特許第6091952号(P6091952)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ブリヂストンの特許一覧

<>
  • 特許6091952-防振装置 図000002
  • 特許6091952-防振装置 図000003
  • 特許6091952-防振装置 図000004
  • 特許6091952-防振装置 図000005
  • 特許6091952-防振装置 図000006
  • 特許6091952-防振装置 図000007
  • 特許6091952-防振装置 図000008
  • 特許6091952-防振装置 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6091952
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】防振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 13/10 20060101AFI20170227BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20170227BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20170227BHJP
   B60K 5/12 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   F16F13/10 E
   F16F15/02 D
   F16F7/00 F
   B60K5/12 F
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-62643(P2013-62643)
(22)【出願日】2013年3月25日
(65)【公開番号】特開2014-185756(P2014-185756A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2015年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】堤 龍也
【審査官】 村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−064352(JP,A)
【文献】 特開2012−057780(JP,A)
【文献】 特開平11−153178(JP,A)
【文献】 特開2011−196444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 13/10
B60K 5/12
F16F 7/00
F16F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部が、振動発生部及び振動受部の何れか一方へ取り付けられる棒状部材と、
前記棒状部材の他端部の外周側に設けられる共に、振動発生部及び振動受部の何れか他方へ取り付けられる筒体と、
前記筒体の内周面と前記棒状部材の外周面とを弾性変形可能に連結するゴム弾性体と、
前記筒体の外周面に固定され、前記筒体の軸方向の端面を覆うと共に、前記棒状部材が挿通する挿通孔が形成されたフレームと、
前記棒状部材に取り付けられて前記挿通孔と対面し、前記挿通孔の孔縁と対面する部分に環状の溝部が形成された緩衝ゴムと、を有し、
前記フレームは、前記挿通孔が形成された上壁と、前記上壁と一体に形成され、前記筒体へ連結された周壁と、で構成され、
前記緩衝ゴムは、前記上壁の上面に設けられたゴム板である防振装置。
【請求項2】
一端部が、振動発生部及び振動受部の何れか一方へ取り付けられる棒状部材と、
前記棒状部材の他端部の外周側に設けられる共に、振動発生部及び振動受部の何れか他方へ取り付けられる筒体と、
前記筒体の内周面と前記棒状部材の外周面とを弾性変形可能に連結するゴム弾性体と、
前記筒体の外周面に固定され、前記筒体の軸方向の端面を覆うと共に、前記棒状部材が挿通する挿通孔が形成されたフレームと、
前記棒状部材に取り付けられて前記挿通孔と対面し、前記挿通孔の孔縁と対面する部分に溝部が前記挿通孔の孔縁に沿って断続的に形成された緩衝ゴムと、を有し、
前記フレームは、前記挿通孔が形成された上壁と、前記上壁と一体に形成され、前記筒体へ連結された周壁と、で構成され、
前記緩衝ゴムは、前記上壁の上面に設けられたゴム板である防振装置。
【請求項3】
前記フレームの内側には、前記棒状部材の外周面から径方向へ突出すると共に、前記緩衝ゴムで被覆されたストッパーが形成されてい請求項1又は請求項2に記載の防振装置。
【請求項4】
一端部が、振動発生部及び振動受部の何れか一方へ取り付けられる棒状部材と、
前記棒状部材の他端部の外周側に設けられる共に、振動発生部及び振動受部の何れか他方へ取り付けられる筒体と、
前記筒体の内周面と前記棒状部材の外周面とを弾性変形可能に連結するゴム弾性体と、
前記筒体の外周面に固定され、前記筒体の軸方向の端面を覆うと共に、前記棒状部材が挿通する挿通孔が形成されたフレームと、
前記棒状部材に取り付けられて前記挿通孔と対面し、前記挿通孔の孔縁と対面する部分に溝部が形成された緩衝ゴムと、を有し、
前記緩衝ゴムは、前記挿通孔の孔壁と対面するように前記棒状部材に取り付けられた筒部と、前記挿通孔の孔縁と対面する前記筒部の外周面に形成された環状の溝部と、を備える防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン(振動発生部)と車体(振動受部)との間に設けられる防振装置として、エンジン及び車体の一方へ取り付けられる棒状部材と、エンジン及び車体の他方へ取り付けられる筒体と、棒状部材と筒体とを弾性変形可能に連結するゴム弾性体と、で構成された防振装置がある。また、棒状部材が挿通する挿通孔が形成されたフレームを筒体の外側に形成し、このフレームと棒状部材とを緩衝ゴムで連結した防振装置がある(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかしながら、棒状部材がフレームに対して相対移動する度に、棒状部材に連結された緩衝ゴムが変形して、挿通孔の孔縁に繰り返し接触し、緩衝ゴムが損傷する虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−252447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事項を考慮し、緩衝ゴムが損傷するのを抑制する防振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の防振装置は、一端部が、振動発生部及び振動受部の何れか一方へ取り付けられる棒状部材と、前記棒状部材の他端部の外周側に設けられる共に、振動発生部及び振動受部の何れか他方へ取り付けられる筒体と、前記筒体の内周面と前記棒状部材の外周面とを弾性変形可能に連結するゴム弾性体と、前記筒体の外周面に固定され、前記筒体の軸方向の端面を覆うと共に、前記棒状部材が挿通する挿通孔が形成されたフレームと、前記棒状部材に取り付けられて前記挿通孔と対面し、前記挿通孔の孔縁と対面する部分に環状の溝部が形成された緩衝ゴムと、を有し、前記フレームは、前記挿通孔が形成された上壁と、前記上壁と一体に形成され、前記筒体へ連結された周壁と、で構成され、前記緩衝ゴムは、前記上壁の上面に設けられたゴム板である
【0007】
の防振装置では、棒状部材の一端部、振動発生部及び振動受部の一方へ取り付けられている。また、棒状部材の他端部の外周側には、振動発生部及び振動受部の何れか他方へ取り付けられる筒体が設けられている。さらに、筒体の内周面と棒状部材の外周面とは、ゴム弾性体によって弾性変形可能に連結されている。このため、振動発生部から防振装置へ振動が入力されると、ゴム弾性体が弾性変形し、振動を減衰吸収する。
【0008】
また、筒体の外周面には、筒体の軸方向の端面を覆うフレームが固定されており、フレームには、棒状部材が挿通する挿通孔が形成されている。さらに、棒状部材には、挿通孔と対面するように緩衝ゴムが取り付けられており、この緩衝ゴムの挿通孔の孔縁と対面する部分には、溝部が形成されている。これにより、棒状部材がフレームに対して相対移動しても、挿通孔の孔縁と緩衝ゴムとが接触しにくくなり、緩衝ゴムが損傷するのを抑制できる。
【0010】
更に、溝部が環状に形成されている。これにより、挿通孔の全周に亘って、孔縁と緩衝ゴムとが接触しにくくなる。
また、挿通孔が形成された上壁と、上壁と一体に形成された周壁とでフレームを構成している。これにより、振幅が大きい振動が入力されても、確実にゴム弾性体の弾性変形を規制できる。また、上壁の上面にはゴム板が設けられており、フレームより外側の部材が直接フレームへ接触しないため、異音を抑制できる。
【0011】
請求項に記載の防振装置は、一端部が、振動発生部及び振動受部の何れか一方へ取り付けられる棒状部材と、前記棒状部材の他端部の外周側に設けられる共に、振動発生部及び振動受部の何れか他方へ取り付けられる筒体と、前記筒体の内周面と前記棒状部材の外周面とを弾性変形可能に連結するゴム弾性体と、前記筒体の外周面に固定され、前記筒体の軸方向の端面を覆うと共に、前記棒状部材が挿通する挿通孔が形成されたフレームと、前記棒状部材に取り付けられて前記挿通孔と対面し、前記挿通孔の孔縁と対面する部分に溝部が前記挿通孔の孔縁に沿って断続的に形成された緩衝ゴムと、を有し、前記フレームは、前記挿通孔が形成された上壁と、前記上壁と一体に形成され、前記筒体へ連結された周壁と、で構成され、前記緩衝ゴムは、前記上壁の上面に設けられている。
【0012】
の防振装置では、棒状部材の一端部が、振動発生部及び振動受部の一方へ取り付けられている。また、棒状部材の他端部の外周側には、振動発生部及び振動受部の何れか他方へ取り付けられる筒体が設けられている。さらに、筒体の内周面と棒状部材の外周面とは、ゴム弾性体によって弾性変形可能に連結されている。このため、振動発生部から防振装置へ振動が入力されると、ゴム弾性体が弾性変形し、振動を減衰吸収する。
また、筒体の外周面には、筒体の軸方向の端面を覆うフレームが固定されており、フレームには、棒状部材が挿通する挿通孔が形成されている。さらに、棒状部材には、挿通孔と対面するように緩衝ゴムが取り付けられており、この緩衝ゴムの挿通孔の孔縁と対面する部分には、溝部が形成されている。これにより、棒状部材がフレームに対して相対移動しても、挿通孔の孔縁と緩衝ゴムとが接触しにくくなり、緩衝ゴムが損傷するのを抑制できる。
更に、溝部は、挿通孔の孔縁に沿って断続的に形成されている。これにより、環状の溝部が形成されている場合と比べて、緩衝ゴム全体の剛性を確保できる。
また、挿通孔が形成された上壁と、上壁と一体に形成された周壁とでフレームを構成している。これにより、振幅が大きい振動が入力されても、確実にゴム弾性体の弾性変形を規制できる。また、上壁の上面にはゴム板が設けられており、フレームより外側の部材が直接フレームへ接触しないため、異音を抑制できる。
【0013】
請求項に記載の防振装置は、請求項1又は請求項2に記載の防振装置であって、前記フレームの内側には、前記棒状部材の外周面から径方向へ突出すると共に、前記緩衝ゴムで被覆されたストッパーが形成されている
【0014】
の防振装置では、棒状部材の外周面から径方向へ突出すると共に、緩衝ゴムで被覆されたストッパーがフレームの内側に形成されている。これにより、振動発生部から振幅が大きい振動が入力されると、ゴム弾性体が大きく弾性変形しようとするが、緩衝ゴムで被覆されたストッパーがフレームに接触して、ゴム弾性体の弾性変形を規制するので、ゴム弾性体の劣化を抑制できる。
【0017】
請求項に記載の防振装置は、一端部が、振動発生部及び振動受部の何れか一方へ取り付けられる棒状部材と、前記棒状部材の他端部の外周側に設けられる共に、振動発生部及び振動受部の何れか他方へ取り付けられる筒体と、前記筒体の内周面と前記棒状部材の外周面とを弾性変形可能に連結するゴム弾性体と、前記筒体の外周面に固定され、前記筒体の軸方向の端面を覆うと共に、前記棒状部材が挿通する挿通孔が形成されたフレームと、前記棒状部材に取り付けられて前記挿通孔と対面し、前記挿通孔の孔縁と対面する部分に溝部が形成された緩衝ゴムと、を有し、前記緩衝ゴムは、前記挿通孔の孔壁と対面するように前記棒状部材に取り付けられた筒部と、前記挿通孔の孔縁と対面する前記筒部の外周面に形成された環状の溝部と、を備える
【0018】
の防振装置では、棒状部材の一端部は、振動発生部及び振動受部の一方へ取り付けられている。また、棒状部材の他端部の外周側には、振動発生部及び振動受部の何れか他方へ取り付けられる筒体が設けられている。さらに、筒体の内周面と棒状部材の外周面とは、ゴム弾性体によって弾性変形可能に連結されている。このため、振動発生部から防振装置へ振動が入力されると、ゴム弾性体が弾性変形し、振動を減衰吸収する。
また、筒体の外周面には、筒体の軸方向の端面を覆うフレームが固定されており、フレームには、棒状部材が挿通する挿通孔が形成されている。さらに、棒状部材には、挿通孔と対面するように緩衝ゴムが取り付けられており、この緩衝ゴムの挿通孔の孔縁と対面する部分には、溝部が形成されている。これにより、棒状部材がフレームに対して相対移動しても、挿通孔の孔縁と緩衝ゴムとが接触しにくくなり、緩衝ゴムが損傷するのを抑制できる。
更に、緩衝ゴムは、挿通孔の孔壁と対面するように棒状部材に取り付けられた筒部を備えており、この筒部の外周面には、挿通孔の孔縁と対面する部分に緩衝の溝部が形成されている。これにより、挿通孔の孔縁と筒部とが接触しにくくなり、緩衝ゴムが損傷するのを抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、上記の構成としたので、緩衝ゴムが損傷するのを抑制する防振装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係る防振装置の斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る防振装置の断面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るスグリを説明するための要部拡大断面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る緩衝ゴムを示す平面図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る取付金具が下方へ移動している状態を示す要部拡大断面図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る取付金具が上方へ移動して、ストッパーとフレームとが接触している状態を示す要部拡大断面である。
図7】本発明の第2実施形態に係るゴム板を示す平面図である。
図8】本発明の第3実施形態に係る防振装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
図を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る防振装置10について説明する。なお、以下の説明において、防振装置10の中心軸をCLとして説明する。
【0022】
本実施形態に係る防振装置10は、振動発生部としてのエンジンと、振動受部としての車体との間に取り付けられるエンジンマウントとして用いられる防振装置10であり、図1に示すように、防振装置10の上部には、防振装置10とエンジン(不図示)とを連結する連結アーム100及びステー102が設けられている。連結アーム100は、水平に延びる肉厚の板状部材であり、連結アーム100の一端部は、六角ボルト104により、防振装置10を構成する棒状部材としての取付金具12に螺子止めされている(図2参照)。また、連結アーム100の他端部は、六角ボルト等により、エンジンに固定される。
【0023】
ステー102は、防振装置10の上部に位置するフレーム18に一端部が溶接された金属製の板状部材であり、ステー102の他端部は、防振装置10の外側へ湾曲した湾曲部102Aとなっている。この湾曲部102Aには、貫通孔102Bが形成されており、貫通孔102Bへ六角ボルト等が挿入されて、ステー102とエンジンとが連結される。
【0024】
防振装置10の下部には、円筒状の固定部材106が取り付けられており、この固定部材106を両側から挟むようにして、2つの脚部108が固定部材106の外周面に溶接されている。また、脚部108は、六角ボルト等により車体(不図示)へ固定されて、防振装置10と車体とが連結される。このようにして、防振装置10が車体とエンジンとの間に取り付けられる。
【0025】
図2に示すように、防振装置10は、主として、連結アーム100が取り付けられる取付金具12と、防振装置10の下部に位置し、取付金具12の外周側に設けられた筒体14と、取付金具12と筒体14とを弾性変形可能に連結するゴム弾性体16と、筒体14の外周面に固定されて、ゴム弾性体16を囲うフレーム18と、フレーム18の上面に設けられた緩衝ゴムとしてのゴム板20と、で構成されている。
【0026】
取付金具12は、スチール等の金属で形成された棒状の部材であり、防振装置10の中心軸CL上に沿って鉛直に延びている。また、取付金具12の軸方向の一端部には、開口12Aが形成されており、取付金具12の内部には、開口12Aから軸方向に雌ネジ部12Bが形成されている。ここで、連結アーム100の貫通孔100Aに挿入された六角ボルト104を雌ネジ部12Bに挿入して螺子止めすることで、連結アーム100が取付金具12へ取り付けられる。
【0027】
取付金具12の軸方向の中間部には、取付金具12の外周面から径方向に突出したストッパー13が形成されている。ストッパー13は、中心軸CL周りに四方に突出しており、フレーム18と接触しない程度の長さで形成されている。また、ストッパー13は、後述する被覆ゴム17で被覆されている。なお、ストッパー13は、断面形状が円形の環状突起でもよい。
【0028】
取付金具12の他端部の外周側には、スチール等の金属で形成された筒体14が設けられている。筒体14は、取付金具12と同軸的に設けられ、両端が開口した肉薄の円筒体であり、軸方向の中間部に形成された段差部22より上方に位置する大径筒部22Aと、段差部22より下方に位置し、大径筒部22Aより小径の小径筒部22Bとで構成されている。
【0029】
大径筒部22Aの内周面、及び取付金具12の外周面には、ゴム弾性体16が加硫接着されている。ゴム弾性体16は、天然ゴム等で形成されており、筒体14と取付金具12とを弾性変形可能に連結している。また、ゴム弾性体16は、取付金具12の下端部から、軸方向の上方に延在しており、ストッパーを覆う被覆ゴム17へ連結されている。
【0030】
小径筒部22Bの内周面には、ゴム弾性体16の下端部から下方へ延出された肉薄で円筒状の肉薄ゴム24が加硫接着されており、この肉薄ゴム24を介して、中空で円環状のオリフィス形成金具26が嵌合されている。また、小径筒部22の下端部は、径方向内側にカシメられている。
【0031】
オリフィス形成金具26は、オリフィス形成金具26の上面及び内周面を構成し、断面形状が逆L字状の第1金具26Aと、オリフィス形成金具26の外周面及び下面を構成する第2金具26Bと、で構成されており、オリフィス形成金具26の内周面となる第1金具26Aには、天然ゴム等で形成された円板状のメンブランゴム28が全周に亘って加硫接着されている。これにより、第1金具26A、メンブランゴム28、及びゴム弾性体16とで囲まれた主液室30が形成されている。
【0032】
メンブランゴム28の下方には、下部が開口したハット状のダイヤフラムゴム32が設けられている。このダイヤフラムゴム32の外周端部には、ダイヤフラムゴム32と一体に形成されて上方に延出した延出部32Aが設けられており、延出部32Aは、第2金具26Bに加硫接着されている。これにより、ダイヤフラムゴム32、メンブランゴム28、及び延出部32Aとで囲まれた副液室34が形成されている。
【0033】
オリフィス形成金具26の内部には、第1金具26Aと第2金具26Bとで囲まれたオリフィス通路36が形成されており、オリフィス通路36の一端側は、主液室30に開口しており、オリフィス通路36の他端側は、副液室34に開口している(開口部は不図示)。このため、主液室30と副液室34とは、オリフィス通路36を介して互いに連通している。また、主液室30、及び副液室34には、水や粘性オイル等の液体が封入されている。
【0034】
以上のように形成された筒体14は、フレーム18の周壁18Bに固定されている。フレーム18は、筒体14の軸方向の端面を覆い、ストッパー13及び被覆ゴム17を囲むように形成されており、ストッパー13の上面と対面する位置に設けられた上面視にて矩形状の上壁18Aと、上壁18Aの3辺の外周端部から下方へ延出し、筒体14に固定された周壁18Bと、で構成されている。また、上壁18Aの残りの1辺には、ステー102が溶接されている。
【0035】
上壁18Aの中央部には、円形の挿通孔38が形成されており、この挿通孔38には、取付金具12が挿通されている。周壁18Bの軸方向の中間部よりやや下方には、段差部40が形成されており、周壁18Bの段差部40より下側は、円筒状に形成されている。この円筒状の周壁18Bに対して、下方から筒体14が圧入されて固定されている。また、周壁18Bの外周面には、固定部材106が溶接されている(図1参照)。
【0036】
上壁18Aの上面には、挿通孔38と対面する位置にゴム板20が加硫接着されている。ゴム板20は、平板状のゴム材であり、ゴム板20を厚み方向に貫通する貫通孔42が形成されている(図4参照)。この貫通孔42には、取付金具12が貫通しており、貫通孔42の孔壁が取付金具12の外周面に加硫接着され、ゴム板20と取付金具12とが連結されている。
【0037】
図3に示すように、ゴム体20の裏面には、フレーム18の上壁18Aに形成された挿通孔38の孔縁38Aと対面する部分に、溝部としてのスグリ20Aが形成されている。スグリ20Aは、断面が半円状であり、図4に示すように、ゴム板20の表面をくり抜いて環状に形成されている。スグリ20Aの深さは、ゴム板20の厚みの半分よりやや浅く、スグリ20Aの幅は、深さの2倍程度の幅となっている。さらに、スグリ20Aの周縁部は、角のないR形状となっている。
【0038】
図3に示すように、ストッパー13の上面を覆う被覆ゴム17には、挿通孔38の孔縁38Aと対面する部分にスグリ17Aが形成されている。スグリ17Aは、ゴム板20のスグリ20Aと同様に、断面が半円状に形成されており、被覆ゴム17の厚みの1/4程度の深さで形成されている。また、スグリ17Aの周縁部は、角のないR形状となっている。
【0039】
なお、本実施形態では、ストッパー13の上面を覆う被覆ゴム17と、取付金具12の外周面との間に隙間が設けられているが、隙間を設けずに取付金具12の外周面に加硫接着してもよい。また、ストッパー13を形成せずに、取付金具12の外周面から径方向へ突出するように被覆ゴム17を取付金具12に加硫接着してもよい。
【0040】
次に、本実施形態に係る防振装置10の作用について説明する。エンジンが作動すると、エンジンから発生する振動が図2に示す連結アーム100を介して取付金具12へ入力され、ゴム弾性体16を弾性変形させる。ゴム弾性体16が弾性変形することで、ゴム弾性体16の内部摩擦に基づく制振機能により、振動を減衰吸収する。また、ゴム弾性体16が弾性変形することによって主液室30が拡縮する。主液室30が拡縮することで、オリフィス通路36を通して主液室30と副液室34との間で液体が相互に流通する。これにより、オリフィス通路36内で液注共振が生じて、防振効果が得られる。
【0041】
ここで、高周波の振動が入力されると、オリフィス通路36内の流通抵抗が増大し、オリフィス通路36が目詰まりするが、メンブランゴム28が弾性変形して、主液室30及び副液室34の内圧変動を抑制する。この結果、高周波数の振動が生じても、防振特性が低減されずに維持され、防振装置10の効果を発揮できる。
【0042】
このように、エンジンからの振動により取付金具12がフレームに対して相対移動しているとき、図5及び図6に示すように、取付金具12に加硫接着されたゴム板20は、取付金具12の相対移動と共に繰り返し変形する。図5の状態では、取付金具12がフレーム18に対して下方へ相対移動するのに伴い、ゴム板20の径方向の中央部が下方へ撓むように変形する。このとき、ゴム板20には、フレーム18の上壁18Aに形成された挿通孔38の孔縁38Aと対面する部分に、スグリ20Aが形成されているので、孔縁38Aとゴム板20とが接触しにくくなり、ゴム板20が損傷するのを抑制できる。
【0043】
一方、エンジンから過大な振幅の振動が入力されて、取付金具12がフレーム18に対して軸方向に大きく移動した場合、図6に示すように、ストッパー13が、フレーム18の上壁18Aと当接することで、フレーム18に対する取付金具12の相対移動を制限する。これにより、ゴム弾性体16が大きく変形して劣化するのを抑制できる。また、ストッパー13は、被覆ゴム17で被覆されているので、上壁18Aと接触しても、異音が発生しない。
【0044】
さらに、被覆ゴム17にはスグリ17Aが形成されているので、被覆ゴム17と上壁18Aとが接触しても、挿通孔38の孔縁38Aと被覆ゴム17とは接触しにくくなり、被覆ゴム17が損傷するのを抑制できる。
【0045】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る防振装置50について説明する。なお、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。本実施形態に係る防振装置50は、防振装置50を構成するゴム板52を除いて、図1及び図2に示す第1実施形態に係る防振装置10と同様である。ここで、図7に示すように、ゴム板52の外形は、第1実施形態に係るゴム板20の外形と同じ形状であり、厚み方向に貫通する貫通孔54が形成されている。
【0046】
また、フレーム18の上壁18Aに形成された挿通孔38の孔縁38Aと対面する部分には、孔縁38Aに沿って断続的にスグリ52Aが形成されている。本実施形態では、孔縁38Aに沿って等間隔で8つのスグリ52Aが形成されているが、スグリ52Aの間隔、個数については、特に制限しない。さらに、スグリ52Aの深さ、及び幅は、第1実施形態に係るゴム板20に形成されたスグリ20Aと同様の寸法で形成されている。
【0047】
本実施形態に係る防振装置50では、孔縁38Aに沿って連続してスグリが形成されている場合と比べて、ゴム板52の剛性の低下を抑制できる。これにより、ゴム板52の長寿命化を図ることができる。また、孔縁38Aと対面する部分にスグリ17Aが形成されているので、孔縁38Aとゴム板52との接触面積を低減することができ、ゴム板52の損傷を抑制できる。
【0048】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る防振装置について説明する。なお、第1実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。図8に示すように、本実施形態に係る防振装置70は、棒状の取付金具72を備えている。取付金具72は、防振装置70の中心軸CL上に形成されており、取付金具72には、ストッパー13は形成されていない。また取付金具72の上部には径方向に貫通した取付孔74が形成されており、エンジンに連結された連結アーム100が固定されている。
【0049】
取付金具72の下部の外周側には、筒体78が形成されている。筒体78は、軸方向両端部が開口した部材であり、筒体78の下部には、主液室79が形成されている。また、筒体78の内周面と取付金具72の外周面とは、ゴム弾性体80により弾性変形可能に連結されている。
【0050】
筒体78より外側には、筒体78の下方に形成されたダイヤフラムゴム82から延びた延出部82Aを介して、外筒84が形成されている。外筒84は、筒体78と同様に軸方向両端部が開口した円筒状の部材であり、外筒84の下部には副液室85が形成されている。また、筒体78の外周面と外筒84の内周面との間には、オリフィス流路87が形成されており、主液室79及び副液室85内の流体は、オリフィス流路87を介して相互に流通する。
【0051】
外筒84の外側には、外筒84の外周面を包み込むようにフレーム86が形成されている。フレーム86は、軸方向両端部が開口した円筒状の部材であり、フレーム86の上端部は、筒体78の上端面を覆うように縮径して、上方に延びており、取付金具72を挿通する挿通孔88を形成している。また、フレーム86の下端部は、径方向外側に湾曲している。
【0052】
フレーム86の外側には、フレーム86の上部の外周面を囲むようにストッパゴム90が形成されている。ストッパゴム90は、径方向の中央部に貫通孔92が形成された逆カップ状のゴム体であり、挿通孔88の孔壁と対面して形成された肉厚の接着部90Aと、接着部90Aから径方向外側へ延出され、さらに下方へ延びてフレーム86の外周面を囲む延出部90Bとで構成されている。
【0053】
接着部90Aは、軸方向に延びた円筒状の部位であり、接着部90Aの内周壁、すなわち貫通孔92の孔壁は、取付金具72の外周面に加硫接着されている。このため、ストッパゴム90は、取付金具72と共に相対移動する。延出部90Bは、フレーム86から所定の間隔を空けて形成されており、フレーム86とは接触となっている。
【0054】
ここで、接着部90Aの外周面には、挿通孔88の孔縁88Aと対面する部分に、スグリ90Cが形成されている。スグリ90Cは、断面形状が半円状で、接着部90Aの外周面に連続して環状に形成されており、スグリ90Cの深さは、接着部90Aの厚みの1/4程度の深さとなっている。
【0055】
次に、本実施形態に係る防振装置70の作用について説明する。エンジンから過大な振幅の振動が入力されて、取付金具72が軸方向に大きく移動すると、ストッパゴム90とフレーム86とが接触して、ゴム弾性体80が大きく弾性変形するのを抑制する。これにより、ゴム弾性体80が損傷しにくくなり、防振装置70の長寿命化を図ることができる。
【0056】
一方、車両に対して幅方向に荷重が作用すると、ストッパゴム90及びフレーム86が径方向に相対移動して、フレーム86の挿通孔88と接着部90Aとが接触するが、スグリ90Cにより挿通孔88の孔縁88Aと接着部90Aとが接触しにくくなる。これにより、接着部90Aが孔縁88Aから傷付けられて損傷するのを抑制できる。
【0057】
なお、本実施形態では、ストッパゴム90の延出部90Bの肉厚が薄いため、延出部90Bにスグリが形成されていなかったが、延出部90Bの肉厚を厚くして、フレーム86の挿通孔88の孔縁88Aと対面する部分に、スグリを形成してもよい。この場合、延出部90Bと孔縁88Aとが接触しにくくなり、ストッパゴム90の損傷を抑制できる。
【0058】
以上、本発明の第1〜3の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。例えば、スグリの断面形状を半楕円状、又は矩形状に形成してもよい。
【符号の説明】
【0059】
10 防振装置
12 取付金具(棒状部材)
13 ストッパー
14 筒体
16 ゴム弾性体
17 被覆ゴム(緩衝ゴム)
17A スグリ(溝部)
18 フレーム
18A 上壁
18B 周壁
20 ゴム板(緩衝ゴム)
20A スグリ(溝部)
38 挿通孔
38A 孔縁
50 防振装置
52 ゴム板(緩衝ゴム)
52A スグリ(溝部)
70 防振装置
72 取付金具(棒状部材)
78 筒体
80 ゴム弾性体
86 フレーム
88 挿通孔
88A 孔縁
90 ストッパゴム
90C スグリ(溝部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8