(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴システム乃至磁気共鳴断層撮影システムにおいては、被検体は通常、基本界磁石システムを用いて、例えば3又は7テスラという比較的高い基本磁場(「B
0磁場」とも呼ばれる)に曝されている。さらに勾配システムを用いて、磁場勾配が印加される。それから高周波送信システムを介して、適切なアンテナ装置を用いて高周波の励振信号(高周波信号)が送信され、これによって、この高周波場によって共鳴励振された所定の原子の核スピンが、基本磁場の磁力線に対して規定のフリップ角だけ傾くようになる。この高周波励振、乃至、その結果として生じるフリップ角分布を、以下では、核磁化、又は、省略して「磁化」とも呼ぶ。核スピンの緩和時には、高周波信号、いわゆる磁気共鳴信号(「B
1磁場」とも呼ばれる)が放射され、これらの信号は、適切な受信アンテナによって受信された後、さらに処理される。最後に、こうして獲得されたローデータから、所期の画像データを再構築することができる。核スピン磁化のための高周波信号の送信は、いわゆる「全身コイル」(「ボディコイル」とも呼ばれる)を使用して、又は、しばしば患者又は被検体に適用される局所コイルも使用して、実施される。全身コイルの典型的な構造は、複数の送信ロッドからなるバードケージ・アンテナである。これらの送信ロッドは長手軸に対して並列に延在しており、検査時に内部に患者が収容されている断層撮影装置の、患者室の周囲に配置されている。これらのアンテナロッドは、端部側においてそれぞれリング状に容量的に相互接続されている。
【0003】
従前では、全身アンテナを「CPモード(円偏極モード)」において作動するのが通常であった。このために、送信アンテナの全てのコンポーネントに対して、例えばバードケージ・アンテナの全ての送信ロッドに対して、ただ1つの時間的な高周波信号が与えられる。この場合には通常、同一の振幅を有するパルスが、個別のコンポーネントへと、送信コイルの形状に適合したシフトによって位相オフセットされて送信される。例えば16個のロッドを有するバードケージ・アンテナの場合には、これらのロッドは、それぞれ、22.5°位相シフトされた同一のHF振幅信号によってオフセットして制御することができる。その後の結果は、x/y平面において、つまりz方向に延在するバードケージ・アンテナの長手軸に対して垂直に円偏極された高周波場である。
【0004】
また、送信すべき高周波信号、つまり到着している高周波パルスのシーケンス(本願では「基準パルス列」と呼ぶ)の振幅及び位相を、それぞれ個々に、複素送信スケーリングファクタによって修正することも可能である。この場合、従来通り、アンテナを「CPモード」で駆動することも可能である。つまり、全ての送信チャネルにおける振幅を同一の高さで選択して、送信コイルの形状に適合した位相シフトだけを提供することも可能である。さらに、検査対象に応じていわゆる「EPモード(楕円偏極モード)」が使用されることも多く、この場合には、高周波場は、x/y平面において円偏極ではなく楕円偏極されている。どのモードを使用するかは、通常、励振すべき身体領域の形状に依存している。円筒対称に近い対称の場合、つまり例えば頭部領域の撮影時には、CPモードが選択されることが多く、これに対して、例えば胸部又は腹部領域の検査のように楕円形状に近い場合には、EPモードの選択が好まれる。EPモードの意義は、非円対称の身体形状によって引き起こされるB
1磁場の不均一性を補償することである。
【0005】
また、このようなマルチチャネルの高周波送信システムのいわゆる「B
1シミング」を実施することも可能である。この場合には、個々の送信スケーリングファクタが、患者個別の調整に基づいて、従来の標準的なCPモード又はEPモードに比べて特に均一な励振を達成するという目的を持って計算される。
【0006】
この場合、送信スケーリングファクタを計算するためにオプティマイザが使用され、オプティマイザは、完全に均一な所期の目標磁化mと、理論的に達成される実際磁化A・bとの大きさの差を最小化する:
【数1】
【0007】
上記のAは、複素線形方程式からなるシステムから形成された、いわゆる計画行列であり、この方程式には、特に、個々の送信チャネル(アンテナロッド)の3次元送信プロフィールと、現存のB
0磁場分布とが入る。この計画行列は、例えばW. Grissom et al.著の『Spatial Domain Method for the Design of RF Pulses in Multicoil Parallel Excitation』Mag. Res. Med. 56, 620-629, 2006に記載されている。b(t)は、並列に送信すべき高周波曲線のベクトルであり、b
C(t)=SF
C・b
R(t)であり、但し、このSF
Cは、チャネルC=1,・・・,Nに対する複素スケーリングファクタである。
【0008】
方程式(1)の解、つまり、方程式(1)にて規定される「目的関数」の最小値が発見されると、その結果として、所期のスケーリングファクタSF
1,SF
2,・・・,SF
nが存在する。
【0009】
方程式(1)のように、目的関数の拡張として、従来、いわゆるチホノフ正則化(方程式(1)では目的関数における第2被加数)が使用される。このチホノフ正則化によれば、できるだけ小さい高周波振幅を含む小さいベクトルbに対する解がより好まれる。高周波電圧は2乗で出力電力に影響するので、B1シミングによって、患者の高周波曝露を低減することができる。大き過ぎる高周波曝露は患者を傷つけかねないので、高周波曝露は制限しなければならない。従って通常、患者の高周波曝露は、一方では、出力すべき高周波パルスを計画する際に事前に計算され、高周波パルスが所定の制限値に達しないように選択される。ここでの高周波曝露は、以下では、高周波入射によって誘導された物理的な曝露のことを意味し、供給された高周波エネルギそれ自体を意味するわけではない。高周波曝露に対する典型的な尺度は、いわゆるSAR値(SAR = Specific Absorption Rate[比吸収率])であり、所定の高周波パルス出力によってどれくらいの生物学的曝露が患者に対して作用するかを、W/kgで表したものである。患者に対する世界基準のSAR又は高周波曝露に対しては、例えばIEC規格による"First Level"の4W/kgという規格化された制限値が当てはまる。付加的に、事前計画の他に、検査中の患者のSAR曝露が、磁気共鳴システムにおける適切な安全装置によって継続的に監視され、高周波曝露が所与の規格を上回る場合には測定が変化又は中断される。しかしながら、測定の中断を回避するために、できるだけ正確な事前計画が重要である。なぜなら、測定の中断によって改めて測定する必要性が生じてしまうからである。
【0010】
方程式(1)におけるファクタβは、自由パラメータ(いわゆるチホノフ・パラメータ)であり、解を見つける際にこの自由パラメータを調整することよって、できるだけ良好な均一性とできるだけ小さい高周波曝露との間での選択が可能となる。
【0011】
また、高周波曝露が局所的に非常に異なり得ることが知られている。このことは、B
1シミングによって高周波パルスが個々のチャネルにおいて異なる振幅及び位相を以て送信されることに起因しており、これらのパルスの重畳、つまり検査対象における場所から場所での異なる相互の打ち消し合い又は増幅は、もはやささいなことではない。このように、高周波曝露が他の領域よりも局所的に格段に高くなっている領域がいくつか存在する。
【0012】
従って比較的新しい方法においては、目的関数において、いわゆる局所的高周波曝露の監視が実施され、ここでは、特に規定された「仮想観察点(VOPs, Virtual Oberservation Points)」における高周波曝露が理論的に計算される。ここでの局所的高周波曝露とは、ある場所又はある所定の体積単位において生じる高周波振幅を意味するのではなく、ここから結果として得られるエネルギ曝露、乃至、高周波入射によって誘導される生理的曝露を意味し、例えば、所定の局所的体積、例えばVOPにおけるSED値(SED = Specific Energy Dose[比エネルギ線量])又はSAR値の形態で表される。目的関数において利用される局所的高周波曝露値は、この場合、例えば1つ又は複数の局所的SAR値又はSED値に基づくことができる。このことは、例えば適切な目的関数を用いた高周波パルスb
C(t)の自由な個別的決定に関して、ドイツ連邦共和国特許出願第102010015044号公開広報に記載されており、以下ではこの文献を、このようなVOP(上記文献では"Hot-Spots"と呼ばれている)の計算に関して参照することができる。
【0013】
しかしながら、方程式(1)による目的関数を、チホノフ正則化において局所的高周波曝露の監視と組み合わせて使用する場合には、パラメータβの調整時に、高周波曝露のおおよその定性的な予測も、画質のおおよその定性的な予測、例えば実際磁化と目標磁化との差の予測も不可能であり、ただ最適化の際に、画質により重きを置くか、又は、高周波曝露の低減により重きを置くかが可能なだけである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許出願第102010015044号公開広報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】W. Grissom et al.著『Spatial Domain Method for the Design of RF Pulses in Multicoil Parallel Excitation』Mag. Res. Med. 56, 620-629, 2006
【0016】
従って本発明の課題は、高周波曝露及び/又は画質の予測をより良好にする、B
1シミングが可能な、従来技術に取って代わる制御方法、並びに、適切なパルス最適化装置を提供することである。
【0017】
この課題は、請求項1に記載の方法、及び、請求項10に記載のパルス最適化装置によって解決される。
【0018】
−冒頭に説明したように−原則的に独立して制御可能な複数の高周波チャネルを備えた磁気共鳴システムを駆動するための本発明の方法においては、前記高周波チャネルを介して、動作中に並列に高周波パルス列が送信され、通常通り、複数の前記高周波送信チャネルに対して、有利には全ての高周波送信チャネルに対して、1つの共通の基準パルス列が予め決められている。さらに、前記高周波送信チャネルに対する前記高周波パルス列を前記基準パルス列に基づいて計算するために、例えば上述したように、関連する高周波送信チャネルに対する基準パルス列によってスケーリング乃至乗算するために、高周波パルス最適化方法において、予め決められた目標磁化を考慮して、前記高周波送信チャネルの各々に対して1つの個別の複素送信スケーリングファクタが求められる。
【0019】
しかしながら本発明によれば、前記送信スケーリングファクタを計算する際に、高周波パルス最適化方法において、少なくとも第1最適化モードでは、目標磁化差に依存せずに(に関係なく)目的関数が作成される。この目標磁化差はここでも理論的に、最適化において求められた高周波パルスによって達成された実際磁化と、目標磁化との差に対する尺度であり、方程式(1)による従来の目的関数における第1項に相当している。つまりこれは画質条件であり、所期の磁化をどれくらい良好に達成することができるかを表すものである。
【0020】
その代わりに、高周波パルス最適化方法において、この目標磁化差は、境界条件関数によって考慮される。
【0021】
この第1最適化モードでは、有利には、例えば目的関数が高周波曝露のみに依存するように、該目的関数を作成することができる。これに関する例は、後に図面に基づいて説明する。換言すると、少なくともこの第1動作モードにおいては、画質条件と、高周波曝露条件とを、有利には完全に分離することができるのである。
【0022】
後に再度示すが、驚くべきことに、このようにして一方では、比較的正確に予測可能な画質を達成できると同時に、高周波曝露も格段に低減できるということが判明した。
【0023】
このためにはただ、目的関数と境界条件関数とを適切に作成し、境界条件関数も考慮することができるいわゆる「ソルバー(Solver)」、つまり目的関数を解くための最適化プログラムを使用すればよいだけである。しかしながら、このようないわゆる「制約付きソルバー(Constrained Solver)」は、当業者には公知である。このような制約付きソルバーを有する適切なプログラムモジュールは、例えば、アメリカ合衆国NatickにあるThe Mathworks社製Mathwork Optimization Toolboxによる"fmincon"オプティマイザのInterior-Pointサブアルゴリズムである。しかしながら基本的に、他のあらゆる制約付きソルバーを使用することが可能である。
【0024】
これに従って、複数の高周波送信チャネルを備えた磁気共鳴システムのために適したパルス最適化装置は、高周波パルス最適化方法において、少なくとも第1最適化モードでは、目標磁化差に依存せずに目的関数を作成し、その代わりに、高周波パルス最適化方法において、目標磁化差を境界条件関数によって考慮するよう構成されている。
【0025】
相応にして、本発明の磁気共鳴システムは、複数の高周波送信チャネル、並びに、例えば勾配システムや基本界磁石等のようなさらなる通常のシステムコンポーネント、並びに、所期の測定を実施するために高周波送信チャネルを介して並列に高周波パルス列を送信するよう構成された制御装置の他に、本発明のパルス最適化装置も有している。
【0026】
この場合、パルス最適化装置は、特に磁気共鳴システムの制御装置の一部とすることができる。しかしながらパルス最適化装置は、基本的に、例えばネットワークを介して制御装置と接続された外部のコンピュータ、例えばユーザ端末、又は、計算集約的なプロセスを外注するためのその他のコンピュータの中に位置することも可能である。
【0027】
有利には、パルス最適化装置の少なくとも大部分が、ソフトウェアの形態で構成されている。従って本発明は、パルス最適化装置のメモリ、及び/又は、制御装置のメモリに直接ロード可能な、プログラムコード部分を有するコンピュータプログラムも含み、パルス最適化装置及び/又は制御装置において前記プログラムが実行される場合に、本発明の方法の全てのステップが実行される。このようなソフトウェアによる実現の利点は、送信スケーリングファクタを求めるため、乃至、例えばB
1シミングのために使用される従来の装置、例えば、既存の磁気共鳴システムの制御装置も、本発明の方法によってB
1シミングを実施するために、プログラムの実行によって適切に修正することができることである。
【0028】
従属請求項並びに以下の説明は、発明の特に有利な発展形態及び実施形態を含み、特に、1つのカテゴリの請求項を、他の発明カテゴリの従属請求項と同様に展開することもできる。
【0029】
有利には、パルス最適化装置は、第2最適化モードでも作動することができるように構成されている。高周波パルス最適化方法のこの第2最適化モードにおいては、目的関数は、従来通り、目標磁化差を含むように作成される。しかしながらここでは目的関数は、検査対象の高周波曝露値は含まず、そのかわりに、境界条件関数によって高周波曝露値が考慮されるように構成されている。この第2最適化モードにおいても、有利には、目標磁化差と高周波曝露条件とが、異なる関数に完全に分離されるように構成されている。
【0030】
このために特に有利には、高周波パルス最適化方法の開始前又は開始時に、最適化モードインジケータが検出され、それから、高周波パルス最適化方法は、この最適化モードインジケータに基づいて、第1最適化モード又は第2最適化モードに従って実施される。この最適化モードインジケータは、例えば、磁気共鳴システムのパルス最適化装置乃至制御装置の適切なインターフェースによって検出することができる。ここでは特に、ユーザインターフェースとすることができ、ユーザインターフェースを介して操作者は最適化モードインジケータを予め決めることができる。択一的に、最適化モードインジケータを、制御プロトコルによって予め決めることも可能である。制御プロトコルには、実施すべき測定のための大多数の他のパラメータも含まれており、制御プロトコルは、測定経過中に次から次に自動的に処理される。
【0031】
有利には、目的関数又は境界条件関数において考慮される高周波曝露値は、局所的高周波曝露値とすることができる。局所的高周波曝露値では、例えばドイツ連邦共和国特許出願第102010015044号公開広報において説明されるように、所定の場所に局所的に存在する高周波曝露が考慮される。しかしながらこのことは、その代わりとして例えば、高周波パルス最適化方法において、患者全身に亘って平均される広域的な高周波曝露値、又は、局所的高周波曝露値並びに広域的曝露値の両方を考慮する組み合わせ型の高周波曝露値も、目的関数又は境界条件関数に使用される、ということを排除するわけではない。
【0032】
境界条件関数は、有利には、所定のパラメータのパラメータ値と、相対的な基準パラメータ値との許容差を規定するように選択されている。
【0033】
この際、許容差をゼロに予め決めておくことができる。つまり、境界条件関数において予め決められた相対的な基準パラメータ値は、正確に維持しなければならない。しかしながら例えば、境界条件関数において監視されるパラメータの、最適化方法において達成されたパラメータ値が、常に基準パラメータ値を下回らなければならない、等のような設定も可能である。
【0034】
例えば、境界条件関数において目標磁化差が考慮される第1最適化モードでは、このパラメータ値は、実際の目標磁化差である。この場合には、目標磁化差と、相対的な基準目標磁化差との最大差が規定される。
【0035】
これに対して、境界条件関数において高周波曝露値が考慮される第2最適化モードでは、高周波曝露値と、相対的な基準高周波曝露値との最大差が規定される。
【0036】
ここでの相対的な基準パラメータ値、つまり、相対的な基準目標磁化差、乃至、相対的な基準高周波曝露値は、例えば、磁気共鳴システムの他の動作モードに関連し得る値と理解すべきである。B
1シミングの範囲内では、送信スケーリングファクタだけが求められるが、実際の目標磁化、及び、特に高周波曝露は、依然として、B
1シミングにおいて変化不可能な基準パルス列に依存しているので、その点においてこのことは意義深い。従って有利には、基準パラメータ値は、関連するパラメータの、基本励振モードにおいて達成可能なパラメータ値に基づいて規定される。ここでの「基本励振モード」とは、B
1シミングのない従来のプロセスによる関連する検査のためにそれぞれ用いられる標準モードを意味しており、つまり例えば、CPモードでの頭部検査の場合、及び、EPモードでの腹部検査の場合である。換言すれば、ここでも常に、同一の基準パルス列に基づく送信チャネルにおける高周波パルス列によって達成可能な値との比較が実施され、しかしながら、関連する検査に対する基本励振モードに応じた送信スケーリングファクタとの比較が実施される。
【0037】
このために有利には、高周波パルス最適化方法の開始前又は開始時に、相対値が検出され、それからこの相対値に基づいて、関連するパラメータの、基本励振モードにおいて達成可能なパラメータ値に関連して、基準パラメータ値が規定される。このような相対値は、どの割合で、所定の相対的な基準パラメータ値を達成すべきかを定めるために、例えばファクタ又は百分率による記載とすることができる。つまり例えば、通常であればCPモードで実施していたはずの、頭部領域の測定時において、少なくともこのCPモードと同程度に目標磁化が達成されるよう、B1シミングを実施すべきである、ということを相対値によって境界条件を用いて予め定めることができる。例えば第2最適化モードにおいて、高周波曝露が、通常のCPモードよりも例えば40%低くあるべきであると定めることも可能である。これは、境界条件関数によってコントロールされ、その上さらに、画質に関して最適化が実施される。
【0038】
本発明の方法は、今日の多くのクリニックに既存のシステムにて当てはまるように、例えばバードケージ・アンテナに互いに90°に配置された2つの給電点だけが設けられている、簡単な2チャネルシステムにおいて適用する場合に、著しい強みを有することが判明している。本発明によって提案されるわずかな変更によって、このようなシステムにおいても格段の改善を達成することができる。しかしながら、送信チャネルの数は、本発明によって制限されていない。
【0039】
以下、本発明を、添付図面を参照しながら実施例に基づいて再度より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、本発明の磁気共鳴装置の1つの実施例の概略図である。
【
図2】
図2は、B
1シミングを説明するための図である。
【
図3】
図3は、本発明の方法の1つの実施例に基づく、考えられるシーケンスを示したフローチャートである。
【
図4】
図4は、第1の最適化モードにおいて本発明の高周波パルス最適化方法を使用して得られた相対的な高周波曝露値と、相対的な目標磁化差とを示す表である。
【
図5】
図5は、第2の最適化モードにおいて本発明の高周波パルス最適化方法を使用して得られた相対的な高周波曝露値と、相対的な目標磁化差とを示す表である。
【0041】
図1には、本発明の磁気共鳴装置1乃至磁気共鳴システムが概略的に示されている。磁気共鳴装置1は、まず、本来の磁気共鳴スキャナ2を含み、磁気共鳴スキャナ2の内部には、検査室8乃至患者トンネル8が設けられている。この患者トンネル8の中へは寝椅子7が進入可能となっており、寝椅子7の上に横たわる患者O又は被検体は、検査中、磁気共鳴スキャナ2の中に配置された磁気システム及び高周波システムに関連して、磁気共鳴スキャナ2内部の所定の位置に寝かせることができる、乃至、測定中に2つの異なる位置の間で移動させることもできる。
【0042】
磁気共鳴スキャナ2の本質的なコンポーネントは、基本界磁石3と、任意の磁場勾配をx、y、z方向に印加するための、磁場勾配コイルを備えた勾配システム4と、全身高周波コイル5である。検査対象Oの中で誘導された磁気共鳴信号は、全身高周波コイル5を介して受信することができ、基本的に、この全身高周波コイル5によって、磁気共鳴信号を誘導するための高周波信号も送信される。しかしながら通常、この信号は、例えば検査対象Oの上又は下に置かれた局所コイル6によって受信される。これら全てのコンポーネントは、当業者には基本的に周知のものであるので、
図1では概略的にのみ図示している。
【0043】
全身高周波コイル5は、ここではいわゆるバードケージ・アンテナの形態で構成されており、N個の個々のアンテナロッドを有する。これらのアンテナロッドは、患者トンネル8に対して並列に延在しており、患者トンネル8の周囲に亘って均等に分布して配置されている。これらの個々のアンテナロッドは、それぞれ端部側で容量的にリング形に接続されている。
【0044】
アンテナロッドは、ここでは個々の送信チャネルS
1・・・S
Nとして、制御装置10によって別個に制御することができる。制御装置10は、制御コンピュータとすることができ、−場合によっては空間的に分離され、かつ、適当なケーブル等で相互接続されている−複数の個々のコンピュータから構成することができる。この制御装置10は、端末インターフェース17を介して端末20と接続されており、端末20を介して、操作者は、装置全体1を制御することができる。本実施例の場合、端末20は、キーボードと、1つ又は複数のスクリーンと、例えばマウス等のような別の入力装置とを備えるコンピュータとして構成されており、操作者は、グラフィカルユーザインターフェースを使用できるようになっている。
【0045】
制御装置10は、特に、複数の部分コンポーネントから構成可能な勾配制御ユニット11を有している。この勾配制御ユニット11を介して、個々の勾配コイルが制御信号SG
x、SG
y、SG
zに接続される。これらの制御信号は勾配パルスであり、これらの勾配パルスは、測定中、予め正確に決められた時間位置に、予め正確に決められた時間推移を有するよう設定される。
【0046】
制御装置10はさらに、高周波送信/受信ユニット12を有する。この高周波送信/受信ユニット12も同じく、複数の部分コンポーネントから構成されており、それぞれ高周波パルスを、個々の送信チャネルS
1・・・S
Nに対して、つまり全身高周波コイル5の制御可能な個々のアンテナロッドに対して個別かつ並列に出力する。高周波送信/受信ユニット12を介して、磁気共鳴信号を受信することも可能であるが、しかしながら通常では、この磁気共鳴信号は、局所コイル6を用いて受信される。この局所コイル6によって受信された信号は、高周波受信ユニット13によって読み取られ、処理される。局所コイル6から高周波受信ユニット13によって受信された信号、又は、全身高周波コイル5から高周波送信/受信ユニット12を用いて受信された信号は、ローデータRDとして、再構築ユニット14へと出力される。再構築ユニット14は、ここから画像データBDを再構築して、これをメモリ16に格納する、及び/又は、操作者が観察できるようにインターフェース17を介して端末20に出力する。画像データBDを、ネットワークNWを介して他の場所に記憶すること、及び/又は、表示して評価することも可能である。
【0047】
勾配制御ユニット11と、高周波送信/受信ユニット13と、局所コイル6用の高周波受信ユニット13は、測定制御ユニット15によってそれぞれ相互調整されて制御される。この測定制御ユニット15は、相応の命令を用いて、適切な勾配制御信号SG
x、SG
y、SG
zによって所期のパルス列GPが出力されるようにし、それと同時に、マルチチャネル・パルス列bが送信されるよう、高周波送信/受信ユニット12を制御する。つまり、同時に、適切な高周波パルスが、個々の送信チャネルS1・・・SNへと、全身高周波コイル5の個々の送信ロッドへと出力されるよう、高周波送信/受信ユニット12を制御する。さらに、局所コイル6における磁気共鳴信号を、適切な時点に、高周波受信ユニット13によって読み出して処理するよう、乃至、場合によっては、全身高周波コイル5における信号を、適切な時点に、高周波送信/受信ユニット12によって読み出して処理するよう、手配しなければならない。測定制御ユニット15は、制御プロトコルPにおいて予め決められた制御シーケンスに依存して、相応の信号を、特にマルチチャネル・パルス列bを、高周波送信/受信ユニット12へと出力し、勾配パルス列GPを、勾配制御ユニット11へと出力する。この制御プロトコルPには、測定中に調整しなければならない全ての制御データが格納されている。
【0048】
通常通り、種々異なる測定のための多数の制御プロトコルPは、メモリ16に格納されている。これらの制御プロトコルPは、操作者によって端末20を介して評価すること、場合によって変更することができ、これによって実際の所期の測定に適した制御プロトコルPが提供され、これを用いて測定制御ユニット15を動作させることができる。操作者はさらに、制御プロトコルPを、ネットワークNWを介して例えば磁気共鳴システム1の製造元から呼び出し、場合によってこれを変更及び利用することも可能である。
【0049】
しかしながら、このような磁気共鳴測定の基礎となるシーケンス、及び、制御のための上記コンポーネントは、当業者には周知のものであるので、ここではこれ以上詳細には説明しない。このような磁気共鳴スキャナ2並びに付属の制御装置10は、その他にも、ここでは詳細に説明しない多数の別のコンポーネントを有することが可能である。
【0050】
なお、この点に関して、磁気共鳴スキャナ2を別様に構成すること、例えば側方に開かれた患者室を有するように構成することも可能であり、基本的に、全身高周波コイルは、必ずしもバードケージ・アンテナとして構成しなくてもよいということを述べておく。重要なのは、全身高周波コイルが、個別に制御可能な複数の送信チャネルS
1・・・S
N(最も簡単な例では2つの送信チャネル)を有することだけである。
【0051】
制御装置の測定制御ユニット15は、ここでは例えばソフトウェアモジュールの形態で、基準パルス形成モジュール18を有する。基準パルス形成モジュール18は、まず、制御プロトコルPの設定に基づいて、勾配パルスに対して適切に出力すべき基準パルス列b
Rを形成する。この基準パルス列b
Rは、まず、パルス最適化装置19へと送信される。ここではパルス最適化装置19も、測定制御ユニット15内のソフトウェアモジュールとして構成することができる。このパルス最適化装置19は、本発明によれば、高周波パルス最適化方法、乃至、B
1シミング方法において、高周波送信チャネルS
1・・・S
Nの各々に対して、個別の複素送信スケーリングファクタSF
1・・・SF
Nを求めるために使用される。
【0052】
このようなB
1シミング方法、乃至、高周波パルス最適化方法OVを、再度、
図2において概略的に図示する。
図2から見て取れるように、基準パルス列b
Rは、一方ではパルス最適化装置19に送信され、パルス最適化装置19は、−後で
図3に基づいてさらに説明するように−複素送信スケーリングファクタSF
1,SF
2,SF
3・・・SF
Nを求める。これらの複素送信スケーリングファクタSF
1,SF
2,SF
3・・・SF
Nは、個々のパルス列b
1,b
2,b
3・・・b
Nを得るために、概略図のように基準パルス列b
Rと乗算される。その後、これらの個々のパルス列が一緒に1つのマルチチャネル・パルス列bを形成し、高周波送受信装置12によってこのマルチチャネル・パルス列bが送信される。
【0053】
択一的に、パルス最適化装置19を、例えば測定制御ユニット15とは別個に構成することも、又は、高周波送信/受信ユニット12の一部とすることも可能であり、例えば複素送信スケーリングファクタSF
1,SF
2,SF
3・・・SF
Nとの乗算を、ハードウェア的に実施することも可能である。基準パルス形成モジュール18も同じく、別個の装置とすること、又は、例えば高周波送信/受信ユニット12の一部とすることも可能である。しかしながら、このようなB
1シミング方法、及び、このために必要な装置は、当業者には基本原理から公知である。
【0054】
公知のB
1シミング方法とは異なり、有利な実施例に基づく本発明の方法の場合には、高周波パルス最適化を、2つの異なる最適化モードOM
1、OM
2において実施することができる。ここでは2つの最適化モードOM
1、OM
2の各々において、目標磁化差、つまり画質条件と、高周波曝露条件とが、目的関数と境界条件関数とに完全に分離される、又はその逆が実施される。このことを、
図3に基づいて詳細に説明する。
【0055】
図3では、最適化方法は、ステップIにおいてまず最適化モードインジケータOMIの入力によって開始する。このことは、測定を開始するために、例えば操作者によって端末20を介して実施される、乃至、操作者がプロトコルPを呼び出して現在の測定に適合させると実施される。択一的に、この最適化モードインジケータOMIは、制御プロトコルP内の値として事前に格納しておくことができ、そうして、例えば操作者の要求に応じて変更することができる。
【0056】
その後ステップIIにおいて、この最適化モードインジケータOMIに基づいて、最適化方法を第1の最適化モードOM
1又は第2の最適化モードOM
2のどちらにおいて実施するかが決定される。
【0057】
第1の最適化モードOM
1においては、ステップIII.1及びIV.1が実施され、第2の最適化モードOM
2においては、ステップIII.2及びIV.2が実施される。これらのステップの範囲内で、それぞれ目的関数f
Z及び境界条件関数f
Cが定められ、その後これらの関数は、ステップVにおいて従来のように、最適な送信スケーリングファクタSF
1,・・・,SF
Nを決定するために使用される。このためにステップVでは、例えば既に冒頭で説明した、The Mathworks社のfminconソルバーのような、通常の制約付きソルバーを使用することができる。
【0058】
第1の最適化モードOM
1が選択された場合には、画質値に依存しない目的関数f
Zが使用される。つまりこの場合には、目的関数f
Zは、特に、実際磁化が所期の目標磁化mからどのくらい著しく相違しているかを表す目標磁化差Δmを含まない。その代わりにこの目標磁化差Δmは、境界条件関数内で利用される。
【0059】
これに関してまずステップIII.1において、最適化方法の結果が、各検査に対して基本励磁モード、つまりCPモード又はEPモードで測定した場合に達成すべき目標磁化差Δmに、どの程度一致するか、例えば何パーセント一致するかを表した相対値r
Δmが得られる。
【0060】
その後ステップIV.1において、後続するステップVでの最適化のための関数、つまり、制約付きソルバーに供給される2つの関数の正確な作成が実施される。このような目的関数の一例には、以下の関数がある。
【数2】
【0061】
SED
locは、局地的SED値であるSED
loc,h(単位[W/kg])の局地的曝露ベクトルである。検査対象Oの体内のVOP(Virtual Observation Point:仮想観察点)hにおける局地的SED値であるこのSED
loc,hは、以下の方程式によって計算することができる。
【数3】
【0062】
Nは、独立した送信チャネルの個数であり、ρ
hは、VOP(仮想観察点)hにおける患者の密度(kg/m
3)であり、c及びc’は、1からN(=送信チャネルの個数)まで変化する制御変数である。値ZZ
hcc’は、いわゆる感度マトリクスZZの個々のエレメントである。方程式(3)において、この感度マトリクスZZは、各VOP(仮想観察点)hにつき1つの感度値を含む。感度値は、高周波場の振幅と乗算されて、関連するVOPにおける電場を表しており、従って、高周波曲線の振幅からVOPでの実際のエネルギ曝露への変換係数を形成している。つまり、このような30ヶ所のVOPが観察された場合には、高周波局地的曝露ベクトルSED
locは、方程式(3)に基づいて30個のベクトルエレメントからなる。
【0063】
T
cc’は、高周波パルス列の高周波曲線の交差相関である:
【数4】
【0064】
ここで、Δtは、サンプリング間隔(秒)である。つまりこの交差相関は、所定の場所において、高周波パルス列の高周波曲線が重畳時に増幅するか低減するかを示している。
【0065】
感度マトリクスZZ及び目的関数は、例えば制御装置10のメモリ16の中に格納しておくことができ、ここから要求に応じて呼び出すことができる。感度マトリクスは、例えば身体模型におけるシミュレーションによって予め求めておくことができる。このような感度マトリクス及び局地的SED値SED
locを求めるための方法は、例えばドイツ連邦共和国特許出願第102009024077号公開広報に記載されており、この開示内容は、その限りにおいて完全に本願に組み込まれる。この際、種々異なる身体タイプ、例えば様々な身長の患者のために、種々異なる感度マトリクスを格納しておくことができる。その他の点では、さらなる説明に関して、同様に局地的曝露ベクトルが使用されているドイツ連邦共和国特許出願第102010015044号公開広報を参照されたい。
【0066】
方程式(2)における局所的曝露関数項f(SED
loc)は、種々の形態を取り得る。例えばここでは、最大値ノルムの2乗、max
2(SED
loc)とすることができる。これによって、局所的SEDベクトルの臨界的な最大値、すなわち最大ホットスポットが最小化されることとなる。
【0067】
有利な1つの実施形態においては、
が設定される。これによって、リストにおける臨界的なVOPから高周波エネルギが取り除かれ、臨界的でない他のVOPにエネルギが供給される。というのも、ノルムの2乗
を利用することにより、全体として、最適化の際に、局地的SEDベクトルとゼロ点との間の距離の2乗が最小化されるからである。
【0068】
これに対して、境界条件関数f
C(Δm)は目標磁化差Δmに依存している。
【0069】
これに対する一例には、例えば以下の関数がある。
【数5】
【0070】
この方程式の左辺は、最適化において実際に計算された送信スケーリングファクタによって達成可能な目標磁化差値
を示している。この目標磁化差値は、相対値r
Δmが乗算された、基本励振モード、例えばCPモード又はEPモードにおいて相応に達成可能な目標磁化差値
に相当すべきである。この基本励振モード、すなわちCPモード又はEPモードに対する方程式部分は、方程式(6)及び以下では、下付きの添え字CP/EPによって表される。ここでは方程式の代わりに、不等式を選択することもできる。従って最適化は例えば、達成された目標磁化差値が、相対値r
Δmが乗算された、CPモード乃至EPモードにおける目標磁化を、常に下回るように実施される。
【0071】
本発明の方法の良好な機能方式を具体的に示し、かつ証明するために、3つの例を挙げることができる。ここで、
図4の表にある値を参照されたい。
【0072】
第1列には、方程式(3)による境界条件関数に対する相対値r
Δmが、ファクタの形態でそれぞれ示されている。
【0073】
第2列には、基本励振モードにおいて、つまり例えばCPモード又はEPモードでの検査に応じて達成可能な目標磁化差Δm
Bに対する、第1最適化モードによる高周波パルス最適化方法の範囲内で最適化後に達成された相対的な目標磁化差Δm
optが、百分率で示されている。つまり負の符号(目標磁化差の低下)は、画質の改善と結びついている。
【0074】
第3列には、基本励振モードにおいて生じる高周波曝露SB
Bに対する、最適化方法によって達成された(相対的な)高周波曝露SB
optが示されており、より詳しくは、基本励振モードにおいて生じる高周波曝露SB
Bに対する差を百分率で表している(つまり負の符号は、高周波曝露の低下に相当)。
図4に具体的に示された高周波曝露値SBは、それぞれ方程式(3)に関連して説明したような、
の形態の局所的SED曝露値である。
【0075】
第1行では、相対値r
Δm=1が選択されている。つまり目標磁化差、ひいては画質は、通常の基本励振モードに対して変更すべきではない。従って、最適化された送信スケーリングファクタを使用して高周波パルスを送信した場合の目標磁化差と、基本励振モードにおいて通常の送信スケーリングファクタを使用した場合の目標磁化差との差は、要求通り0%である。しかしながら最後の列からは、最適化によって、高周波曝露を、基本励振モードに比べて42%低下できたことが見て取れる。
【0076】
さらなる実験では、相対値r
Δm=1.05が設定された。このことは、基本励振モードにおける目標磁化差に比べて、最適化されたパルスによる目標磁化差を5%だけ増加させることに相当する。従って最適化後にも、基本励振モードにおける目標磁化差との差は、第2列から見て取れるように5%になる。しかしながら第3列から見て取れるように、高周波曝露は、補償のために、基本励振モードに比べて合計して50.4%削減された。つまり、基本励振モード、例えばCDモード又はEPモードにおける画質が十分であって、さらに5%悪化させたとしても画像評価の際に障害となることはない、と操作者が判断した場合には、高周波曝露を低減させるために、相対値r
Δm=1.05を選択することも可能である。
【0077】
第3の実験では、相対値r
Δm=0.95が選択された。このことは、第2列において、目標磁化差Δmの相対的な変化に対する値である−5.0%という値から見て取れるように、5%の画質の改善をもたらす。この場合には、第3列から見て取れるように、境界条件によって画質が改善されたにもかかわらず、それでもなお、高周波曝露は、従来の基本励振モードに比べて15.8%低減された。
【0078】
図4の表の値が示すように、第1の最適化モードにおける本発明の方法によれば、操作者は、従来の伝統的な基本モードに比べてどのような画質を希望するのかを、予め正確に決めることができる。それにもかかわらず、上記のケースのうちどのケースにおいても、たとえ画質を改善したとしても、高周波曝露は格段に低減させることができる。
【0079】
これに対して、ステップI(
図3)において、第2最適化モードOM
2に相当する最適化モードインジケータOMIを選択した場合には、まず、ステップIII.2において相対値r
SBが検出され、この相対値r
SBは、その後、後々のステップIV.2において、高周波曝露に基づいて境界条件関数を作成するために使用される。
【0080】
つまりこの最適化モードOM
2の場合には、目的関数f
Z(Δm)は、従来通常であったように、目標磁化差Δmに依存して選択される。このような目的関数は、例えば以下のように形成することができる:
【数6】
【0081】
方程式(1)と比較すると、ここではもはや高周波曝露が、目的関数f
Z内では共に考慮されないという点を除いて、この目的関数が、従来の伝統的な目的関数に相当しているということが分かる。その代わりに、高周波曝露は、境界条件関数f
C(SB)内で考慮される。ここで、具体的な境界条件関数は、以下のように表すことができる:
【数7】
【0082】
この境界条件関数は、ここでも基本的に、局地的曝露ベクトルSED
locの監視に相当する(これに関しては、方程式(3)と、方程式(3)に示された記数法及びこれに関する説明を参照のこと)。しかしながらここでは、感度マトリクスZZ
hcc’及び交差相関T
cc’によって与えられた、局地的曝露ベクトルSED
locの(つまりVOPの)局地的SED値の、ユークリッドノルム
は使用されない。その代わりに、方程式(8)において、個々のVOPの最大値が考慮される。つまり、最も強い局地的曝露を有するVOPにおいて予め決められた最大値を上回らないか否かがコントロールされる。ここでも左辺は再び、最適化された送信スケーリングファクタによって達成される局地的曝露ベクトルの最大値を示しており、右辺は、相対値r
SBによって乗算された、伝統的なCP又はEP送信モードによって達成されるような最大値を示している(ここでも下付の添え字CP/EPによって表されている)。
【0083】
この第2最適化モードOM
2に関して、
図5に図示した表において、再び3つの測定例を示す。この表は、
図4の表と同様に作成されているが、第1列に、高周波曝露に関する相対値r
SBが示されている点で異なっている。この実施例においても、最後の列において示された高周波曝露値SBは、それぞれ、方程式(3)に関連して説明したような、
の形態の局地的SED曝露値である。
【0084】
第1測定に関する第1行では、相対値r
SB=1が仮定された。つまり、この測定は、従来の基本励振モード、つまりCPモード又はEPモードにおける高周波曝露に対して、高周波曝露が変化してはいけないように実施された。このことは、第1行の最後の列において0%という値が達成されていることでも示されている。しかしながら、方程式(7)による目的関数を用いた最適化の範囲内において、目標磁化差Δmが−6.2%低減された、つまり、相応して画質が改善された。このことは、第1行の中央の値から分かる。
【0085】
それから第2行の測定では、相対値r
SB=1.2が予め決められた。つまり、最適化後の高周波曝露が、基本励振モードよりも20%高くなることが許容された。このことは、最後の列における+20%という値によって示されている。この場合には、第1の場合よりも、つまり7.1%、画質を改善することができた。このことは、再び中央の行から見て取ることができる。
【0086】
最後の実験では、相対値r
SB=0.8が予め決められた。つまり、境界条件関数によって、送信スケーリングファクタの最適化後の高周波曝露が、基本励振モードでの値を20%下回らなければならないということが定められた。このことは、最後の列における−20%という数値に相当している。この場合にも、最適化方法によって、依然として4.6%という画質の改善が達成された。
【0087】
つまり、第2最適化モードOM
2においても、高周波曝露の改善と同時に画質の改善も十分に可能であることが示されている。第2最適化モードでは、伝統的な基本励振モードに関連して、達成される高周波曝露の相対値を、操作者によって調整設定することができる。つまり操作者は、特に、どのような高周波曝露を達成したいか前もって正確に把握している場合、乃至、より高い高周波曝露が十分に可能である場合に、この第2最適化モードOM
2を利用することができる。このことは、特に高い高周波曝露と結びついていないシーケンスが実行される場合、つまり、基準パルス列が既に非常に高い高周波曝露を伴わない場合に考えられる。このようにして操作者は、例えば第1最適化モードよりもさらに格段に画質の改善を達成することができ、しかしながら操作者はこの際に、高周波曝露が著しく上昇し過ぎないことを確信することができる。
【0088】
上記の例は、本発明の方法による非常に簡単な手段を用いて、いかにして患者の高周波曝露を低減し、それでもなお画質の改善も達成できるかを示している。最後に、上で詳細に説明した方法及び構造は単に実施例であり、請求項に記載されている限りにおいて、本発明の範囲を逸脱することなく広い範囲において当業者が変更できるということをもう一度指摘しておく。完全を期すために、不定冠詞の"ein, eine"(1つ)の使用は、関連する特徴が複数存在しうることを除外するものではないことも述べておく。同様に、「ユニット」又は「モジュール」という語は、この「ユニット」又は「モジュール」が複数のコンポーネントから構成されることを除外するものではなく、これらの複数のコンポーネントは場合によって空間的に分散していることもあり得る。