(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
底部に有機性排水を導入するための導入口、並びに上部に処理水を排出するための排出口及び生成したバイオガスを収集して排出するためのバイオガス収集排出管を有するリアクタと、
前記リアクタの下部に配設された嫌気性微生物の凝集体からなる汚泥床部と、
前記リアクタの上部に配設された前記嫌気性微生物を担持する担体からなる担体部と、
前記リアクタ内に、前記導入口を介して前記有機性排水を供給するための有機性排水供給手段と、
前記リアクタの下部に供給された前記有機性排水を前記リアクタ内の担体部より下部に設置された吸引口より、吸引し、前記導入口から再度供給するようにして前記リアクタの下部中において循環水を循環させるための有機性排水循環手段と、
を具えることを特徴とする、有機性排水処理装置。
前記リアクタと前記有機性排水供給手段との間に前記有機性排水に対する流量計及び水質センサを具えるとともに、前記流量計及び前記水質センサと電気的に接続された有機物負荷量計測器とを具え、
前記流量計及び前記水質センサによって計測された単位時間当たりの前記有機性排水中に含まれる有機物の量が、前記有機物負荷量計測器に設定された前記有機物の処理量の閾値以下の場合において、前記有機性排水循環手段を駆動させるように構成したことを特徴とする、請求項2〜4のいずれか一に記載の有機性排水処理装置。
前記有機性排水供給手段は供給ポンプ及び供給配管を含み、前記供給配管は前記供給ポンプから分岐してなる複数の配管を含み、各配管にはバルブが設けられ、前記バルブの開閉制御によって前記有機性排水を供給すべき前記配管を選択して、前記リアクタ内に前記有機性排水を供給するように構成したことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一に記載の有機性排水処理装置。
前記有機性排水供給手段は供給ポンプ及び供給配管を含み、前記供給配管は前記供給ポンプから分岐してなる複数の配管を含み、前記供給配管の両端にはバルブが設けられ、前記バルブの開閉制御によって前記有機性排水を供給すべき前記配管を選択して、前記リアクタ内に前記有機性排水を供給するように構成したことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一に記載の有機性排水処理装置。
前記汚泥床部及び前記担体部間に、前記バイオガスが付着した前記嫌気性微生物を分離するための気固分離部を具えることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一に記載の有機性排水処理装置。
前記リアクタ内の、前記担体部の上方において、前記バイオガスが付着した前記嫌気性微生物及び前記有機性排水の処理水中に含まれる前記嫌気性微生物を分離するための気固液分離部を具えることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一に記載の有機性排水処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための好ましい形態を以下に説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態における有機性排水処理装置の概略構成図である。
図1に示す有機性排水処理装置10は、例えば円筒状のリアクタ11、リアクタ11の下部に配設されたメタン発酵細菌などの嫌気性微生物の凝集体である汚泥床部12、並びにリアクタ11の上部に配設された上記の嫌気性微生物を担持した担体の配置された円筒状担体部13を有している。担体部13の中心には、以下に説明するように、有機性排水中の有機物と汚泥床部12の嫌気性微生物との反応によって生成したバイオガスが通過するためのバイオガス通気孔13Aが鉛直方向に貫通配置されている。
【0012】
担体部を構成する担体は、例えばプラスチック製の円筒状担体とすることができる。但し、嫌気性微生物が付着しやすいものであれば材料について特に限定されず、セラミックや金属等でもよい。また、形状についても球形、矩形等、任意の形状とすることができ、さらにはスポンジ状とすることもできる。これらの担体は、例えばメッシュ状の金網で上下及び左右を固定する。
【0013】
また、汚泥床部12及び担体部13間には、気固分離部として機能する円錐状又は四角錐状の板状部材14がバイオガス通気孔13Aの下端から下方に向けて拡開するようにして設けられており、同じく気固分離部として機能する凸状部15がリアクタ11の内壁面上に設けられている。なお、板状部材14の拡開の角度θは、例えば(45)度から(60)度とすることができ、凸状部15は、リアクタ11の内壁面の周面の全体に亘って設けることもできるし、内壁面の周面の複数の箇所において非連続的に、例えば島状に設けることもできる。
【0014】
さらに、リアクタ11内の、担体部13の上方には気固液分離部として機能する沈降分離部16が設けられている。
【0015】
また、リアクタ11の下部には有機性排水を導入するための導入口11Aが設けられており、リアクタ11の上部には、沈降分離部16の下部に設けられた処理水を排出するための排出口11Bが設けられているとともに、バイオガス通気孔13Aと連通するようにしてバイオガス収集排出管11Cが設けられている。
【0016】
リアクタ11の下部には、有機性排水供給手段17としての供給ポンプ171及び供給配管172が設けられている。供給配管172は、リアクタ11の導入口11Aを介して、リアクタ11内部に導出されている。
図1から明らかなように、供給配管172には複数の供給口172Aが設けられており、リアクタ11内に有機性排水を均一に供給できるように構成されている。
【0017】
また、リアクタ11の下部、具体的には、汚泥床部12が配設された空間内には、リアクタ11内に供給された有機性排水を吸引し、リアクタ11の下部中を循環させるための有機性排水循環手段18である循環ポンプ181及び循環配管182が設けられている。循環配管182にも複数の吸引口182Aが設けられており、リアクタ11内に供給された有機性排水を均一に吸引し、リアクタ11の下部中を循環させるように構成されている。
【0018】
次に、
図1に示す装置を用いた有機性排水の処理方法について説明する。
最初に、供給ポンプ171によって処理に供すべき有機性排水を、供給配管172及びその供給口172Aを通ってリアクタ11内に導入し、汚泥床部12と接触させる。汚泥床部12中には嫌気性微生物である、加水分解を行う加水分解菌、酸生成を行う酸生成菌、メタン生成を行うメタン生成菌等が存在する。これら菌により、有機性排水中の有機物、例えば高分子蛋白質、炭水化物及び脂肪などの有機汚濁物質は、加水分解菌による加水分解反応の過程を経て低分子化され、酸生成菌により、低分子のプロピオン酸や酢酸の有機酸(VFA)に分解され、さらにメタン生成菌によりメタン、二酸化炭素まで分解される。
【0019】
有機汚濁物質(高分子の蛋白質、炭水化物、脂肪)
(加水分解反応)
→アミノ酸、単糖類、脂肪酸(R−COOH、C
6H
12O
6、RCHNH
2COOH)
(酸生成反応)
→プロピオン酸、酢酸(C
2H
5COOH、CH
3COOH)
(メタン生成反応)
→メタン(CH
4) + 二酸化炭素(CO
2)
【0020】
この反応により有機性排水中の有機物は分解され、有機性排水の処理が行われることになる。一方、上記反応により生成したメタン、二酸化炭素はガス化し、バイオガスとしてリアクタ11内を上昇する。この際、バイオガスは、汚泥床部12中の嫌気性微生物あるいは導入した有機性排水中の浮遊固形物に付着し、その比重を小さくすることから、当該嫌気性微生物等を伴う。しかしながら、本実施形態における有機性排水処理装置10は、リアクタ11内部に、バイオガス通気孔13Aの開口部から下方に向けて拡開した気固分離部としての板状部材14、及びリアクタ11の内壁面上に凸状部15を設けている。
【0021】
したがって、上記バイオガスが板状部材14及び凸状部15と衝突することにより、バイオガスが付着して上昇してきた嫌気性微生物等は、衝突の際の衝撃によって下方に向けて落とされ、リアクタ11内で処理された有機性排水の処理水中に混入するようになる。この際、比重の比較的大きい嫌気性微生物は再度汚泥床部12を構成する。一方、嫌気性微生物の一部及び浮遊固形物は、汚泥床部12において処理された有機性排水の処理水とともにリアクタ11内を上昇し、板状部材14及び凸状部15間の隙間から担体部13内に導入される。
【0022】
付随した嫌気性微生物等が除去されたバイオガスは、バイオガス通気孔13Aを通り、バイオガス収集排出管11Cを介して、リアクタ11、すなわち有機性排水処理装置10の外部に取り出される。取り出されたバイオガスは捕集されて、電気若しくは熱エネルギー源として使用される。
【0023】
また、担体部13では、上述した例えばプラスチック製の円筒状担体に上述した嫌気性微生物が担持されているので、汚泥床部12で処理された有機性排水の処理水が担体部13を通過する際には、処理水中に残留する有機物、例えば高分子蛋白質、炭水化物及び脂肪などの有機汚濁物質が、加水分解を行う加水分解菌、酸生成を行う酸生成菌、メタン生成を行うメタン生成菌等の嫌気性微生物と再度接触することになる。したがって、上述した反応式に基づき、処理水中に残留した有機物は再度分解されて処理水が精製されることになる。
【0024】
一方、残留有機物がさらに分解除去されて再度メタンガス及び二酸化炭素ガス(バイオガス)が生成する。このバイオガスは、嫌気性微生物等を含む精製された処理水及びバイオガスが付着した嫌気性微生物等とともに、気固液分離部である沈降分離部16に導入される。沈降分離部16において、精製した処理水中の嫌気性微生物等は沈降によって分離され、嫌気性微生物等が分離された精製処理水は、沈降分離部16の越流堰16Aの下方に位置する排出口11Bよりリアクタ11、すなわち有機性排水処理装置10の外部に排出される。
【0025】
また、バイオガスが付着した嫌気性微生物等は、沈降分離部16の越流水面部16Bと衝突し、その際の衝撃によってバイオガスから分離除去される。嫌気性微生物等が分離除去されたバイオガスは、リアクタ11の上部に設けられたバイオガス収集排出管11Cを介して、リアクタ11、すなわち有機性排水処理装置10の外部に取り出される。取り出されたバイオガスは捕集されて、電気若しくは熱エネルギー源として使用される。除去された嫌気性微生物等の内、汚泥床部12を構成する嫌気性微生物は比重が大きいので沈降分離部16で沈降する。その結果、沈降した嫌気性微生物を回収することにより、汚泥床部12中の嫌気性微生物として再利用に供することができる。
【0026】
このように、本実施形態では、有機性排水は、有機性排水処理装置10の汚泥床部12及び担体部13で含有される有機物が分解されて処理されるので、処理後の処理水中の残留有機物の量を十分に削減することができ、処理水の水質を十分に向上させることができ、処理水の水質悪化を防止することができる。
【0027】
また、本実施形態の有機性排水処理装置10においては、リアクタ11の下部、具体的には、汚泥床部12が配設された空間内に、有機性排水循環手段18である循環ポンプ181及び循環配管182が設けられているので、リアクタ11内に供給された有機性排水を循環配管182及びその吸引口182Aを介して吸引し、リアクタ11の下部中を循環させる。したがって、リアクタ11内に導入した有機性排水の循環によって、汚泥床部12が流動し、汚泥床部12内に蓄積していたメタンガス抜きにより、有機性排水と汚泥床部12の嫌気性微生物との接触効率が向上する。その結果、有機排水中の有機物の分解速度を向上させて、処理水の水質悪化を防止することができる。
【0028】
すなわち、有機性排水処理装置10を汚泥床部12及び担体部13の2段構成とし、有機性排水中の有機物を嫌気性微生物と2段階で接触させるとともに、リアクタ11内の下部に導入された有機性排水と汚泥床部12との接触効率を向上させているので、処理水の水質悪化をより効果的に防止することができ、処理水の水質向上を図ることができる。
【0029】
なお、本実施形態では、循環配管182には、複数の吸引口を設けるようにしているので、リアクタ11内に供給された有機性排水の偏流を抑制し、均一に吸引することができる。その結果、有機性排水と汚泥床部12との接触効率をより高めることができ、処理水の水質悪化を防止して、水質の向上を図ることができる。
【0030】
循環ポンプ181は連続的に運転してもよいが間欠的に運転することもできる。例えば、タイマにより、10分運転、50分停止等の形で間欠的に運転してもよい。これによって、常時循環運転する場合に比べ、ポンプの運転コストを低減することができる。
【0031】
また、本実施形態においては、汚泥床部12及び担体部13間に、気固分離部としての円錐状又は四角錐状の板状部材14及び凸状部15が設けられているが、このような気固分離部は、有機性排水処理後の処理水の処理に関するものであるので、本実施形態における必須の構成要件ではない。しかしながら、このような気固分離部を設けることにより、上述したように、汚泥床部12中の嫌気性微生物を回収することができるので、嫌気性微生物のロスを抑制することができる。
【0032】
さらに、本実施形態においては、リアクタ11内の、担体部13の上方に気固液分離部としての沈降分離部16を設けているが、このような気固液分離部は、有機性排水処理後の処理水の処理に関するものであるので、本実施形態における必須の構成要件ではない。しかしながら、このような気固液分離部を設けることにより、上述したように、有機性排水と汚泥床部12とを接触した際に発生するバイオガスの収集及び排出と、有機性排水の処理水の排出とを簡略に行うことができ、さらに嫌気性微生物の回収が容易となってそのロスを抑制することができる。
【0033】
(第2の実施形態)
図2は、本実施形態における有機性排水処理装置の概略構成図である。なお、
図1に示す構成要素と類似あるいは同一の構成要素に関しては同じ符号を用いている。
【0034】
図2に示す有機性排水処理装置20は、リアクタ11と供給ポンプ171との間に流量計21及びUV計22が設けられ、さらに流量計21及びUV計22と電気的に接続された有機物負荷量計測器23が設けられている点を除き、
図1に示す有機性排水処理装置10と同様の構成を有している。
【0035】
有機物負荷量計測器23では、流量計21及びUV計22の計測値を乗じることにより、単位時間当たりにリアクタ11に導入される有機性排水中の有機物負荷量が計算される。一方、有機性排水処理装置20には、通常、有機物負荷量の設計値があるため、その設計値に対して計算された有機物負荷量が所定の値(閾値)以下、例えば70%以下となった場合に、循環ポンプ181を運転する。
【0036】
バイオガスの発生量は上記有機物負荷量に依存するので、これが設計値よりも低い場合、バイオガスの発生量が減少してしまい、汚泥床部12のバイオガス攪拌が期待できなくなる。しかしながら、本実施形態では、このような場合、循環ポンプ181を駆動させるようにしているので、汚泥床部12を流動させ、汚泥床部12内に蓄積していたメタンガス抜きにより、有機性排水と汚泥床部12の嫌気性微生物との接触効率を向上させることができる。その結果、有機排水中の有機物の分解速度を向上させて、処理水の水質悪化を防止することができる。
【0037】
また、循環ポンプ181は、有機物負荷量計測器23において、有機物負荷量が閾値以下となった場合のみ運転させればよいので、常時循環運転する場合に比べ、ポンプの運転コストを低減することができる。
【0038】
水質センサ22としては、UV計を利用する構成としたが、有機物負荷量と相関のあるセンサであれば、BOD計、COD計、濁度計などを適宜用いることができる。
【0039】
なお、本実施形態でも、有機性排水処理装置20を汚泥床部12及び担体部13の2段構成とし、有機性排水中の有機物を嫌気性微生物と2段階で接触させるとともに、リアクタ11内の下部に導入された有機性排水と汚泥床部12との接触効率を向上させているので、処理水の水質悪化をより効果的に防止することができ、処理水の水質向上を図ることができる。
【0040】
その他の構成及び特徴については第1の実施形態における有機性排水処理装置10と同様であるので、説明を省略する。
【0041】
(第3の実施形態)
図3は、本実施形態における有機性排水処理装置の概略構成図である。なお、
図1に示す構成要素と類似あるいは同一の構成要素に関しては同じ符号を用いている。
【0042】
図3に示す有機性排水処理装置30は、リアクタ11と供給ポンプ171との間に水温計31が設けられ、さらに水温計31と電気的に接続された水温計測器33が設けられている点を除き、
図1に示す有機性排水処理装置10と同様の構成を有している。
【0043】
バイオガスの発生量は、上述した有機物負荷量のみならず、有機性排水の水温にも依存する。したがって、例えば下水を無加温で処理するような場合、リアクタ11の水温は流入する下水の水温に依存する。水温が低い場合は、汚泥床部12のバイオガス攪拌が期待できなくなる。
【0044】
しかしながら、本実施形態では、このような場合、循環ポンプ181を駆動させるようにしているので、汚泥床部12を流動させ、汚泥床部12内に蓄積していたメタンガス抜きにより、有機性排水と汚泥床部12の嫌気性微生物との接触効率を向上させることができる。その結果、有機排水中の有機物の分解速度を向上させて、処理水の水質悪化を防止することができる。
【0045】
例えば、水温計31の測定値が、水温計測器33に設定した閾値以下になった場合に循環ポンプ181を運転するよう作用する。通常、有機性排水処理装置30には水温の設計値があるため、その設計値に対して、例えば2℃以下等の判断基準を基に閾値を設定すればよい。
【0046】
なお、本実施形態でも、有機性排水処理装置20を汚泥床部12及び担体部13の2段構成とし、有機性排水中の有機物を嫌気性微生物と2段階で接触させるとともに、リアクタ11内の下部に導入された有機性排水と汚泥床部12との接触効率を向上させているので、処理水の水質悪化をより効果的に防止することができ、処理水の水質向上を図ることができる。
【0047】
その他の構成及び特徴については第1の実施形態における有機性排水処理装置10と同様であるので、説明を省略する。
【0048】
(第4の実施形態)
図4は、本実施形態における有機性排水処理装置の概略構成図である。なお、
図1に示す構成要素と類似あるいは同一の構成要素に関しては同じ符号を用いている。
【0049】
図4に示す有機性排水処理装置40は、リアクタ11のバイオガス収集排出口11Cにガス流量計41が設けられ、ガス流量計41と電気的に接続されたガス量計測器43が設けられている点を除き、
図1に示す有機性排水処理装置10と同様の構成を有している。
【0050】
ガス流量計41で計測したバイオガスの発生量がガス量計測器43で設定した閾値よりも少ないと汚泥床部12のバイオガス攪拌が期待できなくなる。しかしながら、本実施形態では、このような場合、循環ポンプ181を駆動させるようにしているので、汚泥床部12を流動させ、汚泥床部12内に蓄積していたメタンガス抜きにより、有機性排水と汚泥床部12の嫌気性微生物との接触効率を向上させることができる。その結果、有機排水中の有機物の分解速度を向上させて、処理水の水質悪化を防止することができる。
【0051】
例えば、ガス流量計41の測定値が、ガス量計測器43に設定した閾値以下になった場合に循環ポンプ181を運転するよう作用する。通常、有機性排水処理装置40にはバイオガス発生量の設計値があるため、その設計値に対して、例えば70%以下等の判断基準を基に閾値を設定すればよい。
【0052】
なお、本実施形態でも、有機性排水処理装置20を汚泥床部12及び担体部13の2段構成とし、有機性排水中の有機物を嫌気性微生物と2段階で接触させるとともに、リアクタ11内の下部に導入された有機性排水と汚泥床部12との接触効率を向上させているので、処理水の水質悪化をより効果的に防止することができ、処理水の水質向上を図ることができる。
【0053】
その他の構成及び特徴については第1の実施形態における有機性排水処理装置10と同様であるので、説明を省略する。
【0054】
(第5の実施形態)
図5は、本実施形態における有機性排水処理装置の有機性排水供給手段の概略構成図である。なお、
図1に示す構成要素と類似あるいは同一の構成要素に関しては同じ符号を用いている。
【0055】
図5に示す有機性排水供給手段27は、特に図示しないが、第1の実施形態の有機性排水処理装置10の場合と同様に、リアクタ11の下部に設けられている。
【0056】
本実施形態の有機性排水供給手段27は、
図5に示すように、供給ポンプ171及び供給配管172を有している。供給配管172からは3つの配管173−1,173−2及び173−3が分岐して配設されており、各配管にはバルブ174−1、174−2及び174−3が設けられている。
【0057】
本実施形態では、処理に供すべき有機性排水は、供給ポンプ171及び供給配管172を介してリアクタ11内に供給されるが、どの配管から供給されるかはバルブ174−1〜174−3のいずれを開とするかに依存する。
【0058】
例えば、バルブ174−1を開とし、バルブ174−2及び174−3を閉とすれば、有機性排水は配管173−1の供給口173−1Aを介してリアクタ11内に供給される。また、バルブ174−2を開とし、バルブ174−1及び174−3を閉とすれば、有機性排水は配管173−2の供給口173−2Aを介してリアクタ11内に供給される。さらに、バルブ174−3を開とし、バルブ174−1及び174−2を閉とすれば、有機性排水は配管173−3の供給口173−3Aを介してリアクタ11内に供給される。
【0059】
したがって、上述のようなバルブ開閉操作を順次に行うことにより、リアクタ11内には有機性排水が配管173−1、173−2及び173−3並びにそれらの供給口173−1A、173−2A及び173−3Aを介して順次に供給されることになる。この場合、リアクタ11の汚泥床部12が配設されている下部には偏流が形成されるので、このような偏流によって汚泥床部12を流動させ、汚泥床部12内に蓄積していたメタンガス抜きにより、有機性排水と汚泥床部12の嫌気性微生物との接触効率を向上させることができる。その結果、有機排水中の有機物の分解速度を向上させて、処理水の水質悪化を防止することができる。
【0060】
なお、リアクタ11の下部に上述のような偏流を形成することができれば、バルブ174−1〜174−3の開閉順序は上述のような順序に限定されず、任意の順序とすることができる。例えば、バルブ174−1→174−3→174−2やバルブ174−2→174−1→174−3の順序で開閉することもできる。
【0061】
また、本実施形態では、配管の数を3とし、バルブの数を3としているが、これらの数は、上述のように、リアクタ11の下部において偏流を生ぜしめ、この偏流によって有機性排水と汚泥床部12との接触効率を向上させることができれば特に限定されるものではない。
【0062】
さらに、本実施形態は、第1の実施形態における有機性排水処理装置10を基本構成としており、当該装置10は汚泥床部12及び担体部13の2段構成であり、有機性排水中の有機物を嫌気性微生物と2段階で接触させるとともに、リアクタ11内の下部に導入された有機性排水と汚泥床部12との接触効率を向上させているので、処理水の水質悪化をより効果的に防止することができ、処理水の水質向上を図ることができる。
【0063】
その他の構成及び特徴については第1の実施形態における有機性排水処理装置10と同様であるので、説明を省略する。
【0064】
(第6の実施形態)
図6は、本実施形態における有機性排水処理装置の有機性排水供給手段の概略構成図である。なお、
図1及び
図5に示す構成要素と類似あるいは同一の構成要素に関しては同じ符号を用いている。
【0065】
図6に示す有機性排水供給手段37は、特に図示しないが、第1の実施形態の有機性排水処理装置10の場合と同様に、リアクタ11の下部に設けられている。
【0066】
本実施形態の有機性排水供給手段37は、
図6に示すように、供給ポンプ171及び枝分かれした2本の供給配管172を有している。また、一方の供給配管172から分岐した3つの配管173−1,173−2及び173−3が設けられており、枝分かれした他方の供給配管172は、3つの配管173−1,173−2及び173−3の前後において、枝分かれした他方の供給配管172に接続されている。さらに、一方の供給配管172には、枝分かれした他方の供給配管172が接続部の前後、すなわちこれら接続部の外方においてバルブ174−1及び174−2が設けられている。
【0067】
本実施形態では、処理に供すべき有機性排水は、供給ポンプ171及び供給配管172、具体的には3つの配管173−1,173−2及び173−3を介してリアクタ11内に供給される。
【0068】
この場合、バルブ174−1を開とし、バルブ174−2を閉とすると、有機性排水は、3つの配管173−1,173−2及び173−3の供給口a1,a2,b1,b2,c1及びc2から供給される有機性排水の量が、3つの配管173−1,173−2及び173−3の供給口a3,a4,b3,b4,c3及びc4から供給される有機性排水の量よりも多くなる。同様に、バルブ174−2を開とし、バルブ174−1を閉とすると、有機性排水は、3つの配管173−1,173−2及び173−3の供給口a2,a4,b3,b4,c3及びc4から供給される有機性排水の量が、3つの配管173−1,173−2及び173−3の供給口a1,a2,b1,b2,c1及びc2から供給される有機性排水の量よりも多くなる。
【0069】
したがって、上述のようなバルブ開閉操作を順次に行うことにより、リアクタ11の汚泥床部12が配設されている下部には偏流が形成されるので、このような偏流によって汚泥床部12を流動させ、汚泥床部12内に蓄積していたメタンガス抜きにより、有機性排水と汚泥床部12の嫌気性微生物との接触効率を向上させることができる。その結果、有機排水中の有機物の分解速度を向上させて、処理水の水質悪化を防止することができる。
【0070】
また、本実施形態では、配管の数を3とし、バルブの数を2としているが、これらの数は、上述のように、リアクタ11の下部において偏流を生ぜしめ、この偏流によって有機性排水と汚泥床部12との接触効率を向上させることができれば特に限定されるものではない。
【0071】
さらに、本実施形態の態様は単独で用いることもできるが、第5の実施形態の態様と組み合わせて用いることもできる。この場合、リアクタ11の汚泥床部12が配設されている下部に比較的大きな偏流を簡易に形成することができるので、このような偏流によって汚泥床部12を流動させ、汚泥床部12内に蓄積していたメタンガス抜きにより、有機性排水と汚泥床部12の嫌気性微生物との接触効率を向上させることができる。その結果、有機排水中の有機物の分解速度を向上させて、処理水の水質悪化を防止することができる。
【0072】
本実施形態は、第1の実施形態における有機性排水処理装置10を基本構成としており、当該装置10は汚泥床部12及び担体部13の2段構成であり、有機性排水中の有機物を嫌気性微生物と2段階で接触させるとともに、リアクタ11内の下部に導入された有機性排水と汚泥床部12との接触効率を向上させているので、処理水の水質悪化をより効果的に防止することができ、処理水の水質向上を図ることができる。
【0073】
その他の構成及び特徴については第1の実施形態における有機性排水処理装置10と同様であるので、説明を省略する。
【0074】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として掲示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。