(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下では、洗濯、すすぎ、脱水、乾燥を行うことができる洗濯機(いわゆる、縦型の洗濯乾燥機)を例に挙げて説明するが、洗濯、すすぎ、脱水を行うことができる洗濯機(いわゆる、全自動洗濯機)に適用することもできる。
【0010】
図1は本発明の実施形態に係る洗濯機を示す外観図、
図2は本発明の実施形態に係る洗濯機の概略構造を示す縦断面図である。なお、以下では、洗濯機100を正面から見たときの方向を基準として説明する。
【0011】
図2に示すように、洗濯機100は、筐体1、洗濯兼脱水槽9(内槽)、外槽10、脈動翼盤11(回転翼盤)、洗濯水循環機構50などで構成されている。
【0012】
図1に示すように、筐体1は、外郭が鋼板と樹脂成型品とを組み合わせて構成され、内部に洗濯槽(外槽10、洗濯兼脱水槽9、
図2参照)が収納されている。また、筐体1の上部には、トップカバー2が設けられている。トップカバー2には、洗濯槽の上部を開閉する外蓋3が設けられている。外蓋3は、中央で折り曲げて開くように構成され、前側に各種操作ボタンスイッチ6、6aや表示器7,25を備えた操作パネル8を備えている。操作パネル8は、機体底部に設けたマイクロコンピュータ40(以下、マイコンと略記する。
図2参照)と電気的に接続されている。また、トップカバー2の前面には、電源スイッチ5が設けられている。また、トップカバー2の後部内には、給水電磁弁4、ヒータ20(
図2参照)、送風ファン19(
図2参照)などの給水、乾燥に関連する部品が設けられ、トップカバー2の外蓋3の内側には、洗剤・仕上げ剤容器28(
図2参照)が設けられている。
【0013】
図2に示すように、洗濯兼脱水槽9は、その外周壁に通水および通風のための複数の小さな貫通孔9aが形成されるとともに、その底壁に通水および通風のための複数の貫通孔9bが形成されている。また、洗濯兼脱水槽9は、その上縁部に流体バランサ9cを備えるとともに、底部に脈動翼盤11(回転翼盤)が回転可能に取り付けられている。
【0014】
外槽10は、洗濯兼脱水槽9を内包し、その底部の外側に洗濯兼脱水槽9および脈動翼盤11を駆動する洗濯脱水駆動装置を備えて構成されている。また、外槽10は、図示説明は省略するが、筐体1の上端部の四隅部に設けた隅板に係止して垂下させた4本の支持棒に緩衝装置を介して該筐体1内の中心部に弾性支持されている。
【0015】
前記洗濯脱水駆動装置は、インバータ駆動電動機または可逆回転型のコンデンサ分相単相誘導電動機を使用した電動機13と電磁操作クラッチ機構(クラッチ)12と遊星歯車減速機構を内蔵して構成されている。また、洗濯脱水駆動装置は、マイコン40によって電動機13とクラッチ12を制御することによって、洗濯兼脱水槽9を静止させるように係止、または自由に回転できるように解放した状態で、脈動翼盤11を繰り返し正逆回転させる洗濯駆動モードと、洗濯兼脱水槽9と脈動翼盤11とを一体的に同一方向に回転させる脱水駆動モードと、を選択的に実行する機能を有する。
【0016】
また、外槽10の外側面には、振動センサ27が取り付けられている。この振動センサ27は、洗濯兼脱水槽9が高速回転する脱水時の振動を検出する。
【0017】
また、外槽10の上面には、洗濯兼脱水槽9の上部を閉塞するとともに外槽10の上部を閉塞する槽カバー10aが設けられている。
【0018】
また、外槽10の底部には、エアトラップ21aが設けられている。このエアトラップ21aは、内部の圧力がチューブ21bを介して水位センサ21に伝えられ、外槽10内の洗濯水の水位を検出する。
【0019】
洗濯水循環機構50は、循環ポンプ16、循環パイプ17(循環路)、循環水カバー30などで構成されている。
【0020】
循環ポンプ16は、機体底部に設けられ、循環パイプ17を介して洗濯水を、外槽10の底部に設けた通水通気口10bから循環水カバー30の循環水入口33に向けて汲み上げる機能を有する。
【0021】
循環パイプ17の途中には、異物トラップ18が設けられ、異物トラップ18の上流側には、排水弁15を介して排水ホース24が接続されている。
【0022】
循環ポンプ16が駆動すると、外槽10内の洗濯水は、外槽10の底部に設けた通水通気口10bから循環パイプ17を通り外槽10の上部に運ばれ、循環水入口33から循環水カバー30の循環水路37(
図5参照)に入り、糸屑フィルタ38(
図5参照)で糸屑が取り除かれ、散水路34から洗濯兼脱水槽9内に流れ込む(
図5の矢印参照)ようにして循環する。
【0023】
なお、洗濯機100は、ゴム製の蛇腹管29a,29b,29c,29d,29e,29fを備えている。これら蛇腹管29a〜29fは、振動変位する外槽10や槽カバー10a、固定側(筐体1やトップカバー2など)に設けた乾燥ダクト22や給水電磁弁4,循環ポンプ16などとの接続に用いられている。
【0024】
乾燥ダクト22は、通水通気口10bと温風吹き出し口22a(
図4、
図5参照)との間を接続する。また、乾燥ダクト22の途中には、送風ファン19、ヒータ20、リントフィルタ(図示せず)、除湿機構22b、温度センサ26が設けられている。送風ファン19を運転し、ヒータ20を通電すると、洗濯兼脱水槽9内に温風が吹き込まれ、洗濯兼脱水槽9内の洗濯物が温められて水分が蒸発する。高温多湿となった空気は、貫通孔9a,9bを通り外槽10に出て、通水通気口10bから乾燥ダクト22に吸い込まれ、除湿機構22bを流下する冷却水で冷却除湿されて乾いた低温空気となり、ヒータ20で再度加熱され、洗濯兼脱水槽9内に吹き込まれるようにして循環する。
【0025】
図3は本発明の実施形態に係る洗濯機における脈動翼盤を示す斜視図である。
図3に示すように、脈動翼盤11は、回転することによって上面に乗っている洗濯物に上向きの動きを繰り返し発生するように回転方向になだらかに傾斜した複数の傾斜面からなる隆起部11aと、多数の水抜き貫通孔11bと、を備える。隆起部11aは、周方向に傾斜し、かつ、外周部位が順次高くなるように径方向に傾斜し、さらに、外周端面11cの上部が中心側に倒れるように傾斜させた傾斜面を有している。本実施形態では、隆起部11aが2ヶ所設けられているが、2ヶ所に限定されるものではなく、3箇所以上であってもよい。
【0026】
この脈動翼盤11が回転することで、脈動翼盤11上の洗濯物は、脈動翼盤11上を滑りながら該脈動翼盤11の回転方向に回転するとともに隆起部11aに押し上げられて上下方向に振動する。このとき、洗濯水を循環しながら洗濯物の上方から散水することで、洗濯物に洗濯水を行き渡らせることができる。こうすることで、洗濯兼脱水槽9内に洗濯物が洗濯水に浸かるほど洗濯水を溜めなくても、洗濯物を洗濯することができ、大幅な節水が可能になる。ちなみに、洗濯物に洗濯水を均一に散布することができれば、洗浄力が向上するため、洗濯時間の短縮につながる。なお、洗濯水を均一に散布する詳細な構成については後記する。
【0027】
図4は本発明の実施形態に係る洗濯機の槽カバーを示す平面図である。
図4に示すように、槽カバー10aは、前側から約2/3の部分に平面視略半円状の洗濯物投入口10a1(破線部分参照)を有している。また、槽カバー10aには、洗濯物投入口10a1を開閉する内蓋23が設けられている。
【0028】
内蓋23は、ヒンジ23bを介して開閉自在に槽カバー10aに取り付けられており、取っ手23aを上方に持ち上げることで、内蓋23のロック(図示せず)が解除され、取っ手23aを下方に押すことでロックされるようになっている。
【0029】
また、槽カバー10aには、洗濯物投入口10a1の後方に、外槽10内に温風を導入する温風吹き出し口22a、給水入口32、循環水入口33が設けられている。また、槽カバー10aの前側には、洗剤・仕上げ剤入口28aが設けられている。
【0030】
図5は
図4の槽カバーの下面の循環水カバー取り付け部を示す部分平面図である。なお、
図5は、循環水カバー30および給水カバー36を取り付けた槽カバー10aを裏返して見たときの平面図である。
【0031】
図5に示すように、循環水カバー30は、槽カバー10aの後ろ側の下面(洗濯兼脱水槽9側)に設けられている。また、循環水カバー30は、循環水入口33から流入した洗濯水を槽カバー10aの洗濯物投入口10a1(
図4参照)側に導き、洗濯兼脱水槽9(
図2参照)内に散布するために設けられている。
【0032】
給水カバー36は、給水入口32から流入した水道水を洗濯物投入口10a1(
図4参照)側に導き、洗濯兼脱水槽9内に散水するために設けられている。また、給水カバー36には、洗濯兼脱水槽9内に向かって開口した複数個の散水口35が設けられている。
【0033】
循環水カバー30の内部には、循環水路37が形成されている。この循環水路37は、一端が循環水入口33と連通し、他端が散水路34と連通している。散水路34は、槽カバー10aの左右方向の略中央で、槽カバー10aの洗濯物投入口10a1(
図4参照)の周縁部にあり、洗濯兼脱水槽9(
図2参照)の回転中心O(
図4参照)よりも後ろ側に位置している。循環水路37の途中には、糸屑フィルタ38が着脱可能に取り付けられ、内蓋23を開き、取っ手38aを洗濯物投入口10a1側(手前側)に引き出すことで取り外すことができる。
【0034】
なお、給水電磁弁4(
図2参照)は、本実施形態では4方向に給水を行うことができる4連弁で構成されている。一つ目の弁は、洗濯給水電磁弁であり、給水入口32に接続され、マイコン40によって開弁されることで給水カバー36の散水口35から洗濯兼脱水槽9内に給水するように構成されている。二つ目の弁は、洗剤給水電磁弁であり、マイコン40によって開弁されることで洗剤・仕上げ剤容器28(
図2参照)の洗剤投入室に給水するように構成されている。三つ目の弁は、仕上げ剤給水電磁弁であり、マイコン40によって開弁されることで洗剤・仕上げ剤容器28の仕上げ剤投入室に給水するように構成されている。洗剤・仕上げ剤容器28は、洗剤・仕上げ剤入口28aと連通しており、外槽10内に洗剤や仕上げ剤が供給されるように構成されている。四つ目の弁は、後記する除湿機構22bに接続されている。
【0035】
図6は循環水カバーを下方から見上げたときの外観斜視図である。なお、
図6は、糸屑フィルタ38を取り外した状態を示している。
図6に示すように、散水路34は、鉛直方向(上下方向)に向けて形成された筒状であり、循環水カバー30の下端に洗濯水が吐出する略円形の吐出口34aが鉛直方向下向きに形成されている。
【0036】
また、散水路34の吐出口34aは、循環水カバー30の下面30aよりも鉛直方向下方に突出しないように構成されている。これにより、乾燥運転時に洗濯物がかさ増しして、洗濯槽(洗濯兼脱水槽9、外槽10)内において洗濯物が引っ掛かるのを防止することができる。
【0037】
また、循環水カバー30には、該循環水カバー30を槽カバー10a(
図5参照)にねじ固定するための複数のねじ固定部30bが形成されるとともに、前面に糸屑フィルタ38が抜き差しされる開口部30dが形成されている。
【0038】
図7は循環水カバーの内部を示す平面図である。
図7に示すように、循環水カバー30は、循環水路37の境界30cに沿ってゴム製のパッキン(不図示)が取り付けられ、このパッキンを介して循環水カバー30が槽カバー10a(
図5参照)に密着して固定されている。これにより、循環水路37の水密性が確保され、循環水路37から循環水カバー30の外部に水漏れするのを防止できる。よって、循環水入口33から導入された洗濯水(循環水)は、循環水路37を通って散水路34に導入される。
【0039】
散水路34は、軸方向からの平面視において円形の円筒部34bを有している。円筒部34bの周面には、循環水路37と連通して洗濯水が導入される入水口34cが形成されている。この入水口34cは、洗濯水が円筒部34bの略接線S方向から導入されるように構成されている。このように、円筒部34bの周面の略接線方向Sから洗濯水を導入させることにより、円筒部34b内において洗濯水に対して旋回流(矢印参照)を発生させることができ、吐出口34aから径方向外側に大きく広がるように洗濯水を吐出させることができる。
【0040】
図8は
図7のA−A線断面図である。
図8に示すように、円筒部34bは、旋回流を発生させる旋回室34b1と、軸中心に向けて水平に突出するとともに周方向に延びるリブ34dと、リブ34dの下方において吐出口34aに向けて拡径する拡径部34e(流路断面拡大部)と、を有している。この拡径部34eは、流路断面積が、吐出口34aに向かうにつれて大きくなるように構成されている。
【0041】
リブ34dは、入水口34cから導入される洗濯水の旋回流の径方向の力F1と鉛直方向下方の力F2のうち、力F2を低減させ、吐出口34aから鉛直方向下方(軸方向)に吐出される洗濯水の水量を低減させる機能を有している。
【0042】
また、リブ34dは、全周に渡って設けられているものではなく、周方向の一部にリブ34dを設けないリブ無し部34d1を有している。これにより、リブ34d上に水が溜まるのを防止でき、例えば、洗濯終了後に洗濯物に吐出口34aから水(水滴)が落下するのを防止できる。
【0043】
拡径部34eは、リブ34dの下方において流路断面積が吐出口34aに向けて徐々に大きくなるように構成されている。すなわち、本実施形態での拡径部34eの内壁面は、曲率R3,R4となるように構成されている。なお、拡径部34eの内壁面の曲率は、一定であってもよく、吐出口34a(開口縁部)に向けて徐々に曲率が拡大する構成であってもよい。
【0044】
また、拡径部34eは、リブ34d側の点P1と吐出口34a側の点P2とを結んで形成される直線Lに対して円筒部34bの軸中心側に凸形状(ふくらむ形状、山なり)となるように構成されている。また、拡径部34eは、点P2での接線方向の向きが径方向外側を向くように構成されている。
【0045】
また、
図8の断面で示す吐出口34aの左右の曲率R3と曲率R4は、同程度になるように設定されている。
【0046】
なお、本実施形態では、拡径部34eに曲率R3,R4を有する面が形成されている場合を例に挙げて説明したが、拡径部に曲率を有する面が形成されていない構成(例えば、円錐台形状)であってもよい。
【0047】
図9に示すように、前側に位置する拡径部34eは、曲率R3,R4よりも大きい曲率R1で形成されている。また、後側に位置する拡径部34eは、曲率R3,R4よりも小さい曲率R2で形成されている。このように、散水路34から洗濯兼脱水槽9の内周壁までの距離が長い場合には、曲率R1が大きく形成され、短い場合には、曲率R2が小さく形成されている。なお、曲率は、所定の角度(範囲)毎に段階的に変化するようにしてもよく、連続的に変化するようにしてもよい。
【0048】
このように構成された散水路34を備えた洗濯機100では、循環水路37から散水路34(円筒部34b)に導入された洗濯水が、螺旋回転しながら円筒部34bを鉛直方向下方に向けて流れる。このとき、円筒部34bの下流側にリブ34dを設けることにより、吐出口34aから吐出されるシャワー範囲(散水範囲)を広げることができる。これは、水流がリブ34dの部分で下方向の流れが径方向の流れに整流されるためである。
【0049】
また、リブ34dの下流側に曲率R1,R2,R3,R4の拡径部34eを設けることで、水流を径方向に加速(集中)させることができ、シャワー範囲(散水範囲)をさらに広げることができる。また、散水路34を構成する材質が持つ表面張力によっても水を引っ張ることができるので、シャワー範囲(散水範囲)を広げることができる。
【0050】
ここで、散水路34(円筒部34b)の寸法パラメータと流量とシャワーの広がりとの関係について説明する。
図8に示すように、リブ34dの厚みを「a」、リブ34dの内径を「b」、旋回室34b1の内径を「c」、リブ34dの下面から曲率の開始点までの長さを「d」とする。
【0051】
この場合、厚みaは、小さくなるほどシャワー範囲(散水範囲)が広がり、大きくなるほどシャワー範囲(散水範囲)が狭くなる。内径bは、シャワー範囲とシャワー流量とを決定する重要な箇所であり、内径bが大きいとシャワー範囲が狭くシャワー流量が多くなり、逆に、内径bが小さいとシャワー範囲が広くシャワー流量が少なくなるため、用途に応じて寸法を決定することが好ましい。長さdは、シャワー範囲を決定する重要な箇所であり、(c−b)/2以下にすることが好ましい。曲率Rは、シャワー範囲を決定する最も重要な箇所であり、構造上可能限り大きな曲率Rを確保することが好ましい。
【0052】
図10は洗濯物量に応じた注水パターンを示す模式図である。
循環水路37からの水は、入水口34cから旋回室34b1の側壁(内周壁面)に沿って散水路34内に流れ込み旋回流(
図8参照)となり、吐出口34aから洗濯兼脱水槽9内に吐出される。
【0053】
図10に示すように、旋回室34b1(
図8参照)内の水には旋回による遠心力が作用しているため、吐出口34a(
図8参照)から出た水は、旋回しながら下方に略円錐形の薄膜状に広がって洗濯物に散布される。
【0054】
また、散水路34は、洗濯兼脱水槽9の中心から奥側(
図10の後側)のずれた場所に位置している。このため、吐出口34a(
図8参照)からの散水は、洗濯物の量が少ないときには、ほぼ洗濯物全体に行き渡るが、洗濯物の量が増えるにしたがい洗濯物の上面が吐出口34a(散水路34)に近づくため、洗濯兼脱水槽9の前側(手前側)にある洗濯物に洗濯水が散布され難くなる(
図10参照)。しかし、吐出口34a(シャワー出口)に曲率R1の拡径部34eを設けることで、シャワー範囲(散水範囲)を拡大することができ、洗濯物の量が増加しても洗濯物全体に均一に洗濯水を散布することができる。また、一般的にはシャワー範囲を拡大するには吐出口34aの流路断面積を狭く形成しなければならないが、本実施形態では、旋回による遠心力を利用するとともに、吐出口34aに向けて流路断面積が拡大する拡径部34eを設けることにより、吐出口34aの面積を小さくすることなくシャワー範囲(散水範囲)を拡大することができ、洗濯兼脱水槽9の前側まで洗濯水を十分に散水することが可能になる。また、吐出口34aの流路断面積を小さくすることがないため(流路を絞る必要がないため)、糸屑詰まりが起こる可能性もないという利点もある。
【0055】
ちなみに、本実施形態に係る散水路34を適用した、定格容量10kgの洗濯機(洗濯乾燥機)による洗浄試験(日本工業規格:家庭用電気洗濯機の性能測定方法JIS C 9811−1999による洗濯性能)の結果によれば、10kgの場合で洗浄率が約2%向上し、洗いむらが約2%減少した。洗濯物がより動きにくい定格(10kg)の場合に洗いむらの減少が顕著で、洗濯水の均一散布による効果が明確であることが確認された。
【0056】
図11は散水範囲を示す模式図である。
ところで、洗濯物投入口10a1を設ける関係上、散水路34(吐出口34a)を洗濯兼脱水槽9の回転中心Oに配置できないため、回転中心Oよりも後方に設定される。また、シャワー範囲(散水範囲)を360度均一にしてしまうと、散水路34から吐出される水量は決まっているので、散水路34からの距離が長い方向へは、水の飛びが小さくなる。そこで、本実施形態では、前記したように、散水路34の位置が回転中心Oの後方にずれて構成され、散水路34から内周壁までの距離が均一ではない場合、散水路34と洗濯兼脱水槽9の内周壁(胴板)までの距離に応じて拡径部34eの曲率を変えることで、シャワー範囲(散水範囲)を変えることができる。
【0057】
図11に示すように、散水路34に対して前方の距離が最も長くなるので、拡径部34eの曲率R1(
図9参照)を最も大きくすることで、散水範囲Q1を広くすることができる。また、散水路34に対して後方の距離が最も短くなるので、拡径部34eの曲率R2(
図9参照)を最も小さくすることで、散水範囲Q2を狭くすることができる。また、散水路34に対して左右の距離が中間になるので、拡径部34eの曲率R3,R4(
図8参照)を曲率R1と曲率R2との中間の曲率にすることで、散水範囲Q3,Q4を散水範囲Q1と散水範囲Q2の中間の範囲にすることができる。
【0058】
このように、散水路34から出る水量が決まっている場合、水の出方を360度均一にしてしまうと水の飛びが小さくなるが、前記のように、散水路34から距離に応じて水の出方を変えることで、水量を変えずに360度の全周において、洗濯兼脱水槽9の周壁(胴板)まで洗濯水を到達させることができる。
【0059】
図12は、本発明の実施形態に係る洗濯機の制御ブロック図である。
図12に示すように、マイクロコンピュータ(制御装置)40は、各操作ボタンスイッチ6,6aに接続される操作ボタン入力回路41、水位センサ21、温度センサ26、振動センサ27と接続され、使用者のボタン操作や洗濯工程、乾燥工程での各種情報信号を受ける。マイクロコンピュータ40は、駆動回路42を介して、給水電磁弁4、クラッチ12、排水弁15、循環ポンプ16、電動機13、送風ファン19、ヒータ20などと接続され、これらの開閉や回転、通電を制御する。また、マイクロコンピュータ40(以下、マイコンと略記する)は、使用者に洗濯機の動作状態を知らせるための7セグメント発光ダイオードからなる表示器25、発光ダイオードからなる表示器7、ブザー43に接続されている。
【0060】
図13は本発明の実施形態に係る洗濯機の制御処理の一部を示すフローチャート、
図14は本発明の実施形態に係る洗濯機の制御処理の他の一部を示すフローチャートである。マイコン40は、電源スイッチ5が押されて電源が投入されると起動し、
図13および
図14に示す洗濯および乾燥の基本的な制御処理プログラムを実行する。
【0061】
図13に示すように、ステップS101において、マイコン40は、洗濯機100の状態確認および初期設定を行う。
【0062】
ステップS102において、マイコン40は、操作パネル8(
図1参照)の表示器7,25(
図12参照)を点灯表示し、操作ボタンスイッチ6からの入力指示にしたがって洗濯コースを設定する。入力指示がない状態では、標準の洗濯コースまたは前回実施の洗濯コースを自動的に設定する。
【0063】
ステップS103において、マイコン40は、操作パネル8の操作ボタンスイッチ6におけるスタートスイッチ(操作ボタンスイッチ)6aからのスタートスイッチ信号の入力を監視する。マイコン40は、スタートスイッチ信号の入力が無いと判定した場合には、ステップS103の処理を繰り返し、スタートスイッチ信号の入力が有りと判定した場合には、ステップS104に進む。
【0064】
ステップS104において、マイコン40は、洗剤量検出処理を実行する。この洗剤量検出処理は、洗い水を給水する前の洗濯物が乾布状態において、洗濯兼脱水槽9を静止させた状態で脈動翼盤11を一方向に回転させたときに、該脈動翼盤11に作用する回転負荷量に基づいて洗濯物の布量を検出することにより行う。マイコン40は、洗濯脱水駆動装置における電動機13とクラッチ12を制御し、検出した布量に基づいて洗剤の適量(洗剤量)を求める。洗剤量は、予め設定した布量と洗剤量の対照テーブルを参照することによって求める。
【0065】
具体的に、布量の検出は、電動機13としてインバータ駆動電動機を使用した構成では、電動機13を回転させるように所定時間給電した時の到達回転速度を検出することによって行う。電動機13としてコンデンサ分相単相誘導電動機を使用した構成では、電動機13を飽和回転速度まで上昇させるように給電した状態で断電した後の惰性回転減速特性を検出することによって行う。そして、好ましい洗剤量は、予め設定した布量と洗剤量の対照テーブルを参照することによって求める。
【0066】
また、洗濯水量は、布量が所定の布量の範囲(適量)内のときには脈動翼盤11を越えない水位を維持して外槽10の底部に溜まるように洗濯水量(水位h1)を設定する。
【0067】
また、マイコン40は、検出結果(布量)に基づいて洗濯時間を求めて設定する。布量検出が行われない場合には、標準の洗濯時間を設定する。
【0068】
ステップS105において、マイコン40は、求めた洗剤量を操作パネル8の表示器25に表示する。
【0069】
ステップS106において、マイコン40は、洗剤給水電磁弁(不図示)を開き、洗剤・仕上げ剤容器28(
図2参照)の洗剤投入室に洗剤給水を実行する。なお、使用者は、洗剤給水前に、表示された量の粉末洗剤を洗剤・仕上げ剤容器28洗剤投入室に投入した後、外蓋3(
図2参照)を閉じるように操作する。洗剤給水が流れている洗剤投入室に投入された粉末洗剤は、洗剤給水の水と共に洗剤・仕上げ剤入口28を通り外槽10の底部に落下する。
【0070】
ステップS107において、マイコン40は、洗剤溶かし水位まで給水後、洗剤給水を停止する。この実施形態では、洗剤給水量を洗濯量(布量)に関わらず、例えば、約10リットルに設定した。この水量は、この後の洗剤溶かし(ステップS108)で洗濯兼脱水槽9を回転させたときに、洗濯兼脱水槽9の底で給水した水と洗剤を攪拌するのに十分な水量で、かつ、水面が脈動翼盤11の下面の高さより低くなる(洗濯物が洗剤溶かし前に濡れない)ように設定される。
【0071】
ステップS108において、マイコン40は、洗濯兼脱水槽9と脈動翼盤11を一体的に一方向に緩速回転(例えば、約毎分70回転)させることによって、該洗濯兼脱水槽9の底面で外槽10の底部に投入された洗剤溶かし水と粉末洗剤を攪拌して高洗剤濃度の洗い水を生成する洗剤溶かしを実行する。洗剤溶かしの時間は、例えば1分間に設定される。低温(低水温)、溶けにくい粉末洗剤の条件でも約90%の溶解率となる。生成した洗い水の洗剤濃度は、標準濃度の約7倍である。ここで、標準濃度は、粉末洗剤量20グラム/洗い水量30リットルの割合である。
【0072】
ステップS109において、マイコン40は、前洗いを実行する。この前洗いでは、洗濯兼脱水槽9を静止させた状態で脈動翼盤11を正逆回転させる撹拌を間欠的に行い、脈動翼盤11の正逆回転中に循環ポンプ16を運転することによって外槽10の底部の洗い水(洗濯水)を循環パイプ17を介して汲み上げて、散水路34から洗濯物上に散水(散布)する。マイコン40は、脈動翼盤11と循環ポンプ16の停止期間中に水位センサ21の検出信号を参照しながら洗剤給水電磁弁(不図示)および洗濯給水電磁弁(不図示)を開いて水位が設定水位(h1)を越えないように補給水を行う。この運転を複数回繰り返すことによって洗濯物を洗い水(洗濯水)に馴染ませて脈動翼盤11上に分散させるようにして行う。
【0073】
第1回目の正逆回転時には、洗剤濃度が約7倍の洗い水が洗濯物に降り掛かって該洗濯物内に浸透していく。高濃度の洗い水は、散水路34の吐出口34a(
図8参照)から満遍なく洗濯物に散布されるため、洗剤の浸透作用で洗濯物にむらなく浸透する。洗濯物に浸透した高濃度の洗い水は、油の溶解能力が高く、油脂汚れを溶解し、洗濯物から汚れを浮き上がらせる効果が非常に大きく、高い洗浄力が得られる。
【0074】
また、補給水を繰り返すことによって洗濯物に散布される洗い水の洗剤濃度が低下して行き、前洗い終了段階では、洗剤濃度が標準濃度の2倍程度となる。
【0075】
ステップS110において、マイコン40は、本洗いを実行する。この本洗いでは、先ず、前記と同様な方法で布量検出を行って設定されている洗濯時間を補正する。その後、洗濯兼脱水槽9を静止させた状態で脈動翼盤11を正逆回転させながら循環ポンプ16を運転して外槽10の底部に溜った洗い水を散水路34から洗濯物に散布する洗い水循環を行う約2分間の撹拌と、循環ポンプ16の運転を停止して洗い水の循環を止めた状態で脈動翼盤11を正逆回転させる約1分間の布ほぐし撹拌とを繰り返す。
【0076】
散水路34から散布される洗い水は、薄い膜状に広がっているため、洗濯物に当たったときの水跳ねを抑える効果がある。さらに、本洗い中に洗濯兼脱水槽9内に発生する洗剤の泡を消す効果もあるため、必要以上な発泡を抑制できる。このため、洗剤の泡のクッション作用による洗浄力の低下を防ぐことができる。さらに、本洗い後の排水をスムーズにでき、脱水時の発泡現象を防止できる効果もある。
【0077】
そして、ステップS110では、マイコン40は、循環ポンプ16の運転を停止して洗い水の循環を止めた状態で脈動翼盤11を正逆回転させる約1分間の均一化撹拌を実行した後、本洗いを終了する。
【0078】
図14に示すように、ステップS111において、マイコン40は、第1回目の溜めすすぎを実行する。この溜めすすぎでは、先ず、排水弁15を開いて外槽10の底部に溜っている洗い水を排水した後に、洗濯兼脱水槽9と脈動翼盤11を一体的に一方向に回転させて洗濯物に含まれている洗い水を遠心脱水する。この遠心脱水時の洗濯兼脱水槽9と脈動翼盤11の回転速度は、後記する最終脱水における回転速度(約1000rpm)と同様に設定される。これにより、高い脱水率を実現する脱水運転が行われる。
【0079】
そして、マイコン40は、排水弁15を閉じて洗濯兼脱水槽9と脈動翼盤11を一体的に一方向に緩速回転(35〜40rpm)させながら洗濯給水電磁弁(不図示)を開放して水道水(清水)を散水口35から脈動翼盤11上の洗濯物に散布されるように給水する。
【0080】
そして、マイコン40は、洗濯兼脱水槽9と脈動翼盤11の回転を停止した状態で外槽10の底部の水位が設定水位h1を越えないようにすすぎ水給水を行う。
【0081】
そして、マイコン40は、本洗い(ステップS110)における押し洗い撹拌と同様に、洗濯兼脱水槽9を静止させた状態で脈動翼盤11を正逆回転させながら循環ポンプ16を運転して外槽10の底部に溜ったすすぎ水を散水路34から脈動翼盤11上の洗濯物に散布するように循環させるすすぎ水循環、撹拌によるすすぎを実行する。
【0082】
そして、マイコン40は、脈動翼盤11の回転と循環ポンプ16の運転を停止した状態で外槽10の底部に溜るすすぎ水の水位を検出しながら水位が設定水位h1を越えないように補給水を行う。
【0083】
そして、マイコン40は、洗濯兼脱水槽9を静止させた状態で脈動翼盤11を正逆回転させながら循環ポンプ16を運転して外槽10の底部に溜ったすすぎ水を散水路34から脈動翼盤11上の洗濯物に散布するように循環させるすすぎ水循環、撹拌によるすすぎを実行する。このとき、散水路34の吐出口34aから出るすすぎ水は洗濯物にむらなく散布され、洗濯物に含まれる洗剤成分を効率よく希釈でき、すすぎ性能を高くできる。
【0084】
その後、マイコン40は、循環ポンプ16を停止してすすぎ水の循環を止めた状態で脈動翼盤11の正逆回転を継続する均一化撹拌を実行する。
【0085】
ステップS112において、マイコン40は、第2回目の溜めすすぎを実行する。この第2回目の溜めすすぎでは、柔軟仕上げ剤給水電磁弁(不図示)を開いて洗剤・仕上げ剤容器28の柔軟仕上げ剤投入室に給水することによって、該柔軟仕上げ剤投入室内の柔軟仕上げ剤を外槽10の底部に導入する制御を行う。なお、それ以外の動作は、第1回目の溜めすすぎと同様に行う。
【0086】
ステップS113において、マイコン40は、最終脱水を実行する。最終脱水では、排水弁15を開放したままの状態で洗濯兼脱水槽9と脈動翼盤11を一体的にして一方向に約1000rpmで高速回転させるように洗濯脱水駆動装置を運転して洗濯兼脱水槽9内の洗濯物を遠心脱水する。この最終脱水の運転時間は、所望の脱水率が得られる時間に設定する。
【0087】
ステップS114において、マイコン40は、洗濯乾燥コースが設定されているか否かを判定する。マイコン40は、洗濯乾燥コースが設定されていないと判定した場合には(S114、N)、ステップS115をスキップして処理を終了し、洗濯乾燥コースが設定されていると判定した場合には(S114、Y)、ステップS115に進む。
【0088】
ステップS115において、マイコン40は、洗濯乾燥コースが設定されている場合は、乾燥を実行する。この乾燥では、排水弁15を開放したまま、洗濯行程と同様に、洗濯兼脱水槽9を静止させた状態で脈動翼盤11を正逆回転させながら、乾燥ダクト22の途中に設けた送風ファン19(
図2参照)を運転する。これにより、外槽10内の空気が通水通気口10bから乾燥ダクト22内に吸い出され、乾燥ダクト22内を通過するときに該乾燥ダクト22内に設置した除湿機構22bから流れ落ちる冷却水に触れることで冷却除湿される。冷却除湿された空気は、リントフィルタを通して糸屑を捕集し、ヒータ20によって加熱された後に温風吹き出し口22a(
図4参照)から洗濯兼脱水槽9内に吹き込まれる。
【0089】
そして、マイコン40は、温度センサ26(
図2参照)によって温風の温度を監視しながら乾燥を実行し、温度変化の割合が所定の値になったときに乾燥を終了する。
【0090】
以上説明したように、本実施形態の洗濯機1によれば、洗濯水循環機構50の散水路34に、吐出口34aに向けて流路断面積が拡大する拡径部34e(流路断面拡大部)を設けることで、散水路34に導入された洗濯水の散水範囲を拡大することができる。よって、洗濯水を洗濯物にムラなく散布し洗いムラを低減することができ、しかも洗浄力を高めることができる。
【0091】
また、本実施形態では、散水路34が、中心軸が略鉛直方向の円筒部34bと洗濯水を円筒部34bの周面に対して略接線方向から入水させる入水口34c(
図7参照)とを備えることで、入水口34cから円筒部34b内に入った洗濯水に旋回流を発生させ、当該旋回流による遠心力を利用して吐出口34aから洗濯水を散水させることができるので、洗濯水を洗濯物にさらにムラなく散布し洗いムラを低減することができ、さらに洗浄力を高めることができる。
【0092】
また、旋回流による遠心力を利用して、散水路34の吐出口34aから洗濯物にムラなく洗濯水を浸透させることによって、高濃度洗剤液の浸透作用や油汚れの可溶化作用などの化学的な洗浄力により洗濯物から汚れを浮き上がらせることができる。その後、高濃度洗剤の洗い水を循環させて洗濯物に散布しながら、脈動翼盤11を正逆回転させて洗濯物に上下方向の振動を発生させて洗うことで、洗濯物から浮き上がっていた汚れを洗濯物から離脱させ、節水で高い洗浄効率を得ることができる。
【0093】
また、本実施形態では、吐出口34aが洗濯兼脱水槽9の回転中心Oから離れた位置(後ろ方)に設けられ、吐出口34aから洗濯兼脱水槽9の内周面までの距離が遠いほど拡径部34e(流路断面拡大部)の曲率を大きくすることで、回転中心Oから洗濯兼脱水槽9の内周面までの距離に応じて洗濯水の散水範囲を調整することができる。これにより、循環ポンプ16の性能を上げることなく、つまり散水路34に導入される洗濯水の流量を変えることなく、洗濯水を洗濯兼脱水槽9の内周面に届かせることができる。
【0094】
また、本実施形態では、円筒部34bに径方向内側に突出するリブ34dが周方向に沿って形成されていることで、旋回流に対して下向き(吐出口34a側)の力を低減できるので、吐出口34aからの散水範囲をより広げることができる。
【0095】
なお、本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更することができる。なお、前記した実施形態では、外槽10内の洗濯水を、循環ポンプ16を用いて洗濯兼脱水槽9の上方から散布する場合の散水路34について説明したが、水道水を散水路34から給水する場合にも、前記と同様に散水路34を給水カバー36に設けて、洗濯兼脱水槽9内の洗濯物(衣類など)に水道水を散布する構成としてもよい。このように、散水路34から水道水を散布する場合であっても、洗濯物(衣類)の洗いむらを少なくすることができ、つまり乾燥状態の衣類が少なくなり、衣類が常に洗濯水が浸み込んだ状態にできるので、洗浄力を高めることができる。
【0096】
また、本実施形態では、散水路34が円筒部34bを備える構成を例に挙げて説明したが、円形に限定されるものではなく、多角形などの筒状部であってもよい。