常揺動位置P0から揺動完了位置P2までの範囲φ0であり、小月の月末においては、事前揺動位置P1から揺動完了位置P2までの範囲φ1(但し、φ1=φ0+Δφ)である。
【0047】
以上において、可動ストローク制御機構5は、月カム37と、日送りレバー41及び日送り爪42からなる日送りレバー構造体40と、小月の月末のうち日替わりの特定の時点において、日送りレバー構造体40の小月検出用カム従節45が月カム37の小月凹部37bに嵌り込むのを許容する月末検出部とからなる。ここで、月末検出部は、月末検出レバー46と月末凹部24とからなる。
【0048】
なお、61は
図2において想像線で示した日修正位置U1と実線で示した月修正位置U2との間で可動で、例えば巻真を一段引出した状態で一方の向きに巻真を回すことにより日修正位置U1に設定された際には日車20の日歯車23に噛合して該日歯車23をC2方向に回すことにより日修正を行い、巻真を一段引出した状態で他方の向きに巻真を回すことにより月修正位置U2に設定された際には月修正輪列62の車に噛合して該月修正輪列62を介して月中間第一車34をC1方向に回すことにより月修正を行なうように構成されている。
【0049】
以上の如く構成された本発明の好ましい一実施例のカレンダ時計3のカレンダ機構1の動作について、
図1、
図2、
図3の(a)及び(b)並びに
図4の(a)及び(b)に加えて、
図5から
図17に基づいて詳しく説明する。
【0050】
図2に示した状態は、カレンダ時計3が8月30日の24時ないし8月31日の0時頃で大の月の「30」日から「31」日への日送りが行われる直前の状態である。大の月であるので、日送りレバー構造体40の日送りレバー41の小月検出用カム従節45は月カム37の大径円弧状カム面部37aに当接した状態で、日送り爪42は通常揺動位置P0に位置する。また、作動レバー53のカム従節56は、丁度、日回しカム52のエネルギ付与用カム面部54aを上って最大径部54dに達し、エネルギ放出用カム面部54bに入る直前の状態にある。従って、作動レバー53は最大限J2方向に回動された位置を採り、作動レバー53の日送りレバー側係合部57は、月カム37の大径カム面部37aによって回動位置が規定された状態にある日送りレバー41の作動レバー係合部43から離れている。また、日ジャンパ27は日車20を規正した状態にある。なお、8月の「30」日から「31」日への日送りであって大月の月末(31日)を過ぎる段階に達していないので、月送りピン25は未だ月送りレバー38から少し離れた位置にある。
【0051】
図2の状態から僅かに時間が経過して作動レバー53のカム従節56が日回しカム52の最大径部54dを越えると、
図5に示したように、カム従節56がエネルギ放出用カム面部54bに沿って一気に落ち始める。カム従節56のエネルギ放出用カム面部54bに沿った変位に伴って作動レバー53がJ1方向に急激に回動され、これにより日送りレバー41がC2方向に急激に回動されて、日送り爪42が前方の最近接位置にある日歯車23の歯26に係合して日車20をC2方向に急激に回動させる。
図5に示した状態は、日車20の日歯車23のC2方向回転に伴い日歯車23の歯26の頂点に日ジャンパ27の躍制爪部27aの頂点が達した状態で月日表示窓13の日表示領域13bには30と31とが半分づつ位置した状態(極めて短時間の間に生じる状態)であり、この時点は、
図2の時点からわずかな時間の経過後であって
図2の時点と実際上同じ即ち8月30日の24時ないし8月31日の0時頃である。
【0052】
その後わずかな時間の経過に伴い、
図6に示したように、一方では、日ジャンパ27が日車20を半日分C2方向に急激に回して躍制爪部27aが日歯車23の次の隣接歯26,26間に落ちて日車20を規正する状態に再度入る。これにより、月日表示窓13の日表示領域13bの日文字LDは「31」になる。他方、カム従節56がエネルギ放出用カム面部54bに沿って一気に落ち続け、カム従節56のエネルギ放出用カム面部54bに沿った変位に伴って作動レバー53が更にJ1方向に急激に回動される。但し、この段階では、日ジャンパ27の動作により日車20が既にC2方向に回動されているので、日送りレバー41の先端の日送り爪42と日車20の前方の歯26との間には間隙が生じている。この時点も、
図2の時点や
図5の時点からわずかな時間の経過後であって
図2や
図5の時点と実際上同じ即ち8月30日の24時ないし8月31日の0時頃である。正24時(正0時)が、
図2の時点になるようにしておいても、
図6の時点になるようにしておいても、その間の時点(例えば
図5の時点)になるようにしておいてもよい。
【0053】
図2に示した状態から
図5に示した状態を経て
図6に示した状態に至るのは、小月の月末以外の全ての日送りにおいて同様に生じる動作である。
【0054】
次に、大月の月末において、8月31日の24時頃から9月1日の0時頃に移る際の日送り及び月送りについて
図7から
図10に基づいて説明する。
【0055】
大月の月末における日送り自体は、
図2、
図5及び
図6に基づいて説明した日送りと実際上同一である。すなわち、
図7は8月31日の24時ないし9月1日の0時頃で大の月の「31」日から次の日である(9月)「1」日への日送りが行われる直前の状態であって、日送りに係わる関連部品の状態に関する限り、8月30日の24時ないし8月31日の0時頃で大の月の「30」日から「31」日への日送りが行われる直前の状態を示した
図2と実際上同様な状態である。
【0056】
月送りに関して言えば、8月31日の24時ないし9月1日の0時頃で大の月の「31」日から次の日である(9月)「1」日への日送りが行われる直前の状態である
図7の状態では、日車20の特定部位Q2にある月送りピン25が月送りレバー38の入力側腕部38aの端部(外側端部)に近接した位置に達していて、該外側端部当たる直前の状態にある。
【0057】
図8は8月31日の24時ないし9月1日の0時頃で大の月の「31」日から次の日である(9月)「1」日への日送りが行われている最中の状態であって、日送りに係わる関連部品の状態に関する限り、8月30日の24時ないし8月31日の0時頃で大の月の「30」日から「31」日への日送りが行われる最中の状態を示した
図5と実際上同様な状態である。
【0058】
8月31日の24時ないし9月1日の0時頃で大の月の「31」日から次の日である(9月)「1」日への日送りが行われている最中で日ジャンパ27の躍制爪部27aの頂点が日歯車23の歯26の頂点に当接した状態である
図8の状態に達すると、日車20の特定部位Q2の月送りピン25がそのC2方向回動に伴って月送りレバー38の端部38aに当たって該レバー38を中心軸線KのまわりでK1方向に回動させ、これにより月送りレバー38の先端の月送り爪38cが月星車33の谷部33bに嵌り込んで月星車33の歯33aに係して月星車33を介して月車30を回し始める。
【0059】
8月31日の24時ないし9月1日の0時頃で大の月の「31」日から次の日である(9月)「1」日への日送りが行われている最中で日ジャンパ27の躍制爪部27aの頂点が日歯車23の歯26の頂点を越えた状態である
図9の状態に達すると、月送りピン25によってK1方向に回動されている月送りレバー38が月送り爪38cで月星車33をC1方向に回動させ、月ジャンパ33cの躍制爪部の頂点が月星車33の歯33aの頂点に当接する状態に達する。この状態では、月車30は半分回動した状態になり、月日表示窓13の月表示領域13aに、8月を現すAUGの月表示文字LMと9月を現すSEPの月表示文字LMとの中間の部分が位置する。この時点では、日送り爪42は、依然として、通常揺動位置P0と揺動完了位置P2との間にある。
【0060】
8月31日の24時ないし9月1日の0時頃で大の月の「31」日から次の日である(9月)「1」日への日送りが完了する
図10の状態に達する際において実際上同じタイミングで、月ジャンパ33cの躍制爪部も月星車33の次の隣接する歯33a,33aの間の谷部33bに落ち、月車30を所定回動位置で規正する。この規正位置では、月板32の月表示文字LMとして9月を示す表示文字「SEP」が月日表示窓13の月表示領域13a内に丁度達して、月表示が行われる。なお、月星車33のC1方向回転は、第一及び第二中間車34,35を介して月カム車36に伝えられて、月カム37が小月である9月を示す小月凹部37bが日送りレバー41の小月検出用カム従節45に対面し得る回動位置を採る。
【0061】
図10は8月31日の24時ないし9月1日の0時頃で大の月の「31」日から次の日である(9月)「1」日への日送りが完了した状態であって、日送りに係わる関連部品の状態に関する限り、8月30日の24時ないし8月31日の0時頃で大の月の「30」日から「31」日への日送りが完了した状態を示した
図6と実際上同様な状態である。
【0062】
小月の月末近くであるけれども、小月月末になっていない状態、例えば、9月29日の24時ごろないし9月30日の0時ごろにおいて、日送り直前には
図11に示したような状態を採る。この状態は、30日の代わりに29日であることにより日車20が一日分前の状態にある点、及び小月であるので日送りレバー41の小月検出カム従節45が月カム37の小月凹部37bに対面する位置にある点を除いて、
図2の状態と実際上同じである。
【0063】
この状態において、時間の経過と共に、筒車16aがC1方向に回転し、それに応じて日回し車51が中心軸線HのまわりでH1方向に回転して、円弧状長孔51bの端部51cで日回しカム52をH1方向に回すので、作動レバー53のカム従節56がカム52の最大径部54dを越えてエネルギ放出用カム面部54bに沿って急激に落ち、それに伴って日送りレバー41を介して日送り爪42がC1方向に急速に回動して日車20を一歯分だけC2方向に急速に回す。
【0064】
日車20のC2方向回転に伴って月の30日に入ると、日車20の月末凹部24が月末検出レバー46の外側レバー部46aの端部46bに対面するので、日送りレバー41がC1方向に回動して日送りレバー41の小月検出カム従節45が月カム37の小月凹部37bに嵌ると共に、月末検出レバー46がF1方向に回動して月末検出レバー46の外側レバー部46aの端部46bが日車20の月末凹部24に嵌る。日送りレバー41のこのC1方向回動の際、日送り爪42は日送りレバー41に対してE1方向に回動されて、日車20の歯26の一つ分だけ手前にすなわちC2方向に移動して、通常係合するよりもC2方向に一つ分だけ手前の歯26と係合可能になる。
【0065】
小月の月末になると、即ち、9月30日の24時頃すなわち10月1日の0時頃になると、
図12に示したような状態になる。この状態は、日送り及月送りが行われる直前の状態、従って、作動レバー53のカム従節56が日回しカム52の最大径部54dに達している状態である。この状態では、月末検出レバー46の外側レバー部46aの端部46bが日車20の月末凹部24に嵌り日送りレバー41の小月検出カム従節45が月カム37の小月凹部37bに嵌っているので、日送りレバー41及びこれに支持された日送り爪42がC2方向に揺動した事前揺動位置P1を採っている。この事前揺動位置P1は、通常揺動位置P0と比較してΔφ=(φ1−φ0)だけ、C2方向に余分に揺動した位置になっている。その他の点では、
図11や
図2の状態と同様である。
【0066】
図12の状態から僅かに時間が経過して作動レバー53のカム従節56が日回しカム52の最大径部54dを越えると、
図13に示したように、カム従節56がエネルギ放出用カム面部54bに沿って一気に落ち始める。カム従節56のエネルギ放出用カム面部54bに沿った変位に伴って作動レバー53がJ1方向に急激に回動され、これにより日回しレバー41がC2方向に急激に回動されて、日送り爪42が前方の最近接位置にある日歯車23の歯26に係合して日車20をC2方向に急激に回動させる。
図13に示した状態は、大月及び小月の差異を除いて
図5に示した状態と同様に、日車20の日歯車23のC2方向回転に伴い日歯車23の歯26の頂点に日ジャンパ27の躍制爪部27aの頂点が達した状態で月日表示窓13の日表示領域13bには30と31とが半分づつ位置した状態(極めて短時間の間に生じる状態)であり、この時点は、
図12の時点からわずかな時間の経過後であって
図12の時点と実際上同じ即ち9月30日の24時ないし10月1日の0時頃である。
【0067】
その後わずかな時間の経過に伴い、
図14に示したように、一方では、日ジャンパ27が日車20を半日分C2方向に急激に回して躍制爪部27aが日歯車23の次の隣接歯26,26間に落ちて日車20を規正する状態に再度入る。これにより、月日表示窓13の日表示領域13bの日文字LDは「31」になる。他方、カム従節56がエネルギ放出用カム面部54bに沿って一気に落ち続け、カム従節56のエネルギ放出用カム面部54bに沿った変位に伴って作動レバー53が更にJ1方向に急激に回動される。但し、この段階では、日ジャンパ27の動作により日車20が既にC2方向に回動されているので、日送りレバー41の先端の日送り爪42と日車20の前方の歯26との間には僅かな間隙が生じていてもよい。なお、この例では日送り爪42が十分に早くC2方向に揺動されて歯26に係合した状態に実際上保たれているとして図示されている。この時点も、
図12や
図13の時点からわずかな時間の経過後であって
図12や
図13の時点と実際上同じ即ち9月30日の24時ないし10月1日の0時頃である。
【0068】
なお、
図14の状態では、月末検出レバー46の月末検出端部46bが日車20の月末凹部24から出て厚肉鍔状部22bの内周面に係合する状態に戻っている。従って、
図14の状態では、日送りレバー41も小月検出用カム従節45が月カム37の小月凹部37bから出た状態に戻って、日送り爪42も通常の日送り開始位置P0に実際上戻っている。
【0069】
図14の状態から僅かに時間が経過すると作動レバー53のカム従節56が日回しカム52のエネルギ放出用カム面部54bに沿って更に一気に落ち続ける。カム従節56のエネルギ放出用カム面部54bに沿った変位に伴って作動レバー53がJ1方向に急激に回動され、これにより日回しレバー41がC2方向に急激に回動されて、日送り爪42が前方の最近接位置にある日歯車23の歯26に係合し(又は係合した状態のまま)日車20をC2方向に急激に回動させる。
図15に示した状態は、大月及び小月の差異を除いて
図5や
図8に示した状態と同様に、日車20の日歯車23のC2方向回転に伴い日歯車23の歯26の頂点に日ジャンパ27の躍制爪部27aの頂点が達した状態で月日表示窓13の日表示領域13bには日付文字LDとして「31」と「1」とが半分づつ位置した状態(極めて短時間の間に生じる状態)であり、この時点は、
図12〜
図14の時点からわずかな時間の経過後であって
図12〜
図14の時点と実際上同じ即ち9月30日の24時ないし10月1日の0時頃である。なお、小月の月末であるので、この時点では、日車20の月送りピン25が月送りレバー38の入力側腕部38aの端部に係合して、月送りレバー38をK1方向に揺動させ、月送り爪38cを月星車33の歯33aに係合させ、月星車33をC1方向に回し始める。この時点では、日送り爪42は、通常揺動位置P0と揺動完了位置P2との間にある。
【0070】
図15の状態から僅かに時間が経過すると作動レバー53のカム従節56が日回しカム52のエネルギ放出用カム面部54bに沿って更に一気に落ち続ける。カム従節56のエネルギ放出用カム面部54bに沿った変位に伴って作動レバー53がJ1方向に急激に回動され、これにより日回しレバー41がC2方向に急激に回動されて、日送り爪42が前方の最近接位置にある日歯車23の歯26を介して日車20をC2方向に急激に回動させる。
図16に示した状態は、大月及び小月の差異を除いて
図9に示した状態と同様に、日車20の日歯車23のC2方向回転に伴い日ジャンパ27の躍制爪部27aの頂点が日歯車23の歯26の頂点を越えて落ち始めた状態で月日表示窓13の日表示領域13bに日付表示文字LDとして「1」の大半の部分が入った状態であり、且つ月星車33のC2方向回転に伴い月星車33の歯33aの頂点に月ジャンパ33cの躍制爪部の頂点が達した状態で月日表示窓13の月表示領域13aには月表示文字LMとして9月を表す表示「SEP」と10月を表す表示「OCT」とが半分づつ位置した状態(極めて短時間の間に生じる状態)であり、この時点は、
図12〜
図15の時点からわずかな時間の経過後であって
図12〜
図15の時点と実際上同じ即ち9月30日の24時ないし10月1日の0時頃である。この時点では、日送り爪42は、依然として、通常揺動位置P0と揺動完了位置P2との間にある。
【0071】
その後わずかな時間の経過に伴い、
図17に示したように、一方では、日ジャンパ27が日車20を一日の数分の一だけ更にC2方向に急激に回して躍制爪部27aが日歯車23の次の隣接歯26,26間に落ちて日車20を規正する状態に再度入る。これにより、月日表示窓13の日表示領域13bの日文字LDは「1」になる。また、月ジャンパ33cが月星車33を一歯分の半分だけ更にC1方向に急激に回して月ジャンパ33cの躍制爪部が月星車33の次の隣接歯33a,33a間の谷部33bに落ちて月車30を規正する状態に再度入る。これにより、月日表示窓13の月表示領域13aの月文字LMは10月を表す表示「OCT」になる。他方、カム従節56がエネルギ放出用カム面部54bに沿って一気に落ち続け、カム従節56のエネルギ放出用カム面部54bに沿った変位に伴って作動レバー53が更にJ1方向に急激に回動される。但し、この段階では、日ジャンパ27の動作により日車20が既にC2方向に回動されているので、揺動完了位置P2にある日送りレバー41の先端の日送り爪42と日車20の前方の歯26との間には間隙が生じている。この時点も、
図12〜
図16の時点からわずかな時間の経過後であって
図12〜
図16の時点と実際上同じ即ち9月30日の24時ないし10月1日の0時頃である。
【0072】
以上の通り、このカレンダ機構1を備えたカレンダ時計3では、小月の月末に、日送り爪42が事前揺動位置P1まで大きく手前側(C1方向に)揺動された後、高速日送り機構50によって、一気に一日分の事前日送りをした後、更に、一気に通常の日送りをするので、全体として、一気に小月月末に二日分の日送りを高速で行い得る。なお、このカレンダ機構1は、ムーブメント2のベースになる構成部品を兼用でき、変更が最低限に抑えられ得る。
【0073】
月車が12個の表示を有する代わりに、24個の表示を有し、月カムが12個の部分からなる代わりに24個の部分からなっていてもよい。そのような例を、本発明の一変形例のカレンダ機構1Aを備えたムーブメント2Aを有するカレンダ機構付時計ないしカレンダ時計3Aとして、
図18から
図23に基づいて説明する。
図18から
図23のカレンダ時計3Aにおいて、
図1から
図17に示したカレンダ時計3の要素と同一の要素には同一の符号が付され、概ね同様な機能を有するけれども機能や形状などにおいて異なるところのある要素にはカレンダ時計3の対応する要素の符号に後の添字Aが付されている。
【0074】
カレンダ機構3Aでは、月カム37Aが各月当たり二つのカム面部分を備え、小月のうち二つ目(後)のカム面部分が小月凹部37bAになっており、それ以外のカム面部分が大径円弧状面部37aAになっている。また、カレンダ機構3Aでは、月星車33Aも各月に二つで全体として24個の歯部33A及び谷部33bを備えている。なお、この例の場合、月カム37Aの凹部37bAは、単なる小月凹部ではなく実際上小月月末凹部になっている。
【0075】
カレンダ機構3Aでは、月末検出レバーを欠き、該結末検出レバーの代わりに日車20Aが通常の月送りピン(第二月送りピン)25Aに加えて別の月送りピン(第一月送りピン)24Aを備える。第一月送りピン24Aは小月の月末の最終日よりも一日前(29日から30日への日替わりの際)に月送りレバー38に係合して月送り爪38cにより月星車33Aを一歯分だけC1方向に回動させ、月中間車34,35を介して月カム37Aを一つ分だけD1方向に回動させて小月の前段の状態から小月の後段の状態へと変化させる。
【0076】
この場合、可動ストローク制御機構5Aは、月カム37Aと、日送りレバー41A及び日送り爪42からなる日送りレバー構造体40Aと、小月の月末のうち日替わりの特定の時点において、日送りレバー構造体40Aの小月検出用カム従節45が月カム37Aの小月凹部37bAに嵌り込むのを許容する月末検出部とからなる。ここで、月末検出部は、第一月送りピン24Aからなる。
【0077】
カレンダ機構3Aでは、月末検出レバーを用いないので、作動レバー41Aが作動レバー係合部43及び小月検出用カム従節45を備えるけれども月末顕出レバー係合腕部を要しない。
【0078】
以上の如く構成されたカレンダ時計3Aのムーブメント2Aのカレンダ機構1Aの動作を
図18から
図23に基づいて説明する。
【0079】
図18には、9月29日の24時頃ないし9月30日の0時頃であって29日から30日への日送りの直前の状態にあるカレンダ時計3Aが示されている。
図18のカレンダ時計3Aの状態は、
図11に示したカレンダ時計3の状態に対応する。なお、
図18の状態では、第一月送りピン24Aが月送りレバー38の入力側腕部38aの近くに位置する。
【0080】
この状態において、時間の経過と共に筒車16aがC1方向に回転し、日回し車51がH1方向に回転して円弧状長孔51bの端部51cで日回しカム52をH1方向に回すので、作動レバー53のカム従節56が日回しカム52の最大径部54dを越えてエネルギ放出用カム面部54bに沿って急激に落ち、日送り爪42がC1方向に急速に回動して日車20を一歯分だけC2方向に急速に回す。
【0081】
日車20の「29」日から「30」日へのC2方向回転に伴って第一月送りピン24Aが月送りレバー38の入力側腕部38aを押して月送りレバー38をK1方向に回動させ月ジャンパ33cにより規正された月星車33Aを月送り爪38cが一歯分だけC1方向に回動させ、月中間第一及び第二車34,35を介して月カム37Aを一ステップ分(1/24)だけD1方向に回動させて、
図19に示す状態に達する。この状態では、月カム37Aの小月凹部37bAが日送りレバー41Aの小月検出用カム従節45と係合可能なように該カム従節45に対面する回動位置にある。
【0082】
その後、作動レバー53のカム従節56が日回しカム52のエネルギ放出用カム面部54bを落ちきることにより、「29」日から「30」日への日替わりが完了する。
【0083】
日車20のC2方向回転に伴って月の30日に入り、時間の経過と共に、作動レバー53のカム従節56が日回しカム52の最大径部52dに近付くと、作動レバー53がJ2方向に回動されて日送りレバー41Aに対する係合が解除され日送りレバー41AがC1方向に回動して日送りレバー41Aの小月検出カム従節45Aが月カム37Aの小月凹部37bAに嵌る。日送りレバー41AのこのC1方向回動の際、日送り爪42は日送りレバー41Aに対してE1方向に回動されて、日車20の歯26の一つ分だけ手前にすなわちC2方向に移動して、通常係合するよりもC2方向に一つ分だけ手前の歯26と係合可能になる。
【0084】
小月の月末になると、即ち、9月30日の24時頃すなわち10月1日の0時頃になると、前述の
図12に対応する
図20に示したような状態になる。この状態は、日送り及月送りが行われる直前の状態、従って、作動レバー53のカム従節56が日回しカム52の最大径部54dに達している状態である。この状態では、日送りレバー41Aの小月検出カム従節45が月カム37Aの小月凹部37bAに嵌っているので、日送りレバー41A及びこれに支持された日送り爪42がC2方向に揺動した事前揺動位置P1Aを採っている。この事前揺動位置P1Aは、通常揺動位置P0Aと比較してΔφ=(φ1−φ0)だけ、C2方向に余分に揺動した位置になっている。その他の点では、
図18の状態と同様である。
【0085】
図20の状態から僅かに時間が経過して作動レバー53のカム従節56が日回しカム52の最大径部54dを越えると、カム従節56がエネルギ放出用カム面部54bに沿って一気に落ち始め、作動レバー53がJ1方向に急激に回動され、日回しレバー41AがC2方向に急激に回動されて、日送り爪42が前方の最近接位置にある日歯車23の歯26に係合して日車20をC2方向に急激に回動させる。
【0086】
その後わずかな時間の経過に伴い、前述の
図14に対応する
図21に示したように、一方では、日ジャンパ27が日車20Aを半日分C2方向に急激に回して躍制爪部27aが日歯車23の次の隣接歯26,26間に落ちて日車20を規正する状態に再度入る。これにより、月日表示窓13の日表示領域13bの日文字LDは「31」になる。他方、カム従節56がエネルギ放出用カム面部54bに沿って一気に落ち続け、作動レバー53が更にJ1方向に急激に回動される。但し、この段階では、日ジャンパ27の動作により日車20が既にC2方向に回動されているので、日送りレバー41の先端の日送り爪42と日車20の前方の歯26との間には僅かな間隙が生じていてもよい。なお、この例では日送り爪42が十分に早くC2方向に揺動されて歯26に係合した状態に実際上保たれているとして図示されている。この時点は
図20の時点からわずかな時間の経過後であって
図20の時点と実際上同じ即ち9月30日の24時ないし10月1日の0時頃である。
【0087】
なお、
図21の状態では、日送りレバー41Aの小月検出用カム従節45が月カム37Aの小月凹部37bAから出た状態に戻って、日送り爪42が通常の日送り開始位置P0に実際上戻っている。
【0088】
図21の状態から僅かに時間が経過すると作動レバー53のカム従節56が日回しカム52のエネルギ放出用カム面部54bに沿って更に一気に落ち続ける。カム従節56のエネルギ放出用カム面部54bに沿った変位に伴って作動レバー53がJ1方向に急激に回動され、これにより日回しレバー41AがC2方向に急激に回動されて、日送り爪42が前方の最近接位置にある日歯車23の歯26に係合し(又は係合した状態のまま)日車20AをC2方向に急激に回動させる。日車20の日歯車23のC2方向回転に伴い日歯車23の歯26の頂点に日ジャンパ27の躍制爪部27aの頂点が達する頃になると、日車20の第二月送りピン25Aが月送りレバー38の端部38aに係合して、月送りレバー38をK1方向に揺動させ、月送り爪38aを月星車33Aに係合させ、月星車33AをC1方向に回し始める。この時点では、作動レバー53のカム従節56が日回しカム52のエネルギ放出用カム面部54bに沿って更に一気に落ち続ける。カム従節56のエネルギ放出用カム面部54bに沿った変位に伴って作動レバー53がJ1方向に急激に回動され、これにより日回しレバー41AがC2方向に急激に回動されて、日送り爪42が前方の最近接位置にある日歯車23の歯26を介して日車20をC2方向に急激に回動させる。
図16に対応する
図22の状態は、日車20の日歯車23のC2方向回転に伴い日ジャンパ27の躍制爪部27aの頂点が日歯車23の歯26の頂点を越えて落ち始めた状態で月日表示窓13の日表示領域13bに1の大半の部分が入った状態であり、且つ月星車33AのC2方向回転に伴い月星車33Aの歯33aAの頂点に月ジャンパ33cの躍制爪部の頂点が達した状態で月日表示窓13の月表示領域13aには9月を表す表示SEPと10月を表す表示OCTとが半分づつ位置した状態(極めて短時間の間に生じる状態)であり、この時点は、
図20や
図21の時点からわずかな時間の経過後であって
図20や
図21の時点と実際上同じ即ち9月30日の24時ないし10月1日の0時頃である。この時点では、日送り爪42は、通常揺動位置P0と揺動完了位置P2との間にある。
【0089】
その後わずかな時間の経過に伴い、
図17に対応する
図23に示したように、一方では、日ジャンパ27が日車20Aを一日の数分の一だけ更にC2方向に急激に回して躍制爪部27aが日歯車23の次の隣接歯26,26間に落ちて日車20Aを規正する状態に再度入る。これにより、月日表示窓13の日表示領域13bの日文字LDは「1」になる。また、月ジャンパ33cが月星車33Aを一歯分の半分だけ更にC1方向に急激に回して月ジャンパ33cの躍制爪部が月星車33Aの次の隣接歯33aA,33aA間の谷部33bAに落ちて月車30Aを規正する状態に再度入る。これにより、月日表示窓13の月表示領域13aの月文字LMは10月を表す表示「OCT」になる。他方、カム従節56がエネルギ放出用カム面部54bに沿って一気に落ち続け、カム従節56のエネルギ放出用カム面部54bに沿った変位に伴って作動レバー53が更にJ1方向に急激に回動される。但し、この段階では、日ジャンパ27の動作により日車20Aが既にC2方向に回動されているので、揺動完了位置P2にある日送りレバー41Aの先端の日送り爪42と日車20の前方の歯26との間には間隙が生じている。この時点も、
図20〜
図22の時点からわずかな時間の経過後であって
図20〜
図22の時点と実際上同じ即ち9月30日の24時ないし10月1日の0時頃である。
【0090】
以上の通り、このカレンダ機構1Aを備えたカレンダ時計3Aにおいても、小月の月末に、日送り爪42が事前揺動位置P1まで大きく手前側(C1方向に)揺動された後、高速日送り機構50によって、一気に一日分の事前日送りをした後、更に、一気に通常の日送りをするので、全体として、小月月末に二日分の日送りを一気に高速で行い得る。
【0091】
高速日送り機構50についていえば、
図1〜
図17のカレンダ機構1を備えたカレンダ時計3においても、
図18〜
図23のカレンダ機構1Aを備えたカレンダ時計3Aにおいても、日送りカム52に係合するカム従節56を備えた作動レバー53が、日送りレバー41,41Aを介して、日送り爪42を作動させて高速日送りを行わせる例について説明したけれども、その代わりに、例えば
図24の(a)に示したように、日送りカム52Bに係合するカム従節56Bを備えた作動レバー53B自体が日送り爪42Bを有していてもよい。
【0092】
また、その代わりに、例えば
図24の(b)に示したように、日送りカム52Cに係合するカム従節56Cを備えた作動レバー53Cに係合する日送りレバー41C自体が日送り爪42Cを一体的に有していてもよい。
【0093】
ところで、上述した実施形態によるカレンダ機構1において、巻真15aを一段引き出して日付を修正しようとする場合、小の月の月末、例えば30日の深夜では、日送りレバー41の小月検出用カム従節45が月カム37の小月凹部37bに落ち込んでいる。そのため、日付を修正して月を修正しようとしても、月カム37を回転できないので、この時間帯では日付や月の修正を行えなかった。
次に、本実施形態の変形例として、このような小月の月末であっても月の変更を伴う日付修正を行えるようにした日付修正機構を備えたカレンダ機構1Bを以下に説明する。
【0094】
変形例による日付修正機構64を備えたカレンダ機構1Bについて
図25から
図28に基づいて説明する。
図25から
図27に示すカレンダ機構1Bにおいて、巻真15aは1段引き出すと日車20及び月車30を動かして日付の修正が可能であり、二段引き出すと時間の修正が行えるようになっている。
【0095】
ムーブメント2に設けた巻真15aの凹部にはおしどりレバー65の先端部65aが係合して支持され、巻真15aの進退に連動しておしどりレバー65は中心軸線P回りに回転する。おしどりレバー65の近傍に設けられたクリックばね66は3つのクリック溝66a、66b、66cが形成されており、おしどりレバー65に植設された位置決めピン67がいずれかに選択的に係合可能とされている。例えば、巻真15aがムーブメント2に引き込まれた引き込み位置にあるときには位置決めピン67は第一のクリック溝66aに係合され、1段引き出された位置で第二のクリック溝66b、2段引き出された位置で第三のクリック溝66cに係合されておしどりレバー65の回転角度を位置決めする。
【0096】
また、巻真15aを挟んでおしどりレバー65と反対側に第一クラッチレバー68が中心軸線Q回りに揺動可能に設けられている。第一クラッチレバー68の側部に設けた山形部68aにはおしどりレバー65の先端部65aが当接して摺動可能であり、第一クラッチレバー68はおしどりレバー65に押されて揺動可能とされている。第一クラッチレバー68には、中心軸線R回りに揺動可能な第二クラッチレバー69の一端部69aが当接して連動可能とされている。
おしどりレバー65の先端部65aは、巻真15aの引き込み位置では第一クラッチレバー68の山形部68aの一方の麓に当接し、巻真15aを一段引き出した位置では山形部68aの頂部に当接し、巻真15aを二段引き出した位置では山形部68aの他方の麓に当接することで第一クラッチレバー68の揺動を制御する。
【0097】
第二クラッチレバー69の他端部には作動ピン70が植設されており、第一クラッチレバー68の回動に連動して第二クラッチレバー69が回動すると作動ピン70で日送り爪42の基部を押して中心軸線E回りに時計回りに回転させて日車20の歯26から離間させ、更に作動ピン70で日送りレバー41を押して小月検出用カム従節45を月カム37の小月凹部37bから離脱させることができる。
なお、
図28に示すように、日車20上には板状のクラッチレバー押さえ72が設けられ、このクラッチレバー押さえ72と地板6との間に第一及び第二クラッチレバー68、69の係合部が納められて位置ズレを防止している。
【0098】
本変形例によるカレンダ機構1Bの日付修正機構64は上述の構成を備えており、次に上述の実施形態では日付修正ができなかった期間である、日送りレバー41の小月検出用カム従節45が月カム37の小月凹部37bに落ち込んだ期間、例えば小月の月末の30日の深夜における日付修正方法を説明する。
小月の月末の29日深夜または30日では、
図25に示すように、日送りレバー41の小月検出用カム従節45が月カム37の小月凹部37bに落ち込んでいる。この状態で、
図26に示すように、日付修正を行うために巻真15aを引き込んだ位置から一段引き出すと、おしどりレバー65の先端部65aが引き出されて反時計回りに回転するため、位置決めピン67がクリックばね66を弾性変形させて第一のクリック溝66aから第二のクリック溝66bに移動して、位置決めする。
【0099】
この位置で、おしどりレバー65の先端部65aは第一クラッチレバー68の山形部68aの麓から頂部に移動するため、第一クラッチレバー68が押されて中心軸線Q回りに回動して第二クラッチレバー69の一端部69aを押すため、第二クラッチレバー69が中心軸線Rで時計回りに回動し、作動ピン70で日送り爪42を押して中心軸線Rを中心に時計回りに回動させて日車20の歯26から離脱させる。更に、第二クラッチレバー69が時計回りに回動することで、作動ピン70で日送りレバー41を日送り爪42と共に押動して、小月検出用カム従節45が月カム37の小月凹部37bから離脱する。
【0100】
日送りレバー41と日送り爪42はこの状態に保持されるため、巻真15aのりゅうず15を回すことで日車20と月車33を回転させて日付と月を修正することができる。その際、小月の月末の30日の深夜から日を進めて月を変わらせる場合、小月検出用カム従節45が月カム37の小月凹部37bから離脱しているため、月カム37を回転できる。しかも、作動ピン70で日送りレバー41と共に日送り爪42を回動させて日車20の歯26から離脱させている。
なお、大月等、小月の月末以外の場合でも、同様に作動ピン70で日送りレバー41の小月検出用カム従節45が月カム37の小月凹部37bから外れた位置に、そして日送り爪42が歯26から外れた位置に保持される。また、巻真15aを二段引き出した場合には、
図27に示すように、おしどりレバー65の先端部65aが第一クラッチレバー68の山形部68aの他方の麓にいたるので、第二クラッチレバー69が作動ピン70が日送りレバー構造体40を押さない位置に戻る。
【0101】
上述のように本変形例によるカレンダ機構1Bの日付修正機構64によれば、日付修正に際し、小月の月末であって日送りレバー41の小月検出用カム従節45が月カム37の小月凹部37bに嵌合していても、第二クラッチレバー69の作動ピン70によって日送りレバー41の小月検出用カム従節45を月カム37の小月凹部37bから離脱した位置に保持でき、また日送り爪42も歯26から離脱した位置に保持できる。そのため、小月の月末であっても大月であっても、月日の制限なく、いつでも日を修正することができる。
【0102】
なお、上述の説明では、日付修正に際し、日送り爪42も日車20の歯26から離脱させるようにしたが、日送り爪42は作動ピン70で押動することなく歯26に係止していてもよい。この場合、巻真15aのりゅうずを回すことで日車20は反時計回りに回転するため、歯26の傾斜面で日送り爪42の爪部分の傾斜した背面を押して歯26から日送り爪42を逃がすことができる。
また、本変形例による日付修正機構64は上述したカレンダ機構1Aにも採用できる。