【実施例1】
【0009】
本発明のエアバッグモジュールの一実施例を図面に基づいて説明する。
本実施例のエアバッグモジュール1に使用されるエアバッグカバー2は、軟質の熱可塑性樹脂、例えばオレフィン系エラストマー等を射出成形したものを使用している。
【0010】
図1、及び
図2に示すように、運転者に対向する面である正面部22の裏面に溝21を設けてあり、膨張したエアバッグ3の膨張により開裂し展開可能な扉を形成する。また、ステアリングホイール(図示せず)の左右のスポークと一体的な外観形状をなすスポーク部23があり、正面部22の裏側には無底箱状をなす周壁部24を有している。
【0011】
本実施例のエアバッグ3は、
図1に一部を破断させた斜視で示されているが、円形の一対のメインパネル31、32の外周を重ねて縫合した扁平な略円形のクッション体である。
このメインパネル31の中央には開口33が設けてあり、開口33の周縁部に、1枚または複数枚のヒートパッチ34を膨張時のエアバッグ3の内側となる側に、補強布35を、同じく外側となる側に重ねて、縫い糸9により一体に仮止め縫合して取り付ける(
図3、
図4参照)。
これにより、開口33の周縁部がメインパネル32のみの単層構成とした場合よりも、後述する挟持の際に圧縮力が良く作用し、熱容量も増加し、ヒートパッチ34による遮熱効果とも相まって、熱ガスに対する保持強度が高まる。
【0012】
なお、本実施例では
図3に示すようにヒートパッチ34を2枚、補強布35を1枚としているが、ヒートパッチ34や補強布35は枚数や布仕様、例えば、糸の打ち込み本数、目付け量、シリコーン樹脂コーティングの実施とコートするシリコーン樹脂の量は、種々選択が可能である。
【0013】
次に、エアバッグ3を取り付けるリテーナ4は、厚さ1mm程度のプレス用鋼板を絞り成形したもので、周壁部41の内側がほぼ正方形である挟持面としての底面部42と、挿入孔としての通孔43を有し、4本のスタッドボルト44によって、バックプレート5とともにエアバッグ3を挟んで固定する。
【0014】
バックプレート5は、ガラス繊維強化ポリアミド6(ガラス繊維33%添加)を、内部に厚さ0.8mm程度の鋼板を一体にインサート成形法によって射出成形したもので、支持面である底部52、その略中央部に挿入穴である開口53を有し、上記スタッドボルト44を挿通してナット7で締結するための取付穴54がある。
【0015】
鋼板は、取付穴54の周縁で下面に露出しその他の箇所では厚み方向の中央に位置するよう、成形時に金型内で位置決めされる。
すなわち、
図4に示す断面において、鋼板の上下両方から挟んで鋼板が樹脂板厚方向の丁度真ん中になるようにしている。取付穴54の周縁で下面に露出した鋼板部分は、インフレータ6のフランジ62と直に接し、フランジ62が金属が露出するものであれば、電気的に接続される。
そこで、途中を樹脂で覆われて離間する他点を例えばホーン回路の接点とすれば、ホーンスイッチ回路を構成することもできる。
【0016】
インフレータ6は、略円筒状をなす容器部としての上部ガス噴出部61には、ガス噴出口64が設けられ、上部ガス噴出部61の下方に、上部ガス噴出部61に連続する底部63の周面から、その周面に交差する方向に延出される交差面をなすフランジ部としてのフランジ62を有している。
【0017】
インフレータ6とリテーナ4を組み合わせるとき、大量生産における部品寸法ばらつきを考慮して組立可能なように、インフレータ6の周面とリテーナ4の通孔43の内周部との間に隙間8を発生させる。この隙間8は、微小なもので1mm前後(0.5mm〜1.6mm程度)のものであって、インフレータ6と通孔43の微小の芯ズレによっては一部分の箇所で接触することがあるものの、全周に亘ってはタイトでなく、嵌合関係にない。
【0018】
なお、インフレータ6または通孔43を僅かに異形にして接触させ位置決めや仮保持の作用を得ることもできる。この場合には、全周または長い周長に亘って接触または干渉をさせないようにすべきである。これは、強干渉では組立作業性を悪化させ、全周干渉になったり、組立を困難にするためである。
【0019】
次に、インフレータ6を起動したときの熱ガスGの流れについて説明する。
インフレータ6からガスが噴射されると、熱ガスGの主流はリテーナ4の周壁部41に当って偏向され拡散し、折り畳まれたエアバッグ3を膨らませる。熱ガスGのごく一部の熱ガスG1が隙間8から緩衝室である空間Sに入り、フランジ62側に向かって流れる。
【0020】
エアバッグ3は空間S内で開口33の縁部が後退しており、端面T1と下面の延出部T2に熱ガスG1が当るだけで、熱ガスによる挟持面への実質的な影響はない。また、空間S内に位置する開口33の縁部は挟持されていないので、積層されたヒートパッチ34の端部が熱ガスG1に対してヒダ状に対向するので、広い接触面積を持つことになって、熱ガスG1が特定部位に集中せず、熱による影響も限定的で単独の小溶融と軽度の玉ブチとなって熱ガスG1の熱エネルギーを受け止め、挟持強度を保ち、挟持部分への影響を抑えることができる。
【0021】
また、バックプレート5が熱ガスG1に接触する接触部T3は、インフレータ6のフランジ62とエアバッグ3の延出部T2に挟まれて奥まった位置となっており、熱ガスG1の端縁部である接触部T3のみに熱ガスG1が当る。つまり、略階段状の空間Sによってバックプレート5が熱ガスG1に晒される面は僅少である。
【0022】
バックプレート5を熱可塑性樹脂(ガラス入りポリアミド6や、その他の高い曲げ弾性率を示す樹脂材料、いわゆるエンジニアリングプラスティック)で形成すると、ホーンスイッチ機構、フック係合式のモジュール取り付け構造、エアバッグカバー係止構造など、複雑で入り組んだ形状が比較的容易に形成可能になる。また電気的に絶縁を必要とする場合も、多くの樹脂は導電性を持たないので、格別の絶縁被覆が不要である。
【0023】
また、樹脂製とすることでモジュール全体としての軽量化の可能性が高まり、熱可塑性樹脂であることが、バックプレート5のリサイクルの途を開くので、時代のニーズに呼応している。その裏返しとして、極めて短時間ながら急激な昇温に対する樹脂の課題も出てきている。
【0024】
しかし、上記実施例のような空間Sを形成しておくことで、バックプレート5への熱負荷を著しく低減できる。そこで、バックプレート5が樹脂製であれば、上記樹脂の課題に対する有効な手段となり得る。またバックプレート5をリテーナ4と同様に鋼板などを絞り成形したり、マグネシウム合金の鋳造などによった場合でも、バックプレート5が受ける熱負荷が小さいので、合成繊維布帛等よりなるエアバッグ3の挟持部に掛かる熱負荷も抑制できる。
【0025】
挟持部分は、この断面階段形状の空間Sを形成できるように中心から外方に離れた位置Uにスタッドボルト44の締め付けで挟持力が与えられているもので、スタッドボルト44の周りが挟持の面圧が作用し、熱ガスG、G1の当る箇所から離してレイアウトされ、挟持力を安定的に得ることができ、エアバッグモジュールの信頼性を向上させることができる。